デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

1編 在郷及ビ仕官時代

2部 亡命及ビ仕官時代

4章 民部大蔵両省仕官時代
■綱文

第3巻 p.224-233(DK030076k) ページ画像

明治四年辛未八月十九日(1871年)

大蔵省、職制及ビ事務章程ヲ改定ス。栄一ノ調査立案スル所ナリ。


■資料

雨夜譚 (渋沢栄一述) 巻之五・第一二丁 〔明治二〇年〕(DK030076k-0001)
第3巻 p.224 ページ画像

雨夜譚 (渋沢栄一述) 巻之五・第一二丁 〔明治三〇年〕
○上略 又彼の各官庁の職制章程も、伊藤の米国から持帰られたのを翻訳して、大体の要領を得たから、これを政府に具申して、諸官省の職制を立つることを促し、先づ速かに大蔵省から実施するが宜いといふので、自分が其取調を担当して、三日三夜私宅に居て徹夜で調上げ、それを政府に上申して、実施することになつた○下略


世外侯事歴 維新財政談 中・第二五五―二六〇頁 〔大正一〇年九月〕(DK030076k-0002)
第3巻 p.224-226 ページ画像

世外侯事歴 維新財政談 中・第二五五―二六〇頁 〔大正一〇年九月〕
渋沢男 明治四年の秋に官制が変つたと云ふのは、根源は伊藤さんが亜米利加から、諸官署に付ての制度を調べて来て、日本でも其制度を布かなければいかぬと云ふのであつた。伊藤さんの持つて来たのは三つでした。国立銀行の制度を立てなければいかぬ。国にはどうしても財政上に国債法が無ければいかぬ。それからもう一つは各官省の制度を改革したい。それが此三つを重に調べて来て、それから大隈さんと、井上さんと私に是非此事を行へと云ふことを、三度も四度も言つて来た。
 それから、今の伊藤さんの初の手紙の頃には、井上さんは東京勤でない、大阪の造幣寮をなすつて御座つた。何でも四年の五月頃から東京に来て、丁度此等の事は総べてやらうぢやないかと云ふので、銀行制度の事を、其頃大体のお指図で、私が主として調べたが、官省の職務章程の改正も、どうしても亜米利加制度が宜いから、之を根本に調べて見ると云ふので、それは井上さんが、大蔵大輔の時のお指図で私が頻に調べた。其時私は湯島に居つて、何でもその調を盆の際に是非やると云ふ、所がなかなか間に合はない。各局の章程をきめるんですから、此字が宜いとか、悪いとか言つて、改正掛の人で富田冬三・杉浦愛三等、六人ばかりありました。三日許り私宅で調をしましてネ、夜の二時か三時頃まで、必ず夜業をして、さうして拵へて持つて行つて、見て戴いて、大体宜からう、やれやれと云ふ訳で、それから発表した。
 いよいよ発表するといふ前に、其手続はかういふ様にして欲しいといふことを……「四年八月十六日大阪造幣寮に於て」、是れが伊藤さんから、私に宛ててある。之を書いたのは福地です。
   明治四年八月十六日    於大阪造幣寮
  今便ニ托付シテ大蔵省創立規則案ヲ送ル、此案ハ僕発程前ニ草セシ概略案ヲ増補改正セシモノナリ、井上君ヨリ書送アリシ如ク此
 - 第3巻 p.225 -ページ画像 
立案ヲ採用アリテ、分局分課スベキ事ニ治定ノ趣ナレバ至極可賀ノ事ナリ。
 閣下から大阪へ手紙を遣つて、さう云ふ方法にしやうと云ふことを言ふて遣られたものと見える。
  此上ニモ君ノ力ヲ悉シテ其成功ト創立ノ挙ノ速ナランコトヲ希望ス。
 渋沢に、尚ほ井上がさう云ふ積りだから、お前が力を添へてやれと云ふのでせう。
