デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
2節 鉄道
28款 東京鉄道株式会社
■綱文

第9巻 p.486-505(DK090054k) ページ画像

明治39年6月4日(1906年)

是ヨリ先、東京市街鉄道・東京電気鉄道・東京電車鉄道三株式会社乗車料金ニ付共通均一制ヲ協定セントセシ事ヨリ合併ノ機運ヲ促シ、栄一及ビ馬越恭平其合併裁定者ト為ル。是日三社ニ対シ合併条件ノ裁定ヲ与フ。同月二十八日各社臨時株主総会ヲ開キ之ヲ可決ス。九月十一日旧三鉄道会社解散合併シ、東京鉄道株式会社ヲ設立ス。栄一相談役ニ選バレ、後、退職重役ヘノ贈与金ノ分配ニ付一任セラル。


■資料

竜門雑誌 第二一七号・第三二頁〔明治三九年六月二五日〕 ○三電車合同成る(DK090054k-0001)
第9巻 p.486 ページ画像

竜門雑誌  第二一七号・第三二頁〔明治三九年六月二五日〕
○三電車合同成る 東京電気・市街鉄道及東京電車三会社の依頼に依り青淵先生及馬越恭平氏裁定者となり尽力せられたる三社の合併交渉問題は愈々纏り、本月四日両裁定者より左の合併条件の裁決を与へられたり
 一 合同会社の合同株五十四万株を東京電気に九万株(現在十二万株)市街鉄道三十一万二千株(現在三十万株)東京電車に十三万八千株(現在十二万株)の割合を以て分配する事
  即ち東京電気より三万株を出し之を街鉄、電車の両社間に四と六との割合を以て街鉄に一万二千株、電車に一万八千株の分配を為す訳合なり
斯くて各社とも右の裁定に付、本月五日午後一時より大株主協議会を開きて其意見を諮ひたるに、殆んど満場一致を以て之を是認し、越えて同十一日三車《(社カ)》の代表者市街鉄道会社に会合の上、仮契約に調印せりと云ふ


渋沢栄一 日記 明治三九年(DK090054k-0002)
第9巻 p.486 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三九年
六月一日 晴 暖              起床六時三十分就蓐十一時三十分
○上略 午前十二時兜町事務所ニ抵ル、牟田口・浜・吉田三氏来話ス、正午第一銀行ニ於テ午飧シ、食後馬越恭平氏ト共ニ三会社合併ニ関スル要務ヲ談ス、畢テ更ニ三会社主任者ヲ会シ種々ノ談話ヲ為シ、終ニ合併意見ヲ陳述シテ三会社ヨリ至急回答アランコトヲ望ム、畢テ夜九時王子別荘ニ帰宿ス


(八十島親徳)日録 明治三九年(DK090054k-0003)
第9巻 p.486-487 ページ画像

(八十島親徳)日録 明治三九年   (八十島親義氏所蔵)
六月五日 曇後晴
 - 第9巻 p.487 -ページ画像 
電車街鉄電気の三社ヨリ男爵ニ依托ノ合同条件裁定ノ一件モ昨日ヲ以テ判断ヲ与ヘラレタルニツキ、今日命ニ依リ之ヲ書面ニ作ルナドノ手数ヲナス


東京経済雑誌 第五三巻第一三四〇号・第九八七―九八八頁〔明治三九年六月九日〕 ○三電車合同成る(DK090054k-0004)
第9巻 p.487 ページ画像

東京経済雑誌  第五三巻第一三四〇号・第九八七―九八八頁〔明治三九年六月九日〕
    ○三電車合同成る
去月二十六日、三社の当事者集会の席上に於て、偶然三電車合同談起り、翌日より着々進行せしが、合同条件に就き異議ありて決せず、再三協議の上、仲介者の裁断に対し絶対に服従することを約し、愈々去る四日仲介者たる渋沢男、馬越氏は左の如く裁定せり
 一、合同会社の合同株五十四万株を東京電気に九万株(現在十二万株)市街鉄道に三十一万二十株《(千)》(現在三十万株)東京電車に十三万八千株(現在十二万株)の割合を以て分配する事
  即ち東京電気より三万株を出し之を街鉄、電車の両社間に四と六との割合を以て街鉄に一万二千株、電車に一万八千株の分配を為す訳合なり
斯くて各社とも右の裁定に付、去五日午後一時より大株主協議会を開きて、其意見を諮ひたるに、殆んど満場一致を以て之を是認したりと云ふ
今三社の未払株現在を見るに
  電気百四万円(新株十万四千株一株十円)
  街鉄六百万円(新株廿四万株一株廿五円)
  電車五十万円(新株二万株一株廿五円)
   合計 七百五十四万円
にして此等は合同前凡て満株払込となし、然る後東京電気より三万株を切落し、之を四と六との割合にて街鉄と電車とに配分するものなれば、合同当時の三会社資本金は左の如く増減する勘定なりと
     現在資本総額  合同当時の資本総額 合同後の株数
 電気  六百万円    四百五十万円    九万株
 街鉄  一千五百万円  一千五百六十万円  卅一万二千株
 電車  六百万円    六百九十万円    十三万八千株
  計  二千七百万円  二千七百万円    五十四万株
又其損得如何は推算困難なれど去る五日の相場を基本として計算すれば、全部払込後の各社財産評価は
 電気    五八円  株数十二万  積算  六九六万円
 市街    七八円  同 三十万  同 二、三四〇万円
 電車    八八円  同 十二万  同 一、〇五六万円
となる勘定なり、然るに合同後は各社の配当株数に異同を生ずるを以て、仮に合同後の一株を七十五円と見積れば
 電車  受領株数九万  総価  六七五万円  損廿一万円
 街鉄  同卅一万二千  同 二、三四〇万円  損得なし
 電車  同十三万八千  同 一、〇三五万円  損廿一万円
となり、街鉄最も割合好き様なれど、払込其他の関係もあれば一概には云ひ難かるべしと云ふ

