デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第21巻 p.39-45(DK210008k) ページ画像

明治29年3月17日(1896年)

是ヨリ先自由党本部ヨリ当会議所ニ対シ、民法修正案第三百六十四条即チ記名株式又ハ社債ヲ以テ質権ノ目的ト為シタルトキノ規定ヲ実施セル場合ニ於ル商業上ノ便否如何ヲ照会シ来リシガ、是日当会議所、該規定ノ経済社会ニ与フル悪影響ノ甚
 - 第21巻 p.40 -ページ画像 
大ナル所以ヲ回答ス。栄一調査委員タリ。


■資料

東京商業会議所月報 第四四号・第二九頁 明治二九年四月 【同月 ○三月七日、民法…】(DK210008k-0001)
第21巻 p.40 ページ画像

東京商業会議所月報  第四四号・第二九頁 明治二九年四月
○同月 ○三月七日、民法中修正案第三百六十四条ノ儀ニ付、自由党本部ヨリ照会書ヲ接受ス(照会書ノ全文ハ参照ノ部第十一号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第四四号・第四三―四四頁 明治二九年四月 【参照第十一号 三月七日…】(DK210008k-0002)
第21巻 p.40 ページ画像

東京商業会議所月報  第四四号・第四三―四四頁 明治二九年四月
○参照第十一号
 三月七日、民法中修正案第三百六十四条ノ儀ニ付、自由党本部ヨリ接受シタル照会書ハ左ノ如シ
拝啓民法修正案第三百六十四条実施ニ付テハ商業上便否如何可有之哉懸念スル所モ有之候間、貴所ノ御意見承知仕度、右ハ同法案決定ニ付キ差急キ候条至急御回答煩シ度、此段及御照会候也
  明治廿九年三月六日           自由党本部
    東京商業会議所 御中
 追テ同条実施相成候テハ不便トノ御意見ニ候ヘハ、修正ノ参考ニ供シ度候間、可相成詳細御回答相願候也


東京商業会議所月報 第四四号・第二六頁 明治二九年四月 【三月九日、本会議所事…】(DK210008k-0003)
第21巻 p.40 ページ画像

東京商業会議所月報  第四四号・第二六頁 明治二九年四月
○三月九日、本会議所事務所ニ於テ第五十回臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者ハ左ノ如シ
 加東徳三君 ○外二十四名氏名略
午後五時四十分開議、副会頭大江卓君議長席ニ着キ、左ノ件々ヲ議事ニ附シ、午後八時二十分閉会ス
 一、民法修正案第三百六十四条ノ儀ニ付自由党本部ヨリ照会ノ件
本件ハ多数ヲ以テ、議長ノ指名ニ依リ委員五名ヲ選挙シ、民法及ヒ商法取調委員ト協議成案セシメ、直チニ自由党本部ニ回答スルニ決シ、乃チ議長ハ左ノ諸君ヲ委員ニ指名ス
                   加東徳三君
                   渋沢栄一君
                   吉田幸作君
                   伊藤幹一君
                   中野武営君


東京商業会議所月報 第四四号・第二九頁 明治二九年四月 【三月九日、本会議所事…】(DK210008k-0004)
第21巻 p.40 ページ画像

東京商業会議所月報  第四四号・第二九頁 明治二九年四月
○同月 ○三月十六日午後三時四十五分、本会議所事務所ニ於テ委員会議ヲ開キ、民法中修正案第三百六十四条修正ノ件ヲ審議シ、午後五時二十分閉会ス


東京商業会議所月報 第四四号・第二九頁 明治二九年四月 【同月 ○三月十七日、民…】(DK210008k-0005)
第21巻 p.40 ページ画像

東京商業会議所月報  第四四号・第二九頁 明治二九年四月
○同月 ○三月十七日、民法中改正案第三百六十四条ノ儀ニ付、自由党本部ヘ回答書ヲ発ス(回答書ノ全文ハ参照ノ部第十二号ニ掲載ス)
 - 第21巻 p.41 -ページ画像 

