デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
2節 鉄道
19款 台湾鉄道株式会社
■綱文

第9巻 p.199-204(DK090021k) ページ画像

明治29年5月5日(1896年)

是日、栄一発起人総代ノ一員トシテ、台湾縦貫鉄道敷設ヲ目的トスル当会社ノ創立ヲ総督府ニ出願ス。九月創立委員ニ選バル。十月二十七日当会社創立許可セラル。


■資料

青淵先生六十年史 (再版) 第一巻・第一〇〇二―一〇〇六頁 〔明治三三年六月〕(DK090021k-0001)
第9巻 p.199 ページ画像

青淵先生六十年史(再版) 第一巻・第一〇〇二―一〇〇六頁〔明治三三年六月〕
    第二十四節 台湾鉄道会社
台湾ノ経営上大ニ交通機関ノ設備ヲ要スルモノアリ、先生及安場保和氏等玆ニ見ル所アリテ、在京有志者二百五十有余名ノモノト相計リ、台湾鉄道会社ヲ興シ台湾鉄道ヲ布設セント欲シ、拓殖務省ニ願書ヲ呈出セリ
    台湾鉄道布設願書 ○後掲ニツキ略ス
台湾鉄道ハ、明治二十八年中臨時軍事費残金ヲ以テ建設スヘシトノ議アリシカ、如斯キ大工事ハ宜シク帝国議会ノ協賛ヲ経テ着手スヘキモノナリトノ説ニヨリ、其議ハ止ミタリ、其後ニ至リ新領土ノ経営上、内地人ト土人トノ資本工業共通ノ便ヲ開クノ利アルト、工事進行速カナルヘキト、其他種々ノ点ニ於テ私設鉄道ヲ可トスルノ論ニヨリ、右私設鉄道保護ノ条件ヲ第十議会ニ提出シタリ、当時松方伯ハ内閣総理大臣兼大蔵大臣ニシテ、高島子は陸軍大臣兼拓殖務大臣ナリ、而シテ衆議院ニ於テモ貴族院ニ於テモ反対論盛ニシテ、且会期切迫シ、貴族院ハ纔ニ会期末日ノ最後ニ於テ保護条件ヲ可決セリ、然ルニ明治三十年ニ至リ、市場金融逼迫ヲ告ケ、会社株金ノ募集満株ニ達セス、先生頗ル尽力スル所アリシモ、会社ハ終ニ成立ニ至ラス、発起人ヨリ数次創立延期ヲ請ヒタル末、政府ノ議ハ再ヒ官設トスルニ決シ、第十三議会ニ台湾事業公債法ヲ提出シテ議会ヲ通過シ、会社ハ明治三十二年三月ヲ以テ消滅セリ


青淵先生公私履歴台帳 明治三十三年五月十日調(DK090021k-0002)
第9巻 p.199-200 ページ画像

青淵先生公私履歴台帳  明治三十三年五月十日調
                    (渋沢子爵家所蔵)
明治二十九年
一台湾鉄道会社ノ創立ニ尽力シ、推サレテ創立委員長トナル
  本会社ハ、台湾ノ我新領土ニ鉄道ヲ貫通スルノ必要ヲ認メ発起シタルモノニシテ、創立委員長トシテ専ラ其成立ニ尽力セシモ、卅年ニ至リ市場一般金融ノ逼迫ニ際シ、株金ノ募集意ノ如クナラス遂に卅二年ニ至リ不得已之ヲ解散セリ
   ○栄一「創立委員長トナル」トアレドモ誤ナリ。発起人総代・創立委員トシテ干与シ、会社解散ノコトニ関シテ創立委員総代トシテ尽力セリ。本款明治三十二年三月二十五日及ビ十月二十五日ノ項所掲ノ資料「台湾鉄道史」
 - 第9巻 p.200 -ページ画像 
(上巻第四六七―四七二頁・第四七二―四八二頁)参照。創立委員長ニツイテハ次ニ掲グル「台湾鉄道史」ハ明治二十九年五月五日出願ノ項ニオイテハ岡部長職トシ、同三十年六月十九日技師嘱託出願ノ項ニオイテハ安場保和トシ、東京経済雑誌(明治三十年十月二日号)は岡部長職ヲ委員長トセリ。マタ中外商業新報(明治三十年十一月五日号)ハ渋沢「委員長」辞任ノ報道ヲ掲ゲタリ。


