デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
2節 鉄道
7款 北海道炭礦鉄道株式会社
■綱文

第8巻 p.685-703(DK080061k) ページ画像

明治25年5月25日(1892年)

是日開カレタル第四回株主総会ニ於テ社長高島嘉右衛門ニ代リテ議長ト為リ、紛紛タル株主ノ質疑ヲ処理ス。


■資料

北海道炭礦鉄道会社第六回報告 明治二五年一〇月(DK080061k-0001)
第8巻 p.685 ページ画像

北海道炭礦鉄道会社第六回報告 明治二五年一〇月
○総会決議 本年五月二十日東京京橋区木挽町厚生館《(五脱)》ニ於テ株主定式総会ヲ開キ、二十四年下半期間社務実際報告ヲ為シ、同期間利益配当ノ割合ヲ決議セリ


東京経済雑誌 第二五巻第六二五号・第七五九頁〔明治二五年五月二八日〕 ○北海道炭礦鉄道会社定式総会(DK080061k-0002)
第8巻 p.685-686 ページ画像

東京経済雑誌 第二五巻第六二五号・第七五九頁〔明治二五年五月二八日〕
○北海道炭礦鉄道会社定式総会
去廿五日、木挽町厚生館に於て開会せり、出席株主百三十余名にして高島社長会長席に着き、就任以来実地視察せし状況に付き演説を終るや、退席して渋沢栄一氏会長代理となり、書記をして前年度後半季の決算を報告せしめけり、其要領を挙ぐれは左の如し

図表を画像で表示--

       収入部                     経費部                 円                        円 営業収入総計   五六八、五五五・九五一   営業費総計      四三七、三四二・二八九  以下p.686 ページ画像  新設鉄道補給利子  九一、八五九・一〇四   創業費償却        一、〇〇〇・〇〇〇 前期越高      二〇、八四一・一五四   炭礦起業費償却      八、四三七・五〇〇                        積立金         八、〇八九・〇〇〇                        役員賞与及交際費    八、五二五・〇〇〇                        当季配当金     二一八、四〇〇・〇〇〇                         (一株に付一円六十銭即ち年八分に当る)                        後期繰越金       一、四六二・四二〇 合計       六八一、二五六・二〇九   合計         六八一、二五六・二〇九 



