デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治32年10月12日（1899年）

是日第八回定期会第二日及ビ十三日第三日ノ会議ニ於テ、全国繁盛ナル市街地ニ二等郵便電信局ヲ設置セントスルノ儀上程サレ、委員附託トナル。十六日第四日ノ会議ニ於テ、委員ヨリ通信局長トノ会談顛末ニ就キ報告アリ、其後提案者タル浜松商業会議所ヨリ該案撤回セラル。栄一会長トシテ議事ヲ司宰ス。

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第一二七―一三九頁　刊
　　　　○第二日
明治三十二年十月十二日午前十時五十分開議
　　出席委員　　　　　五十六名　○氏名略
○上略
○副会長（東京、中野武営君）　○中略　マダ少シ時間ガゴザイマスカラモウ一ツ議シタイト思ヒマス、議案第十号ヲ議事ニ附シマス
　　　〔書記議案ヲ朗読ス〕
　○議案第十号　　　　　　　　　　　　　浜松商業会議所提出
　一全国ノ繁盛ナル市街地ニ二等郵便電信局設置ノ件
　　　　理由
　我国ノ通信機関ハ、年一年ニ長足ノ発達ヲナセシト雖トモ、之ヲ輓近商工業発達ノ程度ニ比スルトキハ其進歩甚タ遅々タルノ観アリ、猶且ツ其設備未タ完カラスシテ為メニ郵便ノ遅着、書信ノ紛失等アリ、而シテ電信ノ延着、電文ノ誤謬頗ル甚シク、殊ニ夫ノ請負制度ニ属スル三等郵便局ニ至リテハ其弊害実ニ甚シキモノアリ、是レ商工業者ノ誠ニ忍ハサル所ナリ
　想フニ我国通信機関ノ不備ナル其原因多々アル可キモ、要スルニ請負制度ノ弊害最モ之レカ主因タラスンハアラス、元来我国ノ通信事業ハ純然タル官業ナリト雖トモ、其実三等局ニ至リテハ民業ニ類スルモノアリテ、我国通信機関ノ大部分ハ其実半官半民ノ事業ト称スヘキナリ、是ヲ以テ従来政府ノ監督充分ニ行ハレズ、従テ弊害百出セリ、通信事業ノ改善セサル良ニ故アル哉、抑々政府ハ経費ノ不足ニ依リ三等局ニ請負制度ヲ採ルノ已ムヲ得サルモノアルヘシト雖ト
 - 第22巻 p.466 -ページ画像 
モ、今ヤ商工業ノ発達ハ日ニ月ニ旺盛ニシテ通信事業ニ俟ツ所頗ル大ナリ、然ルニ之ニ反シ今日ノ如キ、通信事業ノ制度ニ委ヌルトキハ、商工業者ノ不便不利ヲ蒙ムルノミナラス、施ヒテ社会ノ文化ヲ妨ケ国運ノ伸張ヲ阻ムコト極メテ大ナリト云ハサル可ラス、現ニ全国ニ於ケル市街地ニシテ、電信局ハ孰レモ官業ノ二等局ナルニ拘ハラス、郵便局ハ請負事業タル三等局ノ制度ニ属スルモノ二十七個所アリ、其内商工業ノ繁盛ナル市街地ニシテ高岡市ヲ始メ其他人口二万内外ヲ有スル石巻・浜松・豊橋・桑名・敦賀・伏見・小倉ノ七町ノ如キハ、速カニ三等郵便局ヲ進メテ電信局ニ合設シ、二等郵便電信局トナシ、交通機関ノ民業タルノ観ヲ脱セシメ、猶ホ進ンデ其他ノ繁盛ナル市街地ニ於ケル郵便電信局ヲ漸次純然タル官業トナスト同時ニ、其規模ヲ拡張シテ以テ通信機関ノ進歩ヲ図リ、其事業ヲシテ敏活精確ナラシメラレンコトヲ切ニ希望ス、是レ本案ヲ提出スル所以ナリ
