デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
2款 東京商工会
■綱文

第18巻 p.210-234(DK180020k) ページ画像

明治17年9月26日(1884年)

是ヨリ先、本年二月一日大蔵卿松方正義ハ手形取引ノ拡充ニ付キ当会ニ諮問スル所アリ、仍テ是日栄一当会会頭トシテ復申ス。


■資料

東京商工会議事要件録 第二号・第五―六一頁 明治一七年三月一三日刊(DK180020k-0001)
第18巻 p.210-218 ページ画像

東京商工会議事要件録  第二号・第五―六一頁 明治一七年三月一三日刊
  第二臨時会
       (明治十七年二月十七日午後一時三十分開会)
  第一定式会
    会員出席スル者 ○八十名
会長 ○渋沢栄一曰ク、本日ハ先ツ臨時会ヲ開キ昨十六年十二月二十七日農商務卿閣下ヨリ諮問セラレタル三件及本月一日大蔵卿閣下ヨリ諮問セラレタル手形取引ノ件ヲ議定シ、続テ規程ニ由リテ定式会ヲ開クヘシ
○中略
会長ハ是ヨリ第一号議案ヲ議スベキ筈ナレトモ議事ノ都合ニヨリ先ヅ第二号議案ヨリ始ムヘキ旨ヲ告ゲ、書記ヲシテ之ヲ朗読セシム
第二号議案
 手形取引ノ商業社会ニ便益ヲ与フルハ特ニ縷述ヲ要セスト雖トモ従来我国商賈ノ慣習トシテ物品ノ売買ニ専ラ現金ノ取引ヲナシ或ハ掛売等ヲナス者アルモ、手形ヲ以テ通貨ノ代表トナシ資本ヲ倍蓰スルノ道ニ乏シク随テ往々資本ノ欠乏ヲ致スヲ免カレス、是政府ノ手形条例ヲ頒布シ併セテ当省ヨリ手形書式ヲ告示シ頼テ以テ一般商賈ヲシヲ《(テ)》其便益ヲ得セシメントスル所以ナリ、然レトモ目下ノ商況ヲ察スルニ物価低落商業振ハサルヲ以テ、銀行其他皆資本ヲ庫中ニ委積シ之ヲ運転スルノ道ナキニ苦ムノ情況ニシテ今日ニ在テハ或ハ手形ノ必要ヲ感セサリシカ如キモノアリ、然レトモ一旦商況恢復シテ金融逼迫ヲ告クルノ日ニ至ラハ市場一般資本ノ補充ニ汲々タル可キハ必然ニシテ、其之ヲ救護スルノ策蓋シ手形ノ取引ヲ盛ニシ割引ノ方法ヲ拡ムルヨリ近キハナシ、商賈固ヨリ手形ノ便益ヲ知ラザルニアラズ、只之ヲ実際ニ使用スルノ方法ヲ審カニセズ或ハ其手続ニ慣熟セザルガ為メ其便益ニ拠ルヲ得サルモノ無シト云ヒ難シ、因テ其会ニ於テ之ヲ将来ニ拡充スルノ道ヲ講究シ其実際ニ適用スルノ方法ヲ熟議シ荅申可致、此旨及下問候也
  明治十七年二月一日
                  大蔵卿 松方正義
  東京商工会会頭
    渋沢栄一殿
右終テ会長ハ更ニ議案ノ趣旨ヲ説明シテ曰ク、手形取引ノ商業社会ヲ利シ資本ノ運用ヲ補理スルハ敢テ呶々ヲ要セズト云トモ、現今我商業社会ニ於テ未ダ其取引ノ広ク行ハレザルモノハ、蓋シ我邦ノ商売《(賈)》ハ多ク現金取引ニ依リテ手形ヲ使用スルニ慣熟セザルガ為メニシテ今日ノ欠典亦是レヨリ大ナルモノナシ、是レ曩ニ政府ガ手形条例ヲ頒布セラ
 - 第18巻 p.211 -ページ画像 
レ今又大蔵卿閣下ガ本案ヲ諮問セラレタル所以ナラン歟、余ヤ銀行業ニ従事スル事玆ニ多年、其実際運用ノ方法ニ至リテハ聊カ経験スル所アルヲ以テ、今此議事ヲ開クニ当リテ先ヅ其手形ノ性質及取扱手続等ヲ略陳シテ以テ諸君ノ参考ニ供セント欲ス
 商業社会ニ於テ運用スベキ手形其種類固ヨリ一ニシテ足ラズト云トモ、之ヲ大別スレバ為換手形・約束手形ノ二種トス、則チ甲ヨリ乙ニ対シ受取ルベキ金員ノ仕払ヲ請求スル為メ振出スモノ之ヲ為換手形ト云ヒ、又負債主其仕払ヲ約定スルモノ之ヲ約束手形ト云フ、而シテ此等ノ手形其仕払期日前銀行若クハ其他資本主ニ就キ期日迄ノ打歩ヲ仕払裏書ノ手続ヲ為シテ手形面ノ金額ヲ領収スル時ハ之ヲ割引手形ト称ス、蓋シ手形ハ此割引法アルヲ以テ殊ニ其利用ヲ達スルモノト云フモ敢テ不可ナキナリ、今玆ニ二三ノ実例ヲ掲ゲテ以テ其取扱ノ順序ヲ明示セン
    為換手形
第一例
 東京太物問屋ヨリ仙台ノ太物商ヘ木綿五百反ヲ六十日目払ノ約束ヲ以テ売渡ストキハ左ノ如キ手形ヲ作リ、其地方ニ取引アル銀行ニ持参シ当日ヨリ日限迄ノ利足ヲ仕払其金額ヲ受取ル事ヲ得ベシ、然ル時ハ其銀行ハ期日前ニ其手形ヲ仙台ヘ送リ、其支店又ハ取引店ヨリシテ手形ノ名宛人即チ仙台ノ太物商ニ就テ期日ニ至リ其金額ヲ取立ツルモノトス
(隔地ニ係ル為換手形ノ例之レヲ府外為換手形ト云フ)

図表を画像で表示--

 番号            為換手形 一金ヽヽヽヽ円也 右金額何年何月何日(某銀行)又ハ同人指図人ヘ此手形引換ニ御支払可被成候也             住所番地        年月日   東京太物問屋 姓名 [img図]印           仙台            太物商姓名殿 



第二例
 府下ニ於テ砂糖問屋(甲)ヨリ小売商(乙)ヘ赤砂糖百俵ヲ六十日目払ノ約束ヲ以テ売渡シタル時ハ、甲ヨリ乙ヘ宛テタル第一例ノ為換手形ヲ作リ、銀行ニ持参シ前同様ノ振合ヲ以テ利足ヲ仕払ヒ其金額ヲ受取ル事ヲ得ベシ
(同府内ニテ取扱フ為換手形ノ例之レヲ府内為換手形ト云フ)
第三例
 東京ノ製紙会社(甲)ヨリ大阪ノ某新聞社(乙)ヘ洋紙三百連ヲ三十日目払ノ約束ニテ売渡シタル時ハ、即チ又甲ヨリ乙ヘ宛テタル第一例ノ為換手形ヲ作リ、之ヲ銀行ニ持参シテ割引ヲ請ヒ其金額ヲ受取ル事ヲ得ベシ
(製造会社ヨリ振出ス為換手形ノ例)
 - 第18巻 p.212 -ページ画像 
第四例
 玆ニ三軒ノ紙問屋アリ、甲ハ乙ヨリ三十日目払ノ約束ヲ以テ半紙百丸ヲ買入レタル時ニ当リ、同シ日限ニ丙ヨリ受取ルベキ金員アル時ハ甲ヨリ丙ニ宛テタル為換手形ヲ以テ(第一例為換手形ノ文面中某銀行トアル処ヲ乙某殿ト記入シ)之ヲ乙ヘ交付スベシ、乙ニ於テ若シ金員入用ノ事アレバ其手形ニ裏書シテ(約束手形第一例ノ如ク)銀行ニ持参シテ金額ヲ受取ル事ヲ得ベシ
(同商業間ニ於テ振出ス為替手形ノ例)
    約束手形


図表を画像で表示約束手形 表

  表 番号        約束手形 一金ヽヽヽヽ円也 右金額何年何月何日貴殿又ハ貴殿ノ指図人ヘ此手形引換ニ無相違支払可申候也       住所番地 年月日    甲ノ綿問屋 姓名 [img図]印       住所番地        乙ノ綿問屋姓名殿 



 裏  表面之金額某銀行又ハ同行指図人ヘ御支払可被下候也
     年月日  乙ノ綿問屋 姓名 
第一例
 府下ニ於テ甲ノ綿問屋ガ乙ノ綿問屋ヨリ繰綿五百俵ヲ三十日目払ノ約束ヲ以テ買入レタル時ハ、左ノ如キ手形ヲ作リ乙ヘ交付スベシ、乙(即売主)モシ金員入用アレバ左 ○上掲ノ手形ノ裏面ニ掲クルガ如ク其手形ニ裏書ヲ為シ、銀行ニ持参シテ当日ヨリ日限迄ノ利足ヲ仕払其金額ヲ受取ル事ヲ得ベシ、然ル時ハ期日ニ至リ其銀行ニ於テ甲ヨリ手形金額ヲ取立ツル事為換手形第一例ノ如シ
(商業間ニ於テ振出ス約束手形ノ例)