東京商業会議所月報 第四四号・第四四―四六頁 明治二九年四月 【参照第十二号 三月十七…】(DK210008k-0006)
第21巻 p.41-43 ページ画像

東京商業会議所月報  第四四号・第四四―四六頁 明治二九年四月
○参照第十二号
 三月十七日、民法中修正案第三百六十四条ノ儀ニ付、自由党本部ヘ発シタル回答書ハ左ノ如シ
本月六日附ヲ以テ御照会有之候民法修正案第三百六十四条ニ対スル本会議所ノ意見ハ別紙ノ通リニ有之候間、左様御承知相成度、此段及御回報候也
  明治廿九年三月十七日        東京商業会議所
    自由党本部 御中
(別紙)
    民法修正案第三百六十四条ニ対スル意見
今回法典調査会ノ調査ヲ経テ提出セラレタル民法修正案ヲ按スルニ、其第二編第九章質権ノ部ニ於テ
 第三百六十四条 記名ノ株式又ハ社債ヲ以テ質権ノ目的ト為シタルトキハ、株式又ハ社債ノ譲渡ニ関スル規定ニ従ヒ会社ノ帳簿ニ質権ノ設定ヲ記入スルニ非サレハ、之ヲ以テ会社其他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
ト規定セリ、而シテ既成民法即明治二十三年三月法律第二十八号債権担保編ニハ
 第百〇四条 会社ノ記名ノ株券又ハ債権ヲ質トナストキハ、証券ノ交付ノ外、会社定款又ハ法律ニ於テ株券又ハ債権ノ譲渡ノ為ニ定メタル方式ヲ以テ之ヲ会社ニ告示シ、其帳簿ニ記入スルヲ要ス
トアリ、今之ヲ対照スルニ、多少其字句ヲ異ニスト雖トモ大体ノ意義ニ於テハ殆ト同一ナリ、抑モ質権ハ修正案第三百四十三条ニ規定シタル如ク譲渡スコトヲ得サル物ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得サルガ故ニ商法第百八十一条株式ノ譲渡ハ取得者ノ氏名ヲ株券及株主名簿ニ記載スルニアラサレハ会社ニ対シテ其効ナシトアルニ依リ、其手続ヲ履行スルニアラサレハ質権ノ確定セサルモノト認メタルニ依ル歟、法理ノ上ニ於テ或ハ然ラン、然レトモ従来ノ慣行ト今日経済社会ノ状勢ニ照ストキハ事実上大ニ其非ナルヲ唱道セサルベカラズ、若シ其条規ニシテ必ス実行セサルベカラサルモノトセハ、債権者カ此等有価証券ヲ担保トシテ引受クル場合ハ必ス会社ニ於テ株主名簿ニ登記ヲ受ケザルベカラス、其執行ノ困難ナルハ論ヲ竣タス、其結果金融社会ノ円滑ヲ欠キ、殖産興業ノ進路ヲ妨ケ、国家経済上ニ及ホス影響亦実ニ至大ナリト云フベシ、請フ左ニ其理由ヲ述ベン
抑モ修正案本条中所謂質権ノ目的タル記名ノ株式又ハ社債ハ今日我邦ニ於テ如何ナル有様ヲ以テ行ハルヽヤ、熟々現今株式会社ノ組織ヲ見ルニ少数ノ大資本家ニ依リテ成立スルモノハ殆ント稀ニシテ、多数小資本家ノ手ニ依リテ成ルモノ多シ、之ガ為メ株券ヲ金櫃ニ収メ置ク者ハ地方一部ノ少数財産家ニ止リ、一般株主ノ株式ハ殆ント銀行家ノ担保トシテ金融市場ノ融通物トナルナリ、故ニ記名ノ株式ハ或ハ不動産ノ如キ性質ナルモ、其実際ニ於テハ無記名式証券ト同ク一般ニ融通証券トシテ之ヲ認メ、名義書換ノ委任状ヲ付シテ輾転売買セラルヽハ今日普通ノ慣例トナレリ、是ニ於テ此等有価証券ハ或ハ根抵当トシテ、
 - 第21巻 p.42 -ページ画像 
