デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第21巻 p.237-255(DK210032k) ページ画像

明治30年5月22日(1897年)

是日栄一当会議所会頭トシテ、アメリカ合衆国ニ於テ施行セントスル輸入海関税ノ改正ハ日本ノ貿易ヲ阻害スルニヨリ之ニ反対センコトヲ、外務大臣兼農商務大臣伯爵大隈重信ニ建議シ、駐米日本公使・米国大統領・紐育商業会議所・米国上院外国関係事項調査委員長宛夫々反対ノ電文ヲ発ス。


■資料

東京商業会議所月報 第五八号・第九頁 明治三〇年六月 【○同月 ○五月十八日…】(DK210032k-0001)
第21巻 p.237 ページ画像

東京商業会議所月報  第五八号・第九頁 明治三〇年六月
○同月 ○五月十八日午後四時、本会議所ニ於テ役員会議ヲ開キ、米国輸入海関税改正ノ義ニ関シ臨時会議開設ノ件ヲ審議シ、午後七時閉会ス


東京商業会議所月報 第五八号・第九頁 明治三〇年六月 【同月 ○五月二十一日、…】(DK210032k-0002)
第21巻 p.237-238 ページ画像

東京商業会議所月報  第五八号・第九頁 明治三〇年六月
○同月 ○五月二十一日、本会議所ニ於テ第六十三回臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者ハ左ノ如シ
 河村隆実君 ○外三十四名氏名略
午後六時開議、渋沢栄一君議長席ニ着キ、左ノ件々ヲ議事ニ附シ、午
 - 第21巻 p.238 -ページ画像 
後七時二十分閉会ス
 一米国輸入海関税改正ノ義ニ関シ外務・農商務両大臣ヘ建議ノ件
                      (役員会議提出)
本件ハ全会一致ヲ以テ原案ノ如ク可決ス
 一米国輸入海関税改正ノ義ニ関シ米国公使ヲ訪問シ、併セテ米国大統領・星公使ヘ発電スル件(会員提出)
本件ハ会員池田謙三君ノ提議ニ係リ、其要旨ハ、米国輸入海関税ノ改正ハ日米貿易ノ発達ヲ阻碍スルニ依リ、会頭ハ本会議所ヲ代表シ在東京米国公使ヲ訪問シテ本会議所ノ意見ヲ告ケ、且ツ米国大統領及ヒ在米星公使ニ発電シテ本会議所ノ所見ヲ表白スヘシト云フニ在リ、審議ノ末全会一致ヲ以テ之ヲ可決ス
 一米国輸入海関税改正ノ義ニ関シ神戸商業会議所ヨリ照会ノ件
本件ハ神戸商業会議所ヨリノ照会ニ係リ、其要旨ハ、東京商業会議所ニ於テ全国商業会議所ヲ代表シ、米国輸入海関税改正ノ義ニ関シ第六回商業会議所聯合会ニ於テ決議シタル要旨ヲ米国大統領及ヒ星在米公使ヘ発電スル手続ヲ運ハレタシト云フニ在リ、審議ノ末、右ハ手続上穏カナラサルニ付、本会議所ハ一己ノ資格ヲ以テ米国大統領其他ヘ発電シ、参考ノ為メ右ノ次第ヲ全国各商業会議所ヘ通知スルニ決ス


東京商業会議所月報 第五八号・第一〇頁 明治三〇年六月 【○同月 ○五月二十二…】(DK210032k-0003)
第21巻 p.238 ページ画像

東京商業会議所月報  第五八号・第一〇頁 明治三〇年六月
○同月 ○五月二十二日、米国輸入海関税改正ノ件ニ関シ神戸商業会議所ヨリ照会書ヲ接受ス(照会書ノ全文ハ参照ノ部第三号ニ掲載ス)
○同月同日、米国輸入海関税改正ノ義ニ関シ外務・農商務両大臣ヘ建議書ヲ進達ス(建議書ノ全文ハ参照ノ部第一号ニ掲載ス)
○同月同日、米国輸入海関税改正ノ義ニ関シ米国大統領・米国上院外国関係事項調査委員長・星駐米公使・紐育商業会議所ヘ向ケ電報ヲ発送ス(電報訳文ハ参照ノ部第二号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第五八号・第一〇―一三頁 明治三〇年六月 【○参照第一号 明治三十年五月…】(DK210032k-0004)
第21巻 p.238-241 ページ画像

