デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.9.1

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
6款 択善会・東京銀行集会所
■綱文

第7巻 p.65-70(DK070008k) ページ画像

明治40年12月24日(1907年)

東京銀行集会所同盟銀行有志ハ韓国特派大使一行、
 - 第7巻 p.66 -ページ画像 
同皇太子殿下随員一行ヲ銀行倶楽部ニ招待シテ午餐会ヲ開催ス。栄一出席シ主人側ヲ代表シテ一場ノ挨拶ヲナス。


■資料

銀行通信録 第四五巻第二六七号・第六三―六四頁〔明治四一年一月一五日〕 韓国特派大使招待会(DK070008k-0001)
第7巻 p.66-67 ページ画像

銀行通信録  第四五巻第二六七号・第六三―六四頁〔明治四一年一月一五日〕
    ○韓国特派大使招待会
京浜銀行者有志三十余名は十二月○明治四〇年二十四日正午、目下渡来中の韓国特派大使一行、同皇太子殿下随員一行及目下帰朝中の伊藤統監一行を銀行倶楽部に招待して午餐会を開きたり、当日の来賓及主人側氏名左の如し
    来賓
  韓国特派大使李載冕完興君
   永宜君     李俊塎   奎章閣提学  趙漢国
   承賓府侍従   季恒九          李達鎔
   学部事務官   上村正巳
  皇太子殿下随員
   宮内府大臣   李允用   農商工部大臣 宋秉畯
   陪従武官長   趙東潤   奎章閣祗侯官 厳柱益
   東宮大夫   ○高羲敬   表勲院書記官 鄭東植
   陪従武官   ○金応善   宮内府秘書官 尹世鏽
   東宮侍従   ○厳柱目
  統監 ○伊藤公爵
   統監附武官   村田少将         高崎男爵
   統監府秘書官 ○古谷久綱  統監府書記官 国府象太郎
   統監府技師  ○小山善
  本邦接待員
   枢密顧問官   岩倉公爵  官中顧問官  長崎省吾
   式部官     小笠原伯爵 陸軍騎兵少佐 渡辺為太郎
   海軍少佐    田中治平  宮内書記官 ○栗原広太
   式部官     酒井清三郎
  其他陪賓
   官内大臣     ○田中伯爵 宮内次官      花房子爵
   大蔵大臣      阪谷男爵 大蔵次官     ○水町裟袈六
   農商務大臣     松岡康毅 農商務次官     久米金弥
   日本銀行総裁   ○松尾男爵 日本銀行副総裁  ○高橋男爵
   日本興業銀行総裁  添田寿一 日本興業銀行副総裁 佃一予
   日本勧業銀行総裁 ○高橋新吉 日本勧業銀行副総裁 志村源太郎
     ○印は差支欠席
    主人側
   井上準之助(日本銀行)    池田謙三(第百銀行)
   池田成彬(三井銀行)     今村繁三(今村銀行)
   原六郎(正金銀行)      早川千吉郎(三井銀行)
   波多野承五郎(三井銀行)   豊川良平(三菱銀行)
   小田切万寿之助(正金銀行)  加納友之介(住友支店)
   吉井友兄(日本銀行)     中井新右門(中井銀行)
   成瀬正恭(十五銀行)     村井吉兵衛(村井銀行)
   村井貞之助(村井銀行)    山口宗義(日本銀行)
   松方巌(十五銀行)      松尾吉士(正金支店)
   安藤浩(川崎銀行)      佐々木勇之助(第一銀行)
 - 第7巻 p.67 -ページ画像 
   佐々木慎思郎(二十銀行)   左右田金作(左右田銀行)
   三村君平(三菱銀行)   男爵渋沢栄一(第一銀行)
   清水乕吉(第三銀行)     清水宜輝(丁酉銀行)
   首藤諒(日本銀行)
当日門前には日韓両国の国旗を交叉し、且近衛軍楽隊を招聘して歓興を助けたり、斯くて午後零時三十分一同食卓に着き宴酣なる頃渋沢男爵起て瀏朗たる韓国正歌の奏と共に同国皇帝の万歳を三唱し、次で韓国特派大使は「君が代」の奏楽と共に日本天皇陛下の万歳を三唱し、一旦席に復したる後渋沢男爵更に起て主人側を代表して一場の挨拶を述べ、之に対して特派大使の答辞あり、学部事務官上村正巳氏各之を通訳し、最後に宋農商工部大臣日本語を以て一場の演説を為し、夫より別室に移り或は談話に耽り或は揮毫を為す等一同歓を罄して午後三時散会せり


