デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
1款 第一国立銀行 株式会社第一銀行
■綱文

第4巻 p.562-573(DK040059k) ページ画像

明治32年7月23日(1899年)

経済界ノ反動漸ク改ラントシ、私立銀行トシテノ基礎モ次第ニ鞏固トナリシヲ以テ、是日株主総会ヲ開キ、資本金五拾万円増加ノ件、東京市内ニ新大阪町支店開設ノ件及ビ改正商法実施ニ伴フ定款改正ノ件ヲ議決ス。栄一議長トシテ議事ヲ司宰ス。


■資料

株式会社第一銀行第六期定時総会及臨時総会決議録(明治三二年七月)(DK040059k-0001)
第4巻 p.562-566 ページ画像

株式会社第一銀行第六期定時総会及臨時総会決議録(明治三二年七月)
   第六期定時総会及臨時総会決議録
明治三十二年七月二十三日午後一時ヨリ第六期株主定時総会及株主臨時総会ヲ東京銀行集会所ニ開ク、株主総数千四百八十五名此株数九万株ノ内、出席者百六十九名此株数弐万千参百参株、委任状ヲ以テ代理ヲ委托シタル者六百九十八名此株数四万八千弐百七十九株、合計株主八百六十七名株数六万九千五百八十弐株ナリ
右出席株主ハ午後二時議席ニ就キ、頭取ヨリ本年上半季営業ノ景況、及損益勘定ヲ報告シ、同期貸借対照表、損益計算書、財産目録ハ株主各位ニ配付シタル営業報告書ニ添付シ置キタルニ付、其承認ヲ得タキ旨ヲ告ケ、一同異議ナキ旨ヲ述フ、依テ左ノ如ク利益金分配案ヲ提出シタルニ満場一致原案ノ通可決ス
一金弐拾弐万六千弐百七拾参円六拾参銭
                      当半季純益金
一金八万参千九百四拾参円五拾銭
                      前半季繰越金
合計金参拾壱万弐百拾七円拾参銭
 - 第4巻 p.563 -ページ画像 
 内
 金五万円                 積立金
 金弐拾万弐千五百円            配当金百円ニ付金四円五拾銭即年九分ノ割
 金五万七千七百拾七円拾参銭        後半季繰込金
右終ツテ臨時総会ヲ開ク、議事ニ入ルニ先テ頭取ハ予テ株主各位ニ通知シタル議案第一号増株募集ノ件ノ中、同手続第三条第六条ニ総会当日ノ現在株主云々トアルヲ七月三十一日現在株主云々ト訂正スル旨ヲ告ケ、総会ノ同意ヲ得、其他悉ク原案ノ通可決シ、終リニ予備ノタメニ改正定款ノ主意ヲ変更セサル限リハ字句ノ修正ハ之ヲ取締役ニ一任スルコトヲ決議セリ
右決議シタル条項左ノ如シ
第一号 増株募集ノ件
 当銀行ノ資本金ハ四百五拾万円ノ処今回更ニ五拾万円ヲ増加シ、総資本金額ヲ五百万円トナサントス
 其募集手続左ノ如シ
 第一条 新株一株ノ金額ハ旧株ト同シク金五拾円トシ其総数ヲ一万株トス
 第二条 新株ハ左ノ割合ヲ以テ払込ヲナスヘキモノトス
  第一回払込 壱株ニ付 金拾弐円五拾銭本年九月卅日限
  第二回払込 同 金拾弐円五拾銭卅三年一月卅一日限
  第三回払込 同 金拾弐円五拾銭卅三年四月卅日限
  第四回払込 同 金拾弐円五拾銭卅三年七月卅一日限
 第三条 新株ハ本年七月三十一日ノ現在株主ニ対シ其所有株数九株ニ付一株ノ割合ヲ以テ配当スルモノトス
