デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第18巻 p.190-209(DK180019k) ページ画像

明治17年8月28日(1884年)

是日栄一当会会頭トシテ銅貨流通高ノ過多ナルニ鑑ミ、旧銅貨中天保銭ノ引上ヲ実施サレタキ旨大蔵卿松方正義ニ建議ス。十月二日採可セラル。


■資料

東京商工会議事要件録 第六号・第三八―五七頁 明治一七年九月二二日刊(DK180019k-0001)
第18巻 p.190-195 ページ画像

東京商工会議事要件録  第六号・第三八―五七頁 明治一七年九月二二日刊
  第三定式会
         (明治十七年八月二十二日午後五時四十分開会)
  第六臨時会
    会員出席スル者 ○六十二名
○上略
次ニ会長 ○渋沢栄一ハ是ヨリ銅貨流通ノ儀ニ付銀行集会所ヨリ照会ノ件ヲ議スベキ旨ヲ告ケ、書記ヲシテ其文案ヲ朗読セシメ、且ツ参考ノ為メ銀行集会所ヨリ送附シタル銅貨鋳造高明細書(大蔵省調査)各地銅貨流通ノ実況取調書(銀行集会所調査)ヲ朗読セシム

昨年来銅貨ノ流通高増加致シ取引上不便相生シ候哉ノ趣大蔵卿閣下御
 - 第18巻 p.191 -ページ画像 
聞込相成、本年五月中当集会所委員第一国立銀行頭取渋沢栄一ヘ親シク御諮詢有之候ニ付、当集会所同盟銀行評議ノ上全国要地ノ同業者ヘ其景況取調方ヲ照会シ彼是審案ノ上、別紙ノ通リ復申可致相考候得共当府下全般ニモ相関シ候義ニ付一応御照会申上候間、貴会ニ於テ御見込モ有之候ハヾ早々御回答相成度、此段御照会申上候也
  明治十七年八月十六日        銀行集会所
  東京商工会々頭
    渋沢栄一殿
    銅貨流通ノ景況御諮詢ニ付復申
昨年来銅貨ノ流通増加致シ取引上不便ヲ生ジ候場合モ有之ヤノ趣御聞込相成候ニ付、実際ノ景況取調申報可仕様本年五月中当集会所委員第一国立銀行頭取渋沢栄一エ親シク御諮詢有之候間、同盟銀行再三評議ノ上全国要地ノ同業者ヘ照会致シ、各地流通ノ景況詳細取調候処種々ノ申越モ有之候得共、之ヲ大別仕候得バ左ノ三項ニ帰着致候
 第一 供給超過ニシテ紙幣ニ対シ一円ニ付七八厘ヨリ二銭内外迄ノ打歩ヲ要スルモノ三十九ケ所
 第二 供給増加スト雖トモ未ダ打歩ヲ要スルニ至ラザルモノ十三ケ所
 第三 供給適度ヲ得ルモノ十七ケ所
右ノ状況ニ拠リ観察仕候得ハ銅貨供給ノ度已ニ相過候ハ疑フベカラザル事実ニシテ、又其原因ヲ推究仕候得バ独リ近年銅貨御発行高ノ相増シ候為ノミニモ無之、別ニ一因有之候様相考申候、右ハ明治十二三年ノ頃ヨリ紙幣ノ価格低下スルニ当リ、都鄙一般細民等ハ金銀貨ニ連レテ銅貨ヲ蓄蔵スルノ念慮相生シ候ヨリ其流通日々減省致シ、十三四年ノ頃ニ及ンデハ全国処トシテ銅貨ノ欠乏ヲ告ゲザルモノ無之様ニ立至リ随テ其御発行相増シ候処、昨年以来紙幣ノ価格大ニ旧ニ復シ候ヨリ銅貨蓄蔵ノ念モ稍々消除致シ候折柄、頻年ノ不景気ニ苦ミ候細民等ハ一旦蓄蔵セシ銅貨ヲ以テ一切ノ支出ニ供シ候為メ俄ニ其供給ヲ増シ終ニ其授受ノ際或ハ打歩ヲ出シテ取引致シ候様相成、彼是相待テ此景況ニ趣キ候事ト思惟仕候、右ニ付当集会所ニ於テ審按仕候ニハ、今日斯ノ如ク銅貨ヲ厭忌致シ候ハ啻ニ其数ノ多キガ為ノミニ在ラズシテ、新旧相混ジ共ニ流通致シ候ヨリ其銅貨ヲ所持致シ候者ハ勉メテ之