デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

3章 商工業
15節 造船・船渠業
4款 函館船渠株式会社
■綱文

第12巻 p.53-64(DK120005k) ページ画像

明治29年6月13日(1896年)

是日東京銀行集会所ニ於テ創立総会ヲ開ク。栄一会長トナリラ議事ヲ処理シ、役員選定ノ結果取締役ニ就任ス。是年十一月七日会社設立申請認可サル。


■資料

函館船渠株式会社創業総会決議録(DK120005k-0001)
第12巻 p.53-57 ページ画像

函館船渠株式会社創業総会決議録
明治廿九年六月十三日日本橋区坂本町銀行集会所ニ於テ開会ス
     出席者
       今井市右衛門後見人
 岩出惣兵衛   今井富三郎   池田庄吉    原田金之祐
 堀江助保    奥三郎兵衛   小川為次郎   大村励
 大倉喜八郎   渡辺熊四郎   加藤正義    園田実徳
 土田政次郎   前川忠七    近藤廉平    阿部興人
 有泉又蔵    三橋喜久造   渋沢栄一    平田文右衛門
 杉浦卯三郎
此外代理ヲ委任セシ人員百三拾八名
出席総人員百五拾九名
権利惣数壱万八千七百参拾個
   午後三時開議
 - 第12巻 p.54 -ページ画像 
創立委員長渋沢栄一氏会長席ニ就キ、左ノ諸項ヲ報告ス
一追加発起人名報告
委員長 本年四月一日付ヲ以テ其筋ヘ発起認可ヲ申請シタル後、加盟セシ追加発起人名左ノ如シ
       朝尾春直    大家七平    阿部彦太郎
       驚尾久太郎   辰馬たき    竹尾治右衛門
       阪上新治郎   和田半兵衛   木原忠兵衛
       岡橋治助    前川槙造    山口吉郎兵衛
       辰馬半右衛門  有馬市太郎   川西善右衛門
       久寿里房治郎  高見善兵衛   馬場道久
       南島間作    山本久右衛門  岩田栄蔵
       柳壮蔵     浅野総一郎   稲垣藤兵衛
                       津田寅吉
一創業事務ノ報告
委員長 函館ニ船渠ヲ築造セントスル計画ハ遠ク明治十一年ニ起リ、爾来十数年間其経歴報告スヘキ者少カラズト雖トモ、今玆ニ之ヲ陳述スルハ頗ル冗長ニ渉ルヲ以テ詳細ハ記録ニ就キ閲覧ヲ請フコトトナシ、私設会社ノ目論見ト為セシ以来ノ要ヲ摘ミ之ヲ左ニ報告ス
    函館船渠株式会社 創立事務報告要略
一廿八年八月船渠事業ヲ私設会社ノ目論見ト為ス
一廿八年八月廿六日船渠予定地払下予約ノ事ニ関シ、函館区長ニ願書ヲ差出ス
一廿八年八月三十日前件願書ニ対スル許可ノ指令アリ
一廿八年八月補助金下附ノ請願ヲ差出ス
一廿八年九月一日函館ニ於テ発起人会ヲ開キ資本金八拾万円(外ニ四拾万円ハ補助ヲ請フ筈)ヲ以テ会社創立ノコトヲ決シ、其筋ヘ出願ス
一函館創立委員七名ヲ選挙ス、其人名左ノ如シ
 渡辺熊四郎  平田文右衛門 久保扶桑   遠藤吉平
 伊藤一隆   和田惟一   小川為次郎
一函館創立事務所ヲ函館郵船会社支店内ニ設ク
一廿九年三月廿七日東京《(二)》ニ於テ更ニ発起人ヲ募集シ、従来ノ補助金下附請願ノ方針ヲ改メ純然タル私設会社トシ、資本金百弐拾万円ヲ以テ起業スルコトニ決シ、築地柳花苑ニ発起人会ヲ開ク
一東京創立委員五名ヲ選挙ス、其人名左ノ如シ
 渋沢栄一   近藤廉平   大倉喜八郎  岡田実徳
 阿部興人
一廿九年三月三日函館発起人会ヲ開キ、東京発起人会ノ決議ヲ承認ス
一廿九年三月十日東京委員会ヲ開キ、創立委員長ニ渋沢栄一氏、事務委員ニ阿部興人・平田文右衛門・小川為次郎・久保扶桑ノ四氏ヲ推選セリ
一廿九年四月一日東京委員会ヲ開ク
一廿九年四月五日訂正発起認可申請書ヲ其筋ヘ差出ス
一廿九年四月廿三日大阪堺卯楼ニ同地発起人会ヲ開ク
 - 第12巻 p.55 -ページ画像 
一廿九年四月廿九日農商務・逓信両大臣ヨリ発起認可書ヲ下附セラル同時ニ仮定款中三ケ所訂正ノ事ヲ道庁長官ヨリ命セラル、依テ其訂正ノ届書ヲ差出ス
一廿九年五月十三日東京委員会ヲ開キ、株式分配ノ事ヲ確定シ、又来六月十三日創業開設ノコトヲ決ス
一廿九年六月十二日在京委員会ヲ開キ、創業総会ニ提出スヘキ議案其他ヲ決ス
一函館区長命令書ノ報告
               函館船渠株式会社創立発起人
                      平田文右衛門
                         外五拾名
明治廿八年八月廿六日附函館防波堤中船渠予定地売渡予約願出ノ件許可候条、左ノ通リ心得ベシ
 防波堤中埋立地所船渠会社ヘ売渡ノ価格及方法等ハ、埋立成工シ函館船渠株式会社成立ノ上協議決定スルモノトス
  但双方協議整ハサルトキハ、売渡地所ノ部分ニ属スル埋立工事ニ費シタル実費ニ依リ之ヲ定ムルモノトス