東京商業会議所月報  第五八号・第一〇―一三頁 明治三〇年六月
○参照第一号
 明治三十年五月二十一日第六十三回臨時会議ノ決議ニ依リ、米国輸入海関税改正ノ義ニ付、同月二十二日外務・農商務両大臣ヘ進達セシ建議書ノ全文ハ左ノ如シ
    米国輸入関税改正ノ義ニ付建議
我国海外貿易ニ於テ最モ重要ノ地位ヲ占ムルモノハ北米合衆国ナリ、然ルニ今ヤ同国ハ輸入関税ヲ改正シテ我国重要輸出品タル絹織物・絹製手巾・地蓆・段通等ニ苛重ノ課税ヲ為サントシ、其改正案ハ既ニ下院ノ可決ヲ経テ刻下上院ノ議題トナルニ至レリ、若シ不幸ニシテ斯ル改正案ノ実施セラルヽカ如キコトアラン乎、米国ニ対スル我国重要輸出品ハ宛カモ一種ノ禁止税ヲ課セラレタルト同一ノ結果ニ陥リ、数十年来漸ヲ以テ発達シタル日米貿易ハ俄然玆ニ一頓挫ヲ為サヽルヲ得サルニ至ルヘシ、米国関税改正ノ結果ハ彼ト通商スル各国共ニ其影響ヲ受クルコト論ナシト雖トモ、等シク絹製品ニ在テモ仏国産ノ如キ上等品ニ至テハ課税ノ割合甚タ軽ク、我国ノ特有産物トモ云フヘキ羽二重
 - 第21巻 p.239 -ページ画像 
甲斐絹類ノ如キ其量目ノ軽キモノヽミ至重ノ税ヲ負担セサルヲ得サル結果トナルヲ見ルトキハ、今回関税ヲ改正セントスル精神特ニ我製品ノ輸入ヲ禁遏セントスルニ在ルナキカヲ疑ハサルヲ得サルナリ、況ンヤ独リ絹製品ノミナラス、我国ノ特産ト称スヘキモノハ悉ク重税ヲ負担セシメラルヽノ迹アルニ於テオヤ、抑米国カ我ヲ勧誘シテ開国セシメタル高誼ハ我国民ノ肝銘シテ忘レサル所ナリ、爾来四十年ノ久シキ我ノ彼ニ対スル常ニ善隣トシテ敬愛ノ意ヲ失ハサルニ、今日ニ至テ遽ニ是ノ如キ挙ニ出ツルハ実ニ其意ノ在ル所ヲ知ルニ苦マサルヲ得ス
我国製品ノ競争ニ関シテ一部ノ合衆国民カ抱ケル恐怖心ハ、今回ノ挙ヲ促シタル主要ノ原因ナランモ知ル可ラサルモ、是全ク我国工業ノ真相ヲ解セスシテ過度ノ恐怖心ニ支配サルヽノ致ス所ト謂ハサル可ラス何トナレハ現時我ヨリ彼ニ輸出スル所ノ重要品ハ概ネ我ノ特技若クハ特産ニ出ツルモノニ係リ、競争品トシテ目スヘキモノハ極メテ小部分ニ過キサレハナリ、而シテ苛重ノ関税ヲ我輸出重要品ニ課スルノ結果如何ト云ヘハ、唯ニ我輸出品ノ販路ヲ阻碍スルニ止ラス、彼国民ニ在テモ亦必需ヲ充スカ為メニハ高額ノ代価ヲ支払ハサルヲ得スシテ、結局彼我共ニ等シク苦痛ヲ受クルニ畢ルヘキヤ明ナリ、苟クモ商業ニ熱心ナル北米合衆国民ニシテ豈此等覩易キノ事実ヲ知ラサルノ理アランヤ、知テ尚今回ノ如キ挙ニ出テントスルハ恐ラク一時ノ謬見之ヲシテ此ニ至ラシメタルモノナラン歟
従来日米貿易ハ我ヨリノ輸出毎ネニ彼ヨリノ輸入ニ超過スル傾ナキニ非サルモ、石油ノ如キハ主トシテ彼ヨリ輸入ヲ仰キ、数年前マテハ我国ニ輸入スル石油ハ殆ント米国産ノ独占ニ帰セシカ如キ実状アリ、繰綿ノ如キモ米国産ノ輸入スルモノ亦極メテ多シ、而シテ我国ノ好意ヲ彼ニ表セントスルニ切ナルヤ、尚勉メテ彼我貿易ノ権衡ヲ保タシメントシ、軌条ト云ヒ、軍艦ト云ヒ、彼ニ製造ヲ託セシモノ少シトナサス我ノ好意ヲ表スルコト是ノ如クナルニ、彼ハ却テ我製品ノ輸入ヲ禁遏セントス、我国民タルモノ安ンソ事ノ意外ナルニ驚カサルヲ得ンヤ
顧フニ米国固ヨリ具眼ノ士多シ、右改正案カ同国ノ法律トナルカ如キコトハ万之ナカルヘキヲ信スト雖モ、事体ノ影響スル所我国ノ利害ニ密接ノ関係ヲ有スルカ故ニ、本会議所ハ此際我政府ニ於テ好意上十分ノ警告ヲ彼ニ与ヘ、以テ彼ヲシテ翻然其図ヲ改メシメラレンコトヲ切望スルモノナリ、不幸ニシテ彼若シ我好意ヲ空フシ強テ苛重ノ関税ヲ我輸出品ニ課セントスルカ如キコトアラン乎、甚シク我国民ノ感情ヲ害シ彼我通商ノ円満ヲ欠クニ至ルハ必然ナリ、而シテ国家ハ自衛上已ムヲ得ス復讎税ヲ課スルノ自由ヲ有セサル可ラス、故ニ本会議所ハ此際併セテ我政府ノ最後ノ決意ノ此ニ出テラレンコトヲ望ムモノナリ
右本会議所ノ決議ニ依リ建議仕候也
  明治三十年五月二十二日
            東京商業会議所会頭 渋沢栄一
    外務大臣  伯爵 大隈重信殿
    農商務大臣 伯爵 大隈重信殿
○参照第二号
 明治三十年五月二十一日第六十三回臨時会議ノ決議ニ基キ、同月二
 - 第21巻 p.240 -ページ画像 
十二日米国駐在星公使・米国大統領・紐育商業会議所・米国上院外国関係事項調査委員長ヘ発送セシ電報ノ訳文ハ左ノ如シ
本会議所ハ米国輸入関税改正案ヲ以テ大ニ日本貿易ノ発達ヲ阻害スルモノト確認ス、依テ玆ニ閣下カ熱心ニ本案ノ成立ニ反対セラレンコトヲ切望ス
  明治三十年五月二十二日
            東京商業会議所会頭 渋沢栄一
    米国駐在全権公使 星亨殿
本会議所ハ米国輸入関税改正案ヲ以テ甚シク日本貿易ノ発達ヲ阻害スルモノト確認ス、依テ謹テ閣下ノ御再考アランコトヲ懇請ス
  明治三十年五月二十二日
            東京商業会議所会頭 渋沢栄一
    米国大統領殿
本会議所ハ米国輸入関税改正案ヲ以テ大ニ日本貿易ノ発達ヲ阻害スルモノト確認ス、依テ玆ニ貴下カ本案ニ反対スルコトニ就キ協力アランコトヲ懇請ス
  明治三十年五月二十二日
            東京商業会議所会頭 渋沢栄一
    紐育商業会議所会頭殿
本会議所ハ米国輸入関税改正案ヲ以テ日本貿易ノ発達ヲ壊滅スルモノト確認ス、依テ玆ニ閣下ノ御熟慮ヲ懇請ス
  明治三十年五月二十二日
            東京商業会議所会頭 渋沢栄一
    米国上院外国関係事項調査委員長殿
○参照第三号
 明治三十年五月二十二日米国輸入海関税ノ義ニ付神戸商業会議所ヨリ接受セシ照会書ノ全文ハ左ノ如シ
拝啓愈々御清穆奉敬賀候、陳ハ米国関税改正法案ノ義ニ付テハ、過日広島ニ於ケル聯合会ノ議決ニ基キ、既ニ本所ヨリモ其筋ヘ及建議候処聞ク処ニ拠レハ、同国上院ノ財務委員ハ不日其修正案ヲ以テ下院ト協議決定セントスルヤノ趣、果シテ然ラハ其結局モ将ニ近ニアルヘクト存候、就テハ此際尚ホ同法案ノ通過ヲ防クノ手段トシテ、全国商業会議所ヲ代表シテ同国大統領マツキンレー氏ヘ聯合会協議案ノ趣旨ヲ発電シ、大ニ我商工業家ノ輿論ヲ発表シテ反省ヲ促シ、尚同国駐在星公使ヘモ此上一層尽力アランコトヲ発電スルノ労ヲ貴所ヘ嘱託スルコトヲ、昨十九日本所総会ニ於テ議決致候間、幸ニ御賛同被下候ハヽ乍御手数貴所ヨリ各商業会議所ヘ電報ヲ以テ同意ヲ求メラレ、至急御決行被下候様致度、而シテ本件ニ関スル総テノ費用ハ右同意ノ全国商業会議所ニ於テ負担スルコトニ致度候、右ハ本所総会ノ議決ニ依リ此段得貴意候也
  明治三十年五月二十日
            神戸商業会議所会頭 山本亀太郎
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
 追テ当所附近商業会議所ヘハ即日同意ヲ表セラルヽ様手続可致置候
 - 第21巻 p.241 -ページ画像 
此段申添候也


東京商業会議所月報 第五九号・第三頁 明治三〇年七月 【○同月 ○六月十七日…】(DK210032k-0005)
第21巻 p.241 ページ画像

東京商業会議所月報  第五九号・第三頁 明治三〇年七月
○同月 ○六月十七日、米国輸入海関税改正ノ義ニ付、紐育商業会議所ヨリ回報書ヲ接受ス(回報書ノ全文ハ参照ノ部第九号ニ掲載ス)
○同月十八日、米国輸入海関税改正ノ義ニ付テノ回報書ニ対シ、紐育商業会議所ヘ返書ヲ発送ス


東京商業会議所月報 第五九号・第一二―一三頁 明治三〇年七月 【○参照第九号 明治三十年六月…】(DK210032k-0006)
第21巻 p.241-242 ページ画像

