デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第20巻 p.569-572(DK200065k) ページ画像

明治28年6月27日(1895年)

是ヨリ先当会議所、第二回商業会議所聯合会ノ決議ニ係ル煙草税則改正ノ件ヲ調査中ナリシガ、是日ノ会議ニ於テ、改正スベカラザル旨ヲ議決ス。栄一、会頭並ニ商業部長トシテ之ニ与ル。


■資料

第三回東京商業会議所事務報告 第三九頁 明治二七年四月刊(DK200065k-0001)
第20巻 p.569 ページ画像

第三回東京商業会議所事務報告  第三九頁 明治二七年四月刊
一 ○上略 煙草税則改正 ○中略
 本件ハ第二回商業会議所聯合会ノ決議ニ起因シ、役員会議ノ提案ニ係リ ○中略 其調査ヲ商業部ニ附託シ ○下略
 - 第20巻 p.570 -ページ画像 


第四回東京商業会議所事務報告 第三六頁 明治二八年四月刊(DK200065k-0002)
第20巻 p.570 ページ画像

第四回東京商業会議所事務報告  第三六頁 明治二八年四月刊
一煙草税則改正 ○中略
 本件ハ前回ニ報告シタル如ク、第二回商業会議所聯合会ノ決議ニ係リ、商業部ニ於テ調査中ニ付、追テ其報告ヲ得タル上更ニ会議ニ附スル見込ナリ