 - 第9巻 p.488 -ページ画像 

東京経済雑誌 第五三巻第一三四二号・第一〇七六―一〇七七頁〔明治三九年六月二三日〕 ○三電車合併仮契約(DK090054k-0005)
第9巻 p.488 ページ画像

東京経済雑誌  第五三巻第一三四二号・第一〇七六―一〇七七頁〔明治三九年六月二三日〕
    ○三電車合併仮契約
去十一日市内三電車鉄道会社取締役間に締結せられたる合併仮契約書は左の如くにして、来廿八日各社同時に臨時総会を開き其議に付せらるゝ筈なり
 東京電気鉄道株式会社、東京市街鉄道株式会社、東京電車鉄道株式会社の各取締役は三会社を合併する為め明治三十九年六月十一日左の契約を締結す
 第一条 三会社を合併して新に株式会社を設立すること
 第二条 新会社は資本金額を金二千七百万円と定め、額面五十円払込済の株式五十四万株を発行すること
 第三条 本年九月十一日現在の三会社株主を《(は)》左の割合を以て新会社株式の分配を受くること
   一 東京電気鉄道株式会社株主は同社の株式十二万株に対し新会社株式九万株
   二 東京市街鉄道株式会社株主は同社の株式三十万株に対し新会社株式三十一万二千株
   三 東京電車鉄道株式会社株主は同社の株式十二万株に対し新会社株式十三万八千株
  各株主が前項に依り分配を受くべき株数に一株未満の端数を生ずるときは其端数を通算併合し、該合計に相当する新会社株式は三会社取締役の協議に依りて定むる代表者の名義となし置き、新会社設立登記の後新会社取締役の定むる手続に従ひ之を競売し代金は端数に応じて本年九月十一日現在の三会社株主に分配すること
 第四条 新会社成立したるときは、三会社の取締役は各自本年九月十一日午前零時現在の財産目録、貸借対照表に基き、其会社に属する一切の財産(諸積立金を包含す)帳簿書類を遅滞なく新会社に引継くこと
 第五条 新会社は本年九月十日迄に於ける三会社の利益金を各別に計算し、其利益金は同月一日現在の各会社株主に配当すること、但特許命令及定款に依る定例の諸積立金及納付金は同月十日迄の利益金を標準として三会社各別に計算し、配当金より之を控除すること
 第六条 三会社は本月二十八日を期し此仮契約に依る合併決議を為すため株主総会を開くる《(こ)》と
 第七条 前条の総会に於ける合併決議は本年九月十一日より其効力を生ずること
 第八条 三会社は其株主をして本年九月八日迄に未払込金全部の払込を為さしむること
 第九条 三会社は本年九月一日より株券名義の書換を停止すること
 第十条 合併に関する一切の手続は三会社の取締《(役脱カ)》に一任すること
 第十一条 第六条以外の各条項は第六条の各会社総会に於て此仮契約に依る合併決議を為したるときに《(衍)》より其効力を生ずること

 - 第9巻 p.489 -ページ画像 

市電気事業検査資料 電灯編・第一五―一八頁(DK090054k-0006)
第9巻 p.489-490 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

市電気事業検査資料 電灯編・第一二―一五頁(DK090054k-0007)
第9巻 p.490-492 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

