デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
6款 択善会・東京銀行集会所
■綱文

第6巻 p.358-361(DK060098k) ページ画像

明治27年5月15日(1894年)

是ヨリ先、銀行支店支配人訴訟能力有無ノ件、送金手形公示催告及除権判決申請ノ件ニ付キ屡々協議ス。是日右ニ付テハ調査委員ヲ設ケ之ニ托スベキコトヲ決議ス。後支店支配人ニ交付スベキ委任状書式一定セラレタリ。


■資料

集会録事 自明治二十六年一月(DK060098k-0001)
第6巻 p.358-361 ページ画像

集会録事 自明治二十六年一月   (東京銀行集会所所蔵)
    ○第百四十回定式集会録事 ○明治二七年二月一五日
次ニ銀行支店支配人訴訟能力有無ノ件ヲ提出シ、而シテ其理由ハ佐々
 - 第6巻 p.359 -ページ画像 
木勇之助氏ヨリ陳弁セリ、其略ニ云ク本件ハ曾テ大蔵省ヨリ第一国立銀行ヘ諮問セラレタルモノナリシカ、其関係頗ル重大ニシテ、且疑義アルヲ以テ去月十五日委員会ヲ開キ、岡村顧問ニ質義シタリシカ、同博士ノ意見ハ別紙ノ通ニシテ、要之支店支配人ニハ訴訟能力ナシト云フニアリ、然レトモ訴訟ノ時機ヲ失シ、不慮ノ損害ヲ来スノ恐アルヘケレハ、予テ頭取ヨリ訴訟代理人ヲ選任スルノ権限ヲ明示セル所ノ委任状ヲ支配人ニ交付シ置カハ、右等ノ場合ニ際シ時機ヲ誤ルノ虞ナカルヘケレハ、結局之ニ拠ルノ外アラサルヘシトノ事ナリシ、然ルニ其後静岡第三十五国立銀行東京支店支配人ヨリ曾テ某氏ニ対シ、東京扣訴院ニ訴訟ヲ提起シタルニ被扣訴代理人ハ、扣訴銀行東京支店ハ法人ニアラサルヲ以テ訴訟能力ナシト抗弁シタルモ、同院ハ審理ノ末支店ハ本店ノ一部ナルヲ以テ本店タル銀行カ法人タル以上ハ、其支店ノ業務上ヨリ生スル事件ニ関シテハ、支店支配人ハ銀行ヲ代表シテ訴訟ヲ提起シ得ルハ当然ナリト判決シタルヲ以テ、又一層ノ疑団ヲ増セリ、抑本件ハ独リ銀行ニ限ラス、一般商事会社ノ支店支配人モ亦同様ノコトタルヲ以テ当時開設中ナル東京商業会議所法典研究会ニモ謀リ、且ツ同会ノ法律家並ニ弊行所属ノ法学士等ニ就キ其意見ヲ叩キタルニ、其帰着スル所本店頭取ヨリ予テ概括的委任状ヲ其支店支配人ニ交付シ置ケハ差支ナシト云ニアリ、然レトモ本件ハ頗ル重要ノ問題ナレハ軽忽ニ断定スヘキモノニアラス、尚高等ノ法学士ニ就キ其意見ヲ叩キタル方可然トハ渋沢氏ノ意見ナレトモ、本日諸君ノ協議ニヨリ之ヲ定メンコトヲ希望スト述ヘシニ皆之ニ同意セリ、又本件ニ付横浜正金銀行海外支店支配人ノ任命又ハ交迭ヲ行フ場合ノ例ヲ聞クニ、独リ訴訟能力ノミニ限ラス支店支配人業務上諸般ノ権限ヲモ悉ク規定シアリト云ヘハ、我国内ニ於テモ早晩此ノ如キ規定ヲ設ケサルヘカラサルヘケレハ、是等ノ目的ヲ以テ調査スヘシトノ議アリ、而シテ其取調ハ総テ委員ニ一任スヘキコトニ決定セシカ、目下渋沢氏旅行中ニ付同氏帰京ノ上評議スヘキコトトセリ
