デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
4款 経済調査会
■綱文

第56巻 p.577-583(DK560127k) ページ画像

大正5年4月25日(1916年)

是月二十四日、当会ニ関スル官制公布セラレ、是日栄一、当会委員ヲ仰付ケラル。


■資料

法令全書 大正五年上巻 内閣印刷局編 刊 【朕経済調査会官制ヲ裁可…】(DK560127k-0001)
第56巻 p.577-578 ページ画像

法令全書 大正五年上巻 内閣印刷局編  刊
朕経済調査会官制ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
 御名御璽
  大正五年四月二十四日
             内閣総理大臣 伯爵 大隈重信
勅令第百十六号(官報四月二十四日)
    経済調査会官制
第一条 経済調査会ハ内閣総理大臣ノ監督ニ属シ、欧洲戦争ニ伴ヒ施設スヘキ経済上必要ナル事項ヲ調査審議ス
第二条 経済調査会ハ関係各大臣ノ諮詢ニ応シ意見ヲ開申ス
第三条 経済調査会ハ関係各大臣ニ建議スルコトヲ得
第四条 経済調査会ハ会長一人、副会長二人及委員六十五人以内ヲ以テ之ヲ組織ス
 特別ノ事項ヲ調査審議スル為必要アルトキハ臨時委員ヲ置クコトヲ得
第五条 会長ハ内閣総理大臣ヲ以テ之ニ充ツ
 副会長ハ大蔵大臣及農商務大臣ヲ以テ之ニ充ツ
 委員及臨時委員ハ内閣総理大臣ノ奏請ニ依リ内閣及各省高等官並学識経験アル者ノ中ヨリ内閣ニ於テ之ヲ命ス
第六条 会長ハ会務ヲ総理ス
 会長事故アルトキハ副会長其ノ職務ヲ代理ス
第七条 経済調査会ニ左ノ五部ヲ置キ委員ヲ分属セシム
  貿易部
  租税部
  交通部
  金融部
  産業部
 委員ノ部属ハ会長之ヲ指定ス
第八条 各部ハ部会ヲ開キ、必要アルトキハ各部聯合会ヲ開ク
第九条 経済調査会ハ内閣総理大臣ヲ経テ当該官吏・学者又ハ当業者ヨリ意見書ヲ徴シ、又ハ其ノ出席ヲ求メテ意見ヲ聴クコトヲ得
第十条 経済調査会ニ幹事及主事ヲ置ク、会長及副会長ノ指揮ヲ承ケ庶務ヲ整理ス
 幹事ハ内閣及各省高等官ノ中ヨリ、主事ハ学識経験アル者ノ中ヨリ内閣総理大臣ノ奏請ニ依リ内閣ニ於テ之ヲ命ス
 - 第56巻 p.578 -ページ画像 
第十一条 経済調査会ニ書記ヲ置ク、会長・副会長・幹事及主事ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
 書記ハ内閣ニ於テ之ヲ命ス
      附則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス


青淵先生公私履歴台帳(DK560127k-0002)
第56巻 p.578 ページ画像

青淵先生公私履歴台帳        (渋沢子爵家所蔵)
    任免叙授
同 ○大正五年四月廿五日 経済調査会委員被仰付    内閣


竜門雑誌 第三三六号・第一二二頁 大正五年五月 経済調査会委員(DK560127k-0003)
第56巻 p.578 ページ画像

竜門雑誌  第三三六号・第一二二頁 大正五年五月
○経済調査会委員 政府に於ては欧洲大戦の本邦経済界に及ぼせる影響に鑑みる所あり、経済調査会を設けられ、四月廿五日の勅令を以て夫々委員の任命ありしが、青淵先生にも委員の一人に挙げられたりといふ。