或ハ担保品トシテ朝ニ甲ニ差入レタルモノ夕ニ之ヲ引出シテ乙ニ売却シ、昨取得シタルモノ今ハ已ニ銀行ノ倉庫ニ在リ、其融通ノ頻繁ナル殆ント其影ヲ捉フヘカラス、而シテ今日幾億万ノ資本ヲ下シテ金融ノ機関ニ供スル銀行家カ其資本ノ貸出ニ対スル担保品ハ悉ク皆此等有価証券ナルヲ思ヘハ、此多数ノ取引ト頻繁ナル流通ヲ要スル株式及社債ヲシテ其変更ノ時々会社ノ名簿ニ登記セシムルカ如キハ到底行フ能ハサルコトト云ベシ、況ンヤ金融市場ニ流動セル此等有価証券ハ啻ニ其発行地方ニ於テ融通セラルヽノミナラス、全国各地ノ興業株式ハ到ル処ニ散在スルヲ以テ、会社ノ登記ヲ受クルニ於テ時日ト手数トヲ要スル論ヲ竢タス、此頻繁ナル金融社会ニ於テ此クノ如キ迂路ヲ辿ルトキハ金融ノ道ヲ阻碍シ経済社会ヲ紊乱スルニ至ラン、夫ノ明治二十三年中経済社会ニ恐慌ノ起ラントスルニ方リ、日本銀行カ株券担保ノ価格ヲ維持シ其潮流ヲ防キタルハ、融通ノ便容易ナリシ結果ナルヲ知ラハ思半ニ過クルモノアラン、又殖産興業上現今ノ状勢ヲ察スルニ其進歩ノ度実ニ著シク、之ヲ十数年前ニ徴スルニ僅々数万円ノ資金ヲ募集セントスルモ其困難殆ト名状スベカラザリシニ、今ヤ起業ノ設計一タヒ出ツレハ幾百万ノ資金立ロニ集リ、募集ノ容易ナルコト恰モ嚢中物ヲ捜ルカ如シ、是従前ニ在リテハ其出資ヲ所有財産ノ多寡ニ応シテ之ヲ個人ニ求メタルニ依ルモ今ヤ然ラス、株主ハ之ヲ引受クルノ資力ニ乏シキモ銀行家ニ依リテ巧ニ融通ノ道ヲ求メ、以テ資力以外ニ株式ヲ引受クルニ至レリ、是今日興業株式ノ容易ニ募集シ得ラルヽ所以ナランカ、果シテ然ラハ現今ノ銀行家ハ直接ニ勧業ノ機関タラスト雖トモ其実際ニ於テハ株式社債ノ融通ニ便益ヲ与ヘ、株主ニ代リテ出資ノ大部分ヲ引受クルヲ以テ、間接ニ勧業ノ機関タルヤ明ナリ
今日殖産興業ノ大ニ振起シタル蓋シ銀行家ノ力与リテ大ナリト云フベシ、然ルニ本案ノ実行セラルヽニ於テハ其取扱ノ不便ナルト時日ノ遅緩ナルトニ依リ頻繁ノ融通ニ障碍ヲ与ヘ、今日経済社会ニ活動セル株式ヲシテ地所家屋ノ如ク死物ノ不動産タラシメ、従テ殖産興業ノ進路ヲ阻碍スルヤ耿トシテ火ヲ見ルヨリ明ナリ
又欧米各国ニ於ケル株式及社債ノ実況ヲ見ルニ、其流通ノ度我邦ノ如ク頻繁ナラス、会社ニ依リテハ単ニ其名義ヲ株主名簿ニ留ムルノミニシテ株券ヲ発行セサルモノアリ、従テ株主名簿ニ登記シタルモノハ悉ク其所有権ノ存在ヲ認ムト雖トモ、我邦ニ於テハ然ラス、株式会社ニシテ株券ヲ発行セサルモノナク、又其発行ノ目的融通ヲ計ルニ在レハ委任状ヲ付シテ常ニ輾転シ、殆ント占有権ノ存在ヲ知ラス、従テ株主名簿ニ登記セルモ其物件ヲ占有スルニ在ラサレハ之カ権利ヲ認メサルハ今日ノ慣行トナレリ、故ニ法律ノ制裁ハ措テ問ハス、実際ニ於テハ直ニ株主名簿ニ依リテ其財産ノ所有ヲ認諾スルモノナク、将タ第三者ト権利ヲ争フカ如キコトハ殆ト之レ無キナリ
我邦資本家ノ程度今日ニ於テハ恰モ平等ニシテ、巨万ノ財産ヲ有スルモノ極メテ少数ナル以テ株式ノ流通甚シク、又売買質入ノ度頻繁ナリト雖トモ、将来経済社会ノ変動ニ依リ財産ノ不平均ヲ生シ、此等株式社債ハ悉ク大資本家ノ手ニ吸収セラルヽ暁ニ於テハ、権利ノ移転亦今日ノ如ク頻繁ナラス、此時ニ至リテハ普通不動産ノ移転ト同ク本条ノ
 - 第21巻 p.43 -ページ画像 
如キ手続ヲ要スル亦可ナリト雖トモ、融通ノ便アルニ依リテ興業ノ振起ヲ補助スル今日ノ経済社会ニ処スル規定トシテハ時機尚早シト云ハサルヘカラス
之ヲ要スルニ、本条ハ事小ナルニ似タリト雖トモ、経済社会ニ関スル影響実ニ至大ニシテ、金融ノ前途ヲ思ヒ殖産興業ノ将来ヲ察スレハ国家経済上実ニ憂慮ニ堪ヘサルナリ、故ニ法律ノ制定ハ宜シク之ヲ当局者ノ意見ニ任スト雖トモ、本条ノ規定ハ必ス事実ニ照査シ、今日実行シ得ベキ規定ニ修正セラレンコトヲ希望ス