○十三番（神戸、横田孝史君）　十三番ハ本案ハ暫ク之ヲ決議スルコトヲ見合ハセ、提出者ニ於テ議案ヲ訂正セラレンコトヲ希望致シマス、此議案ノ表題ヲ読ンデ見ルト、全国ノ繁盛ナル市街地ニ二等郵便電信局設置ノ件トアリマス、チヨツト是ニ於テ見レバ全国ノ首府タル東京若クハ関西ノ中心タル大阪ノ如キ其他ノ大都会デ、既ニ一等局ノアルモノヲ、之ヲ引下ゲテ二等局ヲ設ケルト云フ奇観ガアリマス、恐ラク提出者ノ意ノアル所ハ理由書ヲ読ンデ見レバ分リマスガ、本日ハ之ヲ見合セテ相当ノ文章ニ直サレンコトヲ希望致シマス
○四十一番（浜松、鶴見信平君）　少シク文章ノ欠点アル所ハ唯今ノ御駁撃ニ依リマシテ尤ノ次第ト考ヘマスガ、浜松ノ如キハ是ニ書イテアル通リ三等局、今半官半民ノ受負業ニナツテ居リマス、ソレガ非常ナ失敗ヲシテ地方ニ少カラヌ迷惑ヲ掛ケ、詰リ郵便物ノ集配等モ受負業デアリマスカラ、五回ノモノハ四回ニシ甚ダ弊害ガ多イ、又電文ノ誤謬ナドガ多々アリマシテ甚ダ迷惑ヲスル次第デアリマスカラ、今迄三等局ヲ置イタ所デモ相当ノ人口アリ商業其他繁盛ナル所ハ二等局ニセラレムコトヲ希望スルト云フノデアリマシテ、文章上悪ルイ所ハ改正ヲ加ヘマスカラ、唯ダ意味ハ斯ノ如キコトデアリマスカラ、ドウカ賛成アランコトヲ希望致シマス
○三十番（博多、小河久四郎君）　本員ハ本案ニ賛成致シマス、既ニ博多会議所ニ於テハ、実際大ニ感ズル所ガアツテ、昨年此事ヲ其筋ニ建議スルト同時ニ、全国ノ会議所ニモ賛同ヲ求メマシテゴザイマス、幸ニ賛同セラレタ所ノ会議所モ同ジク建議ニナツテ居ルト信ジマス、尤モ其趣意ハ此理由書ニ書イテアル通リニ外ナリマセヌカラ、別段理由ヲ陳述スルニ及ビマセヌガ、約マリ本案ニ賛スルト共ニ満場諸君ニ賛成ヲ希望致シマス
○二十七番（熊本、下田耕造君）　二十七番モ賛成致シマス、十三番ガ文章ノ悪ルイト云フコトヲ言ハレマシタガ、ソレハ明カニ分ツテ居ルコトデ、理由書ヲ読ンデ見レバ理屈ガチヤント付イテ居リマス、実ニ三等郵便電信局ハ不都合極マルモノデ、私ノ見聞スル所ニ依レバ、畳六枚敷位ノ所デ事務ヲ執ツテ居マス、其他ニモ不都合極マル三等局ガ
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沢山アラウト思ヒマスカラ、本案ニ賛成ヲ致シマス
○十番（名古屋、奥田正香君）　本員モ是ニ賛成ヲ致シマス、十三番カラ御説意ガアリマシテ至極尤モデアル、併シ此儘出スノデハナイ、趣意ヲ決議シテ置クト、各会議所ヘ持ツテ往ツテ理由書ニ依テ更ニ拵ヘテ出スノデスカラ、今此処デ文字ノ修正ヲシタ処ガ矢張吾会議所ヘ持ツテ往ツテ更ニ又修正ヲシナケレバナラヌト云フコトニナリマス、詰リ是ハ目下三等郵便電信局ノアル所ノ市街地ト云フ本員ハ解釈ヲ下スカラ、此全国繁盛ナル市街地ト云フ上ヘ持ツテ往ツテ、目下三等郵便局ヲ設置シアルトシサヘスレバ宜イノデアリマスカラ、本案ニ賛成致シマス
