デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
6款 臨時財政経済調査会
■綱文

第56巻 p.604-608(DK560137k) ページ画像

大正8年11月10日(1919年)

是日、総理大臣官邸ニ於テ、当会会議開カレ、諮問第三号「製鉄業ノ振興ニ関スル根本方策如何」及ビ第四号¬造船業ノ維持発達ニ関スル根本方策如何」ニツキ審議シ、両案一括特別委員付託トナル。栄一出席ス。


■資料

集会日時通知表 大正八年(DK560137k-0001)
第56巻 p.604 ページ画像

集会日時通知表  大正八年        (渋沢子爵家所蔵)
十一月十日  臨時財政経済調査会(首相官邸)
   ○中略。
十一月十九日 臨時財政経済調査会(首相官邸)


中外商業新報 第一二〇七九号 大正八年一一月一一日 ○財経会 諮問案附議 委員に付託(DK560137k-0002)
第56巻 p.604-605 ページ画像

中外商業新報  第一二〇七九号 大正八年一一月一一日
    ○財経会
      諮問案附議
      委員に付託
臨時財政経済調査会は十日午前十時より永田町首相官邸にて開会、山本・高橋両副会長以下高橋・串田・小山・郷・橋本・浜口・林・大塚梶原・山岡・団・古賀・鈴木・秦・井上・岡崎・片岡・神野・渋沢・岡田・門野・寺野・坂本・中島・松方・斯波・磯村・安川・武田・香村・石丸・堀・浅野・岸本・小田柿・今岡・大河内・近藤の各委員出席、原会長事故に依り山本副会長代りて会長席に就き、先づ前項の諮問案第三号・第四号に付崎川鉱山局長・若宮管船局長より説明を為し両案を一括して副会長指名の左記十三名の特別委員に付託するに決したり、特別委員は直に別室にて協議事項の打合せを為し、岡崎邦輔氏を委員長に選び、正午一同午餐を共にし、午後一時過ぎ散会せり、尚ほ本特別委員会は毎週水曜日午後五時より首相官邸にて開会するに決したり
      ▽特別委員
 犬塚勝太郎・山岡順太郎・秦豊助・岡崎邦輔・岡田啓介・寺野精一中島久万吉・武田秀雄・香村小録・小田柿捨次郎・今岡純一郎・大
 - 第56巻 p.605 -ページ画像 
河内正敏・山下亀三郎


竜門雑誌 第三七八号・第四〇頁 大正八年一一月 臨時財政経済調査会(DK560137k-0003)
第56巻 p.605 ページ画像

竜門雑誌  第三七八号・第四〇頁 大正八年一一月
○臨時財政経済調査会 臨時財政経済調査会は十一月十日午前十時より永田町首相官邸に於て開会せられ、諮問案第三号・第四号に付て当局者の説明あり、両案を一括して山本副会長指名の特別委員十三名に付託することに決し散会せる由なるが、当日青淵先生にも出席せられたり。