  廟議ノ情実等尚時々書送アランコトヲ願フ、米国ヘハ僕ヨリハ別ニ書送イタサズ、君ヨリ時々督促下令アランコトヲ欲ス。
 伊藤さんから調べる約束がしてあつた、それを僕の方から手紙を遣らぬから、お前から手紙を遣つて取寄せよと云ふ。
  創立規則案中目今其寮ヲ開クニ及ハサルアリ統計療ノ類其課ヲ実務ニ施シ難キアリ記録寮ノ商舶局ノ類或ハ現時ノ取扱ニ齟齬スルアリ収税出納ノ手続等此般ノ件々ヲ一時履行セントスル時ハ、猶又此規則ヲ改メ、又ハ取扱ヲ換ヘザルヲ得ズ、然ル節ハ又再ヒ葛藤ヲ生シ、充全ノ立案モ却テ縢乱ヲ醸ノ端トナルヘシ、故ニ此立案ヲ熟議シ、実ニ之ヲ可ナリトセバ此案ヲ規則ト立テ、実務ヲ漸々ニ此規則ニ引付ル様ニ致サバ前文ノ弊害ナカルベシ、差向先ツ出納ノ事務ヲ以テ初トシ、順序ヲ追ヒ施行ヲ初ムルノ期ヲ予定布告セハ、両全ノ実際ヲ得ルニ非ズヤ、唯可成丈ハ此規則ヲ変正セザルヲ主旨トス。
  寮司ノ名ヲ改メ、官員ノ称ヲ更ルハ徒ニ疑惑ヲ生ズル弊アル而已可成丈ハ旧貫ニ依ルベシ、然レトモ実際ニ於テ不得止ノ理アラバ此例ニ非ス、○目今ノ如ク不規則ナル間ハ変称更名ノ害モ事務上ニハ顕ハレザレトモ、簿冊ヲ製シ、書類ヲ彫刻シ厳粛ニ分課スル時ハ、此般ノ変更大ニ障碍トナルコトアリ、今現ニ簿冊彫刻ノ際ニ当リ此害ヲ蒙レリ右ニ付此草案ニ載タル官名分課等、ナルベクハ之ヲ更換ナキ様君ノ周旋ヲ祈ル而已 拝具謹言 伊藤博文(花押)
   渋沢老兄
 尤も其前に井上さんが、是非やらなければならぬから、事務章程を立てやうと云ふので私共命じられて心配をして居つた。所がそれを伊藤さんは大阪の方に御座つたから、一々鄭寧にはお話がしてなかつたのでしたらう。それで井上さんからの手紙を見たけれども云々と云つて、此扱ひ方に付てまた廉々言つて寄越されたものと思ふ。大隈さん伊藤さん時代は、建設時代であつたが、先づ此財政的仕組をしたのは、井上さん時代から始つた。殊に廃藩置県の其実施が、井上さんの規模ですから、此廃藩の始末に就て何か鄭寧な調はありませぬかネ、実に磐根錯節で、なかなか大事業であつた。それを極機敏にやつたのですナ。私共其御手に属して働いたから幾らか機敏といふ中に、自分等も働いた形ですけれども、実にそれこそ快刀乱麻を断つと評されても、宜い位にやつたのです。短い時間に三百六十余大名の処置をしてしまつたから、種々な面倒な事が輻輳して来て、実に弱つた位でした。ちよつとした手紙を読んで見ても、此廻状を彼方へよこせ、誰が見たら何をせいとか、ちよつとした手紙に、
 - 第3巻 p.226 -ページ画像 
三つも四つも書いてある。それで早く運ばないとお小言が出るから一生懸命になつて皆のものが働いたが、それは実にえらかつた。何でも監査局といふのを造つて、それは自分も一つ斯う云ふやうな重要の廉々があるから、之を如何したら宜からうと云ふので、原書といふ程でもなかつたけれども……小野義真が主任で、何か二三人と共に、私も自分で考へて案を立つて持つて出しませうと云つて、夜寝ずに、私が案を作つて持つて出て、其中には是は斯うではいけまいから、斯うせよと云ふお説もあつたけれども、大分及第して、それが監査局の廃藩置県の処分案になつた。極至急にやらんならぬものだから、是はどうするが宜いとか、藩札はどうするが宜いとか、租税の取残りはどうするが宜いとか、借金はどうするが宜いとか云ふやうな事の処置が、大変に迅速に処置を附けました。(明治四十五年三月廿日)