東京商業会議所月報  第五九号・第一二―一三頁 明治三〇年七月
○参照第九号
 明治三十年六月十七日、米国輸入関税改正ノ義ニ付、紐育商業会議所ヨリ接受セシ回報書訳文ハ左ノ如シ
    訳文
拝啓本月二十二日附電報ヲ以テ、目下議会ニ於テ審議中ニ係ル関税改正法案ハ日米両国間ノ貿易ヲ阻害ス可キニ付、本会議所ニ於テモ該法案反対ノ義ニ付キ協力候様御照会ノ趣拝承、即チ右ハ本会議所外国貿易及国庫歳入法調査委員ニ提供致候、尤モ前記委員ハ兼テ関税改正法案ヲ調査致居候、又別紙ハ該委員ノ報告ニシテ各議会議員ニ配布致候モノニ候、右得貴意度 頓首敬白
  一千八百九十七年五月廿四日
              紐育商業会議所書記長
                   ジヨージ、ウヰルソン
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
(別紙)
紐育商業会議所外国貿易及国庫歳入法調査委員長「ガスタヴ、エーチ、シワツブ」ハ目下議会ニ於テ審議中ニ係ル関税改正法案ニ関シ左ノ報告書及決議案ヲ提出ス
 外国貿易及国庫歳入法調査委員ハ今般下院ニ提出セラレタル「合衆国政府ノ歳入ヲ供シ、且内地工業ヲ奨励スルノ法案」即チ「ヂングリー」関税法案ニ就キ調査ヲ遂ケ、玆ニ左ノ報告書ヲ提出ス
  本委員ハ該法案ヲ調査スルニ当リテ、財政上或格段ナル課税主義ニ拘泥スルコトナク、総テ自家一個ノ私説若クハ偏見ヲ捨テ商業者タルノ眼光ヲ以テ公平無私ニ、広ク該法案実施ノ結果カ合衆国ノ利害及商業ノ消長ニ如何ナル影響ヲ及ホス可キヤヲ確メント努メタリ、今該法案ヲ詳細ニ引用論証スルヲ用ヒサルモ、該法案ハ「マツキンレー」案トシテ知ラレタル一千八百九十年ノ関税法ニ掲クル税率ノ夥多ヲ復活シタルハ実ニ明瞭ノ事実ニシテ、貨物ノ種類ニヨリテハ彼税率ヨリ遥カニ増加シタルモノ亦少ナシトセス本委員ハ該法案ノ浩澣ナルヲ以テ詳細ニ比較論議スルヲ要セス、只玆ニ該法案ノ税率ハ著シク増加シタルコトヲ摘記スレハ足レリトス、右ノ如キ変動ハ法案中ノ他ノ条件ト相伴フテ合衆国商業ノ全体ニ甚シキ影響ヲ与フヘキモノナレハ、本会議所ハ深ク之ニ対シテ熟考セサル可ラスト確信ス
  本委員ノ見ル所ニ拠レハ、合衆国ノ商業者ハ従来関税ノ変動ニヨ
 - 第21巻 p.242 -ページ画像 
リテ少ナカラサル危惧ヲ懐キ居リタルヲ以テ、今日ニ於テ其最モ熱心ニ希望スル所ノモノハ関税ノ税率不動ナルト、之ニ伴フテ商業ノ安全ナルトニ在リ、政府党ノ改正法案ヲ提出シタルハ政府ノ歳入ヲ増加シ、併セテ内地工業ヲ一層保護セントスルニアルハ明カナルモ、本委員ノ信スル所ニヨレハ、税率ヲ如何ニ定ムルモ、税法ヲ如何ニ革ムルモ、其税率税法ハ相当適切ニシテ敢テ急劇ナル変動ヲ及ホスコトナク、以テ有識者多数ノ賛成ヲ得ルモノナラサル可ラス、且又一旦之ヲ改正シタル以上ハ、忽チニシテ再ヒ之ヲ改正スルノ必要ヲ生シ、為メニ商工業ヲシテ不安危惧ニ陥ラシメ、合衆国ノ進歩発達ヲ妨ケ、其結果銀貨自由鋳造党ニ不幸ナル財政主義ヲ拡張スルノ機会ヲ与フルカ如キコトナカルヘキヲ期セサル可ラス
本委員ハ該法案ニ対シテ右ノ意見ヲ有スルカ故ニ、更ニ玆ニ左ノ決議案ヲ提出ス
 一紐育商業会議所ハ目下下院ニ於テ討議中ニ係ル関税法案ノ数多条項中ニハ税率ノ苛重ニ過キ、為メニ合衆国ノ商業及利益ヲ阻害ス可キ反動ヲ招クモノアリト確認スルヲ以テ、該法案ハ減税ノ方針ニヨリ修正ヲ加ヘ、其税率ハ可成永久ニ変動ナカラシメ以テ我邦ノ商業ヲ安全ナラシムヘキ事
 一此報告書及決議案ハ各議会議員ニ配布シテ其注意ヲ促ス事
 一紐育商業会議所ハ議会ニ対シ其意見ヲ徹底セシメンカ為メニ各都会及全国ノ商業団体ニ協力ヲ求ムル事
   一千八百九十七年三月三十一日
            外国貿易及国庫歳入法調査委員
                     (記名調印)
    紐育商業会議所 御中


東京商業会議所月報 第六〇号・第五頁 明治三〇年八月 【○同月 ○七月十八日…】(DK210032k-0007)
第21巻 p.242 ページ画像

東京商業会議所月報  第六〇号・第五頁 明治三〇年八月
○同月 ○七月十八日、在米国星公使ヨリ北米合衆国輸入関税改正案ノ義ニ付回報書ヲ接受ス


東京経済雑誌 第三六巻第八八六号・第二一七―二一八頁 明治三〇年七月二四日 ○関税改正に関する星公使の回答(DK210032k-0008)
第21巻 p.242-243 ページ画像

東京経済雑誌  第三六巻第八八六号・第二一七―二一八頁 明治三〇年七月二四日
    ○関税改正に関する星公使の回答
北米合衆国輸入関税改正の件に関し、先般東京商業会議所より在米星公使へ発電して同改正案の不成立に帰する様尽力せられんことを依頼せし処、今般同公使が六月十七日附を以て発したる左の回答去二十日同会議所《(マヽ)》へ達せりといふ
 拝啓陳者新関税法案は日本の貿易を阻害するに至るべきに付飽迄之に反対可致旨先きに御電報の趣了承致候、抑も関税率増加の議は昨年十一月大統領の改選に於けるレパブリカン党の勝利と共に殆ど確定したる者にして、昨年末より同党員寄々協議する処ありしに付、我輸入品に高税を課せざる様本官は当時より当路者に注意を加へ、爾来臨時議会開会後も或は公然当国政府に照会し、或は両議院に意見書を送り、新税率の不当を指摘し、本案万一法律となるときは日
 - 第21巻 p.243 -ページ画像 
米の貿易は素より両国の交際上にも痛嘆すべき影響を及ぼすべき旨詳論する等、及ぶ丈の手段を施し軽減方尽力せしに、元老院財政委員は我輸入品に対する衆議院案の税率を減少致せしのみならず、今日の模様にては製茶に対する税も全廃のことに確定し、花莚に対する二割五分の従価税も削減方稍見込有之、唯絹布品に対する税率は猶之を減少すること頗る困難に有之、元老院案率を維持する外有之間敷哉と存候へ共、猶及ぶ丈尽力怠らざる積りに有之候云々

   ○米国新関税法案ハ日米貿易ノ発展ヲ阻害スルノ惧レアルヲ以テ当会議所ノ外、我国朝野ハ挙ツテ之ニ反対セリ。其ノ主ナルモノヲ概観スレバ、明治三十年四月二十八日兵庫県段通業組合ハ該案ニ対シ当局ノ善処ヲ望ム旨ノ陳情書ヲ総理・外務・農商務ノ三大臣ニ呈出シ、五月八日ニハ第六回商業会議所聯合会ニ於テ米国新関税法案ニ対シテハ自衛上復讐的課税ヲナスノ自由ヲ有スル旨ノ決議案可決セラレタリ。同月日本貿易協会モ外務・農商務両大臣宛建議書ヲ呈出シテ該案ニ反対意嚮ヲ表明シ、中央茶業組合ニ於テモ同様ノ決議ヲナシ、十四日同組合中央会議所議長大谷嘉兵衛ハ米国大統領マツキンレー宛反対電文ヲ発セリ。同二十七日ニハ横浜商業会議所モ当局ニ於テ適宜ノ救済策ヲ講ゼンコトヲ外務・農商務両大臣ニ建議シ、二十八日ニハ長崎商業会議所モ右ト同趣旨ノ建議ヲ農商務大臣ニ上呈セリ。政府側ニ於テモ、五月外務大臣大隈伯ノ訓令ニ基キ星公使ハ米国政府並ニ国会ニ向ヒ交渉中ナリシガ、十二日大隈伯ハ米国政府ニ宛テ、大ニ貴国ノ反省ヲ望ム旨打電セリ。六月三日星公使ハ正式ニ日本側ノ抗議書ヲ米政府ニ手交セシガ、該書ハ抗議ノ言辞極メテ慇懃ナルモ其語調ハ厳格ニシテ、米国若シ其抗議ヲ容レズンバ報復スル所アルベキノ意ヲ包含セリ。斯ノ如ク我国朝野ハアゲテ米国新関税法案ニ反対ナリシガ、該案ハ両院ノ協議会其他ニ於テ多少ノ修正ヲ受ケタルノミニテ、七月十五日上院ヲ通過、同月二十四日大統領之ニ署名シ直チニ施行セラレタリ。新関税法ハ原案ニ比スレバ税率ニ於テ多少軽減セルモ、従前ノ税率ヨリ遥カニ加重セルモノニシテ我ガ輸出貿易ヲ阻害スルコト少カラザリシト言ハル。
   ○本巻明治三十年五月七日ノ条参照。



〔参考〕東京経済雑誌 第三五巻第八七五号・第七八五―七八八頁 明治三〇年五月八日 ○米国新関税則の結果如何(DK210032k-0009)
第21巻 p.243-245 ページ画像