臨時財政経済調査会要覧 第二号・第一―八八頁 刊(DK560137k-0004)
第56巻 p.605-608 ページ画像

臨時財政経済調査会要覧  第二号・第一―八八頁 刊
○諮問第三号
    製鉄業ノ振興ニ関スル根本方策如何
      説明
本邦ノ製鉄業ハ時局中鉄鋼材輸入ノ困難ト諸工業ノ殷賑トニ基ク価格ノ昂騰並政府ノ奨励方策等ニ刺戟セラレテ急速ノ発達ヲ為シ、其ノ生産額戦前ニ倍加スルノ盛況ヲ呈シタリト雖、休戦条約ノ締結ヲ見ルニ及ヒテヨリ鉄価ハ暴落ヲ告ケタルヲ以テ、当業者ハ事業ノ前途ニ多大ノ不安ヲ感シ、価格ノ管理、輸入ノ制限、関税率ノ引上等政府ニ対シ種々ノ保護的施設ヲ要望スルニ至レリ
今我国ニ於ケル鉄鋼材ノ需給関係ヲ見ルニ、大正七年ノ需要額ハ銑鉄(製鋼原料ヲ含ム)八十三万二千噸、鋼材百十七万三千噸ニシテ、之ニ対シ内地ノ生産額ハ銑鉄六十万六千噸、鋼材五十四万噸ナリシヲ以テ、其ノ不足額銑鉄二十二万六千噸、鋼材六十三万三千噸ハ之ヲ輸入ニ求メタリ、又原料鉄鉱ノ需要額ハ九十九万七千噸ニシテ、之ニ対シ内地ノ産額ハ三十九万八千噸ニ過キサリシヲ以テ、其ノ不足額中二十三万七千噸ハ朝鮮ヨリ移入シ、爾余ノ三十六万二千噸ノ供給ハ之ヲ海外ニ仰キタリ
鉄鉱需要額カ右ノ如ク比較的少額ナルハ、鉄鋼材ノ輸入多キ結果ニシテ、若シ大正七年ニ於テ本邦所要ノ鉄鋼材ヲ全部自給スルモノトセハ同年ニ於ケル鉄鉱需要額ハ約三百万噸ノ巨額ニ上リシナルヘシ
惟フニ将来国運ノ発展ニ伴ヒ、鉄鋼材需要額ノ漸次増大スヘキハ疑ナキ所ニシテ、之ニ対スル供給ノ円滑ヲ図ラムトセハ亦之ニ相当スル原料鉄鉱ノ供給ヲ必要トス、然ルニ我国ハ鉄鋼《(鉱)》ニ付キ天賦厚カラス、其ノ開掘ハ多年官民ノ其ニ努力シ来リタル所ナレトモ、其ノ産出額甚タ豊ナルヲ得ス、随テ将来内国ニ於テ製鉄業ノ発達ヲ期セムトセハ、之ニ要スル鉄鉱ハ主トシテ之ヲ海外ニ求メサルヲ得ス、玆ヲ以テ政府ハ夙ニ海外ニ於ケル製鉄原料ノ調査ニ留意シ来レルモ、此等原料ノ供給ヲ確保セムカ為ニハ如何ナル方策ヲ採ルヲ可トスルヤ、又原料ノ大部分ヲ海外ニ求メサルヘカサルノ事情右ノ如シトセハ、将来内国製鉄業ノ振興ヲ計ルト共ニ一面満洲其ノ他ニ於テ邦人ノ経営スル製鉄業ノ発達ヲ促シ、彼此ノ間ニ円滑ナル連絡ヲ保持セシムルニ付相当ノ施設ヲ為スノ要ナキヤ、又鉄鋼材関税率改訂ノ問題ハ、戦後ニ処スル施設トシテ最モ考慮ニ値スヘシト雖、此等ノ事タル将来ノ製鉄方針ト密接ノ関係ヲ有スルノミナラス、各種工業ノ消長ニ影響スル所亦甚タ大ナル
 - 第56巻 p.606 -ページ画像 
モノアリ、故ニ若シ関税率改訂ノ要アリトセハ、如何ナル程度範囲ニ於テ之ヲ実行スルヲ適当トスルヤ
以上ハ本邦製鉄業ノ根本ニ関スル主要ナル問題ヲ列挙セシニ過キサルモ、要スルニ製鉄業ノ振興ハ国防上産業上関スル所極メテ重大ナルヲ以テ之カ根本方策ヲ定ムルノ緊要ナルヲ認メ、玆ニ本案ヲ提出シ之ニ対スル意見ヲ求ム
○諮問第四号
    造船業ノ維持発達ニ関スル根本方策如何
      説明
造船奨励法ハ本年十二月末日ヲ以テ施行期間満了シ、特ニ法律又ハ之ニ代ルヘキ緊急勅令ノ発布ニ依リ其ノ期間ヲ伸張セサル限リ明年一月ヨリ当然消滅スヘシ
