公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第16巻 p.214-234（DK160030k） ページ画像
明治38年3月24日（1905年）
是ヨリ先、第一銀行、韓国政府ヨリ同国貨幣整理及ビ国庫金取扱ノ事務ヲ委托セラルルト共ニ、同国ニ於テ無制限ニ通用スベキ銀行券ノ発行ヲ公認セラレ、尋イデ是日、我国ニ於テモ勅令第七十三号ノ発布アリ、之ニヨリ爾後第一銀行ハ外務・大蔵両大臣監督ノ下ニ、韓国ノ中央金融機関タルニ至レリ。
韓国ニ於ケル第一銀行 第一銀行編 第二二六頁明治四一年八月刊（DK160030k-0001）
第16巻 p.214-215 ページ画像
韓国ニ於ケル第一銀行 第一銀行編 第二二六頁明治四一年八月刊
○第五章 銀行券ノ発行
第五節 韓国ノ法貨トシテ銀行券ノ公認
明治三十八年一月本行ハ韓国政府ト契約ヲ締結シテ、無手数料ヲ以テ韓国国庫金取扱事務並ニ貨幣整理事務ヲ担任スルト同時ニ、韓国政府ハ本行ノ発行スル銀行券ノ法貨タルコトヲ公認シ、貨幣整理事務取扱ニ関スル契約ニ於テ左ノ条項ヲ規定セリ
第三条 大韓国政府ハ第一銀行券ヲ公認シ、公私ノ取引ニ差支ナク無制限ニ通用セシムベシ
同年三月我政府モ勅令第七十三号ヲ以テ本行ノ韓国ニ於ケル事務ニ関
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スル規定ヲ発布セラレ、第一銀行券ノ韓国ニ於テ法貨タルノ特権ヲ公認セラレタリ○下略
官報 第六五一六号 明治三八年三月二四日 勅令（DK160030k-0002）
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官報 第六五一六号 明治三八年三月二四日
勅令
朕株式会社第一銀行ノ韓国ニ於ケル業務ニ関スル件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年三月二十三日
大蔵大臣 男爵 曾禰荒助
外務大臣 男爵 小村寿太郎
勅令第七十三号
第一条 株式会社第一銀行ノ韓国ニ於ケル業務ハ外務大臣及大蔵大臣ノ監督ニ属ス
第二条 株式会社第一銀行ハ韓国貨幣整理事務、韓国官金取扱及銀行券発行ニ関スル業務ニ付テハ、韓国京城ニ設置シタル支店ヲ以テ韓国総支店ト為シ、韓国各支店出張所及代理店ヲ総轄セシムヘシ
第三条 株式会社第一銀行ハ支店・出張所若ハ代理店ヲ韓国ニ設置シ又ハ之ヲ廃止セムトスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
主務大臣ハ必要ト認ムルトキハ株式会社第一銀行ニ命シテ韓国ニ支店又ハ出張所ヲ設置セシムルコトヲ得
第四条 株式会社第一銀行ハ韓国ニ於テ営ム業務ノ為ニ特ニ資本金額ヲ定メテ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第五条 株式会社第一銀行ハ韓国各支店及出張所ニ於テ営ムヘキ業務ノ種類及方法ヲ定メテ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第六条 株式会社第一銀行ハ毎営業年度韓国各支店及出張所ノ損益勘定ヲ集計シ、其ノ総益金ヨリ総損金ヲ差引タル利益金ノ二十分ノ一以上ヲ少クトモ韓国ニ於ケル営業資本金ノ半額ニ達スル迄積立テ、特別準備金トシテ京城支店ニ備ヘ置クヘシ
第七条 株式会社第一銀行ハ韓国ニ於テ公私一切ノ取引ニ無制限ニ通用スヘキ銀行券ヲ発行スルコトヲ得
第八条 株式会社第一銀行ガ韓国ニ於テ発行シタル銀行券ハ、韓国各支店出張所ニ於テ営業時間中何時ニテモ通貨ヲ以テ引換フヘシ但シ京城以外ノ支店及出張所ニ於テハ、京城支店ヨリ準備金ノ到達スヘキ時間、其ノ引換ヲ延期スルコトヲ得
第九条 株式会社第一銀行京城支店ハ韓国ニ於ケル其ノ銀行券発行総高ニ対シ、同額ノ金貨・金銀地金及日本銀行兌換銀行券ヲ置キ其ノ引換準備ニ充ツヘシ、但シ銀地金ハ引換準備総額ノ四分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス
前項準備ニ依ルノ外、株式会社第一銀行ハ一千万円ヲ限リ、国債証券・商業手形其ノ他確実ナル証券ヲ保証トシテ銀行券ヲ発行スルコトヲ得、但シ其ノ準備価格ハ主務大臣ノ認可ヲ経テ之ヲ定ム
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ヘシ
経済上ノ景況ニ依リ、必要アル場合ニ於テハ主務大臣ノ特ニ指定スル条項ニ依リ、前二項ノ外更ニ銀行券ノ発行ヲ為スコトヲ得
主務大臣ハ韓国貨幣整理ノ経過又ハ金融ノ状況ニ依リ必要ト認ムルトキハ銀行券ノ種類及発行高ヲ制限スルコトヲ得
第十条 銀行券ノ様式及種類ニ関シテハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十一条 銀行券ノ所有者ハ韓国ニ於ケル株式会社第一銀行ノ財産ニ付先取特権ヲ有ス
第十二条 株式会社第一銀行カ韓国政府ト契約ヲ締結シ、又ハ韓国政府ヨリ特許特権ヲ受ケムトスルトキハ、主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十三条 主務大臣ハ株式会社第一銀行ガ韓国ニ於テ営ム業務ニ関シ、必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ其ノ韓国各支店・出張所及代理店ノ金庫・券書庫・帳簿其ノ他ノ文書ヲ検査シ、又ハ諸般ノ景況及計算ニ関スル報告書ヲ差出サシムルコトヲ得
第十四条 主務大臣ハ必要ト認ムルトキハ株式会社第一銀行カ韓国ニ於テ営ム貸付、割引ノ金額及方法又ハ其ノ利子歩合其ノ他為替料等ニ関シ相当ノ制限ヲ為スコトヲ得
第十五条 主務大臣ハ株式会社第一銀行監理官ヲ置ク
監理官ハ主務大臣ノ指揮ヲ承ケ、株式会社第一銀行韓国各支店・出張所及代理店ノ業務ヲ監視ス
第十六条 株式会社第一銀行監理官ハ何時ニテモ株式会社第一銀行韓国各支店・出張所及代理店ノ金庫・券書庫・帳簿其他ノ文書ヲ検査シ、又ハ諸般ノ景況及ビ計算ニ関スル報告書ヲ差出サシムルコトヲ得
第十七条 株式会社第一銀行ハ銀行券ノ発行額及引換準備ニ関スル平均高表ヲ公告スヘシ、公告ノ方法ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依ル
第十八条 株式会社第一銀行ノ定款ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス
第十九条 株式会社第一銀行ハ認可ヲ受ケタル事項ヲ変更セムトスルトキハ更ニ認可ヲ受クヘシ
第二十条 主務大臣ハ株式会社第一銀行カ法令又ハ定款ニ背戻シ、若ハ本令ニ基キテ発シタル命令ニ違反シ、其ノ他公益ヲ害スル行為アリト認ムルトキハ役員ノ更任ヲ命シ、認可ヲ取消シ、又ハ韓国ニ於テ営ム業務ノ全部若ハ一部ノ停止ヲ命スルコトヲ得
