デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治31年12月24日（1898年）

是日栄一当会議所会頭トシテ、納税其他ノ納金ニ銀行小切手及ビ預金手形ヲ代用セシメンコトヲ大蔵大臣伯爵松方正義ニ建議ス。

東京商業会議所月報　　第七七号・第一三―一五頁　明治三二年一月
○明治三十一年十二月三日、本会議所ニ於テ第七十五回ノ臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者ハ左ノ如シ
　河村隆実君　○外三十一名氏名略
午後五時開議、会頭渋沢栄一君議長席ニ就キ、左ノ件々ヲ議事ニ附シ午後八時閉会セリ
○中略
　一納税其他ノ納金ニ銀行小切手及ヒ預金手形ヲ代用スル義ニ付建議ノ件　（会員提出）
本件ハ会員岡部広君外一名ノ建議ニ係リ、其要旨ハ各納税者並ニ諸官庁ニ対スル納金者ノ便宜ヲ謀ランカ為メ、確実ナル銀行ノ支払保証小切手並ニ預金手形ヲ以テ現金ニ代用スルヲ得セシムル様、其筋ニ建議スヘシト云フニ在リ、審議ノ末前記「日本銀行保証準備兌換券発行制限拡張並ニ課税問題可否ノ件」調査委員ニ其調査ヲ併セテ附託スルコトニ決セリ
　　　○本件調査委員会ニ関スル資料ハ前掲（第三七二頁）ニツキ略ス。

東京商業会議所月報　　第七七号・第一五―一六頁　明治三二年一月
○同月　○明治三一年一二月二十三日、本会議所ニ於テ第七十七回ノ臨時会議ヲ開ク、当日ノ出席者ハ左ノ如シ
　武田忠臣君　○外二十一名氏名略
午後六時開議、会頭渋沢栄一君事故アリ欠席セラレシニ依リ、副会頭大江卓君議長席ニ着キ、左ノ件々ヲ議事ニ附シ、午後七時二十分閉会セリ
○中略
　一納税其他ノ納金ニ銀行小切手及ヒ預金手形ヲ代用スル件調査報告
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（委員会議提出）
本件ハ全会一致ヲ以テ委員報告ノ如ク大蔵大臣ニ建議スルコトニ可決セリ

東京商業会議所月報　　第七七号・第一七頁　明治三二年一月
○同月　○明治三一年一二月二十四日、納税其他ノ納金ニ銀行小切手及ヒ預金手形ヲ代用スル義ニ付テノ、建議書ヲ大蔵大臣ニ進達セリ（建議書ノ全文ハ参照ノ部第五号ニ掲載ス）

東京商業会議所月報　　第七七号・第二一―二二頁　明治三二年一月
○参照第五号
　明治三十一年十二月二十三日第七十七回臨時会議ノ決議ニ依リ、納
 - 第21巻 p.378 -ページ画像 
税其他ノ納金ニ銀行小切手又ハ預金手形ヲ代用スル義ニ付、大蔵大臣ニ進達セシ建議書ノ全文ハ左ノ如シ
　　　　納税其他ノ納金ニ銀行小切手又ハ預金手形ヲ代用スル義ニ付建議
従来各種納税者ヨリ政府ニ納入スル税金ハ、国税徴収法及其施行細則等ニ依テ観ルニ、単ニ税金トアルカ為メ現金ニ非サレハ納入スヘカラサルカ如ク解釈セラレ納税者ノ不便少カラス、故ニ本会議所ハ縦令現金ニ非サルモ確実ナル銀行ノ小切手ニシテ、現金ト其効力ヲ同フスルモノハ之ヲ代用スルヲ妨ケサルコトヲ明ニ規定セラレンコトヲ望ム
又納税以外ニ於ケル其他ノ納金、即チ各官庁ニ納ムヘキ諸種ノ保証金供託金等ニハ確実ナル銀行ノ預金手形ヲ以テ現金ニ代用シ得ルコト、国債証券ト同一ナラシメラレンコトヲ望ム、現ニ従前ト雖トモ、諸官庁ニ納ムル保証金ノ如キハ時価ニ準シタル公債証書又ハ国立銀行ノ預金手形ヲ以テ之ヲ納ムルコトヲ得ト規定シタル法令アルニ、今ヤ国立銀行満期ニ際シ私立銀行トナリタルモノ続出セル為メ、右ノ規定ハ空文タラントスルノ状アリ、然ルニ事実ニ於テハ国立タリシ前日ト私立タル今日ト其銀行ノ信用ニ於テ毫モ異ナル所ナキノミナラス、却テ資本ヲ増加シ基礎ヲ鞏固ニシタルモノ亦多シ、法文ノ規定上国立銀行トアルカ為メニ、私立銀行ノ預金手形ノ代用ヲ許サヽルカ如キハ謂レナキノ甚シキナリ
以上二件実行セラルヽニ於テハ、国庫出納上ニハ何等ノ影響ヲモ与ヘスシテ、不便ニ苦ム納税其他ノ納金者ニハ幾多ノ便宜ヲ得セシムヘキナリ、願クハ閣下本建議ヲ採納シ、前記ノ趣旨ト抵触スル法令規則ハ総テ改正セラレンコトヲ、本会議所切望ノ至ニ禁ヘス
右本会議所ノ決議ニ依リ建議仕候也
　　明治三十一年十二月二十四日
　　　　　　　　　　　　東京商業会議所会頭　渋沢栄一
　　　　大蔵大臣　伯爵　松方正義殿