該法ハ明治二十九年三月初メテ発布セラレ、十五箇年ノ施行期間ヲ有セシカ、明治四十二年三月ニ至リ改正ヲ加ヘラレタル際、施行期間ヲ明治四十三年ヨリ十箇年トシ、実際ニ於テ七箇年ヲ伸長シ以テ今日ニ及ヘリ
本邦造船業カ該法ノ施行ニ依リ、漸次進歩シ来リタルノ事蹟ハ之ヲ説クヲ俟タス、シカモ其ノ最モ顕著ナル発達ヲ遂ケタルハ、実ニ欧洲大戦ノ影響ニ依ルモノニシテ、一昨年来該法ノ施行ヲ一時停止シ、而シテ其ノ造船能力ニ於テハ世界第三位ヲ占ムルノ盛況ヲ見ルニ至レリ
此ノ盛況ハ今後ニ於テモ之ヲ維持シ発達セシムルヲ緊要トス、蓋シ我邦ノ地理的状勢ニ鑑ミ、国防ノ点ヨリ見ルモ、産業貿易ノ発展ヲ図ル点ヨリ見ルモ、国運ノ発展ハ海運ノ力ニ俟タサル可ラサルヤ論ナク、而シテ海運業ノ発達ハ必ス之レト密接ノ関係アル造船業ノ発達ニ俟ツヘキヤ明ナリ、又翻ツテ造船業ソレ自身ニ付テ考察スルモ、之ヲ本邦主要工業ノ一トシテ海外諸国ノ註文ニ応シ、船舶ヲ外国ニ輸出シ、本邦ヲシテ東洋ニ於ケル最大造船国タルノ地位ヲ保タシムルヲ以テ経済政策ノ目的ト為ササルヘカラス
之ヲ要スルニ本邦造船業ノ維持発達ニ対スル方策ハ、国家永遠ノ目的ヲ基礎トシテ之ヲ確立シ万遺算ナカラムコトヲ力メサル可カラス
然ラハ右方策ハ如何ニ之ヲ確立スヘキカ、現行造船奨励法ヲ存続スルコト亦其ノ一方法タルヘシ、然レトモ一昨年該法ノ施行停止ヲ適当ナリトセシメタル事由ハ今日尚存在シツツアリ、只程度ニ於テ著シク低下シタルノミ、将来ニ於テモ国家ニ於テ特ニ必要ト認ムヘキ特殊船種船型ノ船舶乃チ所謂優秀船ノ建造ヲ奨励スル場合ヲ除クノ外、並異常事件ノ発生セサル限リ、此等ノ事由ハ当分ノ間依然存続スヘシト認メラルルカ故ニ、今日ニ於テ定ムヘキ永久ニ至ル一般方策トシテ現行造船奨励法ヲ復活伸長スルハ保護厚キニ失スルノ嫌ナキヤ、然ルニ本邦造船業ハ之ヲ外国ニ比シ根本的ニ幾多不利ノ点ヲ有スルコト明カナルモノアリ、就中造船材料並艤装品ハ主トシテ之ヲ外国ニ仰クノ結果、之ニ対スル関税及運賃等ヲ負担セサル可ラサル事ハ本邦造船業ノ最モ不利トスル所ナリ、此等ノ不利ヲ排除スルハ本邦造船業ヲシテ外国ノ競争ニ堪ヘシムル為メニ緊要ニシテ、造船奨励法ハ実ニ此ノ主旨ニ基キテ制定セラレタルモノナリ、然レトモ運賃・保険料等ニ相当スルモ
 - 第56巻 p.607 -ページ画像 
ノハ時々変動アリテ、今日ノ奨励金ハ只其ノ一部ニ過キサルノ状況ヲ呈シ居リ、且ツ本邦造船業ノ現状ニ鑑ミ之ヲ補償セサルモ可ナリト認ムルモ、関税ハ一定ニシテ其ノ免除ハ実行シ易ク、而シテ之カ負担ヲ免レシムルコトハ本邦造船業ヲシテ外国造船業トノ競争ニ堪ヘシムルカ為メニ効果甚タ大ナルモノアルヘシ、加之実際ニ於テハ此ノ関税免除ノ問題ハ単ニ我海運業ニ使用スヘキ船舶ノ材料ニ対スル関税免除ノ問題タリ、何トナレハ現行制度ニ於テ奨励金ヲ受ケサル船舶ニシテ外国ニ輸出スルモノノ材料ニ付テハ戻税ノ特典ニ依リ関税ヲ免レ得ヘク従テ造船奨励法ヲ復活伸長セサル暁ニ於テ、関税免除ヲ実行セサルトキハ、我海運業ニ使用スヘキ船舶ノミ独リ関税ヲ免担スルコトトナリ甚不権衡ニシテ、且ツ我邦ノ船主ヲシテ著シク不利ナル地位ニ立タシムルニ至ルヲ以テ、関税ヲ免除シ戻税ノ制度ヲ廃シ彼此均等ナラシムルヲ適当トスルカ如シト雖、若シ保護ノ方法トシテ造船奨励法ニ代フルニ単ニ造船材料並艤装品ノ輸入税免除ヲ以テスルトキハ、国家ハ造船上ニ関シ何等ノ条件ヲモ附加シ能ハサルヲ以テ、国防ノ要具トシテ軍事上ノ要求ヲ充足シ、且ツ将来世界的海運競争場裡ニ出入シ得ヘキ優秀船ヲ得ルコト困難ナルノミナラス、一面近時発達ノ緒ニ就キタル本邦製鉄業ニモ影響ヲ来スヘシ、即チ本件関税免除ハ本邦製鉄業ト密接ノ関係アリテ、本邦製鉄業ニ対スル根本方策ノ確立ト共ニ之ヲ解決スルヲ適当トスヘシ
以上ハ本邦造船業ノ根本ニ関スル主要ナル問題ノ一ニ過キサルモ、要スルニ造船業ノ維持発達ヲ図ルハ国防上産業上関スル所極メテ重大ナルヲ以テ、之レカ根本方策ヲ定ムルノ緊急ナルヲ認メ、玆ニ本案ヲ提出シ之ニ対スル意見ヲ求ム
○諮問第三号及諮問第四号議事経過
諮問第三号製鉄業ノ振興ニ関スル根本方策如何及諮問第四号造船業ノ維持発達ニ関スル根本方策如何ハ、大正八年十一月十日ノ総会ニ提出セラレ、会長ヨリ一括シテ両案ノ審査ヲ付託スヘキ左記十三名ノ特別委員ヲ指名セリ
   ○特別委員氏名略ス。
右特別委員ハ総会終了後委員長ノ互選ヲ行ヒ岡崎委員、委員長ニ当選ス、爾後特別委員会ヲ開クコト三回(大正八年十一月十九日、十一月二十六日、十二月三日)十二月三日ノ特別委員会ニ於テ委員長ヨリ調査項目審議ノ為左記七名ノ小委員ヲ指名セリ
                       犬塚勝太郎
                       秦豊助
                       寺野精一
                       香村小禄
                       今岡純一郎
                    子爵 大河内正敏
                       今泉嘉一郎
右小委員ハ同日特別委員会終了後委員長ノ互選ヲ行ヒ犬塚委員、委員長ニ当選シ、同月十日小委員会ヲ開キ、両案ニ関スル調査項目ヲ議了ス、仍テ同月十七日更ニ特別委員会ヲ開キ之ヲ決定セリ
 - 第56巻 p.608 -ページ画像 
○中略 越ヘテ大正十年二月十四日総会ヲ開キ、岡崎委員長ヨリ特別委員会ノ経過並ニ結果ヲ報告シ、討論ノ末特別委員長報告ノ通両答申案ヲ可決確定セリ



〔参考〕渋沢栄一書翰 今泉嘉一郎宛 (大正九年)一月八日(DK560137k-0005)
第56巻 p.608 ページ画像

渋沢栄一書翰  今泉嘉一郎宛 (大正九年)一月八日   (今泉嘉一郎氏所蔵)
芳翰拝読、益御清適之条奉賀候、然者客歳拝眉之際御内話申上候製鉄所合同案来ル十五日を以賢台より委員会へ御提出可相成原稿御内示被下拝承仕候、右者現下之大問題ニ付種々之議論相生候筈と存候得共、帰着点ハ合同案ニ一致相成候様邦家之為メ切望仕候、右御内示之一案ニ付而ハ尚熟覧之上愚存も相生候ハヽ申上候様可仕候得共、可成委員会之大体賛同を得候事必要と存候、右不取敢拝復如此御坐候 敬具
  一月八日                渋沢栄一
    今泉賢台
          拝復