デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
2節 鉄道
1款 東京鉄道組合
■綱文

第8巻 p.372-378(DK080023k) ページ画像

明治8年4月23日(1875年)

是日第四回会議ヲ開ク。井上馨・栄一ト共ニ之ニ臨席シテ陸羽鉄道建設ノ目的ヲ変更シ、新橋横浜間官設鉄道ノ払下ヲ受クベキ事ヲ勧ム。直ニ衆議之ヲ容ル。


■資料

鉄道会社会議要件録 第一巻・第二五―第三二頁(DK080023k-0001)
第8巻 p.372-374 ページ画像

鉄道会社会議要件録 第一巻・第二五―第三二頁
                 (株式会社第一銀行所蔵)
    ○第四回会議 明治八年四月廿三日第一国立銀行ニ於テ開之
                  出席人名
                       徳川慶勝
                       池田慶徳
                       毛利元徳
                       池田茂政
                       池田徳潤
                       伊達宗城
                       亀井玆監
                       細川護久代理
                       島田泰臣
                       山内豊範代理
                       真辺正心
                       松平頼聡代理
                       三宅十郎
                       松平茂昭代理
                       中根新
                       大村純熙代理
                       稲田又左衛門
 - 第8巻 p.373 -ページ画像 
                       山川前耀
                       池田輝知代理
                       吉田恭敬
                       蜂須賀茂韶代理
                       小室信夫
                     員外
                       井上馨
                       渋沢栄一
前回ノ趣ニテハ来ル廿六日ニ第四回会議ヲ開クヘキ約束ノ処、渋沢栄一ヨリ別ニ考案ノ事アルヲ以テ本日ノ会議ニ繰替タリ
右出席ノ各員議席ニ就クニ当リ井上馨ヨリ此鉄道建築ノ方向ヲ転シ、既成ノ新橋横浜間ノ鉄道ヲ政府ヨリ買下クルヲ以テ適宜ノ方法ト為スヘキコトヲ一同ヘ忠告ス、蓋其要旨ハ左ノ数条ニ於テ明カナリ
    第一
東京ヨリ福島ニ迄ル鉄道新築ノ目途ハ全国ノ経済上ニ於テハ其利アルヘシト云トモ、此会社ノ殖益ヲ謀ルニ在テハ大ニ其妨碍ナキ能ハス、何ントナレハ今其建築要費ヲ概算シテ七百五拾万円トナスモ実際ニ於テハ壱千万円以下ノ額ニテハ決シテ成功ヲ期シカタシ、然ルトキハ要費供給ニ於テモ既ニ其目的ヲ失フニアラスヤ
    第二
陸羽ノ開産ヲ要スルハ経済上ノ主務タレトモ、唯此鉄道建築ノミヲ以テ期シカタシ、蓋其方法ヲ設ケテ順次進歩セシムルハ政府ノ施為ニアリテ鉄道会社ノ敢テ任シ得ヘキモノニアラス、若此方法ノ施為アリテ其宜ヲ得ルニ至ラサレハ、縦令鉄道落成スルモ決シテ其利ヲ見ルコトヲ得ヘカラス、又其株券ヲ以テ募金ヲ衆族ニ問フモ或ハ其之ニ応スルモノ稀少ナルヘシ
    第三
右ノ二件ニヨレハ福島ニ迄ルノ鉄道建築ハ此立会ニ於テ的実ノ方策ト為スヘカラス、然リ而シテ彼ノ前議ノ宇都宮ニ迄ルノ建築ヲ以テ十年ノ久シキヲ期スル若キハ最迂遠ノ画策ト云ヘシ
    第四
故ニ此立会ニ於テハ其新築ノ目的ヲ翻シ、既ニ政府ニ落成スル所ノ新橋横浜間ノ鉄道ヲ買下クルヲ以テ適当ノ方法トナスベシ
右目的転換ノ挙衆議之ヲ可ト決シ、而シテ其買下ノ為メ左ニ記載スル金額ヲ十年間ニ出金スヘキ割合ヲ定メタリ
    集合金額割合
 一金三万〇七百円             徳川慶勝
                      徳川義宜
 一金壱万円                伊達宗城
                      伊達宗徳
 一金弐万千円               池田輝知
 一金五百円                池田慶徳
 一金弐万四千円              毛利元徳
 一金壱万五千円              池田章政
 一金五百円                池田茂政
 一金五百円                池田徳潤
 一金六千四百円              亀井玆監
 - 第8巻 p.374 -ページ画像 
 一金七万円                蜂須賀茂韶
 一金壱万弐千円              山内豊範
 一金壱万六千円              松平頼聡
 一金四千五百円              大村純熙
 一金壱万六千円              松平茂昭
 一金壱万円                前田利嗣
 一金壱万円                久松勝成
 一金六千円                井伊直憲
  合計金弐拾五万三千百円
   此拾ケ年分
    金弐百五拾三万千円
右ノ如ク金額ノ割合ヲ定メ、而後第五回会議ヲ開キ、鉄道買下ケ其他事務取扱ノ為メ総理代人ノ撰挙及政府ヘ願書ノ草案並所見問求等ヲ議スヘキ事ヲ約シテ退散セリ