〔参考〕民法修正案 法典調査会編 第七二頁 明治二九年二月刊(DK210008k-0007)
第21巻 p.43 ページ画像

民法修正案 法典調査会編  第七二頁 明治二九年二月刊
第三百六十三条 指名債権ヲ以テ質権ノ目的ト為シタルトキハ、第四百六十六条ノ規定ニ従ヒ第三債務者ニ質権ノ設定ヲ通知シ、又ハ第三債務者カ之ヲ承諾スルニ非サレハ、之ヲ以テ第三債務者其他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第三百六十四条 記名ノ株式又ハ社債ヲ以テ質権ノ目的ト為シタルトキハ、株式又ハ社債ノ譲渡ニ関スル規定ニ従ヒ会社ノ帳簿ニ質権ノ設定ヲ記入スルニ非サレハ、之ヲ以テ会社其他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
   ○「民法修正案」ハ法典調査会ノ起草セシモノニシテ、政府ハ之ヲ明治二十九年二月第九議会ニ政府案トシテ提出セリ。



〔参考〕民法修正案理由書 自第一編至第三編 法典調査会編 第二八九―二九〇頁 明治二九年二月刊(DK210008k-0008)
第21巻 p.43-44 ページ画像

民法修正案理由書 自第一編至第三編 法典調査会編  第二八九―二九〇頁 明治二九年二月刊
第三百六十三条
(理由)本条ハ債権担保編第百三条ノ一部ニ些少ノ修正ヲ加ヘタルモノニ外ナラス、今記名証券ノ文字ニ代フルニ指名債権ナル文字ヲ以テシタルハ、本条ヲ適用スヘキ場合ハ独リ債権ノ証券アル場合ノミニ限ラサルノ意ヲ明ニセンカ為メナリ
第三百六十四条
(理由)本条ハ債権担保編第百四条ニ当ルモノトス、同条ニ会社ノ定款云々トアルヲ改メテ株式又ハ社債ノ譲渡ニ関スル規定ニ従ヒト為シタルハ、会社ノ定款ハ法律ニ反スルコトヲ得サルヲ以テ、株式又ハ社債ノ譲渡ニ関スル規定ニ従ヒ云々ノ語アルトキハ会社ノ定款ナル文字ヲ省クコトヲ得ルヲ以テナリ
 本条ノ規定ハ我邦現在ノ慣習ニ反スルコトヲ認ムト雖モ、前条及ヒ次条ト同シク第三者ヲ保護スルノ目的ニ出ツ、恰モ不動産ニ関スル権利ノ移動ヲ以テ第三者ニ対抗スルニハ登記ヲ必要トスルト、毫モ異ナル所ナキ公益的規定ナリトス、若夫レ本条ノ場合ニ限リ質権ノ設定ヲ公示セサルモ尚第三者ニ対シテ其効アルモノトセハ、立法者ハ公益上第三者ヲ保護スルノ主旨ヲ一貫セサル責ヲ免カルヽコト能ハサルヘシ、本条ニ定ムル所ハ敢テ煩ニ失セル手続ニモ非サルヲ以テ、其慣習ニ背馳スルニ拘ハラス公益上之ヲ遵守スヘキモノトシ、以テ実際取引ノ安全・鞏固並ニ信用ヲ保持スルコトヲ計ルノ至当ナルヲ疑ハサルナリ
   ○「民法修正案理由書」ハ法典調査会ガ明治二十九年二月前後ニ、起草ノ修
 - 第21巻 p.44 -ページ画像 
正案ノ各条ニツキ理由ヲ附シ印刷シタルモノニシテ、表紙ニハ「未定稿本禁販売及翻刻」トアリ。



