デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
3節 電話
1款 電話会社
■綱文

第9巻 p.705-712(DK090070k) ページ画像

明治19年7月26日(1886年)

是日電話会社創立ノ件ニ付キ発起人総代梅浦精一ヨリ逓信大臣榎本武揚ニ再出願ヲ為ス。栄一発起人ノ一人ナリ。翌年五月理学士沢井廉ヲシテ欧米ニ於ケル電話事業ヲ調査セシムル為メ留学セシム。


■資料

電話会社関係書類(写)(DK090070k-0001)
第9巻 p.705-712 ページ画像

電話会社関係書類(写) (渋沢子爵家所蔵)
      ○
電話会社創設ノ義ニ付今般猶又其筋へ再応願書差出度、就テハ右手続等ニ就キ篤ト御相談申上度奉存候間、何卒乍御苦労明七日午後五時東京商工会迄是非御繰合セ御出張被下候様致度、此段御案内申上候也
  明治十九年六月六日           大倉喜八郎
                      益田孝
    前回署名の人々宛
渋沢栄一及原六郎ノ両氏ハ最前発起者ノ中ナレトモ、旅行中ニ付之ヲ省ク
      ○
取急回章ヲ以テ得貴意候、電話会社創立ノ義ニ就テハ過日大略ノ草案相認メ、石井局長ノ御内覧ニ供シ置候処、頃日兎モ角モ早速出願致候様同局長ヨリ御内諭ノ次第有之、就テハ今般別紙ノ通リ願書差出度ニ付、何卒別冊委任状ヘ御調印被下度候、尤別紙定款中ニハ各位ニ於テ多少異見ヲ有セラルヽ箇条モ可有之存居候得共、前陳草案ニ対シテハ同局長ヨリ見込ヲ細示セラレタル訳ニモ無之ニ付、今態々御会同致シ彼是討議致候トモ充分ノ好果ヲ期シ難ク、且ツ斯ノ如ク時日ヲ移シ候時ハ為メ《(ニ脱カ)》好機ヲ失スルノ恐モ有之候ニ付、兎モ角モ別紙ノ通リ願書ヲ差出シ、先以テ大体ニ付創立ノ御許可ヲ蒙リ候上、若シ細目ニ就キ改正加除ヲ要スル廉モ有之候ハヾ、追テ一同熟議ノ上更ニ之ヲ申上候方可然見込ニ御坐候、此段得貴意候也
 尚々昨年出願ノ節ハ其願書面ニ各発起人一同連印致候処、右ノ手続ニ拠ル時ハ甚ダ手数相懸リ、区役所ノ奥印ヲ請ヒ、或ハ其筋ヨリ召喚アル場合ニ於テハ大ニ不便有之候間、此度ハ発起人ヨリ予メ別冊委任状ノ手続ニヨリテ総代一名ヲ撰ミ、一名ノ調印ニテ出願致候方大ニ好都合ト存候、依テ右総代ノ任ヲ梅浦精一君ニ依頼仕候間、左様承知相成度候也
  明治十九年七月二十一日         大倉喜八郎
                      益田孝
    丹羽雄九郎殿
    米倉一平殿
 - 第9巻 p.706 -ページ画像 
    森村市太郎殿
    梅浦精一殿
    松尾儀助殿
    原六郎殿
    小室信夫殿
    渋沢栄一殿
    子安峻殿
    喜谷市郎右衛門殿
    山中隣之助殿
    矢島作市殿
    川崎八右衛門殿
    安田善次郎殿