附則
本令施行前株式会社第一銀行カ韓国ニ於テ発行シタル銀行券ハ本令ニ依リテ発行シタルモノト看做ス
韓国ニ於ケル第一銀行 第一銀行編 第二二八―二三六頁明治四一年八月刊（DK160030k-0003）
第16巻 p.216-219 ページ画像
韓国ニ於ケル第一銀行 第一銀行編 第二二八―二三六頁明治四一年八月刊
○第五章 銀行券ノ発行
第五節 韓国ノ法貨トシテ銀行券ノ公認
○上略
本行ハ左ノ銀行券及其発行準備取扱順序ヲ定メテ同年三月二十四日外
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務・大蔵両大臣ニ提出シテ其認可ヲ請ヘリ
株式会社第一銀行銀行券及其発行準備取扱順序
第一条 当銀行ハ明治三十八年勅令第七十三号ニ拠リ在韓国支店出張所ニ於テ銀行券ヲ発行ス
第二条 銀行券ハ韓国ノ租税・海関税其他公私一切ノ取引ニ無制限ニ通用スルモノトス
第三条 銀行券ノ種類及様式ハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四条 銀行券ヲ製造シタルトキハ其見本ヲ主務大臣ニ差出スベシ
第五条 銀行券ハ其発行前、其地方ニ於テ見本ヲ添ヘテ其様式及種類ヲ公示シ、且見本ハ別ニ韓国相当官衙ニ配賦スベシ、其種類様式ヲ変更シタル時亦同ジ
第六条 銀行券ハ在韓国支店出張所ニ於テ、営業時間中何時ニテモ日本通貨ト引換フベシ
但京城支店以外ノ支店・出張所ニ於テハ京城支店ヨリ準備金ノ到達スベキ期間其引換ヲ延期スルコトヲ得
第七条 銀行券発行高ニ対シテハ其引換ニ充ツル為メ、金貨・金銀地金及日本銀行兌換券ヲ以テ発行高ト同額ノ準備ヲ、他ノ支払資金ト区別シテ京城支店ニ備ヘ置クベシ
但銀地金ハ引換準備総額ノ四分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ズ
第八条 前条準備ニ依ルノ外壱千万円ヲ限リ国債証券・商業手形其他確実ナル証券ヲ保証トシテ銀行券ヲ発行スルコトヲ得
但其準備価格ハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
経済上ノ状況ニヨリ必要ト認メタルトキハ、主務大臣ノ認可ヲ受ケ、前項ノ外更ニ銀行券ヲ発行スルコトヲ得
第九条 京城支店ハ都合ニヨリ監理官ニ届出デ、第七条ノ引換準備ノ中其幾分ヲ交換基金トシテ他ノ韓国支店・出張所ニ保管セシムルコトヲ得
第十条 前条ノ交換基金ヲ保管シタル支店・出張所ハ京城支店ニ対シ其保管証書ヲ差出スベシ
第十一条 保証準備ハ京城支店ニ於テ他ノ有価証券ト区別シテ備ヘ置クコトヲ要ス、但国債証券ニ限リ之ヲ日本銀行本店ニ保護預ケトシ、其保管証書ヲ以テ準備ニ充ツルコトヲ得
第十二条 銀行券ハ本店ニ於テ印刷局ニ依頼シテ製造スルモノトス但其製造ヲ注文シタルトキハ其金額種類枚数等ヲ主務大臣ニ届出ベシ
第十三条 製造シタル銀行券ヲ京城支店ヘ送付シタルトキハ、其金額・種類・枚数等ヲ主務大臣ニ届出ベシ
第十四条 本店ヨリ銀行券ノ送付ヲ受ケタルトキハ京城支店ハ其金額・種類・枚数等ヲ監理官ニ届出ルコトヲ要ス
第十五条 銀行券ノ発行高・正貨準備・保証準備ノ有高及之ニ関スル帳簿、其他証憑書類ハ監理官ノ検査ヲ受クルモノトス
第十六条 銀行券ノ発行及準備金ノ出納保管等ニ付テハ韓国支店出張所ハ京城支店ノ指揮監督ヲ受クベシ
第十七条 韓国支店出張所ハ銀行券ノ元受高・発行高・回収高・流
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通高及手許有高ノ計算ヲ明ニセル出納日表ヲ調製シ、之ヲ京城支店ニ報告シ、同時ニ其流通高ヲ同店ヘ電報スルコトヲ要ス
第十八条 京城支店ハ前条報告ノ到達ヲ待チ之ヲ総括シテ翌日（休日ナレバ其次日）中ニ左記ノ計算表ヲ調製シ、監理官ノ手ヲ経テ主務大臣ニ進達シ、同時ニ本店ニ報告スルコトヲ要ス
一、毎日未発行ノ銀行券有高表
一、毎日銀行券発行及回収高表
一、毎日正貨及保証準備種類別出納及現在高表
但制限外発行ノ銀行券アルトキハ別項ニ掲ゲ共ニ報告スルモノトス
第十九条 京城支店ハ銀行券発行高及正貨及保証準備ニ関スル毎週平均高表ヲ調製シ、前条ニ準ジテ之ヲ報告スベシ
前項ノ外銀行券ノ発行高及発行準備高ノ毎月平均表ヲ作リ、韓国官報又ハ新聞紙ニ公告スベシ
第二十条 汚染又ハ毀損シタル銀行券ハ、韓国各支店出張所ニ於テ左ノ規定ニヨリ、無手数料ニテ日本通貨又ハ銀行券ト交換スベシ
一、券面中記号・番号二箇所ヲ存シ、券面中央ノ金額ヲ明ニ認メ得ベキモノハ全額ヲ以テ交換スベシ
二、細裂シタルモノト雖モ其裂端ヲ接続シテ明カニ一葉ノ銀行券タルコトヲ認メ得ベク、且其記号・番号・金額等ノ明ナルモノハ全額ヲ以テ交換スベシ
三、分裂シタル断片ト雖モ記号・番号・金額等ヲ明ニ認識シ得ルモノニシテ、且自余ノ断片ハ仮令将来持参スルモノアルモ半額ニ交換スル能ハズト認ムルトキハ尚全額ヲ以テ交換スベシ
四、断片ガ全面ノ二分一ニ充タザルモノト雖モ記号・番号・金額等ヲ明カニ認識シ得ルモノニシテ、且自余ノ断片ハ全額ヲ以テ交換スル能ハズト認ムルトキハ半額ヲ以テ交換スベシ
五、断片ガ記号・番号及左右何レカ一箇所ノ金額ヲ存スルモ、自余ノ断片ハ全額ニ交換シ得ベシト認ムルトキハ交換ヲ拒絶スルコトアルベシ
六、全面ヲ存スト雖モ記号・番号・金額等ヲ認ムル能ハザルモノ及其他ノ事由ニヨリ其真贋ヲ識別シ難キモノハ交換ヲ拒絶スルコトアルベシ
第二十一条 前条ニヨリ引換ヘラレタル汚損券ハ時々取纏メ記号・番号・種類・枚数及引換金額ノ明細表ヲ添ヘテ京城支店ヘ回送スベシ
第二十二条 京城支店ニ於テ銀行券ヲ消却セムトスルトキハ、其旨ヲ監理官ニ届出デ、臨検ヲ乞フテ消却ノ手続ヲ為スベシ
銀行券ヲ消却シタトキハ同時ニ其金額・種類・枚数・記号・番号ヲ本店及韓国支店出張所ニ報告スルコトヲ要ス
第二十三条 京城支店ニ銀行券製造元帳及銀行券記入帳ヲ備ヘ置キ銀行券製造元帳ニハ本店ヨリ送付シタル銀行券ノ受取高、他ノ支店・出張所ヘノ交付高、及残存高等ヲ記入シ、銀行券記入帳ニハ銀行券ノ種類毎ニ帳簿ヲ区別シ、銀行券ヲ韓国支店出張所ヘ送付
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スル毎ニ店別ニ其記号・番号等ヲ詳記シ、又消却シタルトキハ其日時ヲ記入スベシ
第二十四条 銀行券ヲ韓国支店出張所ヘ交付スル途中ニ於テ、水火難其他ノ災害ニ罹リ亡失シタルトキハ、其事実ノ確証ヲ得タル後京城支店ハ之ヲ管理局ニ届出テ、銀行券記入帳ニ事由ヲ明記シテ消却ノ手続ヲナシ、同時ニ本店及韓国各支店出張所ヘ通知スベシ