銀行通信録 第四五巻第二六八号・第二〇九―二一二頁〔明治四一年二月一五日〕 韓国特派大使招待会演説(明治四十年十二月二十四日)(DK070008k-0002)
第7巻 p.67-70 ページ画像

銀行通信録  第四五巻第二六八号・第二〇九―二一二頁〔明治四一年二月一五日〕
  ○韓国特派大使招待会演説(明治四十年十二月二十四日)
    ○渋沢男爵の挨拶
殿下、閣下、諸君、今日は当銀行集会所の同業者が申合せまして、今般御渡来の完興君永宣君両殿下、其他御一行の諸君、又皇太子殿下の御随員として御渡航あらせられました李、宋、両閣下、其他の諸君を御招待を申上げまして、玆に小宴を開いた次第でございます、幸に両殿下、諸閣下、及び我内閣の諸公の尊臨を賜りましたのは、一同此上もなく光栄と存じます、依て私は玆に有志者の総代と致して、一言の謝辞を申上げます、韓国と我帝国の交際の年久しいことは今更申上げますまでもございませぬ、殊に今日に至りましては、両帝室の親交も啻ならぬ有様でございまして、既に我皇太子殿下も過般御渡韓になつて、皇帝陛下、皇太子殿下、其他の貴紳より親しく歓迎を受けさせられ、又此度は韓国皇太子殿下、我国に御渡来になるといふ如き、□《(不明)》り政治上ばかりでなく、両帝室の親交を進められるやうに至りましたのは、両国民の歓喜措く能はざる所であると信ずるのでございます、吾吾は銀行業者でありまする、不肖ながら一国の資本を取扱ふ所の機関の位置に居ります、斯る国運の進歩に就ては、未来韓国に対しまして我帝国との関係を益々密にして物質的の増進を謀らねば、政治上殊に帝室の左様に御親睦遊ばされる聖意に添はぬことゝ吾々は恐懼に堪へぬのでございます、不肖ながら私は既に三回韓国に渡航致しまして、韓国の事情を銀行者仲間中では比較的存じて居るのでございます、独り其事情を存じて居るのみらず、私の管理する第一銀行は今日の所では、韓国の中央銀行の位置に居るのでございます、さりながら未来の韓国の物質的発達を図りまする為には決して一人一銀行のみの力を以て尽し得られるものではなからうと思ひます、殊に韓国に対しましては資本を注入することが必要と考へまするから、斯る資本の機関たる銀行団体が、同心協力することは最も望ましいことゝ思ふのでございます、蓋し尊臨を恭う致しました両殿下及諸閣下も、此点に就ては必ず御同情を下されることゝ、私は信じて疑ひませぬのでございます、
 - 第7巻 p.68 -ページ画像 
さて左様に事業を進めて参りまするに就て、両国民の意志を如何にしたら宜からうかといふことが甚だ肝要である、今日臨席を賜つた宋農商工部大臣が、昨日東洋協会に於て御演説のございました通り過去に属する我国民の韓国に於ける行動は、或は道理に基かぬ、徳義に背いたといふことが無いとは申されませぬのでございます、己れさへ宜ければ、韓国民は如何になつても構はぬ、唯一攫千金を目的とした商売人が韓国に渡らぬとは私は申しませぬのでございます、併し両三年前から伊藤統監閣下が韓国へ御越しになつて、其政略とする所、又其処置される方法からして、決して左様なことで韓国の進運を助けるものではないといふ主義を持たれて居ることは、私共深く敬服して同情を表して居るのでございます、故に吾々の将来に期待する所は、飽までも道理に基き、徳義を重んじて、我帝国人民の利すると共に、韓国の国民にも等しく利益を与へ、所謂共に立ち並び進むと云ふことを目的と致さねばならぬのでございます(拍手)これが吾々の最も未来に希望する所でございます、故に斯る機会に於て両殿下及び枢要の位地に居らるゝ諸閣下の尊臨を乞ふて、吾々銀行者は左様な精神を以て韓国の事物に当る覚悟であるといふことを申上げまするは決して無用の言葉でなく、又諸閣下も御帰国の後に韓国民に吾々の意志をお伝へ下すつたならば、大に当国民の感情にも両国の事業に対しても稗補する所あると考へるのでございます、斯る希望を以て今日の小宴を開きましたけれども、如何にも時の少いのと、設備の不行届なる為め、折角尊臨を辱ふしたるにも拘らず頗る御粗末なる御饗応で、其点は特に大使其他諸閣下に陳謝致す次第でございます、玆に蕪辞を陳じまして殿下及び諸閣下の臨場を拝謝し、其上御健康を祝し上げます(起立乾盃)
