デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治10年1月7日（1877年）

株主総会ニ出席シ、栄一頭取トシテ九年下半季ノ営業状態ヲ報告ス。

第一国立銀行第九回株主総会決議要件録
向キニ株主一同ニ銀行定款第十三条ノ趣旨ニ従ヒ明治十年一月十四日ヲ以テ当銀行第九回ノ株主総会ヲ催スヘキコトヲ報告シタリ、而シテ更ニ時機ニ随ヒ七日ヲ以テ之ヲ開キ乃チ株主一同本日午後第一時ニ当本店ヘ会同シ左ノ事件ヲ議定セリ
　　　　　　　　　　　　自身出席者　　渋沢栄一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西園寺公成
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　永田甚七
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　今井友五郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　斎藤純造
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　向井小右衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　林荘三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　加納久宜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　野田久六郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　佐々木勇之助
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小川貞之介
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　市川正之丞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　脇田久三郎
 - 第4巻 p.315 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　田中勘輔
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　深川亮蔵
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小島邦重
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　芝崎確二郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　丸地藤兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大村昇
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大井保造
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　湯浅常慎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鈴木惣次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高橋新平
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大亦興治
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　尾高勝五郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　明田周次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　川崎総輔
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　椙山貞治
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小宮乙次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　石橋繁蔵
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西井理兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　江尻雄二
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　藤井晋作
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　一瀬文次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　本山七郎兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　増田啓造
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　神山東三郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　金井之恭
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　沼間守一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　成沢良作
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　橋元至矣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山辺丈夫
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　川椙義方
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鳥山貞利
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　清水清
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山下寛翁
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　金子豊
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　星野慎吾
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　星野正
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　土屋清太郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　沢太郎左衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　野口橘造
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　穂苅半兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　金子充
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山本清次郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　稲葉正邦
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　横山由清