青淵先生伝初稿 第二四章・第一五―一六頁〔大正八―一二年〕(DK080023k-0002)
第8巻 p.374 ページ画像

青淵先生伝初稿 第二四章・第一五―一六頁〔大正八―一二年〕
    京浜間鉄道払下の請願
此時に当り○前項本文ニ続ク政府は請願の許否について議論紛々たり。一日先生井上馨を訪ふ、井上は先生より華族諸氏の鉄道経営の顛末を聴きて曰く、「新に東北の鉄道を敷設せんよりは、既成の京浜鉄道を払下げては如何、然らば政府は其金を利用して、更に他の鉄道工事に着手するを得べし、伊藤博文、参議兼工部卿に謀議せば、事必ず成就せん」と。先生乃ち組合の華族と謀議すること十二回の後、遂に井上の意見に従ふに決し、先生は発起人総代として鉄道払下営業の事務を委託せらる、実に明治八年六月一日の事なり。○下略


世外井上公伝 第三巻・第五四二―五四三頁 〔昭和八年一二月〕(DK080023k-0003)
第8巻 p.374 ページ画像

世外井上公伝 第三巻・第五四二―五四三頁〔昭和八年一二月〕
○上略太政官は蜂須賀及び徳川等華族の建白に対して、七年九月にその方法委詳書載提出を命じたので、協議の結果出資金二百五十万円、予定線東京・宇都宮間を建設することに決して請願する所があつたが、政府はその許否を容易に決しなかつた。時に公は廟議の大勢を察し、又当時財政困難のため政府は鉄道敷設の業を拡張する余裕がないのを観て、東京・宇都宮間の布設計画を棄て、政府の東京・横浜間の既設鉄道を払下げるのが時宜に適したものであることを忠告した。この公の忠告に依つて、華族等は前後十二回の集会を開いて遂に之を議決し八年十月に京・浜の既設鉄道を三百十万円で払下の願書を提出した。
○下略
   ○井上馨、明治六年五月四日栄一ト共ニ大蔵大輔ヲ辞シ、当時野ニ在リ。


渋沢男爵実業講演(坤) 第四九一―四九三頁〔大正二年八月〕(DK080023k-0004)
第8巻 p.374-375 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

青淵回顧録 上巻・第五八〇頁〔昭和二年八月〕(DK080023k-0005)
第8巻 p.375-376 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

〔参考〕旧鉄道組合書牒物件交付目録(DK080023k-0006)
第8巻 p.376 ページ画像

旧鉄道組合書牒物件交付目録 (株式会社第一銀行所蔵)
以輪札啓上仕候、時下寒冷相催候処各位閣下益御清泰奉恭賀候、陳は曩年鉄道組合ニ対シ高島嘉右衛門より其軌道計画之為メ莫大之費用遣払候ニ付、若干金特借致度旨懇請有之候処、各位御協議ニ而特貸ハ御聴用無之、一千金ヲ御恵与可相成旨御示シ有之其段申通候処、一千金之恵ヲ甘受難致旨相答候ニ付、爾来其儘ニ御差措相成居候処、近来ニ至リ再ヒ前旨ヲ申請ヒ、若シ御特貸不相叶候ハヽ其費用之償却ニ足ル程之金円御給付被下度旨申陳候ニ付、其段各位江申上候処、㝡前御決議之通一千金御恵給之外決テ御取計方無之旨可申通様御示ニ付其段申聞候処、頃日ニ至リ同人罷来リ情勢不得已ニ付一千金甘受致度旨申答候就テハ銀行ヘ御預ケ金之内より速ニ御恵給方可取計候間、此段御領意可被下候、輪札御順達周尾より御返却可被下候也
  十二年十月十八日            渋沢栄一
    伊達宗城様  承候
    松平頼聡様  承候
    前田利嗣様  承候
    井伊直憲様  承候
    毛利元敏様  承候
    前田利同様  承候
    榊原政敬様  承候
    松平茂昭様  承候
    松平慶永様  承候