ヲ仕払ハンコトヲ欲シ、其受取人ハ可成丈之ヲ避ケ互ニ相拒ミ候モノト奉存候、抑モ旧銅貨ハ其品質モ精シカラズ、到底精良ナル貨幣中ニ久シク流通スベキモノニアラザルハ申上候迄モ無之ニ付、旁以テ方今ノ場合ニ於テハ旧銅貨ノ流通ヲ廃止セラレ且ツ相当ノ方法ヲ以テ御引上相成候ハヽ、新銅貨ノ流通自ラ活動ヲ生シ其厭忌ノ念慮ハ忽チ消滅致シ適度ノ取引ニ帰シ可申ト奉存候、尤モ各地方ノ中ニハ現ニ目下供給適度ノ趣申出モ有之候ニ付、旧銅貨御引上ケ相成候ハヽ右等ノ土地ハ或ハ銅貨不足ヲ告ケ候様可相成ト被存候間、御引上ノ旧銅貨ハ御改鋳ノ上更ニ其不足ノ地方ヘ御発行相成候ハヽ、全国流通適度ヲ得可申ト奉存候、此段復申仕候也
  明治十七年八月            銀行集会所委員
    大蔵卿 松方正義殿
 - 第18巻 p.192 -ページ画像 
  ○自造幣局創業至明治十七年三月
    新銅貨鋳造高
一 九百八拾九万〇五百〇九円七拾三銭
        内
   二銭銅貨 五百三拾八万千百九拾一円八拾二銭
   一銭銅貨 三百二拾六万四千八百拾五円二拾一銭
   半銭銅貨 百二拾一万二千〇拾八円四拾九銭
   一厘銅貨 三万二千四百八拾四円二拾一銭
    旧銅貨鋳造高
一 五百四拾万〇二千百二拾四円拾九銭五厘
     内
   八厘銭  三百七拾三万八千六百八拾四円八拾八銭三厘
     外
    拾三万九千七百四拾七円
    五拾四銭九厘          造幣局ヘ輸入高
   二厘銭  二拾七万六千二百五拾五円五拾八銭二厘
     外
    三万八千五百九拾五円拾三銭八厘 前同断
   一厘五毛銭 百二拾九万三千百三拾七円四拾四銭七厘
     外
    四万四千百三拾六円       前同断
   一厘銭 九万四千〇四拾六円二拾八銭三厘
     外
   百四拾二万〇二百円   造幣局ヘ輸入高不詳 一厘五毛銭ニ改鋳
   六拾万円        旧暮府ニテ外国ヘ渡シタル分
新旧銅貨現今発行高
  総計千五百二拾九万二千六百三拾三円九拾二銭五厘
 ○銅貨流通ノ景況
   供給超過            三十九ケ所
東京 古賀 千葉 土浦 高須 山梨 仙台 弘前 長岡 富山 金沢 彦根 大津 小浜
大垣 岐阜 名古屋 津 大坂 和歌山 明石 姫路 柳川 中津 高知 大分 大橋 佐伯
松山 川ノ石 高松 平戸 小城 広嶋 馬関 久留米 熊本 出石 鹿児島
   供給増加            十三ケ所
栃木 若松 函館 酒田 一ノ関 福井 桑名 浜松 京都 郡山 鳥取 津和野 徳嶋
   供給適度            十七ケ所
前橋 上田 八王子 館林 川越 山形 米沢 三春 鶴ケ岡 新発田 大聖寺 高田 亀山 尾ノ道 梁川 長浜 飯田
  通計               六十九ケ所
   内
  供給超過            三十九ケ所
  同 増加            十三ケ所
  同 適度            十七ケ所
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会長曰ク、此照会ニ対シ回荅ヲ要スルハ勿論ノ儀ニシテ猶本会ニ於テモ其要旨ヲ賛成スル上ハ或ハ更ニ其筋ヘ建議スルモ可ナリ、然レトモ今先ツ第一ニ観察スベキハ当府下実際ノ現況如何ト云フニ在レバ、各員先ツ此意ヲ諒シテ充分所見ヲ陳述セラレタシ