 一実費ヲ定ムルニ当リ争アルトキハ、函館区長ノ指定スル技師ノ鑑査ニ依リ定ムルモノトス
 一前項ノ実費ト称スルモノハ、工事実費ノ外利子(公借金ノ利子ヲ指ス)併テ決算シ之ヲ定ムルモノトス
 一右地所売渡ノ日ヨリ五ケ年内ニ船渠会社ニ於テ事業ヲ成効セサルトキハ、此土地ノ売買ヲ取消スコトアルヘシ
   但土地売渡証書ニ此取消条件ノ登記ヲ為スヘシ
 一左ノ場合ニ於テハ此売買予約ハ当然消滅ス可キモノトス
  一築港ノ許可ヲ得サルトキ
  二築港ノ許可ヲ得ルモ函館区ノ都合ニ依リ築港事業ヲ廃止シタルトキ
  明治廿八年八月三十日
               函館区長 財部羌
委員長ハ報告ヲ終リ、之ヨリ創業総会ヲ開クノ順序ニ付会長ノ選定アランコトヲ述フ
近藤廉平氏 創業総会ノ会長ハ委員長ニ於テ直ニ任セラレンコトヲ請フ、全会一致
渋沢栄一氏ハ承諾ノ旨ヲ述ヘ、直チニ創業総会ヲ開ク旨ヲ告ケ、出席人員及権利数ヲ報ス
    第一 創業費承認○略ス
    第二 広井技師其他ヘ謝議○略ス
    第三 定款確定○略ス
    第四 土田氏動議○略ス
    第五 取締役・監査役ノ人員
     第三号議案
      取締役・監査役人員ノ件
定款第廿一条ノ取締役及監査役ノ人員ハ左ノ如ク定ム
 - 第12巻 p.56 -ページ画像 
  取締役 五名 監査役 三名
   以上
全会一致ヲ以テ右原案ヲ可決ス
    第六 取締役・監査役報酬
     第四号議案
      取締役・監査役報酬之件
定款第廿九条取締役及監査役ノ報酬左ノ如ク定ム
  取締役社長  壱名  一ケ年金弐千円
  取締役理事  壱名  一ケ年金千五百円
  取締役    三名  一名ニ付一ケ年金三百円
  監査役    三名  一名ニ付一ケ年金二百円
以上ノ報酬ハ当分ノ内其金額ノ四分ノ一ヲ贈与ス
   以上
加藤正義氏 当分ノ内四分ノ一ヲ贈与ストハ、如何ニモ少額ナリト考フ、又当分トハ何時迄ノ見込ナリヤ
小川為次郎氏 当分トハ明年上半季位ノ見込ナリ
原田金之祐氏 全額ヲ給スルコトト致シ置カン
近藤廉平氏 左ノ如ク修正シテハ如何「以上ノ報酬ハ創立ノ際ニ限リ就職後六ケ月間二分ノ一ヲ贈与ス」
近藤氏ノ修正ニ続々賛成アリ、依テ「以上ノ報酬ハ云々」ノ文ハ近藤氏ノ修正ノ如クナシ、他ハ原案ニ決ス
    第七 役員選挙
近藤廉平氏 役員ノ選挙ハ会長ノ指名ニ依頼セン、諸君幸ニ賛成アリタシ
一同異議ナク之レニ決ス
岩出惣兵衛氏 会長モ取締役中ノ一員ニ御加ヘアリテ御指名アリタシ加藤正義氏其他ノ賛成アリ
会長 取締役ノ指名中ニ私モ入ル可キ旨ナレトモ、近頃種々ノ業務ニ従事シ居リ誠ニ多端ニシテ其責務ヲ尽シ難ケレハ辞シタシ、併シ諸君ノ御希望モアレハ監査役ナラバ之ニ応ズベシ
加藤氏其他ト会長ノ間、諾否ノ件ニ付数度応答ノ末全会一致ヲ以テ強テ就任ヲ請フ、玆ニ於テ会長ハ全会ノ希望ヲ容レ取締役ニ就任ヲ承諾スル旨ヲ告ケ、猶他ヲ指名スル左ノ如シ
                    取締役
                      渋沢栄一
                      大倉喜八郎
                      園田実徳
                      阿部興人
                      平田文右衛門
                    監査役
                      田中市太郎
                      浅田正文
                      小川為次郎
    第八 奥氏動議
 - 第12巻 p.57 -ページ画像 
奥三郎兵衛氏 創立委員諸氏ニ対シ報酬ヲ贈与シ謝意ヲ表セラレンコトヲ新任重役ヘ引継キ置クコトニ致シタシ
全会一致ヲ以テ之ニ決ス
    第九 加藤氏ノ動議
加藤正義氏 創立委員長及ヒ委員諸氏是迄ノ御尽力ニ対シ一同ヨリ謝意ヲ表シ置カン
全会一致之ニ賛成ス
会長 懇篤ナル諸君ノ謝辞ハ創立委員一同謹テ拝受ス、又当会社創業ニ功労アリシ諸氏ヘ報酬ノ件ハ、会社成立ノ上重役ヨリ意見ヲ具シ会議ニ付スルコトトセン
右ニテ無事議案ヲ議了シタレハ創業総会ハ之レニテ閉会ス
 右之通決議候也
  明治廿九年六月十三日
             函館船渠株式会社創業総会
               会長 渋沢栄一(印)
               筆記者 大村励(印)
   ○明治二十九年十二月二日創立委員会ヲ東京ニ於テ開キ、重役立会ノ上創立事務ノ受渡ヲ完了ス。又役員ハ互選ニヨリ左ノ如ク決定セリ。
       取締役社長 園田実徳
       同 理事  阿部興人
       取締役   渋沢栄一
       同     大倉喜八郎
       同     平田文右衛門
       監査役   浅田正文
       同     小川為次郎
       同     田中市太郎