右原案の通り異議なく可決せり、而して談話会を開き、其質問は重もに石炭の販路、及び二木理事の私売に関する事等なりしと云ふ


北海道炭礦鉄道会社第四回株主定式総会懇談会議事録(DK080061k-0003)
第8巻 p.686-702 ページ画像

北海道炭礦鉄道会社第四回株主定式総会懇談会議事録
              (北海道炭礦汽船株式会社所蔵)
明治廿五年五月廿五日午後一時廿分ヨリ京橋区木挽町厚生館ニ於テ本社ノ株主定式総会ヲ開ク、其来会者ノ人名株数ハ左ノ如シ
 但番号ハ着席順ヲ以テ之ヲ定メ、番号ナキモノハ其前記名人ニ委任セシモノニ係ル
  着席順    株数    権利個数    姓名
    一   弐、壱〇〇    四弐   高嶋嘉右衛門
    二     五〇〇    壱〇   園田実徳
    三     弐〇〇     四   二木彦七
    四     四五〇     九   渋沢栄一
    五   弐、六〇〇    五弐   田中平八
    六     弐〇〇     四   湯地定基
    七   弐、五〇〇    五〇   北村英一郎
    八     壱〇〇     弐   金井信之
    九     弐弐〇     四   植村澄三郎
    十     壱〇〇     弐   木村一是
                         ○外一七三名氏名其他略
    社長高嶋嘉右衛門氏演述
諸君、私ハ高嶋嘉右衛門デゴザリマスガ、先年来私モ常議員ニ挙ゲラレマシテ、渋沢氏等ト共々ニ当会社ノ事ニ付キマシテハ彼レ是レト心配モ致シマシタ所、図ラズモ這回不肖ノ身ヲ持チマシテ当会社ノ社長ニ命ゼラレマシテゴザリマス、ケレドモ何事モ行届キマセヌコトデゴザリマスカラ、諸君ニ於カレマシテ当会社ノコトニ付キ御心注キノ事モゴザリマシタナラバ、何分トモニ御協議下サルコトヲ私ヨリ偏ニ希望仕リマスル
扨私ハ此度ヒ北海道カラ帰リマスル時分ニいんふるゑんざニ罹リマシテ、今日マデ坐敷内ニ引籠ツテ居リマシタ、医師モ外出ハ未ダ早イカラト申サレマシテ禁足セラレ居リマシタケレドモ、何事ヲ措テモ一ト通リ諸君ニ御目ニ掛リマシテ、兎モ角モ私カアチラヘ参ツテ見タ事ノ実際話ヲ御聞ニ入レタウ存シマス故、押シテ是レニ罷リ出マシタル次第デゴザリマス、夫レ故起チ詰メテ御話致シマスコト何分大儀ニ御座リマスル為メ、此所ニ坐シマシテ申述ベマスレバ、悪カラズ御免ヲ蒙リマス
 - 第8巻 p.687 -ページ画像 
私モ予テ常議員ヲ致シテ居リマシタ故ニ、北海道ノコトハ凡ソハ推測シテ存シテモ居リマシタガ、併シ実際ニ至ツテハドウデアロウカト、実ハ案シ暮ラシテ居ツタコトデゴザリマス、併ナカラ実際ノ有様ヲ能ク見テ参リマセヌケレバ、ドウカウト思ヒノ付ケ方モゴザリマセヌ故ニ、早速アチラヘ参ラウト思ヒマシテ、園田理事並ヒニ北村撿査役同道デアチラヘ参リマシタ、参リマシテ二木理事並ビニ支配人等ノ案内ヲ受ケ、炭山及ビ鉄道ノ巡視ヲ致シマシタコトデゴザリマス
扨彼ノ地ノ鉄道ハ、御聞及ビデモゴザリマセウガ、鉄道庁ノ松本荘一郎並ビニ其他ノ技師等ノ計画デゴザリマスカラ、定メシ慥カナコトデアラウト信ジテ居リマシタガ、実際ヲ見マスレバ、果シテ能ク其一体ノ建築上ニハ心ヲ籠メテ致シテゴザリマスル、私ハ元来鉄道ノ事ニハ古クヨリ関係致シテ居リマスカラ、何程カノ経験モゴザリマスルガ、其眼カラ見マスルト、先ヅ能ク出来テ居リマス、次ニ炭礦ノ方ヲ見廻リマシタル時ハ、坑内マデモ皆案内ニ連レラレテ一通リ総テ実見致シマシタ
元来、私ハ炭鉱ハ始メテヾゴザリマシテ、不案内ノコトデゴザリマスガ、弱年ノ時ニ鉱山ハ七年程モ関係致シマシタ故、工夫ノ使ヒ方、彼レ是レノ事ハ聊カ考ヘモアリマスル所カラシテ、追々技師ト相談致シマシテ、将来ノ計画モ致シマスル心得デゴザリマシタ、而シテ札幌ヘ帰リマシタ上、事務ノ引継ヲ致シマシテゴザリマスガ、事務ノ引継ハ固ヨリ昨年モ撿査院ヨリシテ撿査アラセラレテ、当会社ノ営業帳簿上ノ事ニ調ベカ届イテ居リ、又続イテ北海道庁ヨリ撿査カアルト云フコトニ御通知ニ為ツテ居リマスル故ニ、月々ノ撿査ヲ致シテアリマスル故ニ、固ヨリ撿査役カ能ク撿査ヲシ、且帳簿上ノ事モ一々撿査ヲサシテ見マシタ所ガ、別ニ相違ハゴザリマセヌ故ニ、慥カナコトヽ保証致シマス
其所テ、総体ノ事業上ヲ見渡シマスル所テ、固ト此鉄道ハ百四拾余哩デ、五百万円ノ定額デ始メマシテゴザリマス、然ル所我邦一等工等《(高)》ノ技師ガ実際ニ計画ヲセラレマシテ、夫レカラ事ヲ計リマシタノハ幹線百拾余哩ノ鉄道デゴザリマシテ、旧鉄道ノ方ハ既ニ出来上ツテ居リマスシ、新鉄道ノ方ハ七月ニ開ケマスル位ノ次第デゴザリマスガ、夕張ノ方ハ少シ後ニ残リマスルコトデアロウト心得マス、夫レデ岩見沢カラ室蘭ニ達シマスル迄ノ線路ハ来ル七月ニ開ケヤウト存ジマス、元来私ガ見渡シマスル所デハ此鉄道ハ五百万円ノ定額ヲ以テ仕掛ケタ事業デゴザリマスガ、最早八九分マデハ出来上ツテ居リマシテ、金ハ四百有余万円ノ使ヒ払ヒヲ致シ、立派ニ鉄道ハ出来テ居リマスル、所カ眼前ニ於テ我邦鉄道ノ有様ヲ見渡シマスル所デハ、何レノ鉄道ニ致セ、大抵少クモ百万円以上ノ資本デゴザリマス、併ナガラ客車カ大キケレバ其割合ニ金ガ掛ル、或ハ隧道ヤ其他事業上ニ種々困難ナコトガアレバ従ツテ金ガ掛リマス、彼ノ大坂ノ鉄道ノ如キハ一哩壱万五千円カラ四万五千円ト云フ割合デゴザリマスガ、当社ノ事業上ヨリ見渡シマスル所デハ、大概三万五千円位ノ敷設費ヲ要シマスル、サウシマスルト鉄橋其外十分ニ出来テ、客車ノ不足モ告ゲス、万端行届キマスル次第デ、決シテ此鉄道ニ余計掛ツテ居ルト云フコトハゴザリマセヌ、又却
 - 第8巻 p.688 -ページ画像 
テ他ヨリ安ク挙ツテ居リマスル訳ト云フモノハ、土地ノ買上カ面倒デハゴザリマセヌ、又地形モ余リ嶮岨デハゴザリマセヌカラ、旁々以テ案外ノ好都合ニ運ブコトヽ存ジマス、是レニ依ツテ先ツ五百万円ノ予算ナラバ仕舞ヒノ治リハ就クデアラウト存ジマスル
而シテ炭礦ノ方ハ、既ニ幌内ヲバ拾万余円ヲ以テ政府ヨリ払ヒ下ゲヲ致シテ、是レニ拾六万円ノ金ガ資本トシテ這入テ居リマス、続イテ幾春別ニハ拾三万余円ノ金カ出テ居リマス、又空知ニハ弐拾九万有余円ノ金ガ這入ツテ居リ、夕張ニハ弐拾弐万余円ノ金ガ這入ツテ居リマス其他全体ヲ見渡シマスレハ、現ニ三拾万円モ這入ツテ居ル所ガアリマス
又旧鉄道テゴザリマスル、旧鉄道ハ御承知モアル通リ、亜米利加風ノ鉄道デゴザリマシテ、三拾磅ノ軌鉄ヲ引キマシテ運転ハ致シテ居リマスガ、此三拾磅ノ軌鉄ハ四拾五磅ニ仕直サヌケレバナラヌヤウナコトニナリマシテ、且ツ払下代金並ニ村田堤即チ該鉄道ノ旧拝借主タル運輸受負人ヨリ之ヲ引受ケマシタ此相対ノ関係ノ示談金ト、是レニ新規ノ軌鉄ヲ入レマシテ、サウシテ是レニモ既ニ百有余万円ノ金カ這入ツテ居リマス、以上見渡シマスルト云フト新鉄道ニ四百万円、礦山ニ百万円余デゴザリマス、夫レカラ旧鉄道ニ百万円、併セテ六百万円ノ金ニ見ヘ直ツテ居リマス、ソコデ今商業上ノ眼カラ私ガ見マスルト云フト、五百万円ノ予算デ掛リマシテ凡ソ仕上ルノニ三拾万円ノ運転金ヲ入レマス、夫レデ先ヅ五百万円デ出来ルト致シマセウ、是レカ保証トシテ政府ヨリ御下渡シニナリマスル、此利子カ五朱デ、弐拾五万円トナリマス、扨旧鉄道ガ運ノ宜イコトニハ……当社ノ為ニ運ノ宜イコトニハ、日々ニ段々繁昌ニナリマシテ、実ニ客車モ荷物車モ一杯ニナツテ、賑カナ繁昌ナ次第デゴザリマスル故ニ、更ニ之ヲ修復改良スルニ示談金等ヲ添エテ百万円ニナリマシタ、所カ此払下鉄道ハ拾九万何千円ト云フ最近ノ利益カアリマス、是レハ二割ニナリマス、是レハ全ク社ノ運ノ宜イノデ、追々繁昌シテ参ツタ訳デアリマス、別ニ安イモノヲ買ツテサウト云フ訳デハナイ
ソコデ右ノ旧鉄道ノ払下デス、此払下ニ出ス所ノ弐拾万円ニ、政府カラ御払下渡シニナリマスル弐拾五万円ヲ入レテ四拾五万円ニ為リマスル、全体集金ニナリマスルモノハ六百五拾万円ニ対シマスル六朱九厘ニ当リマスル勘定デゴザリマス