    今村清之助殿
    平野富二殿
    久原庄三郎殿
    益田克徳殿
此廻状御廻覧相済候はゞ、何卒木挽町東京商工会書記萩原源太郎方迄御戻シ被下度候也
      ○
今般電話会社創立ノ義ニ付別紙ノ通リ逓信大臣ヘ出願仕度、就テハ何卒右書面逓信大臣ヘ進達被成下度、此段奉願上候也
              電話会社創立発起人
              丹羽雄九郎外二十名総代
              京橋区木挽町九丁目十一番地
              寄留 新潟県平民
  明治十九年七月廿六日          梅浦精一
    東京府知事 高崎五六殿
 都合三部(但委任状写ヲ添ヘタルモノハ二部丈)ヲ作リ其中一部区長ノ奥印ヲ受ケ当日府庁ニ差出ス
      ○
    電話会社創立ノ義ニ付願
電話通信ノ義ハ方今世上通信ノ迅速ヲ貴ブノ気運ニ際シ実ニ欠クベカラザルノ要具ト奉存候間、今般私共申合セ電話会社ヲ創設シ、資本金ヲ弐拾五万円ト定メ、内半額ハ発起人一同ニ於テ引受ケ、進テ全国各地ニ於テ其便益ヲ感覚スルニ従ヒ益々此事業ヲ拡張スルノ見込ニ御座候得共、先以本社ヲ府下京橋区銀座二丁目七番地ニ置キ、別冊定款ニ依リ電話通信ノ業ヲ営ミ度奉存候間、何卒御許可被成下度、此段別冊定款相添、奉願上候也
  明治十九年七月廿六日          梅浦精一
    逓信大臣 榎本武揚殿
      ○
  副願
電話通信ノ義ハ何分新創ノ事業ニ係リ、特ニ其取扱方ハ格段ナル技術ヲ要スルモノニ付、幸ニ別紙出願ノ趣旨御聞届被成下愈々会社創立ノ御許可ヲ蒙リ候上ハ、中央局ヲ設置スベキ位地ノ撰定、其他機械ノ装置、電線ノ架設等ニ関スル諸経画ニ就テハ何卒一切御省ニ於テ御引受被成下候様仕度、此段副願仕候也
  明治十九年七月廿六日          梅浦精一
 - 第9巻 p.707 -ページ画像 
    逓信大臣 榎本武揚殿
      ○
    電話会社創立定款
通信ノ便利ヲ謀リ政府ノ允准ヲ得テ電話会社ヲ創立スル為メ、株主ノ衆議ヲ以テ決定スル処ノ定款左ノ如シ
   第一章 総則
第一条 本社ハ電話会社ト称シ本社ヲ東京ニ置ク、而シテ土地ノ情況ニヨリ必要ト認ムル時ハ全国各枢要ノ場所ニ支社ヲ設置スベシ
第二条 本社ハ有限責任トス、故ニ本社ノ負債弁償ノ為メ株主ノ負担スベキ義務ハ株金ノ全額ニ止マルモノトス
第三条 本社ノ営業年限ハ開業ノ日ヨリ満二十ケ年トス
 但シ満期ニ至リ株主ノ衆議ヲ以テ猶永続ヲ望ムトキハ、更ニ政府ノ允准ヲ請フテ之ヲ継続スベシ
第四条 本社ハ電話ヲ以テ同盟者間ノ通信ヲ弁達スルヲ目的トス
第五条 何人タリトモ本社ノ規則ニ従フ者ハ同盟者タルヲ得
第六条 同盟者タル者ハ相当ノ通信料ヲ出シテ各同盟者ニ通信スルヲ得
第七条 第四条ノ目的ヲ達スル為メ適当ノ場所ニ中央局ヲ置キ、予メ同盟者ト中央局トノ間ニ電線ヲ架シ必要ノ機械ヲ装置スベシ