台湾鉄道史 上巻・第四二〇―四四六頁(DK090021k-0003)
第9巻 p.200-204 ページ画像

台湾鉄道史  上巻・第四二〇―四四六頁
是ヨリ先、渡辺甚吉外数十名ノ私設鉄道会社ハ其ノ組織計画二ツナカラ全カラス、且ツ当局ノ意嚮既ニ非ナルヲ察知シタル子爵岡部長職・男爵安場保和等ハ、民間有志者ト相謀リ、台湾鉄道会社ヲ創立シ、資本金一千五百万年ヲ以テ縦貫鉄道ヲ建設シ、先ツ運輸交通ノ完備ヲ図ラムトシ、会社創立委員長岡部長職ヨリ書ヲ総督府ニ提出シ許可ヲ請フ、時ニ明治二十九年五月五日ナリ、其ノ鉄道布設願書・仮定款・目論見書等左ノ如シ
    台湾鉄道布設願書
今般、私共発起人ト為リ、資本金一千五百万円ヲ以テ、台湾鉄道会社ヲ組織シ、台北ヲ起点トシ、新竹・苗栗・台中・嘉義・楊厝・鳳山ヲ経テ、打狗ニ至ル縦貫線、並ニ楊厝ヨリ台南ヲ経テ安平ニ至ル支線、合計二百二十八哩間ニ鉄道布設致度候、尤モ此事業タル、徒ニ営利ヲ目的トスル次第ニハ無之軍備上必要ナルハ勿論、殖産興業ノ発達上少ナカラサル影響有之、且全島百般ノ整理モ運輸交通ノ道開ケ始テ其緒ニ就クノ有様ニ有之、鉄道布設ハ今日ノ場合一日モ猶予スヘカラサル最大急務ト被存候、然レトモ台湾ニ於ケル事業ハ、内地ト異リ頗ル多額ノ経費ヲ要スルノミナラス、種々ノ危険之ニ伴ヒ、且其収入ノ如キモ詳ナラス、随テ収支ノ計算相立タサル今日、之カ布設ニ着手スル次第ニ有之候得ハ、到底内地同様ノ方法ニ依リテ此大事業ヲ完成スル能ハサルハ、明白ナル道理ニ有之候、仮令他日ニ於テ相当ノ利益ヲ得ルノ見込判然タルモ、今日予メ之カ調査ノ結果ヲ示スノ標準ナキヲ以テ、内地資本家ヲシテ之ニ資本ヲ投セシムル、実ニ至難ノ業タルヲ免レサル次第ニ御座候、就テハ本鉄道ノ事業ニ対シ、特別ノ御詮議ヲ以テ、左記ノ件々御保護被成下度、奉願上候
 第一 本鉄道会社ニ於テ鉄道布設ニ要スル敷地(複線)及停車場用地・工場敷地・鉄道機械器具及用材置場・倉庫・家屋等ニ要スル地所ニシテ、官有地ニ属スルモノハ無代価御下附、其他ノ地所ハ相当ノ御処分ヲ以テ同上御下附相願度候事
 第二 汽車用・工場用ニ要スル石炭礦区ハ、工域ト年限トヲ定メ、採掘御許可ノ上、礦区税並礦業税御免除相願度候事
 第三 台北ヨリ新竹ヲ経テ香山ニ至ル既設鉄道、並打狗ヨリ嘉義ニ至ル軍用軽便鉄道、及両鉄道附属品悉皆ハ、該線路ニ代ルヘキ本鉄道布設竣功ノ上、無代価御下附相願度候事
 第四 煉瓦用・土工用土取場、石材切出・石灰並バラスト採取場ハ第一ノ場合同様、無代価御下附相願度候事
 第五 枕木其他必要ナル木材有ル山林ニシテ御差支ナキモノハ、無代価御下附相願度候事
 - 第9巻 p.201 -ページ画像 
 第六 第二・第四・第五ニ掲載スル諸物品運搬ノ為布設スル鉄道敷地其他必要ノ地所ハ、第一同様ノ御保護相願度候事
 第七 本鉄道ニ要スル材料一切ハ輸入税御免除相願度候事
 第八 線路実測及工事中ハ勿論、営業上必要ノ場合ニ於テハ、軍隊ノ御保護ヲ仰度候事
 第九 基隆ヨリ宜蘭、台北ヨリ淡水、並鳳山ヨリ恒春ニ至ル線路及其他共、将来本島交通ノ程度増進スルニ従ヒ、漸次鉄道増設致度見込ニ付、右布設ノ際ハ前記本鉄道ト同一ノ御保護相願度候事
   但本鉄道会社ニ於テ布設ニ着手セサルニ先チ、政府ニ於テ該線路ノ布設急ヲ要スルト見認メラレタルトキ、本社ニ於テ直ニ工事ニ着手セサル場合ハ、官線トシテ布設セラルヽ歟、或ハ他ノ会社ニ布設ヲ許可セラルヽモ、聊カ異議無之候事
右ノ条々、特別ヲ以テ御許可被成下候上ハ、鉄道ニ関スル規則其他百事総督府ノ御命令ヲ遵奉シ、不都合無之様可仕、尤工事着手後一千五百万円以外ニ資本ヲ要スル場合有之候共、本願書ニ記載セル縦貫線路工事ニ遅滞ヲ惹起ス等ノ事ハ、万々無之様可致候間、何卒至急願意御許可被成下度、依テ仮定款・設計書及線路略図等相添、此段奉願候也
  明治二十九年五月五日
              台湾鉄道会社発起人
                  公爵近衛篤麿外二百六十五名
                総代
             東京市日本橋区南茅場町六番地
                        今村清之助
             東京府荏原郡元品川三百十六番地
                    原六郎
             東京市牛込区二十騎町二十七番地
                 子爵 堀田正養
             東京府北豊島郡高田村字千登三十五番地
                 子爵 岡部長職
             東京市神田区佐久間町三丁目八番地