次ニ佐々木勇之助氏ハ昨年六月盛岡第一国立銀行支店ヨリ東京本店宛送金手形ヲ紛失シタル者アリテ直ニ受取人ヨリ民事訴訟法公示催告手続ニ依リ京橋区裁判所ニ之カ届出ヲナシ、本年一月二十日ハ恰モ其期限ニ相当スルヲ以テ、同法第七百八十四条ニ拠リ申立人ヨリ除権判決ヲ請求セシニ、同裁判所ハ送金手形ハ判決ヲ与フヘキ限ニアラストシテ之ヲ却下セリ、蓋シ送金手形ノ性質ヲ解セサルニ由ルナルヘシト雖除権判決ハ決シテ為替手形、当坐小切手ニ限ルヘキモノニアラスシテ証書ノ如キモ亦同様ナリ、況ンヤ送金手形ノ如キハ純然タル無記名式手形ニシテ、殆ント為替手形ト同一ノモノナレハ之カ判決ヲ与ヘサルノ理由アラサレトモ、既ニ京橋区裁判所之ヲ却下セシ上ハ、是等モ共ニ研究セラレンコトヲ望ムト述ヘシニ、皆同意ヲ告ケ本案モ併セテ審案講究スヘキ事ニ決シ、同七時閉会晩餐ノ後退散セリ
      当日出席員
         第一国立銀行   佐々木勇之助 ○外二八名氏名略
    ○第百四十一回定式集会録事 ○明治二七年三月一五日
次ニ前会ノ評議ニ係ル銀行支店支配人訴訟能力有無ノ件ハ、前ニ岡村
 - 第6巻 p.360 -ページ画像 
博士ニ意見ヲ叩キタルコトアリシカ、其後東京控訴院ニ於テ支店支配人ニ訴訟能力アリト判決シ、且送金手形公示催告及除権判決申請ノ件モ、甲ハ之ヲ受理シ、乙ハ之ヲ拒却シ、各裁判所ノ取扱一定ナラサルニヨリ、大ニ疑団ヲ生スルノミナラス事実上支障少ナカラサルカ故ニ右二件ヲ併セ梅法学博士外一二名士ニ就キ今一層審究スヘキ決議ナルヲ以テ、其外一二名ナル者ヲ撰評セシニ、菊地博士ヲ望ム者多数ナルヲ以テ則チ梅、菊地両氏ニ嘱托スヘキ事ニ議決セリ、而シテ渋沢委員長ハ之ニ注意シテ曰ク、本件ハ独リ我同盟銀行ニ止マラスシテ、一般ノ標準トモナルヘキモノナレハ、最モ慎重ヲ要スルヲ以テ一方ニハ司法大臣ニ具状シ、同大臣ノ紹介ヲ得テ法曹会ヘ諮問シ、其審議ヲ請フ者ハ如何ト、乃チ皆之ニ同意ヲ表シ、渋沢氏ヲ同盟銀行総代トシテ司法大臣ニ依頼スヘキコトニ決定シ同七時閉会晩餐ノ後退会セリ
(別紙)  当日出席人名
         第一国立銀行 渋沢栄一○外二四名氏名略
    ○第百四十二回定式集会録事
                栄一印 (印)
明治二十七年五月十五日同盟銀行第百四十二回定式会議ヲ開キ、来会スルモノ渋沢委員長首メ総テ二十九名ナリ
渋沢委員長ハ会長席ニ着キ、会議ニ先タチ第五国立銀行取締役武宮俊雄氏今回ヨリ会員トシテ出席セラレタル旨ヲ報道セリ
次ニ前会ノ協議ニ係ル支店支配人訴訟能力並ニ送金手形公示催告及除権判決ノ件ハ、其後菊地、梅両法学博士ヨリ答案ヲ送付セラレシニヨリ去ル四日委員会ニ於テ協議セシカ、各法学博士ノ意見一様ナラサルヲ以テ、委員会ニ於テハ孰レノ説ニ拠ルヘキヤヲ定ムルコト能ハサリシ故ニ各法学博士ノ意見書写ヲ各位ニ送付シ置タレハ其適従スル処ヲ協議アリタシ