 第四条 前条ニ依リ配当シタル残余ノ新株ハ、九株ニ満タサル端数株主及其所有株数ヲ九ヲ以テ除シタル後尚端数ヲ余ス株主ニ対シ抽籤ヲ以テ一株宛ヲ配当スヘシ
 第五条 第三条第四条ニ依リ新株ヲ引受ントスルニハ申込証ニ其株数金額ヲ記載シ、記名調印ノ上本年八月三十一日迄ニ当銀行ヘ差出サルヘシ
 第六条 七月三十一日ノ現在株主ニシテ八月三十一日迄ニ申込証ヲ送付セラレサルトキハ、新株ノ引受ヲ望マサルモノト看做ス
 第七条 株金ノ払込ヲ怠リタルトキハ百円ニ付一日金四銭ノ割合ヲ以テ延滞利子ヲ徴収ス
 第八条 引受ナキ株式及第一回ノ払込ヲナサヽル株式ハ取締役連帯シテ之ヲ引受ケ、其払込ヲナスヘキモノトス
  右ノ外新株募集ニ付テノ手続ハ総テ商法ノ規定ニ依ル
第二号 支店出張所開設ノ件
 今回営業上ノ都合ニヨリ支店出張所ヲ左ノ場所ニ開設セントス
  支店  東京市日本橋区新大坂町
  出張所 韓国木浦
第三号 定款改正ノ件
 新商法実施セラレタルニヨリ定款ヲ修正スルノ必要アルヲ以テ別紙ノ通改正セントス
 - 第4巻 p.564 -ページ画像 
別紙 株式会社第一銀行定款
    第一章 総則
第一条 当銀行ハ営業満期国立銀行処分法ニヨリ第一国立銀行ノ営業ヲ継続シ銀行事業ヲ経営スルヲ目的トス
第二条 当銀行ハ株式会社第一銀行ト称ス
第三条 当銀行ノ資本金ハ五百万円トス
第四条 当銀行ハ本店ヲ東京市ニ置キ支店出張所ヲ左ノ場処ニ設置ス
  支店 大坂市
  同   京都市
  同   横浜市
  同   神戸市
  同   新潟市
  同   名古屋市
  同   四日市市
  同   韓国釜山
  同   韓国仁川
  同   東京市新大坂町
  出張所 韓国京城
  同   神戸市兵庫
  同   山城国伏見町
  同   韓国木浦
第五条 当銀行ノ公告ハ所轄登記所ノ公示スル新聞紙ニ掲載スベシ
    第二章 株式
第六条 当銀行ノ株式ハ十万株ニ分チ一株ノ金額ヲ五十円トス
第七条 当銀行ノ株式ハ一株毎ニ株券一通ヲ作ル但其株券ハ記名式トシ無記名式トナスコトヲ得ス
第八条 当銀行ノ株式ヲ売買譲与シタルトキハ名義書換ノ請求書ヲ作リ、株券ヲ添ヘテ当銀行ヘ差出シ、株主名簿ニ登録ヲ請ヒ、且其株券ニ証印ヲ受クヘシ
 前項ノ場合ニ於テハ株券一通毎ニ金五銭ノ手数料ヲ徴収ス
第九条 当銀行ノ株券ヲ損傷紛失又ハ、滅失セシトキハ其事由ヲ明記シ、保証人連署ノ証書ヲ差出シ新株券ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
 但紛失又ハ滅失ノ場合ニ於テハ其旨ヲ公告シ、三ケ月ヲ経テ尚発見セサルトキハ新株券ヲ交付スベシ
 前項ノ場合ニ於テハ株券一通毎ニ金弐拾銭ノ手数料ト公告料トヲ徴収ス
第十条 当銀行ノ株券ハ定時総会前ニ於テ三十日以内相当ノ期間ヲ定メ之ヲ公告シテ其書換ヲ停止ス
    第三章 営業
第十一条 当銀行ノ営業ハ左ノ如シ
 第一 手形ノ売買及取立
 第二 為替及荷為替
 第三 諸預金及貸付
第十二条 当銀行ハ営業ノ都合ニ依リ左ノ事業ヲナスコトアルベシ
 第一 有価証券地金銀ノ売買及両替
 第二 金銀貨貴金属諸証券等ノ保護預
 - 第4巻 p.565 -ページ画像 