○十六番（桑名、平野美純君）　十六番モ本案ニ同感デアリマスカラ賛成致シマス
○五十七番（太田、前島平君）　本員ハ此提出者ノ御方ニ一・二箇条承ツテ置イテ賛否ヲ決スル積デアリマスガ、此郵便ノ遅着、信書ノ紛失電信ノ延着、電文ノ誤謬ト云フコトハ、総テ三等郵便局ガ扱ウタメニ弊害多シト云フコトデアリマスガ、定メシ是ニ付テハ統計上御調ベニナツタ結果デモアラウカト考ヘルノデスガ、果シテ三等局ガ扱ウガ故ニ斯ウ云フ弊害ヲ来シテ居ルヤ否ヤト云フコトヲ確メテ置クノハ必要ト考ヘマスカラ、ソレヲ一ツ伺ツテ置キマス、ソレカラモウ一ツ三等局ニ至ツテハ民業ニ属スルト云フコトガアリマスガ、是ハドウ云フコトデアリマスカ、ソレヲ伺ツテサウシテ賛否ヲ決シタイ
○四十一番（浜松、鶴見信平君）　是ハ我浜松ノ如キハ前ニモ申シマスル通リ受負業ノ有様デアルガ故ニ、電信郵便局ハ大キニ失敗ヲ致シマシタ、其爾来ソレヲ引継ギマシテ又既ニ浜松ノ郵便局ハ実ニ不完全極ツタ訳デ、是マデノ回数モ四回ニナルベキモノヲ或ハ三回デアルトカ云フヤウナ訳デ、着々之ニ改良ハ加ユル積リダト云フヤウナ訳デアルガ、既ニ配達ノ回数モ一回モ殖ヘマセヌヤウナ次第デゴザイマス、或ハ特ニ届ケベキ小包郵便ノ如キ、或ハ適宜ノ幸便ニ托スルト云フヤウナコトガ往々アリマシテ、昨今受継ギマシタ者ガ前ニハ斯ウ云フコトトデアツタ、今後ハ斯ウ云フコトニ改良スルト云フコトモ申シテ居リマス、現ニ回数モ殖スヤウナ次第モアリマス、実ニ斯ウ不整頓極ツタノデゴザイマス、追々改良ト云フコトニハ今ナツテ居リマスヤウナ次第デ、実ニ改良ハ国家ノ焦眉ノ急ト考ヘマス
○五十七番（太田、前島平君）　只今提出ノ御方ニ伺ヒマスガ、遺憾ナガラ御説明ニ依ツテ御同意ヲスルコトガ出来ナクナツテ参タノデ、デ理由ハ三等局ハ請負ノ制度デアルカラ必ズマア過失ガアルダラウ、或ル一局部ノ例ヲ挙ゲテ、全国三千ニ渉リマス三千有余ノ三等局ガ残ラズサウ云フ真似ヲシテ居ルカト斯ウ云フ断案ヲ下シタノデ、此信書ノ延着、電信ノ遅着シタリ、電文ノ誤謬、是等ヲ挙ゲテ三等局ノ過失ト想像サレタノデ、或ル一局部ノ例ヲ極端ニ御引キナサレタノデハ、或ハ実際ニ於テドウカト云フ考ヲ持ツテ居リマス、ソレデ今日ノ三等局ノ制度ハ決シテ民業デハナイ、純然タル官業ニナツテ居リマス、唯ダ違ウ所ハ経費ノ点ガ請負ニナツテ居ルノミデ、総テ業務ノ点ニ行ツテハ少シモ民業ノ観ハナイ、ソレカラソレ等ノコトヲ防グノニハ、幾ラ
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モ又、必ズシモ二等局ニ直サズトモ随分途ガアル、監督ヲ厳ニスルトカ或ハ技術者ノ程度ヲ高メルトカ、随分途ガアルダラウト信ズル、ソレカラ何誰カノ説デゴザイマシタカ取扱ウ所ガ悪ルイ、二十七番ノ御説カ、取扱ウ所モ必ズシモ立派ニシタラ、電文ノ誤謬モナケレバ、信書ノ遅達モアルマイ、斯ウ云フコトハ強チアルマイト思フ、寧ロサウ云フ外観、局舎ノ構造ガ悪ルイトカ或