経済調査会経過及成績 第一―三七頁 大正八年三月刊(DK560127k-0004)
第56巻 p.578-582 ページ画像

経済調査会経過及成績  第一―三七頁 大正八年三月刊
  第一編 経済調査会ノ経過
    第一 経済調査会設置ノ趣旨
      (一) 設置当時発表セラレタル設置ノ趣旨
経済調査会設置当時発表セラレタル設置ノ趣旨左ノ如シ
欧洲ノ戦乱ハ勃発以来既ニ帝国ノ財政経済ニ至大ノ影響ヲ及ホセルノミナラス、其ノ影響ハ今後尚増大セントスルノ傾向アリ、而シテ又其ノ平和克復シテ欧洲各国孰レモ全力ヲ傾倒シテ、各自其ノ受ケタル創痍ヲ恢復セントスルノ時ニ至ラハ、之カ為帝国ノ財政経済上蒙ルヘキ影響益々甚シカルヘク、予メ之ニ対スル措置ヲ講スルト共ニ、此ノ時機ヲ以テ経済界ノ振興ヲ図リ、海外ニ対シテ其ノ発展ヲ策スルハ帝国ノ財政経済上最モ緊切ニシテ、一日モ之ヲ忽諸ニ附スルヲ許サス、是ヲ以テ欧洲戦乱ノ影響ニ関スル各種ノ材料ヲ蒐集シ、平和克復ニ伴フテ起ルヘキ諸般ノ事項ヲ調査シ、以テ帝国ノ受ケタル打撃ヲ救済シ其ノ有利ナル影響ヲ助長スルト共ニ、朝野ノ間ニ懸案トナレル各種ノ問題ヲ解決シテ財政経済ノ調和ヲ図リ、進テ戦乱終熄後ニ於テ内外ニ対シ、帝国ノ採ルヘキ経済上ノ政策ヲ確立シ、帝国ノ進運ノ画策スルニ必要ナル資料ヲ得ルノ趣旨ヲ以テ、玆ニ経済調査会ヲ設立セントス
○中略

    第二 経済調査会ノ組織
     (一) 官制 ○略ス
     (二) 職員
 右ノ官制ニ基キ任命セラレタル委員及幹事等ヲ示セハ左ノ如シ(大正五年九月一日現在)
   会長
        内閣総理大臣 侯爵   大隈重信
   副会長
          大蔵大臣      武富時敏
 - 第56巻 p.579 -ページ画像 
         農商務大臣      河野広中

   委員
  聯合国経済会議特派委員長 法学博士 阪谷芳郎
               男爵
         貴族院議員 男爵   村上敬次郎
         東京市参与 男爵   渋沢栄一
        鉄道院副総裁 工学博士 古川阪次郎
         貴族院議員      若槻礼次郎
         貴族院議員 男爵   有地品之允
     日清汽船会社監査役
         貴族院議員 男爵   高橋是清
          大蔵次官      菅原通敬
       日本銀行副総裁 法学博士 水町袈裟六
          外務次官      幣原喜重郎
  東京帝国大学法科大学教授 法学博士 金井延
         農商務次官      上山満之進
  東京帝国大学法科大学教授 法学博士 松崎蔵之助
        内閣書記官長      江木翼
         法制局長官 法学博士 高橋作衛
          逓信次官      湯河元臣
       農商務省参政官      町田忠治
        大蔵省参政官      加藤政之助
        衆議院副議長      早速整爾
  東京帝国大学法科大学教授 法学博士 山崎覚次郎
     東京高等商業学校長 法学博士 佐野善作
         貴族院議員 伯爵   林博太郎
         貴族院議員 男爵   田健治郎
         貴族院議員      橋本圭三郎
         衆議院議員      浜口雄幸
         貴族院議員 子爵   三島弥太郎
        日本銀行総裁
         貴族院議員 子爵   松平直平
      日本畜産会社専務
  八千代生命保険会社取締役
      東洋拓殖会社監事
         貴族院議員 子爵   牧野忠篤
     宝田石油会社監査役
        三井銀行理事      早川千吉郎
        東京市会議員      豊川良平
   東京商業会議所特別議員
   猪苗代水力電気会社社長
        東京市会議長      中野武営
     東京商業会議所会頭
    日清生命保険会社社長
     大阪商業会議所会頭      土居通夫
      大阪電灯会社社長
    京阪電気鉄道会社
         衆議院議員      関直彦
        関西日報社長
      第三十四銀行頭取      小山健三
   東京商業会議所特別議員      志村源太郎
      日本勧業銀行総裁
     横浜商業会議所議員      原富太郎
        第二銀行頭取
         衆議院議員 法学博士 小林丑三郎
   大日本葡萄酒会社監査役
         貴族院議員 法学博士 桑田熊蔵
       帝国農会副会長
 - 第56巻 p.580 -ページ画像 
         衆議院議員      山本悌二郎
     台湾製糖会社取締役
         衆議院議員      片岡直温
    日本生命保険会社社長
   横浜商業会議所特別議員      井上準之助
      横浜正金銀行頭取
         古河家監事 男爵   中島久万吉
      横浜電線会社社長
   東京商業会議所特別議員      松方巌
       第十五銀行頭取
    帝国倉庫運輸会社社長
         貴族院議員      安田善三郎
   東京商業会議所特別議員
   東京建物会社取締役会長
         衆議院議員      金沢仁作
      帝国製紙会社社長
  東京帝国大学法科大学教授 法学博士 松岡均平
      日本興業銀行総裁      志立鉄次郎
     日仏銀行支店代表者
   東京商業会議所特別議員      池田謙三
      東京交換所委員長
        第百銀行頭取
      東京貯蔵銀行
     日本貿易協会副会頭
     京都商業会議所会頭      浜岡光哲
     京都工商会社取締役
      大阪織物会社社長 工学博士 平賀義美
     洋木材防腐会社
    日本火山灰会社取締役
     三井合名会社理事長 工学博士 団琢磨
北海道炭礦汽船会社取締役会長
        東京市会議員      大橋新太郎
        東亜公司社長
  国定教科書共同販売所
    東京海上保険会社社長      末延道成
    明治火災保険会社
  東明火災海上保険社会
      日本石油会社社長      内藤久寛
      新潟鉄工所取締役
   東京商業会議所特別議員      和田豊治
    富士瓦斯紡績会社社長
    東京商業会議所副会頭      藤山雷太
     大日本製糖会社社長
     東京株式取引所理事
   大阪商業会議所特別議員      岩井勝次郎
        岩井商店社長
    日本郵船会社営業部長      林民雄
        大倉組副頭取      門野重九郎
       増田製粉所社長      中村房次郎
    増田合名会社代表社員
  大日本麦酒会社常務取締役      植村澄三郎
    三菱合資会社銀行部長      串田万蔵
   東京朝日新聞社編輯局長      松山忠次郎
      慶応義塾大学教授 法学博士 気賀勘重
       早稲田大学教授 法学博士 塩沢昌貞