 第三 手形及諸証券ノ保証
第十三条 当銀行ハ左ニ記載スル物件ニ限リ之ヲ引取リ之ヲ買取リ之ヲ所有シ又ハ之ヲ売払コトヲ得
 第一 営業上必要ナル地所家屋什器
 第二 債務弁済ノタメ引渡サレタル動産不動産
 第三 質又ハ抵当ニシテ裁判上其他競売トナリタル動産不動産
    第四章 役員
第十四条 総会ニ於テ、百株以上ヲ所有スル株主中ヨリ三名以上ノ取締役及二名以上ノ監査役ヲ選定ス
第十五条 取締役ノ任期ハ三ケ年トシ監査役ノ任期ハ一ケ年トス
 但再選ニ当ルコトヲ得
第十六条 取締役監査役在任中欠員ヲ生スルモ法定ノ数ヲ欠カス、且事務ニ差支ナキトキハ次期ノ総会迄補欠選挙ヲ猶予スルコトヲ得
第十七条 取締役ハ取締役会ノ決議ヲ以テ諸規則ヲ制定シ、支配人以下役員ノ給料ヲ定メ、之ヲ任免黜陟ス
第十八条 取締役ハ互選ヲ以テ頭取一名ヲ選挙ス
 頭取ハ取締役会及株主総会ノ議長ニ任ス、但頭取事故アルトキハ取締役中ノ一名之ニ代ハルコトヲ得
第十九条 取締役ハ其在任中自己所有ノ当銀行株式百株ヲ監査役ニ供託スベシ
    第五章 総会
第二十条 定時総会ハ毎年一月七月ノ両度ニ開キ、臨時総会ハ必要ノ場合ニ之ヲ開ク
第二十一条 総会ニ於テハ予メ株主ニ通知シタル事項ノ外他ノ議事ニ渉ルコトヲ得ス
第二十二条 株主ハ代理人ニ委任シテ議決権ヲ行フコトヲ得、但其代理人ハ当銀行ノ株主ニ限ル
第二十三条 総会ノ決議可否同数ナルトキハ議長之ヲ裁決ス
第二十四条 総会ニ於テ決議シタル事項ハ之ヲ記録シ、取締役監査役署名シテ之ヲ保存ス
    第六章 計算
第二十五条 当銀行ハ毎年六月、十二月ノ終ニ於テ諸勘定ヲ決算シ諸報告ヲ調製ス
第二十六条 当銀行ノ損益計算ハ毎期総益金ヨリ支払利息其他諸経費及損失金等ヲ引去リタルモノヽ内ヨリ百分ノ八ニ当ル金額ヲ役員賞与及ヒ交際費トシテ控除シ、其残額ヲ純益金トナシ、其内ヨリ積立金トシテ百分ノ十以上ヲ引去リ其残額ヲ株主ニ配当スベシ、但計算ノ都合ニヨリ後期ヘ繰越金ヲナスコトヲ得
                    以上
右ノ内取締役監査役ノ報酬ハ廿九年七月十九日臨時総会決議ノ通今後モ頭取年俸四千弐百円取締役監査役ハ各年俸八百円トナスヘキコトヲ告ケ一同異議ナキ旨ヲ述ブ
次ニ頭取ハ現任取締役渋沢栄一、西園寺公成、三井八郎次郎、佐々木勇之助、熊谷辰太郎、五名共任期満了ニ付其改選ヲナスヘキ旨ヲ告ケ
 - 第4巻 p.566 -ページ画像 
タルニ、出席株主中遠藤敬止氏投票ヲ省略シテ取締役五名トモ重任セラレンコトヲ希望スル旨発言シ、満場異議ナク右ノ動議ヲ賛成シタルニ依リ、従前ノ通取締役五名トモ再任スルコトニ決シタリ
渋沢栄一ハ新任取締役一同ニ代リ当選就任ノ承諾ヲナシタル後、自分ト西園寺公成トハ何レモ株式会社東京貯蓄銀行ノ取締役ニシテ、三井八郎次郎ハ合名会社三井銀行ノ社員タルニ付、商法第百七十五条ニ依リ株主総会ノ認許アリタキ旨ヲ告ケ其承認ヲ得タリ
右之通決議スル処相違無之候也
             株式会社第一銀行
                 頭取  渋沢栄一印
                 取締役 西園寺公成印
                 同   三井八郎次郎印