第二十五条 韓国各支店出張所ハ銀行券元帳・銀行券有高帳ヲ備ヘ置キ、銀行券元帳ニハ銀行券ノ発行高・回収高・流通高等ヲ記入シ、銀行券有高帳ニハ発行元高トシテ受取リタル銀行券ノ種類・金額、毎日ノ出入及銀行券ノ有高ヲ記入スベシ
第二十六条 京城支店ハ前条ノ外準備金有高帳・保証準備有高帳及損傷銀行券記入帳ヲ備ヘ置キ、準備金有高帳ニハ正貨準備ノ種類並ニ毎日ノ有高ヲ明細ニ記入シ、保証準備有高帳ニハ保証準備ノ出入及準備ニ充テタル有価証券ノ種類・券面・金額・準備価格及其他ノ要件ヲ記入シ、損傷銀行券記入帳ニハ損傷銀行券ノ種類・記号・番号・金額・員数・引換金額及其消却日付ヲ記入スベシ
第二十七条 韓国支店出張所ニ於テ元受高トシテ銀行券ノ交付ヲ受ケタルトキハ、総勘定元帳中銀行券受取高勘定ノ入ト、銀行券手許有高勘定ノ出ニ振替ヘ記帳シ、同時ニ銀行券有高帳ノ入ニ記入シ、支配人又ハ主任ハ之ニ証印シテ銀行券保管ノ責ニ任スベシ
第二十八条 韓国支店出張所ニ於テ銀行券ヲ発行セントスルトキハ毎日営業時間ノ始ニ支配人又ハ主任ハ、当日必要ト認メタル銀行券ノ高ヲ定メテ銀行券仮受渡簿ニ記入シ、其高ヲ出納掛長ヘ交付シ、仮受渡簿ニ其証印ヲ押捺セシムベシ
第二十九条 毎日事務終了ノ際、出納掛長ニ仮渡セル銀行券ノ内当日発行シタル高ニ対シテ支配人又ハ主任ハ銀行券手許有高勘定ヲ以テ入金票ヲ作リ、出納掛長ニ交付シテ銀行券有高帳ノ出ニ記入スベシ、而シテ出納掛長ノ手許ニ残存セル銀行券ハ仮受渡簿ニ明記シテ支配人又ハ主任ニ引渡シ其証印ヲ受クベシ
第三十条 毎日出納掛ノ手許ニ回収シタル銀行券ハ、事務終了ノ際銀行券手許有高勘定ヲ以テ支払票ヲ作リ、出納掛長ヨリ支配人又ハ主任ヘ引渡シ、支配人又ハ主任ハ之ヲ受取リテ銀行券有高帳ノ入ニ記入スベシ
第三十一条 前三条ノ手続ヲ終リタルトキハ、第十七条ノ規定ニヨリ出納日表ヲ調製シテ京城支店ヘ報告スベシ
第三十二条 韓国支店出張所ニ於ケル銀行券ノ出納保管及記帳手続ニ関シ、此規則ニ規定ナキ事項ニ付テハ京城支店ノ指揮ヲ受クベシ
第三十三条 此規則ヲ改正セントスルトキハ主務大臣ニ上申シ、其認可ヲ受クベシ
韓国貨幣整理報告書 第一銀行編 第四二―四九頁明治四二年刊（DK160030k-0004）
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韓国貨幣整理報告書 第一銀行編 第四二―四九頁明治四二年刊
○第三章 貨幣整理計画ノ要領
第三節 貨幣整理事務執行ノ機関
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○上略
貨幣整理事務処理件
本年七月一日ヨリ実施スヘキ貨幣整理事務ハ、従来補助貨ノ流通過多ニシテ、此ニ因リテ本位制度ヲ紊乱セシメタルヲ以テ、此ヲ整理シテ金貨本位制ヲ確立セントス、其方法ハ流通額過多ニシテ価格ノ下落最モ甚シキ旧白銅貨ハ全然此ヲ還収シ、銀行券及新貨ヲ以テ代行セシメ、葉銭ハ其一部ヲ還収シテ一定ノ法価ヲ保持セシメ、銀貨及赤銅貨ハ其流通甚タ少キヲ以テ現今間ハ放置シ、二元ニ対シ新貨幣壱圜ノ比例ヲ以テ流通ヲ認メ、尚且新貨ヲ発行シテ其不足ヲ補ヒ本位貨ハ漸次鋳造スヘケレトモ、現今間ハ銀行券ヲ以テ此ニ充ツル方針ナリ、銀行券及新補助貨ノ発行ニハ十分注意ヲ要シ、過不及ノ弊ヲ生セサル様勉励スルハ勿論ニシテ、相互間ニ加計ノ生スル弊ヲ避ケ、或ハ地方需要ノ貨幣種類ニ注意シテ、劃一均等ノ方針ヲ取リ注意スルヲ要ス
右事務処理件ハ左ノ如ク定メタルニヨリ照亮セラレン事ヲ望ム
明治三十八年六月五日
金庫出納役
京城支店支配人 清水泰吉
金庫出納役代理人
貨幣整理事務処理法
一 資金
第一条 政府交付金・新貨幣・旧貨幣売下代金及雑収入ヲ以テ、貨幣整理費用支撥ノ資金トナスモノナルヲ以テ、中央金庫整理部ニテハ右収入ヲ畢リタルトキハ、此ヲ資金ニ編入スル事
第二条 前項資金ハ第一銀行京城支店ニ当座預金トスヘシ、但シ新貨幣ハ新貨計算ヲ以テ受入レ、直接中央金庫整理部ニ於テ保管シ発行ノ必要ヲ生シタルトキハ銀行預金ニ任置シタル後支出スル事支金庫ニテ新貨幣ヲ発行スル必要ヲ生シタルトキハ、其保管セル新貨ヲ第一銀行ニ納入シタル後、即時中央金庫ニ報告スル事
第三条 新貨幣ハ中央金庫ノ保管トス
但シ中央金庫ニ於テ必要ト認ムルトキハ、此ヲ各支金庫ニ保管任置スルヲ得ル事
各支金庫ニテ中央金庫ノ指定スル所ニ依リ直接大阪支店ヨリ新貨幣ノ輸送ヲ受ケタルトキハ、即時其種類・金額ヲ中央金庫ニ報告スヘシ
中央金庫ニ於テ新貨幣ヲ受取リタルトキハ其日附ヲ以テ、又前項ニ依リ支金庫ヨリ報告アリタルトキハ其報告到著ノ日附ヲ以テ、新貨計算ニ記帳スヘシ
第四条 各支金庫ニ整理費用ノ支撥元金ヲ置ク、其額ハ中央金庫ニ於テ時々状況ヲ斟酌シテ之ヲ定ム
但シ支撥元金ハ此ヲ第一銀行ニ任置シ、支撥ヲ要スル時毎ニ支出セス、支撥ハ総テ第一銀行ノ代撥金トナシ置キ、第十条ニ依リテ処置スル事
第五条 資金ニ不足ヲ生シタルトキハ第一銀行ヨリ代撥シ、第一銀
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行計算ノ科目ニ当座加貸トシテ記帳整理スヘシ
二 支撥
第六条 旧白銅貨ノ鑑定ヲ畢了シ、相換ヲ行フ時ハ支撥票ヲ作成スヘシ、其支撥票ヲ以テ現金ノ支撥ヲ請求スルモノアルトキハ此ニ依リテ支撥スヘシ
第七条 納税等ニ因リテ還収セル旧貨幣ハ交換ニ換算記帳スヘシ
第八条 大阪造幣局ヨリ新鋳貨幣ノ原価ノ送付ヲ請ヒタル時ハ大阪支店ヨリ此ヲ代納シ京城支店ニ移計セシム、京城支店ハ中央金庫ニ移牒シテ貨幣整理資金計算ヨリ支撥ヲ受クヘシ、韓国外ニテ整理ニ関スル費用ヲ支撥フ場合ニハ総テ右ニ準シテ処理スル事
第九条 前二条ノ外ニ諸般費用ノ支撥ハ、総テ整理部ノ通告ニ依リテ第一銀行京城支店ヨリ支撥スル事
第十条 支金庫ニ於テ前条ノ支撥ヲ必要トスルトキハ第一銀行ヨリ代撥シ、毎月六回規定日（五日・十日・十五日・二十日・二十五日・末日、但シ当日休日ナル時ハ其翌日「以下做之」）ニ計算報告書ヲ作リ、証憑ヲ添付シテ京城支店ニ報告シ、京城支店ハ中央金庫ニ移牒シテ貨幣整理資金ヨリ支撥ヲ受クヘシ
支撥ニ関スル証憑書類ハ総テ中央金庫整理部ニ保管スヘシ
三 旧貨処置
第十一条 各支金庫ニテ保管スル旧白銅貨ハ、便宜上此ヲ中央ニ輸送スヘシ
第十二条 中央金庫ニテハ其保管スル旧白銅貨ヲ便宜上旧典圜局ニ送付シ、鋳潰シタル後売下其他ノ処分ヲ行フ事
第十三条 葉銭ハ此ヲ釜山支金庫ニ輸送シテ同支金庫ニテ保管シ、中央金庫ノ指揮ヲ待チテ処置スヘシ
但シ他ノ支金庫ニ輸送保管セシムル必要アルトキハ、中央金庫ハ其旨ヲ予メ通知スヘシ
第十四条 前二条ノ売下代金其他雑収入ヲ支金庫ニテ受領シタルトキハ、即時中央金庫ニ報告スヘシ
四 帳簿及報告
第十五条 貨幣整理計算ノ収支ハ左記ノ科目ニ分チ、中央金庫ニテ証憑通リ分弁シ、記帳整理スヘシ
資金計算 旧貨相換計算 旧貨買上計算