 右ノ如ク売買トモニ手形ニ由リテ其代金ヲ決算シ其取入スル金ハ都テ銀行ヘ当坐預金トナシ、而シテ仕払フベキモノアル毎ニ小切手ヲ以テ之ヲ仕払フモノトセハ、第一金銀紙幣鑑定ノ労ヲ省キ其資本ニ倍蓰スルノ物品ヲ売買スルヲ得ベシ、依テ今手形取引ニ就テ生スル便益ヲ挙クレバ大略左ノ如シ
第一商業上ノ取引ニ手形ヲ使用スルトキハ資本ノ増加セルト同一ノ結果アリ
 例ヘハ或ル商家ガ他ノ問屋ヨリ物品ヲ買入ルヽニ当リ現金取引ニ於テハ現ニ手許ニ貨幣ヲ所持スルニ非レバ買入ル能ハズト雖トモ、手形取引ニ於テハ約束手形(約束手形第一例)ヲ振出シ之ヲ以テ品物ヲ買入ル事ヲ得ベシ、故ニ信用アル商家ハ其資本ニ数倍セル商業ヲ行フ事難カラス、是レ手形取引ノ利益アル一ナリ
第二貸売商売ニ於テハ其売主資金ノ入用アルモ約束期限ニ至ラサレバ
 - 第18巻 p.213 -ページ画像 
其代金ヲ取立ル事ヲ得ズト雖トモ、手形取引ニ於テハ之ヲ利用スルヲ以テ資本ニ欠乏ヲ生セズ
 例ヘバ製造家ヨリ問屋ヘ物品ヲ積送ルトキハ直ニ為換手形(為替手形第三例)ヲ振出シ、割引ヲ以テ其金額ヲ受取リ引続キ原質物ヲ買入レ製造ニ従事スルヲ得ヘク、又問屋ニ於テハ其物品ヲ仲買若クハ小売商ニ売捌キ之ニ宛テヽ為換手形(為替手形第一例)ヲ振出シ、銀行ニ至リテ割引ヲ為シ其金額ヲ当坐預ケト為シ置キ製造家ヨリ振向ケラレタル手形ノ仕払ニ充ツルヲ得ヘク、或ハ他ノ仕払ニ使用スルヲ得ベシ、此ノ如クナレバ製造家モ問屋モ資本ニ窮乏スル事ナク小売商モ亦物品ノ売上代金ヲ以テ問屋ヨリ振出サレタル手形ノ仕払ニ充ルヲ得ベシ、是レ手形取引ノ利益アル二ナリ
第三現金取引ハ勿論貸売商売ト云ヘトモ自店ニ於テ其仕払ヲ要弁スヘキニ付常ニ貨幣ヲ備ヘ置カサルヲ得ズ、然レトモ手形取引ヲ以テスルトキハ貨幣ヲ銀行ニ預ケ置キ其出納ヲ銀行ニ委托スルヲ以テ通貨ヲ鑑定シ且計算スルノ労ヲ省キ、火災盗難ノ患ナク、随テ費用ヲ減スルヲ得ベシ
 手形取引ニ於テハ敢テ現金ヲ備ヘ置クヲ要セサルナリ、即チ品物ヲ買入レント欲セハ約束手形ヲ振出シ売懸ケ代金ヲ取立ント欲セハ為替手形ヲ発行シ、而シテ仕払フベキモノハ都テ当坐小切手ヲ用フルニ付入ルモノモ出ルモノモ都テ銀行ニ集リ貸金モ負債モ銀行ノ帳簿中ニテ決済スルヲ得ベシ、故ニ商家ハ自ラ現金ヲ取扱フ事ナク少人数ニテ巨大ノ営業ヲ為スヲ得ベシ、是レ手形取引ノ利益アル三ナリ
右ノ如キ利益アリテ而シテ一方ニハ金利ヲ低下ナラシムルノ傾向アリ何トナレハ若シ世上ノ商家一般ニ手形取引ヲ行フニ至ラハ商家ノ売上代金ハ悉ク銀行ノ当坐預ケトナリ、仕払フベキモノハ小切手ヲ以テ銀行ニ其金ヲ仕払ハシム故ニ、割引手形期限ニ至リ甲(名宛人)ヨリ小切手ヲ以テ其仕払ヲ為スモ、其金ハ乙(振出人若クハ裏書人)ヨリ入金トナルニ付銀行ニ於テハ甲ノ勘定ヨリ引出シテ乙ノ勘定ヘ入金シ唯帳面上ノ振替ヲ為スニ過キズ、若シ又甲ハ第一銀行ノ得意先ニシテ乙ハ第二銀行ノ得意先ナルモ、第一銀行ヨリ第二銀行ヘ其金額ヲ仕払フ迄ニシテ詰リ銀行総体ノ金ハ減少セザルガ如シ、已ニ斯ノ如クナレバ銀行ノ庫中自ヲ余財アルニ付、随テ金利ヲ低下ナラシムルニ至ルベシ是ニ由テ之ヲ観レバ手形取引ノ商業社会ヲ利シ資本ノ運用ヲ補理スル重且大ナリト云フベシ、然ルニ今日未ダ其盛行ヲ見ザルモノハ前陳ノ如ク全ク我国商賈ガ其手続ニ慣熟セサルニ依ル者トス、故ニ今商業社会ニ於テ其利用ヲ達センニハ其実際運用ノ方法ヲ研究セズンバアル可カラズ、是余ガ本案ヲ説明スルニ当リ玆ニ二三ノ実例ヲ挙ケテ以テ諸君ノ高聴ヲ煩ハシ、又以諸君ト共ニ之ヲ将来ニ拡充スルノ道ヲ講究セント欲スル所ナリ
百三番(阿部幸助)曰ク、只今会長ノ説明ニ依リテ充分了解セリ、抑モ手形取引ノ便アル今更ニ呶々ヲ要セズ、現ニ本員ノ如キモ銀行ト当坐預金ヲ約定シ手形取引ノ最モ便利アルヲ知ル者ナリ、蓋シ手形取引ノ行ハルヽト否トハ専ラ信用ノ如何ニ関スルヲ以テ、只其便利ヲ知テ之ヲ実行セントスルモ或ハ直ニ其効ヲ見ザル事アラ
 - 第18巻 p.214 -ページ画像 
ン、是レ余ガ私ニ懸念スル所ナリ
二十番(大倉喜八郎)曰ク、謹デ大蔵卿閣下ノ御諮問書ヲ案ズルニ其主意蓋シ荅申ヲ望マルヽニ非ズシテ専ラ手形取引ノ実行ヲ勧誘セラルヽモノヽ如シ、左レバ本件ニ就テハ先ヅ会員各々其組合ヲ誘導シテ凡ソ五六ケ月間之ヲ実行シ、然ル上ニテ我輩ノ実試シタル成跡ヲ復申シテハ如何
九十九番(浅野彦兵衛)曰ク、手形取引実ニ利アリト雖トモ亦其弊ナキ能ハザルヘシ、現ニ銀行ヘ当坐預金ヲ為ス者其約定金高ニ超過シタル手形ヲ振出ス等ノ弊アリト聞ク、若シ此取引盛ニ行ハルヽニ至ラバ此弊随テ増進スル事ナキカ
会長曰ク、蓋シ此等ハ実際免カレ難キ弊ナラン、然レトモ凡ソ事業ノ何タルヲ問ハズ利アルモノハ亦必ズ之ニ伴フノ弊アリ、例ヘバ馬ニ駿足ノ便アルモ時ニ墜落ノ恐ナシトセズ、船ニ運送ノ利アルモ亦覆没ノ患ヲ免カレズ、若シ只其弊ヲ恐レテ其利ヲ顧ミザル時ハ事業終ニ起ルノ期ナケン、故ニ苟クモ事業ヲ興サントスル者先ヅ能ク利弊ノ在ル所ヲ察シ利益ヲ企図スルノ際併テ弊害ヲ防グノ用意ナカルベカラズ、今小切手ノ取引盛ニ行ハルヽニ至ラバ其間或ハ預書ニ超過スル小切手ヲ振出スノ弊生ズル事アラン、然レトモモシ其ノ弊起ラバ又此弊ヲ鎮滅スルノ道アラン、而シテ手形取引ノ如キモ授受ノ際能ク手形ノ正否ヲ鑑識スルヲ勉メハ又其弊害ヲ防グヲ得ンカ
六十三番柿(沼谷蔵)二十三番(森本順三郎)五十七番(榎本小兵衛)等二十番ヲ賛成ス
五十九番(益田孝)曰ク、我邦商人間ニ未ダ手形取引ノ十分ニ行ハレザルモノハ実ニ信用ノ成立タザルニ依ルモノナラン、現ニ銀行ト雖トモ其手続ニ慣熟セザルモノアリト云ヘハ其他推シテ知ルベキナリ、然ルニ今旧慣ヲ破リテ直ニ之ヲ実行セシメントス、実ニ難シト云フベシ、今熟々之ヲ実行セシムルノ方法ヲ案スルニ先ヅ銀行ヲシテ得意先ヲ誘導セシムルニ若カザルナリ、夫レ今日府下ノ商人手形ノ便ヲ知ラザルニ非ズト雖トモ、其銀行ヘ割引ヲ請フニ当リ偶々謝絶セラレン事ヲ恐レテ逡巡躊躇スルノ情状アリ、銀行仲間ト雖トモ亦此情状ナシトセズ、是レ実際ニ於テ手形取引ノ進歩ヲ渋滞スルノ一原因ナルベシ、故ニ府下ニ於テ外国ノ「ビルブローカル」(手形仲買人)ノ例ニ傚テ仲買人ヲ置キ、各銀行ト商人間ニ周旋セシムルトキハ庶幾クバ大ニ手形取引ノ進歩ヲ幇助スル事アランカ
四十三番(梅浦精一)曰ク、只今銀行ヲシテ誘導セシムヘシトノ説アリタレトモ、手形取引ヲ拡充スルニハ先ヅ会員可成銀行ト取引ヲ開キ、自ラ之ヲ実行スルノ責ニ当ラン事ヲ要ス、且ツ五十九番ノ「ビルブローカル」ノ説甚ダ可ナリ、既ニ均融会社ノ如キハ曩ニ営業ノ組織ヲ改ムルノ議アリ、現今其定款ノ改正出願中ナリト云フ、而シテ其改正ノ主意ヲ挙グレバ自ラ「ビルブローカル」ノ地位ニ立テ各銀行及商人ノ間ニ手形流通ノ道ヲ開キ以テ大ニ金融ヲ疏通セントスルニ在リ、若シ此改正行ハルヽニ至ラバ手形取引ノ
 - 第18巻 p.215 -ページ画像 
進歩ヲ幇助スル少々ナラズト信ズルナリ
三番(平野富二)曰ク、手形ノ行ハルヽト否トハ実ニ信用ノ如何ニ関スルナリ、故ニ今手形取引ヲ拡充セントスルニハ独リ民間ノ商賈ノミニ止マラズ政府ニ於テモ可成営業者ノ信用ヲ保護セラレン事ヲ要ス、従来政府ガ民間ノ工業者ニ物品ノ製造ヲ注文セラルヽニ当リ該製造者ガ其注文書ヲ銀行ニ示シテ資金ヲ借ラントスル事アランニ常ニ之ヲ謝絶セラルヽ事多シト云ヘリ、是レ実ニ政府ガ注文ノ際代価ノ仕払ヲ明約セラレザルガ為メニシテ工業者ノ困難実ニ知ルベキナリ、故ニ如此場合ニ於テハ政府ハ注文ノ物品某月某日ニ完成スルトキハ直ニ代価ヲ仕払フベシト云フノ意ヲ以テ注文書ニ裏書セラレン事ヲ要ス、然ルトキハ工業者ニ於テハ随時銀行ニ向テ割引スルノ道ヲ得自ラ手形取引ノ進歩ヲ幇助スル事アルベシ、聞ク欧米ニ於テハ信用大ニ行ハレ只某器械ハ某機械師ノ絵図ニ依リテ製作シタルモノナリト云フノ一事ヲ以テ之ニ多分ノ資本ヲ貸ス者アリ、故ニ工業者ガ機械師ヲ雇入ルヽニ当リテハ皆競フテ名声アル者ヲ撰ブト云フ、然ルニ我邦ニ於テハ信用行ハレズ月給四百弗ノ機械師モ二十円ノ機械師モ此一点ニ於テハ格別ノ差違アラズ、是ヲ以テ手広ク事業ヲ経営スル者ハ常ニ多分ノ損耗ヲ受クルノ傾向アリ是レ余ガ深ク遺憾トスル所ナリ、若シ前陳ノ希望幸ニシテ達スルヲ得バ工業上ノ進歩ヲ助クル亦少ナカラザルベシ