法令全書 明治四年第三二七―三三〇頁 太政官 第四百二十三 八月十九日(DK030076k-0003)
第3巻 p.226-228 ページ画像

法令全書 明治四年 第三二七―三三〇頁
太政官 第四百二十三 八月十九日          大蔵省
  大蔵省職制事務章程(章程略之)
大蔵省
  管十一寮一司曰造幣曰租税以上一等寮曰戸籍曰紙幣曰出納曰統計曰検査以上二等寮曰記録曰駅逓曰勧農以上三等寮曰正算以上一等司
 卿
  本省及各寮司一切ノ事務ヲ総判シ其諸官員ヲ統率スルヲ掌ル
  全国民事財政其当ヲ得セシムルノ責ニ任ス
  事務章程ニ照シテ制可ヲ乞フノ条ヲ上達シ及専任ヲ得ルノ件ヲ便宜処分スルノ権ヲ有ス
  掌管ノ事務ニ於テハ大臣ニ乞フテ正院ニ抵リ其当否ヲ論弁スルヲ得ル
  各寮司頭正ヨリ具状スル事務ノ緩急ヲ審案シテ之ヲ決判取捨スルノ全権ヲ有ス
  省中ノ官員奏任以上ノ進退ハ太政官ニ於テ命スト云トモ之ヲ撰薦免黜スルハ此職ノ掌管ニ属シ時々要旨ヲ具状上達シテ太政官ノ命ヲ乞フヘシ
  判任以下ノ官員ハ其能否ヲ監別シ大少丞又ハ各寮司頭正ノ具状ヲ以テ其撰任免黜ヲ専行ス
  各地方ノ官員奏任以上ノ進退黜陟ノ事ニ関与ス
 附属書記    一員
  常ニ卿ノ左右ニ侍シ其指令ニ従テ一切ノ文書草案記録及往答書牘等ノ事ヲ掌ル
  各寮司其他ヨリ卿輔ノ決判ヲ乞フ廻冊ヲ簿記シテ之ヲ受付ス
 大輔      一員
  職掌卿ニ亜ク
  能ク卿ヲ輔ケテ共ニ其事務ヲ調理スルノ責ニ任ス事務アリテ他方ヘ出張スルカ又ハ卿ノ闕席アル時ハ一切卿ノ職掌ヲ代理スルヲ得ル
   但際《(マヽ)》ニ於テハ能ク卿ノ意ニ悖ラサル様注意スヘシ
 - 第3巻 p.227 -ページ画像 
  省中掌管ノ事務ニ於テハ卿ト共ニ正院ニ抵リ其当否ヲ論弁スルヲ得ル
 附属書記    一員
  職掌都テ卿ノ書記ニ同シ
 少輔      一員
  職掌大輔ニ同シ
 附属書記    一員
  職掌大輔ノ書記ニ同シ
以上之ヲ勅任官トス 但附属書記ハ大録ヨリ権中録迄ヲ以テ之ヲ命ス
 大丞      二員
  卿輔ノ命ニ従テ省中各課ノ事ヲ管理シ各寮司ノ事務ヲ通知スルヲ掌ル
  省中各課ノ事務ニ就テハ其担任ノ制限ニヨリテ卿輔ニ対シ之ヲ調理スルノ責ニ任ス
  卿輔ノ命令ニヨリ其名ヲ以テ時々各官省各局ヘ往復スル文書又ハ各寮司其他ヘ指令等ノ事ヲ掌ル
  成規例格ヲ明ニシテ各寮司等処務ノ順序ヲ調査ス
  各寮司其他ヨリ期ヲ逐テ報知スル考課状ヲ受ケ之ヲ検閲シテ卿輔ニ呈ス
  他方出張ノ事アレハ其時ニ当リ卿輔ヨリ殊ニ其処務ノ制限ヲ定メテ之ヲ命シ又ハ此職ヨリ請問シテ之ヲ定ム
  大録以下ノ処務ヲ薫督シテ書記ノ事ヲ詳知シ其能否勤惰ヲ監視シテ進退黜陟ヲ具状ス
 少丞      二員
  職掌責任大丞ニ同シ
以上之ヲ奏任官トス
 大録 権大録 中録 権中録 小録 権小録
  六課ヲ分テ省中書記其他ノ事務ニ処ス処務ノ順序ハ都テ大少丞ノ指令ニ従フ
 伝票課     三員
  金穀ノ出納ニ属スル一切伝票ノ事ヲ掌ル
 往復課     四員
  諸布告諸上達ノ公文及官省其他ノ往復書翰省中各寮司ノ廻状廻達等ヲ掌ル
 受付課     五員
  諸願伺届類ノ受附及指令等ノ伝達ヲ掌ル
 職務課     三員
  諸官員ノ職務進退ニ属スル文書官記及身上ニ属スル書類等ノ事ヲ掌ル
 用度課     三員
  省中一切ノ用度諸器物ヲ供給シ及仕丁給仕等ノ処務ヲ指令スルヲ掌ル
 刊行課
  諸計表報告其他規則等都テ上木ノ事ヲ掌ル
 - 第3巻 p.228 -ページ画像 
 各課ノ人員ハ事務ノ閑劇ニ従テ増減アルヘシ
 仕丁     給仕
  ○渋沢子爵家所蔵文書ニ栄一自筆大蔵省職制及ビ事務章程草案アリ。