新貨製造代金計算 諸経費 第一銀行計算
新貨計算
第十六条 中央金庫整理部ニハ左ノ帳簿ヲ備ヘ、毎日其出入ヲ記帳スヘシ
一、貨幣整理計算元帳 （書式第一号）
一、旧貨相換元帳 （同 第二号）
一、旧貨買上元帳 （同 第三号）
一、旧貨処置元帳 （同 第四号）
一、旧貨現在帳 （同 第五号）
一、旧貨買上帳 （同 第六号）
一、新貨現在帳 （同 第七号）
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一、貨幣整理計算計減余額帳（同 第八号）
第十七条 各支金庫整理部ニ左ノ帳簿ヲ備置キ、毎日其出入ヲ記帳スヘシ
一、貨幣買上記入帳 （書式第九号）
一、旧貨相換記入帳 （同 第十号）
一、旧貨現在帳 （同第十一号）
一、新貨現在額帳 （同第十二号）
第十八条 各支金庫整理部ハ毎月六回規定ノ日ニ第十三号書式ニ依リテ、旧貨交換ニ関スル一切ノ事項ヲ中央金庫ニ報告スヘシ
第十九条 中央金庫ハ諸般ノ報告ヲ綜合シテ毎月一回貨幣整理ニ関スル必要事項ヲ度支部大臣ニ報告スヘシ
（書式省略）
○下略
韓国ニ於ケル第一銀行 第一銀行編 第三四五―三五七頁明治四一年八月刊（DK160030k-0005）
第16巻 p.222-226 ページ画像
韓国ニ於ケル第一銀行 第一銀行編 第三四五―三五七頁明治四一年八月刊
第九章 韓国中央銀行トシテノ第一銀行
第一節 外務・大蔵両大臣ノ監督
○上略
右勅令ノ発布ト同時ニ外務・大蔵両大臣ヨリ本行ガ韓国ニ於テ営ム業務ニ関シ左ノ命令書ヲ下付セラレ、本行ハ之ニ対シテ請書ヲ呈出セリ
官房秘第七一六号
株式会社 第一銀行
其行ガ韓国ニ於テ営ム業務ニ関シテハ別冊ノ通リ相心得ベシ
右命令ス、承諾ノ上ハ請書差出ス可シ
明治三十八年三月四日
外務大臣男爵小村寿太郎
大蔵大臣男爵曾禰荒助
（別冊）
一、其行ガ韓国ニ於テ営ム業務ニ関シテハ、韓国中央銀行タルノ心得ヲ以テ其本分トシ、業務ノ分界及其執行上総テ此標準ヲ以テスベシ
二、韓国事務所ニ於テハ営業係・発行係・韓国国庫金事務係並ニ韓国貨幣整理係ヲ置キ、業務ノ処理上遺憾ナキヲ期スベシ
三、韓国各支店出張所及代理店ニ於ケル業務ノ統一ヲ保ツ為メ、取締役ノ内少ナクモ一人ヲ総支店ニ在勤セシムベシ、止ムヲ得ザル事故ニ依リ取締役ヲ在勤セシムルコトヲ得ザル場合ニハ、外務大臣及大蔵大臣ノ認可ヲ受クベシ
四、其行ニ於テ韓国事務所ノ業務執行ニ関スル内規其他ノ諸規則類ヲ制定若クハ変更スルトキハ、総テ外務大臣及大蔵大臣ヘ届出ツベシ
五、韓国総支店ヨリ外務大臣及大蔵大臣ヘノ上申ハ総テ監理官ヲ経由スベシ
六、韓国貨幣整理・金融其他経済財政上ノ状況ニ付テハ、時々外務大臣及大蔵大臣ヘ報告スベシ
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七、韓国貨幣ノ鋳造ヲ造幣局ヘ依頼シ、及鋳造済貨幣ヲ造幣局ヨリ受取リテ、韓国総支店ヘ送付シタルトキハ、其金額・種類・枚数等ヲ外務大臣及大蔵大臣ヘ届出ヅベシ
韓国総支店ニ於テ前項ノ貨幣ヲ受取リタルトキハ其金額・種類・枚数等ヲ監理官ヘ届出ヅベシ
八、貨幣整理中、旧貨幣ノ納入ニ関シテハ特ニ貨幣鑑定役ヲ置キ、貨幣ノ真贋ヲ鑑定セシムルノ方法ヲ設クベシ
九、銀行券及其発行準備ノ出納保管ハ之ヲ明確ニシ、厳密ノ取締方ヲ設クベシ
十、銀行券及其発行準備取扱順序ヲ定メ、外務大臣及大蔵大臣ノ認可ヲ受クベシ
十一、銀行券ヲ製造シタルトキハ、発行前ニ其見本ヲ外務大臣及大蔵大臣ニ差出スベシ
十二、銀行券ハ其発行前韓国官報・新聞紙其他ノ方法ヲ以テ其様式及種類ヲ公告シ、且ツ其見本ヲ韓国相当官衙ニ配賦スベシ
十三、銀行券ノ汚染毀損等ニ依リ通用シ難キモノハ、韓国各支店出張所ニ於テ無手数料ニテ之ガ引換ヲ為スベシ
十四、其行本店ハ銀行券ノ製造・回送等ニ関スル事務ヲ処理スルニ止メ、銀行券ノ記番号元帳及発行準備ノ保管出納等ニ関スル必要帳簿ハ、総テ韓国総支店ニ備ヘ置クベシ
十五、銀行券ノ製造ヲ印刷局ヘ注文シ、又ハ製造済銀行券ヲ印刷局ヨリ受取リテ、韓国総支店ヘ送付シタルトキハ、其金額・種類・枚数等ヲ外務大臣及大蔵大臣ヘ届出ヅベシ
韓国総支店ニ於テ前項ノ銀行券ヲ受取リタルトキハ金額・種類・枚数等ヲ監理官ニ届出ベシ
十六、其行銀行券ノ発行額・発行準備高毎月平均表ヲ韓国官報又ハ新聞紙ヲ以テ公告スベシ
十七、其行韓国総支店ハ左記ノ計算表ヲ外務大臣及大蔵大臣ヘ進達スベシ
一、毎日原簿ノ計算表
一、毎日未発行銀行券在高表
一、毎日銀行券発行及回収高表
一、毎日正貨及保証準備種類別出納及現在高表
但制限外発行ノ銀行券アルトキハ別項ニ掲ゲ、共ニ報告スルモノトス
一、銀行券発行額正貨及保証準備高毎週平均表
一、毎週営業報告表
一、毎月実際報告表
十八、韓国官金出納事務ハ精確且ツ軽便ニ之ガ取扱ヲ為スコトヲ期スルハ勿論、韓国政府ニ対シ其韓国財政上利益ニシテ且便宜ナルヲ実際ニ示スコトヲ旨トスベシ
十九、人民ニ対シテハ懇切ヲ旨トシ、出納及引手続等ハ簡便迅速ヲ期シ、不案内ノモノニモ差支ナキ様適宜ノ方法ヲ設ケ、其行ニ於ケル国庫金取扱ノ便利ヲ周知セシムルコトヲ力ムベシ
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二十、事務所ニ遠隔ナル地方ノ人民ヲシテ公納ヲ容易ナラシムル為メ、漸次事務所ヲ増設シ、若クハ代理店ヲ特約シ、或ハ納税期ニ際シ臨時事務員ヲ派出セシムル等ノ方法ヲ講スベシ
二十一、其行ノ韓国ニ於ケル営業ハ各地金融ノ円滑ヲ助ケ、貿易及企業上ノ便宜ヲ与ヘ、務メテ日韓貿易ヲ発達セシムルコトヲ旨トスベシ
二十二、其行ハ韓国産金ヲ本邦ヘ吸収スルコトニ尽力スベシ
二十三、其行ノ事務上重大ノ事件アルトキハ、速ニ外務大臣及大蔵大臣ヘ申出ヅベシ
二十四、韓国各支店出張所ニ在勤セシムル取締役・支配人其他相当ノ権限ヲ委任シタル代理人ノ氏名・印鑑ヲ外務大臣及大蔵大臣ニ届出ヅベシ、之ヲ変更シタルトキ亦同ジ
二十五、本命令ノ外、韓国政府ハ日本政府トノ協定ニ依リ、其行韓国支店ノ業務ニ関シ、監理上必要ノ規程ヲ設クルコトアルベシ
尚ホ同日外務・大蔵両次官ヨリ左ニ掲グル所ノ本行ニ関スル事務処理順序、並ニ監理官要務規程ヲ定メラレタル旨達セラレタリ
官房秘第七二一号
今般株式会社第一銀行ニ関スル事務処理順序、並ニ株式会社第一銀行監理官要務規定別冊甲号及乙号ノ通リ相定メラレ候ニ付、此段及御送付候也
明治三十八年三月二十四日
外務次官 珍田捨巳
大蔵次官法学博士 阪谷芳郎
第一銀行頭取男爵渋沢栄一殿
（別冊）
甲号
株式会社第一銀行ニ関スル事務ノ処理順序
甲、韓国支店ニ関スル分
一、第一銀行韓国支店ヨリ提出スル書類ハ総テ外務・大蔵両大臣宛ニテ、監理官ヲ経テ公使ニ差出スコト
二、在韓公使ハ右書類ヲ受領シタルトキハ、即時外務省ヘ発送スルコト
但公使ハ必要ト認ムルトキハ意見ヲ附スルコト