渋沢栄一 日記 明治三二年(DK040059k-0002)
第4巻 p.566 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治三二年
七月廿三日
午後一時銀行集会所ニ於テ第一銀行株主総会ヲ開ク、畢テ帝国ホテルニ抵リ銀行員懇親会ヲ開ク
八月九日
午後第一銀行ニ出勤シテ重役会ヲ開ク申合規則ノ逐条会議ヲ開キテ逐条議了ス


株式会社第一銀行第六期営業報告書 〔明治三二年上期〕(DK040059k-0003)
第4巻 p.566-567 ページ画像

株式会社第一銀行第六期営業報告書 〔明治三二年上期〕
    営業景況
本季ハ劈頭ニ外資輸入ノ事、鉄道国有ノ事等声勢倶ニ騰リ、又台湾銀行、北海道拓殖銀行、農工銀行等ノ施設続々着行セラレ、理財機関ノ作為甚タ繁閙ヲ告ケタルモ、実際商工業ニ於テハ前季以来益衰敞シ、新設事業ヲシテ躊躇セシメ市場行舗ハ概シテ寂寥ニ属シ、昨年上季ト全ク反対ノ観アルモノハ、蓋米価低落ノ為メ農家ノ購需ヲ奪ヒタルニ因ラスムハアラス、左ニ貿遷ノ巨擘タル数貨物ノ状態ト金融ノ概況トヲ摘録シテ全彪ノ一斑ヲ窺フニ便ス
生糸ハ前季ノ残留二万二千余梱ノ多キニ加ヘテ更ニ一万八千余梱ノ入荷アリシガ、通季善ク銷售シ一ケ月多キハ一万五千余梱少ナキモ千数百梱ヲ下ラスシテ合計三万八千七百九十七梱ノ巨額ヲ為シ、昨年上季ヨリ大約三分ノ一ヲ増加シ残留僅ニ千八百梱ニ過ス盛業ト云ヘシ、紡績糸ハ前季以来内外ノ需用衰退シ価格久シク低下ニ居リシガ六月ニ入リ清国ヘノ輸出初テ起色アリ、且綿花ノ騰貴ヲ以テ大ニ気勢ヲ持スルニ至レリ、之ヲ要スルニ全国ノ総計一百余万本ノ紡錘ハ季間無慮三十万余梱ノ製造ヲ為シ甚タ停滞セズシテ銷售シ其半ハ清国ヘ輸出セシト云フ、綿織物ハ紡績糸ノ消長ヲ以テ観察シ去レバ思ヒ半ニ過クルモノアリ、絹織物ハ輸出盛ナレドモ内地ノ需用興起セザルヲ以テ機業甚ダ衰ヘ、或ハ幾分休止スルノ情態アリ、米穀ハ益低価ニ傾キ、各地方一般出穀ニ躊躇シテ市ニ上ルモノ尠ナク、而シテ季末ニ近ツキ尚低下スルノ景況アリ、公債証書ハ一二月ノ交売買極メテ衰ヘ価格モ甚ダ低落セシガ、三月ヨリ四月ニ入リ価格次第ニ進ミ、且此際続々巨額ノ購売
 - 第4巻 p.567 -ページ画像 
起ルヲ以テ五月下旬ハ其極点ニ達シ、六月ニ入リ復タ退却シテ三四月ノ価格ト伯仲セリ、諸株売買ノ形勢ハ浮沈起伏固ヨリ常経ナシトイヘドモ、其市場ノ経過ハ季初ハ平穏ニシテ季中ハ錯乱シ、爾後墜揚屡々変スルノ裡ニ在テ概ネ購買ノ気ヲ持スルモノヽ如シ
金融ハ前季以来緩舒ニ居リ、或ハ一時納租ノ為メ小緊ヲ告ケタルコトアルモ、大勢ハ益閑慢ニ傾キ、制限外発行兌換券ハ早ク既ニ二月ニ於テ収回ヲ了シ、全般利息ノ率ハ一月以来逐次低下シ、季末ニ至ルモ尚回復ノ兆候ナシ
上陳ノ情態ナルヲ以テ銀行ノ営業ハ利息ノ権衡ヲ失シ、則厚ク与ヘテ薄ク収ムルノ不利ヲ喫シ、営業上栄トスル所ノ預金ノ多キハ此際却テ利益ヲ減スルノ一原因ニ算セサルヲ得ス、故ニ本行ノ如キハ本支店利益総計ニ於テ、昨年上季ヨリ百分ノ二十四ヲ減シ、予算ニ対シ百分ノ拾ヲ減シ、功労相償ハサルニ帰決セリ、因テ各店営業ノ諸項ヲ同季ト比較シ其得失ヲ略叙スルコト左ノ如シ ○下略


株式会社第一銀行第七期営業報告書 〔明治三二年下期〕(DK040059k-0004)
第4巻 p.567 ページ画像

株式会社第一銀行第七期営業報告書 〔明治三二年下期〕
    処務要件
○上略
一九月二十六日新大阪町支店ノ開業ヲ為セリ
一九月二十九日ヨリ十月九日迄ニ東京、大阪、京都、横浜、神戸、新潟、名古屋、四日市、伏見各地区裁判所ニ於テ新大阪町支店開設ノ登記ヲ受ケ、其旨十一月三十日ヲ以テ大蔵大臣及東京府知事ヘ開申ス
一当銀行新株第一回払込金拾弐万五千円ハ九月三十日迄ニ払込結了セシヲ以テ、十月二十三日ヨリ十一月一日迄ニ前記ノ各区裁判所ニ於テ資本増加ノ登記ヲ受ケ、十一月三十日ヲ以テ其旨ヲ大蔵大臣及東京府知事ヘ開申ス
一十一月一日当銀行新株券ヲ発行ス
○下略


第四課文書 商工―銀行 〔明治三二年〕(DK040059k-0005)
第4巻 p.567-569 ページ画像

第四課文書 商工―銀行 〔明治三二年〕 (東京府庁所蔵)
   ○本支店所在地、監査役登記届
    進達願
今般銀行条例施行細則第十二条ニ拠リ別紙ノ通リ大蔵大臣届出可申ニ付御進達被成下度此段奉願候也
               株式会社第一銀行
 明治卅二年九月十九日  頭取 渋沢栄一
  東京府知事 男爵 千家尊福殿