法規分類大全 第一編 官職門十 官制 大蔵省一第六四―七二頁(DK030076k-0004)
第3巻 p.228-232 ページ画像

法規分類大全 第一編 官職門十 官制 大蔵省一第六四―七二頁
  大蔵省事務章程
大蔵ハ理財会計一切ノ庶務ヲ統理シ全国人民ノ身分地方ノ警邏駅逓郵便等ノ事ヲ総管ス其事務ノ綱領ヲ掲ル左ノ如シ
第一条 全国地方石高並地理ノ事
第二条 内国一般ノ租税庸ノ事
 附物品税印紙税特許税雑税等ノ事
第三条 海関税ノ事
第四条 一切定額公費ノ事
第五条 一切臨時公費ノ事
第六条 定額海陸軍費ノ事
第七条 臨時海陸軍費ノ事
第八条 諸官禄旅費及臨時供給スル費用ノ事
第九条 諸族秩禄ノ事
第十条 金穀ニテ支給スル賞典ノ事
第十一条 外国交際上ニ属スル費用ノ事
第十二条 神社宮殿及官舎諸営繕ニ属スル費用ノ事
第十三条 堤防橋梁ノ造築ニ属スル費用ノ事
第十四条 諸港津ニ属スル費用ノ事
第十五条 舟船車馬及諸器械ニ属スル費用ノ事
第十六条 貨幣ノ事
第十七条 度量衡ノ事
第十八条 通商並勧農ノ事
 附諸会社ノ事
第十九条 学校ニ属スル費用ノ事
第二十条 諸営繕ノ事
第二十一条 一切倉庫ノ事
第二十二条 蓄積ノ事
第二十三条 内外国債ノ事
第二十四条 全国戸数人員ノ事
第二十五条 人民身分ノ事
第二十六条 駅逓郵便ノ事
第二十七条 社寺ノ事
第二十八条 地方警邏ノ事
第二十九条 地方奏任以上官員ノ事
凡此各款皆大蔵卿輔主任掌官ノ事務トス然リト雖モ之ヲ処分スルニ当リ上奏制可ヲ経ヘキ条アリ専任施行スヘキノ件アリ之ヲ区分シテ以テ其職任ノ章程ヲ明カニセスンハアル可カラス今其例目ヲ分ツ左ノ如シ
 上款
 上奏
 - 第3巻 p.229 -ページ画像 
 制可ヲ経テ処分スヘキノ条
第一条 全国ノ土地ヲ検シ其肥瘠ヲ品別シ其制規ヲ釐革スル事
第二条 凡内外両部一般ノ租税章程ヲ増減廃立シ或ハ之ヲ変更スル事
第三条 新ニ商工ノ税及物品印紙其他諸雑税ノ貢納規則ヲ設ケ其税額ヲ定ムル事
第四条 州郡ノ経界ヲ画定シ府県村市ノ制置及上地ノ名称ヲ更正スル事
第五条 諸官省各局各地方官公費ノ額ヲ定ムル事
第六条 諸官禄及旅費其他雑費ノ制限ヲ定ムル事
第七条 諸族ノ秩禄及社寺給与ノ制限ヲ定ムル事
第八条 凡テ諸官員諸局ノ定額アル公費及官禄秩禄其他雑費ノ制限ヲ変更スル事
第九条 凡定額ナキ諸費ノ制限ヲ定ムル事
  但右両条ハ其金額三千両未満ニテ一般ノ関係タラサレハ大蔵卿輔ノ専執ヲ得ヘシ
第十条 金穀ニテ附与スル賞典ノ制限ヲ定ムル事
第十一条 定額外非常ノ軍費及国費ヲ供給スル事
第十二条 貨幣製造ノ方法ヲ立其品量ヲ定ムル事
第十三条 度量衡ノ新制ヲ立テ或ハ古制ヲ改正スル事
第十四条 為替会社ニ金券発行ノ準許ヲ与ヘ或ハ勧農ノ為メ其方法ヲ設クル事