第八条 本社ハ前条ニ掲クル事項ヲ以テ本務ト為スガ故ニ、一切目的外ノ事業ニ関係セザルベシ
第九条 本社ノ営業ハ此定款ニ拠リテ之ヲ正副社長幹事ニ委任スベシ
   第二章 資本金之事
第十条 本社ノ資本金ヲ弐拾五万円ト為シ、之ヲ五千株ニ分チ、即チ一株ヲ五拾円ト定ム、但シ営業ノ景況ニ依リ株主ノ衆議ヲ以テ官ノ允准ヲ請ヒ之ヲ増減スルコトアルベシ
第十一条 何人タリトモ(外国人ヲ除キ)本社ノ規則ヲ遵守シ其株式ヲ引受ケタル者ハ都テ本社ノ株主タルヲ得、而シテ一人ニテ幾株ヲ所有スルモ妨ナシトス
第十二条 本社ノ資本金ハ営業ノ模様ニ依リ必要ノ金額ヲ定メテ之ヲ募集スルガ故ニ、会社ヨリ其報告ヲ為ス毎ニ幾回ニモ払入ルヽモノトス(此募集ノ報告ハ少クモ一ケ月前ニ於テスベシ)尤モ毎回払込ヲ為シタルトキハ仮株券ヲ交附シ、悉皆込済《(払脱カ)》ノ上之ニ引替ニテ本株券ヲ渡スベシ
第十三条 株主若シ募集割払金ノ入金ヲ怠ルコト一週間以上ニ及バヽ之ヲ除名スベシ、而シテ是迄入金済ノ高ハ之ヲ売却シテ其買得人ヲシテ欠員ニ充テシムベシ、但シ此売却ニ就テノ諸入費ヲ差引猶余金アレバ原株主ニ還付スベシ
   第三章 営業ノ事
第十四条 第七条ニ示ス電線及機械ハ総テ本社ノ費用ヲ以テ之ヲ設置スルカ故ニ、線路ノ遠近ニ随ヒ左ノ割合ヲ以テ其保証金ヲ領収スベシ、尤モ此保証金ハ五ケ年ヲ過グルトキハ之ヲ本人ニ返還スベキモノトス、但シ保証金ハ公債証書又ハ本社株券ヲ以テ之ニ充ツルモ妨ナシ
 - 第9巻 p.708 -ページ画像 
    半里未満      保証    金百弐拾円
    半里以上一里未満  同     金百五拾円
    一里以上二里未満  同     金百八拾円
第十五条 本社ハ其株主ト否トニ拘ラズ同盟者ヨリ線路ノ遠近ニ随ヒ左ノ割合ヲ以テ通信料ヲ収受スベシ
    半里未満ハ  一ケ年ニ付通信料 金四拾五円
    半里以上一里未満ハ 同     金五拾五円
    壱里以上二里未満ハ 同     金六拾五円
第十六条 本社ハ前条ノ定額通信料ヲ以テ其依頼者ニ一日五度ノ通信ヲ許スト雖トモ、其以上ニ及ブトキハ一回ニ付金三銭ヲ領収スベシ
 但機械使用方法及ビ通信時間等総テ本社営業規則ニ定ムル所ニ従フベキモノトス
第十七条 何人ヲ問ハズ中央局ニ来リ本社ノ同盟者ヘ通信センコトヲ望ム時ハ、相当ノ通信料ヲ収受シテ其望ニ応ズベシ
 但シ此通信料ハ追テ其筋ノ許可ヲ経テ之ヲ定ム
第十八条 電話交換法ニ拠ラズ只甲乙両所ノ間ニ電話線ノ架設ヲ望ム者ハ、第十四条ノ保証金ヲ領収シタル上左ノ割合ヲ以テ通信《(料脱)》ヲ受クベシ
    半里未満      一ケ年   金五拾円
    壱里未満      同     金六拾円
    弐里未満      同     金七拾円
