デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治40年1月26日（1907年）

東京商業会議所ニ於テ日清生命保険株式会社創立総会開カレ、栄一相談役ニ推挙サル。

（日清生命保険株式会社）創立事務所日誌
　　　　　　　　　　　　　　　　（日清生命保険株式会社所蔵）
一月廿六日（土曜）曇
午後二時ヨリ東京商業会議所ニ於テ創立総会ヲ開ク、当日ノ出席者左ノ如シ
　　池田竜一君○外三五名略
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此外委任状弐百五拾人、総計弐百八拾六人、此権利株壱万参千七百六十七ナリキ
前島密氏ヲ議長ニ推選シ、池田竜一氏会社設立ノ経過ヲ報告、異議ナク承認シ、終テ予テ差廻ハシアル議案ニ付キ討議ヲナス、各条項共ニ異議ナク可決
役員ノ選挙ハ議長ノ指命ニ一任シ、左ノ諸氏指命就任ス
　取締役　前島密　君　　　牟田口元学　君　　来栖壮兵衛　君
　　　　　山田英太郎　君　田中唯一郎　君　　金沢種次郎　君
　　　　　池田竜一　君
　監査役　児島惟謙　君　　浮田桂造　君　　　上遠野富之助　君
　顧問　　法律顧問　鳩山和夫　君
　　　　　医務顧問　岡田和一郎　君
　相談役　渋沢栄一　君　　相馬永胤　君　山本達雄　君
　　　　　高田早苗　君　　麦少彭　君
右終テ、中野武営氏株主ヲ代表シ創立委員其他会社設立ニ対シ尽力セラレタル諸士ニ謝辞ヲ述ベ、午後五時散会

（日清生命保険株式会社）報告書　第一回〔明治四一年二月〕
　　　　　　　　　　　　　　（日清生命保険株式会社所蔵）
一、明治四十年一月弐拾六日、東京市麹町区有楽町東京商業会議所ニ於テ取締役会ヲ開キ、社長及専務取締役ヲ互選シ、次テ社長ヨリ相談役及顧問ヲ嘱託セリ、即チ左ノ如シ
　　　社長　　男爵　前島密
　　　専務取締役　　池田竜一
　　　相談役　男爵　渋沢栄一　中野武営　相馬永胤
　　　　　　　　　　麦少彭　法学博士　高田早苗
　　　法律顧問　　　法学博士　鳩山和夫
一、明治四十年一月三十一日、営業免許ヲ農商務大臣ニ申請シ、二月二十六日免許ヲ受ク
一、明治四十年三月一日、営業ヲ開始ス

竜門雑誌　第二二五号〔明治四〇年二月二五日〕
　○第三九頁
○青淵先生と新会社　○中略尚左記の会社に対しては設立後各重役の懇請に依り相談役たることを承諾せられたり
　　一、日清生命保険株式会社　相談役
　○第四三頁
○日清生命保険会社創立総会　先生の昨年中発起人中に加入せられたる日清生命保険会社にては、一月二十六日午後東京商業会議所に於いて創立総会を開き、左の如く重役を選任し、先生は相談役に推選せられたり
　　　社長　　　前島密　　　専務取締役　池田竜一
　　　取締役　　牟田口元学　来栖壮兵衛　山田英太郎
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　　　　　　　　田中唯一郎　金沢種次郎
　　　監査役　　児島惟謙　　浮田桂造　　上遠野富之助
　　　相談役　　渋沢栄一　　相馬永胤　　高田早苗
　　　　　　　　山本達雄　　中野武営　　麦少彭
　　　法律顧問　鳩山和夫　　　　医務顧問　岡田和一郎

文書類纂　商工―会社・第一巻　明治四〇年第一種　（東京府庁所蔵）
農商務省指令商第一〇八〇号
　　　　　　　　　　　　東京府東京市京橋区惣十郎町五番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日清生命保険株式会社
　　　　二月廿七日主任(印)
明治四十年一月三十一日付申請生命保険営業ノ件免許ス
　　明治四十年二月廿六日