東京経済雑誌  第三五巻第八七五号・第七八五―七八八頁 明治三〇年五月八日
    ○米国新関税則の結果如何
米国政府は海関税を増加するの目的を以て関税則を改正し、之を去る三月を以て召集したる臨時国会に提出し、代議院は既に之を可決して元老院に廻送し、元老院に於ても既に委員会を通過したりと云ふ、今我が邦より米国へ輸出する重要品に就て米国新現関税率を比較すれば左の如し
 絹織物 米国に輸出する本品は重に羽二重・甲斐絹及び絹製「ハンカチーフ」にして何れも頗る軽量のものに限り、即ち絹反物は殆ど全く六匁付以上十匁付以下の品物にして、就中六匁付以上七匁五分付の品全額の七割五分を占め、六匁以下の品並に十匁以上の品は甚だ稀なり、然るに七匁五分付は一平方に付碼一「オンス」の百分の九十、六匁付は百分の七十七重量を有するが故に、我絹物中尤も多額を占むる六匁付以上七匁五分付以下の品物は、新税法に於て一封に付四弗の税金を課せられ、之を従価税に換算するときは凡そ九割六分となり、現行税率に比すれば凡そ五割一分方を増加せり、然る
 - 第21巻 p.244 -ページ画像 
に我練絹一平方碼に付一封以上即ち八匁以上の品は三弗の税金に相当するが如し
 絹製手巾 にして縁縫なきものは絹織物と同様の税を課せらるゝと雖も、従価税五割より少からずとす、若し手又は器械にて縁縫・文字挿入其他細工を施しあるものは、絹織物に対すると同税率の外、更に従価税一割を課し、如何なる場合を問はず従価税六割より少からざるものとす
 花莚 は現行税法に依れば無税なれども、新法案にては一平方碼に付価格十仙以下のものに対しては一平方碼毎に八仙、同十仙以上のものに対しては一平方碼毎に八仙と従価税二割五分を課することゝなれり
 段通 は現行税法にては従価税二割なれども、新法案に於ては価格三十仙のものは三割五分以上の増額となり、三十仙以上の物は約六割の増税となれり
 麦藁真田 は従価税一割五分なるに、新法案に依れば三割の従価税を課することゝなれり
 陶器類 は装飾付の品は三割五分、白無地のものは三割の従価税なりしが、前者は六割、後者は五割五分、即ち二割五分乃至三割の増税となれり
 茶 は従来無税にして、新法案にも無税の部にあれども、本案第三章相互主義条款中茶に関する部を見るに、大統領は茶・珈琲・皮革を産出し、之を合衆国政府に輸出する所の外国政府に於て、合衆国政府の農産物又は製造品に課する処の税率が前記諸品の合衆国へ無税輸入せらるゝものに対し、相互主義上不権衡と思考する場合には大統領に於て適当と認むる時期間該品の無税輸入に関する本案の条款を停止するの権を有す、而して斯る場合には其停止の時期間は茶に対し一封に付十仙の税を課することゝなれり
大統領マツキンレー氏より臨時国会に交付したる教書に曰く
 国会は須らく速に時弊を矯救すべし、唯政府の経常費を償はんがためのみならず、吝まず迅速に恩給金を給与せんため、並に公債の元利を支払はんが為にも亦十分の収入を供給せざるべからず、収入を得んとするに方りては成るべく我製産業者の手に内国の市場を帰せしめ、製造業を振作発達せしめ、農業を救護奨励し、我内外貿易を拡張し、鉱業及建築業を助成し、各種の有用なる事業に於て労働者に割合好き賃銀と、熟練勤勉相当の報酬とを給する様、外国の製産品に課税すべし、十分の収入を供給すべき関税法を可決するの必要は是より以上に主張するを要せず、速に這般の法律を議定するは刻下の急務なれば、予は国会の此に尽力せんことを切望す
故に米国関税則改正の目的は専ら歳入を増加せんとするに在り、而して其の増加を期する歳入は総額二千二百三十七万二千磅にして、其の内訳は左の如し

                          磅
 化学品                七〇〇、〇〇〇
 陶器及び玻璃器類           八〇〇、〇〇〇
 金属                 八〇〇、〇〇〇
 - 第21巻 p.245 -ページ画像 
 木材                 三五〇、〇〇〇
 砂糖               四、三五〇、〇〇〇
 煙草               一、四〇〇、〇〇〇
 農産物              一、二六〇、〇〇〇
 飲料                 三六〇、〇〇〇
 綿製品                三四〇、〇〇〇
 亜麻麻及び黄麻並に其製造品    一、五六〇、〇〇〇
 羊毛並びに其の製造品       八、九〇〇、〇〇〇
 絹物及び絹製品            三〇〇、〇〇〇
 紙                   一二、〇〇〇
 雑品               一、二四〇、〇〇〇
  合計             二二、三七二、〇〇〇

是れ昨千八百九十六年六月三十日に終る一会計年度間に於ける米国の輸入額を基礎として計算せるものにして、其の輸入額は総計一億五千百九十四万磅に達し、之より徴収したる輸入関税は三千百三十二万一千磅なりき、故に若し新関税則は之と同一なる輸入額より二千二百三十七万二千磅の関税収入を増加すべしとせば、是れ現行関税は平均七割以上引上げらるゝものにして、現行関税は総輸入額の凡そ二割三分三分の一に相当せるに、新関税は三割五分三分の一に相当すべきなり斯く急激にして過大なる増加を企てたる関税則の果して其の目的を達すべきや否やを知らんと欲せば、千八百九十年十一月一日より実施したる「マツキンレー」税則と、現行税則即ち「ウイルソン」税則との下に於ける米国輸出入額の増減を査察するより善きはなし、即ち左の如し
 「マツキンレー」関税則施行の際

 九月三十日より翌年九月三十日に至る一ケ年    輸入額           輸出額
                            弗             弗
 一八九〇乃至九一年        八二四、七一八、八四二   九二三、三六二、〇一五
 一八九一乃至九二年        八三七、二八〇、七九八   九九八、二二六、七七五
 一八九二乃至九三年        八三〇、一五〇、三一八   八七五、三八二、四三四
 一八九三乃至九四年        六〇三、八六五、八九六   七九〇、七〇六、五〇九
 (八月三十一日まで)
 「ウイルソン」関税則施行の際
 八月三十一日より翌年八月三十一日に至る一ケ年  輸入額           輸出額
                            弗             弗
 一八九四乃至九五年        七五九、一〇三、四一六   八〇六、六七〇、〇五〇
 一八九五乃至九六年        八七七、八三一、九三九   八三七、八〇二、五一九
 (七年三十一日まで)

抑々米国の如き国運駸々として進歩せる国に於ては、外国貿易の如き輸出入額共に長足の増加を呈せざるべからず、然に税率を引上げたる「マツキンレー」税則の下に於ては輸入額は増加せず、輸出額は減少し、税率を引下げたる「ウイルソン」税則の下に於ては、輸出入額共に増加せるものは何ぞや、是れ関税の加重は貿易を妨害し、関税の軽減は貿易を奨励することを証明せるものならずや、而して貿易発達せざれば重税も収入を増加せず、貿易発達すれば、軽税も尚能く収入を増加すべし、然らば即ち収入増加の方策は税率を引上くるにあらずして、寧ろ之を引下くるにあらずや、之を要するに新税則が其の所期の収入増加を得べからざることは殆と疑なかるべきなり
 - 第21巻 p.246 -ページ画像 



〔参考〕東京経済雑誌 第三五巻第八七五号・第八二〇―八二四頁 明治三〇年五月八日 ○日米貿易の関係(DK210032k-0010)
第21巻 p.246-250 ページ画像

東京経済雑誌  第三五巻第八七五号・第八二〇―八二四頁 明治三〇年五月八日
    ○日米貿易の関係
余輩は米国の先進国なることを信じて啻に之を敬するのみならず、又曾て我国を誘掖善導したる厚誼を憶ひ、窃かに之を徳としたるなり、然るに彼我の貿易上彼は我物品を購求すること最も多く、実に我の最大花主国たるに拘らず、我国は彼の物品を購求すること尠なく、却て英国より輸入するの傾あるを以て、動もすれば其感情を害せんとす、現に保護主義を以て有名なるウヰリアム・マツキンレー氏選まれて米国の大統領となるや、其第一着手として特に我国輸入品に対して苛税を課せんとし、曩に羽二重・「ハンケチ」、其他の絹物・段通・花莚の類に従価四割乃至十一割の税を課し、今又米国を唯一の花主となす所の製茶に対し、其粗製品の輸入を全く禁止せんとせり、曾て我国を誘掖善導したる米国が、特に我国の輸入品に対して斯の如き酷遇を為すものは、彼我貿易の不平均其遠因と為りて、彼の感情を害したるの結果に外ならざるなり、去れば余輩は玆に貿易上の関係を調査し、我国は間接に米国の産物を消費すること多く、且つ米国の保護主義は益々此不平均を助長するの因たることを明かにせんと欲す
今明治十年より昨二十九年に至るまで二十年間、我国と諸外国との間に行はれたる貿易の実況を調査するに、其の景況左の如し