扨是カラ先ノ楽ミト云フモノハ、此七月ニ開ケマスル所ノ岩見沢及ヒ室蘭間ノ新鉄道ハ前途甚タ多望ノ線路ニテ、尚ホ夕張ノ礦山ヲ見渡シマスレバ、炭層極メテ豊富、後来ハ運炭モ亦定メテ多忙ナラント思ハレマス、所ガ兎ニ角先キニ宜イ見込ヲ立テヽシマスルニハ、実見ガ肝腎ト存ジマシテ、私ハ今度彼方ヘ参リマシタ、ソコデ重役相談ノ上、今マデ人ガ余ツテ居ルト云フ訳デハゴザリマセヌガ、時間ヲ勉強シテナリトモ、斯ウ云フ石炭ノ十分ニ商ヒノ儲ケガ尠クテ、殊ニ競争ノ際デアリマスレバ、何処迄モ社員ハ勉強シナケレバナラヌト云フ考ヘカラ、社員ヲ三分ノ一以上免職ヲシマシテ、サウシテ後ノ所ヲ見届ケテ当地ヘ帰リマシタル其途中いんふるゑんざニ罹リマシタ、ケレドモドウカ皆様ニ御目ニ掛ツテ此有様ヲ申上タイト思ヒマシテ、帰宅ヲ急ギ
 - 第8巻 p.689 -ページ画像 
マシタ次第デゴザリマス、幾重ニモ石炭ヲ廉クシテ何処ニモ負ケナイヤウニ勉強シヤウト存ジ、帰宅ヲ急ギマシタ所ガ、ドウモ病ニハ勝テマセヌデ、今日マデ引込ンデ仕舞ヒマシテゴザイマス
先ヅ見込ハ斯ノ如クデゴザリマス、始メ彼方ヘ参リマシタ時迄ハ、常議員ハ致シテ居リマシテモ十分ニ見マセヌコトデゴザリマスカラ、色色ト心配ヲ致シテゴザリマスガ、扨行ツテ見マスルト即チ盛大ノ計画デアリマス、私共ハ全体事業ハ好キデゴザリマスルガ、中々感心ヲ致シマシタ、チヨツト申シマスルト、小樽・札幌ノ停車場ナゾハ当地停車場ノ模様ト格別変リナク、実ニ賑ヤカナ繁昌ナ停車場デゴザリマシテ、マダ先々キマデノ見込ハ十分デゴザリマスル
ソコデ私モ色々御話ヲ申上タイト存ジマスガ、何分ニモ医者カラナラヌト云フノヲ、是非諸君ニ御目ニ掛ツテ一ト通リ御話ヲシタイト思ヒマシタカラシテ、今日推シテ参リマシタ事デゴザリマス、ドウゾ宜シク……後ノ定式総会ノ議長ニハ渋沢君ニ御頼ミ申シマシテゴザリマスル、因テ差代リマシテ渋沢君ニ願ヒマス
  (社長高嶋嘉右衛門氏退席)
  (渋沢栄一氏社長代理議長席ニ着)
○議長渋沢栄一氏 皆様今日ハ御苦労デゴザリマス、只今社長カラ申上マシタ通リ、今日ノ定式総会ノ議長ニハ社長ガ勤メラレル筈デゴザリマスガ、病気ノタメ何分ニモ堪ヘラレマセヌ故ニ、私ニ代理ヲ致シテ呉レルヤウニトノ御委托デゴザイマス、依ツテ不肖ナガラ会長ノ代理ヲ仕リマスル……夫レデハ今日ノ定式総会ヲ是レヨリ開キマス、第五回報告書ヲバ書記ヲシテ朗訳致サセマス
  (書記報告書ヲ朗読ス)
○議長渋沢栄一氏 唯今朗読致シマシタノガ当期決算ノ報告デゴザリマシテ、此損益勘定ノ項目ヲ此株主総会ニ於テ御認可ヲ下サレマシテ、今ノ積立金及ビ配当ノ御議決ヲ請ヒマスノガ、本日ノ総会ノ要点デゴザリマス、若シ又何カ御不審ナコトガゴザリマスレバ、御質問ニ応ジマシテ御答ヘスルコトニ仕リマスル、ドウゾ只今申上マシタ点ニ付テ御議決ヲ願ヒマス
○二十二番足立孫六氏 此炭礦部ノ利益ガ至ツテ尠ウゴザリマスガ此計算期限内ニ採掘ヲ致シマシタル所ノ炭礦ノ総噸数ハ何程デゴザリマスカ
○支配人植村澄三郎氏 総体デ拾弐万七千九百九拾三噸デゴザリマス、但シ半期間採掘シタ量デゴザリマス
○二十二番足立孫六氏 夫レハ悉ク売却済ミノモノデゴザリマスカ或ハ未ダ売却済ミニハナラヌノデスカ
○支配人植村澄三郎氏 此拾弐万七千九百九拾三噸ト云フノハ、半期間ニ掘リマシタ総額デゴザリマスガ、之ヲ売リマシタ額ト云フモノハ、九万六千余―噸ト云フモノデゴザリマスカラ、其余ハツマリ残ツテ居ルモノト見テ差閊イナイノデアリマス
○二十二番足立孫六氏 夫レハ此利益ノ計算ニハ這入ツテ居リマセヌカ
○支配人植村澄三郎氏 夫レハ這入リマセヌ、只売リマシタ金額丈
 - 第8巻 p.690 -ページ画像 
ヲ利益勘定ノ方ヘ入レマシタノデゴザリマス
○二十二番足立孫六氏 前刻高嶋君ノ御演説中ニゴザリマシタガ、本社ノ役員ヲ三分ノ一減ラシタト云フコトデゴザリマス、夫レハ果シテ人員ガ三分ノ一ニ減ツタカ、又ハ役員ノ給料カ三分ノ一減ツタト云フノカ、伺ヒマス
○支配人植村澄三郎氏 夫レハ総人員一百九拾四人ノ中カラ三分ノ一ヲ減ラシタノデゴザリマシテ、其人員ハ凡ソ六拾五人デアリマス
○二十二番足立孫六氏 其減ラシタ人員ノ取ツタ所ノ金額ハ何程デアリマスカ
○支配人植村澄三郎氏 之ヲ月額ニシテ弐千七百円位ニナリマセウト存ジマス
○二十二番足立孫六氏 弐千七百円ヲ御減ラシニナリマシテ、現在ノ総支払高ハ何程ニナリマスカ
○支配人植村澄三郎氏 当年四月三十一現在調《(日カ)》ベニ拠リマスルト、総額八千六十円位デゴザリマシタカ、尚ホ其中ヨリ余程減ジマシタカラ、唯今ノ所デハ七千余円位ヲ給与シテ居リマス
○二十二番足立孫六氏 尚ホ伺ヒマスガ、当時七千円ト申スノハ是レカラ御減ラシノ見込ハ最早就カナイノデスカ、或ハ此上ニマダ減ラシ得ル御見込ナンデゴザリマスカ伺ヒマス
○議長渋沢栄一氏 其大体ノ方針ハ私カラ御答ヘヲ申上マスガ、夫レハ先ヅ此石炭ノ販路ノ景況ニ依リマシテハ、最初冀望致シマシタ如ク盛ニ石炭ノ掘採ヲナシ、又販売モ十分ニ社ニ於テ取計フト云フ場合ニ至リマシタナラバ、果シテ今日ノ人員ヲ減ラスト申スコトハドウモ出来マスマイ、或ハ増スカモ知レヌト考ヘマス、併シ石炭ノ販売高ハ今日ノ勢ヒデ見マスルト、年々ニ其掘採高モ共ニ増加スルト云フコトハ、会社ノ営業上カラ利益ヲ図ル上ニ於テ適当ナル考案トモ認メマセヌノデゴザリマス、併シ今日強テ減却スルト云フ次第デハゴザリマセヌガ故ニ、此石炭ガ左程ニ増加シナイ場合ニ至リマシタナラバ、尚ホ一層注意ニ注意ヲ加ヘマシテ、大ナル減少ハ出来ルト御答ハ出来マセヌガ、務メテ省略シヤウト云フ重役一同ノ方針デゴザリマスカラ、左様御承知ヲ願ヒタイノデアリマス
○八拾九番渡辺湜氏 承リマスルニ、石炭ノ販売ニ付テ他ニ競争者モ出来テ参ツタ為ニ、之ヲ日本内地ノミニハ売リ上ルコトガ出来ナイト云フ所カラ、爾来当局者ノ御心着キデハ之ヲ外国ニ売ラウトシテ頻リニ販路ヲ求メテ居ラルヽト云フガ、事実左様デゴザリマスカ、而シテ直段ノ義モ高イノデスカ又ハ安イノデスカ、其辺ノ所モ伺ヒタイノデアリマス
○議長渋沢栄一氏 其御尋ネニ対シマシテ、詰リ此炭礦鉄道会社ノ石炭ノ販売ハ、北海道ニモ売リマスガ、東京最寄ニ売ルノガ余程多イノデゴリマス、然ルニ曩ニ申上マシタ通リ、内地ノ石炭カ需用ヨリ供給ノ方ガ余ルト云フ有様デアル、故ニ此炭礦鉄道会社ノ採掘シタ石炭ヲ残ラズ売ルト云フコトハ迚モ為シ難イ話デゴザリマス、依ツテ当時香港上海アタリヘ夫レ夫レ売リ拡メル最中デゴザリマス、夫レデ九州炭ナドヽ自ラ競争スル有様ハアリマスガ、固ヨリ現在ノ売レ高ヲ以テ
 - 第8巻 p.691 -ページ画像 
満足スルモノデモナシ、務メテ宜イ結果ヲ得タイト存シマシテ、モー一歩此石炭ヲシテ拡張スル考カラ、然ルベキ人ヲシテ桑港又ハ加那陀若クハ濠太利亜等ノ石炭販売ノ模様ヲ頻リニ調査シツヽアルノデアリマス、殊ニ此事ニ付テハ当任者ノ社長始メ重役共ノ考ヘル所デハ、香港上海アタリヘモ決シテ其販売ヲ等閑ニスルコトハ出来ヌトハ思ヒマシテ、種々配慮ハ仕リマスルガ、何ヲ申スニモ九州ノ方カ彼地トハ道モ近クゴザリマスシ、運送ノ便利モ北海道トハ較ベ物ニナラヌ始末デゴザリマス、依ツテハ是等ト競争スルト云フコトハ寔ニ困難デゴザリマスルカラ、旁々先ヅ内地ヲ飽クマデ拡メテ、而シテ尚ホ一方ニハ亜米利加ノ方ヘモ推シ広メタイト云フ、斯ウ云フ考デゴザリマスル、重役共ノ考ハ先ヅ左様デゴザリマスルカラ其御積デ願ヒマス
○中略
○二十二番足立孫六氏 尚ホ伺ヒマスカ、売炭ノ景況ニ付キマシテ東京所在ヘ石炭ヲ売ルニハ之ヲ一切売炭組ヘ御托シニナツタト云フコトヲ聞イテ居リマスガ、或人カラ承ハル所ニ依ルト、ドウモ炭礦会社ノ方デハ余リ利益ガナイト云フコトデアリマス、然ラバ本員等ノ考ヘマスル所デハ、夫レ程利益ノナイノニ尚ホ殊更ニ売炭組ヘ任セルト云フコトハ、利益上カラ見テモ余リ得策デハアルマイト存シマス、是等ハ如何ナモノデアリマスカ、現今ノ場合カラ一応ドウ云フモノカト云フ事ヲ伺ヒタイト思ヒマス