六十四番(宮崎佐平)曰ク、当府下ニ於テモ目下銅貨ノ供給超過ノ為メ取引上ノ不便不少ニ付、余ハ大ニ銀行集会所ガ復申ノ要旨ヲ賛成ス
百九番(青木庄太郎)曰ク、余モ亦之ヲ賛成ス
九十八番(吉田幸作)曰ク、目下新銅貨中五厘・一厘ノ小貨ニ至リテハ其供給極メテ少キ所ナリ、然ルニ今銀行集会所ガ復申スル如ク一時悉皆旧銅貨ヲ引上ゲラルヽノ時ハ或ハ之ガ為メ小貨欠乏ノ不便ヲ生ズル事ナキヲ保セズ、現ニ質屋ノ如キハ常ニ小貨ヲ要スル商売ナレバ之ガ為メ大ニ其不便ヲ感ズルニ至ラン、抑モ本件ハ頗ル重大ノ問題ナルニ付諸君ニ於テモ此辺ニ就キ充分考案ヲ尽サレン事ヲ望ム
九十九番(浅野彦兵衛)曰ク、質屋ハ元来小貨ヲ要スル商売ニシテ平時ト雖トモ常ニ両替屋ニ就テ小貨ヲ買入レザルヲ得ザルニ付、小貨払底ナル時ニ際シテハ其困難特ニ甚シキモノアリ、故ニ二厘以下ノ旧銅貨ニ至リテハ其引上方ヲ見合ハセラレン事ヲ切望ス
会長曰ク、今仮ニ銀行集会所委員ノ地位ニ立テ其決議ノ次第ヲ略陳センニ、同所ニ於テハ初メ八厘銭丈ノ引上ケヲ要スルノ説ナリシガ中頃ニ至リ総テ旧銅貨ノ引上ケヲ要スル事ニ決シタルナリ、而シテ小貨ノ実際取引上ニ必要ナル事ハ固ヨリ当局者ニ於テ注意セラルヽ所ナレバ、既ニ旧銅貨ヲ引上ケテ改鋳セラレタシト望ム以上ハ敢テ其細目ヲ指陳スルニ及ハズトノ見込ナリ、是即チ同所ガ本案ノ通リ草定シタル所以ナリ
七十四番(鳥海清左衛門)曰ク、余ハ八厘銭丈ノ引上ヲ望ム
九十七番(笠井庄兵衛)曰ク、一厘新貨ノ如キハ其形微小ニ過ギ却テ算数ノ不便アレバ余モ亦八厘銭丈ノ引上ヲ望ム
百七番(田中重兵衛)六十八番(南川福蔵)共ニ之ヲ賛成ス
六十三番(柿沼谷蔵)曰ク、余モ亦八厘銭丈ノ引上ヲ望ム、而シテ余ハ其上更ニ二厘五毛小貨ノ新鋳ヲ建議セン事ヲ望ム
五十九番(益田孝)曰ク、元来大貨ハ小貨ニ比シテ多分ノ鋳造費ヲ要スルモノナレバ今只銅貨流通ノ減縮ヲ要望スル丈ニテハ或ハ小貨ノミヲ引上ケラルヽ事モアランカ、尤旧銅貨ハ醜悪ノ貨幣ニシテ之ガ流通ヲ廃止セラルヽ事ハ甚ダ望ム所ナレトモ、二厘以下ノ小貨ニ至リテハ現ニ取引上ノ便利ヲ幇助スル不少ニ付今一時之ガ流通ヲ廃止セラルヽ時ハ其不便ハ或ハ今日銅貨供給増加ノ為メ感受スル所ノ不便ヨリ更ニ甚シキモノアラン、故ニ今本会ガ建議書ヲ上呈スルニ当リテハ政府ハ先ツ二銭銅貨ヲ引上ケラレ而シテ旧銅貨ノ如キハ追テ新小貨ヲ鋳造セラレ、其準備ノ完キヲ待テ更ニ之ヲ引上ケラレタキ旨ヲ以テスベシ
会長曰ク、各員大体ニ於テハ皆銀行集会所ノ意見ヲ賛成スルモノヽ如シ、猶外ニ意見アラバ陳述セラレヨ
 - 第18巻 p.194 -ページ画像 
十六番(益田克徳)曰ク、銀行集会所ノ調査ニヨレバ今日全国供給ノ増加ハ既ニ蔽フベカラザルノ事実ナリ、然ルニ銀行集会所ガ復申スル所ヲ見ルニ只旧銅貨ノ改鋳ヲ要スルトノミアリテ其流通ノ減縮ヲ切望セザルモノヽ如シ、故ニ今本会ヨリ建議スルニハ一層減縮ヲ望ムノ意味ヲ強メン事ヲ要ス
会長曰ク、今仮ニ銀行集会所委員ノ地位ニ立テ本案ノ主旨ヲ弁明セン只今十六番ハ銀行集会所ニ於テハ流通ノ減縮ヲ要望セザルガ如ク述ベタレトモ本案中啻ニ其数ノ多キガ為メノミニアラズシテ云々ト記スルヲ見レバ其流通ノ減縮ヲ望ムヤ甚ダ明カナリ、而シテ其細目ニ就テ詳ニ指陳セザルモノハ此等ノ諸点ニ関シテハ当局者ニ於テ固ヨリ充分注意アルベキヲ必期シタレバナリ、然レトモ右ハ畢竟銀行集会所一個ノ私見ニ止マレバ今本会ニ於テ之ヲ建議スルニ当リテハ更ニ衆議ノ上細目ヲ指陳スルニ決スルモ亦固ヨリ妨アラザルナリ