第十九条 電話同盟者ノ定約年限ハ五ケ年トシ、若シ其期限内ニ解約ヲ望ム時ハ、本社ハ其解約者ヨリ左ノ割合ヲ以テ線路建築其他ノ費用ヲ領収スベシ

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       年限  距離   一年未満   二年未満   三年未満   四年未満   五年未満 半里未満  百二拾円   九拾円    七拾円    五拾円    三拾円 一里未満  百五拾円  百二拾円     百円    八拾円    五拾円 二里未満  百八拾円  百五拾円   百四拾円     百円    七拾円 



第二十条 本社ハ毎朝線路及機械ノ試験ヲ為スガ故ニ其定メタル時間ニハ必ス通信ヲ為スベシ、毎朝ノ試験ニ応答ヲ怠ル者ハ其日ノ不通ハ本社其責ニ任ゼザルベシ
第二十一条 不通ヲ生スルトキハ午前八時ヨリ午後九時迄ハ半里未満ハ三十分、一里未満ハ一時間ニテ全通セシムベシ、然レトモ火災其他非常ノ天災ニ罹リタルトキハ此限ニアラズ
第二十二条 本社ハ一週間二度本社ノ証票ヲ帯ヒタル技師ヲ派出シテ各所ノ機械ヲ検査スルガ故ニ、直チニ之ヲ機械室ニ導キ其検査ヲ受クベシ、但シ事故アリテ入室ヲ断ルトキハ、特ニ検査ノ依頼ナキニ於テハ次ノ巡回日マデ延引スルモノトス
第二十三条 火災其他ノ事アリテ同盟者其機械ヲ焼失シタル時ハ、第十四条ノ保証金ニ拘ラズ本社ハ其機械代金其他据付実費ヲ収受シテ更ニ之ヲ装置スベシ
第二十四条 機械通常ノ破損ハ本社ノ費用ヲ以テ之ヲ修理スベシト雖トモ、同盟者ノ不注意ヨリ生ジタルモノハ本社其責ニ任セザルベシ
 - 第9巻 p.709 -ページ画像 
第二十五条 通信料ハ六月・十二月ノ両度ニ半季分ヲ取方ニ取立ツルガ故ニ、最初約定ノ節ハ其約定当月ヨリ六月又ハ十二月分迄月割ヲ以テ之ヲ領収スベシ、但シ同盟者ノ都合ニ依リ解約スル時ハ、既ニ払込タル金額ハ返戻セザルモノトス
第二十六条 本社ハ予テ其筋ノ許可ヲ得テ逓信省電信分局ト本社ノ中央局ト電話ノ接続ヲ為シ、特ニ取扱人ヲ派出シテ同盟者ヨリ他ヘ発スル音信ノ伝達方ヲ引受クベシ、但シ他ヘ発信ノ為メ電信分局ヘ納ムベキ音信料ハ一時本社ニ於テ繰替置キ、追テ精算ノ上之ヲ取立ツルモノトス
   第四章 営業時間並休日之事
第二十七条 本社ノ営業時間ハ毎日午前六時ヨリ午後十二時ノ間トス但シ日ノ長短ニ依リ之ヲ変更スベシト雖トモ、其変更ノ時ハ少クトモ十五日前之ヲ報告スベキモノトス
第二十八条 本社ハ毎月一月一日《(衍カ)》ヲ以テ休業日トシ、其他ハ休業セザルモノトス
   第五章 役員ノ事
第二十九条 本社ノ役員ト称スルモノ左ノ如シ
       社長     一名
       副社長    一名
       幹事     無定員
       技長     一名
       技師     無定員
第三十条 社長・副社長ハ百株、幹事ハ六拾株以上ヲ所持スル株主中ヨリ総会ニ於テ撰挙スルモノトス