○議長渋沢栄一氏 夫レニ付テハ大体上ノ思ヒ入レヲ私カラ申上マス、此売炭組ト云フモノニ対シテ此会社カラ炭ヲ売ルコトヲ約束シマシタノハ、ドウモ細カイ所ノ販売上ニ付テハ、会社ガ直接ニ取扱ヒマスルコトハ却テ利益デハアルマイ、即チサウ云フ小売ヲ致スニハ、却テ小売商売ノモノニ托シタ方ガ手数モ掛ラズ又余計ナ入費モ掛ラズシテ宜シカラウト云フ、其時分社長始メ重役共ノ考案カラ致シマシタコトデゴザリマス、小売ハ其通リニ小売専業ノモノニ任セマシタガ、併シ重立チマシタ所ノ、仮令バ郵船会社ニ対スルトカ、或ハ日本鉄道会社ニ対スルトカ云フコトニ付テハ、会社カ直接ニ致シテ居リマス、然ルニ今日ニ至リマスルト、石炭ノ販路ガ随分競争ノタメニ諸方カラ押シ狭メラレテ参リマシテ、其為ニ売炭組ノ働キモ自然当初ニ予期シタ如ク満足ノ働キヲ呈シテ居ラレヌト考ヘマス、而シテ是カラ先キ石炭ヲドウ云フ風ニシテ販売スルガ宜シカラウトカ、又小売ノ儀ニ付キマシテモドウ云フ方法ニスベキカト云フ考案ハ、先ツ今日ノ実況ニ照ラシマシテ、夫レ々々計画スル積リデゴザリマスカラ、夫レカラ先キノコトハドウスルト問ハレマシテモ、其辺ハ御答ガ当席ヨリハ致シ兼ネマス
○八十四番松本福昌氏 此総会ニ於キマシテ色々ト株主諸君カラ御心配ノ廉ヲ問ハレマスルコトハ固ヨリ当然ノ話デ、他ニモ石炭ハドウスル、其販売ノ仕方ハドウスル、ト云フ御質問ニナリタイ方ハ随分沢山有ロウト存シマスル、ケレトモ今日ハ株主ノ定式総会デ臨時総会デハナイ、今日ハ本社ノ積立金ハ何程ニスル、配当ハドノ位ガ相当ナリト云フコトヲ議スベキ訳デアツテ、石炭ハドウスル船ハドウスルト云フ御質問ハ今日ノ定式総会ニ為スベキ場合デハナイ、夫レ等ハ臨時総
 - 第8巻 p.692 -ページ画像 
会ノ節ニ質問スベキモノデアルカラ、今日ハ其質問ハ御止メナサルガ宜カラウ、サウシテ尚ホドウシテモ質問シナケレバナラヌト云フコトナラバ、別ニ臨時総会ヲ開カレタ節カ、又ハ本社ナリ東京支社ナリヘ参ツテ御質問ナサルガ宜カラウト思ヒマス、左モナクバ何レモ今日ハ繁用ノ所ヲ繰リ合セテ参ツタノニ、サウ云フ質問ニ逢ツテ愚図々々ト時間ヲ延バサレルノハ甚ダ迷惑デアリマス、我々ハ早ク積立金ト配当ノ所ヲ伺ヘバ夫レデ宜イノデアル
  (此時拍手スルモノ多シ)
○八十九番渡辺湜氏 唯今ノ御説モゴザリマシタガ、疑ハシケレバ何処迄モ伺ハナケレバナラヌ、疑ハシイ所ガ有テモ問フコトハ出来ヌナドヽ、此営利会社デサウヤカマシク圧倒サレテハ寔ニ困リマス、聞クベキコトハ飽クマデ聞カナケレバナラヌ、又重役方ニ於カレマシテモ是レニ御答ヘナサルコトハ訳モナイコトデ、左程六ツケシイコトトハ思ハレヌノデアリマス、扨私モ伺ヒタイノハ道庁ヨリ下サル補給利子ノコトデスガ、是レハ先刻未タ下付ニナラヌヤウニ承ハツテ居リマス、下附ニナラナケレバ我々ガ受クベキ利益割賦金ガ足ラナクナル訳デスガ、夫レ等ハ準備金トカ又ハ積立金ノ内カラ立替ヘテ御支払ニナルノデスカ、如何デアリマセウカ其段ヲ伺ヒマス
○議長渋沢栄一氏 夫レハ会社ノ方ノ勘定上自ラ一方ノ補給利子ガ下ラネバ、是レハ即チ会社ノ計算上、道庁ニ向ケテ貸シタ訳ニナリマス、夫レニ依ツテ其金カ有リマセヌカラト云フテ、利益配当カ出来ナイト云フコトハアリマセヌ、夫レハ又会社ノ資金ノ内カラ一時立替ヘテ割賦スル訳ニ自然相成リマスル次第デゴザリマス
○百三番越智義路氏 只今八十四番カラノ御説ハ至極御尤ノ次第デゴザリマス、定式総会ト臨時総会トハ其趣カ違ヒマスカラ、先ヅ此定式総会ノ節ニ於キマシテハ、矢張リ其範囲内ニ於テ早ク議了シマシテ、而シテ後ニ懇話会トカ談話会トカ云フ名ヲ付ケマシテ、各々方ノ御疑ノアル所ヲ十分ニ御質問ニナツテハ如何デゴザリマセウカ、各員ニ伺ヒマス
○五十八番大竹藤七郎氏 私モ百三番ニ賛成デゴザリマス、夫レハ此定款第三十九条ニモアリマス通リ
  本会社定式総会ニ於テハ社長ヨリ報告スル前半季間ニ係ル資本勘定・収益勘定ヲ査定シ、純益金配当ノ割合ヲ定メ、当期改選ノ正副社長・理事・常議員又ハ撿査役ヲ撰挙スルノ外、他議ニ渉ルコトヲ得ス
トゴザリマスカラ、此所デハ先ツ定式総会タケノコトヲ議了シマシテ然ル後ニ私ハ臨時総会ヲ要求致シタイト思ヒマス、勿論出席人員ノ如何ニ拠リマシテハ臨時総会ヲ開ク訳ニモ参リマセヌガ、只今何名御寄リニナツテ居リマセウカ、議長ニ伺ヒマス
○議長渋沢栄一氏 出席員ノ数ハ今日議事ヲ開ク丈ケハ御寄リニナツテ居リマス、併ナガラ臨時総会ヲスグニ開クト云フ訳ニハ参リマセヌ、御要求ニナレバ夫レ丈ケノ時日ヲ経タ上デナケレバ臨時総会ヲ開ク場合ニハ為リ兼ネマス……ソコデ序デゴザリマスカラ議長ノ考ヲ申シマセウガ、色々諸君カラノ御説モゴザリマスル通リ、此会社ノ事ニ
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付テハ、諸君カ成ル丈ケ事情ヲ審ニ御承知ニナリタイト云フ御希望ハ御尤デハゴザリマス、其御冀望ニ添フヤウニ致シタイト云フノハ我々会社ノ事務ヲ担当スル人々ノ考案デゴザリマス、決シテ議事ヲ簡略ニシテ御問ノ尠カランコトヲ冀フ精神ハ毛厘モゴザリマセヌ、デハゴザリマスガ、定款ノ所謂第三拾九条ニ
  本会社定式総会ニ於テハ社長ヨリ報告スル前半期間ニ係ル資本勘定・収益勘定ヲ査定シ、純益金配当ノ割合ヲ定メ、当期改選ノ正副社長・理事・常議員又ハ撿査役ヲ撰挙スルノ外、他議ニ渉ルコトヲ得ズ
トゴザリマスル以上ハ、ドウシテモ其範囲ヲ定メテ質問ノ程度モ勢ヒ制限シナケレバナリマセヌ、依ツテハ会長トシテ私ノ冀望スル所デハ、先刻ノ百三番ノ御説ノ如ク、当定式総会ニ於キマシテハ勘定上ノ重要ナル御質問ニ止メマシテ、兎ニ角一旦積立金其他ノ割賦金ノ儀ニ付テ御議決ヲ願ツテ、而シテ後ニ尚ホ会社ノ営業上其他ニ付テ御質問ガゴザリマスルナラバ、更ニ一種ノ御相談会ト云フヤウナモノヲ御開キニナリ、傍聴等ヲ禁ズルコトニ致シテ如何デゴザリマセウカ、諸君ニ御計リ申マス
○二十三番早川覚兵衛氏 二十三番ハ会長ノ御述ニナツタ所ノ事ニハ不同意デゴザリマス、成ルベク此席デ聞カレル丈ケハ御聴カセ下サルコトヲ望ミマス、定式総会ダカラト云ツテ質問ノ出来ナイト云フコトハ有リマスマイ、詰リハ会社ノ会計ニ関係スルコトデアリマスカラ株主ニ疑問ガアレバ、会長ハ御迷惑デモ御答ヘナサルヤウニ運バレルガ宜シイコトヽ思ヒマス
○議長渋沢栄一氏 二十三番ノ御説デスガ、会長ハ決シテ迷惑トハ思ヒマセス
○九十三番山口権三郎氏 只今百三番等ハ此定式総会ニ於テハ勘定外ノ質問ハイケヌニ依ツテ、此定式総会ヲ決了ノ後ニ臨時総会デモ開イテ、夫等ノ質問ヲスルガ宜イト云ハレマシタガ、私ノ考デハ定式総会ノ時ニ於テモ其質問ハ計算上ノ外ニ於テ許スベカラズト云フ理窟ハナイト思ヒマス、定式総会デモ質問スベキ所ハ何処迄質問シテモ差閊ヘナイ、別段是レガタメニ臨時総会ヲ開クニハ及バヌ、臨時会ハ臨時会デ、別問題ノ有ツタ時ニ開クベキモノデアルカラ、或ル質問ヲナス為ニ態々臨時総会ヲ起スト云フコトモ固ヨリ出来ベキ筈デハ無イノデアリマス、左スレバ質問セラレタコトデアルナラバ、当局者ハ此席ニ於テ十分御答弁ニナツテ宜シイコトヽ考ヘマス
○百二番泉清助氏 私ハ先刻会長カラ御述ベニ為ツタ如ク、定式総会ニ於テハ計算ノコトヲ早ク議了シテ、定式総会ガ終リマシテカラ更ニ相談会ナリ懇話会ナリヲ開キマシテ、諸君ト能ク質問モシ相談モ致シタイト考ヘマス、如何デゴザリマセウ、御賛成ノ諸君ハドウカ速カニ御賛成アルコトヲ冀ヒマス
  (賛成、賛成ト呼フモノ多シ)
○九十九番三輪信次郎氏 先刻カラ段々諸君ノ御論カ定式総会デハドウトカ斯ウトカ御論モアリマスガ、勿論此総会カ議院ヤ何カノヤウニサウヤカマシイ集会ト申スノデモアリマスマイカラ、其質問カ問題
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外ニ渉ツテハナラヌト云フ話デモ有リマスマイ、定式総会デアルカラ差閊ガアルト云フ話デモ無イト思ヒマスカラ、サウ云フ議論ハ扨措テ、定款ニ拠ツテ定式総会ノ計算上ノコトヲ御極メニ為ツテ後デ、相談会ヲ開クト云フ約束ヲシタナラバ宜カラウト云フ、百二番カラノ御話デゴザリマシタ、夫レナラバ夫レト御定メニナツテ、定式総会カ終ヘタカラ宜イト云フテ、社長其他重役ノ方カ逃ケテ往カヌト云フコトヲ約束シテ置キマシタナラバ、夫レデ事ハ弁ズルノデアリマセウカラ直チニ是ヨリ定式総会ニ御移リニナツテ、議スベキコトハ早ク議セラルヽガ宜シカラウト存ジマス、一言申上マス
  (賛成、賛成ト呼フモノ多シ)