九十八番(吉田幸作)曰ク、銅貨ノ流通ヲ減縮スルノ一条ニ於テハ固ヨリ異見アラズト雖トモ一時旧銅貨ヲ悉皆引上グベシト云フニ至リテハ直ニ之ヲ賛成シ難シ
四十番(隅山尚徳)曰ク、抑モ銀行集会所ガ復申スベク云々ノ旨ヲ以テ本会ヘ照会シタルハ本会ノ協賛ヲ得テ然シテ後ニ之ヲ復申スルノ意ナルヤ如何ン
会長曰ク、復申スベク云々トハ復申スル積リト云フニ過ギズシテ要スルニ只本会ノ注意ヲ促シタル迄ナリ、必ズシモ本会ノ協和ヲ得テ然シテ後ニ之ヲ復申スルノ意ニアラザルナリ
八十四番(荘田平五郎)曰ク、銀行集会所ノ照会ニ対シテハ過刻五十九番及十六番ガ陳述シタル趣旨ヲ以テ回答スベシ、而シテ既ニ銀行集会所ヨリ之ヲ復申スルモノトセバ別ニ本会ヨリ建議スルニハ及バザルヘシ
会長曰ク、銀行集会所ノ照会ニ対シテ本会ノ意見ヲ回荅スベキハ勿論ナリ、依テ此上ハ右回荅ノ外本会ヨリ更ニ建議スベキヤ否ヲ議決シタシ
五十九番(益田孝)曰ク、銀行集会所ノ意見ト本会ノ意見トハ其要旨全ク同一ナリト雖トモ、其細目ニ至リテハ大ニ感覚ヲ異ニスルモノナキニアラズ、殊ニ本件ノ如キハ大ニ府下全般ニ関係スルモノニシテ銀行集会所ノ照会ヲ待テ審議スベキモノニアラズ、故ニ此際本会ニ於テハ別ニ之ヲ建議セン事ヲ要ス、而シテ其建議書中ニハ当府下困難ノ現況ヲ極言シテ御参考ニ供スルハ勿論、過刻九十八番ノ陳述シタルガ如ク二厘以下ノ小貨ヲ一時ニ引上グル時ハ其困難更ニ甚シキノ恐アルベキヲ以テ、新旧ニ拘ラズ目下供給最モ多キモノヲ引上ケ、二厘以下ノ旧銅貨ノ如キハ追テ新小貨ヲ鋳造セラレ其準備完キヲ待テ之ヲ引上ケラレタキ旨ヲ縷述シ、以テ一層其要旨ヲ明瞭ニスベシ
三十八番(中村利兵衛)七番(甲田卯三郎)五十六番(荒尾邦寛)共ニ之ヲ賛成ス
於是会長ハ議論ヤヽ尽キタルヲ以テ先ツ建議説ニ起立ヲ命ジタルニ殆
 - 第18巻 p.195 -ページ画像 
ド総起立ナルニ付、猶衆議ヲ経テ銀行集会所ヘノ回荅案及大蔵卿ヘノ建議案ヲ調査セシメン為メ左ノ七名ヲ委員ニ指名シタリ
             十六番   益田克徳
             四十三番  梅浦精一
             九十八番  吉田幸作
             四十番   隅山尚徳
             十三番   岩橋静彦
             九十九番  浅野彦兵衛
             六十四番  宮崎佐平
時ニ五十九番(益田孝)ヨリ銅質供給超過《(貨)》ノ困難ハ目下甚ダ切迫ノ勢ニ付、更ニ臨時会ヲ開ク迄モナク立案ハ総テ委員ニ全任シ、片時モ早ク之ヲ進達スベシトノ発議アリシカ此説満場ノ総賛成ヲ得終ニ前記ノ委員ハ打措カズ集会シテ草案ヲ定メ直チニ之ヲ進達スベキニ決ス、於是会長ハ本日ノ議事完結シタル旨ヲ告ケ一同ニ散会ヲ命ズ、時ニ午後八時ナリ
 (前記七名ノ委員ハ同月二十五日集会シテ各其草案ヲ議定シタルニ付銀行集会所ヘノ回荅書ハ同月二十七日附ヲ以テ之ヲ発附シ、大蔵卿閣下ヘノ建議書ハ同二十八日附ヲ以テ之ヲ進達シタリ、依テ其全文ハ共ニ本号ノ参考部ニ附ス)