　　　　　　農商務大臣

　　　　○
　　　進達願
別紙農商務大臣宛日清生命保険株式会社営業免許申請書類ノ進達御取計被下度、此段御願申上候也
　　明治四十年一月三十一日
　　　　　　　　　　　　日清生命保険株式会社
　　　　　　　　　　　　　　取締役社長　前島密(印)
　　東京府知事
　　　　男爵　千家尊福殿
（別紙）
　　　日清生命保険株式会社営業免許申請書
明治三十九年十二月六日附農商務省指令商第八四〇二号ヲ以テ発起認可相成候当会社ハ明治四十年一月二十六日ヲ以テ成立致シ候ニ付キ生命保険事業開始致シ度候間、別紙定款、事業方法書、普通保険約款保険料及ヒ責任準備金算出ノ基礎ニ関スル書類、責任準備金利用方法書株主名簿、株式申込証、商法第百三十四条ノ規定ニ従ヒテ為シタル調査報告書及ヒ其附属書類、創立総会ノ決議録相添ヘ此段申請仕候也
　　明治四十年一月三十一日
　　　　　　　　　　　　東京市京橋区惣十郎町五番地
　　　　　　　　　　　　　　日清生命保険株式会社
　　　　　　　　　　　　東京市小石川区関口町弐百七番地
　　　　　　　　　　　　　　取締役　前島密(印)
　　　　　　　　　　　　東京市芝区芝公園五号地弐番
　　　　　　　　　　　　　　取締役　牟田口元学(印)
　　　　　　　　　　　　横浜市本町六丁目八拾弐番地
　　　　　　　　　　　　　　取締役　来栖壮兵衛(印)
　　　　　　　　　　　　東京市麹町区中六番町五拾壱番地
　　　　　　　　　　　　　　取締役　山田英太郎(印)
　　　　　　　　　　　　東京市牛込区牛込矢来町四番地
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　　　　　　　　　　　　　　取締役　田中唯一郎(印)
　　　　　　　　　　　　大阪市西区靱上通弐丁目弐拾四番地
　　　　　　　　　　　　　　取締役　金沢種次郎(印)
　　　　　　　　　　　　東京市牛込区牛込天神町拾五番地
　　　　　　　　　　　　　　取締役　池田竜一(印)
　　　　　　　　　　　　東京府荏原郡大井村弐千九百五拾五番地
　　　　　　　　　　　　　　監査役　児島惟謙(印)
　　　　　　　　　　　　大阪市安道寺橋通四丁目弐百四拾五番屋敷
　　　　　　　　　　　　　　監査役　浮田桂造(印)
　　　　　　　　　　　　名古屋市南武平町壱丁目参拾弐番地
　　　　　　　　　　　　　　監査役　上遠野富之助(印)
　　　　農商務大臣　松岡康毅殿

日清生命保険株式会社設立趣意書
　　　　　　　　　　附事業方法書及定款
　　　　日清生命保険会社の設立趣意書
曠古未曾有の大戦捷の後を承け、世界の大勢に照し、時代の要求を稽へ、我等は日清両国に亘る一大生命保険会社を設立するの急務なるを認め、玆に万般の経書完整《（画カ）》して、之を天下に発表するの機運に到着せり。依て先づ之を我等の最も敬愛する吾早稲田大学の校賓並に校友諸君に謹告し、併せて諸君の熱心なる賛同を請はんと欲す。
今や我等早稲田大学に関係ある同人は全国を通じて最大多数の学生、校友、校賓を有せり、殊に其校友団体の如きは、啻に其員数に於て全国の各学校中第一位を占むるのみならず、其社会に於て占むる所の位地は、政治、教育、実業を始めとして有らゆる方面に渉り、而して更に之を聯結するに、社会的兄弟たるべき同窓同学の深切なる根帯を以てす。是豈他に於て決して見る能はざる強盛無比の団体的勢力にあらずや。此勢力を利用して、間接には国家の進運に貢献し、直接には相互の福利を増進するは我等の共有する一大責務なりと信ず。日清生命保険会社は、則ち此団体的勢力を基礎として生れ出たるものなり。