第十五条 駅逓従来ノ方法ヲ釐正シ郵便規則ヲ設立スル事
第十六条 便宜倉庫ヲ造営スル事
第十七条 歳入歳費ヲ予算シテ来歳会計ノ目途ヲ定ムル事
第十八条 内国債ノ事
 附国債手形又ハ紙幣ヲ製シ又ハ之ヲ発行シ又ハ之ヲ交換スル事
第十九条 外国債ノ事
第二十条 戸籍ノ法ヲ改正スル事
第二十一条 人民身分ニ関スル変正ノ事
第二十二条 民産ヲ検スル方法ヲ設クル事
第二十三条 諸港津開閉及港津ノ規則ヲ創立改定スル事
第二十四条 寺院ノ廃立及例規ヲ変革スル事
第二十五条 駅逓運輸ノ法ヲ改メ大ニ道路ヲ変換スル事
第二十六条 地方警邏ノ規則ヲ定メ或ハ之ヲ変革スル事
第二十七条 外国人ヲ傭使スル事
第二十八条 凡テ省中一切ノ事務新法ヲ創立シ旧規ヲ改正スル事
第二十九条 新ニ寮司ヲ設ケ或ハ従前ノ寮司ヲ廃スル事
第三十条 省中各寮司奏任以上ノ官員ヲ他方ヘ派出スル事
第三十一条 地方官奏任以上ノ官員奉薦黜陟ニ関与スル事
以上各款皆大蔵卿輔之ヲ判案シテ其要旨ヲ略記シ又ハ処分ノ法案ヲ作リ上奏シテ制可ヲ乞テ後之ヲ施行スヘシ
 下款
 上奏
 制可ヲ経スシテ専任処置スルヲ得ヘキ条
 - 第3巻 p.230 -ページ画像 
第一条 全国ノ高租税ノ数ヲ詳明ニ検知スル事
第二条 定則アル地方ノ租税定免定式臨時ノ石代納其他反高見取流作場ノ貢税或ハ年期アル諸雑税高懸物等ノ類ハ地方庁ノ申牒ニ従ヒ恒例ニ照準シ便宜斟酌シテ処分スル事
第三条 定則アル海関諸税ハ其章程ニ従テ督促領収スヘキ事
第四条 印紙税郵便税特許税及職工商業物品等ヘ賦征スル諸雑税期ヲ逐テ督促領収スヘキ事
第五条 各府県ニ石高ニ応シテ貸附スル紙幣其他臨時貸附ノ金額ハ期ヲ逐テ督促領収スヘキ事
第六条 諸官省其他各局府県官庁トモ定額アル公費ハ其計算ヲ詳明ニシテ便宜之ヲ給シ不当ノ事件ハ之ヲ推問スル事
第七条 定則アル諸官禄金穀ニテ附与スル賞典俸給秩禄其他公用旅行ノ諸費ハ其軌範ニ照シテ支給スル事
第八条 海陸軍費ハ既定ノ定額ニ従ヒテ順次弁給スル事
第九条 堤防道路橋梁ヲ修築シ津港ヲ便ニシ溝渠ヲ浚ヒ其他鉄軌電線灯明台船路標等一切ノ興作其費用定規アルモノハ之ヲ較計シテ便宜支給スル事
第十条 諸鉱礦ノ開鑿及臨時興作修繕或ハ器械ヲ購ヒ或ハ外国人ヲ使用スル其他臨時救荒ニ属スルノ施与貸附等其経費定額ナキ事ト雖モ主任ノ官省各局ニテ上奏制可ヲ得シ者ハ之ヲ弁給スヘキ事
  但制可ノ前必ス之ヲ大蔵卿輔ニ下議スルヲ則トス
第十一条 各地方ニテ蓄積スル予備ノ米穀ハ処分ヲ審案シテ便宜指令スルヲ得ヘキ事
第十二条 品位ノ確定セシ貨幣ハ便宜ニ従テ鋳造スル事
第十三条 為替会社ノ準允ヲ与フル事
  但金券発行等ノ準允ハ上款ニ照準スヘシ
第十四条 神社宮殿諸官庁邸舎等例規アルモノハ費用ヲ案算シテ便宜修繕スル事