〔参考〕第九回帝国議会衆議院議事速記録 第二五号 明治二九年二月二七日(DK210008k-0009)
第21巻 p.44 ページ画像

第九回帝国議会衆議院議事速記録  第二五号 明治二九年二月二七日
 明治二十九年二月二十六日(水曜日)午後一時十分開議
○上略
○議長(楠本正隆君) 次ハ日程ノ第一、民法中修正案第一読会、該議案ハ浩瀚ナルヲ以テ朗読ヲ省キマス
○中略
○議長(楠本正隆君) 御質疑ガナケレバ、日程ハ第二特別委員ノ選挙ニ移リマス
○中略
○議長(楠本正隆君) 二十七名ノ議長指名ノ委員ニ付託スルト云フ決議ニハ……
  〔「異議ナシ異議ナシ」ト呼フ者アリ〕
○議長(楠本正隆君) 然ラバ其事ハ決定ヲ致シマス



〔参考〕第九回帝国議会衆議院議事速記録 第三九号 明治二九年三月一七日(DK210008k-0010)
第21巻 p.44 ページ画像

第九回帝国議会衆議院議事速記録  第三九号 明治二九年三月一七日
 明治二十九年三月十六日(月曜日)午後一時二十四分開議
○上略
○議長(楠本正隆君) 是ヨリ議事日程ノ第一、民法中修正案第一読会ノ続――委員長星亨君

 第一 民法中修正案(政府提出) 第一読会ノ続(特別委員長報告)
  「星亨君演壇ニ登ル」
○星亨君(八番) 諸君、今日ハ民法中修正案委員会ノ結果ト経過ヲ報ジマス
○中略
次ニ報道致スノハ三百六十三条中ニ、是ハ印刷モ少シク間違ツテ丸バカリデハナイ、丸ヲモウ一ツ書カネバナラヌバカリデハナイ、条項バカリデハナイ所モ少シアル、其二項ヲ加ヘマシタ「前項ノ規定ハ記名株式ニハ之ヲ適用セス」ト云フコトヲ入レマシタ、是ハ実業界アタリデ今日ノ慣習ハ原案ノ如キモノデナイ、若シ原案ノ如ク規定シタナラバ非常ナル実業界ニ影響ヲ来スト云フコトデアツテ、即チ原案ノ通ニ致スト、記名ノ株券ヲ抵当ニ致ス時分ニハ其会社ヘ持ツテ往ツテ、会社ノ帳簿ニ入レネバナラヌト云フコトニ為ツテハ、大層差支ガ起ル故ニ、是デハ困ルト云フコトデアツテ、委員会ニ於テモ成ル程尤ノ事ダト云フノデ即チ「前項ノ規定ハ記名ノ株式ニハ之ヲ適用セス」記名ノ株式ハ此限ノ外ナリト云フコトニ致シタノデアル、従ツテ三百六十四条ハ前項ノ修正ノ結果トシテ「株式又ハ」ト云フコトガ二箇所アリマスモノハ、自然ノ結果トシテ削ラシタモノデアル ○下略
   ○右特別委員会ノ修正ハ其後衆議・貴族両院ニ於テ其儘可決セラレタリ。
   ○本会議所会員中野武営ハ特別委員ノ一人ニシテ、右ノ修正ニ就イテハ大ニ尽力セシモノノ如シ。(衆議院議事速記録第三九号)
 - 第21巻 p.45 -ページ画像 



〔参考〕法令全書 明治二九年下巻 内閣官報局編 刊 法律第八十九号(官報四月二十七日)(DK210008k-0011)
第21巻 p.45 ページ画像

法令全書 明治二九年下巻 内閣官報局編 刊
法律第八十九号(官報四月二十七日)
民法第一編第二編第三編別冊ノ通定ム
○中略
(別冊)
○中略
第三百六十四条 指名債権ヲ以テ質権ノ目的ト為シタルトキハ、第四百六十七条ノ規定ニ従ヒ第三債務者ニ質権ノ設定ヲ通知シ、又ハ第三債務者カ之ヲ承諾スルニ非サレハ、之ヲ以テ第三債務者其他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
 前項ノ規定ハ記名ノ株式ニハ之ヲ適用セス
第三百六十五条 記名ノ社債ヲ以テ質権ノ目的ト為シタルトキハ、社債ノ譲渡ニ関スル規定ニ従ヒ会社ノ帳簿ニ質権ノ設定ヲ記入スルニ非サレハ、之ヲ以テ会社其他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
○下略