現時世界の実勢は、国民の間に於ける生命保険金の多少を以て文明の進度を秤量する程にて、生命保険の必要と利益とは、改めて絮説するを須たず。今や生命保険会社の我国に設立せらるゝ者二十八の多きに達し、外国より来り運動する者亦四大会社を数ふるに至れりと雖も、人口と生命保険額との割合を見れば、我は僅に独逸の十分一、英の三十五分一、米の六十分一に当るに過ぎず。此際基礎鞏固なる一大生命保険会社の起るは正しく時代の要求なりと謂ふべし。
殊に吾日清生命保険会社は其事業の範囲が広く清国に及ぶに於て、唯一無類の広大なる規模を有するものなり。従来既設の保険会社にして同一の志望を有する者なきにあらざりしも、其目的を達する能はざるは職として特別の便宜を有せざりしに由る。然るに日清生命保険会社の中心たる吾早稲田大学には支那留学生部ありて清国の学生頗る多く而して既に学成り業卒へて帰国せる学生は其成績頗る顕著、多くは科挙に及第して進士に挙げられ、著々国政の要路に向て昇進し、又彼の
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実業界に入りて枢要の地位を占む。其他吾大学の校友中或は顧問として或は教官として清国に傭聘せらるゝ者も亦少なからず、且つ吾早稲田大学の創立者大隈伯爵の総裁する同仁会は、支那朝鮮に文明的医術の普及を図らんが為め同会所属の学校と病院とを早稲田に設け、専ら支那学生に医術を学ばしめんとするの計画あり、思ふに此慈恵的事業が間接に保険事業を支那大陸及韓半島に紹介するの好媒たるや疑を容れず。此の如き特別の関係は吾会社の独り擅にする所にして、他に絶へて見る能はざる所なり。日清生命保険会社が必ず世界に於ける一大生命保険会社として東洋の表に屹立するに至るべきは我等の堅く信じて疑はざる所なり。
日清生命保険会社設立の趣意は大要右に開陳したる所の如し、而して之が設立は一に吾早稲田大学の校賓並に校友諸君の協戮賛助に待たざるべからずと雖も、我等は必ずしも早稲田大学の有縁者のみを以て此事業を経営せんとするの意に非ず、普く世間有力者の協力によりて共に斯業の完成を企図するや勿論なり、要は此会社の設立によりて吾大学と社会との関係を一層密接ならしめ、彼是相利用して事業の発達を計り、社会の公益に寄与せんとするの微意に外ならず。若夫計画の細目に至りては載せて別紙に在り、諸君翼くは奮て此挙を翼賛せられんことを。
　　明治三十九年十一月三日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　発起人
　　日清生命保険株式会社事業方法書
　　　　第一章　保険ノ種類
第一条　本会社ニ於テ営ム保険ハ普通終身保険・累加終身保険・普通養老保険・倍額養老保険・高年養老保険及ヒ教育資金保険ノ六種トス
第二条　普通終身保険ハ被保険者何時死亡スルモ一定ノ保険金ヲ支払フモノトス
第三条　累加終身保険ハ普通終身保険ト同シク被保険者カ何時死亡スルモ保険金ヲ支払フモノナレトモ、其保険金額カ契約ノ時ヨリ十箇年ヲ経過シタル後、年々原金額ノ十分ノ一宛累加スルモノトス
第四条　普通養老保険ハ被保険者カ契約期間内ニ死亡シタル場合又ハ該期間ノ満了ニ至リテ尚生存シタル場合ニ於テ一定ノ保険金ヲ支払フモノトス、之ニ十年満期・十五年満期・二十年満期・二十五年満期及ヒ三十年満期ノ五種アリ
第五条　倍額養老保険ハ総テ普通養老保険ト同シキモ、只異ナル所ハ被保険者カ生存ノ場合ニ支払ヲ受クヘキ保険金額カ死亡ノ場合ニ於ケル保険金額ノ二倍ナルニアリ
第六条　高年養老保険ハ被保険者カ契約ノ年齢ニ達シタルトキ又ハ其以前ニ死亡スルモ一定ノ保険金ヲ支払フモノトス、之ニ八十歳受取及ヒ八十五歳受取リノ二種アリ
