デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

6章 対外事業
1節 韓国
3款 京仁鉄道合資会社
■綱文

第16巻 p.516-523(DK160081k) ページ画像

明治30年1月(1897年)

米国人モールス、大川平三郎ヲ経テ、京釜鉄道発起委員長渋沢栄一ニ対シ、其曩ニ韓国政府ヨリ得タル京仁鉄道敷設権ヲ譲渡セントスル意向ヲ表明ス。仍テ委員等外務省顧問デニソンニ嘱シテ譲受ノ内交渉ヲ開始ス。


■資料

青淵先生公私履歴台帳(DK160081k-0001)
第16巻 p.516 ページ画像

青淵先生公私履歴台帳           (渋沢子爵家所蔵)
  民間略歴(明治二十五年以後)
明治三十年
○中略
一京仁鉄道引受組合ヲ組織シ其委員長トナル
  本組合ハ京釜鉄道発起ノ趣旨ニ等シク善隣ノ扶掖及彼我通商ノ便ヲ進ムル為メ米人「モールス」所有ノ京仁間鉄道布設権ヲ引受ケントスルモノニシテ、我国ノ有力者間ニ勧誘シテ此組合ヲ組織シ委員長トシテ専ラ事ノ成功ニ尽力セシカ、後チ卅二年ニ至リ本鉄道我所有ニ帰スルコトヲ得ルニ至リ即チ合資会社ヲ組織シテ其事業ヲ継続シ、社長トシテ其経営ニ任ス、此鉄道ハ已ニ一部ノ開業ヲ見ルニ至レリ
○中略
  以上明治卅三年五月十日調
○中略
            (後筆)
一京仁鉄道合資会社社長 三十六年十一月解散
○中略
  以上明治三十三年五月十日調


朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編 第一巻・第二〇七―二〇八頁 昭和四年一〇月刊(DK160081k-0002)
第16巻 p.516-517 ページ画像

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京釜鉄道経営回顧録 竹内綱著 第一一―一二頁(DK160081k-0003)
第16巻 p.517 ページ画像

京釜鉄道経営回顧録 竹内綱著  第一一―一二頁
委員等ハ京仁鉄道ノ米国人「モールス」ニ獲得セラレタルヲ遺憾ナリトシ、同氏ノ行動ヲ窺ヒ居リシガ、同氏ノ紐育ニ於テ京仁鉄道敷設資金調達ニ困難セルヲ探知セシ折柄、布哇米国公使「アルピン《(アルヰン)》」ノ二十九年十月我国ニ渡来セシニ当リ、益田孝氏ヲ介シテ委員等ノ京仁鉄道買収ノ希望ヲ「モールス」ニ伝達スルコトヲ依頼シアリシガ、三十年一月外務次官小村寿太郎尾崎ヲ招キ、外務大臣大隈伯ノ内命ヲ伝テ曰ク、「モールス」ヨリ京仁鉄道特許譲渡シノ希望ヲ外務省顧問「デエソン《(デニソン)》」ニ依頼シ来レリ、依ツテ京釜鉄道創立委員ニ於テ譲受ケノ交渉ヲ為シテハ如何ント、尾崎ハ委員会ヲ開キ、譲受ノ交渉ヲ為スニ決シテ、「デエソン《(デニソン)》」ヲ訪ヒ、其交渉ヲ依頼セリ