東京商工会議事要件録 第六号・第六五―七二頁 明治一七年九月二二日刊(DK180019k-0002)
第18巻 p.195-197 ページ画像

東京商工会議事要件録  第六号・第六五―七二頁 明治一七年九月二二日刊
 ○参考部
    ○(銀行集会所ヘノ回荅)
銅貨流通高増加ノ義ニ関シ過般大蔵卿閣下ヨリ貴所委員ヘ御諮詢有之候ニ付、今般貴所ニ於テ全国要地ノ実況御取調ノ上其御審案ノ件々同卿閣下ヘ御復申可相成旨本月十六日附ヲ以テ其草案相添御照会之趣拝承仕候、依テ本会ニ於テハ去廿二日臨時会ヲ開キ篤ト致審議候処、当府下ニ於テモ昨年来銅貨ノ供給超過ノ為メ目下各商人一般ニ不便相感居候折柄ニ付、右流通高減縮ノ一条ハ至極御賛成申上候得共猶本会ニ於テハ其方法ニ就キ聊カ外ニ見ル所モ有之候ニ付、更ニ別紙ノ通リ大蔵卿閣下ニ建議仕候事ニ議決致シ、不日捧呈ノ手筈ニ御座候間左様御承知相成度候、此段御回答候也
                  東京商工会々頭
  明治十七年八月廿七日          渋沢栄一
    銀行集会所
        御中
  (大蔵卿閣下ヘノ建議書ハ其全文ヲ左ニ掲クルヲ以テ之ヲ略ス)
    ○銅貨流通高減縮ヲ要スル義ニ付建議
昨年来市場大ニ銅貨ノ供給ヲ増加シ、当府下ニ於テモ各商人一般ニ不便相感居候ニ付、此際相当ノ救護法御施設相成度本会ニ於テ窃ニ希望罷在候折柄、今般銀行集会所ニ於テ兼テ閣下ノ御垂問ニ対シ全国要地ニ於ケル銅貨流通ノ実況ヲ精査シ、其審案ノ次第復申致候趣ニ付、本会ニ於テハ去廿二日特ニ臨時会ヲ開キ篤ト遂審議候処、当府下ニ於テモ昨年来銅貨ノ供給次第ニ超過シ、之ヲ厭忌スルノ情念最モ甚シク今
 - 第18巻 p.196 -ページ画像 
日ニ於テハ現ニ之ヲ紙幣ト交換スルニ当リテハ弐銭及壱銭ノ新銅貨ハ一円ニ付弐銭内外ノ打歩ヲ要シ、殊ニ八厘旧銅貨ノ如キハ弐銭八厘以上ノ打歩ヲ要スルノ情況ニシテ之ガ為メ取引上ノ不便実ニ名状スベカラザルモノ有之、尤右銅貨ハ補助貨幣ナルニ付一円以上ノ支払ハ之ヲ拒ミ得ルノ御制度ニハ御座候得共、実際ニ於テハ此御制度ニ拠ル事能ハザルノ場合不少、例ヘバ買主ガ一円以上ノ代金ヲ銅貨ニテ売主ニ仕払フニ当リ、売主若シ之ヲ拒ム時ハ故意ニ其仕払ヲ延期スル等ノ事アルヲ以テ此等ノ場合ニ於テハ勢不得已之ヲ受取ラサル事ヲ得ズ、況ンヤ小売商ノ如キ其小口ノ売物ニ対シテハ固ヨリ一円以下ノ端銭ヲ受取ルベキ筈ニシテ、其高増加スルニ随ヒ之ヲ以テ問屋若クハ仲買ニ係ル大口ノ仕払ニ供スル時ニ当リテハ不得已前記ノ打歩ヲ差出サヽルヲ得ズ、其情況如此ナルヲ以テ若シ此儘放任シテ厭忌ノ情念益々増長スルニ於テハ打歩ヲ生スルノ度モ亦甚シク、終ニ一商品ニシテ常ニ二様ノ価格ヲ附セサルヲ得サルノ場合ニ立至リ可申ト奉存候、右ハ目今当府下ノ実況ニシテ其困難ハ現ニ会員一同ノ親シク感受スル所ニ有之候ニ付、本会ニ於テハ銀行集会所ガ復申ノ要旨大ニ賛成仕候間、何卒此際速ニ銅貨ノ流通ヲ適当ノ度迄御減縮相成度切望仕候