第七条　教育資金保険ハ子女ノ為メニ教育ノ資金ヲ供給スル目的ヲ以テ設ケタルモノニシテ、被保険者カ契約ノ年齢ニ達シタル場合ニハ
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一定ノ保険金ヲ支払ヒ、其以前ニ死亡シタル場合ニハ保険金ノ半額ヲ支払フモノトス、但満七歳ニ達セスシテ死亡シタル者並ニ契約後三箇年以内ニ死亡シタル者ニ対シテハ保険金ノ支払ヲ為サス、之ニ十七歳受取・二十歳受取及ヒ二十三歳受取ノ三種アリ
　　　　第二章　保険金額ノ制限
第八条　本会社ニ於テ契約スル保険金額ハ教育資金保険ヲ除キ、被保険者一人ニ対シ金弐百円ヲ最低トシ、合計弐万円ヲ最高トス
　教育資金保険ニ在リテハ金壱百円ヲ最低トシ、金弐千円ヲ最高トス
　前二項ノ制限内ニ於テモ一件金壱百円未満ノ端数アル契約ヲ為ササル者トス
　　　　第三章　被保険者ノ年齢
第九条　被保険者ノ契約当時ニ於ケル年齢ハ教育資金保険ヲ除キ十歳以上六十五歳以下トス
　普通養老保険及ヒ倍額養老保険ニ在リテハ六十一歳以上ノ被保険者ニ対シテハ十年満期五十六歳以上ノ被保険者ニ対シテハ十五年満期五十一歳以上ノ被保険者ニ対シテハ二十年満期四十六歳以上ノ被保険者ニ対シテハ二十五年満期ヨリ長キ期間ヲ契約セザルモノトス
　教育資金保険ニ於ケル被保険者ノ契約年齢ハ左ノ如シ
　　十七歳受取　　　　　一歳ヨリ十二歳マテ
　　二十歳受取　　　　　一歳ヨリ十五歳マテ
　　二十三歳受取　　　　一歳ヨリ十八歳マテ
第十条　被保険者ノ年齢ハ満年ヲ以テ之ヲ算シ、六箇月以下ハ之ヲ切捨テ、七ケ月以上ハ繰上ケ一年トス、但教育資金保険ニ在リテハ生後六箇月未満ノ者ハ特ニ之ヲ一歳ト見做ス
　　　　第四章　保険契約ノ手続
第十一条　本会社ト保険契約ヲ締結セントスル者ニハ本会社所定ノ保険申込書ニ所要ノ事項ヲ記載シ署名捺印ノ上、本会社本支店出張所又ハ代理店ヘ差出サシメ、本会社ハ教育資金保険ヲ除クノ外医師ヲシテ被保険者ノ身体ヲ診査セシム
　教育資金保険ニ在リテハ被保険者ノ身体診査ヲ行ハスト雖モ、被保険者カ満七歳ニ達セス若クハ契約後三箇年以内ニ死亡シタル場合ニハ、本会社ハ保険金ノ支払ヲ為サス、又保険料ノ払戻ヲモ為ササルカ故ニ危険ノ虞ナキモノトス
第十二条　前条身体診査ノ結果本会社ノ本店ニ於テ諾否ヲ決シ、之ヲ保険契約者ニ通知シ、其承諾ノ分ニ対シテハ保険契約者ヨリ直チニ第一回保険料ノ払込ヲ為サシムルモノトス
　教育資金保険ニ在リテハ本会社ニ於テ保険申込書ヲ調査シタル上承諾ノ分ニ対シ保険契約者ヨリ直チニ第一回保険料ノ払込ヲ為サシムルモノトス
第十三条　○保険申込書ノ様式略ス
第十四条　本会社カ第一回保険料ヲ受取リタルトキハ速ニ保険証券ヲ作リテ之ヲ保険契約者ニ交付スベシ　○保険証券ノ様式略ス
　　　　第五章　保険料
第十五条　保険料ハ毎一箇年分ヲ前払セシムルヲ本則トス、保険契約
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者ノ希望ニ依リ毎半箇年払又ハ毎三箇月払ト為スコトアルヘシ、此場合ニ於ケル保険料ハ左ノ方法ニ拠リテ算出シ、厘位ハ四捨五入スルモノトス
　（一）毎半箇年払ハ年払ノ保険料額ニ百分ノ四ヲ加ヘ之ヲ二分シタルモノ
　（二）毎三箇月払ハ年払ノ保険料額ニ百分ノ八ヲ加ヘ之ヲ四分シタルモノ
　　　　第六章　利益分配
第十六条　保険金額五百円以上ニシテ満三箇年ヲ経過シタル保険契約ニ対シテハ保険契約者ヘ本会社利益金ノ一部ヲ分配スルモノトス
　利益分配金ハ本会社毎事業年度決算ニ於テ積立テ且該年度末ニ於ケル有権者ニ対シ其年払保険料ノ比例ヲ以テ分配ノ計算ヲ為シ置クモノトス