五十九番(益田孝)曰ク、手形取引ノ拡充ヲ期スルニハ先ヅ東京ト地方ノ間ニ於テ盛ニ荷為換ヲ行ハシムルニ若カズ、蓋シ是迄各地ノ商賈ガ荷為換ヲ取組ムニ当リ其打歩ノ高キヲ厭フテ通常為換ニ組換フル者少ナカラズト云ヘバ、今此方法ヲ実施スルニ当リテハ其間幾分ノ改良ヲ要スル事モアラン歟、試ニ問フ、現今各地ニ行ハルヽ荷為換ノ手続ハ如何
会長曰ク、各地ニテ取組ム荷為換ノ中其金高最モ多キモノハ生糸ナリトス、而シテ福島・前橋・信州・甲州等ノ産地ニ於テ取組ムモノハ其運送ノ方法確実ナラザルガ為メ荷物ヲ挙ゲテ銀行ヘ托スルノ例多ク、即チ外国ノ為換法ト其趣ヲ異ニスルモノナリ、数年前ニ於テハ其一日ノ打歩百円ニ付拾銭以上ニ達シタル事モアリシト雖トモ、現今ニ於テハ決シテ斯ノ如キ事ナシ、例ヘバ前橋ノ如キハ期限七日ニシテ両三年前迄百円ニ付七十銭ナリシガ今ハ通例三拾五銭位ナリ、又福島ノ如キハ期限十日ニシテ両三年前迄ハ日歩壱円弐拾銭ナリシガ今ハ大抵六拾五銭位ナリ、但シ荷物横浜ヘ到着シテ約定日限ヲ過グル場合ニ於テハ更ニ其割合ヲ高クスル事アリ又メレンス・金巾等ノ引取物ヲ横浜ヨリ大坂・名古屋等ヘ運送スル場合ニ於テハ運送ノ方法確実ナルヲ以テ荷物ヲ銀行ヘ托スル事ナシ、各産地ヨリ運送スル米ハ生糸ト取組法同ジト雖トモ只米ノ場合ニ於テハ運送会社ノ引換切符ヲ用フルノ差異アリ、日歩ハ稀ニ百円ニ付一日分五銭位ノ事アレトモ通常ハ四銭位ノ事多シ
五十八番(川原英次郎)曰ク、我業体ニ於テ地方荷主ト取引スルニ当リ其身柄ヲ詳知セザルモ、一二度現金取引ヲ果スニ及ンデハ貸売スルノ例ニシテ之ガ為メ往々延滞ノ弊ヲ免カレザル事アリ、如斯
 - 第18巻 p.216 -ページ画像 
場合ニ於テ総テ手形ヲ以テ其貸借ヲ決済スルトキハ稍々其取引ヲ確実ニスルヲ得ベシ
六十三番(柿沼谷蔵)曰ク、我業体ニ於テハ仕入荷ハ総テ現金ヲ以テ支払ヒ、売荷ハ九分貸シ売ニシテ一分ハ現金払ナリ、故ニ商売ノ掛引ヨリハ寧ロ売先ノ身柄ヲ鑑識スルヲ以テ肝要ナリトス、而シテ従来各得意先ニ対シテハ手形ノ取引ヲ開キタル事ナシト雖トモ現ニ正金銀行及第二国立銀行トハ手形ノ取引ヲ開キ頗ル其便利ヲ感ジタリ
五十九番(益田孝)曰ク、現今各地ニ行ハルヽ荷為換ハ総テ手形条例ニ定ムル所ノ手続ニ因ルカ如何
会長曰ク、然リ、荷為換手形ニ添証書ヲ附シ且其手形ニ裏書ヲ為ストキハ即チ売渡スベキ性質トナリ稍々流通ヲ助ケ得ベシト雖トモ、今日迄ノ慣習ニ依レバ其支払期限普通為換手形ノ如ク長カラザルヲ以テ未ダ充分其利用ヲ達スル能ハズ、現ニ日本銀行ハ我々銀行者ガ此荷為替手形ノ再割引ヲ望ム者アラバ之ニ応ズベシトノ忠告モアリタレトモ、只其支払期限短縮ノ為メ其便ヲ得ル事能ハザルノミ、偖手形取引ノ進歩ニ形ト実ノ二様アリ、形ノ進歩トハ何ゾヤ、借用証文ヲ約束手形ニ振替フル事是ナリ、実ノ進歩トハ何ゾヤ、我国商賈ノ間ニ約束取引ノ慣習ヲ養成スル事是ナリ、而シテ形ノ進歩ハ各国立銀行同盟シテ之ヲ企図シ、若シ信用ノ成立セザル取引間ニ於テハ、約束手形ノ外更ニ支払保証品ヲ添付セシムルモノトセバ稍々其目的ヲ達スルヲ得ンカ、然レトモ従来我国商賈間ニハ支払ノ日限ヲ軽視スルノ慣習存スルヲ以テ、仮令借用証文ヲ約束手形ニ振替ユルヲ得ルモ以テ満足ノ結果ト為ス可ラズ、故ニ今真誠ニ手形取引ヲ進歩セシムルニハ到底約束取引ノ慣習ヲ養成スルニ若カザルナリ
八十二番(山中隣之助)曰ク、本案ノ如キハ特ニ大蔵卿閣下ノ御下問ヲ待タズ本会自ラ其実施ノ方法ヲ講究スベキモノナリ、従来ノ貸借法ヲ見ルニ頗ル煩雑ノ手数ヲ要スルモノアリ、貸附ノ際ニ於テハ数多ノ保証人ヲ要シ、違約ノ際ニハ数回談判ノ末遂ニ治安裁判所ニ出訴シテ判決ヲ乞ヒ、原被ノ一方ニ於テ其判決ニ不服ナルトキハ尚控訴裁判所ニ訴フル等、徒ニ幾多ノ歳月ヲ浪費スルノミナラズ其煩累挙ゲテ言フ可ラザルモノアリ、今若シ為換手形若クバ約束手形ノ取引ヲ盛ニスルニ至ラバ手形条例ニモアル如ク、連帯保証ノ義務アルガ故ニ時間ヲ浪費セズ煩累ノ手数ヲ要セズ商業ノ機関漸ク円滑ナルヲ得ン、而シテ手形取引ヲ拡充セントスルニハ会長ノ陳述セラレタルガ如ク形実共ニ其進歩ヲ期セザル可ラズ、而シテ形ノ進歩ハ銀行其責ニ任ジ、実ノ進歩ハ本会自ラ其責ニ任ズベシ、本会々員ハ現ニ百名以上ニシテ皆多分ノ取引ヲ為ス者ナリ、故ニ各員其組合員ニ謀リテ可成手形取引ノ習慣ヲ養成スルトキハ大ニ其進歩ヲ助クルヲ得ンカ
百三番(阿部幸助)曰ク、手形取引ノ行ハルヽト否トハ実ニ信用ノ厚薄ニ関スルモノナレバ先ヅ同業者中共立銀行ノ如キモノヲ設置シ各自ノ信用ヲ養成スルヲ要ス、然ルトキハ手形取引自ラ行ハルヽ
 - 第18巻 p.217 -ページ画像 
ニ至ランカ
四十五番(渡辺治右衛門)曰ク、余ガ業体ニ於テモ過刻六十三番ノ述ベラレタルガ如ク売荷ハ通常貸売トナルモノ多ク手形ハ一切使用セザルノ慣習ナリ、是等ハ追々誘導シテ之ヲ使用セシムルノ外ナシ
会長曰ク、此御諮問書ノ主意ハ畢竟手形取《(引脱)》ノ実行ヲ望マルヽニ在レバ其進歩ノ事実最モ肝要ニシテ、之ニ対スル荅申ノ遅速ハ左迄大切ナル事ニ非ズ、故ニ荅申書ハ暫ク他日ニ譲リ先ヅ本会ニ於テハ実地之ヲ拡充スルノ道ヲ講ズルヲ要ス、依テ本案ニ就テハ先ヅ会員各々其組合ニ謀リ手順方法ヲ取調テ之ヲ本会ニ寄送スル事トシ、又府下各国立銀行ニ向テモ其意見ヲ問合ハスル事トシ、追テ此等ノ書類纏リタル後彼此ヲ参照シテ猶充分精細ノ手続ヲ議シテハ如何
五十九番(益田孝)曰ク、会長ノ考案至極可ナリ、本会々員ハ数十名ノ代議者ナルヲ以テ各々其組合ヘ相談スルトキハ自ラ妙案ノ起ル事アラン
六十四番(宮崎佐平)曰ク、既ニ我ガ組合ニ於テハ仲間中ニ手形ヲ流用シ、大阪荷主ニ対シテモ手形ヲ受授スル事アリ、但シ手形取引ノ専ラ信用ニ関スル為メ未ダ充分ノ好結果ヲ呈スルヲ得ズ、聞ク大阪ニ於テハ手形交換所アリテ大ニ手形取引ノ進歩ヲ幇助セリト若シ東京ニ於テモ如斯交換所ヲ設置スルトキハ大ニ手形取引ヲ勧奨スルニ便アランカ
八十二番(山中隣之助)曰ク、大阪ハ従来我国ニ於テ手形取引ノ最モ盛ニ行ハルヽノ土地ニシテ、随テ各商ノ間信用充分ニ成立セルヲ以テ一片ノ手形能ク巨万ノ通貨ヲ代表スルト云フ、但シ大阪ニ手形交換所アリト雖トモ、是レ只国立銀行ノ手形ヲ交換スルニ止マリテ其他ニ及バザルナリ、只今六十四番ノ説ニ対シ諸君ノ惑ヲ抱カレン事ヲ恐レ敢テ玆ニ一言ス
二十番(大倉喜八郎)曰ク、会長ノ考案至極可ナリ、但シ借用証文ヲ約束手形ニ振替ユル場合ニ当リ、其仕払期限ヲ三ケ月若クハ二ケ月トスルモ振出人ノ都合ニ依リ中途ニ於テ其手形金額ヲ仕払ハン事ヲ要スル場合ニ於テハ、其打歩ハ矢張其日数ニ応シテ仕払フモノトシ、最前取組ノ際払ヒ置キタル打歩ノ全高ノ内ヨリ之ヲ引去リ、残リ打歩ハ銀行ヨリ返戻セラレン事ヲ要ス、然ルトキハ大ニ手形取引ノ進歩ヲ助成スル事アラン、此等ニ就テハ猶府下同盟銀行ニ於テ充分協議ヲ遂ゲラレン事ヲ希望ス
四十三番(梅浦精一)曰ク、元来手形ノ取引ハ専ラ信用ニ関スルモノナレバ今銀行ト取引ヲ開カザル者ガ手形取引ヲ実施セントスルニ当リ其謝絶セラレンコトヲ恐レテ逡巡スル者最モ多シ、故ニ此手形取引ヲ拡充セントスルニハ、本会々員タル者可成銀行ト取引ヲ開キ信用ノ成立ヲ期スルヲ以テ第一着歩トスヘシ、現ニ欧洲ニ於テ手形ノ盛ニ行ハルヽモ銀行ト商賈ノ関係頗ル親密ナルニ由ルト云ヘリ、然ラバ各員銀行ト勘定ヲ開クハ豈手形取引ヲ盛ニスルノ良策ニ非ズヤ
 - 第18巻 p.218 -ページ画像 
七十四番(鳥海清左衛門)四十三番ヲ賛成ス
七番(甲田卯三郎)曰ク、此手形取引ヲ実行セントスルニ当リ銀行ノ謝絶ヲ恐ルヽ者多シ、故ニ先ヅ五十九番ノ説ノ如ク仲買人ノ方法ヲ以テ取引ノ便ヲ開クベシ、而シテ又二十番ノ説ノ如ク会員各々其組合員ヘ誘導セン事ヲ要ス
六十四番(宮崎佐平)曰ク、此手形取引ノ件ニ関シテハ本会々員タル者自ラ誘導ノ責ニ任ズベシ、若シ実際施行ノ手続ニ於テ不明ノ廉アラバ本会ヘ問合ハスルモ可ナリ
十六番(益田克徳)曰ク、只誘導ニ止マラズ本会々員タル者各自実施ノ責ニ任ゼン事ヲ希望ス
百五番(大川平三郎)曰ク、過刻四十三番ノ述ベラレタルガ如ク手形ノ取引ハ最モ信用上ニ関スルヲ以テ、手形取引ヲ実行スルニハ各員可成銀行ト取引ヲ聞《(開)》キ、小売商人等ニ向テハ此主旨ヲ以テ誘導スベシ
右ノ外猶各員ノ間ニ議論モアリシガ終ニ本案ニ就テハ先ヅ会員ヲシテ各々其組合ニ相談シテ実施ノ方法手続ヲ取調ベ、次会ニ於テ之ヲ議場ニ提出シ猶之ヲ熟議スベシト云フニ決シ会長ヨリ暫時休息ヲ命ズ、時ニ午後六時三十分ナリ