   臨時委員
          海軍次官      鈴木貫太郎
         専売局長官      嘉納徳三郎
    三菱合資会社造船部長      丸太秀美
      川崎造船所取締役 工学博士 田中泰董
    大連緒明合資会社社長      緒明圭造
      南洋郵船会社
      岸本汽船会社社長      岸本兼太郎
  日清火災海上保険会社
      大阪商船会社社長      堀啓次郎

   幹事
      農商務省農務局長      道家斉
                    ○外二〇名氏名略ス

   主事
                    中山成太郎

   書記
           内閣属      浮洲福雄
                    ○外四名氏名略ス

其後内閣ノ更迭ニ依リ委員其他ノ職員ニ変更ヲ生セリ、依テ大正六年四月一日現在ノ職員ヲ示セハ左シ如シ

   会長
        内閣総理大臣 伯爵   寺内正毅

   副会長
         農商務大臣      仲小路廉
          大蔵大臣      勝田主計

   委員
 聯合国経済会議決議実施委員 法学博士 阪谷芳郎
               男爵
         法制局長官 法学博士 有松英義
         貴族院議員 男爵   村上敬次郎
         東京市参与 男爵   渋沢栄一
                    ○外五八名氏名略ス

   臨時委員 ○七名氏名略ス

   幹事 ○一八名氏名略ス

   主事 ○一名氏名略ス

   書記 ○八名氏名略ス

○中略

    第三 経済調査会ニ提出セラレタル議案
経済調査会ニ於ケル議案ハ各委員又ハ幹事ヨリ提出シテ之ヲ審議スルコトトセリ、其ノ提案ハ別ニ第二編ニ収録スト雖、玆ニ其件名及提出者ヲ示セハ左ノ如シ

      件               名                                           提出者
一  貿易第一号提案 重要輪出品ノ品質斉一ニ関シ施設スヘキ事項(不正貿易品排除策)                         岡幹事
二  租税第一号提案 関税政策上将来特ニ保護ヲ要スヘキ産業ノ種類並ニ之ニ対スル保護ノ程度及其ノ方法                 松本幹事
三  租税第二号提案 関税政策上従来保護ヲ加ヘタル産業ニシテ将来之ヲ軽減スルモ支障ナシト認ムルモノノ有無              松本幹事
四  交通第一号提案 現時ニ於ケル船腹調節ノ方法                                          若宮幹事
五  交通第二号提案 戦後ニ於ケル我国海運ノ健全ナル発達ヲ期スヘキ方法(海上保険・海事金融航路拡張・造船奨励等)          若宮幹事
六  交通第三号提案 海外連絡貨物輸送上ノ現行施設ニ対シ改良ヲ施シ又ハ新規ニ計画スヘキ事項(日支運送取扱会社設置ノ件其ノ他)    木下幹事
七  交通第四号提案 漫遊外客ノ誘致ニ関スル施設                                          木下幹事
八  金融第一号提案 対支金融機関整備方法(満洲銀行及日支銀行設立ニ関スル件)                           森幹事
九  産業第一号提案 肥料ノ国内供給ノ増加ヲ図ル方法(肥料自給策)                                 道家幹事
十  産業第二号提案 戦時ニ発達シ又ハ新ニ興起シタル工業ヲ戦後ニ於テ維持継続セシムル方法                      岡幹事
 - 第56巻 p.582 -ページ画像 
十一 産業第三号提案 工業資金ノ融通ヲ円滑ナラシムル方法                                      土居委員
十二 産業第四号提案 工業資本証券ノ発行引受又ハ引受保証ヲ専業トスル工業金融ノ中心機関ヲ創設スルノ可否               中島委員
十三 産業第五号提案 満蒙開発ノ為拓殖機関ヲ設立スルノ可否及其ノ方法                                土居委員
十四 産業第六号提案 原料農産物ノ生産ヲ奨励セムカ為綿・羊毛・麻類、製紙用パルプ及漆ニ対スル保護方策(綿・羊毛・パルプ等ノ自給策) 内藤委員