今般商法施行法第五十二条ニ依リ別紙ノ通リ本店ノ所在地ニ於テハ支店、支店ノ所在地ニ於テハ本店並ニ他ノ支店、及ヒ広告ヲ為ス方法、並ニ監査役ノ氏名住所ヲ登記致候間此段御届仕リ候也
            東京市日本橋区兜町二番地
               株式会社第一銀行
  明治卅二年九月十九日  頭取 渋沢栄一
 - 第4巻 p.568 -ページ画像 
  東京府知事 男爵 千家尊福殿
    登記事項
本店    東京市日本橋区兜町二番地
大阪支店  大阪市東区高麗橋通参丁目二番地
京都支店  京都市上京区烏丸通姉小路上ル虎屋町八番地
横浜支店  横浜市本町五丁目七十二番地
神戸支店  神戸市栄町通四丁目十五番地邸
新潟支店  新潟市上大川前通八番町十八番地
名古屋支店 名古屋市伝馬町参丁目十三番地
四日市支店 四日市大字浜町九十五番屋敷
釜山支店  韓国釜山本町二丁目六番地
仁川支店  韓国仁川済拝浦本町通拾八号
京城出張所 韓国京城羅洞
兵庫出張所 神戸市兵庫鍛冶屋町五十一番邸
伏見出張所 京都府山城国紀伊郡伏見町字中油掛壱番地
木浦出張所 韓国木浦
公告ノ為之方法 所轄登記所ノ公示スル新聞紙ニ掲載ス
監査役ノ氏名住所
          東京市浅草区北富坂町十九番地
                      須藤時一郎
          東京市京橋区築地二丁目三十七番地
                      日下義雄
    登記ノ年月日
本店    明治三十二年八月拾壱日
大阪支店  明治三十二年八月弐拾壱日
京都支店  明治三十二年八月十八日
横浜支店  明治三十二年八月十九日
神戸支店  明治三十二年八月十七日
新潟支店  明治三十二年八月二十二日
名古屋支店 明治三十二年八月二十八日
四日市支店 明治三十二年八月十九日
伏見出張所 明治三十二年八月弐拾壱日
   ○支店設置・増資・取締役住所変更登記届
    進達願
今般銀行条例施行細則第十二条ニ拠リ別紙の通リ大蔵大臣ヘ届出可申ニ付御進達被成下度此段奉願候也
               株式会社第一銀行
 明治卅二年十一月卅日  頭取 渋沢栄一
  東京府知事 男爵 千家尊福殿

    登記事項届書
                 株式会社第一銀行
今般別紙ノ通リ当銀行本店ニ於テ支店設置資本増加株金払込取締役住所変更ノ登記致候間此段御届仕リ候也
 - 第4巻 p.569 -ページ画像 
          東京市日本橋区兜町弐番地
               株式会社第一銀行
  明治参拾弐年十一月四日  頭取 渋沢栄一
   東京府知事 男爵 千家尊福殿

    登記事項及登記年月日
一支店設置
   支店設置ノ場所 東京市日本橋区新大阪町拾番地
   登記 明治参拾弐年九月弐拾九日
一資本増加
   資本増加ノ金額 金五拾万円
   決議ノ年月日  明治参拾弐年七月弐拾参日
   各株ニ付払込之各金額 金拾弐円五拾銭
   登記      明治卅二年十月廿三日
一取締役熊谷辰太郎住所変更
   変更シタル新住所 神戸市栄町四丁目拾五番邸
   登記変更シタル年月日 明治参拾弐年拾壱月拾壱日
    登記ノ年月日
                   支店ハ本店ヨリ可届出候

図表を画像で表示--

        支店設置           資本増加           住所変更 本店     明治参拾弐年九月弐拾九日   明治参拾弐年拾月弐拾参日   明治参拾弐年拾壱月拾壱日 大阪支店   明治参拾弐年拾月六日     明治参拾弐年拾壱月壱日    明治参拾弐年拾壱月拾四日 京都支店   明治参拾弐年拾月四日     明治参拾弐年拾月弐拾七日   明治参拾弐年拾壱月拾四日 横浜支店   明治参拾弐年拾月四日     明治参拾弐年拾月弐拾四日   明治参拾弐年拾壱月拾参日 神戸支店   明治参拾弐年拾月参日     明治参拾弐年拾月弐拾参日   明治参拾弐年拾壱月拾六日 新潟支店   明治参拾弐年拾月六日     明治参拾弐年拾月弐拾八日   明治参拾弐年拾壱月拾四日 名古屋支店  明治参拾弐年拾月四日     明治参拾弐年拾月弐拾四日   明治参拾弐年拾壱月拾参日 四日市支店  明治参拾弐年拾月九日     明治参拾弐年拾月弐拾参日   明治参拾弐年拾壱月拾参日 伏見出張所  明治参拾弐年拾月九日     明治参拾弐年拾月弐拾七日   明治参拾弐年拾壱月拾七日 