三、外務省ハ右書類ヲ受領シタルトキハ、勅令第七十三号第十二条ニ関スル分ハ之ヲ先閲シ、其他ハ総テ大蔵省ノ先閲トスルコト、先閲省ハ相互ニ合評スルハ勿論、事ノ少シク重キモノハ相互ニ迅速ニ通知協議スルコト
四、処分ヲ要スルモノハ外務・大蔵両大臣ノ名ヲ以テ、在韓公使ヲ経、監理官ヲシテ之ヲ第一銀行韓国支店ニ交付セシムルコト
乙、第一銀行本店ニ関スル分
一、韓国ニ於ケル業務ニ関シ、第一銀行本店ヨリ提出スル書類ハ外務・大蔵両大臣宛ニテ大蔵省ニ差出スコト
口頭ノ上申亦之レニ準ズ
二、大蔵省ニ於テハ、甲第三項・第四項ニ準ジ前項ノ事ヲ処理スル
- 第16巻 p.225 -ページ画像
コト
丙、監理官ニ関スル分
一、第一銀行韓国支店ヨリ提出スル書類ハ監理官一々之ヲ精査シ、意見アラバ之ヲ附シテ在韓公使ヘ差出スコト、銀行ヨリ提出ノ書類ニ伴ハザル監理官ノ意見書亦同ジ
二、監理官ヨリ提出スル意見書其他ハ総テ外務・大蔵両大臣宛トスルコト
三、監理官ヨリ提出ノ書類ハ外務省ニ於テ甲第三項ニ準ジ処理スルコト
四、監理官ヘノ命令ハ外務・大蔵両大臣ノ名ヲ以テ在韓公使ヲ経テ交付スルコト
丁、在韓公使及財務顧問ニ関スル分
一、在韓公使ハ監理官ヲ監督スルコト
二、在韓公使ハ常ニ第一銀行韓国支店ノ業務ヲ注視シ、意見アルトキハ直ニ外務・大蔵両大臣ニ提議スルコト
三、在韓公使ヨリ提出ノ書類処理順序ハ甲第三項ニ準ズルコト
四、韓国財務顧問ハ第一銀行韓国支店ノ業務ニ関シ、意見アルトキハ在韓公使ヲ経テ外務・大蔵両大臣ニ提議スルコト
乙号 秘密
株式会社第一銀行監理官要務規程
第一条 株式会社第一銀行監理官ハ毎週一回以上株式会社第一銀行韓国総支店ニ臨監シ、明治三十八年勅令第七十三号第十三条ノ検査ヲ為スベシ
第二条 株式会社第一銀行監理官ハ必要ト認ムルトキハ、株式会社第一銀行ノ韓国ニ於ケル各支店出張所及代理店ニ就キ、前条ノ検査ヲナスベシ
第三条 第一条及第二条検査ノ景況ハ五日以内ニ外務大臣及大蔵大臣ニ報告スベシ
前項ノ外、至急ヲ要シ又ハ異常ノ事件アルトキハ、其時々報告スベシ
第四条 株式会社第一銀行監理官ハ株式会社第一銀行韓国各支店出張所及代理店ガ法令又ハ定款ニ背戻シ、明治三十八年勅令第七十三号ニ基キ発シタル命令ニ違反シ、其他公益ヲ害スル行為アリト認ムルトキハ直ニ外務大臣及大蔵大臣ニ上申シ、其ノ指揮ヲ請フベシ
第五条 株式会社第一銀行監理官ハ明治三十八年勅令第七十三号第九条第四項又ハ第十四条ニ依ル制限ノ必要アリト認ムルトキハ、直チニ其意見ヲ外務大臣及大蔵大臣ニ具申スベシ
第六条 株式会社第一銀行監理官ハ株式会社第一銀行韓国支店出張所ノ業務又ハ営業ノ方針ニ付テ、改善ヲ要シ又ハ内規其他ノ諸規定ニ改正ヲ要スルモノアリト認ムルトキハ、其意見ヲ外務大臣及大蔵大臣ニ具申スベシ
第七条 株式会社第一銀行監理官ハ株式会社第一銀行韓国総支店ガ外務大臣及大蔵大臣ヘ上申スベキ事故ニ付意見アルトキハ之ヲ両
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大臣ニ報告スベシ
第八条 株式会社第一銀行監理官ハ株式会社第一銀行韓国総支店ガ本店ヨリ製造済貨幣、又ハ銀行券ヲ受取リタルトキハ其種類・枚数・記番号・金額等ヲ外務大臣及大蔵大臣ニ報告スベシ
第九条 株式会社第一銀行監理官ハ随時株式会社第一銀行韓国総支店ニ出張シ、銀行券及其ノ発行準備ノ保管出納等ガ同行銀行券及其発行準備取扱順序ニ違反セザルヤヲ検査シ、其状況ヲ外務大臣及大蔵大臣ニ報告スベシ
第十条 株式会社第一銀行監理官ハ随時発行準備ノ種類並価格等ヲ検査シ、其状況及準備ノ価格等ニ対スル意見ヲ具シ外務大臣及大蔵大臣ニ報告スベシ
第十一条 株式会社第一銀行監理官ハ常ニ韓国各支店出張所ニ於ケル銀行券引換準備分配ノ適否ヲ注視シ、時々其状況ヲ外務大臣及大蔵大臣ニ報告スベシ
第十二条 株式会社第一銀行監理官ハ株式会社第一銀行韓国総支店ニ於テ、明治三十八年勅令第七十三号第九条第三項ニ依ル銀行券ノ制限外発行ヲ為シタルトキハ、外務大臣及大蔵大臣ノ指定シタル条件ニ違反セザルヤヲ検査シ、之ヲ外務大臣及大蔵大臣ニ報告スベシ
第十三条 損傷等ニ係ル既発行銀行券ノ回収セラレタルモノヲ、銀行券及其発行準備取扱順序ニ依リ銷却スベキ旨届出アリタルトキハ銷印《（却）》ノ場所ニ臨検シ、立会人連署ノ調書ヲ作リ外務大臣及大蔵大臣ニ報告スベシ
第十四条 株式会社第一銀行監理官ハ株式会社第一銀行韓国総支店ヨリ外務大臣及大蔵大臣ニ提出スベキ左記ノ計算表ヲ検査シ、意見アルトキハ副申スベシ
一、毎日原簿ノ計算表
一、同未発行銀行券在高表
一、同銀行券発行及回収高表
一、同発行準備種類別出納及現在高表
但シ制限外発行ノ銀行券アルトキハ別項ニ掲ゲ、共ニ報告スルモノトス
一、銀行券発行額発行準備高毎週平均表
一、毎週営業報告表
一、毎月実際報告表
第十五条 株式会社第一銀行監理官ハ株式会社第一銀行ノ韓国官金取扱事務及韓国貨幣整理事務ノ挙否ヲ監視シ、時々其景況ヲ外務大臣及大蔵大臣ニ報告スベシ
第十六条 株式会社第一銀行監理官ハ、処務上ニ必要ナル帳簿ヲ備ヘ、諸計算其他必要ノ事項ヲ記載スベシ
日本銀行沿革史 第六巻・第一六三六―一六三八頁大正二年一一月刊（DK160030k-0006）
第16巻 p.226-228 ページ画像
日本銀行沿革史 第六巻・第一六三六―一六三八頁大正二年一一月刊
明治三十七年六月十四日大蔵省理財局長ヨリ韓国ニ於テ第一銀行ノ発行シタル銀行券ハ一覧払手形類似ノモノニシテ、何時タリトモ通貨ト
- 第16巻 p.227 -ページ画像
交換シ得ラルヘキモノニ付、満韓地方ニ於ケル金庫派出所ニ限リ右等銀行券ノ出納ヲ取扱ヒテ差支ナク、但内地ヘ回収ノ場合ハ本邦通貨ニ交換ノ上回送スル義ト心得ヘキ旨依命通知アリタリ、依テ同月十七日国第八百八十五号ヲ以テ其旨該地方各中央金庫派出所ヘ通達セリ
尋テ翌三十八年三月二十四日勅令第七十三号ヲ以テ該第一銀行券ニ関シ規定セラルヽ所ヲ見ルニ、株式会社第一銀行ハ韓国ニ於テ公私一切ノ取引ニ無制限ニ通用スヘキ銀行券ヲ発行スルコトヲ得第七条銀行券ハ通貨ヲ以テ引換フヘク第八条銀行券ノ所有者ハ韓国ニ於ケル同行ノ財産ニ付先取特権ヲ有ス第十一条而シテ同行京城支店ハ其銀行券発行総高ニ対シ同額ノ金貨・金銀地金及日本銀行兌換銀行券ヲ置キ其ノ引換準備ニ充ツヘク、但銀地金ハ引換準備総額ノ四分ノ一ヲ超過スルコトヲ得サルコト、右準備ニ依ルノ外一千万円ヲ限リ国債証券・商業手形其他確実ナル証券ヲ保証トシテ銀行券ヲ発行スルヲ得、右二項ノ外更ニ銀行券ヲ発行スルハ主務大臣ノ特定スル条件ニ依ルコト等ヲ定メ、本勅令施行前同行カ発行シタル銀行券ハ本令ニ依リテ発行シタルモノト看做セリ、而シテ是等第一銀行券ニシテ同行在韓国支店・出張所ナキ地方ヨリ内地ニ帰来セル軍人・軍属ノ所持ニ係ルモノニ対シテハ相当交換ノ途ヲ開クコトヽナリ、明治三十八年八月二十九日大蔵大臣ヨリ陸軍軍隊出納官吏ニ於テ第一銀行券ヲ提供シ、通貨ト交換請求ノ場合ハ左記金庫ニ於テ交換方取計フヘク、第一銀行券ハ便宜第一銀行内地本支店ニ就キ通貨ト交換スヘキ旨達セラレタリ