                    小野金六
             東京市赤坂区葵町三番地
                    大倉喜八郎
             東京市日本橋区本材木町一丁目七番地
                    渡辺治右衛門
             東京市本所区千歳町四十六番地
                    川崎八右衛門
             東京市麻布区新網町一丁目十二番地
                    川村惇
             東京市麻布区一本松二十四番地
                 男爵 安場保和
             東京市浅草区橋場町三十七番地
                    真中忠直
             東京市麹町区中六番町四番地
 - 第9巻 p.202 -ページ画像 
                    松木直巳
             東京市日本橋区元浜町八番地
                    菊池長四郎
             東京市深川区福住町四番地
                    渋沢栄一
             大阪市東区船越町二丁目百四番屋敷
                    岡橋治助
                     代 小野金六
             大阪市北区堂島浜通二丁目十六番屋敷
                    松本重太郎
                     代 安場保和
             大阪市北区堂島北町六十九番屋敷
                    本山彦一
                     代 安場保和
             横浜市弁天通三丁目四十九番地
                    原善三郎
                     代 原富太郎
             横浜市元浜町二丁目十五番地
                    大谷嘉兵術
             横浜市元浜町一丁目一番地
                    渡辺福三郎
             京都市上京区新町通椹木町下ル春帯町二十番戸
                    浜岡光哲
                     代 安場保和
             京都市上京区新町通上立売上ル
                    小室信夫
             名古屋市葵町甲六番戸
                    奥田正香
                     代 安場保和
             名古屋市南武平町百九番戸
                    吉田禄在
                     代 安場保和
  台湾総督
   子爵 桂太郎殿
      ○
    台湾鉄道会社仮定款
   第一章 総則
第一条 本会社ハ台湾鉄道会社ト称シ、会社ノ責任ハ有限トス
第二条 本会社ハ本社ヲ台湾台北ニ置キ、出張所ヲ東京ニ置ク
第三条 本会社ハ台湾台北ヲ起点トシテ、新竹・苗栗・台中・嘉義・楊厝・鳳山ヲ経テ打狗ニ至ル縦貫線、並楊厝ヨリ台南ヲ経テ安平ニ至ル支線、合計二百二十八哩間ニ鉄道ヲ布設シ、交通運輸ノ業ヲ営ムヲ以テ目的トス
第四条 本会社ハ資本金ヲ一千五百万円トス
第五条 本会社ノ責任ハ有限ニシテ、其義務ニ対シテハ本会社財産ノミニ止ルモノトス
第六条 本会社ハ存立期限ヲ予定セス
第七条 此定款ヲ変更セムトスルトキハ、株主総会ノ決議ヲ経ルモノトス
 - 第9巻 p.203 -ページ画像 
   第二章 株式
第八条 本会社ノ株式ハ一株ヲ金五十円トス、其総株ヲ三十万株トス
第九条 本会社ハ仮株券ヲ発行シ、株金全額払込済ノ上本株券ト引換ヘ交付スルモノトス、仮株券ハ其種類ヲ分チ左ノ三種トス
   五十円券  五百円券  五千円券
第十条 本邦人ニシテ此定款ヲ遵奉スルモノハ、何人タリトモ本会社ノ株主タルコトヲ得、但台湾住民ハ本邦人ト等シク株主タルノ権利ヲ有スト雖、明治三十年五月八日ニ至リ帝国臣民タルノ分限ヲ得サルトキハ、株主タルノ効力ヲ失フモノトス
  ○第十一条ヨリ第五十六条マデ略ス。
               台湾鉄道会社発起人
                公爵近衛篤麿外二百六十五名
                 総代
                      今村清之助