函館船渠株式会社四十年史 〔昭和一二年六月〕(DK120005k-0002)
第12巻 p.57-61 ページ画像

函館船渠株式会社四十年史 〔昭和一二年六月〕
    函館船渠株式会社定款
      第一章 総則
第一条 当会社ハ函館船渠株式会社ト称ス
第二条 当会社ハ北海道渡島国函館区「  」ニ設置ス(本条ニ付テハ函館区ノ下ニ営業場所ヲ挿入スヘキ筈ナレトモ、是ハ創立委員ニ於テ恰当ノ場所ヲ選定シ記入スルコトニ一任ス)
第三条 当会社ハ船渠船架並ニ造船台及鉄工場等ヲ建設シ、船舶ノ新造修理、機関諸機械ノ新造修理等ヲ営業トス
第四条 当会社ノ存立時期ハ設立免許ノ日ヨリ向フ満四十ケ年トス
 但シ株式総会決議ニ依リ之ヲ延長スル事ヲ得
第五条 当会社ノ資本金ハ金壱百弐拾万円トス
      第二章 株式
第六条 当会社ノ株式ハ弐万四千株トシ、一株ノ金額ヲ金五拾円トス
第七条 当会社ノ株式ハ一株毎ニ株券一通ヲ作ル者トス
第八条 当会社ノ仮株券並ニ本株券ノ雛形左ノ如シ(雛形略ス)
第九条 株金払込ノ期限及ヒ方法ハ左ノ如シ
 第一回 金参拾万円 即一株ニ付金拾弐円五拾銭 設立免許ノ日ヨ
 - 第12巻 p.58 -ページ画像 
リ三ケ月以内
 第二回 金拾八万円 即一株ニ付金七円五拾銭 第一回払込期日後九ケ月以内
 第三回 金弐拾四万円 即一株ニ付金拾円 第二回払込期日後六ケ月以内
 第四回 金弐拾四万円 即一株ニ付金拾円 第三回払込期日後六ケ月以内
 第五回 金弐拾四万円 即一株ニ付金拾円 第四回払込期日後六ケ月以内
 但シ毎回払込ノ期限ハ取締役ノ決議ヲ以テ之ヲ定メ、少クトモ六十日前ニ之ヲ各株主ニ通知スヘシ、又第二回以後ノ払込金額ハ其予定ノ期限内ニ於テ、更ニ之ヲ小分シテ払込マシムルコトヲ得
第十条 株金第一回ノ払込ニ対シテハ、領収証書ヲ交付シ、追テ登記ヲ受ケタル後之ヲ仮株券ト引換フル者トス
第十一条 期限ニ払込ヲ怠リタル株主ハ其払込ムヘキ金額ニ対シ、其期日ヨリ現仕払日マテ金百円ニ付日歩金五銭ノ割合ヲ以テ遅延利息ヲ仕払ヒ、且其遅延ノ為ニ生シタル費用ヲ仕払フヘシ
第十二条 払込ヲ怠リタル株主ニハ更ニ十四日ヨリ少カラサル期日ヲ指定シ、其期日内ニ払込ムヘキコトヲ催告スヘシ、此催告ヲ受ケ仍ホ払込マサル時ハ、其株主ニ通知シ其株券ヲ公売ニ付スヘシ
 但第一回ノ払込ヲ怠リタル場合ニ於テハ公売セス、違約トシテ証拠金ヲ没収シタル上其株主ヲ除名シ、更ニ他ノ株式ヲ募集ス
第十三条 前条ニ依リ株券ヲ公売ニ付シタル時ハ、其公売代金ヨリ未払込金額遅延利息其他公売ニ関スル費用ヲ引去リ、仍ホ不足アルトキハ之ヲ前株主ヨリ追徴シ、剰余アルトキハ之ヲ還付スヘシ
第十四条 当会社ノ株券ヲ売買譲与シ、又ハ姓名ヲ更改シタル時ハ、株券ト共ニ記名ノ書換請求書ヲ当会社ニ差出スヘシ、当会社ハ相当ノ手続ヲ経テ株券記名ノ書換ヲ為シ、株主名簿ニ登録スヘシ
 但所有者死亡又ハ失踪シ、其相続人ヨリ記名ノ書換ヲ求ムル場合ニ於テハ、親戚又ハ証人ノ連署ヲ要ス
第十五条 株券汚染損壊シタル時ハ新株券ト交換ヲ求ムルコトヲ得、若シ亡失シテ新ニ株券ノ交付ヲ求ムル時ハ其事実ヲ明記シ、証人ノ連署ヲ以テ申出ツヘシ、此場合ニ於テハ当会社ハ直ニ記名ノ書換ヲ停止シ、三日間三種以上ノ新聞紙ヲ以テ其事由ヲ公告シ、三ケ月ヲ経ルモ尚ホ発見セサル時ハ新株券ヲ交付スヘシ
