デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治36年11月1日（1903年）

是ヨリ先、当会社ハ京釜鉄道株式会社ニ合併スルコトヲ政府ニ申請シ許サレ、是日引継ヲ完了シ解散ス。依テ栄一ノ当会社社長タルコトモ止ム。

朝鮮鉄道史　朝鮮総督府鉄道局編　　第一一六―一一八頁　大正四年一〇月刊
○上略
　同月○明治三六年九月二十三日京仁・京釜両社連名ヲ以テ合併ノ認可ヲ申請シ、十月三十日認可ノ指令ニ接セリ
　此ノ如クニシテ京釜鉄道株式会社ハ前年十二月三十一日現在京仁鉄道合資会社資産ニ対シ、六十四万千五百八十円七十六銭ヲ支払フト共ニ、同社ニ属スル政府年賦返納金並ニ諸般ノ権利義務ヲ承継シ、翌日東京ニ於テ引継ヲ終リ、仁川ニ於テハ、翌月四日京仁鉄道仁川事務所支配人杉甲一郎ト京釜鉄道常務取締役日下義雄トノ間ニ実地ノ引継ヲ為シ、従事員ハ十一月一日ヨリ京釜鉄道株式会社ニ引継カレ、玆ニ京仁鉄道ハ京釜鉄道株式会社京仁線ト称スルニ至レリ
京釜所属後ニ於ケル京仁線ノ経理ニ関スル十月三十日附政府ノ命令ハ下ノ事項ヲ規定セリ
　一京仁線ニ関スル会計ハ京釜線ノ分ト区別シ、特別会計ト為スヘキコト
　一一般収入金ヲ以テ京仁線ニ関スル年賦納付金及ヒ社債・借入金ノ元利其ノ他債務ノ支払ニ充当シタル場合ニ於テ、之カ為メ京釜鉄道会社ノ利益年六分ノ割合ニ達セサルコトアルモ、之ニ対シテハ明治三十三年九月二十七日附命令書ニ規定スル補給利子ヲ下付セサルコト
 - 第16巻 p.576 -ページ画像 
　一京仁線ニ要スル資本・社債及ヒ借入金ニ対シテハ、前項命令書ノ補給利子ヲ下付セサルコト
　一京仁線ヨリ生スル収益金ヲ以テ、年賦納付金及ヒ社債・借入金ノ元利ヲ支払ヒ、尚残余アルトキハ年賦納付金及ヒ社債・借入金元利支払ノ準備トシテ、相当ノ特別積立金ヲ為スヘキコト、但シ其ノ割合ハ政府之ヲ指定ス
　一京仁線ヨリ生スル収益金ハ、前項ノ金額ヲ控除シタル後ニ非サレハ、之ヲ一般株主ニ配当スルヲ得サルコト
上記ノ命令ニ依リ京釜鉄道会社ハ京仁線所属興業費及ヒ営業収支ノ会計ヲ京釜線ト全ク区別シテ特別会計ト為シ、従来京仁鉄道ニ行ハレタル営業規程ニ依リ、引続キ営業ヲ継続セリ
○下略

渋沢栄一　日記　明治三六年　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
十一月二日　晴
午前八時起床朝飧ヲ畢リ、十時三井銀行ニ抵リ、益田孝ヲ訪レシモ逢ハス、十一時事務所ニ抵リ、京釜鉄道・京仁鉄道合併ノ事ニ関スル書類ヲ調査シ○下略

京釜鉄道経営概要　　　　　　　　　　　　　（竹内広氏所蔵）
　　　　京仁支線
○上略　支線ノ計理ハ別途会計トナシ、政府ヘノ年賦返納金及合資会社ヘノ支払ヒニ要シタル別途借入金ノ元利償却ハ、運輸営業ヨリ生スル利益金ヲ以テ之ニ充ツルノ方法ヲ設ケタリ
支線運輸営業ノ一千九百二年ヨリ一千九百四年前半期ニ至ル毎半期間ノ一哩一日ニ対スル平均収入ヲ示セハ左ノ如シ

　　　期間　　　　　　　　一哩一日収入
　千九百二年前半期　　　　　二二、四五
　同　　　　後半期　　　　　二三、五三
　千九百三年前半期　　　　　二六、六二
　同　　　　後半期　　　　　三二、一〇
　千九百四年前半期　　　　　四九、一七