既ニ銅貨ノ供給其度ヲ超過セシモノトシテ其救護法御施設被成候ニハ先以旧銅貨ヲ御引上可相成哉ト奉恐察候、抑モ旧銅貨ノ義ハ其品質極メテ雑駁ニシテ到底純良ナル貨幣中ニ永ク流通スヘカラサルハ申上候迄モ無之ニ付、右御引上相成候義ハ本会ニ於テ夙ニ切望スル所ニ御座候得共、其実施ノ方法ニ関シテハ聊カ見ル所モ有之候間卑見ノ次第左ニ開陳仕候、今造幣局御創業以来本年三月ニ至ル迄御鋳造ニ係ル新銅貨ノ内訳ヲ観察仕候ニ、合計九百八拾九万〇五百〇九円七拾三銭ニシテ其内弐銭銅貨五百三拾八万千百九十一円八十弐銭、壱銭銅貨三百弐拾六万四千八百拾五円二拾壱銭、半銭銅貨百弐拾壱万弐千〇拾八円四拾九銭、壱厘銅貨三万弐千四百八拾四円弐拾壱銭ナレバ試ニ壱銭以上ノ銅貨ヲ以テ半銭以下ノモノニ対比仕候時ハ其高凡ソ七ト一トノ割合ニシテ、殊ニ壱厘銅貨ノ如キハ其高僅ニ全額千分ノ三ニ過キス、然ルニ従来市場ノ取引ニハ小貨ヲ必要トスルノ場合最モ多ク、随テ目今旧銅貨中弐厘以下ノ小貨ニ至リテハ実際右新小貨ノ不足ヲ補ヒ大ニ取引上ノ便利ヲ幇助致居候義ニ付、若シ一時悉皆旧銅貨ヲ御引上相成候時ハ之ガ為メ市場小貨ノ欠乏ヲ来タシ、其極終ニハ今日銅貨供給超過ノ為メ相生シ候ヨリハ更ニ一層甚シキ困難相生シ可申奉存候、尤八厘銭ノ如キハ其形体粗大ニシテ授受ノ間不便不少、之ヲ交換スルニ当リテモ殊ニ多分ノ打歩ヲ要スル事、前陳ノ如クニ御座候ヘバ、先ツ差向八厘銭ヲ御引上相成、二厘以下ノ小貨ニ至リテハ追テ五厘以下ノ新貨御鋳造ノ上其準備ノ完キヲ待テ徐々ニ御引上相成度切望仕候、蓋シ右等ノ件々ハ固ヨリ厚ク御注意可被為在義ニ付、改メテ申上候迄モ無之候得共聊カ御参考迄玆ニ副陳仕候義ニ御座候
以上陳述ノ趣旨果シテ御採択相成候ニ於テハ向後銅貨ノ流通自ラ活動ヲ生シ、其厭忌ノ情念忽チ消滅シ啻ニ市場取引上ノ便利ヲ進捗仕候ノミナラズ貨幣御制度上一層ノ光輝ヲ相添可申義ト奉存候、依テ此段建議仕候也
 - 第18巻 p.197 -ページ画像 
  明治十七年八月廿八日     東京商工会々頭
                     渋沢栄一
    大蔵卿 松方正義殿
   ○本資料第六巻「東京銀行集会所」明治十七年八月十五日ノ条(第七八頁)参照。