雨夜譚会談話筆記 上・第一三四―一三七頁 大正一五年一〇月―昭和二年一一月(DK160081k-0004)
第16巻 p.517-518 ページ画像

雨夜譚会談話筆記  上・第一三四―一三七頁 大正一五年一〇月―昭和二年一一月
  第六回 昭和二年四月廿六日 於飛鳥山邸
    鉄道会議と鉄道国有
先生「○中略 日清戦争後、日本は朝鮮に対して大いに威力を増した。従つて朝鮮と暫定条約で以て鉄道の敷設の権利を得た。然るに廿八年三浦梧楼氏が朝鮮の王妃を殺した為めに朝鮮王は甚だしく日本を嫌がるに至つた。それで日本の方から仕事を持ちかけるキツカケがなくなつて居た時、米人ゼームス・モールスが東洋で事業を起さうと渡来し、遂に朝鮮王と鉄道敷設の契約を為し、コールブランをして京城仁川間の鉄道工事を始めさせた処が、モールスとコールブランとの契約がよくなかつたと見へ、廿九年頃になつて工事が進まず困却し、権利を売つてもよいとモールスが大川(平三郎)などに話したから、大川が其事を私の処へ云つて来た。先是私は朝鮮とは暫定条約も出来て居るのに、鉄道を外国人の手で敷設するやうでは困ると、時の外務大臣たる大隈さんに話し、自分等の手でやり度いと、廿九年前島密・大江卓・竹内綱等と此に主唱者となり廿九年冬か三十年に京釜鉄道敷設の願書を出して置いた。
 然るに此鉄道は距離も長く従つて資金も多額を必要とするのであるが、モールスのやつて居る京仁鉄道は短距離で二百万か二百五十万位で出来るものであり、工事も已に始めて居たから、之を京釜鉄道
 - 第16巻 p.518 -ページ画像 
の仲間とは別に、一つのシンヂケートを作つて買収の議を進めた。参加者は三井・岩崎・安田・大倉・今村等で之を大隈さんに話した処結構であると云ふので買収の契約をした。但しモールスの手で工事が半分位は出来て居たから、その金を支払つてやらねばならぬのに、資本が一時に出せない関係上、政府の金を百万円ばかり無利息で借入れて支払ひ、残りは依然モールスの手でコールブランに工事をやらせ完成してから渡すと云ふことにした。当時の私の思案としては、朝鮮の金融と運輸とは日本人の手でやらねばならぬとして居た。処が其後内閣が更迭して伊藤さんの総理で内閣が成立し、井上さんが大蔵大臣になつた。井上さんと私とは前から極く懇意な間柄であつたのに、此の京仁鉄道買収に関しては「政府の資金を融通すると大隈が約束したのは不法である」と云ひ、之を破棄しやうとしたから、私は大蔵大臣官邸に井上さんを訪ねて大議論をやり、遂に「国家には代へられぬ。重大事件を看過しやうとするならば、今後貴方とは交際しない」と云ひ放つた処、井上さんも「交際しなくともよい」と酬い、絶交までにならうとした。其処で私は此事を伊藤さんに話した処、伊藤さんが「まあ怒つてくれるな」と云ひ結局伊藤さんの心配で借りることが出来たのであつた。斯くして政府の援助は受け得たがコールブランの工事が出来ないので、中途から足立太郎をやつて三十三年十一月に完成した。私は完成前三十一年にも渡韓したし、開通式の時にも行つたが、王様の名代も来て大に盛大であつた。誠にこれは波瀾も多かつたが意義ある鉄道であつた。
○下略
  ○第六回雨夜譚会出席者ハ栄一・増田・渡辺・白石・小畑・髙田・岡田。


朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編 第一一―二〇頁 大正四年一〇月刊(DK160081k-0005)
第16巻 p.518-521 ページ画像

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青淵先生六十年史 竜門社編 第二巻・第三三〇―三三五頁 明治三三年六月再版刊(DK160081k-0006)
第16巻 p.521-523 ページ画像

