デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
3款 東京商業会議所
■綱文

第21巻 p.855-857(DK210144k) ページ画像

明治36年7月27日(1903年)

是日栄一当会議所会頭トシテ、保護政策ヲ確立シテ工業ノ発達ヲ図ランコトヲ内閣総理大臣伯爵桂太郎・大蔵大臣男爵曾禰荒助・農商務大臣男爵清浦奎吾・逓信大臣男爵曾禰荒助ニ建議ス。


■資料

東京商業会議所報告 第一〇五号・第二―三頁 明治三七年一月刊(DK210144k-0001)
第21巻 p.855 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇五号・第二―三頁 明治三七年一月刊
○第三回臨時総会  七月 ○明治三六年二十二日開
   出席者数 二十九名
午後五時五分開議、会頭渋沢栄一君欠席ニ付、副会頭大倉喜八郎君議長席ニ着キ、先ツ諸件ノ報告ヲ了リタル後、左ノ件々ヲ順次議事ニ附セリ
○中略
○第七号
  保護政策ニ関スル建議 (大倉喜八郎君提出)
本件ノ議題トナルヤ、副会頭大倉喜八郎君ハ議席ニ着キ、副会頭井上角五郎君議長席ニ着ケリ
本件ハ大倉喜八郎君ヨリ提出ノ理由ヲ説明シタル後、大多数ヲ以テ原案ヲ可決シ、尚ホ本建議ノ実行ニ就キテハ正副会頭ニ於テ尽力スルコトニ決定セリ(参照第四号参看)
午後七時五分閉会


東京商業会議所報告 第一〇五号・第一〇頁 明治三七年一月刊(DK210144k-0002)
第21巻 p.855 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇五号・第一〇頁 明治三七年一月刊
○同月同日 ○明治三六年七月二七日 保護政策ノ確立ニ関スル件ニ付、内閣総理・大蔵・農商務・逓信各大臣ヘ建議書ヲ呈出ス(建議書ノ全文ハ参照第四号ニ掲載ス)