中央 横浜 大阪 広島 佐世保
横須賀 松戸 千葉 佐倉 伏見
福知山 舞鶴 洲本 大津 姫路
大村 新発田 高崎 名古屋 豊橋
静岡 仙台 山形 青森 弘前
秋田 金沢 敦賀 鳥取 浜田
丸亀 忠海 善通寺 松山 福岡
高知 久留米 小倉 赤間関 山口
熊本 鹿児島 函館 旭川 札幌
新津 武生
右ニ基キ翌九月四日国第千九百四十四号ヲ以テ右ニ付左記手続ニ依リ取扱フヘキ旨、各関係本金庫並中央金庫所属支金庫ヘ通達セリ
一 第一銀行券（拾円・五円・壱円・五拾銭・弐拾銭・拾銭ノ六種）ハ併価ヲ以テ交換スル事
二 交換シタル銀行券ハ種類交換ノ例ニ依リ整理シ、且便宜ノ書留簿ヲ設ケ其受払ヲ記載スル事
但現在高種類別報告表ノ備考ニ其在高ヲ掲記スル事
三 交換ノ都度其交換高ヲ当庫ヘ報告スル事
四 交換済ノ銀行券ハ便宜金庫所在地（門司本金庫ハ下関）第一銀行支店ニ就キ通貨ト交換ヲ了シ、其旨当庫ヘ報告スル事、但所在地ニ第一銀行支店ノ設ナキ金庫ニ於テハ、幸便ノ都度通達外回送トシテ該銀行券ヲ中央（大阪本金庫）（門司本金庫）金庫ヘ回送シ、其旨当庫ヘ報告スル事
五 支金庫ヘハ直ニ御伝達可相成、尚該支金庫ニ於テ交換シタル銀
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行券ハ速ニ其本金庫ヘ取寄セ置ク事
右交換ニ要スル銀行券ノ見本ハ該行ヨリ送付ヲ受ケタルニ付、明治三十八年九月十六日各種ヲ取揃ヘ之ヲ関係金庫ヘ配付セリ
其後明治三十九年六月二十九日大蔵省理財局長ヨリ在韓国陸軍省出納官吏ニ於テ軍資金トシテ第一銀行券ヲ以テ領収シタル歳入金ハ、同省会計監督部ニ於テ臨時軍事費ノ前渡金ニ差継計算ヲ以テ中央金庫ヘ払込ムヘキニ付、差支ナク取扱方通牒セラレタリ
第一銀行五十年史稿 巻六・第四七―五一頁 大正一二年刊（DK160030k-0007）
第16巻 p.228-229 ページ画像
第一銀行五十年史稿 巻六・第四七―五一頁 大正一二年刊
○第二編 第六章 日露戦後の発達
第一節 韓国中央金融機関の譲渡
○上略
期次 発行高 準備金 正貨 保証 合計 円 円 円 円 明治三十九年六月末 五、四二九、八六五 二、四四六、〇〇〇 四、六〇〇、〇〇〇 七、〇四六、〇〇〇 同 十二月末 九、二二四、四〇〇 三、二六六、〇〇〇 六、六〇〇、〇〇〇 九、八六六、〇〇〇 同 四十年 六月末 九、五七六、九〇〇 三、三八六、〇〇〇 七、〇〇〇、〇〇〇 一〇、三八六、〇〇〇 同 十二月末 一二、八〇五、三〇〇 四、五八二、五〇六 八、二二二、七九四 一二、八〇五、三〇〇 同 四十一年六月末 八、九一四、六〇〇 二、九八五、〇〇〇 五、九二九、六〇〇 八、九一四、六〇〇 同 十二月末 一〇、三八五、九〇〇 三、五〇四、六七三 六、八八一、二二七 一〇、三八五、九〇〇 同 四十二年六月末 一〇、〇五一、一〇〇 三、三六〇、〇〇〇 六、六九一、一〇〇 一〇、〇五一、一〇〇
期次 韓国政府貸上金 貨幣整理資金貸上越 国庫金貸越 合計 円 円 円 円 明治三十九年六月末 三、〇〇〇、〇〇〇 四、二九八、六三三 ―― 七、二九八、六三三 同 十二月末 三、〇〇〇、〇〇〇 二、八七九、七五六 六五九、八一一 六、五三九、五六七 同 四十年 六月末 三、〇〇〇、〇〇〇 二、八九一、九〇八 ―― 五、八九一、九〇八 同 十二月末 三、〇〇〇、〇〇〇 二、八三五、三二一 一、二四一、七七二 七、〇七七、〇九三 同 四十一年六月末 三、〇〇〇、〇〇〇 四、四〇八、九〇九 七四三、四四〇 八、一五二、三四九 同 十二月末 三、〇〇〇、〇〇〇 六、二七七、七九八 ―― 九、二七七、七九八 同 四十二年六月末 三、〇〇〇、〇〇〇 九、一二九、八一〇 ―― 一二、一二九、八一〇
（備考）貨幣整理資金貸越ハ四十二年下半期ニ全部還済セラレ其貸上金ハ韓国併合後日本政府ノ貸上金トナリシガ四十四年上半期ニ全部還済セラレタリ
期次 国庫金 貨幣交換基金 合計 円 円 円 明治三十九年六月末 一、〇五九、四二〇 六〇、〇〇〇 一、一一九、四二〇 同 十二月末 ―― 六〇、〇〇〇 六〇、〇〇〇 同四十年 六月末 五四一、八九八 ―― 五四一、八九八 同 十二月末 ―― ―― ―― 同四十一年六月末 ―― ―― ―― 同 十二月末 一六〇、一四四 ―― 一六〇、一四四 同四十二年六月末 一七七、七二八 ―― 一七七、七二八
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（備考）預金全部ハ四十二年下半期ニ全部払戻済トナル
期次 貸附金 当座預金貸越 割引手形 荷為替手形 合計 円 円 円 円 円 明治三十九年六月末 一、六八七、六七四 七三五、〇九九 九六三、三九二 二一三、九三二 三、六〇〇、〇九七 同 十二月末 一、四一五、八八〇 一、〇一九、七四六 一、九二五、四〇一 四〇四、〇七四 四、七六五、一〇一 同四十年 六月末 一、六九九、三五二 一、一六九、七一八 一、九〇七、八七一 三五七、九一〇 五、一三四、八五一 同 十二月末 二、二七六、九三六 一、〇九五、二四二 三、七七六、四五五 四六八、七六三 七、六一七、三九六 同四十一年 六月末 二、一二四、四二二 一、一六二、六六四 二、六一二、七五七 四八三、〇四六 六、三八二、八八九 同 十二月末 二、三三三、一二七 一、〇四五、〇七一 三、〇一〇、五四七 四一五、三七〇 六、八〇四、一一五 同四十二年六月末 二、一七〇、八七〇 八九八、九八一 一、八五七、二〇二 一七九、六一三 五、一〇六、六六六
期次 資本金 積立金 預金 円 円 円 明治三十九年六月末 三、〇〇〇、〇〇〇 一五〇、〇〇〇 一〇、九六〇、九八八 同 十二月末 三、〇〇〇、〇〇〇 二〇〇、〇〇〇 一〇、九六七、六三三 明治四十年六月末 三、〇〇〇、〇〇〇 二五〇、〇〇〇 一二、四三六、六二三 同 十二月末 三、〇〇〇、〇〇〇 三〇〇、〇〇〇 一一、四二一、二一六 明治四十一年六月末 三、〇〇〇、〇〇〇 四〇〇、〇〇〇 一〇、一四四、〇〇一 同 十二月末 三、〇〇〇、〇〇〇 五〇〇、〇〇〇 九、六四三、九九〇 同四十二年六月末 三、〇〇〇、〇〇〇 六〇〇、〇〇〇 一一、二六四、〇六九
○下略
韓国ニ於ケル第一銀行 第一銀行編 第三八三―三八五頁明治四一年八月刊（DK160030k-0008）
第16巻 p.229-230 ページ画像
韓国ニ於ケル第一銀行 第一銀行編 第三八三―三八五頁明治四一年八月刊