第十六条 株主ノ破産家資分散又ハ法律ノ結果ニ依リ株式ノ権利ヲ得タル者ハ、取得ノ証左ヲ添ヘ記名ノ書換ヲ請求スヘシ
第十七条 株券記名ノ書換ハ株券一枚ニ付金五銭、又ハ新株券ノ交付ハ新株券一枚ニ付金弐拾五銭ノ手数料ヲ徴収スヘシ、尚ホ公告其他ノ費用ヲ要スル時ハ請求者之ヲ負担スル者トス
第十八条 株主実印ヲ改メ又ハ族籍住所ヲ転スル時ハ直ニ当会社ニ通知スヘシ
第十九条 都テ株式ノ売買譲与ハ株券記名ノ書換ヲ為シ、株主名簿ニ登録スルニ非サレハ当会社ニ対シテ其効ナシ
 - 第12巻 p.59 -ページ画像 
第二十条 当会社ハ通常総会前ニ於テ一ケ月以内相当ノ期限ヲ定メ、株主名簿ヲ閉鎖シ株券記名ノ書換ヲ停止スル事アルヘシ
      第三章 役員
第二十一条 総会ハ百株以上ヲ所有スル株主中ヨリ三名以上五名以下ノ取締役、及五十株以上ノ株主中ヨリ二名以上ノ監査役ヲ選定ス
第二十二条 取締役ノ任期ハ三ケ年トシ、監査役ノ任期ハ二ケ年トス
 但シ再選セラルヽコトヲ得
第二十三条 取締役ハ法律命令定款及総会ノ決議ヲ遵守シ、当会社一切ノ業務ヲ施行ス、取締役ハ取締役会ニ於テ職分上ノ事ヲ議定ス
第二十四条 取締役ハ其互選ヲ以テ社長一名理事一名ヲ置キ、主トシテ業務ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第二十五条 取締役会ノ議事ハ社長ヲ以テ会長トシ、多数ニ依テ決議ス、可否同数ノ時ハ会長之ヲ裁決ス
第二十六条 監査役ハ取締役ノ業務施行上、法律命令定款及総会ノ決議ニ適合スルヤ否ヤヲ監査ス
 監査役ハ計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書及利息又ハ利益金ノ分配案ヲ検査シ、総会ニ報告ス
第二十七条 取締役及監査役ニ欠員ヲ生シタルトキハ、臨時総会ヲ開キ補欠員ヲ選定スヘシ、其補欠員ハ前任者ノ残期ヲ継ク者トス
 但シ法定ノ人員ヲ下ラス、業務ニ差支ナキ時ハ次回ノ改選マテ其選定ヲ延期スルコトヲ得
第二十八条 取締役ハ各自所有ノ株式百枚ヲ其在任中会社ニ預ケ置クヘシ
第二十九条 取締役及監査役ノ報酬ハ総会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ム
      第四章 総会
第三十条 株主総会ハ通常・臨時ノ二種トシ、各開会ノ日ヨリ少クトモ十四日以前ニ集会ノ日時・場所並ニ総会ヲ要スル目的及其事項ヲ株主ニ通知シ、之ヲ招集ス
 但定款ノ変更ニ依リ議案ヲ配布スヘシ
第三十一条 株主総会ニ於テハ予メ株主ヘ通知シタル事項ノ外他ノ議事ニ渉ルコトヲ得ス
第三十二条 通常総会ハ毎年一月・七月ノ両度ニ開会シ、前期ノ諸計算書・事業報告書及利息又ハ利益金分配案ヲ議決スルモノトス
第三十三条 臨時総会ハ取締役又ハ監査役ニ於テ必要ト認ムルトキ、又ハ総株金ノ五分ノ一以上ニ当ル株主ヨリ会議ノ目的ヲ示シテ申出ツルトキ、取締役之ヲ招集スルモノトス
第三十四条 総会ノ議事ハ総株金ノ四分ノ一(委任状ヲ付シタルモノモ之ヲ加算ス、以下之ニ準ス)以上ニ当ル株主出席シ、其議決権ノ過半数ニ依テ決議ス