東京商工会官衙諸達並上申書綴(DK180020k-0002)
第18巻 p.218 ページ画像

東京商工会官衙諸達並上申書綴   (東京商工会議所所蔵)
兼テ其会ニ及下問候手形取引ノ件明六日臨時会ニ於テ審議候趣ニ付、権大書記官加藤済臨席セシメ候条為心得此旨相達候事
  明治十七年三月五日
              大蔵卿 松方正義大蔵卿印
  東京商工会頭
    渋沢栄一殿


東京商工会議事要件録 第三号・第四―二四頁 明治一七年四月一〇日刊(DK180020k-0003)
第18巻 p.218-223 ページ画像

東京商工会議事要件録  第三号・第四―二四頁 明治一七年四月一〇日刊
  第三臨時会  (明治十七年三月六日午後五時三十分開会)
    会員出席スル者 ○七十三名
会長 ○渋沢栄一ハ大蔵卿ヨリ本日加藤銀行局長ヲ臨席セシムルノ通達アリシ旨ヲ告ゲ且曰ク、大蔵卿閣下ノ御諮問ニ係ル手形取引ノ件ハ前会ニ於テ各員其組合仲間ト協議シテ其拡充方法ヲ謀リ、次会ニ於テ各々意見書ヲ提出スルニ決シタレバ、本日ハ其意見書ノ用意セラレタルモノハ先ツ之ヲ討議シ、次デ第三問目即チ同業組合取締法ノ件ヲ議スベシ
七十四番(鳥海清左衛門)曰ク、我砂糖営業者ニ於テハ従来専ラ現金ト掛売トノ二法ニ由テ売買シ、手形ノ如キハ曾テ使用シタル事ナシ、故ニ頃日同業集会ヲ催シ種々評議ヲ尽シタレトモ、俄カニ手形取引ヲ起コシ難シ、但ダ徐々ニ其取引ヲ行フニ一定シタリ
此時掛売及現金取引ノ事ニ就キ会長ハ七十四番ニ数回ノ質問ヲ為シ、且ツ六十四番(宮崎佐平)六十五番(嶋田久兵衛)ヨリ提出セラレタル約束手形及為換証券ハ、従前ヨリ組合内ニ於テ使用セラレシヤ将タ今後之ヲ使用スルノ見込ナルヤヲ問フ
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六十四番(宮崎佐平)曰ク、今後之ヲ使用スル見込ナレトモ元来手形ハ信用ニ由テ流通スルモノナレバ如何ニ手形ヲ使用セントスルモ請取人ニ於テ振出人若クバ名宛人ヲ信用セザルトキハ到底十分ニ流通シ難カラン、故ニ今後当組合ニ於テハ可成手形ヲ使用スルニ至ルモ尚現金ヲ以テ売買スル者モアラン、此等ハ徐々ニ改良ヲ謀ル見込ナレバ銀行者ニ於テモ勉メテ応分ノ力ヲ尽サレン事ヲ望ム
百十番(勝部静男)曰ク、我均融会社ノ業務ハ大蔵卿閣下ノ御諮問ニ対シ直接ノ関係アルヲ以テ、従来我社ニ於テ経営シ及将来実行セントスル業務ヲ陳弁シテ各員ノ参考ニ供シ、併テ其賛成ヲ仰ガントス、抑モ手形ハ信用ニ由テ流通スルモノニシテ信用ニハ無形ノ信用ト有形ノ信用トノ二種アリ、無形ノ信用トハ振出人若クバ名宛人ノ名声又ハ財産ヲ信用スルモノニシテ、有形ノ信用トハ手形ニ附帯スル抵当品ヲ信用スルモノナリ、二者共ニ手形取引上ニ於テハ必要ナレトモ、遽ニ無形ノ信用ヲ商業社会ニ養成セントスルモ得ベカラズ、銀行商賈互ニ数回ノ取引ヲ行ヒ、其関係親密ナルニ及デ信用始テ発生センノミ、熟ラ我東京市場ノ現況ヲ観ルニ今回ノ諮問書ニモアル如ク手形ヲ以テ売買ヲ決済スル者寡ク、銀行ト勘定ヲ開ク者ト雖トモ当坐小切手ヲ利用スル者太タ寡キモノアリ、其然ル所以ノモノハ全ク銀行ト商賈トノ関係親密ナラズシテ銀行ハ手形振出先ノ安否ヲ懸念シ、振出人ハ其手形ノ銀行ニ不通ナラン事ヲ恐ルヽノ情アルニ由ルモノナレバ、今日手形流通ノ道ヲ拡充セント欲セバ所謂有形ノ信用ヨリ入テ無形ノ信用ニ移ルヨリ善キハナシ、而シテ銀行者ト商賈トヲ親密ナラシメンニハ、先ツ英国ロンバート街ノ「ビルブローカル」即チ手形仲買人ノ如キ者ニ依テ両者ノ間ニ幹旋《(斡)》セシムルヲ以テ便ナリトス、従来我均融会社ハ倉庫会社ノ貨物預リ証券ノミヲ抵当トシテ貸付業ヲ営ミ、而シテ其貸付資金ハ右預リ証券ヲ各銀行ニ再抵当ニ入レテ約束手形ヲ振出シ以テ借主ノ望ニ応ゼシガ故ニ、弊社ノ業体ハ猶手形仲買人ト同クシテ創業日猶浅シト雖トモ已ニ手形取引ノ便益ヲ開キ多少商賈ト銀行トノ関係ヲ親密ナラシメタル者有ルヲ信ズ、加之本年初春更ニ手形仲買人ノ組織ヲ斟酌シテ業務ヲ拡張セン事ヲ謀リ、独リ倉庫会社ノ貨物預リ証券ノミナラズ金銀貨・公債証書・確実ナル株券・銀行諸会社ノ切手並ニ預リ証券ヲ抵当トシテ貸附業ヲ営マン事ヲ請願シタリ、此請願ニシテ不日許可ノ命ヲ得バ手形取引上ニ便益ヲ与フル事大ナルモノアラン、又弊社取引ノ手続モ従来ノ借用証書ヲ廃シテ約束手形トナシ弊社之ヲ割引スル事ト改メタリ、此改正ハ弊社従来ノ経験ニ由テ金融上大ニ便利ヲ与フルヲ信ジタルガ故ニ此挙ヲ断行シタルモノニシテ、俄カニ之ヲ見ルトキハ只借用証書ノ名ヲ約束手形ト改メタルガ如クナレトモ、其実決シテ然ラズ、弊社若シ金員ヲ要スルトキハ之ニ裏書シテ甲銀行ニ売リ、甲又金員ヲ要スルトキハ同一ノ手続ヲ以テ乙銀行ニ売リ、其受授頻繁ナルニ随ヒ銀行ト商賈トノ関係漸ク親密トナリテ手形取引上ニ便益ヲ与フル尠ナカラザルベシ、又弊社ハ打歩割戻シノ現今手形取引上ニ必要ナルヲ信ジタルモノアリ、蓋シ弊社
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ハ既ニ借用証書ヲ廃シテ約束手形トナシ、只管手形取引ノ習慣ヲ養成セン事ヲ勉メタレトモ、弊社預ル所ノ仕払保証品ハ従来ノ実験ニ依レバ商品其首位ヲ占ムルガ故ニ、振出人ノ都合ニ依リテ手形満期前ニ返金シテ其商品ヲ売却セントスル者ナキヲ保セズ、此場合ニ於テ弊社若シ其請求ヲ諾セザルトキハ却テ手形取引ノ進路ヲ妨遮スルノ恐レアルヲ以テ、暫ク各銀行ノ許諾ヲ経テ期限前手形ノ仕払ヲ請求スルトキハ日割ヲ以テ其打歩ヲ返戻スル事トナシ且左ノ便法ヲ設ケタリ
   第一 支払保証品ノ模様及打歩ノ割合ニヨリテハ打歩ノ後払ヲ手形振出人ト約束スベキ事
   第二 支払保証品ノ品柄ニヨリテハ振出人ノ請求ニ由リ同種類ニシテ価格ノ下ラザル物品ト引替ヲ許ス事
   第三 期限前ノ支払及内金支払保証品ノ内出シヲ許ス事
   第四 手形支払ハ割引取組ノ銀行ヘ対シ振出人ヨリ期日入金スルヲ正当トスト雖トモ弊社ニ於テハ期日支払ノ手数ヲ引受クル事
  以上ハ即チ弊社従来経営セシ所ト将来実行セントスルモノトヲ略陳シタルモノニシテ、本業滋々盛大ナルニ至ラバ手形取引ニ便益ヲ与ヘ併テ弊社亦真誠ノ手形仲買人タルニ至ルヘシ、冀クバ各員奮テ翼賛セラレン事ヲ
七番(甲田卯三郎)曰ク、百十番ノ説最モ可ナリ、余ハ頃ロ委員会ニ於テモ既ニ開陳シタル如ク深川倉庫ヲ挙テ其ノ保管ヲ倉庫会社ニ依托シ、其預リ証券ヲ約束手形ニ添附シテ銀行・商賈ニ転々流通セシメン事ヲ望ム者ナリ、蓋シ斯ノ如クスレバ倉庫会社ノ預リ証券ハ其信用ヲ増シ且ツ手形モ漸ク流通スルニ至ルベキガ故ニ、荷主モ亦大ニ便利ヲ得テ自ラ貨物ヲ該社ニ托スルニ至ルヘキヲ信ズルナリ
是ニ於テ会長ハ書記ヲシテ六十八番(南川福蔵)六十九番(中泰助)ヨリ提出シタル意見書ヲ朗読セシメ且ツ曰ク、唯今朗読シタル意見書ノ主意ヲ要言セバ元来手形ハ信用ニ由テ流通スルモノニシテ信用ハ一朝一夕ニシテ作為シ得ヘキモノニ非ザレバ、我組合ニ於テモ固ヨリ手形ノ便益ヲ熟知セザルニハ非ザレトモ信用ナキガ為メニ流通セザルナリ、然レトモ信用ハ手形アリテ後ニ必要ノモノナレバ今日手形取引ヲ盛ニセント欲セバ先ヅ其取引ノ方法ヲ講究シ、又本会加盟者就中銀行者ノ如キハ率先者トナリテ諄々慫慂セラルヽアラバ庶幾クバ好結果ヲ見ル可キ歟ト云フニ在リ、此主意ニ由レバ手形ハ専ラ信用ニ依頼シ、始メヨリ仕払保証品ノ添附ヲ要セザルモノヽ如シ、今ニシテ遽カニ斯ル手形ノ流通ヲ期シ得ル見込ナルヤ
六十九番(中泰助)曰ク、手形ニ仕払保証品ヲ添附セバ如何ナル者ニテモ金ヲ借ル事容易ナリ、余ガ望ム所ノ手形ハ斯ルモノニ非ズシテ想フニ大蔵卿閣下御下問ノ主意モ亦蓋シ然ラン、即チ余ガ望ム所ハ専ラ信用ニ由テ流通スル手形ニシテ、如斯手形ハ銀行者ノ如キモノ率先者トナリテ誘導セバ徐々ニ流通スベシト信ズ
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百四番(宮本弥之助)曰ク、今夫レ手形ヲ振出スモ信用ナケレバ之ヲ割引スル者ナシ、而シテ信用ハ商賈互ニ業務及財産ヲ熟知シテ相信倚スルヨリ発スルモノナレバ、手形取引ノ端緒ヲ開クハ共立銀行ノ如キモノヲ設置スルヲ以テ良法ナリト信ズ、何トナレバ如斯銀行ヲ設ケテ之ニ各商賈ノ手形ヲ割引セシムレバ商賈互ニ信倚スルニ至ルベケレバナリ、尤モ現立国立銀行ニ依頼シテ手形ヲ割引セシムルモ妨ゲナキガ如クナレトモ、其関係未ダ親密ナラザルガ故ニ実際不都合ノ廉多カル可シト思ハル
会長曰ク、先刻ヨリ各員ノ意見ヲ聴クニ銀行者率先シテ商賈ヲ信用スレバ手形取引盛行セント云ハルレトモ、銀行者トテモ未ダ一面識ナキ商賈ノ手形ヲ信用スル事ハ実際為シ能ハザル処ナレバ、最初ハ仕払保証品ヲ添ヘテ手形ヲ振出シ、信用漸ク生ズルヲ待テ徐々ニ之ガ取引ノ盛行ヲ望ムヨリ良策ナカルベシ、銀行者固ヨリ率先尽力セザルニ非ズト雖トモ、始メヨリ信用ノミニ由テ手形ノ流通ヲ謀ラントスルハ殆ド至難ナルベシ
百五番(大川平三郎)曰ク、現今ノ商賈ハ信用ナキニ非ズシテ只其信用ノ埋没シテ顕ハレザルモノナレバ、今後勉メテ銀行ト勘定ヲ開キ彼是ノ関係ヲシテ親密ナラシメ、随テ信用漸ク発現スルヲ待テ手形取引拡充ノ方法ヲ協議セラレタシ
二十番(大倉喜八郎)曰ク、手形ハ到底信用ニ由テ流通スルモノニシテ信用ハ容易ニ養成シ難シ、今各自ノ所有物中最モ大切ナル地券ヲ銀行ニ持参シテ貸金ヲ望ムモ銀行容易ニ其請求ヲ諾セズ、偶マ之ヲ諾スル事アルモ利息甚ダ高キハ世間一般ノ常観ナリ、此等ハ銀行者ノ罪ニ非ズシテ商賈信用ナキノ致ス所ナレトモ斯ク各自大切ノ所有物ヲ死積スルハ如何ニモ遺憾ノ至リナレバ、銀行者暫ク忍ンデ地券一万円ノ価アルモノヲ根抵当トシタル商賈ニ其内凡ソ五六千円ノ手形ヲ振出ス事ヲ許シ、或ハ割引取組ノ便ヲ与ヘナハ自ラ手形ノ流通ヲ補翼スルニ至ラン歟
十二番(熊谷吉兵衛)曰ク、手形ヲシテ盛ニ行ハシメント欲セバ銀行者、諸手形ノ仕払保証人トナルニ若カズ、手形条例第十五条ニ記スルガ如ク連帯保証ノ義務アリテハ商賈疑懼ノ念ヲ抱キテ其取引盛ナラザルベシ、故ニ余ハ此条項ノ刪除ヲ其筋ヘ要望シ而シテ銀行者ガ直チニ諸手形ノ保証人トナルガ為メニハ、各商賈ハ根抵当トシテ銀行ニ預ケ金ヲ為サバ手形大ニ流通スベシト信ズルナリ
会長曰ク、銀行者手形ノ保証人トナルガ如キハ実際行フ可カラザルノ説ナリ、元来為換手形ハ裏書ヲ以テ各商賈ノ間ニ受授シ金員ヲ要スルニ臨ンデ銀行之ヲ割引スルニ止マルモノナレバ、其手形ノ保証人トナルハ到底望ムベカラザルノ業ナラン、十二番ハ蓋シ為換手形ノ性質ヲ誤解セラルヽニ非ザル歟
百十番(勝部静男)曰ク、十二番ハ手形条例第十五条ニ連帯責任ノ条項アルヲ非難セラレタレトモ、手形ニ連帯責任ノ義務ナケレバ各商賈不安心ニ思ヒテ手形ノ流通却テ渋滞セン、十二番ハ寧ロ手形ノ性質ヲ誤解セル者ト云フベシ
八十二番(山中隣之助)曰ク、連帯義務ノ条項ハ不必要ナリトノ説ア
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レトモ、此条項ハ銀行者ニ取テ最モ有要ノモノナリ、何トナレバ若シ手形不渡ノ際銀行者ハ他ノ裏書人ヨリ手形面ノ金額ヲ請求シ得ルガ故ナリ、去レバ銀行者ハ此条項アルガ為メニ安心シテ手形ヲ割引シ、随テ其取引ヲ幇助スルモノト云フモ可ナラン
会長曰ク、各銀行者モ過日臨時総会ヲ開キテ種々協議ヲ遂ゲ、第一同盟各銀行ハ自今貸附金ノ内其性質約束手形ト為シ得ベキ短期ノモノハ可成該手形ヲ用ヒテ以テ其使用ノ便益ヲ知ラシムル事、第二各商賈互ニ取引スルニ当リ為換手形ヲ受授スル等、凡ソ手形ヲ使用スル手続ヲ勧誘シテ漸次其取引ノ盛大ヲ期スル事ヲ議定シタレバ余ハ同盟銀行ノ総代トシテ之ヲ各員ニ報道ス、各員之ヲ諒セヨ
四十三番(梅浦精一)曰ク、従来商賈ノ間手形ノ行ハレザルニ非ザルモ、其銀行ニ不通ナラン事ヲ恐レテ空シク之ヲ掌中ニ留ムル多カラン、此類ノ手形ハ自今百十番ノ説ノ如ク有形ノ信用即チ仕払保証品ヲ添ヘテ銀行ニ持参スレバ直ニ之ヲ割引スルヲ得ン、斯ク最初ハ有形ノ信用ニ由テ手形ヲ使用スルニ注意セバ其流通次第ニ盛ナルニ至ラン、又各産地ヨリ東京ニ振向ケタル為換手形中参着後十五日若クハ二十日払ノモノ寡カラズト聞ク、此等ハ以後銀行ニテ可成市場ニ売出ス様注意セラルヽモ亦手形ノ流通ヲ幇助スルノ一法ナラン
会長曰ク、議論稍々尽キタレトモ本件ハ決議ヲ要スルモノニ非ズシテ各員ノ意見ヲ問フテ取引ノ拡充ヲ謀ルニ過ギズ、先刻ヨリ各員ノ意見ヲ聞クニ或ハ信用ノ養成ヲ必要トスル者アリ、或ハ銀行ノ誘掖ヲ希望スル者アリ、又或ハ手形取引ヨリ生ズル弊害ヲ過慮スル者モアリタレトモ、要スルニ手形取引ノ拡張ヲ望ムハ皆一ニシテ只ダ其手続ニ就テ異同アルノミ、就テハ自今各員ヲ始メトシテ其組合中ノ者ハ可成銀行ト取引ヲ開ク事トナシ、又銀行ハ可成低下ノ打歩ヲ以テ手形ノ割引ヲ勉メ、而シテ此間各員其取引上ニ於テ不明瞭ノ廉々ハ銀行集会所若クハ本会ニ就キ之ヲ質シ、各自其取引ノ拡張ヲ勉メタル上両三月後ノ成跡ニ由テ更ニ手続ヲ協議スル事ニ決シテハ如何
四十三番(梅浦精一)曰ク、手形取引ノ漸ク盛行スルニ随ヒ銀行者商賈相会シテ其取組ヲ談スルノ場ナカルベカラズ、今ヤ已ニ銀行集会所ノ設ケアレバ手形取引ハ此場所ヲ以テスルニ若クハナカルベシ、故ニ余ハ更ニ会長ノ説ニ一歩ヲ進メ本会々員タル者ハ勿論其組合中ノ者ニシテ従来手形取引ヲナシタル者、又ハ新タニ之ヲ起サントスル者ハ一週間一回若クハ二回日ヲ定メテ銀行集会所ニ会合シテ、各自手形ノ振合等ヲ談合スルノ申合ヲ為サン事ヲ望ム
百十番(勝部静男)曰ク、大蔵卿閣下ノ御下問書ニモ有ル如ク手形ノ行ハレザルハ実ニ現金取引多キニ因ルモノナリ、大坂ノ如キハ各商賈必ズ延売延貸ヲ常トスル者ノ如シ、是レ手形取引ニ幾分ノ助成ヲ与ヘシナラン、現ニ府下ニ於テモ三十日目若クバ六十日目払ノ貸売アリト聞ク、此等ハ手形取引上多少ノ便利ヲ与フルモノナレバ各員玆ニ注意アラン事ヲ望ム
是ニ於テ会長ハ他ニ発議者ナキヲ以テ本議ハ前陳ノ如ク両三月後ノ成
 - 第18巻 p.223 -ページ画像 
跡ニ由テ更ニ協議スベシト云フニ決シ暫時休憩ヲ命ズ、時ニ八時十分ナリ