青淵先生六十年史 竜門社編  第二巻・第三三〇―三三五頁 明治三三年六月再版刊
 ○第五十三章 朝鮮事業
    第四節 京仁鉄道
○上略
    朝鮮政府ヨリ米人「モールス」ニ与ヘタル特許約定書訳文写朝鮮国政府ハ左ノ事ヲ宣令シ、且約定ス
 - 第16巻 p.522 -ページ画像 
第一 朝鮮王国京城ヨリ済物浦ニ至ル鉄道ヲ敷設シ及保管スル事、並ニ漢江ニ架橋スルノ権利ヲ下ニ記スル所ノ条款ニ従ヒ、米国人「ゼームス、アール、モールス」及其譲受人ニ許与ス
第二 該鉄道ノ線路及該橋架設ノ場所ハ、一ニ「モールス」若クハ其譲受人ノ選定セル技師ノ測量設計ニ従テ決定スヘシ
 該橋側ノ一方若クハ双方ニ歩行者ノ便ニ供スル為メ歩道ヲ設クヘシ又該橋ニハ船舶通航ノ為メ開闔機ヲ設クルカ、或ハ河上通常ノ航行ヲ妨ケサル丈ノ高サニ之ヲ架設スヘシ
第三 朝鮮政府ハ該鉄道ノ敷設及使用ノ為メ相当ノ幅員ヲ以テ該鉄道ノ全線路ニ要スル土地ノ通路使用権及停車場・倉庫・工場副線(汽車入レ替等ニ要スル)敷地ニ要スル土地ヲ具備スヘシ、而シテ該会社(セームス、アール、モールス及其譲受人)ニ於テ右通路ヲ所有スル間、且朝鮮政府ニ於テ下ニ記スル所ニ従ヒ、該鉄道及其財産ヲ購買ニ因テ所得スル迄ハ、右通路使用権ヲ該会社ヘ貸渡スヘシ
 通路使用権貸渡免許ニ対シ、該鉄道会社ハ朝鮮ノ郵便物及郵便人夫並ニ朝鮮政府ノ兵隊及軍器ハ無賃ニテ運搬スルコトヲ約定ス、朝鮮政府カ購買ニ因テ該鉄道ヲ取得セルトキハ、玆ニ該会社ヘ貸渡シ置キタル土地ハ、悉皆朝鮮政府ヘ還納セシムルモノトス
 該鉄道ノ線路測量ノトキニ当リ、若墓地若クハ墳墓アルトキハ、之ヲ毀損セサル様十分ニ注意スヘシ
 又単純ナル小径ヲ除クノ外、凡テ踏切ニハ必要ナル通路ヲ設置シ、車輛ノ通行スル所ニハ線路ノ平等ナラシメ、且線路ニシテ車輛ノ通行スル大道ヲ横断シ、其上面ヲ通行スルニハ、高キニ過クル場所ヘハ築堤ヲ穿チ隧道ヲ設クヘシ
第四 該鉄道ハ京城・済物浦及漢江ニ各一箇所、及漢江・済物浦間ニハ少ナクモ三箇所ノ停車場ヲ設クヘシ、而シテ江畔ノ停車場ハ馬浦若クハ竜山ニ設置スヘシ
第五 該鉄道ノ敷設装具及運転ニ要スル物件ニシテ、外国ヨリ輸入スルノ必要アルモノハ関税ヲ免除シ、且該鉄道及其財産又ハ其収益ニハ何等ノ税金ヲモ賦課セサルヘシ
第六 該鉄道ニ外国人及内地人ヲ使用スルハ、該会社支配人ノ随意タルヘシ、但可成的内地人ヲ使用スヘシ、殊ニ土工事業ニハ一割以上ノ外国人ヲ使用スヘカラス、尤モ内地労働者ノ賃銀ニシテ外国労働者ノ輸入ヲシテ利益ナラシムル程高価ナル場合ニハ、差懸リタル事業ノ為メ、他国ノ労働者ヲ輸入スルコトヲ得ヘシ、但シ右外国労働者ハ該事業終了ノ上ハ、初メ来リシ所ノ国ヘ、必ス送還スヘキモノトス、依テ之カ為メ右輸入労働者ハ其ノ来着ノトキ、一々税関ニ於テ帳簿ニ記載シ置キ、事業終了ノ上ハ一人タリトモ滞在ヲ許サヽルヘシ