第三十一条 社長・副社長及幹事ノ任期ハ三ケ年トシ、三ケ年毎ニ更撰スベシ、但シ投票多数ニ依リ全員重任スルモ妨ナシトス、若シ期限中不時ノ欠員アルトキハ役員評議ノ上臨時之ヲ補欠シ、次回ノ総会ニ於テ更ニ之ヲ撰挙スベキモノトス
第三十二条 正副社長及幹事ハ上任ノ日ニ当リ、正副社長ハ百株、幹事ハ六拾株ヲ本社ニ預ケ置クベシ、在任中此株式ヲ他ニ売譲スルヲ禁ズ
   第六章 役員ノ権限責任ノ事
第三十三条 社長ハ会社ノ事務ヲ総轄シ、営業一切ノ責ニ任ズ、副社長ハ社長ヲ補佐シ、社長事故アルトキハ其代理ノ任ニ当ルベシ
第三十四条 幹事ハ会社一切ノ事務及役員ノ行為ヲ監督シ、金銭ノ出納ヲ検査スベシ
第三十五条 技長ハ工事ニ関スル一切ノ事務ヲ負担シ、社長ニ対シ其責任ヲ有ス
第三十六条 技長以下ノ役員ハ社長之ヲ撰任スベシ
第三十七条 正副社長及幹事ハ其合議ヲ以テ本社ノ申合規則ヲ作ルヲ得ベシ、但シ其申合規則ハ此定款ノ要旨ニ対シテ毫モ抵触矛盾スベカラズ
   第七章 株主権利責任ノ事
第三十八条 株主ハ其所有株数相当ノ権利ヲ有シ、営業上ノ損益ヲ負
 - 第9巻 p.710 -ページ画像 
担スル者タルガ故ニ、事業ノ景況ニ着目シ、何時ニテモ金銭出納及ヒ諸帳簿諸計算ノ検閲ヲ求ムルノ権アルベシ
第三十九条 株主ハ正副社長及幹事ノ事務取扱上ニ於テ不適当ノ事アリト認ムルトキハ、第十章第四十八条ノ順序ヲ践ミ、臨時総会ヲ催シ、三分ノ二以上ノ衆議ヲ以テ之ヲ解任スルノ権アルベシ
第四十条 株主ハ其総会ニ於テ一株毎ニ一箇ノ発言投票ヲ為スノ権アリトス、然レトモ其所持ノ株数十株以上百株迄ハ十株毎ニ一個ヲ増加シ、百一株以上ハ二十株毎ニ一箇ヅヽヲ増加スベシ
第四十一条 株主ハ何等ノ事故アルモ本社営業ノ年限中ハ其株金ヲ取戻スコトヲ得ザルベシ
第四十二条 株主ハ第九章第四十五条ノ手数ヲ経ルニ於テハ、其所持ノ株式ヲ売買譲与スルコトヲ得ベシ
   第八章 役員禁例ノ事
第四十三条 本社ノ役員ハ規程外ニ社金ヲ出納使用スベカラズ、且ツ金銭其他ノ証書トモ本社ノ印章ナキ各自一判ノ証書ヲ用ユベカラズ
第四十四条 本社ノ正副社長及幹事等故意ヲ以テ此定款又ハ申合規則ニ背キ、不適当ノ所為アリテ、其レカ為メ損耗ヲ生スルトキハ、自ラ之ヲ弁償スベシ
   第九章 株式売買譲与ノ事
第四十五条 本社ノ株式ヲ売買譲与スルニハ必ズ本社ノ承認ヲ受クベシ、故ニ券状裏面ニ正副社長ノ証印ヲ為サヽル間ハ既ニ売買譲与ヲ為スモ其契約ハ無効ニ属シ、本社ノ損益ハ総テ株式券状ノ名前人ニ負担セシムルモノトス
第四十六条 定式総会前十日間ハ株式記名換ヲ停止シ株式帳ノ書替ヲ為サヾルベシ
   第十章 株主総会決議ノ事
第四十七条 株主総会ハ分テ定式臨時ノ二様ト為ス、定式総会ハ毎年両度七月一月之ヲ開キ、臨時総会ハ正副社長及幹事ノ適当ナリト思考スル場合ニ於テハ何時ニテモ招集スルコトヲ得ベシ