東京市電気局十年略史 第一五―一六頁〔大正一〇年八月〕(DK090054k-0008)
第9巻 p.492 ページ画像

東京市電気局十年略史  第一五―一六頁〔大正一〇年八月〕
 東京鉄道株式会社 明治三十九年九月十一日、三会社は神田青年会館に総会を開き、旧三会社を解散して東京鉄道株式会社を設立すること及び定款を議定し、取締役監査役の選挙を行ひ、直に登記を了し翌十二日より改正賃率を実施し、同月十八日、陸海軍人に対する往復金四銭の割引乗車券発行の認可を得て十月一日より実施し、十一月二十一日、臨時株主総会を開き、資本総額二千七百万円を改めて六千万円とせり、合併当時に於ける会社の営業状態を摘記すれば左の如し。
    営業線路(単線延長)車輛数

図表を画像で表示営業線路(単線延長)車輛数

       哩 電車  二二、八八〇   四十人乗       二五〇輛       哩 街鉄  四五、一六六   四十人乗(四八〇)  四八九輛              六十六人乗(九)       哩 電気  二一、四九六   四十人乗       一八〇輛 



    営業成績
 電車 明治三十九年六月より九月十日迄
      運転車輛数       乗客数           乗車賃
                                      円
      二一、一六五輛  一二、九〇七、五六八人  三六七、六九五、三八五
 一日平均    二〇九      一二六、八〇〇     三、六〇四、八六〇
 街鉄 明治三十九年六月より九月十日迄
                                      円
      三三、八一六輛  一八、九三二、七二五人   五三七、一七四、三七
 一日平均    三三二      一八五、六一五      五、二六六、四二
 電気 明治三十九年五月より九月十日迄
                                      円
      一三、四八九輛   六、四二八、四〇三人   一八八、一一九、六九
 一日平均    一〇一        八、三三四     一、四一四、四三四


青淵先生公私履歴台帳 明治四十二年六月七日調(DK090054k-0009)
第9巻 p.492 ページ画像

青淵先生公私履歴台帳  明治四十二年六月七日調
                    (渋沢子爵家所蔵)
東京鉄道株式会社相談役  明治三十九年九月


竜門雑誌 第二二〇号・第四五頁〔明治三九年九月二五日〕 青淵先生と新会社関係(DK090054k-0010)
第9巻 p.492 ページ画像

竜門雑誌  第二二〇号・第四五頁〔明治三九年九月二五日〕
青淵先生と新会社関係
○中略
 一、東京鉄道株式会社 相談役
  ○栄一ノ相談役就任ニ関スル右ノ資料ハ次ニ掲グル竜門雑誌第二二三号第四一頁ニヨツテ之ヲ確証ス、然レドモ何日ナルヤヲ明ラカニセズ。栄一ノ日記ハ七月十五日以後ヲ欠ク。他ニ資料ヲ得ズ。


竜門雑誌 第二二三号・第四一頁〔明治三九年一二月二五日〕 ○東京鉄道株式会社臨時総会(DK090054k-0011)
第9巻 p.492-493 ページ画像

竜門雑誌  第二二三号・第四一頁〔明治三九年一二月二五日〕
○東京鉄道株式会社臨時総会 同社に於ては十一月二十一日午後一時より東京商業会議所にて臨時総会を開催せるが、出席人員委任状共二千四百八十二人、其の権利数三十二万五千百二にして、牟田口社長
 - 第9巻 p.493 -ページ画像 
議長席に着き、議案第一号資本金三千三百万円を増加して資本総額を金六千万円と為すの件、第二号右に伴ひ定款改正の件は原案通り可決し、終りに第三号旧東京電気鉄道株式会社、旧東京電車鉄道株式会社及び旧東京市街鉄道株式会社の退職取締役及監査役に対し退職手当金贈与の件に移りしが、二三質問ありしのみにて結局退職重役二十八名に金十万円を贈与すること、其分配方法の公平を保つ為め、青淵先生に一任することに決し、尚ほ会社の合同に功労ある人々に対する報酬は改めて審議することに何れも確定し、二時過無事散会せり



〔参考〕市電気事業検査資料 電灯編・第一八―二二頁(DK090054k-0012)
第9巻 p.493-494 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

〔参考〕市電気事業検査資料 電灯編・第二二―二六頁(DK090054k-0013)
第9巻 p.494-497 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

