デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治28年9月25日（1895年）

是日第四回定期会第一日ノ会議ニ於テ、静岡商業会議所ノ提出ニ係ル郵便電信条例中改正案上程サル。栄一原案廃棄ニ賛意ヲ表セシガ、討議ノ末廃棄トナル。

明治二十八年九月開設
第四回商業会議所聯合会報告　　第三六―三八頁　刊
○第十三号議案
　　郵便電信条例中改正案
 - 第22巻 p.31 -ページ画像 
　　　　郵便物重量及葉書幅員改正案

現在葉書寸法竪四寸六分　横三寸　　改正寸法往復葉書トモ竪五寸六分　横四寸
　　　　年賀状郵税低減案
一年賀状ハ量目三匁以内ノモノハ郵便税壱銭
　　　　電報料及手数料字数改正案
第三十七条
一和文片仮名十字以内一音信金拾五銭
　十五字以内ヲ加フル毎ニ金拾銭ヲ増ス
　　　改正（五字ヲ増シテ一音信トス）
一和文片仮名十五字以内一音信金拾五銭
　十五字以内ヲ加フル毎ニ金拾銭ヲ増ス
　　　　　郵便条例中量目葉書幅員改正ノ理由
　従来郵便物ノ逓送ハ概ネ多数ノ脚夫ヲ役シテ集配逓送ノ任務ニ当ラシメタルヲ以テ、其経費モ非常ノ巨額ヲ要シ、為メニ不衡平ノ量目ヲ規矩トシテ、或ハ過当ノ郵税ヲ徴シ、若シクハ軽便上端書ノ寸法ヲ縮少スルノ已ムヲ得サルニ至リシト雖モ、今ヤ国運隆興、文物工芸日進月歩ノ状況ヲ呈シ、鉄路縦横、交通頻繁ニシテ信書ノ往復織ルカ如ク、現今政府ノ官業及官有財産ノ収入中郵便電信収入ハ第一位ニ在リ、実ニ七百七拾壱万八千三百五拾三円余ノ巨額ニ達シ、逓信事業ノ進歩スルニ従テ比較的ニ其経費ヲ減少シ、収入ハ支出ニ超過シ大ニ余裕ヲ見ルニ至リシヲ以テ、本案ノ如ク量目・幅員ニ改正ヲ加フルモ敢テ国家経済ニ枝梧ヲ生セザルベク、却テ一般公衆ノ便益ヲ得ルヤ偉大ナリ、且葉書ノ如キハ嘗テ教育上ノ関係ヨリ鉛筆若クハ洋筆ヲ以テ認メシムルノ方針ヲ執リシモ、今日ニ於テハ小学校ノ生徒モ其教授ノ方針一変シタルト共ニ、毛筆ヲ以テ認ムル習慣ヲ生シ、従テ筆画縦横現時ノ葉書ニテハ頗フル紙面ノ狭隘ヲ感スルニ至ラム、之レ玆ニ本案ヲ提出シタル所以ナリ
　　　　　年賀状郵税低減ノ理由
　年賀状ハ新年ヲ賀シ旧交ヲ温ムル国民ノ大礼ニシテ無数ノ信書ヲ発スルモノナルヲ以テ自ラ普通ノ郵便物書状トハ其性質ヲ異ニスルモノナレハ、年賀状ニ限リ郵税ヲ特ニ低減スルハ相当ノ事ト信スルナリ、而シテ其普通信書ト年賀状トノ区別標目ノ如キハ宜シク条例中ニ制裁ヲ設クルモノトシ其施行手続ハ当局者ニ一任スヘキモノトス
　　　　　電報料及手数料字数改正ノ理由
　今ヤ商業ノ発達進歩スルニ従テ瞬間ニ通信往復スルモノ非常ニ増加シ、大ニ電信料ノ収入ヲ増加セシニモ係ラス、依然トシテ現制ノ如
 - 第22巻 p.32 -ページ画像 
キ高度ノ手数料ヲ存スルハ其途ヲ得タルモノニアラス、由テ本案ノ如ク改正ヲ加フルモ敢テ経費相償ハザルガ如キコトナシト思惟シ、本改正案ヲ提出シタル所以ナリ
右提出候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　静岡商業会議所
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　委員　北村五郎兵衛

明治二十八年九月開設
第四回商業会議所聯合会議事概録　　第二四―二五頁　刊
　　　○第一日　〇九月二五日午後一時三〇分再開
○上略
会長（奥田正香君）　次ニ第十三号議案ノ第一読会ヲ開ク
　書記長朗読
　　第十三号議案　　（静岡提出）
　　　　郵便電信条例中改正案
第二十三番（榊原由一君）　原案ヲ賛成ス
第十四番（須永信夫君）　此ノ如キ慾張主義ノ改正ヲ望ムハ余リ宜シカラズ、即チ本員ハ原案廃棄論者ナリ
第四番（萩原彦七君）・第一番（渋沢栄一君）・第五番（浜岡光哲君）・第十五番（石塚新吾君）ハ廃棄説ヲ賛成ス
会長（奥田正香君）　採決セン、先ヅ十四番ノ廃棄説ニ同感者ハ起立
　　起立　　多数
会長（奥田正香君）　多数ナリ、廃棄ニ決ス