東京商工会議事要件録 第六号・第四―一一頁 明治一七年九月二二日刊(DK180020k-0004)
第18巻 p.223 ページ画像

東京商工会議事要件録  第六号・第四―一一頁 明治一七年九月二二日刊
  第三定式会
         (明治十七年八月二十二日午後五時四十分開会)
  第六臨時会
    会員出席スル者 ○六十二名
会長 ○渋沢栄一ハ ○中略 本年一月ヨリ六月ニ至ル半季間事務ノ成跡ヲ報告ス
  自明治十七年一月至同年六月 半季間事務ノ報告
○中略
    政府ヨリ下問   四件
○中略
○手形取引ノ義ニ付大蔵省ヨリノ下問
  本件ハ本年二月一日附ヲ以テ松方大蔵卿閣下ヨリノ御諮問ニ係リ其要旨ハ本会ニ於テ手形取引拡充ノ道ヲ講究シ実際適用ノ方法ヲ審議シテ之ヲ報荅スベシト云フニ在リ、即チ同月十七日第二臨時会及三月六日第三臨時会ニ於テ其方法ヲ審議シタルニ遂ニ本件ニ就テハ会員ヨリ各其組合ニ向テ手形取引ノ実行ヲ誘導シ且ツ本会ヨリモ銀行集会所ヘ詢カリテ之ガ拡充ノ途ヲ講究シ、追テ数月ヲ経タル後其成跡ヲ大蔵卿閣下ヘ具陳スベシト云フニ決シタルニ付爾後本会ニ於テハ今日ニ至ル迄此目的ヲ以テ経画ヲ怠ラザリシガ其実蹟如何ニ至リテハ更ニ数月ヲ待テ之ヲ詳査スベキ見込ナリ