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢喜作
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　吉田義高
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　村井義寛
　　　　　　　　　　　　　　　合六十人
　　　　　　　　在遠国又ハ病気ヲ以テ名代人ヲ出セシ者
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　五代友厚
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井八郎右衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井三郎助
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三野村利左衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井元之助
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西村虎四郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三井源右衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　井口新三郎
 - 第4巻 p.316 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　浅井友右衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　松本常蔵
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　近藤軌四郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鈴木利平
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　石井与三二郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山中伝兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　木村利右衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　戸田氏共
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鈴木善三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　信太正脩
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　永岡儀兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　木村安宅
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　長井正平
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　長井方敬
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　岡田平太郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日下義雄
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　須藤三郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　今川美佐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　松本覚太郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　橋本欽一郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　真藤敬之助
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　前田利鬯
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　乙骨太郎乙
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　土屋儀右衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　稲西庄兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山口吉郎兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　野田吉兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　熊谷辰太郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　長谷川一彦
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　片山治一郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　岸畑治兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　伊沢常蔵
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　堀江猪輔
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　広瀬宰平
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　竹村強
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　村上嘉兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　堀内信義
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　羽田均
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　仙石政固
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　板倉勝弼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　井関盛艮
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　永見伝三郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　永見寛二
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　松田勝五郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　松田源五郎
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　関戸良平
　　　　　　　　　　　　　　　合五十五人
　　　　　　　　名代人ヲ出サス不参スル者
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　島田八郎左衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鹿島岩吉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　手塚光栄