ハ何トカ云フ方面デアツタナラバ格別、決シテ此本案ノ四箇条ノ弊害ニ対シテハ聊カモ関係ノナイコトダラウト信ズルノデ、ソレデ要スルニ先ヅ三等局ノ制度ハ俄カニ廃シテ二等局ニスルノ必要ヲ認メヌニ依ツテ、本案ニ賛成スルコトガ出来ナイ、尚ホモウチツト能ク御調べニナツタモノデ、果シテ此統計上是等ノ弊害ガ三等局ニシテ比較上多イト云フモノナレバ格別、唯ダ想像ヲ以テ之ヲ口ヲ極メテ三等局ヲ非難スルト云フノハドウ云フモノダカト云フ考デ、詰リ本案ハ宿題ニデモナサル方ガ宜カラウト考ヘマス
○二十六番（八王子、鈴木信太郎君）　二十六番ハ此原案ヲ賛成スルノデ、実ハ此提出者二十九番ノ御述ベデゴザイマスガ、事実三等局ト云フノハ官業ニ違ヒゴザリマセヌガ実ニ民業ノ有様デ、之ハ無論原案ヲ賛成シマシテ三等郵便局ヲ二等ニスルト云フ事ハ、本員ハ飽マデモ賛成ヲ致シマス、此提出者ニ付イテ一寸御相談ヲ致シマス、此提出者ハ人口二万内外ヲ有ス、爰ニ石巻・浜松・其他豊橋・桑名ト云フコトガアリマシタガ、斯ウ云フ文字ヲ御除キニナリマシテ、二万内外ヲ有スルト云フ単ニ斯ウ云フ風ニ訂正ハ如何デアリマスカ
○四十一番（浜松、鶴見信平君）　之ハ多少調ベモシタンデゴザイマシテ、未ダ外ニ二万内外ノ所モ往々アルダラウト思ヒマス
○二十六番（八王子、鈴木信太郎君）　多々アルダラウト思ヒマスガ
○四十一番（浜松、鶴見信平君）　修正シテ宜シウゴザイマス
○二十六番（八王子、鈴木信太郎君）　サウ云フコトニナリマスレバ実ニ急務中ノ急務デアルダラウト考ヘマスカラ、本案ニ賛成ヲ致シマス
○番外二十二番（小樽、多賀武次郎君）　私モ矢張リ此原案ヲ賛成スルノデゴザイマス、只今何番カラカ反対ノ御説ガ出マシテ、其中ニ三等郵便局ニ拘ラズ、是等ノ弊ガアルモノニ限ルカト云フヤウナ御議論デアツタ、デ単ニ一部ノ事情ヲ以テ、他ニモ必ズサウ云フ弊害ガアルト云フ事ヲ提出者ガ推定ヲシタノハ早計デアル、ソレカラ又仮リニ其弊害ガアルトシタ所デ、他ニ矯正ノ方法ガアルジヤナイカト云フノニ詰リ帰スルヤウデゴザイマス、デ勿論提出者ガ数字的ニ其誤リヲ証明スルコトガ出来ヌデモ、常識ヲ有スル者ハ必ズ今日ノ三等郵便局ニ於テ是等ノ弊害ガ生ジ易イト云フコトハ、容易ク想像スルコトガ出来ル、ト云フノハ、只今ノ民業デナイ純粋ノ官業ダト云フコトヲ仰ツタガ、勿論ソレニ違ヒナイ、ケレドモ事実ニ於テハ請負ノ制度ニナツテ居リマスルカラ、人ヲ選ミ集配人ヲ選ムト云フヤウナコトモ、成ルベク安イ方ノ人間ヲ選ンデ、自分ノ利得ヲ得ヤウト云フコトハ之ハドウモ避ケラレヌコトデアリマス、サウ云フ自分ノ利益ヲ図ルト云フコトハ、自然ニ民業デアルカラシテ、其必然ノ結果トシテ斯様ナ弊害ヲ生ズルト云フコトハ到底免レナイ、デ之ヲ完全ニ監督ヲシテ行クト云フコトニナルト非常ニ手ヲ要スル、非常ニ面倒ヲ生ズル、サウ云フ面倒ナコ