爰ニ於テ各自交々其意見ヲ述ヘ、実際取扱上ニ付種々討議セシカ、要之両件共梅博士ノ意見妥当ナルヘシトノ説ニ帰着シ、就テハ本店頭取ヨリ支店支配人ニ交付スヘキ委任状文案等、各行ノ取扱区々ナラサル様一様ノ書式ヲ定メン為メ、調査委員ヲ設ケ之ニ托スヘキコトニ決シ会長ノ指名ヲ以テ左ノ諸氏ヲ調査委員ニ選定セリ
  佐々木慎思郎  池田謙三
  佐々木勇之助  三輪信次郎
  三村君平    山川勇木
  上柳清助
    ○第百四十三回定式集会録事
明治二十七年七月十六日午後五時ヨリ同盟銀行第百四十三回定式会議ヲ開キ来会シタルモノ総テ二十三名ナリ
本日渋沢委員長欠席ニ付、山中隣之助氏会長席ニ着キ、兼テ調査委員ニ付托シタル支店支配人委任状並送金手形公示催告ノ件ヲ報告シテ左ノ通決定セリ
一支店支配人委任状書式ハ調査委員ニ於テ協議ノ上、梅法学博士ノ意見ヲ叩キ別紙ノ通協議一決シタル旨報告アリシ趣ヲ報道シ、一同ノ意見ヲ問ヒシニ原案ニ異議ナキ事ニ決定セリ
 - 第6巻 p.361 -ページ画像 
又送金手形公示催告ノ件モ調査委員ニ於テ討議スル処アリシカ、現ニ東京府下ノ如ク之ヲ受理セサル以上ハ已ヲ得ス総テ従前取扱ノ如ク新聞広告ヲ以テシ、又地方ニヨリ差支ナク受理スル裁判所ノ管下ニアルモノハ当然其手続ニ従フヘキコトトスルノ外途ナカルヘシトノ意見ヲ報告シタルニ、是又異議ナク原案ニ決定セリ
次ニ本年上半季当銀行集会所経費決算ヲ報告シ尋テ下半季経費予算ヲ協議シ異議ナク原案ニ可決セリ
次ニ今回朝鮮事件ノ為メ当市商工業ニ及ホス実況、農商務省ヨリ東京商業会議所ヘ諮問アリシ趣ヲ以テ、同会議所ヨリ当集会所ヘ金融上ニ及ホス影響調査ヲ照会アリシ趣ヲ告ケ、調査ノ順序ヲ協議セシニ、未タ朝鮮事件ノ成行ヲモ予知スル能ハサレハ、其影響ノ如キハ漠然トシテ調査ノ途ナケレハ此旨趣ヲ以テ同会議所ヘ回答スヘキコトニ議決シ同七時下閉会晩餐ノ後退散セリ
        当日出席員 ○出席者氏名ノ記入ナシ
 (別紙)  委任状
何々銀行頭取何某ハ取締役会ノ決議ヲ以テ何々支店支配人何某ヲ本行ノ代理人ト定メ左ノ権限ヲ委任ス
一本行何地支店ニ於ケル預リ金、貸付金、為替、荷為替、手形割引等銀行一般ノ営業事務ハ総テ之ヲ処理スルコト
一右支店ノ営業上必要ト認ムルトキハ有抵当又ハ無抵当ニテ金員ヲ借入レ、地所、家屋其他ノ物件ヲ買入レ、借入レ又ハ売払ヒ其他諸般ノ約定ヲ為スコト
一右支店ノ営業上公正証書ノ作成又ハ登記ノ出願ヲ要スルトキハ自身ニテ又ハ相当ノ代人ヲ選ヒテ其取扱ヲ為スコト
一右支店ノ営業上ニ係ル訴訟事件ニ就テハ本行ヲ代表シ自身ニテ又ハ訴訟代理人ヲ選ヒテ其取扱ヲ為スコト
右ノ権限ヲ委任シタル証トシテ銀行ノ社印ヲ鈐シ署名調印致シ候也
                何々銀行頭取
  明治 年 月 日            何某印