第四十八条 人員十名に下ラズ所持ノ株数本社総株高ノ五分ノ一ニ下ラザル株主ヨリ、書面ヲ以て臨時総会ヲ請求セルトキハ、何時ニテモ其需ニ応シテ招集スベシ
第四十九条 右ノ書面ニハ其総会ヲ要スル事件目的ヲ記載スベシ、而シテ若シ正副社長ニ於テ二週間無謂其手続ヲ怠リタル時ハ、請求人等自ラ之ヲ招集スルヲ得ベシ
第五十条 総会ノ決議ハ過半数ニ因ル、故ニ病気其他不得已事故アリテ出席シ難キ人々ハ、必ス委任状ヲ授ケタル代人ヲ出スベシ、而シテ此代人ハ本社ノ株主ニ限ル、若シ右代人ヲ出サズシテ決議ノ後異議ヲ発スルトモ一切採用セザルベシ
第五十一条 株主遠隔ノ地ニ住スルカ、又ハ旅行ヲ為シテ議事招集ノ機ニ会シ難キ懸念アルトキハ、前条ノ場合ニ於テ差出スベキ代人ヲ予メ委任シテ之ヲ本社ニ届置クベシ
第五十二条 総会ノ議長ハ社長之ニ当ルヲ定例ト為スト雖トモ、正副社長・幹事又ハ株主ノ請求ニヨリテハ、別ニ株主中ヨリ撰挙スルコ
 - 第9巻 p.711 -ページ画像 
トヲ得ベシ
第五十三条 総会ニ当リ其参集ノ株主総株数ノ三分ノ二(委任状アル代人ヲモ加算シテ)ニ充タザルトキハ之ヲ延会シ、当日以後五日以内ニ於テ更ニ開設スベシ
   第十一章 純益金配当ノ事
第五十四条 毎年両度其半季内ニ収入シタル通信料其他ノ雑収入総額ヨリ、月給・諸雇給、家屋・線路及機械ノ通常修繕費、其他営業上ノ諸費ヲ引去リ、其残高ヲ以テ利益金ト為シ、其内ヨリ定例ノ納税額及其十分ノ一ニ当ル処ノ役員ノ賞与等ヲ引去リ、残高ヲ以テ純益金ト定メ一月七月ノ株主総会ニ於テ明瞭ニ之ヲ報告シ、而シテ後線路修築改築用積立金及当季ノ株主配当金割合ヲ議決スヘシ
第五十五条 線路修築用積立金ハ其費用原額ノ二十分ノ一架設費ヲ目途トスヘシ
第五十六条 線路又ハ器械ニ於テ非常ノ損失ヲ生シ、定額費ヲ以テ支持スヘカラサル事アレバ、積立金ヲ以テ之ヲ塡償シ、尚其不足アルトキハ後季ノ利益配当ヲ止メ其金額ヲ以テ補塡スヘシ
   第十二章 簿記並報告之事
第五十七条 本社ノ簿記其他計算書類ハ予テ簡明ナル記程表式ヲ定メ主任者ヲシテ一切之ニ遵拠セシムベシ
第五十八条 正副社長及幹事ハ本社簿記ヲ正確明瞭ニシ、日表月表年表ヲ製シ、毎月及毎半季ニ於テ之ヲ管理庁ニ申稟シ、且毎半季ニ於ケル計表ハ之ヲ印刷シテ株主ニ報告スベシ
   第十三章 印章及記録の事
第五十九条 本社ニ用ユル印章ハ左ノ各顆ノ如シ(之ヲ略ス)
第六十条 本社ノ印章並ニ正副社長・幹事ノ印章ハ、其印鑑ヲ管理庁ニ差出シ置クヘシ、若シ改則スルコトアレバ必ズ更ニ印影ヲ差出スヘシ
第六十一条 定款及申合規則ノ改正、又ハ官府ニ対スル申牒、正副社長・幹事ノ撰挙、其他集会並ニ営業ノ要件ハ一切之ヲ記録シ、正副社長・幹事之ニ検印シ、以テ後日ノ証拠参観ニ備フベシ
第六十二条 官府ニ対スル諸願伺届又ハ官私ニ対スル証書・約条書・往復書ニ至ル迄本社ノ称号ヲ用ヒ、社印ヲ押捺スヘシ、但シ報告・約定証書等ノ如キ緊要ノ書類ニハ正副社長及幹事ノ名印ヲモ加用スヘシ