    ○完興君李載冕殿下の答辞
今日は渋沢会長、副会長、其他会員諸君の御招待に預りまして、斯の如き盛大なる宴席に列することを得ましたのは、大変に光栄と思ひます、さうして今日此席に御座る所の御方々は国家の生存上、且つ人間の生活上に於て最も必要なる理財の点に就て有力なる御方々ばかりであります、斯の如き御方々と一緒に玆に飲食することの栄を得ましたことを深く感謝致します、終りに会長副会長其他会員諸君の御健康を祝します(起立乾盃)
    ○農商工部大臣宋秉畯氏の演説(日本語演説)
今日会長副会長並に諸君の御招待を受けましたのは、実に韓国の皇太子殿下始め、吾々一同の皆満足に感じまする所であります、なぜといふならば、第一我皇太子殿下、吾々一同は、大日本帝国に願ひに来ました、御頼みに来ました自分に力あつて威張つて見物に来た訳では決してない、諸君も其心を解して下さるならば、吾々は飽までも決して其恩を忘れぬです、今会長渋沢男爵の御話の通りに、昔は外交官が居つて、外国と思つて居つたから色々の妨害があつたでせう、今日は外国ぢやないです、外交官も必要がないぢやらうと思ふ、外交官の必要がないならば、どうしても一軒の家と思はにやならぬ、今日日本人が明治の始めから苦心惨憺して、欧羅巴へ行つて十分勉強した頭と、韓国人の頭とはそれは天と地ほど違ふ、けれども其者に対して余り虐め
 - 第7巻 p.69 -ページ画像 
るとか、余り馬鹿にするならば、人間は馬鹿でも賢くても、同じ虫を持つて居るですから、決して面白くは思はぬぢやらうと思ふ、そこで別の話かも知らぬけれども、人情といふものは同じで、詰り聟さんが美男で、カヽめは乞食みたやうなものが家に居るならば、どうしても妾持たにやならぬといふ感情が起る(笑)そこが自分の家を守るといふ精神を持つて居る方ならば、必ず乞食のやうなカヽめでも、家にチヤンと置いて妾などは持たない、所がお前と兄弟になることは嫌だ、お前と一緒に夫婦になることは恥かしいから嫌だといふ心を持つて居る人が多いです、私はそれは大きな間違ぢやらうと思ふ、今日御覧の通りに帝室と帝室から一家に結んだ以上は、子供達が何か不足を言ふた所が、親父が承知せぬ以上はどうする(拍手)親がさう思ふならば子供は之に従はなければならぬと私は信じて居るのでございます、そこで我国は、もう一言も言はずに諸君皆御承知の通りで、今まで政治が圧制で、国民がマルで皮もなし肉もなし力もなし、幽霊みたやうな国民であつた、此国民をどういふ点から助けるか、それは未だ問題かも知れませぬけれども、どうしても隣りに大きな金持があるならば、其村の百姓達が皆これに依頼する、其金持は金は遣らぬでも、其熱で皆食ふて居る、其熱で食ふて居るには、どうしても有力な大きな頭から助けて貰はにやならぬ、幸に今日日本全国の実業家銀行家が、これ程集つた所で吾々を御招待下すつたといふことは、実に韓国の官民とも大に喜ばなければならぬ、なぜといふならば喜ぶことがある、矢張自分に貰ひたいの心があつて喜ぶのです、もう仕方がないです、韓国は是から名を言はずに吾々の子分でも宜い吾々の兄弟……弟分でも宜いですから、此一千万以上の人間を、あなた方の力で大に助けて貰つたならば、どちらも威張るやうになる、其金がなければ、なんぼう口で能う饒舌つても腹が減つては動けない(拍手)乞食みたやうな人間でも宜いですから、兎に角韓国の人民は可哀さうな人民であるから、金を貸し力を与へて、其百姓達を大に満足させるやうに心配して下さるならば、此上ない愛国心が其処にあるぢやらうと思ふ。