〔参考〕東京市電気局十年略史 第九―一五頁〔大正一〇年八月〕(DK090054k-0014)
第9巻 p.497-499 ページ画像

東京市電気局十年略史  第九―一五頁〔大正一〇年八月〕
 是れよりして東京電車・東京市街及東京電気の三鉄道会社は各々其営業特許により或は工事を進め、或は起工せんとし、鋭意線路の速成に勉めしが、同一市内に於て三会社鼎立して起工するが如きは畢竟或る意味に於ける三重資本にして、大資本を運用する性質上不利益なるのみならず、之を併合して一大会社となさば経営に於て尠からざる節約をなし得べく、又従事員の減員、発電所、事務所、機械物品の流用等によりて減少し得べき経費も決して尠少にあらざるべし、殊に之によりて営業上の統一を保ち随つて事務を簡捷ならしめ、一般乗客に利便を与ふるは勿論、延いては無益の競争を避け資本の運用上、幾多の効果を齎すべきは明かなるを以て、千家尊福、渋沢栄一両男の勧告により協議を重ね、明治三十六年七月十一日、東京電車鉄道会社と東京市街鉄道会社との重役間に合併に関する仮契約締結せられ、東京電車鉄道会社にては、七月二十九日、臨時総会を開きて討議し大多数を以て可決せしが、東京市街鉄道会社にありては合併派と非合併派との間
 - 第9巻 p.498 -ページ画像 
に紛擾を極め、二十八日の臨時総会に大波瀾を惹起し同夜十二時に至るも議事を終へざるを以て、議長は散会を宣して退場したるに拘らず合併派は更に議長を推選して原案を可決し、同月三十一日、東京電車鉄道会社長牟田口元学、東京市街鉄道会社専務役藤山雷太の連署を以て内務大臣に向け合併許可の願書を提出し、又非合併派は東京区裁判所に仮処分の申請をなすが如き大紛擾を生ぜしが、九月二十六日に至り、内務大臣より『東京電車鉄道株式会社、東京市街鉄道株式会社、明治三十六年七月三十一日出願軌道条例に基く特許及び命令承認の件聞届け難し』との指令ありて、合併は遂に不成立に終れり。○中略
 是より先き政府は三電車の開通に伴ひ徒に線路の延長に勉めて、無益の競争をなすの弊害を恐れつゝありしが三十八年七月二十五日、芳川内務大臣は三電車の重役を其官邸に招ぎ、都市交通政策に就き其意見を述べ、之に附随して現在各社に特許しある線路の整理に就き希望を陳べ併せて其の協定を促したり、而して整理協定は合同を待つて始めて完成し得べきものなれば、協定の一方法として合併に関しても亦重役間に研究せられたり、されど合併は全然不可能とする会社ありて全く望みなく又協定は各自利害を異にするを以て其の成立難を唱ふるものありしも、数回交渉の後、既設線及び起工線に対するものを除外して、内務大臣の特許線整理に対する意見を実行することに決せり。
 斯くする内四囲の事情は、永く三社の鼎立を許すへきにあらずして早晩其の合併を実現せざるべからざるに至れり、而して三社各別の三銭均一制は、各会社線に渉る乗客に対して不利不便なるを以て、輿論は三社共通賃銀制を希望すること久し、是に於て三会社が賃金の値上をなさんとするに当り、此れの輿論に鑑み、三社共通五銭均一制を採用せんとして、明治三十九年三月二日、其の筋に願書を提出し、端なく合併問題を惹起するに至れり。
 蓋し三銭均一制は、明治三十六年の交、東京街市鉄道会社と東京馬車鉄道会社との合併談ありし際市街鉄道会社の非合併派が、合併不可の理由として提出したるものにして、其の理由とする所は、広袤四里四方、人口百五十万を有する東京市の公道を勝手に使用し、有利有望の事業を営む市街鉄道は市民に対して最も便利にして最も低廉なる賃銀を定めざるべからず、而して東京市街鉄道は、動力変更の必要ある東京電車鉄道と異り、工事費を要すること比較的少きを以て、三銭均一としても一割七分或は二割の純益金配当をなすは難きにあらずといふにあり、此の賃銀制度は市民一般の人気に投じたるを以て、東京市街鉄道会社は、初め数寄屋橋・神田橋間の賃銭を二銭とせしが、他線の開通せらるゝに及びて此の賃銀制を採り、当時反対を主張したる東京電車鉄道会社も、上野・品川線全通と同時に此の制度を実施し、東京電気鉄道会社も亦此の制度に傚へたり、是れ単に東京市街鉄道会社に対抗する策略のみにあらずして、実に輿論に顧みる所ありて断行したるものなり、然れども此の制度を実行すること二年半に及ぶに、其の賃率の成績は予定の収入額に達せずして、軌道、車輛等の改築又は引替に要する積立も行ふの余裕なく、前途の経営寒心に堪へずといふ理由として、前述の如く明治三十九年三月二日、三会社相聯合して三
 - 第9巻 p.499 -ページ画像 
社各別三銭均一の制を三社共通五銭均一に改め、学生労働者の割引は片道四銭として往復切符を発行し、復の切符は従前の如く何時にても使用し得べきことの願書を其の筋に提出せり。
 玆に於て府知事は之を市会に諮問し、同月十二日の市会は、三社共通四銭均一、学生労働者の割引は従前の通りとの議決をなして府知事に答申し、内務大臣は願意不備なりとして三社の値上申請を却下し、更に十五日の市会は一日も早く市有たらしめん事の決議をなせり。
 然るに此の三社共通均一制の問題は、三社当時者間に合併の機運を促し、同年五月二十七日、重役会議を開きて交渉委員を定め、数回交渉の上、六月十一日、新会社の資本額を二千七百万円と定め、額面五十円払込済の株式五十四万株を発行し、東京電気鉄道会社は同社の株式十二万株に対して新会社株式九万株、東京市街鉄道株式会社は同社の株式三十万株に対して新会社株三十一万二千株、東京電車鉄道株式会社は同社の株式十二万株に対して新会社株式十三万八千株を、同年九月十一日現在の株主に分配すること、合併決議のために開く各社の株主総会の決議は、同年九月十一日より其効力を生ずること等の仮契約を締結し、二十八日に開きたる各社の株主総会の可決を経て、七月十六日、三社の代表者より各会社の特許に属する事業上の権利義務は一切之を新会社に継承せしむる事、合併の上は乗車賃率は四銭均一と定むる事、学生、労働者の為めに午前七時迄の間は割引して、金二銭とし、此の時間内は往復切符を発行し、復の切符は何時にても使用し得べき事を、内務大臣に申請し、内務大臣は会社の営業状態を諒とし又四銭均一は曩の市会の議決の趣意にも適するものとして、八月一日之が認可と共に、新会社に対する特許命令書を交付せり。
 此の内務省の認可に対して、輿論は反対を唱へ、或は有志者の当局訪問となり、或は会社に向つて其の不都合を責め、或は演説会を開いて反対説を鼓吹するなど、囂々として鼎の湧くが如く、殊に実施期日の切迫に連れて、形勢益々不穏に傾き、九月五日、日比谷公園に催されたる電車賃値上反対会は遂に電車焼打の騒擾を惹起するの導火線となり、十数台の電車は破壊又は大破損を蒙り、爾来数日間三会社共に電車の運転を中止するに至れり。


