デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第20巻 p.107-109(DK200007k) ページ画像

明治25年8月30日(1892年)

是ヨリ先第一国立銀行取締役須藤時一郎、当会議所会頭タル栄一ヲ相手トシ撰挙人名簿ヨリ除名サレタキ旨ノ訴訟ヲ提起中ナリシガ、是日東京地方裁判所ヨリ原告ノ請求相立タザル旨ノ判決アリ。


■資料

大阪商業会議所月報 第一号 明治二五年九月 【商業会議所会員撰挙…】(DK200007k-0001)
第20巻 p.107-109 ページ画像

大阪商業会議所月報  第一号 明治二五年九月
○商業会議所会員撰挙権に関する判決例 銀行の重役は商法第四条に掲けたる商業者の部類に属すへきや随て商業会議所会員の撰挙権を有するやの問題は往々議論の免れさる所なりしか、曩に第一国立銀行取締役須藤時一郎氏より東京商業会議所に係る撰挙人名簿除名請求の訴訟に対し東京地方裁判所か与へたる判決は此問題に好例証を与へたるものなるを以て左に其判決書の全文を掲く
 - 第20巻 p.108 -ページ画像 
    判決書
          東京府東京市浅草区北富坂町十九番地
          平民銀行役員
          原告          須藤時一郎
          右訴訟代理人      小川三千三
          東京府東京市日本橋区兜町二番地
          東京商業会議所会頭
          被告          渋沢栄一
          右訴訟代理人      菊地武夫
 右当時者間《(事)》ノ撰挙人名簿除名請求訴訟事件ニ付、当地方裁判所ハ判決スル左ノ如シ
  原告ノ請求相立タス
   訴訟費用ハ原告ノ負担トス
      事実
 原告ハ目下第一国立銀行ノ取締役ナルコトハ事実ナルモ自ラ商業ヲ営ムモノニアラスシテ単ニ有給雇員タルニ過キサルモノナリ、然ルニ被告会議所カ此事実ヲ商業ト認メ原告ノ氏名ヲ其撰挙人名簿ニ登録シタルハ誤謬ナルヲ以テ之レカ除名ヲ求ムト云ヒ、被告ハ原告カ右ノ如ク国立銀行ノ役員トシテ勤務スルハ即チ商業ニ従事スルモノナルヲ以テ之ヲ商人ト認メ、撰挙人名簿ニ登載シタルハ毫モ誤謬タラサルニヨリ其要求ニハ応シ難シト云フ
      理由
 国立銀行ノ取締役ナルモノハ果シテ商人ト認ムヘキモノナルヤ否ヲ按スルニ原告ハ単ニ有給ノ雇人タルニ過キサルモノナリト云フモ国立銀行成規第四十九条・第五十条・第五十一条等ニ依レハ取締役ハ殆ント頭取ト同一ノ権限アリ又或ル条件ヲ具シタル株主ニアラサルヨリハ之レニ就任スルコト能ハサルモノナレハ通常雇人ニアラスシテ全ク商人タルヤ疑ナシ、何トナレハ国立銀行営業ノ商業ナルコトハ勿論ナルヲ以テ株主ニシテ此勤務ヲ為スハ即チ自己及他株主ノ為メ其商業ニ従事スルモノナレハナリ、加之ナラス商業会議所条例第一条ニハ此条例ニ商業ト称スルハ商法第四条ニ掲ケタル商取引ノ各部類ニ属スル商人及作業人ヲ謂フトアレハ、商法第四条ノ第一乃至第十一ノ各項ハ当然本条ニ記載スヘキヲ唯其文字ヲ省略スルカ為メ之ヲ商法ニ譲リタルマテノ者ニシテ恰モ本条ニ記載シアルト一般ナルヲ以テ、之レニ依レハ国立銀行ノ取締役ハ其第六項ニ於テ商人タル事明白ナレハ、被告カ第一国立銀行ノ取締役タル原告ヲ商人ナリト認メ其氏名ヲ撰挙人名簿ニ登録シタルハ相当ナルモノト認ムルニ依リ原告ノ要求ヲ排斥スルモノトス
    東京地方裁判所民事第五部
               裁判長判事  松野篤義
  明治二十五年          判事  牧山栄樹
     八月三十日        判事  田代律雄
   ○次掲資料ニヨレバ判決ハ四月ノ如キモココニハ姑ク右ニヨル。
   ○佐々木勇之助氏談話ニヨレバ、須藤時一郎ハ極メテ理窟ポイ人ニテ恐ラク
 - 第20巻 p.109 -ページ画像 
本資料ニアル訴訟事件ノ如キモ栄一ト話シ合ヒノ上ニテ提起セラレタルモノナラント。(昭和十二年五月十二日編者)


東京経済雑誌 第二五巻第六二二号・第六四七頁 明治二五年五月七日 ○須藤氏対渋沢氏訴訟(DK200007k-0002)
第20巻 p.109 ページ画像

東京経済雑誌  第二五巻第六二二号・第六四七頁 明治二五年五月七日
    ○須藤氏対渋沢氏訴訟
第一銀行取締役須藤時一郎氏より商業会議所会頭渋沢栄一氏に係る、同会議所選挙人名簿除名請求の訴訟は、去月三十日原告の請求相立たざる旨裁判宣告ありたり、此判決に依れば自分商業を営まざるも商事会社の役員たる時は法律上商人と認むべきものなりと、此判決の結果は須藤氏一個人には誠に僅小の件なれども、他に大なる結果を生すべし、何となれは会社の取締役にして商人ならんには、東京府会は必ず之に対して営業税を賦課すべし、若し毛利元徳・池田章政等の大華族に向ひて一々営業税を賦課することとならば、東京府会は財源を得たることにて大に歓喜するなるべしと雖も、斯る華族諸公か其会社銀行の取締役とならるゝは、全く名誉職にて損失あるも利益あることなし然るに更に営業税を賦課せらるゝのみならず、商業会議所の費用までを負担するは、非常に迷惑なることにて、終には華族諸氏は取締役を辞するの結果を発すべしと思はる