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トヲシテ尚ホ弊害ニ陥リ易イ三等局ヲ置カウヨリモ、之ヲ引上ゲテ二等郵便局トスルナラバ其弊害ラ防グコトガ易イト思フ、又必ズ二等局ト為シマスルト多少費用ハ余計ニ掛ルニ違ヒナイケレドモ、本来ハ郵便制度ノ如キハ之ヲ民業ニスルヨリモ官業ニスルノガ極ク適当ノモノデアルト云フコトハ争ハレヌ、デ多少ノ費用ガ掛リマシテモサウ云フ弊害ヲ予防スル、矢張リ官業トシテ二等局ニ上ゲテ費用ハ沢山掛ケマシテ、成ルベク通信事業ノ完備ヲ図ルガ国家ノ急務デアラウト思ヒマス、単ニ僅カ提出者ガ数字ヲ以テ示サナカツタトカ、文字ノ書方ガ悪ルイカラ反対ト云フコトハ一向要領ヲ得ナイ、此案ハ私ハ全体ノ賛成ニ依ツテ成立スルヤウニ致シタイト云フ希望デ……
○五番（水戸、塙七平君）　五番ハ賛否ヲ表スル前ニ一応提出者ニ質問ヲ致シマスガ、此三等郵便局ハ二等郵便局ニ上ゲマスト、経費ハ之ハドノ位違ツテヰマスカ一寸
○四十一番（浜松、鶴見信平君）　実ハ未ダ其差ト云フコトノ何ハ詳細モ調ベタデハゴザイマセヌガ、之ハ多少二等ニナリマスレバ殖エルコトハ殖エテ、収支償ハヌト云フ点モ或ハアルカモ知レマセヌ
○五番（水戸、塙七平君）　五番ハ此案ニ付キマシテハ、五十五番デスカ、五十七番デスカ――五十七番ト同意デゴザイマス、デ要スルニ只今ノヤウナ御説ニナリマシテ、唯三等郵便局ガ全体ニ悪ルイカラ二等郵便局ニスルト云フダケノ何デアリマスルト、詰リ其儘置キマシタ所ガ別ニ差支ガアルマイト思ヒマスルシ、殊ニ五十七番ハ当業者デ中々其方ハ能ク調ベテ居リマスカラ、五十七番ニ賛成ヲ致シテ置キマス
○八番（金沢、山田清三君）　八番ハ本案ヲ賛成ノ一人デアリマス、此理由ニハ色々アリマスルガ、今提出者ガ或ハ浜松・石巻等ノ文字ヲ除イテ、殆ンド人口二万内外ノ地ニ於テハ二等郵便局ヲ設置シタイト云フコトニ訂正サレマシテ、ソレニ付テ最モ人口ガ二万内外ニ達スル所ハ人口ノ高ニ依ツテ郵便モ頻繁ニナラウト云フ、ソレニ対シテ二等郵便局ニスルハ相当ナコトデアラウト思フ、他ノ理由ハ兎モ角モ、人口ノ点ニ於テ二等郵便局ト云フコトハ最モ相当ナコトデアル、本案ヲ賛成スル積リデアリマス
○番外十番（鹿児島、三木原正吉君）　私共ハ此案ノ御趣意ハ至極御同感ナノデ、併シナガラ斯ク云フヤウナ理由ニ依リマシテ之ヲ其筋ニ提出致シマスルト、多少粗末ニナルヤウナ点ガアリハシナイカト考ヘマス、実ハ此御趣意ハ能ク分ツテ居リマスガ、此ノ如キ事ニ付テノ一箇ノ仲裁説ガアルノデゴザイマスガ、御提出者ニモウ一応御考ヲ願ツテ此二十七箇所ノ二等局ノ中デ、名前ヲ挙ゲルノデ、此場所此場所ハ二等局ニ進メテ呉レト云フコトニ、箇所ヲ挙ゲテ御提出ニナツタ方ガ、当局者モ之ヲ実施スルニ大ニ宜イカト思ヒマス、唯ダ仕事ノ仕方ガ悪イトカ斯ウ云フコトハ止メテ、色々ノ点カラ必要デアルカラ、此箇所此箇所ニハ是非共二等郵便局ヲ置イテ呉レト云フタ方ガ、余程穏カデアラウト思ヒマス、ソレモ沢山ノ事デハアリマセヌ、僅カ二十七箇所デ単ニ人口比例ニハ依リマセヌ、交通機関ハ勿論、人口ハ標準デハアリマスケレドモ、或ハ土地ニ依ツテ他ノ地方トノ通信ノ要点トシテ、是非共二等局ヲ置ナケレバナラヌヤウナ場所モゴザイマセウカラ、ソ