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高橋美称
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　佐々木宇右衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中村幸之進
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小林秀知
　　　　　　　　　　　　　　　　合七人

 - 第4巻 p.317 -ページ画像 
　　　第一節
右株主及名代人等ハ午后第三時ヲ以テ議席ニ入リ各其位置ニ着列ス、此時頭取渋沢栄一ハ議長ノ席ニ就キ昨年半季間施行シタル営業事務ノ要項ヲ演説シ、又考課状ヲ展読シ、畢テ報告計表ヲ株主一同ノ展閲ニ供シ、而シテ利益金ノ割合ハ頭取取締役等ノ立案スル所ニ異議ナキヤ否ヲ問フ、第百廿一番土屋清太郎ハ第一議ヲ立テ其立案ニ異議ナキコトヲ答フ、衆皆之ニ共同シ即チ利益金割合ハ頭取取締役ノ立案ヲ採用スヘキコトヲ決定ス
　　　第二節
議長ハ衆株主ニ対シテ定例ニ従ヒ新取締役ヲ撰挙スヘキ発言投票アラン事ヲ求メ、且取締役撰挙ノ如キハ旧条例ニ照セハ裁判役ヲ要スヘキモ改正条例ニ依レハ強テ此撰挙ニ先チ裁判役ヲ設クルヲ要セス、而シテ若異論アルトキハ其際裁判役ヲ撰挙スヘキコトヲ演述ス、於玆テ第四十七番金井之恭ハ第一議ヲ立テ、取締役ハ敢テ新任ヲ要セス、宜シク旧員ヲ将テ重年勤仕ニ就カシムヘキト答フ、衆皆第一議ニ共同シ即チ取締役ハ其旧員ヲ将テ重年勤仕ニ就カシムヘキコトニ決定ス
　　　第三節
議長ハ衆株主ニ対シテ本年上半季営業損益ノ予算ヲ演説シ、畢テ前ニ其考案ナキヤヲ問フ、一同相答フルニ其無キコトヲ以テス、於是テ本年上半季予算ハ議長ノ指示スル所ニ決定ス
　　　第四節
右会議畢テ株主一同ハ明治九年七月十六日定式集会及同年八月廿日臨時集会ノ決議書ニ検印ヲ了シ、第六時議席ヲ退出ス
　　明治十年一月七日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一

第一国立銀行半季実際考課状　第七回〔明治九年下期〕
　　　営業事務之事
○中略
一大蔵省ノ命ニヨリ東京・大阪・横浜等出納寮ノ為替金取扱方ニ従事スルコトヲ得タリ、而シテ七月五日出納寮ハ其取扱条項ヲ下達セラレ、爾来該務ニ服従セリ
○中略
一改定国立銀行条例ニ銀行紙幣ノ抵当公債証書ハ年四朱以上利付ノモノタルヘキ条アルニ照ラシ、八月廿六日紙幣寮ニ上申シ、旧条例ヲ以テ上納セシ処ノ紙幣抵当金札引替公債証書ハ旧算九拾万円ヲ以テ之ヲ買収セラレ、而シテ抵当公債証書ハ秩禄公債又ハ新公債等証書ヲ以テ之ヲ納メンコトヲ請ヒ、其廿八日允准セラルヽコトラ得タリ
一前条已ニ允准ヲ得タル其抵当タルヘキ公債証書ノ抵当実価ハ条例ニ照セハ市中売買ノ時相場ヲ以テ差出スヘキニ在リト雖トモ、市価ノ屡高低スルニ随ヒ其煩労少ナカラサルヲ以テ各銀行ト協議ヲ尽シ、抵当価格ヲ定メ之ヲ紙幣寮ニ請フ、九月廿三日新公債証書百円ハ五拾五円秩禄公債証書百円ハ八拾四円ノ率ヲ以テ上納スヘキ事ヲ指令セラル、因テ当銀行ハ其宜ニ従ヒ新公債証書五拾万四千五百五拾円
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秩禄公債証書百九万八千弐百廿五円之ヲ数次ニ上納セリ
一八月二十五日内務省ハ其金銀請払取扱御用ヲ当銀行ニ命セラレ、併セテ其条項ヲ示サレタリ
　右条項中更正増補アツテ十一月十一日、十二月十八日ノ両度ニ之ヲ達セラレタリ、右御用取扱ノ為メ伺候スル手代毎一名ニ一ケ月金八円ヲ御手当トシテ之ヲ下附セラル
一改定国立銀行条例ニ照セハ銀行ノ貸附利足ハ年壱割ヨリ超過スヘカラサルニ在リ、因テ各銀行ト協議ヲ尽シ、通常貸金ノ外第一外国人ニ関スル貸金、第二内国人ニ対スル三ケ月未満日歩割利息ノ貸金、第三三ケ月以上ノ約束ノ分ニ於テ其還償期限ニ怠ル者アレハ別ニ其利息額ノ金員ヲ算シテ怠ル日数ニ応シ違約料トシテ徴収スヘキ約束ヲ為スヘキ等ノ三項ヲ設ケ、九月十二日之ヲ紙幣寮ニ開申シ其施行センコトヲ請フ、同月廿六日指令アツテ独リ其第一項ヲ允准セラレ又第三項ハ国立銀行条例ノ制限スル所ニ非ル旨ヲ指令セラレタリ、囚テ其廿九日第二項ノ為メニ再申ス、而シテ未タ其指令ヲ得サリシ
○中略
一八月廿四日、紙幣寮ヨリ香港在留副領事ノ外務省ニ報知スル外国銀行ノ紙幣ニ贋造ノ品アルコトヲ外務省ノ照会スル所ヲ以テ該紙幣交受ノ際能ク之ニ注意シ、若シ疑フヘキ品アラハ速ニ申報スヘキコトヲ達セラレタリ、因テ此事ヲ各支店ニ報告シ相共ニ注意セリ
○中略
一大阪製紙所ヨリ紙幣寮ニ上納スヘキ地券紙荷為替貸金取扱方ノコトヲ要求ス即チ其手続ヲ承諾シ十二月廿二日其由ヲ紙幣寮ニ開申セリ
○中略
一本年十月熊本県ノ暴動アルニ際シ、当銀行ノ如キハ巨万ノ金額ヲ管保シ、予メ警備ヲ為サヽルヲ得ス、因テ十月三十一日警視庁ニ巡査二名ヲ貸派セラレンコトヲ請願シ、幸ニ允准セラレ爾来日夜非常ニ備フルコトヲ得タリ
一当銀行半季決算ノ方法及ヒ営業体裁等ハ七月中紙幣寮ノ詳細撿査セラルヽニ由テ行務上一般稍精明ニ至ルト雖トモ、猶其寛全《（完）》ナラサルヲ以テ七月七日更ニ諭達セラルヽ者アリ、爾来其精致至善ノ方法ニ従事シ、一層勉励セリ
一明治九年七月ヨリ十二月ニ至ル其間、国債寮ヨリ下附セラルヽ所ノ新銅貨ヲ交換シ、官省札旧銅貨ヲ以テ其代リ金ト為シ、之ヲ上納セシ数ハ即チ九万円ノ額ニ至レリ
一明治九年七月ヨリ十二月ニ至ル其間、当銀行ニ於テ交換セシ所ノ損札ハ、其額合計六万七千円余皆之ヲ紙幣寮ニ上納セリ
一同上旧金銀貨幣ノ如キハ其額合計拾万五千三百拾九円三拾四銭九厘皆之ヲ国債寮ニ上納セリ
○中略
一大阪ノ当支店ニ約定アル該地上等裁判所定額金出納事務取扱ハ六月中満期ニ際シ該官ヨリ更ニ継約ノコトヲ命セラレ、七月廿二日継約ヲ修メ即チ旧ノ如ク手代ヲ伺候シ其事ニ従ハシム
○中略
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一七月廿八日大阪裁判所ヘ従前該地ノ当支店手代裁判所伺候ノ者ノ取扱タリシ該官ニ上納スル所ノ罰金贖罪金罫紙代金等預リノ事務ハ更ニ当支店ニ於テ取扱フヘキコトヲ請願シ、八月七日允准セラレ、其廿五日ヨリ支店ニ於テ其取扱ヲ為セリ
○中略
一大阪裁判所ト該地ノ当支店トノ約束ニ在ル定額金出納並ニ為替取扱等六月満期ニ際シ、該庁ヨリ継約ノコトヲ命セラレ、八月十九日更ニ約束ヲ継キ即チ従前ノ通リ日々手代ヲ伺候シ官金取扱ニ従事セシム
一八月廿九日国債寮ヨリ古金銀貨幣交換代リ金ハ従前新紙幣ノミ下附セラレシカ、自今銀貨新紙幣金札ノ内ヲ以テ下附セラルヘキコトヲ達セラレ、爾来本支店共其達シニ照準シテ交換ノコトヲ取扱来レリ
○中略
一九月廿日紙幣寮ヨリ引換損札ノ充チテ上納スヘキモノ更ニ紛失再出ノ虞アルヲ以テ其廃札印ヲ押捺シ上納スヘキコトヲ達セラレ、後又其印顆ヲ付与セラレタリ、此事大阪ノ当支店ニ於テ施行セリ
○中略
一高知県下有隣会社ヨリ大阪ノ当支店ニ「コルレスポンデンス」ノ約定センコトヲ要求ス、十月六日其約束ヲ修ム
○中略
一内務省ヨリ八月廿五日十一月十一日ノ両度ヲ以テ当本店ニ大阪ノ支店ヲシテ該地司薬場ノ金銀出納ヲ取扱ハシムヘキコトト併セテ条項ヲ下達セラル、因テ本店ヨリ該地支店ニ通報シ条項ニ従テ其事務ノ取扱ヲ為サシム
一愛媛県下興産社ト大阪ノ当支店トノ「コルレスポンデンス」約定ノ満期ニ際シ彼レ其継約ノコトヲ要求ス、十一月十六日副証書ヲ以テ其継約ヲ修ム
○中略
一十二月七日当本店ヨリ駅逓寮ニ該寮出張大阪郵便局ト該地ノ当支店トノ間ニ結約セシ立替金並金種交換ノ条約中第九条ヲ更正センコトヲ稟請シ、同月十四日允准ヲ得タリ、因テ大阪支店ヲシテ該郵便局ニ其事由ヲ申報セシメタリ
○中略
一十二月廿一日国債寮大阪出張所ヘ該地ノ当支店ヨリ古金銀貨幣交換代リ手当ノ為メ金三万円ヲ該庁休暇ノ間仮ニ貸与セラレンコトヲ請願シ、幸ニ允准セラレ、其廿七日金額ニ相当スヘキ抵当品ヲ納メテ該金額ヲ下附セラレタリ
○中略
一内務省衛生局横浜司薬場ヨリ該地ノ当支店ニ其定額出納ノ取扱方ヲ命セラレタリ、因テ十一月十日ヨリ之ニ従事セリ
○下略