東京商工会議事要件録 第七号・第三―四頁 明治一七年一〇月一五日刊(DK180019k-0003)
第18巻 p.197 ページ画像

東京商工会議事要件録  第七号・第三―四頁 明治一七年一〇月一五日刊
  第七臨時会 (明治十七年九月廿二日午後六時三十分開会)
    会員出席スル者 ○五十名
○上略
会長 ○渋沢栄一ハ本議ヲ開クニ先チテ左ノ二件ヲ報告ス
○中略
○銅貨流通高減縮ヲ要スル儀ニ付大蔵卿閣下ヘ建議ノ件
  本件ハ去月二十二日臨時会ノ議決ニ従ヒ、調査委員ニ於テ其草案ヲ調成シ同月二十八日附ヲ以テ之ヲ大蔵卿閣下ヘ進達シタルモノナリ、即チ会長ハ其手続ノ大要ヲ報告シ且ツ其全文ハ要件録第六号ノ参考部ニ附スルヲ以テ、右ニ就キ之ヲ知悉セラレタキ旨ヲ陳述ス
○下略


東京商工会議事要件録 第九号・第一九―三〇頁 明治一八年三月一四日刊(DK180019k-0004)
第18巻 p.197-198 ページ画像

東京商工会議事要件録  第九号・第一九―三〇頁 明治一八年三月一四日刊
  第五定式会 (明治十八年二月廿七日午後四時三十分開会)
    会員出席スル者 ○七十一名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ明治十七年下半期定式事務ノ成跡ヲ報告ス、即チ左ノ如シ
  自明治十七年七月至同十二月 半季間事務ノ報告
○中略
    政府ヘ建議   一件
○銅貨流通高減縮ヲ要スル義ニ付農商務省ヘ建議
  本件ハ銀行集会所ノ照会ニ起因ス、即チ明治十七年八月十六日銀行集会所ハ銅貨流通ニ関スル大蔵卿閣下ノ諮問ニ対シ、今般報答書ヲ上呈スルニ付一応本会ノ意見ヲ詳知シタキ旨ヲ以テ、其報答書案並ニ同集会所カ調査シタル全国要地ニ於ケル銅貨流通ノ現況等ヲ詳具シテ之ヲ本会ヘ送附シタリ、依テ八月二十二日第六臨時会ニ於テ之ヲ審議シタルニ衆議ノ末、目下銅貨ノ供給増加ノ為メ当府下ニ於テモ一般不便ヲ感スルノ折抦ニ付之ヲ減縮スルノ要旨ハ全ク同集会所ト同見ナレトモ、其方法ニ就テハ外ニ見ル所ナキニ非ザレバ本会ニ於テハ別ニ其意見ヲ大蔵卿閣下ニ建議スベシト云フニ決シ、而シテ其建議案並ニ同集会所ヘノ回答案ハ委員ヲ撰ンテ之ヲ調査セシムベシト云フニ決シタルニ付、会長ハ左ノ七名ノ委員ヲ指名シタリ
             十三番   岩橋静彦
             十六番   益田克徳
 - 第18巻 p.198 -ページ画像 
             四十番   隅山尚徳
             四十三番  梅浦精一
             六十四番  宮崎佐平
             九十八番  吉田幸作
             九十九番  浅野彦兵衛
  此等ノ委員ハ其後八月廿五日集会ヲ開キ建議案並ニ回答案ヲ草シ建議書ハ同月廿八日附ヲ以テ之ヲ大蔵省ニ進達シ回答書ハ同月廿七日附ヲ以テ之ヲ銀行集会所ニ送達シタリ


東京商工会議事要件録 第二三号・第三〇―三六頁 明治二〇年三月二二日刊(DK180019k-0005)
第18巻 p.198 ページ画像

東京商工会議事要件録  第二三号・第三〇―三六頁 明治二〇年三月二二日刊
  第十二定式会 (明治二十年二月廿六日午後四時三十分開会)
    会員出席スル者 ○五十六名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ是迄本会ヨリ諸官衙ヘ建議又ハ復申シタル事項ニ就キ特別ニ其成跡ヲ報告ス
    ○東京商工会建議又ハ復申事項ノ成跡
明治十六年十一月本会創立以来今日ニ至ルマデ各官署ヘ建議又ハ復申シタル事項中、其筋ニ於テ既ニ本会ノ意見ヲ採用セラレタルモノ又ハ現今特ニ審査中ノモノハ左ノ如シ
○中略
○銅貨流通高減縮ヲ要スル義ニ付大蔵卿ヘ建議
  明治十七年八月十六日銀行集会所ヨリ銅貨流通ニ関シ大蔵卿閣下ノ諮問ニ答申スルニ付、一応本会ノ意見ヲ承知シ度旨申越シタルガ、銅貨流通高ヲ減縮スルノ一条ハ本会ニ於テモ同意スル所ニ付同年八月廿七日《(八)》、左ノ趣旨ヲ以テ本会ヨリ更ニ同卿閣下ヘ建議シタリ
   近来市場銅貨ノ供給超過シ当業者ノ不便不少ニ付銅貨ノ流通高ヲ適当ノ度迄減縮セラレタシ、但シ銅貨ノ流通高ヲ減縮セラルルニハ先ヅ旧銅貨ヲ引上ゲラレン事ヲ望ムト雖トモ、旧銅貨ノ中二厘以下ノ小貨ハ現ニ新小貨ノ不足ヲ補ヒ頗ル便利アルモノニ付、此分ハ追テ五厘以下新小貨ノ鋳造ヲ待テ追々引上グルモノトシ、差向キ八厘ノ旧銅貨(所謂天保銭)ヲ引上ゲラレタシ云々
  然ルニ其後其筋ニ於テハ此建議ノ趣旨ヲ採可セラレ、同年十月二日太政官第二十六号ヲ以テ左ノ布告ヲ発セラレタリ
   ○太政官布告第二十六号
   旧銅貨天保通宝来ル明治十九年十二月限通用ヲ禁止ス
   右奉 勅旨布告候事
    明治十七年十月二日   太政大臣 三条実美
                大蔵卿 松方正義
○下略