第一銀行五十年史稿 巻五・第二―八頁(DK040059k-0006)
第4巻 p.569-570 ページ画像

第一銀行五十年史稿 巻五・第二―八頁
    支店出張所の改廃
本行が商業銀行として大に金融の疏通を図らんとするについては、商業繁栄の地を選びて支店を設立するの必要あり、よりて前年開設せる伏見・兵庫の両出張所を完備して、伏見出張所は三十一年八月廿六日より、兵庫出張所は同年九月一日より、並に独立経営に移り、大に其営業を拡張せしが、三十二年九月二十六日、東京市内に新大坂町支店を開きたり、これ市内支店の嚆矢にして、蓋し倫敦銀行が市内各所に支店を設けて預金を吸集し、貸出も之に伴ひて好成績を収めたるに倣へるなり。尋で三十三年九月一日には長岡出張所を設け、三十五年二月十日には大阪市西区支店を、三十八年七月一日には下関支店をも開き、以て各地方の取引を便にせり、然れども又後進銀行の発達して、業務譲渡に差支なき地方には、支店を廃止せるもありき、仙台秋田の両支店は、二十九年五月総会の決議により、営業満期当日なる同年九
 - 第4巻 p.570 -ページ画像 
月二十五日を以て之を廃止し、此に東北の各支店は全部引揚げを了したり、三十八年五月二十日に至りて、又新潟支店と長岡出張所とを廃したり、かくて東北及び北陸地方の金融をば都て之を地方銀行に委任し、今や東京・横浜・名古屋・四日市・京都・大阪・伏見・兵庫・神戸・下ノ関の各地に支店出張所を設けて、商業都市の金融に力を展べんとす。
○中略
    経済界の不振
経済界に於ける反動の状勢は明治三十年に入りて益甚しく、公債株券は次第に下落し、諸会社の解散するもの相踵ぐ、為に銀行業者の受けたる打撃尋常ならず、剰へ上海に於ける金融の逼迫は、対清貿易の杜絶となり、支那を顧客とする紡績業者の困難名状すべからざるものあり、此に於て銀行業者は一般に手形の割引を嫌ひ、甚しきは拒絶するに至れり、此の形勢は三十一年となりてもなほ改まらず、各銀行皆警戒を加へたれば、金融の渋滞愈甚し、よりて政府は日本銀行に命じ清国償金を運用して公債三千七百万円を買上げしめ、又五百万円を限りて勧業債券を政府に引受くるなど、資金を市場に放下することに力めたれば、同年下半季に至り物価漸く下落に傾き、全国農作の見込立つに及びては金融自ら緩和し、銀行もまた次第に其警戒を解けり。然るに三十二年五月一億円の外債成立するや、正貨流入の結果、兌換券膨脹して金利の低下を誘導せしかば、玆に再び株式の昂騰投機熱の勃興を引起したるに、同年十月南阿戦争の起るに及びて形勢又劇変せり。
蓋し南阿は英国に対する金塊の供給地なりしに、開戦の為に金の輸入の杜絶せるのみならず、戦費多端にして英国の金利昂騰し、欧米諸国皆其影響を蒙りたれば、東洋諸国独り超然たることを得ず、我が日本銀行も頻りに金利を引上げて正貨の保留に努力せり、斯くて一般銀行の警戒となり、株式の下落となり、市況の沈衰となりしが、三十三年に及び、兌換券の増発に基く物価騰貴は貿易の逆勢を助け、且清国に団匪の乱起りて、同国への輸出杜絶せるを以て、商工業は不振に陥り銀行の警戒また其の極に達し、遂に三十四年の恐慌に馴致せり。
    営業の発展と本店改築並びに増資
本行は斯かる経済界不振の際にも施設を誤らず、能く形勢に順応して着々改善の実を挙げたれば、二十九年下半季には年八分、三十年上半季よりは常に年九分の利益配当をなし、又東京日本橋新大坂町支店・長岡出張所等を開きて営業を拡張したるのみならず、三十一年一月の総会には本店改築の議を決し、其製図設計を工学博士辰野金吾に、工事監督を工学士新家孝正に託して工を起すと共に、同年二月兜町二番地なる仮営業所に移転せり、かくて三十二年七月には資本金五十万円を増加して総額五百万円となすなど著しき進境を示したり。 ○下略