第五回東京商業会議所事務報告 第五八―六〇頁 明治二九年四月刊(DK200065k-0003)
第20巻 p.570-572 ページ画像

第五回東京商業会議所事務報告  第五八―六〇頁 明治二九年四月刊
一煙草税則改正ノ儀調査ノ件
 本件ハ前回ニ報告シタル如ク第二回商業会議所聯合会ノ決議ニ係リ商業部ニ於テ調査中ノ処、其後同部ニ於テ調査ノ末左ノ如ク報告書ヲ提出シタルニ付、之レヲ明治二十八年六月二十七日第四十五回ノ臨時会議ニ附シ其可決ヲ得タリ
    煙草税則改正ノ件調査報告
  曩ニ臨時会議ノ決議ニ拠リ第二回商業会議所聯合会ノ議題タリシ煙草税則改正ノ件、本部ヘ調査ヲ附託セラレタルニ付、爾来篤ト遂審議候処、本部ノ意見ハ別紙ノ如ク議決候間此段及御報告候也
   明治二十八年六月十九日
                 商業部長 渋沢栄一
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
 (別紙)
 一煙草税制改正ノ件ハ之ヲ否決ス
  理由 本件発案者ノ趣旨ハ、現今税則ハ手数繁密ニシテ為メニ当業者ノ損害尠カラサルヲ以テ、印紙税ヲ廃シテ葉煙草税ニ改メントスルニ在リ、而シテ発案者ハ更ニ葉煙草税実施ノ方法ヲ開陳シテ、各府県ニ一ケ所若クハ二ケ所ノ市場ヲ設ケ、開市日ヲ定メ、耕作人又ハ元仲買人ニ限リ製造人又ハ仲買人ニ売渡スコトヲ許シ製造人又ハ仲買人ヲシテ其取引売買代価百分ノ十五ノ割合ヲ以テ即日之ヲ市場ノ検税所ニ納税セシムヘシト云ヘリ、思フニ発案者ハ之ヲ以テ現行印紙税ヨリ生スル所ノ煩雑ナル手数ト多クノ不便トヲ免ルヽヲ得ヘシト為スト雖トモ、其取引ノ際ニ於ケル帳簿ノ取扱ト検税ヲ受クルノ手数トハ必スシモ今ヨリ減少スヘシトハ信スヘカラス、況ンヤ耕作人ニ此煩雑ナル手数ヲ為サシムルニ於テオヤ、夫レ煩雑ナル帳簿ヲ取扱フコトハ常ニ牙籌ヲ事トスル商売ニ於テスラ尚ホ堪ヘ難シト為ス所ナルニ、是ヲ以テ遽ニ純朴ナル農夫ヲ煩ハサントスルハ殆ント実行スヘカラサル所ナリトス、加之発案者ノ言フ所ニ依レハ納税ハ製造人・仲買人之ヲ負担スルモノニシテ、耕作人ハ素ヨリ直接ニ之ニ与ラストナスト雖トモ、製造人及仲買人ハ成ル可ク自己ノ負担ヲ軽減センコトヲ希望スルカ故ニ、勢ヒ葉煙草ノ売買代価ヲ低廉センコトヲ勉メ、純朴ナル農夫ハ常ニ機敏ナル対手仲買ノ圧抑ヲ蒙リ、地租負担ノ外ニ更ニ此税額ノ幾分ヲ間接ニ負ハセラレ事実上殆ント二重税ヲ賦課セラルルト一般ノ結果ヲ来スノ虞アリトス、且ツ収税官カ先ツ煙草耕地ノ反別ヲ管理シ、之ニ照シテ市場ノ売買高ヲ監査シ、而シテ脱税
 - 第20巻 p.571 -ページ画像 
者ナカラシメントスルハ最モ困難ナル事務ニシテ、実際充分ノ取締ヲ施行スルコト頗ル難カルヘシ、蓋シ徴税取締ノ事務困難ナルニ従ヒ益々多クノ煩累ヲ当業者ニ及ホスヘキハ自然ノ数ナルカ故ニ、単純ナル生活ヲ為セル農夫ハ斯カル煩累ト不利益トヲ忍ンテ尚ホ煙草ヲ耕作スルノ必要ナキヲ以テ、煙草ノ耕地ハ漸ク減少スルニ至ルナキヲ保セス、発案者或ハ言ハン、仏ノ如キ、澳ノ如キ地租ノ外別ニ煙草ノ耕地ニ特種ノ税ヲ課スルノ国其例乏カラス、此等ノ国ニ於テハ其負担ハ直接ニ農夫ノ負フ所ナリト雖トモ、未タ曾テ煙草耕作人カ負担ノ重キニ堪ヘスシテ其業ヲ移シタルモノアルヲ聞カスト、是レ所謂其一ヲ知テ其二ヲ知ラサルノ論ナリ、何トナレハ此等ノ国々ニ在テハ外国ヨリ輸入スル煙草ニ対シテハ最モ苛重ナル関税ヲ課シ、以テ内国ノ煙草耕作ヲ保護シ、能ク輸入煙草トノ権衡ヲ維持スルコトヲ得ルカ故ニ、其耕作ノ発達上ニ於テ毫モ障碍ヲ受クルコトナケレハナリ、今ヤ我国ニ於テハ則チ如何、輸入ノ煙草ニ関税ヲ課スルコト能ク仏・澳ノ如ク自由ナルコトヲ得ル乎、内国ノ煙草耕作ヲ庇護スルコト亦タ彼レカ如ク厚キコトヲ得ル乎、若シ然ルコト能ハスシテ遽カニ内地耕作人ノ負担ヲ偏重センカ、忽チ輸入煙草ノ跋扈ヲ来タシテ、内地ノ煙草ハ其価格ノ上ニ於テ之レト其衡ヲ争フコト能ハサルヤ明ナリ、縦シ夫レ迄ニ至ラストスルモ、今ヤ輸入煙草ハ年々ニ其額ヲ増加シ来ルノ勢アリテ、寧ロ内国ニ於ケル煙草ノ耕作ニ多少ノ保護ヲ要スルノ時ナレハ、此際ニ於テ却テ其耕作ノ発達ヲ妨クルカ如キ処置ヲ執ルハ実ニ国家ノ長計ニ非サルナリ、而シテ更ニ税額ノ上ニ就テ之ヲ論スレハ、其税額二百三十万円内外ハ製造煙草ノ上ニ課セラレタルモノニシテ、製造費及装飾費等ヲ包含セル煙草ノ代価ヨリ割出シタルモノナルカ故ニ、若シ其粗製品タル葉煙草ニ課税シテ現今ノ税額ニ満タシメントセハ更ニ四割乃至五割ノ増税ヲ為ササルヲ得サルヘシ、尚一歩ヲ進メテ之ヲ論スレハ、煙草ノ耕作人ハ多ク寒村僻地ノ小農ニシテ数町歩ノ耕地ヲ有スルモノ甚タ稀レナルニ、此等ノ小農カ其ノ掌大ノ地ヲ耕ヤスニ当リ一々税吏ノ厳密ナル監査ヲ受ケ、而シテ其僅少ナル収穫ヲ売却セントスルニ至テ更ニ場所及時日ノ制限ヲ設ケラルヽノミナラス、尚ホ機敏ナル仲介人ノ掛引ニ依テ定メラレタル人為ノ相場ヲ標準トシテ其代価ヲ左右セラルヽトセバ、之ニ附帯スル所ノ煩累ハ暫ラク置キ、彼等カ生活上ノ困難ハ実ニ計ルヘカラサルモノアラン、加之耕作人又ハ元仲買人カ先ツ現物ヲ市場ニ運搬シテ而シテ後売買ヲ為スコトハ最モ困難ニシテ殆ント実際上、出来難キ迄ノ不便アルカ故ニ自然他ノ商品取引所ノ如ク見本売買ノ法ヲ執ラサルヘカラサルニ至ラン、然ラハ則チ是レ純然タルブールス組織ニシテ、他ノ取引所ト毫モ選ム所ナキナリ、之ヲ要スルニ発案者カ現行法ヲ以テ不便不利ト為ス所ノモノハ、未タ以テ之ヲ廃セサルヘカラサルノ理由ト為スニ足ラサルノミナラス、其之ニ代ヘントスル所ノ葉煙草税ナルモノハ独リ徴税上ノ取締困難ナルノミナラス、当業者ノ迷惑ハ現行法ニ数倍シ、随テ煙草耕作ノ発達ヲ障碍スルコト少カラ
 - 第20巻 p.572 -ページ画像 
サルノ虞アルヲ信ス、是レ本件ヲ否決セル所以ナリ
   ○本巻明治二十六年九月二十二日ノ条参照。