○第十一章 韓国金融機関
第一節 中央銀行
従来韓国ニ於ケル金融機関ハ見ルベキモノナク、随テ金融梗塞シ利息高率ニシテ経済界ノ発展為メニ妨ゲラルヽヤ久シ、明治十一年ニ於テ本行ガ始メテ釜山ニ支店ヲ開設シ、次デ仁川・元山及ヒ京城ニ支店ヲ設立シテ以来同国金融界ニ貢献セル所少ナカラズト雖モ、未ダ以テ弘ク金融ヲ疏通スルニ足ラズ、日清戦後ニ至リ本行ハ此地ニ於ケル業務ヲ拡張セシト共ニ、十八銀行及第五十八銀行等モ亦支店ヲ増設セシヲ以テ稍々前日ノ観ヲ改メシト雖モ、各機関ニ連絡ナク金融一方ニ偏シテ資本常ニ潤沢ナラズ、而シテ一方ニハ幣制紊乱ヲ極メ国庫出納ノ機関ナク財政窮乏国運衰替其極ニ達セリ
玆ヲ以テ明治三十八年同国ノ財政整理ニ着手セラルヽヤ貨幣制度ノ改革、中央金融機関ノ設置並ニ金庫ノ設立ヲ以テ最急務トナシ、同年一月本行ヲ以テ中央金融機関トナスト同時ニ、貨幣整理及金庫事務ヲ委托セラレ爾後其事業ノ着々其歩ヲ進ムルニ連レ、経済界ノ面目玆ニ一新シテ其発展ヲ見ルニ至レリ
抑々本行ガ韓国中央銀行タルノ任務ヲ命ゼラルヽヤ、従来発行セル銀行券ハ公私ノ取引ニ無制限ニ通用スルコトヲ公認セラレ、而シテ右銀行券ハ日本通貨ト交換スベキモノナルヲ以テ日本銀行兌換券ハ自然韓国本位貨ト同様ノ地位ニ立チ、韓国貨幣ハ全ク日本貨幣ト同一ノ性質ヲ有シ、同国貨幣本位ノ確立ト共ニ貿易及ビ交通上全ク障壁ヲ存セザルコトヽナリテ内外経済上ニ至大ノ便益ヲ与フルニ至レリ
- 第16巻 p.230 -ページ画像
今本行ノ韓国ニ於ケル支店・出張所ヲ示セバ左ノ如シ
店名 開業年月 摘要
京城支店 明治二十一年一月 出張所トシテ設立シ明治三十六年二月支店ト改称シ同三十九年五月韓国総支店ト称ス
仁川支店 同十六年十一月 出張所トシテ設立シ明治二十一年九月支店ト改称ス
釜山支店 同十一年五月
元山支店 同十三年五月 一時閉鎖シ明治三十七年十一月更ニ出張所トシテ開店、同三十九年二月支店ト改称ス
平壌支店 同三十七年三月 出張所トシテ設立シ明治三十九年二月支店ト改称ス
鎮南浦出張所 同三十六年二月
木浦出張所 同三十二年八月
群山出張所 同三十六年二月
馬山出張所 同三十九年二月
大邱出張所 同三十八年四月
開城出張所 同年七月
城津出張所 同年六月
咸興出張所 同三十九年二月
鏡城出張所 同四十年四月
〔参考〕稿本日本金融史論 滝沢直七著 第九六五―九六八頁大正元年一〇月刊（DK160030k-0009）
第16巻 p.230-232 ページ画像
稿本日本金融史論 滝沢直七著 第九六五―九六八頁大正元年一〇月刊
○第三編 第五章 第七節 朝鮮銀行の発達
第一款 第一銀行朝鮮支店
○上略
第一銀行兌換券発行方法はその初め法津に規定せず、唯政府の内訓により発行規則を作り、政府の承認を受けしのみであつて、比例準備を加味せる総額準備法であつた。即ち日本通貨を以て流通高五万円まではその全額、五万円以上はその三分の一以上を準備し、但し五万円を下ることを得ずとした。三十六年我が大蔵省理財局長の示せし標準により、金銀貨及び日本銀行兌換券を以て正貨準備と為し、公債証書・政府証券及び商業手形（朝鮮分とも）を保証準備と為し、発行高は各支店を通じて五百万円を限度とし、発行額百万円までは三分の二を正貨準備とし、百万円以上は半額を正貨準備とし、その他は保証準備を置くことに改正し比例準備法を取つたのであつたが、三十八年第一銀行が中央銀行たるに及びて、初めて法令を以て規定せられ、勅令を以て定められ、発行総額に対し同額の金貨・金銀地金及び日本銀行兌換券を以て正貨準備と為すことゝなつた。但し銀地金は引換総準備額の四分の一を超過することは出来なかつた。而して保証準備発行制限額を一千万円に定め、なほ大蔵大臣の内訓により三分の一以上の正貨準備を備へることゝなつたのである。朝鮮の中央銀行にして正貨準備中に日本銀行兌換券を加ふること異様の感なき能はず、然れども朝鮮が我が勢力範囲に入り、殖民地たりしが故と、我が日本銀行兌換券は清韓人が正貨輸送の目的たりしことゝ、白耳義国中央銀行が多額の短期金貨払外国手形を正貨準備に加ふると同様外国手形とその性質異ならざるのみならず、寧ろこれに優るものありしとに由る。その正貨に対する準備割合標準は公表せられず、日本銀行兌換券を以て正貨準備と為す関係は日本銀行の支店を以て中央銀行に充つべしとの説を生みた
- 第16巻 p.231 -ページ画像
るものであつて、爾来朝鮮銀行に変遷し至るまで日本銀行兌換券を正貨準備と為すの方法を取つて居ることになつたのである。今その発行高及び準備の趨勢をこゝに掲げよう。
正貨準備 保証準備 総発行高 発行高ニ対スル正貨ノ百分比例 金貨及地金 日本銀行兌換券 円 円 円 （光武六年） 三十五年五月 一三、五五一 ―― 一三、五五一 一〇〇 六月 五二、二七〇 ―― 五二、二七〇 一〇〇 十二月 四二、六七二 二〇二、八七八 六二五、五五〇 六八 （同七年） 三十六年一月 四三三、一六六 三一〇、〇四二 七四三、二〇八 五八 六月 五一七、〇〇九 六六三、三〇九 五八〇、三一八 七〇 十二月 六〇一、九〇〇 二六八、二二六 八七〇、一二六 六九 （同八年） 三十七年一月 六二四、七〇〇 一一九、六二六 七四四、三一六 八四 六月 一、三三六、〇〇〇 四四九、〇五二 一、七八五、〇五二 七五 十二月 一、九二一、三〇〇 一、四五〇、五一七 三、三七一、八一七 五七 （同九年） 三十八年一月 一、九八二、〇〇〇 九二六、〇二三 二、九〇八、〇二三 六八 六月 四〇、〇〇〇 二、四六〇、〇〇〇 三、五六八、八三二 六、〇六九、九三二 四一 十二月 三八、〇〇〇 二、七九〇、〇〇〇 五、二九七、二六七 八、一二五、二六七 三五 （同十年） 三十九年一月 三八、〇〇〇 二、七九〇、〇〇〇 四、二三三、五一八 七、〇六一、五一八 四〇 六月 三六、〇〇〇 二、四一〇、〇〇〇 二、九八三、八六四 五、四二九、八六四 四五 十二月 一二六、〇〇〇 三、一三〇、〇〇〇 五、九六八、四〇〇 九、二二四、四〇〇 三五 （隆熙元年） 四十年一月 一二六、〇〇〇 三、一七〇、〇〇〇 六、三三八、七〇〇 九、六三四、七〇〇 三四 六月 一六一、〇〇〇 三、二二五、〇〇〇 六、一九〇、九〇〇 九、五七六、九〇〇 三五 十二月 九四七、五〇六 三、一一五、〇〇〇 七、三三二、三八七 一一、四五八、六〇〇 三六 （同二年） 四十一年一月 一、〇一一、二一二 三、一一五、〇〇〇 七、三三二、三八七 一一、四五八、六〇〇 三六 六月 一、〇一五、〇〇〇 一、九七〇、〇〇〇 五、九二九、六〇〇 八、九一四、六〇〇 三三 十二月 一、四一九、六七三 二、〇八五、〇〇〇 六、八八一、二二六 一〇、三八五、九〇〇 三四 （同三年） 四十二年一月 一、五一五、一三三 三、一五〇、一三三 六、一九五、六六六 九、三四五、八〇〇 三四 六月 一、五一五、〇〇〇 一、八四五、六〇〇 六、六九一、一〇〇 一〇、〇五一、〇〇〇 三三 十二月 一、五一七、〇〇〇 二、四三六、八七六 七、八八九、七五一 一一、八三三、一二七 三三