〔参考〕電気事業五十年史 第三七三―三七四頁〔大正一一年一〇月〕(DK090054k-0015)
第9巻 p.499-500 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

〔参考〕明治史第五編交通発達史 (「太陽」臨時増刊) 第二〇三頁〔明治三九年一一月〕(DK090054k-0016)
第9巻 p.500 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

〔参考〕東京経済雑誌 第五三巻第一三二八号・第四三七頁〔明治三九年三月一七日〕 ○電車値上と市民大会の運動(DK090054k-0017)
第9巻 p.500-501 ページ画像

東京経済雑誌  第五三巻第一三二八号・第四三七頁〔明治三九年三月一七日〕
    ○電車値上と市民大会の運動
市内電車賃値上問題に就ては別項に記したるが、其後各区会は益々反対の気焔を高め特に社会主義者は去る十一日を以て日比谷公園に市民
 - 第9巻 p.501 -ページ画像 
大会を開きて反対の決議を為し、越えて十五日再び同公園に開会したるが、当日は芝山山上に大旗を樹て赤旗を翻へし太鼓を打叩きて、発起者側の山路弥吉・田川大吉郎・木下尚江・西川光次郎・岡千代彦・斎藤兼次郎・片山潜・堺利彦・加藤時次郎の諸氏出張し、午後一時に至るや直に開会し、左の三条の決議をなし、之を会衆に報告せり
    「我々は市会の決議を無視す」
 第一 我々は電車値上に飽迄反対す
 第二 当局者若し値上を許可せば我々は当局者を以て私利を重んじ市民の公益を軽んずる者と認む
 第三 来る十八日午後一時より上野公園より当公園迄大示威運動を行ふ
右の決議を報告するや、会衆は拍手喝采して市の万歳を唱へ、是にて直に散会の旨を告げたるが、数千の群衆は或は街鉄会社に押寄せ、或いは市役所に赴きて、賃銭値上の不当なるを絶叫し、中には車窓を破壊し、電車の通行を停める等、事態益々不穏なりければ、憲兵、警部、巡査等数百名出張之を警戒し、遂に近衛歩兵一小隊を繰出すに至り、夜に入りて静穏に帰したり、而して昨十六日に至り群集中より兇徒嘯集罪被告として十八名を検事局に送られたり


〔参考〕渋沢栄一 日記 明治三九年(DK090054k-0018)
第9巻 p.501 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三九年
三月十七日 晴 軽暖              起床七時就蓐十一時三十分
○上略 正午大倉氏ヲ訪ヒ英国人招宴ニ列ス、饗宴畢テ尾崎行雄氏ト電気鉄道ノコトヲ談ス○下略