図表を画像で表示--

             米国              英国               仏国            独国             清国             其他                合計           総計 年号    ヘ輸出      ヨリ輸入    ヘ輸出    ヨリ輸入      ヘ輸出     ヨリ輸入   ヘ輸出   ヨリ輸入    ヘ輸出     ヨリ輸入    ヘ輸出    ヨリ輸入       輸出       輸入        千円以上     千円以上    千円以上    千円以上     千円以上   千円以上   千円以上   千円以上    千円以上    千円以上    千円以上    千円以上      千円以上      千円以上      千円以上 明治十年   五、二一九   一、七三六   六、二九八  一五、六七九    四、八六六  三、〇三一     五五    七〇〇   四、一八五   四、五七六   一、九〇七   一、六九八    二二、五三〇    二七、四二〇        …… 同十一年   五、八二三   二、七二七   三、八五六  一九、二七三    五、三九二  三、三四八     六七  一、二八〇   六、二五九   四、七四四   三、六六四   一、四六二    二五、〇六一    三二、八三四        …… 同十二年  一〇、八七一   三、二一二   四、〇五五  一六、八六七    五、七五九  三、四九九     四二  一、一七四   五、四二六   五、七四九   一、〇三〇   二、三三四    二七、一八三    三二、八三五        …… 同十三年  一二、〇二三   二、六六九   二、五四七  一九、六二五    五、三五二  三、七五九     三四  一、七四五   五、四九九   五、八四二   一、三三七   二、九九五    二六、七九二    三六、六三五        …… 同十四年  一一、〇五六   一、七九三   三、五一五  一九、六二五    八、三三二  三、一九二    一七七    八六一   五、五八六   五、三七五   二、八一七   一、五三六    三一、四八三    三二、三八二        …… 同十五年  一四、二八〇   三、一三四   四、九九七  一三、九七三   一〇、三一七  一、四六一    四六一  一、一九七   五、五〇九   六、五五三   三、六六三   四、四五二    三九、二二七    三〇、七七四        …… 同十六年  一三、二九三   三、二三三   四、八六三  一二、七七九    九、七一八  一、八七一    二五〇  一、四二一   五、八二七   五、七六八   四、四三〇   四、四五七    三八、三八一    二九、五二九        …… 同十七年  一三、一二三   二、四九〇   三、八三四  一二、七六一    六、八〇一  一、五八八    五一六  二、三一六   六、五五二   七、〇一九   三、一五六   三、五三三    三三、九九六    二九、七〇七        …… 同十八年  一五、六三九   二、七五二   二、四五三  一二、四六六    六、七三九  一、三三四    四七〇  一、六七一   八、一四七   六、三四二   三、六〇二   四、八〇九    三七、一五〇    二九、三七四        …… 同十九年  一九、九八八   三、三五八   四、一九五  一二、七〇三    九、六三二  一、三三〇    八六四  二、三一三   九、五九四   七、一二三   四、五九七   五、三四一    四八、八七〇    三二、一六八        …… 同二十年  二二、二四三   三、三〇九   三、四七八  一八、九七〇    九、五二八  二、三一三    九二一  四、〇一〇  一〇、九七〇   七、九八五   六、四四一   七、七三八    五二、四〇七    四四、三〇四        …… 同廿一年  二二、六一八   五、六四八   八、七一〇  二八、六九三   一三、六三六  四、一二五  一、六一七  五、二六〇  一一、四二六  一〇、三六〇  一五、七七三  一一、三六九    六三、六八〇    六五、四五五        ……  以下p.247 ページ画像  同廿二年  二五、二八二   六、一四三   七、六六四  二六、〇六七   一四、二五八  三、三三四  一、六三八  四、八八七   五、四四二   九、一九九  一一、一三九  七四、九九六    六八、四二三    六六、一〇三        …… 同廿三年  一九、八二一   六、八七四   五、六三八  二六、六一九    八、三五四  三、八六九    八四六  六、八五六   五、二二七   八、八四九  一五、〇〇五  五三、〇六七    五四、八九一    八一、七二八        …… 同廿四年  二九、七九五   六、八四〇   五、六三三  一九、九九六   一五、一二〇  二、八三四  一、四五六  五、一二七   五、八二五   八、七九八  二〇、〇八六  一九、三三二    七七、九一五    六二、九二七        …… 同廿五年  三八、六七四   五、九八八   三、九二一  二〇、七八九   一八、〇九三  三、六二〇    九四〇  六、三七五   六、三五八  一二、五〇九  二一、三五三  四九、二八一    八九、三三九    七一、三二六        …… 同廿六年  二七、七三九   六、〇九〇   四、九九五  二七、九二九   一九、五三一  三、三〇五  一、三八〇  七、三一八   七、七一四  一七、〇九五  二七、一八一  二六、五二〇    八八、一四〇    八八、二五七        …… 同廿七年  四三、三二三  一〇、九八二   五、九五〇  四二、一八九   一九、四九八  四、三四八  一、五一七  七、九〇九   八、八一三  一七、五一一  三二、一七六  三四、二四二   一一一、二九七   一一七、四八一        …… 同廿八年  五四、〇二八   九、二七六   七、八八三  四五、一七二   二二、〇〇六  五、一八〇  三、三四〇 一二、二三三   九、一三五  二二、九八五  三七、一二二  五四、四一四   一三二、五一六   一二九、二六〇        …… 同廿九年  三一、五三二  一六、三七三   九、〇一二  五九、二五一   一九、〇二七  七、六八二  二、九七二 一七、一八三  一三、八二三  二一、三四四  四二、二四九  四九、八四三   一一四、六一五   一七一、六七四        …… 合計   四三六、三七〇 一〇四、六二七 一〇三、四九二 四七一、四二二  二三一、九五九 六五、二二七 一九、五五五 九一、八三六 一四七、三一七 一九五、七二六 二五六、七二八 三九三、五一九 一、一八四、八九四 一、二一一、一七三  二、三九六、〇六八 割合        一八       四       四      二〇       一〇      三      一              六       八      一一      一五                            一〇〇 



故に我邦と清・仏・独其他の諸国との通商に於ては、輸出入に大差なしと雖も、独り米・英二国との通商に於ては、常に非常の不平均を示せり、我邦は年毎に米国に向ひて巨額の輸出を為し、又た英国より巨額の輸入を受くるものなり、表末に示せる如く、我邦は米国に対し十八を輸出して四を輸入するに、英国に対しては四を輸出して二十を輸入せり、若し一・二年間の事ならんには、此の如きも以て一時の変なりとして論ずるを得べしと雖ども、斯く年々歳々、同一の景況を呈する以上は、必らず大なる源因なくんばあらざるなり、是に於て余輩は英・米二国の貿易の関係如何を調査したるに実に左の如き景況を示せり

            米国より輸入         米国へ輸出
                    磅              磅
  一八七二年    五四、六六三、九四八     四五、九〇七、九九八
  一八七三年    七一、四七一、四九三     三六、六九八、四二四
  一八七四年    七三、八九七、四〇〇     三二、二三八、三二一
  一八七五年    六九、五九〇、〇五四     二五、〇六二、二二六
  一八七六年    七五、八九九、〇〇八     二〇、二二六、六二七
  一八七七年    七七、八二五、九七三     一九、八八五、八九三
  一八七八年    八九、一四六、一七〇     一七、五三一、九〇四
  一八七九年    九一、八一八、二九五     二五、五一八、七八九
  一八八〇年   一〇七、〇八一、二六〇     三六、九五四、一九二
  一八八一年   一〇三、二〇七、八二九     三六、七八三、〇四七
  一八八二年    八八、三五二、六一三     三八、七〇八、六四三
  一八八三年    九九、二三八、九六〇     三六、七三二、五〇六
  一八八四年    八六、二八七、五四一     三二、七三八、五三三
  一八八五年    八六、四七八、八一三     三一、〇九四、五八九
  一八八六年    八一、六〇〇、一九七     三七、六〇七、八〇五
  一八八七年    八三、〇四九、〇七四     二九、五四七、八〇〇
  一八八八年         欠              欠
 - 第21巻 p.248 -ページ画像 
  一八八九年    九五、四六一、四七五     三〇、二九三、九四二
  一八九〇年    九七、二八三、三四九     三二、〇六八、一二八
  一八九一年   一〇四、四〇九、〇五〇     二七、五四四、五五三
  一八九二年         欠              欠
  一八九三年    九一、七八三、八四七     二三、九五七、三五二
  一八九四年    八九、六〇七、三九二     一八、七九九、四八五