東京商工会議事要件録 第六号・第二九―三八頁 明治一七年九月二二日刊(DK180020k-0005)
第18巻 p.223-225 ページ画像

東京商工会議事要件録  第六号・第二九―三八頁 明治一七年九月二二日刊
  第三定式会
         (明治十七年八月二十二日午後五時四十分開会)
  第六臨時会
    会員出席スル者 ○六十二名
○上略
次ニ会長 ○渋沢栄一ハ是ニテ定式会終リタレハ引続キ臨時会ヲ開キ手形取引ノ儀ニ付大蔵卿閣下ヘ荅申ノ手続ヲ議スベキ旨ヲ告ゲ且ツ曰ク、此手形取引ノ件ハ本年三月六日第三臨時会ニ於テ会員各其組合ニ向テ之ガ実行ヲ誘導シ、且ツ銀行集会所ヘモ詢カリテ之ガ拡充ノ途ヲ講究シ追テ数月ヲ経タル後其成跡ヲ大蔵卿閣下ヘ復申スベシト云フニ決セシガ、其後既ニ今日ニ至ル迄殆ト半ケ年ヲ経過シタレハ此際実地ノ景況ヲ詳査シテ之ヲ荅申スベキカ、将タ尚数月ヲ経テ之ヲ荅申スベキカ、若シ之ヲ荅申スベシトスル時ハ其手続ハ先ヅ本会加盟ノ組合及銀行集会所ヘ依頼ノ上実際ノ景況ヲ取調ベテ之ヲ具陳スル事トシ、自然改良ヲ要スル事件モアラバ併セテ之ヲ上陳スルモ可ナラン、偖今手形取引進歩ノ実況如何ヲ観察スルニ未タ充分ノ統計ヲ得ザレハ之ヲ確言シ難シト雖トモ、現ニ第一国立銀行ノ如キ其後新ニ手形ノ割引ヲ乞フ者五七人ヲ増加シタルヲ見レバ、当府下銀行総体ニ於テモ幾分カ進歩ノ傾向アルヲ信ズル也、猶各組合ニ於テモ其進歩ノ実跡アラバ其景況ヲ陳述セラレタシ
六十三番(柿沼谷蔵)曰ク、我ガ組合ニ於テハ未ダ充分進歩ノ実跡ヲ
 - 第18巻 p.224 -ページ画像 
見ズト雖トモ現ニ組合員中在来帳簿上ノ貸ヲ約束手形ニ振替ヘタル者少カラザレバ幾分カ進歩ノ傾向ヲ呈シタルモノト思ハル、然レトモ目今商況不振ノ折抦ニ付充分之ヲ活用スル能ハス、而シテ今玆ニ敢テ会長ノ解示ヲ煩ハシタキ事アリ、抑モ現行ノ条例ニヨル時ハ手形所持人ハ其振出人ニ向テ先取ノ権ヲ有スルヤ如何ン
会長曰ク、手形取引ニテモ先取ノ権ナシ、然レトモ手形条例ニ拠レバ振出人裏書人トモ所持人ニ対シテ連帯責任ヲ負フニ付、手形所持人ガ期日ニ至リ支払人ヨリ券面ノ金額ヲ受取ラントスルトキ、若シ全額ヲ仕払フ事能ハザレハ所持人ハ更ニ裏書人ニ向テ其不足ヲ要求シ得ルヲ以テ、之ヲ普通貸借ニ比スレバヤヽ其権利ヲ安固ニスルヲ得ベキナリ
六十四番(宮崎佐平)曰ク、我ガ組合ニ於テモ其後手形ヲ以テ帳簿上ノ貸借ヲ決済スルニ至リタレバ幾分カ進歩ノ景況ヲ呈シタルノ姿ナリ
会長曰ク、在来手形ヲ慣用スル者ノ中此際新ニ其振合ヲ改メタルノ類ハナキヤ、又手形取引ノ儀ニ付別ニ改良ヲ望ムノ事項ナキヤ
十一番(犬塚駒吉)曰ク、謹デ手形条例ヲ案ズルニ約束手形ノ金額ハ二十五円以上ニ限ルトアリ、然ルニ商売柄ニヨリテハ小口ノ取引最モ多ク、為メニ此制限ヲ不便トスルモノ不少、故ニ余ハ今少シク此制限額ヲ減少セラレン事ヲ切望スルナリ
会長曰ク、夫レ手形ハ単ニ信約取引ヲ便達スルノ要具ニシテ若シ此手形ヲシテ通貨ノ性質ヲ帯バシムルトキハ、其弊害実ニ恐ルベキモノアリ、是蓋シ前年其筋ニ於テ銀行ニ向テ小額振出手形ノ発行ヲ差止メラレタル所以ニシテ、今現行条例中約束手形ノ金額ニ制限ヲ置カルヽモノハ亦畢竟此主意ニ由ルモノナラン歟、抑モ十一番ノ所謂手形トハ如何ナル性質ノモノヲ指スカ
十一番(犬塚駒吉)曰ク、余ノ所謂手形トハ敢テ通貨ノ性質ヲ帯ブルモノヲ指スニ非ズ、現ニ商品ノ代価トシテ約束手形ヲ受取リタル者ガ更ニ他ヨリ小口ノ仕入ヲ為スニ当リ、券面ノ金高多キガ為メ直チニ此手形ヲ以テ其支払ヲ決済スル事能ハズ、大ニ不便ヲ感ジタル事アリ、是余ガ前議ヲ発シタル所以ナリ
四十番(隅山尚徳)曰ク、余ハ其後手形取引大ニ進歩シタリト思考ス現ニ我ガ商会ノ如キハ従来取引上嘗テ手形ヲ慣用シタル事ナカリシガ、本年三月以来先ツ試ニ府下近接ノ地ニ在ル石灰蠣灰等ノ製造者ヘ係ル仕切金又ハ内渡金ニ対シ初ハ二週以下ノ期日ヲ以テ約束手形ヲ振出シ、其後更ニ二週以上三週ノ期日ヲ以テ之ヲ振出シタルニ当初ハ間々厭忌ノ状ヲ見タレトモ近頃ニ至リテハ大ニ之ヲ信用シ、七月頃ヨリハ之ヲ他ノ払口ニ仕向クル者追々増加シ、本人直チニ請求シ来ル者ハ甚ダ稀ニシテ殊ニ期日後五六日ヲ経テ取付クル者甚ダ多キニ至レリ、由是視之其進歩ノ実跡既ニ蔽フベカラザルナリ
八十四番(荘田平五郎)曰ク、其後銀行ニ於テ数人ノ手ヲ渡リタル手形ヲ取扱フタル事アリヤ
会長曰ク、是迄当府下ノ銀行ニ就テ府内為換ノ割引ヲ乞フ者甚ダ稀ナ
 - 第18巻 p.225 -ページ画像 
リシガ、其後第一国立銀行ニ於テ新ニ其割引ヲ乞フ者五七人増加シタルヲ見レバ幾分カ進歩ノ傾向アリト云フモ可ナリ、然レトモ数人ノ手ヲ経タル手形ニ至リテハ絶テ之ヲ取扱フタル事ナシ
八十四番(荘田平五郎)曰ク、仲間同士ニテ取組ミタル手形ヲ他ニテ割引シタル実例アリヤ
六十三番(柿沼谷蔵)曰ク、帳簿上ノ貸ガ約束手形トナリタル迄ニシテ其上未ダ活動スルニ至ラズ、是蓋シ目今商況不振ノ為メ通貨ノ需用自ラ緩縵ナルニ由ルモノナラン
四十番(隅山尚徳)曰ク、我ガ商会ノ如キ現ニ両三人ノ手ヲ経由シタル手形ヲ入手シタル事多シ、蓋シ是迄手形ノ行ハレザルモノハ畢竟之ヲ取扱フ者ガ充分其手続ニ慣熟セザルニ由ルモノナレバ、自今黽勉誘掖シテ之ガ拡充ヲ怠ラザルニ於テハ好結果ヲ見ル事、実ニ疑フベカラザルナリ
三十八番(中村利兵衛)曰ク、我ガ組合ニ於テハ規約ニヨリ信認金ヲ徴収スルニ当リ各組合員ヲシテ約束手形ヲ振出サシメタルニ一同大ニ其便利ヲ相感ジタリ、左レバ手形ノ取引ハ今日ニ於テ幾分カ進歩ノ景況ヲ呈シタルハ勿論猶此上追々進歩スベキハ余ガ信ジテ疑ハザル所ナリ
六十三番(柿沼谷蔵)曰ク、今参考ノ為メ玆ニ武州所沢ニ於ケル在来手形取引ノ景況ヲ略述センニ、同所ニ於テハ縞買《シマカヒ》(織物ヲ買入ルル商人)ガ機屋《ハタヤ》(織物製造人)ヨリ織物ヲ買フニ当リ約束手形ヲ振出シ、機屋ニ於テハ更ニ之ヲ唐糸商ニ転用スルノ慣例アリ、此事ヤ明治十年頃ヨリ大ニ行ハレ其後十五六年ノ交私立銀行ノ起ルニ際シ同行ニ就テ此手形ノ割引ヲ乞フ者甚ダ多カリシガ、昨年来商況不振ノ為メ目今ハ大ニ其数ヲ減少シタリト云フ
於是会長ハ過刻ヨリ段々各員ノ所説ヲ聞クニ其後手形取引進歩ノ実跡ハ疑フベカラザルニ付、此際銀行集会所其他各組合ヘ依頼シテ実際ノ景況ヲ詳査シ、猶次回ノ臨時会ニ於テ荅申案ヲ議定シテハ如何ト述ベタルニ一同総賛成ニ付遂ニ右ノ如クニ相決ス


東京商工会々外諸向往復文書 第一号(DK180020k-0006)
第18巻 p.225 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 第一号
                  (東京商工会議所所蔵)
(案)        栄一
    手形取引進歩ノ景況取調ノ義銀行集会所ヘ依頼状案
                         《(萩原)》
過般大蔵卿閣下ヨリ本会ヘ御諮問有之候手形取引ノ件ニ関シテハ其後貴所ニ於テモ之ガ拡充方御協賛被下候処、今般本会ニ於テ其成跡ヲ詳具シ、同卿閣下ヘ復申仕度ニ付、爾来貴所御同盟銀行中御取引ノ際右手形取引進歩ノ程度御確認ノ廉モ有之候ハヾ、何卒乍御手数来月五日迄其景況御調査ノ上御報知被下度此段御依頼申上候也
  明治十七年八月廿七日        東京商工会会頭
    銀行集会所御中


東京商工会々外諸向往復文書 第一号(DK180020k-0007)
第18巻 p.225-226 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 第一号
                   (東京商工会議所所蔵)
 - 第18巻 p.226 -ページ画像 
        栄一 《(萩原)》
本年二月中大蔵卿閣下ヨリ貴会ト《(ヘ)》御諮詢有之候手形取引ノ件ニ関シ当時御照会之次第モ有之候処、今般其成跡御取調之上同卿閣下エ御復申可被成候ニ付テハ、当集会所同盟銀行実際取引ノ景況御通報可申上様御照会之趣領承仕候ニ付、昨十六年下半季並ニ本年上半季分取調候処別表之通ニ有之候、由之観之第一項第三項ハ其金額口数共大イニ増加致シ第二項ハ金額稍減少致候得共其口数ニ於テハ却テ百二口ノ増加ニ相成候
右取調ニヨリ観察仕候得ハ追々手形取引ノ程度増進致候義ト相考候、此段御回答ニ及候也
  明治十七年九月五日       銀行集会所銀行集会所印
    東京商工会御中
(別表)
    明治十七年九月五日

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                  明治十六年下半季分           明治十七年上半季分           増減比較 割引種類             金額            口数    金額            口数    金額             口数 当所ヨリ割引シ当所ニテ取立タル分 二、九一八、三三〇・九一二   七七九 四、二六七、九九三・五二五 一、三七八 増一、三四九、六六二・六一三 増五九九 他所ニテ割引シ当所ニテ取立タル分 三、七四二、〇二八・五四四 三、三三〇 三、五六四、四九二・四二一 三、四三二 減  一七七、五三六・一三二 増一〇二 当所ニテ割引シ他所ニテ取立タル分   八七〇、六〇八・九七六   三八四 一、一二五、三七八・三四四   四八〇 増  二五四、七六九・三六八 増九二八 




 右之通ニ御座候也
                     銀行集会所銀行集会所印

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                                                              増        増                   7,530,968.432      4,493    8,957,864.290         5,290      1,426,895.858   797 