〔参考〕東京経済雑誌 第五四巻第一三四九号・第二三八頁〔明治三九年八月一一日〕 街鉄問題(DK090054k-0019)
第9巻 p.501-502 ページ画像

東京経済雑誌  第五四巻第一三四九号・第二三八頁〔明治三九年八月一一日〕
    街鉄問題
街鉄の賃金を三銭より四銭に引上ぐることとなるや、又々攻撃は社会党員を中心として起り、内務大臣の責任を問ふと同時に会社に向へり、而して今後の結果は未だ知るべからざるなり、抑々街鉄が公道たる市街の道路を使用し、市に負ふ所多きや言を俟たざるなり、然れども之が為めに会社は左の如き条件の下に立てるものなり
 一、七朱の配当を為したる以上の利益は之を三分して其の一を市に納付すべきこと
 一、街鉄線路の市区改正に対しては、其の費用の半額を会社に於て負担すること
 一、会社にて拡築若くは改築したる道路橋梁は無償にて市に属すること
 一、電柱に点灯し、道路橋梁の修繕・掃除・撒水・除雪を会社にて負担すること
 一、明治六十五年以後には最近の財産目録に記載せる物件の価格を以て市に譲渡すの義務あること
 一、明治八十五年満期の暁には無償にて国又は市に会社の財産全部を引渡さゞるべからざること
即ち今より四十五六年の後には無償にて財産の全部を市に引渡さゞる
 - 第9巻 p.502 -ページ画像 
べからざるを以て会社は世間普通の利益を株主に配当するの外に於て其の元本を償却せざるべからざるものなり、然るに其の配当は最も多き東鉄に於て一割を出でず、市街は八朱、堀端線は二朱半に過ぎざるなり、合併後の利益配当は幾何なるや未だ知るべからず、又三銭に据置く方収入多きか、四銭に引上ぐる方収入多きか是亦今日に於て確知すべからざるなり、然れども市会の四銭を可とする意見は今日も其の効力を有すべし、何となれば会社分裂して線路短縮せるに於ては四銭均一意見を適用するは不当なりと雖、会社合併して線路延長せるに於ては四銭均一意見を適用するは市会に於て異議あるべからざれば也
街鉄会社の如き境遇に在るものに対して攻撃するは左ることながら、余輩は之と同時に日本銀行其の他の独占会社及び日本郵船会社其の他の保護会社の利益を分取するの必要なることを世に告げざるを得ざるなり


〔参考〕東京経済雑誌 第五四巻第一三六九号・第一一五五―一一五八頁〔明治三九年一二月二九日〕 東京市の電鉄問題(塩島仁吉)(DK090054k-0020)
第9巻 p.502-505 ページ画像