故に米国は英国に向ひて此の如き輸出超過を為せり、然して此輸出品中巨額を占むるものは棉花是なり、又た英国より日本に輸入するものの内、巨額を占むるもの如何と云ふに金巾・雲斎・綿織糸・帆木綿・寒冷紗是なり、然らば即ち此三国間通商の奇異なる現象も稍々解説するを得べし、思ふに米国は英国をして棉花を製造せしめて、以て日本に輸入し貿易の平均を取るものならずや、又日本貨幣の輸出入を査察するも以て、此理を証明するに足るが如し、即ち去る十九年間は実に左の如き景況を呈せり

図表を画像で表示--

             米国            英国         仏国          独国           清国           東印度及暹羅           其他               合計         全計 年号     ヘ輸出    ヨリ輸入   ヘ輸出    ヨリ輸入  ヘ輸出  ヨリ輸入  ヘ輸出   ヨリ輸入   ヘ輸出   ヨリ輸入    ヘ輸出     ヨリ輸入   ヘ輸出     ヨリ輸入    ヘ輸出     ヨリ輸入        千円以上   千円以上   千円以上   千円以上  千円以上 千円以上  千円以上   千円以上  千円以上   千円以上   千円以上    千円以上    千円以上    千円以上     千円以上    千円以上     千円以上 明治 十年   一〇〇    八六九  五、九六五     八二   四   ……    ……     ……   二、〇二六    七三八      ……     ……   一、三七三     四九一    九、四六八   二、一八〇       …… 同 十一年    六八    四八四  四、四三四     ……  ……   ……    ……     ……   二、六五〇  一、四四六      ……     ……   一、三三三     二五九    八、四八五   二、一八九       …… 同 十二年   一八四    三二二  四、二七二    二六〇   一   ……    ……     ……   七、四一八  二、二九八   一、二五六    二五一       四       四   一三、〇三五   三、一三五       …… 同 十三年   七一二    七八二  二、四三三     九〇  ……   ……    ……     ……   九、〇四四  二、七六四   一、五六〇     ……      一一       三   一三、七六〇   三、六三九       …… 同 十四年   八九七    二三〇    六五二     ……  ……   ……    二〇     ……   三、八〇四  一、六二四   二、五七一     ……      一二     五一二    七、九五六   二、三六六       …… 同 十五年   四八七  一、八三六      五    二八七  ……   ……    ……     ……   三、六〇〇  四、〇二七     五三三     ……      八七     五八八    四、七一二   六、七三八       …… 同 十六年   六六六  二、三三五      六     ……  ……    一    ……     ……   二、四〇七  三、〇六六      一一     四五     一〇〇     七四四    三、二九三   六、一九一       …… 同 十七年   八〇八  二、九四六     一五    八六七  ……   ……    ……     ……   二、八三六  一、一九四   一、三〇五     八八      九三     五八五    五、〇五七   五、六九八       …… 同 十八年   二〇五  三、七六九    一八九  二、一六一  ……   九七    ……     ……   二、五二九    六七八   一、三一二     ……     一七四     八一七    四、四〇九   七、五七二       …… 同 十九年   一七〇  三、九六四     一八  二、〇八九  ……   ……    ……     ……   四、二九七  二、〇二〇   五、〇二八     ……     二〇九   一、一〇二    九、七二二   九、一七五       …… 同 二十年    一三  二、八五一     七四  四、三九〇  ……   ……    ……     ……   一、六五六    三七五   九、一五二     ……      ……      ……   一〇、八九五   七、六一六       …… 同二十一年    五八  四、八九三    三四四  一、二五二  ……   ……    ……     ……   二、一〇四  一、三二一   五、一五九     ……     一六八   一、二六六    七、八三三   八、七三二       …… 同二十二年    八五  六、六一三    一九七    一六〇  ……   ……    ……     ……   一、〇四〇    一六〇   三、五六七     五〇     二三九   七、一九〇    五、一八八  一四、一七三       …… 同二十三年     四    四五四  一、六六六    一九六   六   ……    五〇     ……     四三二    一七七  一一、四〇九     ……     二一一     三七三   一三、七七八   一、二〇〇       …… 同二十四年    五四  一、八二九    一六四  六、五六九   二   ……     六     ……     二〇八  三、四九五     九三六  一、四四一      八八     五五四    一、四五二  一三、八八八       ……  以下p.249 ページ画像  同二十五年   四九一  四、五七二  七、三二三 一四、二九七  ……   ……    ……     ……   一、五四〇  一、八三〇       五  一、二三一     三七〇     九五三    九、七二九  二二、一八三       …… 同二十六年    五八  二、六六七  一、六一三  六、四八六  ……   ……    ……     ……   四、六一一    三四六   三、七五五  三、五〇〇   二、二五二   二、二五二   一二、二八九  一一、一八六       …… 同二十七年    五二    一一三  三、一四六 一四、六八八  ……   ……   一〇六     ……   三、七八〇  一、二七三  二五、六九七    四〇〇   一、五九八   一、三〇九   三四、三七九  二六、七八三       …… 同二十八年    ……    四八三  二、七九一  一、五九三  ……   ……   一二七     ……   一、二四一     七〇  一八、三四一  一、三一六   四、八〇一   二、四〇八   二七、三〇一   五、八七四       …… 合計    五、一一二 四二、〇三三 三五、二九七 六五、四三九  一三   九八   三〇九     ……  五三、〇七四 一一、六六二  七八、八六九  八、三二二  一三、一五一  二一、四六〇  二〇二、八四一 一六一、二一八  三三四、八三九 割合        二     一三     一一     二〇  ……   ……    ……     ……      一六      三      二四      二       四       五                       一〇〇 



   (二十九年度は償金の取寄のことあるを以て之を除く)
更に米国との貿易に於て、商品の超出額と貨幣の請取額とを対照し、又英国に対し、商品の超入額と貨幣の支払額とを比較する時は左の如し

     米へ向け商品超出  米国より貨幣超入 英国より商品超入 英へ向け貨幣超出
         千円以上      千円以上     千円以上     千円以上
明治十年    三、四八三       七六九    九、三八一    五、八八三
同十一年    三、〇九六       四一六   一五、四一七    四、四三四
同十二年    七、六五九       一三八   一二、八一二    四、〇一二
同十三年    九、三五四        七〇   一七、〇七八    二、三四三
同十四年    九、二六三  超出   六六七   一六、一一〇      六五二
同十五年   一一、一四六     一、三四九    三、九七六  超入  二八二
同十六年    九、九六〇     一、六六九    七、九一六        六
同十七年   一〇、六三三     二、一五六    八、九二七  超入  八五二
同十八年   一二、八八七     三、五六四   一〇、〇一三  同 一、九七二
同十九年   一六、六三〇     三、七九四    八、五〇八  同 二、〇七一
同二十年   一八、九三四     二、八三八   一五、四九二  同 四、三一六
同二十一年  一六、九七〇     四、六三五   一九、九八三  同   九〇八
同二十二年  一九、一三九     六、五二八   一八、四〇三       三七
同二十三年  一二、九四七       四五〇   二〇、九八一    一、四七〇
同二十四年  二二、九五五     一、七七五   一四、三六二  超入六、四〇五
同二十五年  三二、六八六     四、三八一   一六、八六八  同 六、九七四
同二十六年  二一、六四九     一、六〇九   二二、九三四  同 四、八七三
同二十七年  三二、三三五        六一   三六、二三九  同一一、五四二
同二十八年  四四、七五二       四八三   三七、二八五    一、一九八
同二十九年  一五、一五九        ……   五〇、二三九       ……
 合計   三三一、七四三    三四、二五三  三六七、九三〇 超入二〇、一六〇

夫れ我国は商品輸出入の関係に於て米国よりは巨額の貨幣を請取らさる可らず、然るに其額僅かに十分の一に過きす、又英国に向ひては更に巨額の支払を為さゝる可らさるあり、而して貨幣は却て超入せり、之れ即ち英国か米国より許多の商品を輸入しなから、其支払ふ所の貨幣甚だ僅にて足る所以なり、抑も英国か米国に対して斯く僅かの貨幣を支払ふ所以のものは、素より両国間に特殊の事情もある可く、且つ他の諸国との貿易上の関係もあるべしと雖、亦英国が我国より請取る可き貨幣を振り向くるもの、其原因の一なるや疑ふ可らず、又我邦の米国より貨幣を請取ることの少なく、英国に送るもの多からざるも亦
 - 第21巻 p.250 -ページ画像 
是が為に外ならざるなり、加之、我国が直接に米国の産物を消費せざるも、米国は棉花を産出して英国に送り、英国は之を綿糸・金巾・雲斎等となして我国に送るが故に、間接に米国の産物を需用しつゝあることは、右の関係よりして証明するを得るなり、余輩は玆に至りて、日・英・米三国の奇異なる貿易上の関係を分解し得たると同時に、我国が米国の産物を需用せざるとて米国が我を疎じ、殊更に我が輸出品に対して苛税を課するの毫も理由なきを認むるなり
更に一歩を進めて論ずる時は、我国が米国より多くの輸入を為さゞるものは一に米国の保護主義之を然らしむるものにして、米国は自業自得なりと云はざる可らず、抑も我国の支那・印度に対する貿易は明治二十年頃までは常に輸出は輸入に超過したりしが、最近十年間は輸入却て超過するに至れり、之れ前表に於て明なり、而して其輸入品の中最も多く増加したるものは繰綿となす、即ち昨明治二十九年度の貿易に於て、支那及び印度より輸入したる総額の中繰綿のみを以て其七・八分を占むること左の如し