○二十三番早川覚兵衛氏 皆様ハヱライ早イ方ニ賛成ヲナサルガ、夫レ程早ク早クト急キ立テルナラバ、何時デモ御帰リナサルガ宜イ……
○九十九番三輪信次郎氏 サウハ往キマセヌ
○議長渋沢栄一氏 定式総会ノ議決ノ済マヌ内ニ帰ラレテハ困リマス
○九十九番三輪信次郎氏 二十三番ニハ沢山質問スベキコトガアルナラバ懇話会ノ時ニ御聞キナサルガ宜イカラウト思ヒマスカラ、二十三番ニ一応御忠告シテ置キマス
○二十三番早川覚兵衛氏 サウ云フ事ヲ騒イデ居ル間ニ聞ケバ、夫レガ早ク済ムノダ、モー少シ聞ケバ大概宜イノデアルカラ黙ツテ御聞ナサイ
  (満場哄笑、是レヨリ議場稍々騒擾ヲ極ム)
○九十四番柏村信氏 チヨツト計算上ニ付テ伺ヒマスガ、此補給利子九万千八百五拾九円拾銭四厘ト云フノハ、未タ政府カラ下ラヌト云フガ、果シテ左様デスカ
○議長渋沢栄一氏 マダ下リマセヌ
○九十四番柏村信氏 サウシマスルト弐拾壱万八千四百円ト云フ配当金ノ中カ不足ヲスルノデスネ
○議長渋沢栄一氏 左様デスガ、別段其金ガ無イト云フノデハ無イノデス、矢張貸勘定トナツテ存スル訳ニナルノデゴザリマス
○九十四番柏村信氏 明瞭ニ承知シマシタカラ、最早九十四番ニ於キマシテハ格別此計算上ニ付テ異議ハゴザリマセヌ、此通リ議決ニナルコトヲ望ミマス
○二十二番足立孫六氏 私モ此報告ニ付テ計算上ハ異議ガゴザリマセヌ、就キマシテハ之カラ臨時会ヲ開ク丈ケノ数ニハ只今人員カ充チテ居リマセウカ
○議長渋沢栄一氏 株数ハ充チテ居リマスルガ、人数ガ足リマセヌ
○二十二番足立孫六氏 左様ナラバ懇話会デモ宜ウゴザリマスカラ夫レニ移リタウゴザリマス
○九十三番山口権三郎氏 私ハ御尋ネ申シタイコトガゴザリマス、此程何新聞デゴザリマシタカ、或社員トカ申スモノガ、石炭ヲ私ニ売リ払ツテ其金ヲ着服致シタト云フコトガ出テ居リマス、是レハ全ク事実デゴザリマセウカ、又全ク無イコトヲ書イタノデアリマセウカ、若
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シ無実ナラバ取済《(マヽ)》ヲ請求サルベキデゴザリマスガ、如何デアリマセウカ
○百十八番植村金吾氏 会長ニ伺ヒマスガ、本日ハ定款ニ拠ツテ株主ノ定式総会ヲ御開キニナツタデゴザリマセウ……
○議長渋沢栄一氏 サウデス
○百十八番植村金吾氏 然ラバ只今ノ九十三番ノ質問ハ何故ニ御差止メニハナラヌノデスカ、アレハ問題外ノ質問デハゴザリマセヌカ
○九十三番山口権三郎氏 決シテ問題外ノ質問デハ無イ、矢張リ会計上ニ関スルコトデ、若シ社員ニシテ私ニ売払ツタモノガアルナレバ自然ト利益ノ計算上ニ関係シマスルカラ問フノデアリマス、若シ果シテ左様ナ事実ガアレバ聞キ捨テナラヌコトデモ有ルシ、直接ニ我々ノ頭ノ上ニモ関係ヲ持チ来スモノデアルカラ、質問ハ当然ナコトデアリマス
○百十八番植村金吾氏 九十三番ノ今云ハレマシタコトハ私ハ本日ノ会ニハ直接ノ関係ハアルマイト思ヒマス、凡ソ物ニハ間接ト直接ト二ツアルモノデアリマス、九十三番ノ質問ハ直接デハナイ、定款上今日ノ総会ニ於テ許スベカラザル質問デアルト思フカラ、会長ハ夫等ニ頓着ナク速ニ決ヲ採ラレムコトヲ望ミマス
○八十九番渡辺湜氏 私ナドハ是レダケ早ク議決シテ仕舞タイ、サウシテ又理事ナリ社長ナリ其他ノ重役ナリ誰デモ悪イコトヲシタナラバ、臨時総会ヲ開イテ処分スルマデノコトデアル、ソンナニ騒イデシナクトモ、兎ニ角此処デハ立派ニ議決ヲシテ、此次ノ懇話会デ十分御質問ニナツテハ如何デセウカ
○議長渋沢栄一氏 九十三番ニ御答ヘシマスカ、只今ノ御質問ハ能ク分ルコトデゴザリマスカラ、丁寧ニ御答ヘハシタイノデスガ、先刻来続々ト諸君カラ此会計ノ決算ダケハ議了シテ仕舞ヘト云フ御注文カ続々有リマスニ依ツテ、是レヲ一旦議了シテ後ニ御答ヘスルコトヽシタイト思ヒマスガ……
   此時九十三番、三十九番其他発言ヲ求メテ議場騒然)
○二十九番横山辰五郎氏 先刻カラ補給利子ガ下ラヌ下ラヌト云フテ居リマスガ、夫レハドウシタラバ御下附ニナルノデスカ
○議長渋沢栄一氏 御下附ニナルマデ会社ガ黙ツテ見テ居ル訳ニハ往キマセヌ、御撿査ヲ経次第、勘定カ相当ノモノデアルト云ヘバ、御下附ニナルノデアリマスカラ、早晩御下附ハ勿論ノコトデス、併シナガラ其手続ハ固ヨリ尽シテ居リマスカラ、ソンナニ御心配ニハ及バヌコトヽ考ヘマス
○二十二番足立孫六氏 最早私ハ討論尽キタト認メマシテ、討論終結ノ動議ヲ起シマス
○議長渋沢栄一氏 夫レデハ決ヲ採リマセウ、此定式総会ノ報告ニ就テ、積立金、役員賞与金、及ビ株主配当金ニ付テ、原案ニ対シ御異存ナクバ起立ヲ願ヒマス
  起立者 満場一致
○議長渋沢栄一氏 夫レデハ原案通リ御認可下サレタルモノト見テ此定式総会ハ終リマシタ……夫レデハ是レヨリ懇話会ヲ開キマス、ド
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ウデゴザリマセウカ傍聴ハ禁ジマセウカ……
  (「禁ズルガ宜イ」ト云フモノ多シ)
夫レデハ禁ズルコトニ致シマス、会長ハ決シテ逃ゲハ致シマセヌ、今夜十二時ニナツテモ諸君ノ御許シガナケレバ此所ニ居リマス……併シマア一服ヤリマセウ、其上デ御ユツクリ御議シナサルコトヲ会長モ望ミマス
  午後三時二十五分休憩
  休憩後三時四十分懇話会開会
○議長渋沢栄一氏 ドウゾ皆様御着席ヲ願ヒマス、是ヨリ御出席株主諸君ノ懇話会ヲ開キマス、併シ是レ程ノ御人数デスカラ矢張リ規則ト云フ程デモゴザリマセヌガ、普通ノ議事規則ニ御拠リ下サツテ議場ノ混雑セヌヤウニ願ヒマス、又御注意申上テ置キタイノハ、質問中、細カナ勘定ニ渡リマスルト、書類ヤ何カヽラ引出シテ答ヘナケレバナラヌコトニモナリマシテ、甚ダ煩ハシクナルノヲ恐レテ居リマスカラ、御質問ノ重ナル点ニ御留メ下サルヤウニ仕リタイト存ジマス、夫レデ固ヨリ懇話会ノコトデゴザリマスカラ、成ルベク会社ノ営業上ニ付テ疑ハシイ所ヲ御質問下サルノハ勿論ノコト、諸君ニ於テ御忠告下サルコトガゴザリマスナラバ、御遠慮ナク仰シヤツテ願ヒタイ、我々共ハ悦ンデ承ハリマスルデゴザリマス、ドウカ其辺ノ所ハ然ルベク願ヒマスル
○二十二番足立孫六氏 只今ドナタデゴザリマシタカ、石炭ヲ私売シタト云フコトガ新聞紙上ニ現ハレテ居リマシテ、大分坊間デハ評判カ悪フゴザリマス、是レハ実ニ社ノ信用ニモ関係スルコトデゴザリマスカラ、株主タル我々ノ疑団ノ解ケルヤウニ御話シ下サルコトヲ冀ヒマス
○議長渋沢栄一氏 定式総会ノトキニ九十三番カラノ御質問デゴザリマシテ、其時今御答ヘ申上ラレヌデハナイト申上マシタガ、是レハ決シテ事実無根ト申スノデモゴザリマセヌ、併ナガラ新聞紙上ノ報道スル如ク、何カ斯ウ理事ナリ支配人ナリガ私ニ其物ヲ偸ミ取ツタヤウニアリマスノハ全ク無根デゴザリマス、其次第ハ、最初此出目貫ト申スモノハ、創業ノ際ニ当テ、ドレ位アリマスモノカ判然致サズ、又全体石炭ノ取扱ヒ振リハドウ云フモノデアルカト、色々ト配慮ヲ運ラシマシタ末、其扱ヒ振リニ付テ能ク勉励サセタイト云フ所カラ、前社長ノ思ヒ入レニ依ツテ、でめかん丈ケヲ其取扱人及格別勉励ノモノヘ特別ノ賞与トシテ与ヘ、或ハ又販売上ノ事柄ニ就テノ経費ニ充テマシタコトモゴザリマス、即チ此創業以来此でめかんハドウ云フ風ニシテ宜イカト云フ扱ヒ方ニ暗カツタ所カラ、其人ニ一任シテ敢テ問ハズニ、却テ其カスリヲバ賞与トシテ与ヘ、又社費ニ充テタコトデゴザリマス、決シテ之ヲ窃カニ偸ミ取ルト云フノデハゴザリマセン、左様ニ御承知下サルコトヲ願ヒマス
○二十二番足立孫六氏 私ハ敢テ其挙ヲ深ク尤メテ大変ニヤカマシク申スト云フノデアリマセヌ、併ナガラ、此多数ノ株主カラ成立ツタ会社デゴザリマスカラ、石炭ノ如キニシテモ、成ルベク公平ニ、左様ナ隠微ノ中ニ申合ハシテスルト云フコトハ無イヤウニ願ヒタイ、若シ
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賞与ト云フ場合ナラバ、役員賞与金及交際費モ其為ニ支出サレルコトデアリマスカラ、相当ノ所ヲ以テ出シテ貰ヒタイモノデス、実ニ株主組織ニ在ツテ、株主ニ相談モセズ、左様ナ世ノ中ニ話サレヌト云フヤウナコトヲシテハ、表テ向キカラ云フト容易ナラヌ事デアラウト思ヒマス、併シテ既往ノ事ヲ大変ヤカマシク云フノデハアリマセヌガ、願ハクハ後来ソンナ事ノ無イヤウニ望ム所デアリマス