東京経済雑誌 第二二九号・第二八四―二八五頁 明治一七年八月三〇日 ○東京商工会(DK180019k-0006)
第18巻 p.198-199 ページ画像

東京経済雑誌  第二二九号・第二八四―二八五頁 明治一七年八月三〇日
   ○東京商工会
 - 第18巻 p.199 -ページ画像 
同会ハ去る廿二日定式会及臨時会を開き ○中略 此程銀行集会所より照会ありし銅貨流通高減縮の件を審議せられたるに、目下銅貨の供給饒多なるは都鄙一般の実況なれバ其の流通額を減縮するは銀行集会所と希望を同じくすれ共、其減縮法の細目に至てハ少しく同意し難きが故に別に同会よりも其筋へ建議書を呈出するに決したり、今其銀行集会所と東京商工会とが互に意見を異にする処を掲げんに、銀行集会所は凡て旧銅貨を引上げ更に改鋳して新銅貨となし供給不足なる地方に之を散布せば給需相応じて打歩を生ぜざるに至るべしと云ひ、東京商工会は旧銅貨を引上ぐるは素より同意なれども今俄かに凡ての旧銅貨を引上ぐるは不同意なり、其故は現時小取引に必要なる銭以下の小貨幣は旧貨に多くして新貨に少きが故に、今若し凡ての旧銅貨を引上げらるるに於てハ小貨幣を要する商賈の困難は現時銅貨の多きが為めに受くる困難に譲らざるべければなり、故に本会にてハ当分天保銭のみを引上げ、更に政府より銭以下の小貨幣を発行せられたる上にて徐々に旧銅貨の一二厘銭等を引上げられんことを希望すと云ふに在るが如し、然らば一は其希望簡単にして而して一は稍々精密なるの差異あるのみ其旧銅貨を減縮せよと云ふに至てハ彼是共に同じきが如し



〔参考〕東京日日新聞 第三八〇五号 明治一七年八月一四日 ○銭相場(DK180019k-0007)
第18巻 p.199 ページ画像

東京日日新聞  第三八〇五号 明治一七年八月一四日
○銭相場  大坂にてハ昨今銅貨が益々下落して、両替仲間取引新銅貨一円歩打二銭八厘より三銭五厘、素人売二銭乃至三銭、天保銭一円に付百三十枚乃至百三十四五枚、到底ハ百四十枚まで下落するなるべし、と通信の端に見ゆ



〔参考〕東京日日新聞 第三八一五号 明治一七年八月二六日 ○銅貨の多きに苦む(DK180019k-0008)
第18巻 p.199 ページ画像

東京日日新聞  第三八一五号 明治一七年八月二六日
○銅貨の多きに苦む  上方地方にて近来銀貨大に市場に出で、或ハ芸娼妓を身受するに銅貨を掛替にし、数万円の借金に銅貨を持附け債主を苦しむる等種々の奇談あるが、斯る勢にて市民も銅貨の多きに困難するに至りたれバ、出納局大阪出張所にて之を同府下両替局の望に応じ、紙幣ハ銅貨の交換を許されしが、右の勢なるを以て当分の中銅貨の交換を差止められたりと云ふ



〔参考〕新聞集成明治編年史 第五巻・第五一七頁 昭和一〇年八月刊(DK180019k-0009)
第18巻 p.199-200 ページ画像

新聞集成 明治編年史  第五巻・第五一七頁 昭和一〇年八月刊
  大阪は銅貨満腹病
    ツリ銭の要る人がお客様といふ訳
〔九、一四 ○明治一七年日本立憲政党〕銅貨の釣銭 ○目今京阪間は如何なる取引にも銅貨夥多なるに困しむ際なるが、一昨日大坂の某氏は京都に赴かんと梅田停車場に到り、切符を購はんとて十円の紙幣を出したるに、売下所にては其の上等切符代を引去り残る八円余の釣銭を皆な銅貨にて渡されたれば、某氏は大いに当惑し、只さへあるに旅行の際斯く荷嵩の銅貨を渡されては迷惑なり、紙幣に交換ありたしと請はれたるに夫は成らぬとて承知せず、殆んど困じ果て拠ろなく近傍の知る家に就き、別に二円の紙幣を借入れこれにて更に切符を買ひ忙しき思ひをなして京都に赴かれしと云ふ。官司の金銭授受に銅貨を受渡しする
 - 第18巻 p.200 -ページ画像 
には其制限ある様に聞きしが、此は何かの誤などにてありしにや。



〔参考〕明治財政史 同史編纂会編 第一一巻・第四九七―五二八頁 昭和二年九月再版刊(DK180019k-0010)
第18巻 p.200-209 ページ画像

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