　前項ノ分配金ハ五箇年毎ニ取纏メ支払フモノトス、但保険契約者ニ於テ受取ルヘキ場合ニハ其望ニ依リ次回保険料ニ振替ヘ、又ハ本会社カ被保険者ノ身体ニ異状ナキコトヲ認メタル場合ニハ之ヲ保険料トシテ相当保険金ノ増額ヲ為スヘシ
　前項五箇年ノ満了前ニ被保険者死亡シ又ハ契約終了シタル場合ト雖モ、本会社ハ既ニ積立テタル利益金ヲ有権者ニ交付スヘシ
　五箇年満了前ニ解約シタル者アルトキハ解約者カ受クヘキ利益金ハ其年度ノ利益分配準備金ニ組入ルヽモノトス
　　　　第七章　保険証券担保貸金
第十七条　本会社ハ保険契約及ヒ保険金受取人ノ連帯ノ請求ニ依リ、解約価格カ五拾円以上ナル場合ニ限リ、保険証券ヲ担保トシテ其以内ノ金額ヲ貸付クヘシ
　　　　第八章　払済証券
第十八条　本会社ハ保険契約者ノ望ニ依リ解約価格ニ二割ヲ増加シタル金額ヲ一時払保険料ニ振替ヘ、原契約ト同一種類ノ払済証券ヲ発行スヘシ
　　　　第九章　収支予算
　　　　　第一年
　　　　　　収入
　一金八万七千五百円　　　保険料（保険金弐百五拾万円ニ対スル分ニシテ保険金百円ニ付参円五拾銭ノ割）
　一金壱万五千百六拾七円　諸利息及ヒ配当金
　　　　　　内訳
　　　金千百六拾七円　当坐預金利子（保険料ノ三分ノ一ニ対スル年四朱）
　　　金壱万参千弐百円　定期預金及ヒ有価証券利息（資本金中弐拾弐万円ニ対スル年六朱）
　　　金八百円　当坐預金利子（資本金中弐万円ニ対スル年四朱）
　　計金拾万弐千六百六拾七円
　　　　　　支出
　一金六千弐百五拾円　保険金（中数契約金額百弐拾五万円ニ対スル千分ノ五）
　一金四万千百弐拾五円　営業費
　　　　　　内訳
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　　　金弐万五千円　社費
　　　金弐千六百弐拾五円　代理店手数料（保険料ノ半額ニ対スル六分ノ割）
　　　金壱万弐千五百円　紹介手数料（契約成立高弐百五拾万円ニ対スル保険金百円ニ対シ五拾銭ノ割）
　一金参千五百円　設立費用全部償却
　一金参万九千参百七拾五円　責任準備金（保険料ノ四割五分ニ当ル）
　　　　　　収支残金処分
　一金六千四百拾七円　利益金
　　　　次年度ヘ繰越スモノトス
　　　　　第二年
　　　　　　収入
　一金六千四百拾七円　前年度繰越金
　一金参万九千参百七拾五円　前年度責任準備金
　一金拾六万円　保険料
　　　　　　内訳
　　　金七万円　新契約弐百万円ニ対スル分（保険金百円ニ付参円五拾銭ノ割）
　　　金九万円　前年度契約弐百弐拾五万円（死亡解約ニ因ル消滅ヲ壱割トス）
　　　　　　　　ニ対スル分（保険金百円ニ付四円ノ割）
　一金壱万八千九百弐拾参円　諸利息及ヒ配当金
　　　　　　内訳
　　　金弐千参百六拾参円　定期預金及ヒ有価証券利息（前年度末責任準備金ニ対スル年六朱）
　　　金壱万参千弐百円　有価証券及ヒ貸付金ニ対スル利息（資本金中弐拾弐万円ニ対スル年六朱）
　　　金八百円　当坐預金利子（資本金中弐万円ニ対スル年四朱）
　　　金弐千五百六拾円　当坐預金利子（保険料ノ五分ノ二ニ対スル年四朱）
　　計金弐拾弐万四千七百拾五円
　　　　　　支出
（○保険金・営業費の欄脱）
　　　　　　内訳
　　　金参万五千円　社費
　　　金六千四百円　代理店手数料（保険料ノ三分ノ二ニ対スル六分ノ割）
　　　金壱万四千円　紹介手数料（契約成立高弐百万円ニ対スル保険金百円ニ付七拾銭ノ割）
　　　金五千五百円　診査料（一人ノ被保険者ニ対スル平均保険金額ヲ四百円トシ募集額弐百弐拾万円ニ対スル五千五百人ノ診査費）
　一金拾壱万千参百七拾五円　責任準備金（前年度末ノ金額ヘ本年度保険料ノ四割五分ヲ加へタルモノ）
　　　　　　収支残金処分