東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0008)
第18巻 p.226-227 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊  (東京商工会議所所蔵)
    手形取引ノ義ニ付会員ヨリ回答書
手形取引之義本年三月六日第三臨時会ニ於テ各自業務上ニ就キ両三月ヲ経テ其実際適否ノ状況報道スヘキニ議決相成候ニ就テハ、我蠣灰商会業務ノ如キ従来手形ノ取引ヲ施行候義曾テ無之、然ルニ本年三月以還始メテ約束手形ヲ試ミニ府下近接ノ地ニ在ル所ノ石灰蠣灰煉化石等ノ製造者ニ向ヒ、懇々彼我ノ利益タル理由ヲ陳述シテ仕切金又ハ内渡金等ニ対シ一週乃至二週日ヲ期シ之ヲ施用セシニ、当初ハ間々厭忌ノ状相見ヘ候エ共務メテ之ヲ交附シタリシ、然ルニ其期日ニ本人必ズ請求シ来レリ、因テ又必ス其約ヲ履テ現金ト交換セリ、爾来漸々其数ヲ加ヘ且期日モ亦二週乃至三週ノ時日ヲ延ハシ候処、七月ニ至テハ或ハ之ヲ薪代等ニ転用シ、本人直チニ請求シ来ル者ハ稀ニシテ且其期日モ亦数日ヲ過クルモアリ、又両三名ノ手ヲ経由シ来ルモアリ、是ニ由テ之ヲ観レハ稍幾分ノ便利ニ感スルヲ徴スルニ足ルモノト相信シ候故ニ自今黽勉誘掖之レカ拡充ヲ怠ラサルニ於テハ我商会ノ如キ其取引上ニ便利ヲ領スルノ結果ヲ観ルノ日蓋シ悠遠ニアラサルベシ、最モ右ハ仕払金約束手形ニシテ為換手形即チ収入金ノ如キハ、府下ハ勿論近傍十余国ニ取引者アルモ猶旧慣ヲ追テ未タ実施ニ不立至候、右今日迄実施成蹟ノ概況ヲ挙ケ以テ報告仕候、猶将来較著ナル進否有之候ハヽ不懈
 - 第18巻 p.227 -ページ画像 
報道可仕候也
                  第四十番
  明治十七年八月廿五日        隅山尚徳
    東京商工会会頭 渋沢栄一殿


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0009)
第18巻 p.227 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
 当造船業ニ於テハ別段切手ヲ以実際取引仕候様之事無之候間此段申上候也
                築港川崎造船所
  八月廿八日               川井口平蔵
    商工会御中


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0010)
第18巻 p.227 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
(ハガキ)


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 京橋区木挽町 十町目十三番地     王子村              製紙会社 東京商工会      御中  ○  ○消印・東京    一七・八・二八 



御手紙拝見然ハ手形取引之実況可申出旨御照会ニ候ヘ共、弊社営業上ニテハ従前ト相異リ候義モ無之別段御報申上様無之候間左様承知可被下候也
  八月廿八日


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0011)
第18巻 p.227 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
    手形取引之景況
一 本組合ニ於テ手形取引ノ行ハルヽ漸次其歩ヲ進ムルヲ視ルモ、目下商況ノ閑ナルニツレ金融ノ急迫ヲ要セザルニヤ割引ケヲナス迄ニハ到ラズ
                  絵具染料問屋会員
  明治十七年八月廿八日          南川福蔵
                      中泰輔
  東京商工会々頭
    渋沢栄一殿


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0012)
第18巻 p.227-228 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
蕭陳過般来大蔵卿閣下与利御諮問之手形取引之件去廿二日臨時会ニ於而実際之景況取調ヘ復申之御手続ニ付、当組合手形取引如後之御尋問相承仕候処、元来当組合営業ハ他県下ニ取引無之者ニ而府下尤接近之得意而已有之、而シテ小額之金融ニ不過義ニ御座候間申上候迄モ無之候得共、質物品ヲ預リ直接ニ通貨ヲ貸与仕候業務ニ而何分間接之手形取引ニハ関係無之候間、進歩如何之探究致兼候、此段拝復仕候也
                旧四大区質商組合会員
  明治十七年八月三十日          吉田幸作
 - 第18巻 p.228 -ページ画像 
  東京商工会々頭
    渋沢栄一殿


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0013)
第18巻 p.228 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
(ハガキ)

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 京橋区       油商組合  木挽町       岩出惣兵衛代   十丁目       沢田伊三郎[img図]印 東京商工会     御中 ○  ○消印・東京     一七・九・二 



手形取引之件当組合ニ於テ別段異存無之候、此段御回答ニ及候也
  九月二日


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0014)
第18巻 p.228 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
手形取引之件去月廿二日臨時会ニテ御会頭閣下ニハ夫々御演説被為在少シクハ承知致スト雖モ、質業ノ如キハ手形ノ件ヲ今般承知ガ始メテノ者ノミ数多有之、追々ハ進歩可致モ前申如クノ次第故今会ニハ難行届候間前段御報道申上候也
                旧六大区質商組合
  明治十七年九月四日       会員
                    峯嶋茂吉
  東京商工会々頭渋沢栄一殿


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0015)
第18巻 p.228 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
去月廿二日臨時会ニ於テ手形取引之件篤ト取調ノ上復申ノ御都合モ有之旨ヲ以テ御問合ニ付左ニ申述候
 当仲間ノ儀者過般ヨリ其手続ヲ以テ徐々ニ手形ノ取引ヲ相初メ、仲間丈ハ追々幾分カノ進歩ニモ運ヒ居候哉ト存シ候、乍去此節ノ不景況ニ随ヒ自然取引上モ至テ僅少ニテ未タ充分ノ姿ニモ無之、追テハ世間ノ景気ニ連レ相応ノ取扱ヒニモ至リ可申目的ニ有之候也
 右問合セニ付当今成行陳述候也
   九月四日          海草苆種問屋委員
                       西村庫治郎
  商工会々頭
    渋沢栄一殿


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0016)
第18巻 p.228 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
拝読過般大蔵卿閣下ヨリ御諮問相成候手形取引之件ニ付進歩之実跡等御問合之趣敬承仕候、右者当組合営業上ニ於而ハ別段進歩之景況も不相見、且取引拡充方ニ付考案モ無御座候間可然御復申被下度、此段及御答候也
  明治十七年九月五日     鉄炮弾薬免許商組合
                    渋谷忠兵衛
  東京商工会々頭 渋沢栄一殿
 - 第18巻 p.229 -ページ画像 

東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0017)
第18巻 p.229 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
去月廿二日本会決議ニ因テ手形取引実際ノ景況取調大蔵省ヘ復申ノ手続キニ付、弊社営業上ニ於テ右取引進歩如何ヲ御照会ニ付、則チ去月一日社員集会ノ節実際上取調シタルニ弊社ノ如キハ手形取引誠ニ微々タルモノニシテ、二月已来前後別而変更無之候得共、往々ハ十分便益ナラン事ハ相信申候、且又商況報告材料調査云々自今毎月十日限無遅滞差出シ候様御通知之次第承知仕候、右併セテ御回答迄、如此ニ御座候也
  十七年九月五日       東湊二
                   栄益社朱印
  東京商工会頭
    渋沢栄一殿


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0018)
第18巻 p.229 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
手形取引景況之儀ニ付御訊問之趣敬承右取調候処、未タ何等報告仕候程之形跡相認不申候、此段及御報答候也
                  東京株式取引所
    東京商工会御中


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0019)
第18巻 p.229 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
弊社営業上ニ於テ手形取引進歩ノ実跡申出候様御照会有之候得共今日迄ハ進歩ノ成跡相見不申候、此段及貴酬候也
  明治十七年            有恒社
    九月五日               伴資健
    東京商工会
        御中


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0020)
第18巻 p.229 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
             日本橋四日市組頭取
                  渡辺治右衛門
右申上候、兼而御協議ノ手形取引之件当組合ヘ尋問候処未タ著シキ取引ヲ認不申趣ニ候得共、追々実行可相成被存候、右御回答旁此段申上候也
  明治十七年九月五日       右渡辺治右衛門
    商工会議所御中《(マヽ)》


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0021)
第18巻 p.229-230 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
 今般手形取引之件大蔵卿閣下江復申之御都合モ有之旨ヲ以御問合ニ付当組合景況左ニ陳述候
一当組合之儀者手形取引之弁用ナル事ハ承知致居候得共、何分其順序ニモ至リ不申候処、追々今日之処ニテハ進歩ニ相運ヒ徐々ニ取扱来リ候間、当今之姿ニテハ商業之景況ニ随ヒ連々取扱候事ニ至リ可申ト奉存候、依之此段申入候也
 - 第18巻 p.230 -ページ画像 
  明治十七年九月五日        石灰蠣灰問屋組合委員
                    真弓吉蔵
  東京商工会々頭
    渋沢栄一殿


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0022)
第18巻 p.230 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
拝啓陳者手形拡充之儀府内取引ニ於テハ従前ヨリ幾分ヲ進歩ナスモ悉ク約束手形ヲ以売買ナス処ニ不至候得共、各地方ト之取引ニハ当組合ニ於テ延売為ス故売掛期満之恐アルニ付、約束手形ヲ以予メ相用候事ニ御座候、為替手形ニ至リテハ未タ充分之兆候モ不相見、乍併幾分歟相進候姿ニ御座候
右実況御報導申上候也
                東京薬種問屋組合
  明治十七年九月五日       商工会々員
                    宮崎佐平
  東京商工会々頭
    渋沢栄一殿


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0023)
第18巻 p.230 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
拝啓
 愈御清康奉欣喜候、陳者会所ヨリ手形流通景況報スヘク旨御沙汰ニ付、則別紙之通愚文差出候間可然願上候 匆々不宣
    萩原源太郎様             喜谷拝
         机下
  明治十七年九月六日          (東京喜谷商店箋)
(別紙)
    手形流通ノ景況
本会ノ議決ニ依リ手形流通ノ景況ヲ報スヘク旨命ニ順ヒ左ニ申上候
拙者等売薬商組合ニ於ル手形流通ノ景況ハ同業者中僅ニ二三ノ実施取引アリシノミニ御座候、故ニ其流通ノ如何ヲ試ル迄ニ至ラス、準テ玆ニ開陳仕候程ノ義モ無之候、蓋シ組合及ヒ該業者ニ於テ手形取引ヲ嫌忌スルニアラズ、畢竟スルニ旧慣痼習ニ拘泥スルト手形取引ノ実益アルヲ能ク了解セサルト、且ツ商況不活発ノ為ニ其流用迄ニ及ハサルトニ原因仕候儀ト被存候、然トモ其業者中巨魁トモ可申輩ノ忌嫌ナク先鞭シテ実施ヲ企図スルニ於テハ一般其利用ヲ了解シ、必ラスヤ善ク滑カニ実行セラルル事ト確信仕候也
                東京売薬商組合
                  神田区小柳町六番地
  明治十七年九月五日          森嶋松兵衛
                  京橋区大鋸町六番地
                     喜谷市郎右衛門
    東京商工会々頭渋沢栄一殿


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0024)
第18巻 p.230-231 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
 - 第18巻 p.231 -ページ画像 
過日御照回相成候手形取引件ハ当組合営業者ハ都テ近国ノ取引ニテ府下ノ取引無之、僅ニ組合内ノ売買致候位ノ事故手形ヲ以取引致候程ノ義無之、尤追テ施行相成候様心配ハ致候得ドモ差向前言之次第ニ付此段御回答及候也
                下リ糠問屋
  十七年九月九日         大村五右衛門代理
                    榎本保衛
  商工会々頭
    渋沢栄一殿