第十五条 便宜倉庫ヲ造営修繕スル事
  但経費三千両以上ハ上裁ノ後之ヲ施行スヘシ
第十六条 歳入歳費ノ総額ヲ詳明ニシ諸般ノ会計ヲ通算スルタメ相当ノ施設ヲ立ツル事
第十七条 郵便陸運廻漕等ノ便ヲ謀ルニ付相当ノ施設ヲ立ル事
第十八条 各地方庁ヨリ上達スル貢租ノ記牒或ハ計算ノ簿冊其他出納会計ニ関スル書冊ハ綿密ニ点検査合シテ後考ニ備フヘキ事
第十九条 毎歳時日ヲ定メ前年ノ歳入歳出及ヒ国債ノ増減貨幣鋳造ノ員数其他一般ノ公布ヲ要スル計算ノ事務ハ其分類ヲ鮮明ニシ統計表ヲ製シ以テ全国ニ公示スル事
第二十条 戸籍ノ事務地方実際ノ便否ニヨリ緩急便宜処置スル事
第二十一条 人民身分ノ事務制度条例ニ関ラサルモノヲ処置スル事
第二十二条 帰籍復籍及棄児養老ノ典ニ係ル地方申牒ノ事件ヲ査検シ既定ノ恒例ニ照シテ指令スル事
第二十三条 村市ノ経界ヲ査定スル事
第二十四条 田畑山林原野沮沢湖沼港津海岸一管轄中又ハ他ノ管轄ニ
 - 第3巻 p.231 -ページ画像 
交渉スルヲ検査スル事
第二十五条 田畑山林屋敷地ヲ変シ及潰地亡所或ハ起返開墾等ノ類土地ニ関スル地方ノ申牒ハ成規恒例ニ照シテ便宜処分スル事
第二十六条 非常ノ災変ニ由リ流亡セシ人畜土地家屋ヲ調査スル事
第二十七条 社寺境内ノ区分地方ヨリ決ヲ乞フ時ハ之ヲ裁判スル事
第二十八条 僧尼ヲ度シ及其還俗ノ数ヲ詳ニスル事
第二十九条 寺職及格式教方ノ争ヒ訴出スル事アレハ之ヲ判定スル事但司法省ニ出スヘキハ此限ニ非ス
第三十条 淫祠及無檀無住ノ寺院ヲ廃スル事
第三十一条 駅逓伝馬所ノ費用ヲ省減シ渡津駅場ヲ改メ又ハ輿ヲ車ニ改メ船ヲ梁ニ変スル等地方ノ便宜ニ従ヒ之ヲ処置シ或ハ之ヲ許可スル事
第三十二条 地方庁ヨリ申牒シテ助郷ノ事ヲ乞フニ其乞ニ従ヒ之ヲ命シ又ハ之ヲ免ス事
第三十三条 駅逓助郷ノ逋債ヲ処分スル事
第三十四条 各地ノ便ニヨリ郵便ヲ開キ其定例ノ法ヲ布達シ或ハ之ヲ会社ニ附シ便宜処置スル事
第三十五条 駅逓人足遣ノ制限ヲ査定スル事
第三十六条 道路里程ヲ釐正スル事
第三十七条 人馬船梁ノ賃銭地方ノ申案ヲ商定スル事
第三十八条 地方官職員判任以下事務ノ繁閑ニヨリ増減ノ申請ヲ判裁スル事
第三十九条 省中官員判任以下時宜ニ応シテ地方ニ派出シテ事務ヲ執リ或ハ実地ヲ検査セシムル事
以上各款大蔵卿輔之ヲ専任処置スルヲ得ヘシ而シテ之ヲ行フノ後能其細大緩急ヲ分別シ其旨趣ヲ上達スヘシ
第一章 凡ソ一般ノ布告ヲ要スル件ハ都テ太政官ヨリ発令スルヲ則トス故ニ款内若シ全国又ハ各部ヘ頒布告示スヘキ事アラハ其由ヲ具状シテ之ヲ乞フヘシ
  但尋常推問照会指令督促等ノ文書ハ縦令各地方ヘ通シテ相達スル事ト雖モ便宜往復受付スルヲ得ヘシ
第二章 凡ソ定額ナキ費用ハ章程中委任ノ外一切正院ニ於テ許可スルノ信書ナケレハ之ヲ出スコトヲ為ス可ラス