逐年その発行額の増進せしことは中央金融機関としての第一銀行の発展を示し、また、同行金融市場の日本化し来りしことを示すものである。而して発行額の年内に高低あるは秋より年末に懸け農産物の輸出ありて諸般の取引増進し、春より夏に懸けて減退する為であつて、三十九年に於て発行高の減少せしは軍隊の引上げのためにして、四十一年の減退は我が内地の経済上の不振に影響せられたものであつた。
○下略
○左ニ第一銀行ニ於ケル金利ノ趨勢ヲ掲ゲテ見ル。
貸出金普通利率（京城支店）
貸付金 割引手形 定期預金 当座預金
銭 銭 割 銭
二十九年十二月 五、〇〇 五、〇〇 ・六五 一、〇〇
三十四年 六月 四、六〇 四、〇〇 ・六五 一、〇〇
三十五年 六月 四、二〇 三、五〇 ・六五 一、〇〇
十二月 三、〇〇 三、四〇 ・六五 一、〇〇
三十七年十二月 二、八〇 三、四〇 ・五五 一、〇〇
三十八年 六月 三、〇〇 三、四〇 ・五五 一、〇〇
四十年 一月 三、二〇 三、二〇 ・五〇 一、〇〇
二月 三、三〇 二、八〇 ・五五 一、一〇
三月 三、五〇 三、〇〇 ・六〇 一、一〇
- 第16巻 p.232 -ページ画像
五月 三、三〇 三、一〇 ・六〇 一、一〇
六月 三、二〇 三、〇〇 ・六〇 一、〇〇
十二月 三、三〇 三、〇〇 ・六〇 一、〇〇
四十一年 二月 三、〇〇 三、〇〇 ・六〇 一、〇〇
四月 三、二〇 三、二〇 ・六〇 一、〇〇
（備考）変動ノアリタル月ヲ抽出シテコノ表ヲ調製ス。
（「稿本日本金融史論」第九七〇頁ヨリ）
〔参考〕韓国ニ於ケル第一銀行 第一銀行編 第三六〇―三六五頁明治四一年八月刊（DK160030k-0010）
第16巻 p.232-234 ページ画像
韓国ニ於ケル第一銀行 第一銀行編 第三六〇―三六五頁明治四一年八月刊
○第九章 韓国中央銀行トシテノ第一銀行
第三節 統監府ノ監督
爾来本行ノ韓国ニ於ケル業務ハ外務・大蔵両大臣ノ監督ニ属セシガ、統監府官制々定セラレテヨリ右業務ハ統監ノ監督ニ移リ、明治三十九年五月統監府及外務・大蔵両大臣ヨリ左ノ通牒アリタリ
号外
今般統監府官制々定ノ結果、貴銀行ノ韓国ニ於ケル業務ハ統監ノ監督ニ属スルコトニ相成候ニ就テハ、明治三十八年勅令第七十三号及貴銀行ガ韓国ニ於テ営ム業務ニ関スル命令書中外務大臣及大蔵大臣又ハ主務大臣トアルハ之ヲ統監ト解釈シ、各条項ノ規定ニ従ヒ夫々御処置有之度候、又報告類ニ関シテハ統監宛ニテ正副二通ヅヽ提出相成度、尚貴銀行ニ関スル事務処理順序ハ必要無之候間之ヲ廃止シ命令書第十七項中毎日ノ調査ニ拘ハル計算表ハ之ヲ提出スルニ及バズ候、右御了承ノ上今後ノ業務御処理有之度此段及通牒候也
追テ命令書第七項ノ場合ニ於テ従来本店ヨリ大蔵大臣ヘ提出シタル韓国貨幣送付ノ届出ノ義ハ自今之ヲ統監ニ提出スルコトヽ御承知相成度候
明治三十九年五月二十六日
統監府総務長官 鶴原定吉代理 児玉
株式会社第一銀行頭取男爵渋沢栄一殿
往第六三二四号
株式会社第一銀行
其行韓国ニ於ケル業務ハ今般統監ノ監督ニ属スルコトト相成候ニ付テハ従来大蔵大臣・外務大臣ニ宛認可申請若クハ届出等ノ書類ハ自今統監宛発送スベシ、但銀行条例ニ依ル営業報告書・貸借対照表其他ノ届出ヲ要スル事項ニ付テハ従前ノ通ニテ且正副弐通ヲ提出スベキ儀ト心得ベシ
明治三十九年五月二十九日
大蔵大臣法学博士 阪谷芳郎
外務大臣子爵 林董
号外
今般統監府官制制定ノ結果勅令第七十三号ニ依ル株式会社第一銀行ノ韓国ニ於ケル業務ハ統監ノ監督ニ属スルコトト相成候ニ付テハ、明治三十八年勅令第七十三号中外務大臣及大蔵大臣又ハ主務大臣トアルハ之ヲ統監ト解釈シ、同第十五条ニアル監理官ハ統監府書記官ヲ以テ之ニ充テ、且監理官要務規程及第一銀行ガ韓国ニ於テ営ム業
- 第16巻 p.233 -ページ画像
務ニ関スル命令書中外務大臣及大蔵大臣トアルヲ尽ク統監ト改メ、第一銀行ニ関スル事務処理順序ヲ廃止スルコトニ決定致候間御了知相成度、尤別紙協定事項ニ基キ必要事項ニ関シテハ統監ヨリ御打合セ又ハ御報告ニ及ビ申スベキハ勿論、第一銀行其他ノ財政ニ関シ御参考トナルベキ書類ノ写ハ之ヲ貴省ニ御送附ニ及ブベク、之ト同時ニ爾来貴省ニ対シ同銀行本店ヨリノ報告書其他財政事項ニ関スル参考書類ハ当府宛御送附相成候様致度此段及照会候也
追而韓国ニ於ケル普通銀行業務ノ監督ニ付テハ別ニ御協議ニ及ブベキ筈ニ有之候
明治三十九年五月二十六日
統監侯爵 伊藤博文
大蔵大臣法学博士阪谷芳郎殿
株式会社第一銀行ノ韓国ニ於ケル業務ノ監督ニ関スル件ニ就キ大蔵大臣トノ協定事項
第一、明治三十八年勅令第七十三号中左ノ事項ニ関シテハ統監ハ予メ大蔵大臣ト打合ヲナスベシ
第四条 第一銀行ノ韓国ニ於テ営ム業務ノ為メ特ニ定メタル資本金額ヲ変更スル場合
第二十条 役員ヲ更任シ認可ヲ取消シ又ハ韓国ニ於テ営ム業務ノ全部又ハ一部ノ停止ヲ命ズル場合
第二、明治三十八年勅令第七十三号中左ノ事項ニ関シ統監ハ之ヲ大蔵大臣ニ報告スベシ
第三条 韓国ニ於ケル第一銀行ノ支店出張所若クハ代理店ノ設置又ハ廃止ノ認可及支店又ハ出張所ノ設置ヲ命ジタル場合
第五条 第一銀行ノ韓国各支店出張所ニ於テ営ムベキ業務ノ種類及方法ニ関シ認可ヲ与ヘタル場合
第九条 第二項、確実ナル証券ヲ保証トシテ銀行券ヲ発行スルニ当リ其準備価格ニ関シ認可シタル場合
第九条 第三項、特ニ指定スル条件ニヨリ銀行券ヲ発行シタル場合
第九条 第四項、銀行券ノ種類及発行高ヲ制限シタル場合
第十条 銀行券ノ様式及種類ニ関シ認可ヲ与ヘタル場合
第十二条 第一銀行ガ韓国政府ト契約ヲ締結シ、又ハ韓国政府ヨリ特許特権ヲ受ケントスルニ当リ認可シタル場合
第十三条及第十六条 第一銀行ノ韓国ニ於ケル各支店出張所及代理店ノ検査ノ結果及第一銀行ヲシテ報告書ヲ差出サシメタル場合
第十四条 第一銀行ガ韓国ニ於テ営ム貸付割引ノ金額及方法又ハ其ノ利子歩合其ノ他為替料等ニ関シ制限ヲ加ヘタル場合
第三、株式会社第一銀行ガ韓国ニ於テ営ム業務ニ関スル命令書中左ノ事項ニ付テハ統監ハ之ヲ大蔵大臣ニ報告スベシ
四、第一銀行ガ韓国事務所ノ業務ノ執行ニ関スル内規其ノ他諸規則類ヲ制定若ハ変更ニ関シ届出ヲナシタル場合
六、韓国貨幣整理・金融其ノ他経済財政上ノ状況ニ付報告書類ヲ提出シタル場合
十、第一銀行ノ銀行券及其ノ発行準備取扱順序ヲ認可シタル場合
- 第16巻 p.234 -ページ画像
二十三《（マヽ）》、第一銀行ガ事務上重大ナル事件ニ関シ申出ヲ為シタル場合
十七、韓国総支店ヨリ計算表ヲ提出シタル場合
○本款明治三十八年五月二十日ノ条（第二六〇頁）参照。