デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治38年11月18日（1905年）

是日栄一、三島毅・中村秋香等ヲ飛鳥山邸ニ招待シテ、観楓会ヲ催ス。

渋沢栄一　日記　　明治三八年　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
十一月十八日　曇　風寒シ
○上略　午飧後来客ヲ誘フテ庭園ヲ散歩ス、蓋シ此日ハ三島中洲・中村秋香・大沢・江間ノ諸氏及親戚会同シテ観楓ノ小宴ヲ開キタルナリ、薄暮ヨリ天晴レ風暖ニシテ庭園中ノ散歩頗ル可ナリ、而シテ紅楓各処ニ爛斑トシテ尤モ佳景ヲ添フ、夜食後夜九時過散会ス

文事来簡一　　明治三十八年十一月十九日　（渋沢子爵家所蔵）
昨夕は蒙御寵招久振名園之霜楓拝見、殊ニ閑静之御会ニ而別テ適老懐難有奉謝候、帰後枕頭和夢得五絶句、誠ニ卒作追々推敲も可仕候ヘ共不取敢入笑正大沢《（候脱カ）》・江間へも御廻被下次韵ニても得候へは一時之雅興ニ御坐候　匆々頓首
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　毅
　　　　青淵老男　閣下

　乙巳十一月十八日応
　青淵渋沢翁寵招賞其曖依村荘楓得五絶句呈笑正
　兵馬塵収為檄空
　幽招把酒賞山楓
　想爰遼野二年戦
　砲火孰与霜葉紅

　　　　其二
　高構幽荘綺碧山
　霜楓秋麗小僲寰
　傭将青女繊々手
　錦繍巧縫泉石間

　　　　其三
　万樹丹楓遠屋横
　夕陽映処益鮮明
　主翁老境何相似
　霜葉尤佳是晩晴

　　　　其四、園有古松為徳川氏旧山林物
 - 第57巻 p.478 -ページ画像 
　　　　翁近移笹児嶺古関吏屋材設小舎其
　　　　下使人起懐古之情
　老松鬱々蓋村園《（マヽ）》
　数百年前蘚尚存
　想見笹児嶺頭暁
　甲公騎馬出関門

　　　　其五、村荘尤宜晩望故及
　落木悲風澹夕暉
　炊煙一抺遠村微
　秋天添得画中趣
　飛鳥山辺鴻雁飛
　　　　　　　　　　　七十六叟　中洲　三島毅　未脱草

文事来簡一　　（明治三十九年）　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
愈御安健奉賀候、陳は過日被嘱候碑文乍延引御話ニ本キ別紙　○欠ク之通添削致見申候、先ツ是ニテ一応御清書被成、其上不協貴意候処ハ附箋ニテ御申越被下候へば、又々相改メ可申候
右申上度　草々頓首
　　十月十五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　毅
　　　　青淵　老台侍史