                      原六郎
                   子爵 堀田正養
                   子爵 岡部長職
                      小野金六
                      大倉喜八郎
                      渡辺治右衛門
                      川崎八右衛門
                      川村惇
                   男爵 安場保和
                      真中忠直
                      松木直巳
                      菊池長四郎
                      渋沢栄一
                      岡橋治助
                       代 小野金六
                      松本重太郎
                       代 安場保和
                      本山彦一
                       代 安場保和
                      原善三郎
                       代 原富太郎
                      大谷嘉兵衛
                      渡辺福三郎
                      浜岡光哲
                       代 安場保和
                      小室信夫
                      奥田正香
                       代 安場保和
                      吉田禄在
                       代 安場保和
      ○
    台湾鉄道台北・新竹間四十二哩改良線布設目論見書○略ス
 - 第9巻 p.204 -ページ画像 
    台湾鉄道台南支線楊厝・安平間十哩布設目論見書○略ス
    台湾鉄道新竹線新竹・竹狗間百七十七哩布設目論見書○略ス
斯クテ、府議終ニ渡辺甚吉ノ出願ヲ却ケ、同年十月二十七日岡部長職等ノ請願ニ対シ総督之ヲ許可スル旨ヲ指令セリ、其ノ文左ノ如シ
 台湾総督府 官第七五号
                  台湾鉄道会社創立発起人
 明治二十九年五月五日、台湾鉄道会社ヲ組織シ、台湾ニ鉄道ヲ布設スル件ハ許可スルニ付、左ノ通心得ヘシ
 一台北及新竹間ノ既設鉄道ヲ改築シ、新竹・苗栗・台中・嘉義・楊厝・鳳山ヲ経テ打狗ニ至ル間、並楊厝ヨリ台南ヲ経テ安平ニ至ル間ニ鉄道ヲ建築スルモノトス
 二鉄道布設及運転上其他鉄道経営上各般ノ要件ハ別ニ達スヘシ
 三鉄道保護申出ニ関スル条件ハ、相当ノ詮議ヲ遂ケ更ニ指令スヘシ
  明治二十九年十月二十七日
             台湾総督 男爵 野木希典
  ○明治二十八年台湾領有後、総督府並ニ参謀本部ハ縦貫鉄道ノ建設ヲ以テ最大急要務トナシ、二十九年三月閣議ニ於テ、鉄道及基隆築港調査費十万円ノ支出ヲ認メラレ、四月着手、六月其調査ヲ終了セリ。然レドモ戦後財政ノ多端ナル、遽ニ官設ヲ行フヲ得ズ、私設鉄道会社ニ之ヲ許スノ意アリ、渡辺甚吉等最モ早ク之ヲ出願シ、基隆・香山間ノ既設鉄道ノ無償下附ト、香山・打狗間百九十哩ノ新設(予算八百万円)ヲ条件トス。総督府ハ鉄道隊長山根武亮ノ意見ヲ徴セシニ、ソノ企画ノ杜撰ナルヲ指摘シテ反対ス。
   (台湾鉄道史ニヨル)


中外商業新報 第四三七四号〔明治二九年九月一六日〕 台湾鉄道の総会(DK090021k-0004)
第9巻 p.204 ページ画像

中外商業新報  第四三七四号〔明治二九年九月一六日〕
    台湾鉄道の総会
 台湾鉄道総会は昨日午後一時より帝国ホテルに開会せしに、出席者は無慮二百六十余名、安場保和氏は会長席に就き、川村惇氏先づ起つて同鉄道計画《けいかく》の経過《けいか》を述べ、且説明員となりて願書・定款・工事目論見書等を議定し、夫より創立委員を左の如く定め、同四時頃散会したりと云ふ。
  東京
岡部長職・安場保和・堀内正養・真中忠直・渋沢栄一・大倉喜八郎・小野金六・今村清之助・川崎八右衛門・菊池長四郎・渡辺治右衛門・原六郎・松木直巳・川村惇
  大阪
松本重太郎・岡橋治助《おかはし》・本山彦一
  京都
浜岡光哲・小室信夫
  名古屋
吉田禄在・奥山正香
  横浜
大谷嘉兵衛・原善三郎・渡辺福三郎