　一金弐万九千六百九拾円　利益金
　　之ヲ処分スルコト左ノ如シ
　　　金千五百参拾五円　法定準備金（略百分ノ五）
　　　金参千五百八拾六円　別途積立金（略百分ノ十二）
　　　金参千六拾九円　役員賞与金（略百分ノ十）
　　　金弐万壱千五百円　株主配当金（年八朱六厘）
　　　　第二年度末ニ於ケル会社ノ状態
　一契約保険金額　金参百八拾九万弐千五百円（契約ノ初年ニハ一割二年目ニハ七分ノ死亡解約アリトス）
　一払込資本金額　金弐拾五万円
　一責任準備金額　金拾壱万千参百七拾五円
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　一法定準備金額　金千五百参拾五円
　一別途積立金額　金参千五百八拾六円
　　　　　第三年
　　　　　　収入
　一金拾壱万千参百七拾五円　前年度責任準備金
　一金弐拾弐万五千七百円　保険料
　　　　　　内訳
　　　金七万円　新契約弐百万円ニ対スル分（保険金百円ニ付参円五拾銭ノ割）
　　　金拾五万五千七百円　旧契約参百八拾九万弐千五百円ニ対スル分（保険金百円ニ付四円ノ割）
　一金弐万六千参百九拾四円　諸利息及ヒ配当金
　　　　　　内訳
　　　金六千六百八拾参円　有価証券及ヒ定期預金利息（責任準備金拾壱万千参百七拾五円ニ対スル年六朱）
　　　金壱万六千百円　貸付金利子（資本金中弐拾参万円ニ対スル年七朱）
　　　金参千六百拾壱円　当坐預金利子（保険料ノ五分ノ二ニ対スル年四朱）
　　計金参拾六万参千四百六拾九円
　　　　　　支出
　一金四万六千六百拾九円　保険金（中数契約金額四百六拾六万千九百円ニ対スル千分ノ十）
　一金七万四千六百五拾七円　営業費
　　　　　　内訳
　　　金四万五千円　社費
　　　金壱万百五拾七円　代理店手数料（保険料ノ四分ノ三ニ対スル年六分ノ割）
　　　金壱万四千円　紹介手数料（契約成立高弐百万円ニ対スル保険金百円ニ付七拾銭ノ割）
　　　金五千五百円　診査料（募集額弐百弐拾万円ニ対スル五千五百人ノ診査費用）
　一金弐拾壱万弐千九百四拾円　責任準備金（前年度末ノ金額ヘ本年度保険料ノ四割五分ヲ加ヘタルモノ）
　　計金参拾参万四千弐百拾六円
　　　　　　収支残金処分
　一金弐万九千弐百五拾参円　利益金
　　之ヲ処分スルコト左ノ如シ
　　　金壱千四百六拾参円　法定準備金（百分ノ五）
　　　金弐千参百六拾五円　別途積立金（略百分ノ八）
　　　金弐千九百弐拾五円　役員賞与金（百分ノ十）
　　　金弐万弐千五百円　株主配当金（年九朱）
　　　　第三年度末ニ於ケル会社ノ状態
　一契約保険金額　金五百四拾六万千九百円（契約ノ初年ニハ一割二年目ニハ七分三年目ニハ五分ノ死亡解約アリトス）
　一払込資本金額　金弐拾五万円
　一責任準備金額　金弐拾壱万弐千九百四拾円
　一法定準備金額　金弐千九百九拾八円
　一別途積立金額　金五千九百五拾壱円
　備考
　一教育資金保険ハ被保険者ノ身体診査ヲ行ハサルヲ以テ診査料ヲ支払フコトナク、又三箇年以内ニ在リテハ死亡者ニ対スル保険金ヲ支払ハサルカ為メニ、診査料ト保険金トノ項目ニ教育資金保険ノ契約ニ属スル分ヲ考察セサルヘカラサルモ、計算ノ煩雑ヲ避クルカ為メニ姑ク此種ノ保険ナキモノトシテ計算シ置キタリ
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　一利益金中ヨリ保険契約者ニ対スル利益分配金ヲ計算スヘキ筈ナルモ、開業三箇年以内ニ在リテハ未タ分配ヲ受クヘキ権利者ナキヲ以テ、第四年度末ニ至リ初メテ之ヲ作ルコトヽス
　　　　　附則