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レ等ノ点ヲ御考下サレマシテ指名ヲサレテ、其所ニ置イテ呉レト云フ希望ニ御直シ下スツタナラバ、賛同スルニモ余程皆サンガ賛同シ易イカト思ヒマス、何誰カノ説ニ唯ダボンヤリト二万以上トスト云フコトハ反対ノ意見デ、詰リ其方ガ行ハレ易イカト思ヒマスカラ、一応提出者ニ御相談ヲ願ヒタイ
○三十八番（大坂、今西林三郎君）　私ハ一寸御尋ネ致サウト思ツテ居ツタコトガアリマシタ、五番カラ御尋ネニナリマシタカラソラ分リマシタガ、経費ノ点デアル、一体此私ハ御提出者ニ先刻ノ御案ニモ反対シ、又反対ヲスルヤウデゴザイマスガ、反対デモナイノデゴザイマスガ、ドウモ其先刻モ申シマスヤウニ、成ルタケ私ハ実行主義デヤリタイト思フ、行ハレテモドウデモ構ハナイ、何デモカンデモ一ツ有益ナコトヽ認メルコトハヤツテ置クガ宜イト云フ風ノコトハ私ハ甚ダ取ラヌノデアル、ソレデ此交通機関即チ郵便電信制度ト云フヤウナモノハモウ政府ニモ余程之ニ付テハ経費ノ事等ニモ心配ヲセラレ、段々ヤツテ居ラルヽノデアツテ、サウシテ吾々カラ考ヘマシテモ、成ル丈ケ之ハ国民一般公平ニ利益ヲ受ケルヤウニト云フ方計デヤツテ貰ヒタイト思フ、ソレデ今日郵便電信ノ拡張ト云ラコトニ付テハ、非常ナ議会ニ向ツテ費用ノ請求ヲセラレテ毎年ヤラレテ居ルケレドモ、所ガ財政ノ都合ニ依ツテソレガ行ハレナイト云フコトニナツテ居ル訳デゴザイマスカラ、唯ダ無責任ニソレハ利益デアルカラヤラナケレバナラヌ、弊害ガアルカラヤラナケレバナラヌト云フコトハ、行ハレルト行ハレザルトニ拘ラズ吾々ハ請求スルト云フ考デアリマスルト宜イカモ知レマセヌケレドモ、私ハサウ云フ事ハ面白クナイ、成ルベク之ハ政府ニ言フ以上ハ、成ル丈ケサウ云フ事ニヤツテ貰ヒタイト云フ考ヲ持ツテヤル、サウスルト云フト、詰リ先刻五番カラ尋ネラレタ経費ナドノ事モ考ヘテ、是丈ケ位ノ事ナレバ之ハ賛成シテヤツテ貰ヒタイト云フコトニナルデアリマスルガ、ソレハ御調ベモナイト云フ話デアルト云フト今少シ取調ベガアツテ斯ウ云フコトナレバ随分行ハレヌコトハナイト云フヤウナコトニナツテ、後々私共ハ之ヲ賛成シタイ、決シテ之ハ悪ルイ事デハナイ、善イト云フコトニ極ツテ居リマスケレドモ、余リ善イモノデモ悪ルイモノデモ、無責任ニ出来テモ出来ンデモヤルト云フコトハ一ツ御見合セニナツテ、能ク御調ベニナツテ次回ニ御提出下サルカ、又次回マデ宿題トシテ置イテ御提出ニナツテ、更ニ次ノ会議ニ御提出下サルコトニ実ハ願ヒタウゴザリマス、決シテ反対スルト云フノデハゴザリマセヌガ、サウ云フ風ニ今少シ鄭重ニ調べヲシテ御提出下サランコトヲ私ハ希望スルノデアリマス