〔参考〕日新真事誌 第一二〇号〔明治八年六月四日〕 製鉄場ヲ陸中国ニ築カンコトヲ請フノ議(従五位南部利恭)(DK080023k-0007)
第8巻 p.376-377 ページ画像

日新真事誌 第一二〇号〔明治八年六月四日〕
  ○製鉄場ヲ陸中国ニ築カンコトヲ請フノ議
                   (従五位南部利恭)
誠恐誠惶頓首再拝謹ミテ書ヲ元老院議長閣下ニ上ル、嚮ニハ利恭数華族ノ力ヲ協セテ東京ヨリ鉄路ヲ開キ三陸ニ達セントスルノ議アルヲ聞キ驚喜自謂ヘラク是不世ノ盛事ナリト、因テ自揣ラス敢テ一書ヲ草シ議スル所アラントス、書成リテ未献セサルニ会人アリ伝ヘテ曰ク、頃者一人アリテ議スルニ僻遠ノ三陸縦令鉄路ヲシテ成ラシムトモ其利ヲ収ムルハ出入相償フニ足ラス況ヤ成功モ亦期スヘカラサルヲヤ、今ノ以テ不動産ト為スヘキ者既ニ成レルノ横浜鉄路ヲ購フニ如クハ莫カルヘシト云ヘリ、是ニ於テ数華族皆其説ヲ是ナリトシテ七歳中三百五十万円金ヲ醵シ将ニコレヲ購フコトヲ請ハントスト、嗚呼難易得失ヲ以テコレヲ論スレハ其説固ヨリ易クシテ失ヒ無シ、然レトモ既ニ成ルノ鉄路ハ其行ハルヽコト豈数華族ノ購フヲ須ヰンヤ、夫鉄路ノ用タル独物貨流通ノ便ノミナラス、コレヲ大ニスレハ僻遠ノ民ヲシテ知識ニ進
 - 第8巻 p.377 -ページ画像 
マシムヘク、曠膜ノ土ヲシテ開拓ニ就カシムヘシ、コレヲ小ニスレハ鎮台ノ戌兵必スシモ置カサルヘク、官員ノ路費必シモ増サヽルヘシ、此ノ一利アランカ縦令運輸ノ益ヲシテ其出ダス所ヲ償フニ足ラサラシムルトモ開テ以テ樺太東京ノ声息相通スル一家ノ如ク、其国家ニ益アル果シテ如何ソヤ、是利恭ノ驚喜自揣ラスシテ以テ涯分ノ力ヲ効シ義務ノ在ル所ヲ尽サンコトヲ欲スル所ナリ、然而シテ今数華族商議ヲ横浜ノ鉄路ヲ購フニ決スル、実ニ聞ク所ノ如クナラハ其意唯不動産ヲ興スニ止マルノミ、利恭年少クシテ才疎ナレハ未自其義務ノ在ル所ヲ審ニセスト雖、曩時窃ニ自喜フ所ノ者今日皆変シテ悲トナリ懊悩スルコト日既ニ久シ、頃日慨然トシテ感シ恍然トシテ悟ル所アリ、数華族ノ計此ニ出ツル者必当ニ其故無クハアルヘカラサルナリ、古ニモ道同シカラサレハ相与ニ謀ラスト云ヘリ○下略