第七 前記ノ営業ニ従事スル為メ、右「ゼームス、アール、モールス」及其譲受人ニ、会社ヲ組織シ必要ナル資本金ヲ募集スルコトヲ許可ス、而シテ該会社ハ該鉄道ノ敷設、所有保管及運転ノ為メ、必要ナル総テノ財産ヲ所有シ、取得シ、移転シ、並ニ契約ヲ結ヒ、該鉄道ヲ使用シ、且一般ノ鉄道会社カ通常執行享有スル総テノ権力ヲ所有
 - 第16巻 p.523 -ページ画像 
スルコトヲ得
第八 該会社ノ元資金ハ右「ゼームス、アール、モールス」及其譲受人ニ於テ之ヲ決定シ、該事業ヲ適当ニ実行スル為メニ必要ナル資本金ヲ作ルヘシ、朝鮮政府ニ於テハ前記ノ通路使用権ニ関スル事項ノ外ハ責任ナキモノトス
第九 該会社ノ組織及事業ノ開始ハ、相当ノ理由ナクシテ之ヲ延期スヘカラス、但如何ナル場合ニ於テモ本令ノ日附ヨリ十二箇月以内ニ之ヲ為スヘシ
 若右期限内ニ開始セサルトキハ、本免許ハ無効タルヘシ、但交戦其他会社ノ力及サル為メ、右期限間ニ事業ヲ開始スルコト能ハサル時ハ、延期ヲ許可スヘシ、又該鉄道敷設事業ハ其開始ヨリ三箇年間ニ成就スヘシ、但シ交戦其他ノ為メ妨ケラレタル場合ニハ、其中止シタル日数ニ均シキ期限ノ延期ヲ許可スヘシ
第十 原因ノ何タルヲ問ハス、若該鉄道会社ト朝鮮政府トノ間ニ葛藤ヲ生シタル場合ニハ、左ノ方法ニヨリ任命サレタル二人乃至五人ノ公平ナル委員ノ裁断ヲ以テ之ヲ決定スヘシ、即チ一人ノ委員ハ朝鮮政府ヨリ之ヲ命シ、該会社ヨリモ亦一人ヲ命スヘシ、而シテ若右両名合意シ能ハサルトキハ、右両名ニ於テ今一人ヲ任命シ、其裁断ヲ以テ決定スヘシ、但同人ニ於テ今両名ノ助力ヲ得ンコトヲ欲スルトキハ、朝鮮政府及該鉄道会社ハ前記三名ト協議スル為メ、更ニ各一人ノ委員ヲ任命スヘシ
第十一 該鉄道落成ヨリ十五箇年ノ後ニ於テ、朝鮮政府ハ該鉄道及其財産ノ全部ヲ当時ノ評価ヲ以テ買収スルコトヲ得、右価ハ第十条ノ規定ニ従ヒ任命シタル委員ニ依テ決定セラルヘシ
 若朝鮮政府ニ於テ、右規定ノ十五箇年経過ノ時ニ当リ、該鉄道ヲ買収シ能ハサル場合ニハ、更ニ十箇年間該会社ニ本免許ヲ与フヘキモノトス
 右十箇年経過ノ後及其後毎十箇年ノ終リニ当テ、之ヲ買収スルハ朝鮮政府ノ随意タルヘシ
第十二 朝鮮政府ハ本免許ノ期限間、若クハ本書ニ記載スル該鉄道会社ニ於テ該鉄道ヲ所有シ居ル間ハ、京城・済物浦ノ両点ヲ連絡スル同様ノ鉄道ニハ免許ヲ与ヘサルコトヲ約定ス
 但本条ハ朝鮮王国ノ他ノ地方ヲ連絡スル他ノ鉄道ニハ関係ナキモノトス
第十三条 本宜令或ハ免許ノ英本文及其ノ条件ハ、公認セラレタル本書ト認ムヘシ、但シ之ニ漢訳文ヲ添附スヘシ
        朝鮮京城ニ於テ
          一千八百九十六年三月二十九日
              外務大臣   李完用印
              農商工部大臣 趙秉稷印
○下略