○四十一番（浜松、鶴見信平君）　文章上不満ナル所モ多々アルヤウナ次第デゴザイマス、尚ホ提出ヲ致シマスヤウナコトニシタイカラ、明日マデ延バスコトヲ……
○三十二番（伏見、江崎権兵衛君）　私モ十分必要ヲ認メマシタニ付テ既ニ会議所ノ決議ノ結果、其筋ヘ請願ヲ致シタイト云フヤウナ次第デアリマス、賛成デゴザイマス
○副会長（東京、中野武営君）　既ニ此案バ爰ニ揚ゲテアルノデゴザイマス、ケレドモ時刻モ大分何デアリマスシ致シマスカラ、今日ハ決議
 - 第22巻 p.471 -ページ画像 
ヲ致シマセヌデ明日ニ延バシマス

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第一六二―一六五頁　刊
　　　　○第三日
明治三十二年十月十三日午前十時三十分開議
　　出席委員　　　　　五十四名　○氏名略
○上略
○六十二番（東京、中野武営君）　時刻ガ迫リマシタカラモウ一ツ申上ゲマスガ、此浜松商業会議所提出ノ議案第十号デゴザイマス、御提出者ガ何ニカ御修正ヲナサルカラ少シ延ベテ後ニシテ呉レト云フ御請求デアツテ後廻ハシニナツタ、外ノ案件ハ此協議案ヨリ外ニナイノデゴザイマスガ、爰ノ所デ私ハ一ツ建議ヲ致シマスル、提出者ガ御修正ヲナサルカドウカ図ラレマセヌケレトモ、今申スヤウニ明日ハ委員会ヲ開イテ出スト云フ事ニナツテ、又其翌日ニナルト後レテ仕舞フカラ、依テドウ云フ御修正ニセヨ精神ニ変リハナイト考ルデ、私ハ一ノ意見ヲ出スノハ、昨日ノ御論ヲ承ツテ見ルト趣意ヨリモ文章ノ足ラヌト云フ所ニ御批難モアツテ、又実際ノ趣意ニ付テ御反対モアツテ決着シナイノデアリマスガ、要スルニ私ハ斯ウ考ヘルノデアリマス、成ル程三等郵便局ト云フモノガ不都合千万デアルト云フコトハ私モ御同感デアリマス、成ル丈ケ早ク改メテ貰ヒタイト云フコトハ予ネ予ネ思ツテ居リマスガ、唯経済ノ都合ニ依ルノデス、政府ニ於テモ金サヘアレバ決シテ不完全ノ儘ニ安ンジテ居リハセヌト信ズルガ、唯如何セン経済ノ如何ニ依ツテ遅々シテ居ルト思フノデアリマス、併シ経済ノコト計リ申シタ所ガ、自ラ運ビ方ニ依ツテ金ノ都合モ緩急上出来ハシマスガ、此意義ヲ徹底セズシテ此儘息ンデシマウト云フノモ不本意デアル、ト申シテ此聯合会ガ何ンデモ漢デモ決議シテ建議ヲ持出ス、政府ノ財政ノコトモ何モ考ヘズシテ無暗ニヤレルダケヤラウト云フノハイカヌ、ソレヨリモ実利実益ヲ計ル事ニナサツタナラ宜カラウ、付テハ前ノ委員説ノ成立ツテ居ルノガ此第二号議案ノ書留郵便物云々ノ議案デアリマス、此事ニ就テハ何レ委員ノ御方ガ明日ナリ逓信省ノ方ヘ御出テニナツテ色々御取調ニモナリマセウカラ、此二号議案ノ委員ニ本案即チ十号議案ヲ御附託ニナツテ、三等郵便局ガ斯ウ云フ不都合ガアル為ニ今回聯合会ノ問題ニナツテ委員ニ附託ニナツテ居ルガ、一体政府ガ今ノ三等郵便局ト云フモノヲドウ云フ始末ニスル積リデアルカト云フコトデ、当局者ニ御尋ネニナツタナラバ、多少意義ガ徹ルダラウト思フサウスレハ経済ト云フバカリデナク意思モ徹底シ、他カラ見テモ唯ワイワイ言フヤウニ見ラレヌデ、丁度好イ加減ナコトニナラウト思ヒマスカラ、前ノ二号議案ノ委員ニ之ヲ附託シテ逓信省ニ今ノ事ヲ言フテ貰フヤウニシタイト思ヒマス