東京商工会々外諸向往復文書 別冊(DK180020k-0025)
第18巻 p.231 ページ画像

東京商工会々外諸向往復文書 別冊 (東京商工会議所所蔵)
    答弁書
過般大蔵卿閣下ヨリ御諮問営業上手形取引之件ハ、兼テ会員三谷長三郎斎郷六兵衛ヨリ具ニ通知有之候以来、組合一同篤ト協議之上当今流通方既ニ執行中ニ御座候、尚往々進歩可致見込ニ御座候、御尋ニ付申上候也
  明治十七年九月         銅鉄物問屋組合仲間総代
                  世話掛リ
                    森友嘉蔵
                    長谷川貞次郎
  東京商工会々頭
    渋沢栄一殿

渋沢栄一書翰 萩原源太郎宛 (明治一七年)九月一一日(DK180020k-0026)
第18巻 p.231 ページ画像

渋沢栄一書翰 萩原源太郎宛 (明治一七年)九月一一日    (萩原英一氏所蔵)
○上略
手形之義ニ付復申案ハ次会之議決を要し候由、就而ハ下問之件二件有之候ニ付本月廿日過廿二日頃ニ開会仕度と存候、其議案ハ右下問二件と此復申案ニ候間可然御取斗可被下候
○中略
  九月十一日                        渋沢栄一
    萩原源太郎様


東京商工会議事要件録 第七号・第四―一三頁 明治一七年一〇月一五日刊(DK180020k-0027)
第18巻 p.231-232 ページ画像

東京商工会議事要件録  第七号・第四―一三頁 明治一七年一〇月一五日刊
  第七臨時会  (明治十七年九月廿二日午後六時三十分開会)
    会員出席スル者 ○五十名
○上略
次ニ会長 ○渋沢栄一ハ手形取引ノ儀ニ就テハ前会ノ決議ニ拠リテ先ヅ各組合及銀行集会所ヘ依頼シテ実況ヲ調査シタルニ其後各組合ヨリ報告ヲ得タルモノ合セテ十八、殊ニ銀行集会所ヨリハ稍々精細ナル統計表ヲ廻付アリタルニ付、右等ニヨリ復申案ヲ調成シタリトテ先ヅ書記ヲシテ其草案ヲ朗読セシム
    手形取引ノ儀ニ付大蔵卿閣下ヘ復申案 ○次掲「復申書」ト同一ナル故略ス
時ニ五十八番(川原英次郎)ハ従来手形ノ充分拡張セザルハ畢竟各商
 - 第18巻 p.232 -ページ画像 
人ガ其不渡ノ場合ヲ懸念スルニ由ルモノナレバ、今此復申書ヲ上呈スルニ当リ遠隔ノ土地ヘ係ル取引ニシテ若シ手形ノ不渡トナル時ハ被害者居住ノ土地ニ於テ直チニ裁判セラレタキ旨ヲ要望シテハ如何ントノ動議ヲ発セシガ、此説賛成ナクシテ終ニ本案ハ原案ノ如クニ可決シタリ(大蔵卿閣下ヘノ復申書ハ九月廿六日ヲ以テ之ヲ進達シタルニ付其全文ハ重ネテ本号ノ参考部ニ附ス)
会長ハ更ニ衆員ニ向テ曰ク、余ハ今手形取引ニ付念ノ為ニ一言セン、抑モ手形取引ノ件ハ目下大蔵卿閣下ノ痛ク配慮セラルヽ処ニシテ曩キニ閣下ガ大坂地方ヘ御出張ノ際該地ニ於テ諄々信約取引ノ商業上ニ必要ナル所以ヲ説明セラレタル由ナルガ、同地方ニ於テハ近時漸ク手形ノ便利ヲ感ジ、紙商及蝋商等従来手形ノ使用法ダニ知ラザリシ者迄モ今日取引ノ際間々之ヲ授受スルニ至リタリト聞ケリ、蓋シ手形取引ノ商業上ニ必要ナル事ハ固ヨリ論ヲ竣《(竢)》タズト雖トモ彼ノ「アツコンモデーシヨン、ビル」(融通手形)ノ如キハ元来実際上ノ取引ヨリ発生シタル手形ニ非ズシテ一時融通ヲ便スルガ為メニ発スル者ナレバ、大蔵卿及銀行局長ガ希望セラルヽ所ハ斯ル性質ノ手形ニ非ズシテ全ク実際ノ取引ニ由テ起ル所ノ手形ニ在リ、去レバ頃日同卿閣下ヘ面会ノ砌各組合ヨリ報告シタル手形取引ノ概況ヲ具陳シタルニ、仮令其実跡未ダ著明ナラザルモ皆是実際取引上ヨリ発生シタル結果ナレバ閣下ニ於テモ殊ニ満足ノ意ヲ表セラレタリ、猶各員ニ於テモ一同此意ヲ体シ将来益々手形取引ノ拡張ニ尽力セラレン事切望ニ堪ヘザルナリ


東京商工会議事要件録 第七号・第三九―四三頁 明治一七年一〇月一五日刊(DK180020k-0028)
第18巻 p.232-233 ページ画像

東京商工会議事要件録  第七号・第三九―四三頁 明治一七年一〇月一五日刊
○参考部
   (手形取引ノ儀ニ付大蔵卿閣下ヘ復申書)
本年二月一日附ヲ以テ御諮問有之候手形取引ノ義ニ就テハ其後数回ノ会議ヲ開キ篤ト遂審議候処、従来手形取引ノ拡張セサルモノハ実ニ御下諭ノ如ク、各商賈カ充分之ヲ適用スルノ手続ニ慣熟セザルニ基キ候義ニ付、本会ニ於テハ先以各商買ヲ指導シテ其方法並ニ手続ヲ会得セシメ、然ル後其成跡如何ヲ観察可致事ニ議決仕、依テ爾後会員一同此意ヲ体シ精々心配致候上、猶銀行ノ義ハ元来金融ヲ媒助スルノ業ヲ営ミ、本件ニ就テハ其関係特ニ重大ナルニ付更ニ銀行集会所ヘモ協議ヲ遂ケ、之ガ拡充方共々尽力仕候処、何分方今商況不振ノ折柄ニシテ各商賈ガ手形ノ必要ヲ感スルノ機会ニ乏シク、随テ未ダ著明ナル進歩ノ実跡不相見候得共、現ニ本会加盟ノ組合又ハ会社中石灰蠣灰商会ノ如キハ其後石灰蠣灰製造人ニ対スル仕払ニ向テ約束手形ヲ振出シタルニ近頃ニ至リテ其製造人モヤヽ其取扱方ニ慣熟シ、此手形ヲ以テ更ニ他ノ仕払ニ転用致候モノ儘有之候趣、又洋糸商・薬種問屋其他ノ組合ニ於テハ其後新ニ約束手形ヲ使用シテ取引仲間ニ対スル帳簿上ノ貸借ヲ決済致候者有之候趣ニ御座候ヘバ、要スルニ各商賈ガ実際取引上ニ於テヤヽ手形ノ便利ヲ相感シ候姿ニ有之候、殊ニ今般銀行集会所ニ於テ試ニ其同盟銀行中ニ於ケル昨年下半季及本年上半季ノ手形割引高ヲ調査致候処、其増減ノ次第ハ別表ノ通リニ有之、即チ昨年下半季割引合
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計ハ七百五十三万〇九百六十八円四十三銭二厘、口数合計ハ四千四百九十三口ニシテ本年上半季割引合計ハ八百九十五万七千八百六十四円二十九銭、口数合計ハ五千二百日十口ナレバ、今本年上半季ヲ以テ昨年下半季ニ比スルニ金額ニ於テハ百四十二万六千八百九十五円八十五銭八厘、口数ニ於テハ七百九十七口ヲ増加致候、尤此内第二項ノ如キ金額ニ於テハ十七万七千五百三十六円十二銭三厘ヲ減少致候得共、口数ニ於テハ却テ百〇二口ヲ増加致候得バ、兎ニ角各商賈ガ手形ノ便利ヲ感スルノ度ヲ広メタルハ更ニ疑ナキノ事実ニ御座候、由是観之手形取引ノ義ハ過頃本会ガ御趣意ヲ奉体シテ之ガ拡充方ニ尽力仕候以来今日ニ至ル迄、啻ニ実際取引上ニ於テ其進度ヲ呈出シタルノミナラズ統計上ニ於テモ亦同一ノ傾向ヲ表示シタリト可申奉存候、抑モ今日商況不振ノ折柄ニシテ其進歩ノ実跡猶如此ヲ見レバ、此後一旦商況恢復シテ市場一般資本ノ補充ニ汲々タルノ日ニ至ラハ更ニ一層著明ナル形跡ヲ現出スヘキ事ハ確信仕候、蓋シ手形取引ノ行ハルヽト否トハ大ニ約束売買ノ慣習ノ消長ニ関係仕候事ハ改メテ申上候迄モ無之義ニシテ当府下ノ如キハ元来商売上ヨリ成立チタル都城ニアラズシテ随テ約束売買ノ慣習未ダ充分成立不仕、現ニ各商賈ノ取引スル所ハ概ネ現金売ニシテ偶々貸売ヲ為ス事アルモ其期限ヲ確定スル事ナク、恰モ取引手形ノ必要ヲ感スル事能ハザルノ情況ニ御座候得ハ、本会ニ於テハ向後此約束売買方法成立致候様精々尽力可仕候得共、何卒其御筋ニ於テモ此辺ニ深ク御注念被為在自然相当ノ御方案モ有之候ハヽ先以約束売買ノ慣習ヲ助長セラレ、終ニ各商賈ヲシテ適切ニ手形ノ必要ヲ感スルノ位地ニ立タシメラレ候様徐々ニ御経画相成度希望仕候、先ハ此段復申旁併テ具陳仕候也
  明治十七年九月廿六日        東京商工会々頭
                      渋沢栄一
    大蔵卿松方正義殿
   ○別表ハ明治十七年九月五日付ニテ銀行集会所ヨリ東京商工会ヘ呈出セルモノ(本巻第二二六頁)ニ同ジ。 ココニハ略ス。


東京商工会議事要件録 第九号・第一九―三四頁 明治一八年三月一四日刊(DK180020k-0029)
第18巻 p.233-234 ページ画像

東京商工会議事要件録  第九号・第一九―三四頁 明治一八年三月一四日刊
  第五定式会  (明治十八年二月廿七日午後四時三十分開会)
    会員出席スル者 ○七十一名
○上略
次ニ会長(渋沢栄一)ハ明治十七年下半期定式事務ノ成跡ヲ報告ス、即チ左ノ如シ
  自明治十七年七月至同十二月 半季間事務ノ報告
○中略
    襍事   三件
○手形取引ノ義ニ付大蔵卿閣下ヘ復申ノ件
  明治十七年二月一日松方大蔵卿閣下ヨリ諮問セラレタル手形取引ノ件ハ、其後数回ノ会議ニ於テ審議ノ末遂ニ会員ヨリ各其組合ニ向テ之ガ実行ヲ誘導シ、且ツ本会ヨリ銀行集会所ヘ詢カリテ之カ
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拡充ノ途ヲ講究シ、数月ノ後其成跡ヲ大蔵卿閣下ヘ具陳スヘシト云フニ決シ、其着手ノ手続ハ既ニ八月廿三日ノ第三定式会ニ於テ之ヲ報告セシガ、其後各組合及銀行集会所ヨリ送付シタル調査書ヲ見ルニ其進歩ノ実跡ヤヽ確認スベキモノアリタルニ付、即チ其ノ景況ヲ具シテ復申案ヲ草シ九月廿二日第七臨時会ノ可決ヲ得、同月廿六日附ヲ以テ之ヲ大蔵省ニ進達シタリ
○下略