東京経済雑誌  第五四巻第一三六九号・第一一五五―一一五八頁〔明治三九年一二月二九日〕
    東京市の電鉄問題(塩島仁吉)
東京市の電鉄ほど市民の争点となれるものは少かるべし、是れ要するに、其初に当りて処分を誤りたるが為なり、故に余輩は玆に少しく其の顛末を叙して、此の問題を解釈せんとする者の参考に供せんとす
元市街鉄道会社は、三社合同して設立したる者にして、三会社の出願は何れも東京市の出願以前に在りしは事実なり、然れども市の出願する以上は、出願の前後を問はずして市に特許すべきは当然なりとす、何となれば市は電鉄を布設すべき街路に就きて特別の関係を有し、地主と見做すも可なるものなればなり、然るに山県内閣は第十三議会に於て、増租案の通過を図るが為に、自由党の領袖故星亨氏に約するに三会社を合同せしめ、且東京市会の同意を得るに於ては、電鉄の布設を特許すべきを以てせり、而して此の約束は星氏の尽力に依り、増租案の議会通過と共に成立せり、是に於て星氏は麹町区の一級公民たりし三井氏、両雨宮氏等《(マヽ)》を説きて市会議員に当選し、更に名誉職市参事会員となり、執行議政の両機関に勢力を振ひて電鉄の特許条件を議定し、之を政府に進達せり、而して政府は之に修正を加へて電鉄の布設営業を特許せり、当時市会の議決に依れば、公納金及び営業満期後の処分法は左の如し
 公納金 会社は六ケ月間を通算し、平均一日一哩四拾円以上収入の場合に在りては左の割合に依り市に納金を為すべし
    一日一哩平均収入    営業総収入に対する割合
 一金四十円以上五十円未満      一百分一
 一金五十円以上七十五円未満     一百分二
 一金七十五円以上百円未満      一百分三
 一金百円以上百廿五円未満      一百分四
 一金百廿五円以上百五十円未満    一百分五
 一金百五十円以上百七十五円未満   一百分六
 一金百七十五円以上二百円未満    一百分七
 一金二百円以上二百廿五円未満    一百分八
 - 第9巻 p.503 -ページ画像 
 一金二百廿五円以上二百五十円未満  一百分九
 一金二百五十円以上         一百分十
 営業満期後の処分法 営業期限(三十ケ年)満了の後は、相当価格を以て市に買上ぐることを得
当時公納金の割合に関し、故田口博士は市参事会に於て六分、二分の一説を主張し、高山権次郎氏之を修正して七分、十分の四と為し、星氏は七分、三分の一説を主張し、而して松田市長は星案を採用して原案となし、参事会の可決する所となり、之を市会に提出したるに、市会は前記の如く修正可決したるものなり、今試みに田口案、星案(即ち原案)及び市会議決の結果を算出すれば左の如くなるべし
                 田口案         星案       市会議決
                    円          円          円
 一日一哩の収入          一二五        一二五        一二五
 一ケ年総収入     九、一二五、〇〇〇  九、一二五、〇〇〇  九、一二五、〇〇〇
 営業費        四、五六二、五〇〇  四、五六二、五〇〇          ―
 一ケ年純益      四、五六二、五〇〇  四、五六二、五〇〇          ―
 第一純益         九〇〇、〇〇〇  一、〇五〇、〇〇〇          ―
 差引純益       三、六六二、五〇〇  三、五一二、五〇〇          ―
 一ケ年公納金     一、八三一、二五〇  一、一七〇、八三三    四五六、二二〇
 三十ケ年公納金全額 五四、九三七、五〇〇 三五、一二五、〇〇〇 一三、六八七、五七〇
即ち田口案に拠れば、市は一ケ年に付百八十三万余円の公納金を得べきものなりと雖、星案は之を減じて百十七万余円と為し、市会は更に大に之を減じて四十五万余円と為したるものなり、而して政府は市会の意見を排斥し、七分、三分の一を採用したるものなり
又営業満期後の処分法に関して田口博士は、営業満期の時に至り之を市に買上ぐるの方法は必ずや明確ならざるべからず、欧米諸国に於ては建設費を以て買上ぐるものを多しとす、或は無代価にて市有と為すものあり、是れ其の営業年間に於て積立金を為し、建設費を償却するの方法を立つるに因るなり、又其の営業満期前数年間の純益を平均し之を利息相場に準じて資金を算出し、之にて買上ぐるものあり、何れの場合に於ても結局市有と為すの方法は明確に規定せざるべからずとの論拠にて、建設費買収論を主張したれども、其の論行はれずして前記の如く相当価格にて買収し得べきこととなれり、然れども相当価格とは何を標準として決すべきものなるか、公納金寡少にして、利益多きときは、株式の相場は非常に騰貴すべし、此の場合に於て建設費にて之を買上ぐるが如きは到底行はれざることなり、然れども株式の相場を標準として買上ぐるが如きは、東京市の決して為すべからざる所なり、故に相当価格を以て買収し得べきことと為すが如きは、到底不可能事を明記するものにして、何等明記せざると毫も異ならざることなり、是に於て田口博士は断然市有論を主張せられたりしが、政府は市会の意見を排斥し、無代価にて市有と為すべき旨を規定し、而して営業年限三十年を延長し五十年と為せり
斯の如くにして元市街鉄道会社は特許せられ、元東京電車鉄道会社及び元東京電気鉄道会社の特許条件は之に準拠せられたるものなり、故に山県内閣が国政の料理に関聯して、東京市の特権を犠牲に供し、電
 - 第9巻 p.504 -ページ画像 