 但シ前記ノ諸計算書・事業報告書及利息又ハ利益金分配ニ関スル件ハ、出席株主本条ノ定数ニ満タサルモ之ヲ議決スルコトヲ得
第三十五条 定款ノ変更、任意ノ解散及役員解任ニ付イテハ、少クトモ総株主ノ半数ニシテ総株金ノ半数以上ニ当ル株主出席シ、其議決権ノ過半数ニ依テ之ヲ決ス
 - 第12巻 p.60 -ページ画像 
第三十六条 総会ニ於テ出席株主定数ニ満タサルトキハ、其出席株主議決権ノ過半数ヲ以テ仮ニ議決ヲ為シ、其旨ヲ総株主ニ通知シ、更ニ十四日以内ニ第二ノ総会ヲ開催スルモノトス、其召集ノ通知書ニハ、第二ノ総会ニ於テ仮令出席株主定数ニ満タサルモ其議決権ノ過半数ヲ以テ第一ノ総会ノ決議ヲ認可シタルトキハ、之ヲ有効トスヘキ旨明告スヘシ
第三十七条 株主ノ議決権ハ一株毎ニ一箇トス
第三十八条 株主ハ代人ヲシテ総会ニ出席シ議決権ヲ行ハシムルコトヲ得ヘシト雖モ、其代人ハ必ス当会社ノ株主タル者ニ限ルヘシ
第三十九条 総会ノ議長ハ社長之ニ任ス、若シ社長事故アルトキハ他ノ取締役代理ス
 但シ臨時総会ノ議長ハ株主中ヨリ臨時之ヲ選任スルコトヲ得
第四十条 総会ノ決議ニ付キ可否同数ナルトキハ、議長之ヲ裁決ス
第四十一条 総会ニ於テ議決シタル事件ハ其要領ヲ決議録ニ登録シ、其総会ノ議長記名捺印ノ上保存スルモノトス
      第五章 計算報告
第四十二条 当会社ハ毎年六月・十二月ノ終ニ於テ諸勘定ヲ計算シ、計算書・財産目録・貸借対照表・事業報告書及利息又ハ利益金分配案ヲ作リ、監査役ノ検査ヲ受ケ、之ヲ通常総会ニ提出スルモノトス
第四十三条 当会社ノ損益計算ハ、毎期総益金ヨリ諸経費並ニ損失金其他ヲ引去リ、其残額ヲ純益金トナシ、此内ヨリ左ノ割合ニ従ヒ積立金役員賞与金ヲ引去リ、其残額ヲ株式ニ対シ平等ニ配当スルモノトス
 但配当ノ都合ニ依リ後期ヘ繰越ヲ為スコトヲ得
 一、純益金高百分ノ五以上 積立金
 一、同 金高百分ノ五以上 諸機械建造物消却積立金
 一、同 百分ノ十乃至二十 役員賞与金
      第六章 解散
第四十四条 当会社解散ノ場合ニ於テハ、取締役ハ総会ヲ招集シ、其決議ヲ取ルヘシ
第四十五条 解散ヲ決議セシトキハ、其総会ニ於テ精算人ヲ選定シ、精算事務ヲ委任スヘシ
 但シ其人員及精算事務委任ニ関スル条件等ハ其際議定スルモノトス
      第七章 定款変更
第四十六条 此定款ノ箇条ハ株主総会ノ決議ヲ経テ更正加除スルコトヲ得
第四十七条 当会社ノ印章ハ左ノ如シ(略ス)
第四十八条 印章ハ官庁ニ宛テタル書類及報告書・株券・手形其他当会社ノ権利義務ニ関スル一切ノ書類ニ之ヲ用フ
右之通発起人共ニ於テ協議ノ上相定メ候、依テ各自署捺印スルモノ也
     (発起人一同氏名略ス)
     (函館船渠予定地略図貼付セルヲ略ス)
   ○右定款ハ明治二十九年六月十三日創立総会ニ於テ修正可決セルモノナリ。後、設立免許願書ニ添附シタル定款第十一条・第二十八条・第三十二条・
 - 第12巻 p.61 -ページ画像 
第三十四条・第三十八条・第四十条・第四十三条中、主務省ノ注意ニ拠リ字句ノ修正ヲナシ、十二月九日其旨ヲ各株主ニ報告ス。