東京商業会議所報告 第一〇五号・第三〇―三一頁 明治三七年一月刊(DK210144k-0003)
第21巻 p.855-857 ページ画像

東京商業会議所報告  第一〇五号・第三〇―三一頁 明治三七年一月刊
 ○参照
○第四号
 明治三十六年七月二十二日、第三回臨時総会ノ決議ヲ経、同月二十七日附ヲ以テ其筋ニ建議シタル建議書ノ全文左ノ如シ
    保護政策ニ関スル建議
謹テ案スルニ、今ヤ宇内列国ハ汲々トシテ国力ヲ伸張シ、以テ国民ノ福利ヲ増進センコトヲ努メサル莫シ、此時ニ当リ一歩ヲ緩フスルモノ
 - 第21巻 p.856 -ページ画像 
ハ忽チニシテ列強ノ後ニ瞠若タラサル可ラス、殊ニ世界列強ノ視線挙テ東洋ニ集注スルノ今日、我帝国タルモノ豈ニ拱手安座スルヲ得ンヤ夫レ国力ノ伸張ヲ計ラントセハ財力ト兵力トヲ並進セシムルヲ要ス、我国今ヤ陸ニハ十三師団ノ豼貅アリ、海ニハ五十隻ノ艨艟アリ、而シテ其ノ精鋭ナルコトハ既ニ日清戦役及ヒ北清事変ノ実蹟、ヨク之ヲ世界ニ発揮セリ、加フルニ政府ハ更ニ海軍ノ第三期拡張ヲ企図シ、以テ益々其完成ヲ致サントス、兵力ノ充実亦遺憾ナシト謂フ可シ、然ルニ翻テ我産業ノ状態ヲ見ルニ、其進歩極メテ遅緩ニシテ、未タ以テ誇称スルニ足ル可キモノナシ、若シ斯ノ如クニシテ止マランカ、財力遂ニ兵力ト並進スルヲ得スシテ、啻ニ平和ノ戦争ニ於テ列強ト輸贏ヲ争フ能ハサルノミナラス、既ニ完成シタル軍備モ之ヲ維持スルノ財源ニ窮乏シ、一朝有事ノ秋ニ当リテ其実力ヲ発揚スルコト難カル可シ、是レ豈ニ寒心ス可キニアラスヤ、故ニ今日ニ於テ富国ノ大策ヲ樹立シテ財力ノ充実ヲ致シ、以テヨク兵力ノ発展ト其均衡ヲ保タシムルハ我国ノ最大急務ナリトス
抑モ富国ノ要ハ産業ノ発達ニ在リ、而シテ之ヲ我国現時ノ情勢ニ察スルニ、先ツ保護政策ヲ確立シ、一ハ以テ輸入ヲ防遏シ、一ハ以テ輸出ヲ奨励シテ、主ラ工業ノ振興ヲ企図スルヨリ急ナルハナシ、是レ既ニ輿論ノ均シク認メテ異論ナキ所ナリ、曩ニ 陛下ノ関西ニ御巡幸アラセラルヽヤ、博覧会御観覧ノ際、我輸出品ニ就キ特ニ詳細ナル御下問ヲ賜ハリ、且ツ京都御駐輦中侍従ヲ派シテ各工場ヲ視察セシメ給ヒタリト拝承ス、思フニ是亦工業奨励ノ大御心ニ出テサセ給ヘルモノナルヘク 聖徳ノ優渥ナル、本会議所ノ私ニ恐懼感佩シ奉ル所ナリ
保護政策確立ノ事ニ関シテハ、本会議所ハ既ニ全国商業会議所聯合会ノ決議ニ依リ、明治三十三年六月五日及ヒ三十四年二月六日ヲ以テ、国家経済ノ方針ナル題目ノ下ニ意見ヲ開申スル所アリシモ、今復タ其要目ヲ再記シテ更ニ閣下ノ垂鑑ヲ請ハントス
(一) 輸入品中内地ニ於テ生産シ得ヘキモノヽ製造ヲ奨励シ、以テ其輸入ヲ防遏スルコト
(二) 輸出ニ利アル工業ヲ奨励シ、以テ輸出ノ増進ヲ図ルコト
(三) 前二項ノ方針ニ依リ精細ナル調査ヲ遂ケ、其保護奨励スヘキ品類ヲ選択スルコト
若シ夫レ以上ノ方針ニヨリテ保護政策ヲ確立セン乎、必スヤ大ニ内国工業ノ進歩、外国貿易ノ発達ニ裨補スル所アリ、随テ我カ財力ノ充実ニ顕著ナル効果アルヘキヲ信スルナリ、而シテ其実行ノ方法ニ至リテハ固ヨリ一ニシテ足ラサルヘシト雖、今試ニ其二・三ヲ挙示シテ以テ閣下ノ明裁ヲ俟ツ所アラントス
(一) 或工業ニ対シ営業税其他ノ公課ヲ免除シ、必要ノ場合ニ於テハ奨励金ヲ附与スルコト
(二) 政府需要ノ物品ハ出来得ル限リ其供給ヲ内国品ニ仰クコト
(三) 国家ノ保護ヲ受クル会社ノ購入品ハ、出来得ル限リ内国品ヲ多ク需用セシムルコト
(四) 政府経営ノ鉄道ハ勿論、国家ヨリ特別ノ保護ヲ受クル鉄道・汽船会社ヲシテ、或ル工業品ニ対シ運賃割引ノ方法ヲ設ケシ
 - 第21巻 p.857 -ページ画像 
メ、又国家ヨリ特別ノ保護ヲ受クル銀行ヲシテ、或ル工業品ノ取引ニ対シ特例ヲ設ケシムルコト
(五) 輸入ノ原料ニ加工シテ之ヲ再輸出スル場合ニハ、或ル種類ニヨリ戻税ヲ附与スルノ制ヲ設クルコト
(六) 或ル輸入品ニ対シ関税率ヲ増課スルコト、但シ協定税率ノ制ニヨリ之ヲ実施シ難キトキハ、一方ニ於テ消費税ヲ課シ、他方ニ於テ奨励金ヲ附与シ、以テ関税作用ヲ補フコト
(七) 工業品模範工場ヲ新設シ、技術ノ進歩ヲ計リ、且ツ新工業ノ発達ヲ助成スルコト
(八) 以上諸項ニ関シ必要ノ場合ニハ法令ヲ発布又ハ改正スルコト
近時世界ノ商業政策ハ淊々トシテ保護主義ニ傾キ、殊ニ倫敦ノ近電ニ拠レハ、英国殖民大臣チヤンバレン氏ハ其殖民地ニ特恵関税ノ制ヲ設ケンコトヲ主張シ、世論漸ク之ニ傾キ、多年自由放任ヲ主義トシタル英国ト雖モ、今ヤ或ハ将ニ保護主義ニ推移セントスルカ如キ趨勢ヲ呈セリ、世界ノ形勢斯ノ如キ今日ニ於テ、我国独リ此潮流ニ反抗セン乎財力ノ充実ヲ致スヲ得スシテ、益々兵力トノ均衡ヲ失シ、国力ノ伸張遂ニ期スヘカラサルニ至ラン、是レ本会議所カ国家前途ノ為メ深ク憂慮スル所ナリ、依テ本会議所ハ玆ニ再ヒ保護政策確立ノ意見ヲ具シテ敢テ閣下ニ建議ス、仰キ願クハ閣下速ニ本建議ノ趣旨ヲ採納セラレンコトヲ
右本会議所ノ決議ニ依リ建議仕候也
  明治三十六年七月二十七日
          東京商業会議所会頭 男爵 渋沢栄一
    内閣総理大臣 伯爵 桂太郎殿
    大蔵大臣   男爵 曾禰荒助殿
                    (各通)
    農商務大臣  男爵 清浦奎吾殿
    逓信大臣   男爵 曾禰荒助殿
   ○保護政策確立ノ建議ハ既ニ当会議所並ニ商業会議所聯合会ニ於テ国家経済ノ方針ニ関スル建議ノ一環トシテ取扱ハレタル所ニシテ、之ニ就イテハ、本資料第二十二巻所収「商業会議所聯合会」明治三十三年五月十七日、同年五月二十五日、同三十四年一月二十三日ノ各条、並ニ本巻明治三十三年六月五日ノ条参照。