鉄を私設会社に特許したるは、其の初めを誤りたるものにて、政府は其の失策を補はんが為め市会の意見よりは公納金を多大にし、且市有の実行を五十年後に確保せるものなり、而して既に私設会社に特許せる以上は、其の権利利益は妄りに侵害すべからざるは勿論なるを以て営業年限中に強制的買収を行はんとするが如きは、仮令議論としては賞賛すべきものあるにもせよ、政策としては到底行はるべからざるものなり、故に若し電鉄にして利益を壟断するの事実あるに於ては、宜く其利益を市に分取するの方法を講ずべし、決して私設としての存立を奪取すべからざるなり
然かるに爾来東京市会及び市民の主張する所は、多くは此の方針に背叛せり、是れ其の容易に行はれざる所以ならずや、夫れ電鉄三会社の株主総会が合併を議決して其の認可を申請する時は、政府は之を認可すべきは当然なり、然るに東京市会は非合併論者に同情を寄せ、市長は合併の認可に関して政府の注意を喚起し、而して雨宮氏一派の非合併論者は三銭均一説を唱道せしかば、非合併論は忽ち全市を風靡するに至り、時の内務大臣故児玉子爵は市民の人気を迎へて合併を認可せざりしかば、三銭均一説は大に勢力を高め、其の実施後の結果に徴して、雨宮氏等は責任を引きて辞職したるにも拘らず、三銭均一説は尚衰へずして、賃銭引上げの諮問案は、市会に於て僅に一名の多数にて通過せり、而して此の失敗は転じて電車市有の計画となり、市会は全会一致を以て、電鉄市有の提案を市参事会に建議し、参事会は調査の結果第一年目より第八年目迄は年々損失を重ね、其額百九万四千九百五十六円に上り、而して公債の償還は第五十一年目即ち明治九十年にあらざれば完了せず、本市は幾多の危険を負ひ、負債を起し、無償引渡を受くべき年より五年の後に漸く公債を完済し、尚百九万余円の損失を重ぬるに至る、故に市会建議の趣意により、今日買収案を提出するは不得策なりと決定したりと報告したるも、尚其の報告書に於ては乗車賃率を低減すること、市の収入を増し市民負担の加重を軽減すること、電車に対する市民の騒擾を絶つことの三事は、特許命令書にある公益にあらずと否定すること能はざるべしと云ひ、而して市会に於ける電鉄市有派は、参事会調査の如しとするも、乗車賃率低減に依り現行の四銭均一制に比して市民を益すること毎年約百五十万円の多きに上るが故に、参事会は其の調査せる計算を根拠として速に買収案を提出すべしと云へる建議案を提出し、而して此の建議案は大多数にて否決となりしかば、二十日会は解散し、同志会には七八名の脱会者を出し、市参事会員中にても、正直なる中島行孝氏の如きは辞職し、横着なる尾崎市長の如きは、其の調査に係る市有案をば撤回して、参事会の報告書を市会に提出したるのみならず、之を説明して平然たり、外部より之を傍観するに醜劣極まれりと謂ふべきなり
思ふに今後と雖電鉄の市有説に基ける争論は容易に止まざるべし、然れども此の争論を鎮定するにあらざれば、市政を挙ぐることは困難なるべし、此の争論を鎮定せんとするには電鉄問題をして常軌に復せしめざるべからず、既に私設会社に特許し、営業満期後に於ける処分法まで確立せる以上は、其の中途に於て強制買収を行はんとするが如き
 - 第9巻 p.505 -ページ画像 
は到底常軌を逸せる行動と謂はざるべからず、勿論公益の為には何時と雖買収し得べきは特許命令書に規定せる所なりと雖、是は特別の場合を指定せるものにして、決して乗車賃率を低減し、市の収入を増加し、若くは騒擾を絶つと云ふが如き場合に適用すべきものにあらざるべし、何となれば乗車賃率は政府に稟議して低減せしむるを得べく、市の収入増加は、公納金率を増加すれば其目的を達すべく、騒擾の鎮圧に関しては他に自ら適当なる方法あるべければなり、且夫れ一方に於て乗車賃率の低減を主張しながら、他の一方に於ては市の収入増加を希望するが如きは到底矛盾を免かるべからざるなり、然らば東京市に於ける電鉄問題をして常軌に復せしむるの方法如何、他なし、市有説は全く之を抛棄し、電鉄会社の至当の権利と、相当の利益とを尊重し、而して市の利益を保護すること是なり、換言すれば公納金の増加を図ること是なり、抑も去る明治三十二年に於て、故田口博士が電鉄の公納金に関し六分、二分の一説を主張したるは、東京市が一千五百万円の公債を募集するときは年六分五厘の利子を仕払はざるべからず而して其発行価格は九十円まで下落すべしと想像せる見地に於てせるものなり、而して電鉄の公納金は其の会社の株式相場をして、払込額の五割以上に騰貴せしめざるの程度に於て徴収せざるべからず、即ち五十円の株式をして七十五円以上に騰貴せしめざるまでに徴収せざるべからずとの主張に基けるものなり、然るに今や電鉄の株式は五十円株にて、百廿五円以上に騰貴せり、即ち二倍と二割五分騰貴なり、是れ公納金少なきが為なり、故に宜しく公納金を増加して、市の収入を増し、其の利益を増進すべきなり、又東京市は年利五分、手取金額百磅に付九十六磅にて百五十万磅の公債を募集せり、而して今や東京に於ては金融緩慢にして、金利著しく低落したれば、公納金の割合は七分、三分の一を改めて、五分、二分の一と為すは相当なるべし、少なくとも六分、二分の一には改めざるべからず、而して此の改正は特許命令書に於ても認めて特に規定しあれば、市会が之を政府に建議する時は、行はれざること決してあるべからざるなり
若夫れ乗車賃率の低減に至りては、市会が先に一名の多数を以て引上げを可決し、更に三銭均一にて市営となすときは損失すべしとの報告を是認したる今日に於て、直ちに三銭均一を実行することは容易に望むべからずと雖、余輩は将来三銭均一に引下ぐるの時機あるべきを疑はざるべし、而して乗客負担の軽減を以て、市民の公益と為すものは先づ通行税の廃止を主張せざるべからず、通行税廃止せられて、而して次に乗車賃率の低減に及ぶを以て順序と為さゞるべからざるなり
  ○東京市会ノ街鉄市有問題ノ詳細ハ「東京市会史」第三巻第九一―一三三頁ヲ参照スベシ。