中外商業新報 第四二九四号〔明治二九年六月一四日〕 函館船渠会社の創業総会(DK120005k-0003)
第12巻 p.61 ページ画像

中外商業新報 第四二九四号〔明治二九年六月一四日〕
    函館船渠会社の創業総会
 府下の渋沢栄一・大倉喜八郎、北海道の渡辺熊四郎・阿部興人、大阪の藤田伝三郎・鴻池善右衛門諸氏を始め、京都府及び神奈川県・兵庫・青森・愛知《あいち》・富士五県《(山)》の有力者数十名の発議に係る、函館船渠株式会社発起人は昨十三日午後三時頃より銀行集会所に於て創業総会を開き、創立委員長渋沢栄一氏会長席に着き、先づ創業事務を報告し、仮定款の修正点を議定し、創業費を承認し、次に発起人より函館区長に差出したる船渠敷地払下《しきちはらいさげ》の出願に対し、同区長より払下を許可すへき旨指令したるを以て之を報告し、次に取締役及び監査役を選挙したるに左の諸氏当選し、午後五時三十分散開せり
  取締役 渋沢栄一   大倉喜八郎  園田実徳
      阿部与人《(阿部興人)》   平田文右衛門
  監査役 田中市太郎  浅田正文   小川為次郎


東京経済雑誌 第三三巻第八三〇号・第一〇九二―一〇九三頁〔明治二九年六月二〇日〕 函館船渠会社の創業総会(DK120005k-0004)
第12巻 p.61 ページ画像

東京経済雑誌 第三三巻第八三〇号・第一〇九二―一〇九三頁〔明治二九年六月二〇日〕
    ○函館船渠会社の創業総会
当市の渋沢栄一・大倉喜八郎、北海道の渡辺熊四郎・阿部興人、大阪の藤田伝三郎・鴻池善右衛門諸氏を始め京都府及び神奈川・兵庫・青森・愛知・富山五県の有力者数十名の発起に係る函館船渠株式会社発起人は去十三日当市の銀行集会所に於て創業総会を開き、創立委員長渋沢栄一氏会長席に着き、先づ創業事務を報告し、仮定款の修正点を議定し、創業費を承認し、次に発起人より函館区長に差出したる船渠敷地払下の出願に対し、同区長より払下を許可すべき旨指令ありしを以て之を報告し、次に取締役及監査役を撰挙したるに左の諸氏当選せり
  取締役 渋沢栄一   大倉喜八郎  園田実徳
      阿部興人   平田文右衛門
  監査役 田中市太郎  浅田正文   小川為次郎