　本会社ハ営業ノ範囲ヲ単ニ日本人ノミナラズ広ク外国人殊ニ清韓人ニ及ボサント欲スルモ、清韓人等ノ死亡率死亡ノ証明方法其他保険営業ニ必要事項ノ取調不充分ニ付キ、他日ヲ期シテ之ヲ為サント欲ス、随テ外国人ニ対スル保険料・保険約款等ハ其期ニ到リ別ニ之ヲ制定スヘシ

　　日清生命保険株式会社定款
　　　　第一章　総則
第一条　本会社ハ株式組織トシ資本金壱百万円トス
第二条　本会社ハ生命保険事業ヲ営ムヲ以テ目的トシ、日本帝国及ヒ外国ニ於テ内外国人ノ年齢六十五年六箇月以下ノ者ヲ被保険者トシテ、死亡保険並ニ死亡生存混合ノ保険ヲ為スモノトス
第三条　本会社ハ日清生命保険株式会社ト称ス
第四条　本会社ハ本店ヲ東京市ニ置ク
第五条　本会社ノ財産ハ保険業法施行規則第九条ニ規定セラレタル範囲内ニ於テ、取締役会ノ決議ヲ以テ、左ノ方法ニ拠リ之ヲ利用ス
　一本会社ノ事業上必要ナル不動産ヲ取得スル事
　二国債証券・地方債証券又ハ確実ナル会社ノ債券・株ヲ取得スル事
　三前号ニ掲ケタル有価証券ヲ担保トシテ貸付ヲ為ス事
　四確実ナル銀行ニ預金ヲ為ス事
　五保険契約者ニ限リ保険証券ニ対シ貸付ヲ為ス事
第六条　本会社ノ公告ハ所轄区裁判所カ登記事項ヲ公告スル新聞紙ヲ以テ之ヲ為スヘシ、但外国ニ於テ為ス公告ノ方法ハ其地ノ慣例ニ拠ル
　　　　第二章　株式
第七条　本会社ノ株式ハ総数ヲ弐万株トシ、壱株ノ金額ヲ五拾円トス
第八条　本会社ノ株券ハ壱株券・弐株券・拾株券及ヒ五拾株券ノ四種トス
第九条　本会社ノ株券ハ記名式トス
第十条　本会社株金第壱回払込ハ一株ニ付金拾弐円五拾銭トシ、株式総数ノ引受アリタル時ニ之ヲ為サシメ、其余ハ取締役会ニ於テ払込期日及ヒ金額ヲ定メ払込期日一箇月前ニ株主ニ通知スヘシ
第十一条　株金ノ払込ヲ為ササル株主ハ、払込期日ノ翌日ヨリ其滞納金額ニ対シ金百円ニ付日歩四銭ノ割合ヲ以テ遅延利息ヲ本会社ニ支払ヒ、且遅延ノ為メ生シタル損害ヲ賠償スヘシ
第十二条　株式ノ譲渡、相続、遺贈又ハ法令ノ結果ニ因リ株券ノ名義書換ヲ請求シ若クハ株券ノ毀損・紛失・併合・分割等ノ為メ其引換又ハ交付ヲ請求スルモノハ、本会社ニ於テ定ムル株式取扱手続ニ拠ルモノトス
第十三条　株式ノ譲渡ハ本会社ノ承諾ヲ要スルモノトス
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第十四条　本会社ハ公告ヲ為シテ定時総会前三十日以内株式ノ譲渡ニ因ル株券ノ名義書換ヲ停止スヘシ
第十五条　株主ハ住所並ニ印鑑ヲ本会社ニ届出ツヘキモノトス
　氏名・住所又ハ印章ヲ変更シタルトキハ本会社ニ通知スヘシ
第十六条　本会社カ株主ニ対シテ為スヘキ通知・催告等ハ株主カ届出タル住所ニ宛テ之ヲ発スヘシ
　　　　第三章　総会
第十七条　定時総会ハ毎年二月中ニ之ヲ招集スルモノトス
第十八条　臨時総会ハ取締役又ハ監査役ニ於テ必要ト認ムルトキ、若クハ資本金ノ十分ノ一以上ニ当タル株主ヨリ会議ノ目的ヲ示シテ請求アリタルトキ、之ヲ招集スルモノトス
第十九条　総会ノ議事ハ予メ通知シタル目的及ヒ事項ノ外ニ渉ルコトヲ得ス
第二十条　株主又ハ法定代理人自ラ総会ニ出席スルコト能ハサルトキハ、其議決権ノ行使ヲ他ノ出席株主ニ委任スルコトヲ得、但委任状ヲ以テ代理権ヲ証明スルコトヲ要ス
第二十一条　総会ハ出席株主ノ議決権ノ過半数ヲ以テ決議ヲ為ス、可否同数ナルトキハ議長之ヲ決ス
第二十二条　総会ノ議長ハ社長之ニ任ス、社長事故アルトキハ他ノ取締役之ニ代ル
　監査役ノ意見又ハ株主ノ請求ニ因リ招集シタル臨時総会ノ議長ハ、出席株主中ヨリ選挙スルコトヲ得
第二十三条　議長ハ会議ヲ延長シ又ハ会場ヲ転スルコトヲ得
　前項会議ノ延長ハ一週間ヲ超ユルコトヲ得ス
　延長会議ノ議事ハ前会ニ於テ決議ヲ了ラサリシ議案ノ外ニ渉ルコトヲ得ス
第二十四条　総会ノ議事録ニハ議長及ヒ出席株主二名以上記名調印シテ本会社ニ保存スヘシ