第三章 定額ナキ費用ノ額ヲ定メ或ハ臨時其支給ヲ許可スル等ハ必先大蔵卿輔ニ下議シテ之ヲ判決スル事トス
第四章 凡ソ新ニ創立セントスル諸興作工役ノ費用ハ右院ニ於テ照会協議ノ節大蔵卿輔会計ノ実際ヲ審案シ之ヲ承諾シテ後正院ニ建議スヘシ
第五章 歳入ノ予額ヲ概算シテ定額臨時諸公費ヲ審案シ毎年歳出入ノ予算ヲ立テ正院ノ許可ヲ以テ之ヲ予定スヘシ
第六章 諸官省各局地方庁トモ定額ナキ臨時ノ費用ハ其官省各局ニ照会シテ勉テ定額ヲ設ル事ヲ為サシムヘシ或ハ定ムヘカラサル費用ノ如キモ其概算ヲ出サシメテ歳入出較計ノ目途ニ供スヘシ
第七章 凡ソ各地方庁金穀ニ関スル事定額ヲ照準スルノ外大蔵卿輔ノ
 - 第3巻 p.232 -ページ画像 
指令ヲ得スシテ執行セシムヘカラス若シ或ハ臨時其実況ヲ詳悉スルタメ時々属吏ヲ遣ハシ其金穀ヲ検閲シ又ハ其簿冊ヲ調査シ及便宜其処分ヲ命令スル事ヲ得可シ
第八章 諸官省各局ノ公費海陸軍費及額内ノ常費其他海外派出官員ノ費用等能ク其実況ヲ詳悉スルタメ臨時属吏ヲ出シテ会計簿冊ヲ検査セシムヘシ
第九章 諸官省各局地方庁ノ公用経費度支計算ノ法及出納ノ記載等一一大蔵ノ規則ニ従ハシメ其計算ヲ点検シ之ヲ詳知ス可シ
第十章 諸官省各局各地方庁ノ歳費歳入及戸口地積其他一切統計表出スヘキモノハ例年期ヲ定テ大蔵ヘ達セシメ之ヲ査計部分シ表ヲ作リ以テ国内ニ公布ス可シ
第十一章 内外国債ヲ支消シ不虞ノ費用ニ供充スル為メ勉メテ諸経費ヲ節略シ貯蓄準備ノ制ヲ設ク可シ
第十二章 凡章程ニ係ルノ事務ハ正院ヨリ出ル事ト雖モ実際上不可ナルニ於テハ大蔵卿輔之ヲ覆案スルヲ得可シ
第十三章 凡省中委任ノ事務ニ係ル件ハ諸官省各局トモ大蔵卿輔ニ照会シテ後執行スヘキ事トス
第十四章 凡省中ニ於テ処分スル出納地方民事一切細大トナク毎月毎三月毎一年ト之ヲ分別シテ其考課状ヲ詳記シテ正院ヘ上達ス可シ
第十五章 上下款外更ニ掲載スヘキ事及之ヲ更正スヘキ事アラハ宜シク公議ヲ尽シテ其条件ヲ増減改革ス可シ
右職制並事務章程
上裁欽定スル所ナリ能ク之ヲ守リ其程限ヲ愆ル勿レ
  明治四年辛未八月
                   参議 板垣正形
                   参議 大隈重信
                   参議 木戸孝允
                   参議 西郷隆盛
                 太政大臣 三条実美
   大蔵卿 大久保利通殿
   大蔵大輔 井上馨殿
右職制及事務章程臣等恪守遵奉其職ヲ尽スヘシ若シ本省事務挙ラサルアレハ臣等謹テ其責ニ任ス可キ也
                    大蔵卿輔
   指令
  伺之通
   但本書ハ追テ可被相渡事
  ○本件伺文ナクシテ指令ノミアルハ蓋職制章程草案ヲ以稟請セシモノナラン。