              総輸出額         内繰綿
                     円             円
  支那        二一、二九三、六四八     八、一五八、〇八四
  印度        二二、五〇九、六〇八    一九、二四四、八四〇
   合計       四三、八〇三、二五六    二七、四〇二、九二三

去れば若し米国にして保護政策を徹し、物価をして下落せしむれば、我国は年々需用を増しつゝある所の繰綿は、或は米国より多く輸入し両国間の貿易平均を得るに至るやも知る可らず、然るに米国は今や却て愈々保護政策を励行せんとす、之れ益々貿易を不平均と為らしむる所以なり、我輩米国昔日の厚意に対して之を惜まざるを得ざるなり



〔参考〕東京経済雑誌 第三五巻八七六号・第八四九―八五一頁 明治三〇年五月一五日 ○米国関税改正案に対する反対運動(DK210032k-0011)
第21巻 p.250-252 ページ画像

東京経済雑誌  第三五巻八七六号・第八四九―八五一頁 明治三〇年五月一五日
    ○米国関税改正案に対する反対運動
代議院を通過して元老院に廻送せられたる米国新関税則は、同院の委員会に於て修正を加へ、本月五日を以て之を議院に報告せられたり、今試みに我邦重要輸出品に就て原案と修正案とを比較すれば左の如し
 日本絹織物 は六匁付以上七匁五分付以下の品に対しては、新関税法案第三百八十款の項に依り、一封度に付四弗の税金なりしを、修正案にては五匁乃至十匁の品に対し一封度に付三弗に減ぜり
 絹製「ハンカチーフ」に対する税金は絹織物と同様なれども、唯々其品質に依り別に一割の従価税を付加す、但し一割の従価税付加は原案の通り(按ずるに品質とは本品に関する条款中記載せる縁縫・文字挿入、其他細工を施したるものを指すならん)
 花莚 は新関税法案には一平方碼に付価格十仙以下の品に対しては一平方碼に付き八仙なりしを、修正案にては四仙に減じ、又一平方碼に付十仙以上の品には一平方碼に付き八仙と二割五分の従価税を附加したるを、修正案にては二割五分の従価税を削除したり
 段通 は新関税法にては一平方碼に付価格卅仙以下の品は一平方碼に付六仙と三割五分の従価税を付加せるを、修正案にては十五仙以下の品は一平方碼に付五仙と三割五分の従価税に改め、又同法案に
 - 第21巻 p.251 -ページ画像 
ては一平方碼に付三十仙以上の品に対しては一平方碼に付十二仙と四割の従価税を付加せるを、修正案にては一平方碼に付価格十五仙以上の品は一平方碼に付十仙と従価税三割五分を付加することに修正せり
 茶 に対しては来る千九百年一月一日迄一封度に付税金十仙を課すと雖も、其後は無税とす
米国元老院は果して此の修正を容るべきや否や、同院之を容れて委員会修正の如く可決せば、更に代議院に送付して其の同意を求めざるべからず、而して代議院之に同意を表せざれば、代元・両院の協議会を開きて之を決定せざるべからず、故に新関税則の運命未だ知るべからずと雖も、如何にもして之を修正せしめざるべからざることなり
元老院委員会の修正案に依りて得べき関税収入額は余輩未だ聴くを得ずと雖も、原案は合計一億八百八十六万二千百五十二弗の関税収入を増加せんとするものにして、総輸入額の凡そ二割三分一/三に相当せる現行関税を三割五分一/三に引上げんとするものなり、而して西暦千八百九十五年六月三十日に終る一週年間に於ける輸入額を国別すれば左の如し

  国名           輸入額
                       弗
 英国          一五九、〇八三、二四三
 独逸           八一、〇一四、〇六五
 仏国           六一、五八〇、五〇九
 白耳義          一〇、一四一、四八五
 和蘭           一五、一八二、五八一
 伊太利          二〇、八五一、七六一
 西班牙           三、五七四、一二六
 瑞西           一四、九八八、九五四
 瑞典及諾威         二、五三一、三二七
 墺太利、匃牙利       六、五一〇、三一九
 露国            三、五七五、三八八
 他の欧洲諸国        四、六一二、〇五五
 英領北亜米利加      三七、六五三、六七九
 墨西其          一五、六三五、七八八
 西印度          六八、八六〇、一五二
 中央亜米利加諸州     一一、五八〇、七六一
 他の北亜米利加諸州       一八五、三〇二
 ブラジル         七八、八三一、四七六
 ヴエネヅエラ       一〇、〇七三、九五一
 アルジエンチン共和国    七、六七五、二七〇
 コロンビヤ         三、七一三、六八二
 智利            四、四六五、五六一
 グイアナ          三、四〇二、二七七
 他の南亜米利加諸州     四、〇〇四、九〇三
 英領東印度        二一、二六六、〇一三
 日本           二三、六九五、九五七
 - 第21巻 p.252 -ページ画像 
 支那           二〇、五四五、八二九
 蘭領東印度         七、七二七、二八二
 香港              七七六、四七六
 亜細亜土耳其        三、〇八九、九五一
 他の亜細亜洲諸国        五二四、八五六
 英領濠洲          四、六二〇、八二八
 布哇島           七、八八八、九六一
 他の太洋洲諸島       四、九四一、一三七
 英領亜弗利加          七七六、一一四
 亜弗利加土耳其       三、七一九、三二八
 他の亜弗利加諸国      一、二一三、八一七
 他の英国諸領地       一、三八二、六七三
 他の諸国             七二、二一八
  合計         七三一、九六九、九六五

故に米国の輸入貿易は英国第一位を占め、独逸之れに次ぎブラジル・西印度及び仏国等之に次ぎ、我が邦は第七位に居れり、而して新関税則は殆ど凡ての加工品に課税せるを以て、之に対する反対運動は独り我が邦のみならず、前表の諸国に於ても亦起りしなるべし、更に米国に於ける新税則に対する意向を見るに、元老院の形勢左の如しと云ふ
 関税案は十中八九通過すべけれども、上院に於て討議は長引くの形勢あり、何となれば「デモクラツト」党員は該案の各項に就て逐一審議を遂げんことを望むのみならず、同党員中該案の確定を遷延せしむるを以て最良党策と為す者少なからざればなり、蓋し該案に含有する各品の税率一般に知れ渡るに至る時は、将来増課さるべき物品の輸入は頓に増加すべくして、若し該案法律となりたる暁には、輸入俄に減縮を来すは勢の免れざる所ならん、「デモクラツト」党員が頻りに該案遷延策を執るの形勢あるもの亦主として右の事情に出づるものにして、法律制定に先ちて大に商品を輸入し置かんがために外ならず、関税案に対する「デモクラツト」党の政策右の如しと雖「レパブリカン」党の多数は固より該案の通過を速かならしめんとするものなり、乍去同党員如何に該案の速決を望むも、上院に多数を制するにあらざるよりは乃ち能はず、聞く所に依れば同党の可銀派議員は一方に於て議案の通過を妨げざる代りに、亦一方に於て該案遷延策にも反対せずと云ふ、要するに該案は財務委員会及上院に於て多くの修正を施されたる上ならでは上院を通過し難き摸様なり
抑々関税を負担するものは重に輸入品の消費者にして、其の製産者にはあらずと雖も、米国新関税則の如く苛重なる関税は貿易を沮碍するの結果なくんばあらず、故に関税の増課は内外人に向ひて苦痛を与ふるものなりと雖も、内国の消費者は主にして、外国の製産者は客たり而して米国に於ては何れの邦国に対しても関税を契約せず、一般に普通関税を課するの政略を取るを以て、外国の政府人民にして米国の関税増課に対し反対運動を試みんとするは甚だ困難なることなりと雖も米国内地に於ても強大なる反対運動あるを以て、外より之に勢援を与ふれば必ずしも其の目的を達するの望なしと謂ふべからざるなり
 - 第21巻 p.253 -ページ画像 