　　　　第四章　役員
第二十五条　本会社ニ左ノ役員ヲ置ク
　　取締役　　　　七名
　　監査役　　　　三名
第二十六条　取締役及ヒ監査役ハ本会社ノ株式壱百以上ヲ所有スル株主中ヨリ選任ス
第二十七条　取締役ノ任期ハ三箇年、監査役ノ任期ハ一箇年トス
第二十八条　取締役及ヒ監査役ハ第二十六条ニ規定スル資格ノ喪失、破産、禁治産又ハ準禁治産ニ因リ退任スルモノトス
第二十九条　取締役ハ其所有株百株ヲ監査役ニ供託スヘシ
　前項株券ハ、取締役退任シタル場合ト雖モ、其年度ノ計算ニ付株主総会ノ承認ヲ経タル後ニ非サレハ之ヲ還付セサルモノトス
第三十条　取締役会ハ過半数ヲ以テ決議ヲ為ス、可否同数ナルトキハ議長之ヲ決ス
第三十一条　事業方法、保険約款、保険料及ヒ責任準備金算出ノ基礎ハ取締役会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ムルモノトス
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第三十二条　取締役ノ互選ヲ以テ社長及ヒ専務取締役各一名ヲ定ム
第三十三条　社長ハ本会社ノ業務ヲ総理シ、取締役会ノ議長ト為リ、且本会社ヲ代表スルモノトス
第三十四条　専務取締役ハ社長ヲ補佐シ、一切ノ業務ヲ執行スルモノトス
第三十五条　取締役又ハ監査役ニ闕員ヲ生シタルトキハ臨時総会ヲ開キ補闕選挙ヲ行フヘシ、但法定数ニ不足ヲ生セサルトキハ次回ノ改選期迄補闕選挙ヲ為サルコトヲ得
　補闕選挙ニ於テ当選シタル者ノ任期ハ次回ノ改選期迄トス
　　　　第五章　計算
第三十六条　本会社ノ事業年度ハ毎年一月一日ニ始マリ、十二月三十一日ニ終ル
第三十七条　本会社ハ毎年度ノ収入保険料、諸利息其他ノ雑収入ニ前年末ニ於ケル責任準備金、支払備金及ヒ繰越金ヲ加ヘタルモノヨリ支払保険金、解約払戻金、責任準備金、支払備金及ヒ営業費其他諸欠損ヲ控除シタルモノヲ利益金トス
第三十八条　本会社ハ前条利益金ノ内ヨリ左ノ割合ニ依リ法定準備金及ヒ保険契約者ニ対スル利益分配準備金ヲ控除シタル後ニ非サレハ株主ニ其配当ヲ為サス
　法定準備金　利益金ノ百分ノ五以上
　保険契約者ニ対スル利益分配準備金　同　百分ノ十以上
第三十九条　毎年度ノ役員賞与金ハ利益金配当案ニ於テ株主総会ノ決議ニ依リ之ヲ定ムルモノトス
第四十条　毎年度ノ利益金ハ其年度ノ末日ニ於テ株主名簿ニ記載シアル株主ニ配当スルモノトス、新ニ払込ミタル株金額ニ対シテハ払込ノ翌月ヨリ計算シテ利益金ヲ配当スルモノトス
第四十一条　本会社ノ配当金ハ本会社ノ本店又ハ本会社ノ指定シタル場所ニ於テ之ヲ支払フモノトス
　　　　　　附則
第四十二条　本会社ノ設立費用ハ金参千五百円以内トシ初年度ニ於テ之ヲ償却スルモノトス
第四十三条　保険契約者ニ対スル利益分配準備金ハ本会社設立後第四回ノ決算ヨリ之ヲ積立ツルモノトス

（日清生命保険株式会社）株主名簿　明治四一年一二月
　　　　　　　　　　　　　　　　（日清生命保険株式会社所蔵）

　　　株数　　　　　　　払込金額　　　　　　　未払込金額　　　　　　　　　住所　　　　　　　　　　姓名
　　　　二〇〇　　　　二、五〇〇・〇〇　　　　七、五〇〇・〇〇　　　東京市深川区福住町四番地　　　　渋沢栄一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　○外四一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三人略
　二〇、〇〇〇　　二五〇、〇〇〇・〇〇　　七五〇、〇〇〇・〇〇　　　　　　　　　　　　　　　　合計四百十四人