○議長渋沢栄一氏 会長ハ世ノ中ニ話サレヌト云フ程デハゴザリマセヌト考ヘマス、併シ其費消サレタ次第ハドウ云フ有様ニ費消サレタカト云フ、細カナ調ベハ私モ記臆ヲ仕ツテ居リマセヌノデゴザリマス、夫レデ将来ハ注意ヲスルガ宜イト云フ二十二番サンノ御注意ハ至極御尤モノコトデ、我々ドモヽ御同様ノ考デゴザリマス、此事ヲ新任ノ社長並ニ我々共ガ承知ヲシマシテ、以来ハ之ヲ止メルト云フコトニ一決致シマシタ、夫レデ既往ノ使ヒ払ヒハ細カニ申上ラレマセヌガ、総体ノ金額凡ソ壱万七八千円ニナツテ居ルト心得マス
○九十三番山口権三郎氏 夫レハ社長一個ノ考案ニ拠ツテソウ云フコトニシタノデアリマスカ、又ハ理事・常議員等協議ノ上デサウ為ツタノデアリマスカ
○議長渋沢栄一氏 常議員会ヘハ相談ハゴザリマセヌ、理事モ勿論其業務ヲ取扱フ所ノ理事ハ承知シテ居ツタノデゴザリマス
○九十三番山口権三郎氏 常議員ニ向ツテ左様ナコトハ協議スベキデアル、然ルニ其常議員ニモ相談ヲセズシテ、社長一個ノ考ヲ以テ親船ノ船頭ガかすりヲ取ルヤウナ仕方ハ実ニ言語同断ノ話デアルト思ヒマス
○二十六番牧口荘三郎氏 夫レハ採掘スル所カラ何万噸ト云フテ送リ出ス、是レヲ更ニ売渡ストキノ出来事デゴザリマスカ
○支配人植村澄三郎氏 夫レハ山カラ持ツテ参ルノニ謂ハヾ大まかニ持ツテ参リマシテ、人ニ売リマスルニハ精細貫々致シマスカラ、其炭礦会社カラ受取ツテ更ニ売渡ス其間ニ生ジタモノデコザリマス
○二十六番牧口荘三郎氏 サウシマスルト、山カラ渡シタ方ハでめかんニ関係シナイデ、夫レヲ受取ツタ人ガでめかんニ為ルノデスカ
○議長渋沢栄一氏 イエ、サウデハゴザリマセヌ、購買者ヘ石炭ヲ渡シマシテ、其貯炭場内ニ幾分ノ残余ヲ生ジタノハでめかんデゴザリマス、是商法ニ所謂善意ニヤツタコトデゴザリマスレド、極メテロ穢ナク申ス時ハ着服トデモ申スニ当リマセウカ、其着服ト云フ字ハドウ云フ風ニ書クカ存ジマセヌガ、兎角サウ云フ様ナコトハドウモ宜クナイ、既往ノ事デハアルガ宜シクアルマイト考ヘマスルニ依ツテ、我々重役共ハ将来ハ止メルト云フ考ヲ起シタノデゴザリマス
○二十二番足立孫六氏 只今ノ御弁明デ分リマシテゴザリマスガ、将来ハ左様ナ事ハ無イ義ト信ジテ居リマス、之ヲヤカマシイ議論ヲ以テ申サレマスルト、随分困ツタ御話ナンデアリマス、此大勢ノ株主カラ成立ツタ金ト云ヒ、尚ホ政府ノ補給利子ノ下ニ成立ツテ居ル会社デアルカラ、其使ヒ払ヒモ公然ト致シマセヌト、如何ヤウナ事ガ有ツテモ余程会社ノ信用上ニ関係スルコトデゴザリマスルカラ、是レニ向ツテ議論ヲ申セバ沢山ゴザリマスル、依ツテ将来ニ於テハ固ク御慎ミ下
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スツテ、斯様ナコトハ絶エテ無イヤウニ御取計ヒノ程ヲ偏ヘニ望ミマスル、既往ノコトハ尤メマセヌ、既ニ過ギ去ツタ事ハ追フベカラズデスガ、併シ斯様ナコトガ世間ニ洩レテ、議会ヨリ政府ニ向ツテ攻撃ノ材料トセラレテハ大変ナコトデゴザリマス、殊ニ夫等ノコトノ為ニ株券カ下落シテ来ルヤウナ訳デ、其影響スル所ハ非常ナモノデゴザリマスカラ、最早喋々申上ルマデモナク、御止メナサルコトヽ信ジテ居リマス
○議長渋沢栄一氏 実ニ御尤デゴザリマス
○百二番泉清助氏 私共ハ全体遠方ノ株主デゴザリマスカラ、会社ノ有様ハ深ク存ジマセヌ、然ルニ新聞紙上デ見マスルト、当会社ノ資金ガ百万円トカ百五拾万円トカ不足金ガ生ジマシテ、其為ニ新ニ社債ヲ募ルカ、又ハ株券ヲ増発スルカ、何レカニ方針ヲ定メナケレバナラヌ、ノミナラズ衆議院カラ政府ヘ提出シタ質問書ノ内ニモ、此事ガ書イテアルソヲデス、是レハ事実サウ云フ不足金ガアルノデスカ、又其為ニ増株ナリ社債ナリヲ募集スル御見込デゴザリマスカ、我々株主ノ如キ少シモ会社ノ実情ヲ存ゼヌモノハ、憂慮ノ次第ニ堪ヘマセヌカラ一応其事実ヲ伺ツテ置キマス
○議長渋沢栄一氏 御尤ノ次第デゴザリマス、其事ニ付キマシテハ重役中デモ十分評議ヲ尽シテ、斯ク致シテ宜カラウカ、ドウ致シテ宜カラウカト云フ考案ガ、重役中ニ定メテ居リマスル、其意見丈ケヲ御答ヘスルト云フコトニモ為リ兼ネマスルデゴザリマス、左リナガラ、今日世間ガ唱ヘマスルノハ、何ダカ空ニ穴ガ明イテ居ルト云フヤウナ訛伝モ亦甚シキモノデゴザリマシテ、決シテ空ニ穴ガ明イタト云フコトハ毛頭モゴザリマセヌ、計算上ニ於キマシテモ、今申上マスル出目貫ノ事ハ事実ノ所ヲ明瞭ニ申上マシテ、将来ハ決シテ致シマセヌト申上マシタ次第デゴザリマスル、其他ノ勘定ニ付キマシテハ、既ニ撿査役カラ致シマシテ時々撿査モ致シテ居リマス、又一方北海道庁カラモ撿査官ガ参ラレテ御撿査ニナツテ居リマシテ、此春以来御聞込ミノ如ク社長並ニ撿査役モ揃フテ本社ヘ参ラレ、詳密ナル取調ヲ致シマシタ、其取調ヲシマシタ上ニ於キマシテ、是レ迄ノ計算ハ不都合ナ箇所ハ無イト認メラレテ、我々共ニ十分ナル報告ヲ致シテ居リマス、夫レノミナラズ、内輪ニ就テ能ク取調ベ、丁寧ニ調査シマシタ所ガ、撿査役ガ報告シマシタ通リデアリマス、而シテ今ノ金ノ事デスガ、最初既成鉄道ニ対シテ改良スベキ見込ガ未ダ就イテ居リマセヌ、夫レハドウシテモ必要デアルンデス、モー一方ニハ石炭ニ付テノ資本ノ出方如何デアル、若シ此石炭ヲシテ十分ナル結果ヲ得、十分ナル販売ヲシヤウト思ヘバ、或ハ実ニ今日マデノ仕方デハイケマセヌ、又其品物ガ沢山アツテ、如何ナル需用ニモ応ズル丈ケノ相当ノ額ヲ持ツテ居ラナケレバ、之ヲ運転シテ往クコトハ出来マセヌ、即チ従ツテ流動資本ノ余計ニ入ルト云フコトハ免レマセヌコトデアリマス、是レガ既成鉄道ニ掛ル費用デ、一方ノ新設鉄道ニ付テハ、元来政府カラ五百万円ノ株券ニ対スル補給利子ハ許可サレテ居リマスカラ、丁度夫レ丈ケノ費用モ掛リマセウシ、又夫レ丈ケハ別ニ制限セヌデモ宜シイノデアリマス、然ルニ会社ハ既成鉄道及ヒ炭礦ノ方ニ付テ満足ニ運転ヲサセヤウト云フ
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ニハ、百万円以上ノ金額ヲ備ヘナケレバ営業ガ出来マイト云フ、只今想像ヲ持ツテ居ルンデス、持ツテ居ルコトハ持ツテ居ルガ、世間ニ発表シナイ、其思ヒ入レカラシテ会社ニ百万円以上ノ穴ガ明イタト云フ様ニ訛伝サレタコトヽ信ジマス、併ナガラ是レハ今モ申ス如ク、決シテ穴ガ明イタデハナイ、既成鉄道ノ改良費ト炭礦部ノ流動資本トヲ殖ヤシテ、一層盛大ニ遣リタイト云フ覚悟ヲ持ツタ所カラシテ、其思ヒ入レガ誤ツテ世間ニ伝播シタコトヽ心得マス、而シテ尚ホ是ニ付キマシテ重役共モ十分ニ計算ノ上、ドウシテモ百万円ダケハ増株シナケレバナラヌト云フ考ガ起リマスレバ、或ハ臨時会ヲ開イテ再ヒ諸君ノ御来会ヲ煩ハスカモ知レマセヌ、併シ是レ迚モ決シテ一年トカ一年半トカノ内ニ必ラズ左様ニ致サナケレバナラヌト云フ急迫シタ事デモゴザリマセヌケレドモ、若シモ百万円ノ金ハ必ラズ入用カト御問ヒニナリマスレバ、我々ニ於テハ実ハ入用デアルト御答ヘヲシタイノデゴザリマス
○百二番泉清助氏 サウシマスルト会社創業当初ノ見込ハ不十分デアツタト云フコトニナリマスカ
○議長渋沢栄一氏 左様デゴザリマス
○百二番泉清助氏 シテ見レバ今年カ或ハ来年ニ至レバ募集ヲスルカモ知レヌト云フコトデスカ
○議長渋沢栄一氏 左様デゴザリマス、若シ愈々増株シナケレバナラヌコトニナリマスレバ、今年カ又ハ来年アタリニハ再ビ臨時ノ御評議ヲ願ツテ、其増額ノ方法ヲ定メルコトニ相成ルヤモ計ラレマセヌ
○中略
○二十二番足立孫六氏 線路変更ノ件ハ後来重役方ノ御見込ハ如何デゴザリマセウカ