〔参考〕東京経済雑誌 第三五巻第八七六号・第八七九―八八〇頁 明治三〇年五月一五日 ○米国新関税を課せらる可き商品の輸出額(DK210032k-0012)
第21巻 p.253 ページ画像

東京経済雑誌  第三五巻第八七六号・第八七九―八八〇頁 明治三〇年五月一五日
    ○米国新関税を課せらる可き商品の輸出額
米国新関税の影響を被る可き商品の輸出原価は凡そ何程なるや、余輩は今之を精細に調査するを得ずと雖、仮に大蔵省の編纂に係る外国貿易年表に依りて、最近三年間の統計を挙れば大凡そ左の如し

       二十九年         二十八年         二十七年
                円            円            円
 茶      五、一七四、六八二    七、四〇五、五五一    七、二七五、五九二
 絹織物類   二、六三五、八九〇    七、五二九、八七四    六、三一三、四七六
 絹製手巾   一、七〇六、五二九    二、六三九、三七三    一、九三八、九六二
 花莚     二、六八三、二五五    三、〇八三、一二二    一、七九五、九五七
 段通       五二五、三六六    一、〇七六、〇四九      九二七、三六三
  合計   一二、七二五、七二二   二一、七三三、九六九   一八、二一五、三五〇




〔参考〕東京経済雑誌 第三五巻第八八〇号・第一一一二―一一一三頁 明治三〇年六月一二日 ○関税改正案第二回報告(DK210032k-0013)
第21巻 p.253-254 ページ画像

東京経済雑誌  第三五巻第八八〇号・第一一一二―一一一三頁 明治三〇年六月一二日
    ○関税改正案第二回報告
米国に於ける新関税法案に拠り、本邦輸出重要品中最も重税を課せらるべき絹織物・絹製手巾・花莚・段通及茶に対する新旧税率及び元老院財務委員の修正せし税率の比較に付ては、先きに調査するところありしが、今其の他の重要品なる麦藁真田・陶器・硫黄・樟脳・米・扇子・石炭等に付、比較に関する報告左の如し
 麦藁真田  本品は現行税法に於ては無税なりしを、新税法案にては之を二割の従価税に改めたれども、元老院財務委員の修正案によれば、従価税一割五分となし、若し染付又色取あるものは従価税二割となしたり
 陶器  本品は現行税法にては装飾付の品は三割五分、無地のものは二割なりしが、新法案にては装飾付のものは六割、無地のものは五割五分に改めしを、修正案に拠れば一封度に付一仙半と従価税二割五分より二仙半と従価税三割五分迄とし、手に画きたる絵又は金にて模様を施したるものに対しては従価税五割五分を課することゝなれり
 硫黄  本品は現行法にては未製品に対しては無税、精製品は二割の従価税なりしが、新法案に拠れば未製品は無税なれども精製品に対しては一噸に付八弗の税を課せるを、修正案は之を其儘採用せり
 樟脳  本品は現行税法にては未製品に対しては無税、精製品は一割の従価税なりしが、新法案に拠れば未製品は無税なれども、精製品に対しては一封度に付四仙と改めしを、修正案にては之を六仙に増加せり
 米  本品は現行税法にては精米一封度に付き一仙半にして、玄米一封度に付き一仙の十分の八即ち八厘なりしを、新法案にては精米は二仙、玄米は一仙四分の一即ち一仙二厘五毛に改めしが、修正案にては現行税率に減ぜり
 扇子  本品は現行税法にては従価税四割なりしが、新法案にては
 - 第21巻 p.254 -ページ画像 
之を五割に改めしを、修正案にては其儘採用せり
 石炭  本品は現行税法にては一噸に付四十仙なりしが、新法案にては一噸に付七十五仙に改めしを、修正案にては之を其儘採用せり(但し八十封度を以て一「プツセル」とし、二十八「プツセル」を以て一噸とす)



〔参考〕東京経済雑誌 第三五巻第八八七号・第二四六―二四七頁 明治三〇年一〇月三一日 ○米国新関税法の実施(DK210032k-0014)
第21巻 p.254-255 ページ画像

東京経済雑誌  第三五巻第八八七号・第二四六―二四七頁 明治三〇年一〇月三一日
    ○米国新関税法の実施
北米合衆国新関税法案に関する元老・代議両院協議会の決定は修正なくして両院を通過し、去る二十四日大統領之に署名し、直ちに施行せられたり
回顧すれば米国代議院が新関税法案を可決したるは本年三月三十一日にして、爾来元老院に於ける財務委員に於て多少の修正を加へ、元老院に於ては五月廿五日より討論を開始し、是亦多少の修正を加へて可決せり、是に於て元老・代議両院の協議会を開き、協議会は本月十九日を以て其の結果を報告せり、而して其の実施期日は本月一日なり、是れ其の直ちに実施せられたる所以なるべし、今我が重要輸出品に就て改正税率を示せば左の如し
 日本製絹布 の税率は一封に付三弗、染附若くは形附を為したるものは三弗二十五仙
 絹製手巾 は右絹布に対する税の外更に一割の従価税を課す
 陶器 は其品質に依り二割五分より六割の従価税を課す
 精米 は一封に付二仙
 玄米 は一封に付一仙と四分の一
 段通 は一平方碼に付価格十五仙以下の品は一平方碼に付五仙と三割五分の従価税を課し、十五仙以上の品は一平方碼に付十仙と三割五分の従価税を課す
 麦稈真田 は従価税一割五分、若し染附又は色取あるものは従価税二割
 樟脳 は未製品は無税なりと雖も、精製品は一封に付六仙
 扇子 は従価税五割
 紙製品 は従価税三割五分
 華莚 は一平方碼に付価格十仙以下のものに対しては一平方碼毎に三仙、同十仙以上のものに対しては一平方碼毎に七仙と、従価税二割五分を課す
 茶 は無税
抑々日本製絹織物は六匁附以上七匁五分附以下の品に対しては、新関税法案第三百八十款の項に依り、代議院の可決せし原案に於ては一封に付四弗の税金なりしを、元老院財務委員の修正案に於ては五匁乃至十匁の品に対し、一封に付三弗に減ぜり、然るに元老院に於ては更に修正を加へ、一平方碼に付目方一「オンス」の三分の一より一「オンス」と三分の一ある未晒品(生羽二重のこと)或は染糸にて織りたる品は一封に付二弗五十仙、晒上げたる品(晒羽二重のこと)は同三弗又織上げたる後染附或は形附を為したるものは三弗半の税を課するこ
 - 第21巻 p.255 -ページ画像 
とと為し、而して両院協議会に於て更に前表の如く修正せられたるものなり
絹製手巾に対する元老院財務委員会の修正税金は絹織物に同きも、唯唯其の品質の如何に依り別に一割の従価税を附加す、但し一割の従価税附加は代議院可決原案の通り、然るに元老院に於ては委員会修正の通り可決し、而して両院協議会に於て更に前表の如く修正したるものなり
華莚は代議院の可決せし原案に於ては、一平方碼に付価格十仙以下の品に対しては一平方碼に付八仙なりしを、元老院委員会の修正案は之を四仙に減じ、又原案に於ては一平方碼に付十仙以上の品は一平方碼に付八仙と、二割五分の従価税を附加せるを、修正案は二割五分の従価税を削除せり、然るに元老院に於ては華莚に対する税目を全然削除したりしが、地氈製造者の反対ありし為め、両院協議会に於て更に前表の如く課税せられたり
段通は代議院の可決せし原案に於ては、一平方碼に付価格三十仙以下の品は一平方碼に付六仙にして、三割五分の従価税を附加せるを、修正案に於ては十五仙以下の品は一平方碼に付五仙と三割五分の従価税に改めたり、又原案に於ては一平方碼に付三十仙以上の品に対しては一平方碼に付十二仙と四割の従価税を附加せるを、修正案は一平方碼に付価格十五仙以上の品は一平方碼に付十仙と従価税三割五分を附加することと為し、而して両院協議会に於ては、財務委員会修正の如く決せり
茶は代議院の可決せし原案に於ては無税なりしが、元老院財務委員会は千九百年一月一日まで一封に付税金十仙を課するも其の後は無税とすと改め、後ち更らに課税せざることと為せり
故に合衆国新関税は元老院に於ける財務委員会及ひ元老院の修正を経て多少軽減せられたりと雖も、之を従来の関税に比すれば非常に上急激に加重せられたるものにして、其の我が輸出貿易を妨害すること決して尠少ならざるべし