   ○大正五年四月経済調査会設置ヨリ、翌年十一月其ノ廃止ニ至ル迄ニ開カレタル会合数左ノ如シ。
    一 総会       五回
    二 聯合部会     二十三回(内、特別委員報告会十三回)
    三 特別委員会    百八十八回
    四 講演及報告会   十回
     合計        二百二十六回



〔参考〕竜門雑誌 第三三七号・第九二頁 大正五年六月 戦争と貿易(DK560127k-0005)
第56巻 p.582-583 ページ画像

竜門雑誌  第三三七号・第九二頁 大正五年六月
○戦争と貿易 左の一篇は政府の設立に係る経済調査会に就て、在京上毛新聞記者が青淵先生を訪問して其意見を問ひたるものなりとて、五月廿四日の同紙上に掲載せるものなり。
 △経済調査の眼目 政府が今回経済調査会を設立せられて、此の大戦争に対する経済政策の根本を定めんが為めに、各種の方面より経綸智識ある人士を集めて調査研究をなしつゝあるは誠に時機に適したる施設として大に喜びに堪えない事である。併し乍ら玆に最も注意を要する事は経済政策即ち商業貿易の発展を策するに当つて世人の誤解せる処は、従来経済上の発展即ち商工業の発達進歩は之を平和の戦争なりと云はれて居つた事であるが、予は之には大に反対であつて商業貿易は決して平和の戦争ではないと信ずるのである、何となれば戦争と云ふ事になれば必ず其何れか一方が勝つて何れか一方が負けなけれはならぬ。勝敗は戦争に附きものであつて古来は固より現今の
 △欧洲大戦争 でも両方が勝つと云ふ様な戦争はないのである。然るに商業の内には、或る一部分即ち米穀若しくは株式取引所に於ける売買取引の如きは、買方か売方の何れか一方が勝てば一方は敗けるが、其の他の商業貿易は、決して一方が勝つて一方が負けると云ふ様な事はないのであつて、売買の双方が必らず利益を占めるのである。従つて世界の何れの国と商業貿易の取引をなすも必らず双方の利益であつて、而して之に依つて国を富まし、又其国の産業をも発達せしむるに至るものである。戦争の如くに何れか一方が勝つと云ふものでもなければ、仮令戦つた方でも大なる犠牲を払ふと云ふ様なものではない、殊に商業貿易の発展には先づ第一に信用と云ふ事が大切であつて、此点から見ても之を戦争と同一視する事は出来ないのである
 △金融交通の完備 殊に此の商業貿易を発達せしめて其の国を富まし、又其の国の生産興業を発展せしむるに最も大なる関係を有するのは、交通運輸機関の発達進歩を第一の要件とし、次は金融機関の完備を図らなければならぬ。之等の方法を十分に完備せしめなけれ
 - 第56巻 p.583 -ページ画像 
ば商業貿易の発展は到底之を望む事は出来ないのである。此等は従来も種々研究し、又徐々に実行せられて居る事であるが、今回の経済会が交通・金融の方面に就ても、十分慎重なる考究を尽さんとせらるゝは誠に好く、其の時勢の進運に応じ商工貿易の進歩発達に資するに足る所以である。
 △粗製濫造の防止 之と同時に、一般国民に於ても漸く取引関係を成立せしめて販路の拡張さるゝや、直に粗製品を販売して信用を傷くるが如き事ありては、政府並に識者の如何に苦心して商業貿易の発展に努力するも全く無効なれば、之等の点に於ては大に商業道徳を重んじて、従来の如くに漸く信用を得て取引の熾んなりしに乗じて粗悪品を供給し、切角築き得たる商業上の地位を土崩瓦解せしめて一大頓挫を来さざる様深く注意せられん事を希望に堪えない。