○議長渋沢栄一氏 尚ホ二十二番サンニ申上マスガ、室蘭ノ線路ノ変ツタノハ理事ノ二木カラ御答シタ通リデアリマシテ、右ニ付キ衆議院カラ政府ヘノ質問ニ対シテ、会社ハ此影響ヲ蒙ムラヌカドウカト云フ御注意デゴザリマス、至極御尤モナコトデ、役員ノ想像ヲ以テ御答スレバ、斯様ニ申上ルヨリ外ハ無イノデゴザリマス、私共ノ信ズル所ニ拠レバ堀社長ガ道庁長官ヨリ免職ニナリマシタノハ線路ノ変更ガ重ナル点デゴザリマス、左リナガラ会社ニ於テハ道庁ノ監督技師ノ十分監督調査ヲ受ケテ予算ヲ立テタノデゴザリマシテ、夫レヲ変更スルト云フコトハ、後来ニ至ツテ此予定線路ハ悪イカラ変ヘネバナラヌト云フ事ハ、往々有ルコトデゴザリマシテ、事実ニ於テ免ルベカラザル事デゴザリマス、故ニ事実上全体カラ申スト、会社ガ私益ノミヲ計ツタト云フ訳デハナイ、国家ニ取ツテモ利益デアルト考ヘマシタ所カラ、線路変更ト云フ事ニ為ツタノデアル、併シ其手順ヲ正シテ見レバ、道庁ノ認可ヲ受ケテ為スベキヲ、会社一己ノ考ヲ以テ致サウトシタノデアリマスカラ、勢ヒ社長ガ其責ニ任ジナケレバナラヌ訳ニナツタノデゴザリマス、而シテ我々共ニ於テモ、会社ノ此度ノ行為ハ己ノ利益ノミヲ主張シテ国家ノ為ニ計ラナカツタト云フ事ハ毛頭ゴザリマセヌト信ジテ居リマスルニ依ツテ、後来トテモ道庁ハ此線路変更ノ事ハ必ズ御認可下サルダラウ、又御認可ヲ与ヘテ下サルノガ相当ノ事デアラウ
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ト、当任ノ役員共ハ考ヘマスルカラ、目下其事ニ汲々尽力致シテ居リマスル
○中略
○二十三番早川覚兵衛氏 只今でめかんノ御話ガゴザリマシタガ、此でめかんト云フモノハ甚ダ不都合デゴザリマスカラ、山カラ出シテ船ヘ載セル時、塵芥ヲ入レテモ残リマス、此残ツタモノハ即チ元方ヘ入レテ仕舞ツテ、壱厘デモ帳面外ノモノハ無イコトニ願ヒマス
○議長渋沢栄一氏 将来ハ致シマセヌト云フタノハ、即チアナタ方ノ御指図通リニシヤウト云フ考デゴザリマス、其計算ノ仕方ハドウナリマスカ明言ハ致シ兼ネマスガ、でめかんハセヌコトニ致シマスカラ左様御承知ヲ願ヒタイ
○百二番泉清助氏 伺ヒマスガ、当季間ノ利益ガ前季ヨリ減ジマシタノハ、重モニ石炭代価ノ下落ニ付テ減ジタト云フコトデゴザリマス、此下落シタノハ当季間ノ全部下落シタノデアリマスカ、又半バ頃カラ下落ヲシタノデアリマスカ、私共ニハ一向分リマセヌカラ其辺ヲ承リタイ
○議長渋沢栄一氏 前季決算迄ノ一番ノ始メニハ夫レ程ニ下落シテハ居リマセネドモ、追々ニ下落シタノデアリマシテ、之レハドノ季中ニ幾ラ幾ラト細カニ申上ルコトハ出来マセヌガ、詰リダラダラ下リニ下ツタ有様デゴザリマス
○百二番泉清助氏 夫レデ未来ノコトヲ伺フノハ甚タ如何テスガ、先ヅ当季間ノ下落ニ続イテ尚ホ是レカラ先キノ期モ矢張前同様ノ場合デゴザリマセウカ、或ハ今後モ是レ位ノコトデ大シタ差ハ無イト云フ御見込デセウカ
○議長渋沢栄一氏 其御問ニハ甚ダ御答ニ苦ムノデ、免ニ角想像ヲ申上ルノデゴザリマスカラ、固ヨリ保証ハ出来マセヌ、又神デナケレバ御答ハ出来マイト思ヒマス、併ナガラ私ノ考デハ、石炭ガサウサウハ下落ハ致スマイト考ヘマス、先刻モ申述タ通リ、石炭ノ新販路ニハ余程心ヲ尽シテ心配ヲシテ居リマスカラ、夫レ夫レ道モ就キマシタナラバ、会社ノ炭ガ只管ニ廉クナルト云フコトニハナリマスマイ、今日ノ所デハ年々五万噸宛増シテ掘ルト云フ、最初ノ見込通リニハ或ハ成リ兼ネマスカモ知レマセヌ、先ヅ是レカラ先キハ無闇ト採掘シテ販路ヲ閊ヘテハナラヌト心配シ、且ツハ新販路ニ付テ心ヲ尽シテ居リマスカラ、遂ニ石炭下落ノ為ニ利益ガナクナルト云フ迄ニハ至ルマイト考ヘマス
○百三番越智義路氏 私ハ役員諸君ノ御注意マデニ申上テ置キタイ、夫レハ実ニ当会社ノ如ク創立ノ当時ヨリ、株金ニ対シテ、其金額ノ払込ノ済マザルニモ拘ハラズ、年八朱ノ利益ヲ下サルト云フノハ中中他ニ見ルベカラザル会社デゴザリマス、利益ガ斯ク割合ニ多キニモ拘ハラズ、此頃ノ株式市場ニ於テ日々下落ノ有様ヲ呈シマスルノハドウ云フ訳デアルカ、畢竟株主タルモノガ会社ノ実際ノ有様ヲ目撃スルコトガ尠クシテ、只風説ヲ聞テ何レモ危険ニ思ヒマスル所カラシテ、其工事上、会計上、営業上ノ有様ヲ弁ヘズニ、安クトモ売リタイト云フヤウナ訳デ売リ放スヨリ下落スルノデアラウト思ヒマス、殊ニハ又
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当会社役員諸君ガ株主ニ向ツテ十分ナル安心ヲ与ヘナイ、会社ノ将来ノ目的ハ斯様デアルト云フテ、予メ見込ノアル所ヲ知ラスコトテ避ケル所ヨリシテ株主ガ安心シナイ、既往ハ暫ク措キマシテ来年ハ斯ウシタイ、次季ニハアースルト云フ安心ノ出来ルヤウナ報告モシナケレバ、又僅カニ一年二回ノ定式総会スラモ、株主カラ質問ヲサレルト成ルベク之ヲ避ケマシテカラニ、唯質問ガナケレバ宜イトカ、或ハ一通リノ儀式一片ニ留メテ、後ハ御勝手ニナサイト云フヤウナ有様デアル実ニ不親切極マル当局者ノ仕方デアル、斯ノ如キ有様デアルカラ株主ガ少シモ安心シナイ、安心ガ出来ナイカラ安クトモ株券ヲ売リ放スノデゴザリマス、会社ノコトニ付テ種々ナ風説ノ起ルモノハ強チ事実ガ無イト断言ハ出来マスマイ、然ルニ己ノ非ヲ蔽ハントシテ、種々ナ故障ヲ拵ヘテ、我々株主タルモノニ質問モ許サヌ所カラ益々不安心ヲ与ヘラル、私ハ実ニ当局者ノ不親切ヲ恨ムノデアリマス、ドウカ此後ハ勉メテ事情ヲ知ラシテ貰ヒタイ
○議長渋沢栄一氏 御注意ノ趣ハ了解仕リマシテゴザリマスガ、只今仰セノ御言葉中ニ、何カ当局ガ株主総会ニ於テ御質問ヲ謝絶スルヤウナ御話モゴザリマシタ、ケレドモ定式総会ハ御承知ノ通リ定款モアリマスルコトデスカラ、勢ヒ定款ニ従ツテ処分ヲシナケレバナリマセヌ、夫レニ依ツテ今日ノ如ク株主諸君ノ御冀望ニ従ツテ懇話会ヲ開キマシテ、質問ヲナサレタイ方ニハ随意ニ為スツテ、当局者モ答弁ヲ致シテ居ルデハゴザリマセヌカ、当任役員ガ何カ申上ルコトヲ決シテ惜ンダコトハゴザリマセヌ、私共モ随分今度ノ堀氏更迭ノコトニ付テハ種々心配ヲ致シ居リマシテ、夫レコソ株主諸君ニ向ヒ、斯様ナ苦心ヲシマシタ、斯様ナ争ヒヲシマシタト云フテ申上ルコトハ出来ナイデハナイ、ケレドモ是レヲ話シタ所ガ何カ誇ルヤウニモナリマスシ、詰リ諸君ガ御知リ下サレハ宜シ、御知リ下サラナクモ是レハ我々ノ本分デアルト思フテ居リマスノデ、別段ニクドクドシクハ申上マセナンダデゴザリマス、斯様ナ訳デゴザリマシテ、百三番ノ御注意ハ至極御尤モトモ考ヘマスルカラ、向後ハ如何デゴザリマセウ、左様ナ思召デゴザリマスルナラバ、其都度懇話会ヲ開キマシテ、能ク御質問モナサレバ御答弁モスルト云フコトニシテ、打チ解ケテ御話シスルモ宜イコトヽ考ヘマスル、ドウゾ左様御聞キ置キヲ願ヒマスル
○九十三番山口権三郎氏 ドウモ会社ノコトニ付キマシテハ、度々新聞上ニ出マシテ、我々ハ寔ニ心痛致シマス、ドウカ此後ハ会社ノ悪イ風説ガ新聞上ニ出ナイヤウニ御注意下サルコトヲ望ミマス
○議長渋沢栄一氏 夫レハ当任役員ニ於キマシテモ成ルベク出ヌヤウニ掲載サレヌヤウニト注意シテ居リマス、併シナカラ其記事トテモ或ル場合ニハ聞キ違ヒト云フコトモアリマセウシ、或ル場合ニ於テハ故意ニ讒謗スルコトモ有ルカモ知レマセヌ、一概ニ申サレヌ場合モゴザリマス、併シ御注意ノ段ハ深ク謝シマスル……最早如何デゴザリマセウカ、御退席者モ追々ゴザリマスルヤウデスカラ、懇話会ハ此位ニ止メ置キマシテハ……
○八十六番馬場道久氏 私ガ伺ヒタイノハ本社ニハ何ノ必要ガアツテ船ヲ所持シテ居ルンデスカ
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○議長渋沢栄一氏 夫レハ石炭ノ運漕ノ為メデアリマス
○八十六番馬場道久氏 是レマデ運搬ヲシタコトガアリマスカ
○議長渋沢栄一氏 夫レハドウモ一艘ノ船デゴザリマスカラ、是レヲ会社デ運漕スルコトニナリマスルト、其為ニ事務局ヲ設ケテ船長モ機関士モ傭ハナケレバナラヌ、サウスルト却ツテ経費倒レニナルコトヲ憂ヘマスルノデ、寧ロ運漕ハ日本郵船会社ニ托シ、船ハ貸シテ貸賃ヲ取ツタ方ガ利方ト認メマシタカラ、左様ニ取計ヒマシテゴザリマス
○八十六番馬場道久氏 今後モサウ云フ御見込デゴザリマスカ
○議長渋沢栄一氏 先ヅサウデゴザリマス、併シ今後尚ホ一艘デハ運搬ニ閊ヘル、二艘モ三艘モ要スルト云フ次第ナラバ、或ハ別ニ局ヲ開イテ会社ガ致スカモシレマセヌ……大分諸君モ御退キニナツタヤウデスカラ此会ハ是レデ閉ヂマス、皆様大キニ御苦労デゴザリマシタ
  午後五時五十分閉会