今まで韓国の人間は上の人に取られる一方で、自分に一度も金持つてゐたこともなし、百姓は牛一匹あるならば、牛三匹ぐらゐ地方官に取られる(笑)さういふ有様の人民を、又日本の役人が行つて虐めちや可哀さうぢやアございませぬか、自分の国の役人に虐められ、金ばかりぢやアない娘まで取られて……別嬪ならば直ぐ妾にする(笑)唯取るです、一文も出さずに……、そこでどうか東京の有力なる今日此処に居る方の力を借りるならば、きつと立派の国になるぢやらう、立派の国になれば決して日本に反対することが出来ないでせう、恩といふものがある、恩国にして反対するならば、是れ間違なく天罰が当る、今まではどうかといふと、それは三百年前から恨みがあつた、韓国を虐める一方で、ちつとも纏頭を遣らぬ、纏頭を遣つて踊を見たいといふならば踊りもするでせう(笑)どうか其積りで諸君の力を是非借りにやならぬ、芸者みたやうに唯呉れとは言ひませぬ、其代には自分の国に土地もあるし、其位の抵当はあるけれども、なかなか第一銀行でも地面では貸さぬです(笑)規則がある、もう実に弱つた、仕方がないから我
 - 第7巻 p.70 -ページ画像 
国も農業銀行を拵へた所が此奴もなかなか物にならぬ、何処へ銀行を立てゝも、まるで質屋です、人の家を抵当に入れて一割五分に貸したり、それではまるで農業銀行も泥棒だ、それから又着物とか道具ばかり庫へ入れて金を貸すといふのです、農工銀行ぢやア決してない、勧業銀行の方も此処に居らツしやるか知れませぬが、大きな金でなければ貸して呉れぬで困る、我国の如き貧乏国へ来て、大きな金でなければ貸さぬといふのは驚いた、吾々みたやうな者は一万円でも宜いから貸して呉れといふと御免を蒙るといふ、田舎の貧乏な国へ来て、己れば十万円百万円は貸すけれども、一万円や二万円は貸さぬといふならば、其方は京城に居らぬでも宜いと私は思ふ(笑)どうかこれから宜しく御願をする、共に今まではピカピカする役人ばかり交際した為めに大敗した(笑)これからはソンナことはない、統監は田舎の百姓まで皆助けて、其事情がすつかり解つた為めに、これから統監府の役人でも威張ることが出来ない、今まで我国の役人は大に威張つた、日本の役人でも京城へ来たら早々は威張るです、矢張京城にも料理屋へ行つたら別嬪も居るし酒もあるから、威張るも無理ぢやアないが、一軒の家で兄貴ばかり旨い物を食つて美い着物を着て何が楽み、弟分でも旨い物を食はせなけばならぬ、内輪から喧嘩をしたら其家が滅れることは間違ひないでせう、弟でも同様に食べさせて、さうして纏頭でも遣つて呉れるならば、踊りも働きもする、まるで馬鹿にするから、此畜生兄貴怪しからん、馬鹿でも己れは己れの虫がある、自分ばかり威張つて美い物を食ふから癪に障るといふやうなことになる
幸に大蔵大臣閣下も此方に居らツしやるし、私と同じやうな農商務大臣も此方に居らツしやるが、矢張財政上の力も借らぬぢやアならぬです、ナカナカ財政上から大蔵大臣が韓国まで三百万円以上出して下さるならば、大に満足で、頭の百遍も下げるけれども(笑)唯三百万円ぢやア可哀さうぢやアございませぬか、それだから仕方がない其後は年に五百万円づゝ諸君の力を借りて、此韓国の整理に、来年の一月からそれだけお助け下るならば、三年の中に大に利益を出す積りですからどうかそれだけ私は願ひたいです、終りに私は会長副会長、各銀行家諸君の健康を祝します(起立乾盃)