   第十四章 定款更正増補ノ事
第六十三条 此定款ハ株主ノ衆議ニ因リ、官ノ允准ヲ得ルニ於テハ増減ニ更正スルコトアルベシ
右之条々ヲ決定シタル証拠トシテ各姓名ヲ自記シ調印致シ候也
      ○
拝啓、陳者小生今般欧米ニ留学致候ニ際シ、兼テ貴下等創立之御計画有之候電話会社事業ニ従事可致為メ、御協議之末御申越之条件承諾可仕候、尤左之件々ハ於貴下兼テ御含置被下度候
一留学期限ハ事業上御差支無之シテ学業上必要ト認候時ハ、三ケ年之期多少差延候義可有之事
一事業上必要ナル書籍器械等買入候為メ別段之費用ヲ要スル義有之歟
 - 第9巻 p.712 -ページ画像 
又ハ取調上不得止費用有之、学資ニテ難弁節ハ特ニ申立候ハヾ相当之御補足被下度事
右貴答如斯ニ候也
  明治二十年五月廿八日 沢井廉(印)
    渋沢栄一殿
    大倉喜八郎殿
    梅浦精一殿
      ○
拝啓、陳ハ小生等兼テ当府下ニ電話会社ヲ設立致度見込ヲ以テ其筋ヘ出願中ノ処、右事業ハ特別ノ技術ヲ要シ候ニ付、今般貴下欧米ヘ御留学ニ際シ、小生等ヨリ学資ノ幾分ヲ補助シ、進テ右会社ノ事業ニ従事セラレ候様約束申度、就テハ左ノ件々御心得相成度候
一留学期限ハ明治二十年六月ヨリ起算シ、満三ケ年ヲ超ユベカラザル事
一右期限中ハ小生等ヨリ一ケ年ニ付日本通貨ニテ金五百円ツヽ貴下ノ学資ヲ補助スベキ事、但シ此金員ハ貴下ヨリ通知次第便宜送金スベキ事
一留学ノ場所ハ貴下ノ撰ニ任スト雖トモ、之ヲ転ズルニ当リテハ其時時予メ小生等ニ通知セラレ度事
一学科ハ小生等ニ於テ深ク干渉セズト雖トモ、重ニ電話事業ニ必要ナル学科ヲ修メラレ度事
一留学中欧米諸国ノ重立タル電話会社ノ組織、及其営業ノ模様等ハ勿論、其他事業ニ関シ緊要ノ発明アル時ハ常ニ之ヲ詳査セラレ度事
一進テ右事業ニ就キ特別ニ取調ヲ要スルコトアリテ、小生等ヨリ之ヲ貴下ニ求ムル時ハ、其時々之ヲ調査シテ報告セラレ度事
一満期帰朝ノ上ハ進テ小生等ノ設立スベキ会社ノ事業ニ従事セラレ度事、但シ其職務俸給等ハ其時ニ際シ更ニ約束ヲ以テ定ムベキ事
一満期ノ上若シ貴下ノ都合ニヨリテ右会社ノ事業ニ従事セラレザル時ハ、其留学中補助シタル金額ハ相当ノ方法ニヨリ弁償セラレ度事
右ノ条々御異議無之ニ於テ、至急承諾書御差遣シ相成度、此段及御照会候也
  明治二十年五月二十六日     電話会社創立発起人
                      梅浦精一
                      大倉喜八郎
                      渋沢栄一
    沢井廉殿
      ○
    記
一金五百円也
 右者拙者洋行経費ノ内ヘ御補給被下正ニ受取申候也
  明治廿年五月卅一日           沢井廉(印)
    渋沢栄一殿
    大倉喜八郎殿
    梅浦精一殿