〔参考〕評論新聞 第七号〔明治八年五月〕 【青森鉄道新築ノ紛議…】(DK080023k-0008)
第8巻 p.377-378 ページ画像

評論新聞 第七号〔明治八年五月〕
青森鉄道新築ノ紛議投書○此程中仄カニ聞ク、華族数名会議ヲ開キ互ニ各邸ヘ集合シ、鉄道新築ノ企ヲナセリ。其大意、清明ノ今日、各徒ニ恩禄ヲ仰ギ座食ス可ラズ、相共ニ全国官民ノ公益ヲ謀リ、随テ自家亦各後年生産ノ一端ヲ要セント。故ニ各其家禄幾分ヲ以テ、鉄道新築ノ策ヲ建ンコトヲ前島渋沢両氏ニ依頼ス。両氏亦之ヲ諾シ汲々其事ヲ計ルニ、見込概算頗ル巨大ニシテ資本ノ乏キニ苦シム故ヲ以テ、毎会其方法議決スルコトナシ、終ニ同盟四五家別種ノ論アリト云ニ至ル。俚語ニ云、囗ニ大業ヲ唱フル者ニ大業ノ実ナク、又タ小利ヲ貪ル者ニ大利ヲ得ル者スクナシト。唯可恐ハ闇夜ノ竹鎗ト寸善尺魔ナリ。四月下旬、海運橋辺ヘ華族遽ニ集合、井上馨先生ニ会議アリタル由。先生云フ、此度鉄道ノ大事業ヲ興サント欲スル、其志感伏ニ余リアリ、只恐、各盟主ノ余力ハ知ラズ、斯ノ大事業タル建築ノ費、家禄幾分ヲ以テ永続スルコト難カルベシ。今爰ニ概計スル金額五六百万円ニテハ建築始終成熟ヲ問フニ及バズ。利根、坂東太郎ノ二大河ニ橋梁ヲ架スル、此費金既ニ算目ニ上ラズ、況ンヤ年々水害アリ、近傍道路修繕ヨリ其他ノ冗費ヲ活算スル時ハ、実ニ不可思議無量ナリト。此論説ヲ聞テ、満座酔ガ如ク夢ミルガ如シ。此ヲ思ヒ彼ヲ顧ミ、望洋トシテ可否信疑ノ津梁ニ迷ヒタリ。然ト雖モ既ニ再応政府ヘ告ゲタル事件ナレバ、今ニシテ如何カ是レヲ変更シ得ベケン。井上先生再ビ云フ、斯ク迄発起シタル事業結末ヲ遂ズシテハ、各其初志ニ違ヒ、一笑話柄トナルノミナラズ、天下公益ヲ計ルノ志ヲ沮マン。不如今各位ノ所有スル家禄幾分ヲ以テ、新橋ヨリ横浜ニ至ルノ旧築鉄道ヲ売与センコトヲ政府ニ周旋セバ、政府ハ必ズ之ヲ許ス可ク、其新築ノ事業ハ政府ヲシテ当ラシメバ、政府ハ固ヨリ全国内ニ数線ノ鉄路ヲ開クベキ当然ノ業ニシテ、各位ハ更ラニ政府ニ代リテ、旧鉄路ヲ修理シ、長ク其利ヲ占メテ永続ノ計ヲナサバ、官民ノ為ニ公益ヲ計ルノ志モ達スルヲ得テ、一挙両得ノ策ナラント。其言車輪ノ如ク、雄弁四座ヲ動カシ華族皆其言ニ感伏セシトゾ。嗚呼華族ノ大金ヲ募リ鉄道新築ヲ企テ、十年ノ後ニ大益ヲ得ント謀リタル、固ヨリ大事業ニシテ、井上先生ハ一日一会ニ直ニ此大事業ヲ転ジテ巨大ノ利ヲ政府ニ益セントス。其新旧交換ノ
 - 第8巻 p.378 -ページ画像 
妙機、速力ノ強大汽車モ亦及ブ可ラザル也。現今新橋ヨリ横浜ニ至ルノ鉄道所々破損シ、幸ニ其災害ナキヲ喜ブハ人々皆言フ所、華族ノ令扶、此事件ニ関係スル者ニ於テ深ク注意セズンバ、恐ラクハ算外ノ違算アラン、華族ノ井上君ニ感伏セシハ寸善ニシテ、他日若シ尺魔ガ出現スルノ時、井上先生ヲ恨ラムモ、各自其臍ヲカムモ及バザルベシ。