函館船渠株式会社四十年史 第七七頁〔昭和一二年六月〕(DK120005k-0005)
第12巻 p.61-62 ページ画像

函館船渠株式会社四十年史 第七七頁〔昭和一二年六月〕
免第八五一号
農商務省指令商第一〇〇二三号
             東京府東京市日本橋区兜町二番地
                  渋沢栄一外百一名
明治二十九年七月八日付申請函館船渠株式会社設立ヲ免許ス
  明治二十九年十一月七日
             農商務大臣 子爵榎本武揚
             逓信大臣  子爵野村靖
   ○明治二十九年四月二十八日発起ノ認可ヲ得タルヲ以テ、直ニ会社設立免許申請書ヲ榎本農商務大臣・白根逓信大臣ニ提出セリ。同設立免許申請書ハ
 - 第12巻 p.62 -ページ画像 
同年七月訂正シ、更ニ九月十七日再訂正シ三度目ノ申請書ヲ提出セル処、右会社設立免許状ヲ得タリ。「函館船渠株式会社四十年史」ニ拠ル
   ○明治二十九年四月発起認可アリテヨリ直チニ工事開始ノ準備ヲスルコトトナリ、八月二十日本社事務所ヲ函館区大町五番地ニ設置セリ。
   ○右会社設立免許書ヲ下附セラレタルニヨリ、明治二十九年十一月十三日北海道庁ヲ経テ請書ヲ差出セリ。
   ○明治二十九年十二月十六日創立委員会ハ東京市京橋区三十間堀二丁目七番地ニ当会社出張所ヲ設置スルニ決ス。


函館船渠株式会社四十年史 第七七―七八頁〔昭和一二年六月〕(DK120005k-0006)
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函館船渠株式会社四十年史 第七七―七八頁〔昭和一二年六月〕
 本会社設立免許状を得た後、創立委員会が東京で開かれ、重役立会の上委員より創立事務の引渡を受け、会社機関の成立を全うしたのは実に明治二十九年十二月二日であつた。その際取締役は互選によつて園田実徳を社長に、阿部興人を理事に、渋沢栄一・大倉喜八郎・平田文右衛門を取締役に、浅田正文・小川為次郎・田中市太郎が監査役に選定された。次で十二月十六日創立委員会を東京に於て開き、三十一年一月二十七日に第一回通常総会及び第一回臨時総会を招集する事に決つた。又事務取扱の便宜を図り、東京市京橋区三十間堀二丁目七番地に会社の出張所を設置する事に決した。これより先、十月頃から船渠其他諸工場設計予算に関する調査のため大阪に仮事務所を置き、逵邑技師・小林技師等専らその任に当り、船渠二百分一及び船渠喞筒所設計図案、船渠及び工場の配置図は已に完成し、船渠百分一設計図・工事仕様書、及工費予算書は編成若くは訂正中であつた。
 その後工事は次節に述ぶる如く進行したが、翌三十年一月二十七日第一回株主臨時総会を開いて定款を補正し、六月三十日営業登記を受け、六月十二日隔山利吉郎を支配人となし、七月四日真砂町函館造船所の譲渡を受けて分工場と名づけ、山尾福三(山尾工部卿令弟)を分工場長、品川久太郎を技師として任命し、直に営業を開始し、三十六年十一月弁天町の船渠・修船台・工場等が落成したため廃止される迄設備を拡張しつゝ経営を継続した。
   ○明治三十年十二月十五日船渠前面ノ海底浚渫ヲ出願シ、翌三十一年一月十二日ニ至リ、予テ売約セル船渠並ニ造船所予定地ヲ埋立後区ヨリ引渡サルルトキハ船渠築造工事ニ二重ノ労費ヲ要スルガ故ニ、予定地水面ノ儘引渡サルベク函館区ニ出願セシガ、一月十八日区会之ヲ協議シ願書ノ通リ可決シ、三月十一日正式ニ許可ノ指令ヲ下附セリ。玆ニ於テ当会社ハ敷地ノ確定ニ由リ、工事ヲ大体四部ニ区分シ進行セシメタリ。即チ船渠引入口海底浚渫、乾船渠、修船台及埋立工事ノ四部トナス。工事進捗ノ詳細ナル事項ニ就イテハ「函館船渠株式会社四十年史」参照。