〔参考〕渋沢栄一 書翰 井上馨宛(明治四年)七月一四日(DK030076k-0005)
第3巻 p.232-233 ページ画像

渋沢栄一 書翰 井上馨宛(明治四年)七月一四日 (井上侯爵家所蔵)
連日之霖雨鬱悒之至ニ奉存候、今日勅諚之写御布告相成、各藩被廃県と称し及弁官御廃し、諸願伺等都而管轄之官省へ差出旨公布相成候趣威令凛然砭骨之至ニ奉存候、定而諸官省事務章程も追々相立候様可相成事と奉恐察候、就而先頃伊藤君御取調之大蔵省創立之手続草案御手
 - 第3巻 p.233 -ページ画像 
許に有之候由、何共恐入候得共、暫時拝借奉願度乍失敬書中奉申上候
                            頓首
   七月十四日                 渋沢栄一
    少輔井上閣下


〔参考〕大久保利通日記 下巻・第一七九頁 〔昭和二年四月〕(DK030076k-0006)
第3巻 p.233 ページ画像

大久保利通日記 下巻・第一七九頁 〔昭和二年四月〕
一十四日○七月 七字参朝、今日藩を廃し而県となすの大英断御発表之コト、参賀天顔拝いたし候、二字退出、章程ノコトニ付渋沢吉田江談ス
○中略
一十六日丸山等入来、二字ヨリ渋沢吉田子入来、章程ノ事を談す
   ○青淵先生伝初稿第七章一第六〇頁ニ『明治四年八月十日再び太政官官制の改正ありて、枢密大小史は廃官となり、十三日先生は大蔵大丞に任ぜられ大蔵省に復帰せり。此時先生命を受けて同省の職制並に事務章程を起草す、急を要する事ありしかば、先生は退庁後自宅に閉ぢ籠り、夜更くるまで筆を執り、三日間に全部の稿を脱して制定せり』トアルモ、コヽニ掲グル栄一書翰及ビ大久保利通日記ニヨレバ、ソノ命ヲ受ケタルハ八月ニ非ズシテ七月以前ナラント推定セラル。


〔参考〕(福地源一郎) 書翰 伊藤博文宛(明治四年)六月一一日(DK030076k-0007)
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(福地源一郎) 書翰 伊藤博文宛(明治四年)六月一一日
                    (渋沢子爵家所蔵)
別紙之通渋沢取調候章程、此程御手許江差出候趣同人より伺及候、右は目今取調居候大蔵省創立規則之見合せと仕度候間、暫時拝借奉願候右規則ハ手廻し次第今日中ニ調済明日持参之心得ニ御坐候 匆々謹白
  未六月十一日
                          福地源一郎拝
   少輔公閣下
  ○コレニヨレバ既ニ六月栄一章程ノ取調ニ着手セリ。