〔参考〕株式会社第一銀行株主臨時総会決議録〔明治三二年一〇月〕(DK040059k-0007)
第4巻 p.570-571 ページ画像

株式会社第一銀行株主臨時総会決議録〔明治三二年一〇月〕
    株主臨時総会決議録
明治三十二年十月二十三日午後一時ヨリ株主臨時総会ヲ東京銀行集会
 - 第4巻 p.571 -ページ画像 
所ニ開ク、新株主総数千二百五十一名、出席人員六十八名、委任状ヲ以テ代理ヲ委托シタル者八名、合計七十六名ナリ
右出席株主ハ午後二時議席ニ就キ、頭取渋沢栄一ヨリ別紙ノ通明治三十二年七月二十三日株主臨時総会ニ於テ決議シタル新株募集ニ関スル事項ヲ報告シ、監査役須藤時一郎ハ右報告ノ通相違無之旨ヲ述ヘ、出席株主一同異議ナク承認セリ
(別紙)
    新株募集ニ関スル報告
本年七月廿三日株主臨時総会ノ決議ニ従ヒ新株募集ノ手続ヲ為シタルニ、新株総数壱万株ノ内募集手続第三条ニ依リ、本年七月三十一日現在ノ株主総数千四百九拾名ノ内、九株以上ノ株主千百四拾六名ニ対シ其所有株数九株ニ付壱株ノ割合ヲ以テ割当タル株数九千四百八拾九株ヲ除キ、残余ノ新株五百拾壱株ハ同第四条ニ依リ九株ニ満タサル端数株主ニ対シ、八月五日取締役監査役立合ノ上抽籤ヲナシ壱株宛ヲ割当テ同日其旨ヲ株主ヘ通知セリ
右ノ手続ニ依リ新株ノ割当ヲ受ケタル株主ハ都合千弐百六拾八名ニシテ、其中株式申込証ヲ送付セラレタルモノ千弐百五拾壱名、此株数九千九百四拾五株、残余ノ拾七名此株数五拾五株ハ申込証ヲ送付セラレサルニ付、募集手続第六条ニ依リ新株ノ引受ヲ望マレサリシモノト看做シ、同第八条ニ依リ取締役ニ於テ之ヲ引受ケタリ、右之新株ハ募集手続第二条ニ依リ九月三十日限壱株ニ付金拾弐円五拾銭宛ノ割合ヲ以テ第壱回ノ払込ヲ為スベク、若シ同日迄ニ払込ヲ為サヽルトキハ第八条ニ依リ権利ヲ失フヘキ旨九月十五日ヲ以テ通知ヲ発シタルニ、同月三十日ニ至リ悉皆其払込ヲ結了シタリ
右之通第一回ノ払込手続完了シタルニ付、商法第二百十三条ノ規定ニ依リ、株主臨時総会ヲ招集シテ玆ニ其旨ヲ報告ス
  明治三十二年十月二十二日《(三)》
                株式会社第一銀行
                  頭取  渋沢栄一
                  取締役 西園寺公成
                  同   三井八郎次郎
                  同   佐々木勇之助
                  同   熊谷辰太郎
前書新株第一回払込ノ手続ハ商法第二百十四条ノ規定ニ依リ調査ヲ遂ケタル処相違無之候ニ付玆ニ証明致候也
                  監査役 須藤時一郎
                  同   日下義雄


〔参考〕株式会社第一銀行第七期定時総会決議録〔明治三二年一月〕(DK040059k-0008)
第4巻 p.571-572 ページ画像

株式会社第一銀行第七期定時総会決議録〔明治三二年一月〕
    第七期定時総会決議録
明治三十三年一月廿一日午後一時ヨリ第七期定時総会ヲ東京銀行集会所ニ開ク、株主総数千五百六名此株数十万株ノ内、出席者八十八名此株数壱万五千六百三十株、委任状ヲ以テ代理ヲ委托シタル者二十名此株数千八百六十株、合計株主百八名株数壱万七千四百九拾株ナリ
 - 第4巻 p.572 -ページ画像 
右出席株主ハ午後二時議席ニ就キ、頭取渋沢栄一病気欠席ノ為メ取締役佐々木勇之助之ニ代リ、昨年下半季営業ノ景況、及損益勘定ヲ報告シ、同期貸借対照表、損益計算書、財産目録ハ株主各位ニ配付シタル営業報告書ニ添付シ置キタルニ付其承認ヲ得タキ旨ヲ告ケ、一同異議ナキ旨ヲ述フ、依テ左ノ如ク利益金分配案ヲ提出シタルニ満場一致原案ノ通可決ス
    利益金分配
一金弐拾五万七千九百七十七円九十銭 当半季鈍益金《(純)》
一金五万七千七百拾七円拾参銭 前半季繰越金
 合計金参拾壱万五千六百九拾五円参銭
  内
  金五万円 積立金
  金弐拾万弐千五百円 旧株配当金一株ニ付金壱円廿五銭即年九分ノ割
  金弐千八百円 新株配当金一株ニ付金弐拾八銭即年九分ノ割
  金六万参百九拾五円参銭 後半季繰込金
右之通決議スル処相違無之候也
  明治三十三年一月廿二日
               株式会社第一銀行
                 頭取  渋沢栄一
                 取締役 西園寺公成
                 同   三井八郎次郎
                 同   佐々木勇之助
                 同   熊谷辰太郎
                 監査役 須藤時一郎
                 同   日下義雄


〔参考〕渋沢栄一 日記 明治三三年(DK040059k-0009)
第4巻 p.572 ページ画像

渋沢栄一 日記 明治三三年
一月二十一日
此日ハ第一銀行株主総会ノ当日ナルモ病ノ為メ出席スルヲ得ス因テ書ヲ以テ之ヲ謝絶ス終中褥中ニ在テ静養ス
一月二十九日
午前十時第一銀行ニ抵リ臨時重役会ヲ開キ行員増給ノコト及賞与金分配ノコトヲ決ス
三月二十日
五時○午後第一銀行ニ抵リ要務ヲ談ス清水泰吉氏ヨリ大阪ニ開キタル関西支店会の景況報告ヲ聞ク