函館船渠株式会社報告 第一回明治三〇年一月(DK120005k-0007)
第12巻 p.62-64 ページ画像

函館船渠株式会社報告 第一回明治三〇年一月
本会社設立免許ヲ得、創立委員ヨリ事務ノ引渡ヲ受ケ会社機関ノ成立ヲ全フシタルハ実ニ明治廿九年十二月二日ナリトス、故ニ本期ニ於テハ専ラ同日以後ニ属スル事務ノ要領ヲ報告スヘキモノナリト雖トモ、此際明治廿九年六月十三日創業総会ニ於テ報告セシ以後、創立委員ニ於テ取扱タル事務ノ要領ヲ其引継書ニ拠リ記載シ、過度間ノ顛末ヲ明ニスルハ蓋シ要用ナリト認メ、事務引継以前ニ遡リ併セテ報告スルコ
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ト左ノ如シ
    事業ノ部
一明治廿九年六月十三日東京市日本橋区阪本町銀行集会所ニ於テ創業総会ヲ開ク、同日決議ノ要領ハ同年七月七日ヲ以テ各株主ヘ報告ス
一同年八月廿日本社ヲ北海道函館区大町五番地ニ設置ス
一同年八月廿一日創立委員会ヲ東京ニ於テ開キ、委員阿部興人ハ函館築港工事進行ノ実況ヲ報告シ、函館造船所買収、技師傭聘ノ事ヲ協議シ、尋テ阿部興人ハ技師傭入ノ用務ヲ帯ヒ大坂ヘ出張、同廿八日帰京ス
一同年九月二日創立委員会ヲ東京ニ於テ開ク、此日大阪ヨリ監査技師候補者工学士逵邑容吉出京列席ス
一同年九月三日工学士逵邑容吉ヲ船渠予定地実査ノ為メ函館ヘ出張セシム、同月十三日帰京ス
一同年九月十六日創立委員会ヲ東京ニ於テ開ク、此日工学士逵邑容吉船渠予定地実査ノ報告ヲナス、其概要左ノ如シ
 第一 船渠建設予定地ハ当初選定ノ位置適当ニシテ、地層モ亦曾テ採掘セシ巌石砂土ニ拠リ親シク調査シ最モ適当ト認ム
 第二 現在ノ予定敷地ハ狭隘ノ虞ナシトセズ、故ニ予定地内ニハ専ラ船渠及船舶新造所ヲ建設シ、函館造船所買収ノ後ハ同所ヲ小船舶ノ修繕所ニ充ツルヲ以テ経済上便宜ナリト認ム
  尚工場全体ノ設計ハ営業上重要ノ関係ヲ有スルヲ以テ、単ニ船渠ノミニ限ラス併セテ其任ニ当ルモ敢テ辞セストノ申告アリ、依テ委員会ハ逵邑容吉ノ報告ヲ是認シ、同人ヲ本社監督技師トシテ招聘スルコトニ決ス
一同年十月五日小林喜太郎ヲ本社技師トシテ傭入ルコトニ決ス
一同年十月廿日創立委員会ヲ東京ニ於テ開キ、監督技師達邑容吉招聘《(逵邑容吉)》ニ関スル契約書按ヲ議定ス
一同年十月廿八日創立委員会ヲ東京ニ於テ開キ、再ヒ函館造船所買収ノ件ヲ協議ス
一同年十一月七日創立委員会ヲ東京ニ於テ開キ、船渠造船台其他諸建物ハ逵邑技師ノ予算ニ基キ設計スルコトニ決シ、函館造船所買収ノ件ハ他日時機ノ熟スルヲ待チ更ニ協議スルコトニ決ス
一同年十一月九日本会社設立免許書ヲ下付セラレ、同月十三日北海道庁ヲ経テ請書ヲ差出ス、玆ヨリ先キ設立免許願書ニ添付シタル定款第十一条・第廿八条・第卅二条・第卅四条・第卅八条・第四十条・第四十三条中主務省ノ注意ニ拠リ字句ノ修正ヲナシ、十二月九日其旨ヲ各株主ニ報告ス
一同年十二月二日創立委員会ヲ東京ニ於テ開キ、重役立会ノ上創立事務ノ受渡ヲ完了ス、又取締役ハ其互選ヲ以テ園田実徳ヲ社長ニ、阿部興人ヲ理事ニ選挙ス
一同年十二月十六日創立委員会ヲ東京ニ於テ開キ、卅年一月廿七日ヲ以テ第一回通常総会及第一回臨時総会ヲ招集スルコトニ決ス、又事務取扱ノ便宜ヲ図リ東京市京橋区三十間堀二丁目七番地ニ本会社ノ出張所ヲ設置スルコトニ決ス
 - 第12巻 p.64 -ページ画像 
一船渠其他諸工場設計予算ニ開スル調査ハ去ル十月以来仮事務所ヲ大坂ニ置キ、逵邑技師・小林技師等専ラ其任ニ当リ不日完成ヲ告ケントス、今其概要ヲ挙レハ左ノ如シ
 船渠弐百分一及船渠筒喞所設計図案、船渠及工場ノ配置図ハ已ニ完成ヲ告ケ、又船渠百分一設計図、工事仕様書及工費予算書ハ目下編製若クハ訂正中ナリ
    会計之部○略ス
右之通候也
             函館船渠株式会社

               取締役社長 園田実徳
  明治卅年一月廿日     同 理事  阿部興人
               取締役   渋沢栄一
               同     大倉喜八郎
               同     平田文右衛門
 右調査候処相違無之候也
               監査役   浅田正文
               同     小川為次郎
               同     田中市太郎