植村澄三郎談話(DK080061k-0004)
第8巻 p.702-703 ページ画像

植村澄三郎談話               (竜門社所蔵)
    北海道炭礦鉄道会社に関聯しての青淵先生と私
○上略
 然るに世論は尚ほ政府を攻撃して已まなかつたので、松本荘一郎氏の如きは「自分が監督の任にあり、線路の変更を許可したのは自分であるから、私を免職せよ」と申し出るなど、内務大臣は非常な窮地に陥つて行つた、従つて益々会計上の検査を厳重にし、何とかして少しでも欠点を探り出さうとしたらしく、会社創立当初からの証書類を出させ、三月頃から六七月頃までかゝつて調べ上げた。然しそれでも別に不都合と認められることはなかつたのであるが、一つ困つたことがあつた、と云ふのは創立費であつた、此の所謂創業費の内容は宴会費だとか、進物の如きもの、即ち世話になつた人に贈物をした、中には或る官吏に熊の皮を贈つたものがあつたりしたのである。何分当時は官吏に対して仮令菓子折一個を届けても、一夕の宴会に招待しても喧しい時代であつたから、此の弁解には私も大いに窮してしまつた、実際創業費は二万八千円ばかり使つて居たのである、そこで私は此の費用は一切創立委員長に一任と云ふことに総会でなつて居ると弁じたがそれでは内容を示さなくてもよいと云ふ決議がないから意味を為さぬと検査官が云ふので、会計検査の結果が此一点に問題が残されることになつた。従つて已むなく臨時総会を開いて、創立費用は総て之を創立委員長に一任し内容如何は敢て問はないと云ふ決議を、更めてすることにした。そして六月末であつたか七月に入つてか、場所は築地の厚生館(後に明治会堂と云つた)にて開いた、然るに内務省では、此総会へ所謂一株株主を多数こしらへて出席せしめ、内容を示せと迫つた。其の数は株式全体としては決して多くはないが、頭数が多く、内務省の御用を勤めたから、御用株主と称した。然し今日の如き会社の御用株主ではなく、会社反対の政府の御用株主であつたが、此等が原案を否決しようとの計画であつたから、議場は騒然として整理すべくもなく、高島議長ではどうにもならなかつた、そこでまたも先生に議長を御願ひした。先生は議長席に就かれると、会社の成立の由来、事
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業の性質、其の進捗の有様などを説明せられ、議事を進めて行かれ、会計上些の不正はないことを説明したので、忽ち多数の賛成を得て、原案は成立したのである。実に斯くの如く先生が会社の為めに責任を持つて尽される行為は他のものとは違つて居た。又社長が免職されると共に、会社の株式の相場は払込以下となり、且つ払込の通告を為しても払込に応じないので、金融は日に逼迫し、工事も中止せねばならず、或は支払さへも停止しなければならぬと云ふやうな有様になつた。此時にも亦先生のお世話になつたのである。それはそれとして、其後九月頃と思ふが、鉄道局長の井上勝氏が会社の線路を自ら視察せられて「現在の会社の線路は適当なものである」と復命されたので、会社としては責を受けず、松本技師も不都合なしと云ふことになつたが、尚ほ社長の復職は不可能であつた、然しそれが為め内務大臣及び北海道長官共に更迭して、事件は無事に落着したのであつた。○以下明治二六年九月一七日ノ項所引ニ続ク
   ○植村澄三郎談話ニ云ヘル臨時株主総会ノ件
    北海道炭礦鉄道会社第六回報告(明治二五年一〇月)ニ記載ナク、又議事録モ存セズ、或ハ前掲五月二十五日第四回株主総会及ビ懇談会ニ於ケル議事ノ紛糾ヲ云ヘルカ、但シ一株株主多数云々及ビ創立費ニ関スル討議等右ノ議事録所載出席株主氏名持株数ヲ見ルニ該当スルモノナク、記事マタ創業費ノコトミエズ。(創立費ノ審議ハ二十三年八月五日、第一回株主総会ニアリ、議事録ニヨレバ別ニ紛糾ナシ)
   ○栄一社長ニ代リ議長トナレル同社株主総会ハ左ノ如シ
     明治二十三年 八月  五日、第一回株主総会及臨時株主総会
     〃 二十五年 五月二十五日、第四回株主総会及ビ懇話会
     〃 二十五年 十月二十五日、臨時株主総会
     〃 二十五年十一月二十五日、第五回株主総会及ビ臨時株主総会
  右ノ各総会議事録(速記録)ヲ見ルニ前述該当ノ記事ナシ。
  ○明治二十五年三月二十四日条参照。