〔参考〕株式会社第一銀行第七期営業報告書 〔明治三二年下期〕(DK040059k-0010)
第4巻 p.572-573 ページ画像

株式会社第一銀行第七期営業報告書 〔明治三二年下期〕
    営業景況
本季間ニ於ケル金融ハ前季ヨリ引続キ緩慢ナリシ為メニ、諸会社株金ノ払込若クハ公債社債ノ募集ヲナスモノ多ク、又物価ノ騰貴シタルニ因リ、内国ノ商工業ハ一般ニ活気ヲ帯ヒ、貨物能ク集散シ、外国貿易ハ連月累進ノ勢ヲ呈シ、当半季輸出入ノ総額大約二億五千四百万円ニ上レリ、翻テ外国ノ情勢ヲ顧ルニ南阿事件一度破綻セシヨリ英国ハ戦
 - 第4巻 p.573 -ページ画像 
費供給ノ為メニ金融必迫ヲ来タシ、英蘭銀行ハ金利ヲ引上ケテ正貨ノ流出ヲ予防シ、其他ノ諸国モ亦競フテ金貨ノ吸収ヲ力メタルニヨリ、其余勢延テ我国ニ波及シ、十一月以降日本銀行ハ三回迄金利ヲ引上ケテ之レヲ警戒スルノ不得已ニ至レリ、当時恰カモ出穀ノ季節ト年末ニ際シタルカ為メニ金融非常ノ繁忙ヲ来タシ、通貨ノ需要ハ之レヲ抑制スルコト能ハス、遂ニ制限外兌換券弐千万円余ノ発行ヲ見ルニ至レリ今重要ナル貨物ノ集散及金融ノ景況ヲ叙シ、以テ本支店営業ノ概要ヲ示サントス
生糸ハ欧米トモニ非常ノ好景気ニシテ横浜ニ入荷シタルモノハ続々輸出セラレ、本季間ノ入荷個数拾万六百余梱ニシテ、前期ノ繰越ヲ合算スレハ拾万二千百余梱ノ多キニ達シ、其内八万八千九百余梱ヲ售売シテ、残留僅カニ壱万参千百余梱ニ過キス、加之羽二重其他輪出向絹織物ノ好況ナリシ為メ、内地ニ於ケル需要モ亦頗ル多ク、随テ其価格モ亦騰貴シテ、九百円台ヨリ上リテ千弐参百円台ノ高価ヲ唱フルニ至レリ、又米穀ハ諸物価ノ騰貴セルニ拘ラス前季以来引続キ低価ナリシカ本年ノ作柄ハ昨年ニ比シ一割以上減収ノ予想ナリシヲ以テ、十月中旬以後価格大ニ騰貴シ、之レカ為メニ産地ノ米穀続々市場ニ回送セラレ韓国ヨリモ亦多額ノ産米ヲ輸入スルニ至レリ、紡績綿糸ハ支那地方ヘノ輸出増加スルト共ニ内地ニ於ケル綿ネル木綿等ノ商況恢復シ、内外ノ市況ヲ一変シタルヲ以テ頓ニ活気ヲ呈シ、原棉ノ騰貴シタルニ連レ意外ノ高価ヲ持続シテ本季ヲ終ルヲ得タリ、又公債株券ハ季初金融ノ緩慢ナルニ従ヒ其相場ハ漸次上進セシカ、十一月ニ入リ金利暴騰ノ為メニ形勢俄ニ一変シ、意外ノ低下ヲ見ルニ至リタレトモ、其後少シク回復シテ本季ヲ経過セリ
前述ノ如ク生糸貿易ノ好況ナリシト米価ノ騰貴シタルトニヨリ、地方ノ購買力ヲ増進シ、一般ノ商工業ハ繁盛ヲ極メタルカ如キモ、銀行事業ニ至リテハ日本銀行ノ保証準備兌換券ノ制限額拡張セラレタルト、外債壱千万磅ノ募集成リタルトニ因リ、前季ニ引続キ金融益緩慢ヲ告ケ、七月ニ入リテ日本銀行ハ更ニ金利一厘方ヲ引下ケ、一般ノ銀行モ放資ノ途ナキニ苦シミ、稍々之ト同利率ヲ以テ取引ヲナスモノアルニ至レリ、然ルニ十月以降回米ノ季節ニ際シ稍資金ノ需用ヲ生シ、十一月以降俄然非常ノ繁忙ヲ来タシ金利モ亦随テ騰貴セシト云ヘトモ、其間僅カニ四十余日ニ過キサルヲ以テ充分ナル利益ヲ収ムルコト能ハサリキ、当銀行ハ此商況ノ中ニ在テ常ニ資金ノ操縦ニ注意シ営業ヲナスヲ以テ、此急劇ナル変化ニ遭遇スルモ聊カモ困難ヲ感スルコトナク、営業ノ諸項中預金及手形割引等ハ別表ノ如ク増進シ、本支店相応シテ商工業者ノ利便ヲ計リ、二十八万余円ノ収益ヲ見ルニ至レルハ亦以テ相当ノ結果ト云フヲ得ヘシ、即チ当季ニ於ケル営業諸項ノ増減並ニ利足ノ割合ハ左ノ如シ ○下略