○十三番（神戸、横田孝史君）　十三番ノ考モ、六十二番ノ説ト略ボ同ジヤウナ意見デアリマス、唯昨日此案ガ出ルニ当ツテ案文其者ガ面白クナイト云フ所カラ、提出者ニ修正ヲ促シタ次第デアリマシタカ、終ニハ提出者ニ於テモ本日ニ之ヲ延ハスト云フコトデ、マダ修正文モ出ナイヤウデアリマスガ、要スルニ此事ノ必要ハ本員ノミナラス、満場
 - 第22巻 p.472 -ページ画像 
御同感ノコトヽ信シマス、ソレデ既ニ郵便法ノコトニ付テ、前ニ委員附託ニナツテ居ル所ノ案ガアリマスカラ、之ヲ同一委員ニ附託スルト云フコトハ便宜上必要ナコトデアラウト思フ、只其委員ノ方ニ一言希望ヲ述ベテ置クノハ、此理由書ニ依ルト或ハコレコレノ都会若クハ人口何万以上デアルトカ云フヤウナ事ヲ以テ標準ニナツテ居リマスカ、如何ニモ人口ノ多イノハ即チ繁盛ノ都会デアルト単純ニ言ヘハサウナリマスケレトモ、必シモサウデナイノテアル、一例ヲ申セバ九州ノ門戸タル所ノ門司ノ如キ、数箇村ヲ集メテ始メテ市制ヲ布カレマシタカ其商業ノ繁盛ナルコトハ実ニ驚クバカリデアル、又村落ナトテ私設電話ナドヲ利用シテ居ルト云フヤウナ事柄ガアル、故ニ必シモ人口ガ何万以上デアルカラ是レガ必要デアル、何万ニ足ラヌカラ此事ノ必要カナイト云フコトニ着眼スルコトガ甚ダイカヌト思ヒマス、ドウカ委託ニナル以上ハ委員ノ方々カ徒ラニ人口ノミノ比例ニ依ラズシテ、其土地ノ状況如何ト云フコトニ御着眼ニナツテ相当ノ御調査アラムコトヲ希望スルノデアリマス
○四十一番（浜松、鶴見信平君）　只今六十二番ノ御注文及十三番ノ御説モゴザイマシタ、実ハ本案理由ノ文字ノイカヌ所ヲ修正シテ復ビ出ス考デゴザイマシタガ、既ニ第二号議案即チ此郵便物ノコトデ委員モ定メラレテ居ル次第デアリマスカラ、本案モ同一委員ニ附託シテ御取調ベ願フコトニ致シマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　十号議案ニ付キマシテ六十二番カラ、此二号議案同様ニ同一委員ニ附託シタラ宜カラウト云フ御動議ノ出マシテ、段々御賛成ガアルヤウデゴザイマス、又浜松会議所ノ御方モサウナツテ差支ナイト云フ御意見ヲ御陳述ニナリマシタカラ、御論カナケレバ採決致シマス、此十号議案ヲ二号議案ノ委員ニ附託スルト云フ六十二番ノ動議ニ御同意ノ御方ノ御起立ラ請ヒマス
　　起立者　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　全会一致デゴザイマス、ソレデハ本案ハ二号議案ノ委員ニ附託スルコトニナリマシタ

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第二七一―二七三頁　刊
　　　　○第四日
明治三十二年十月十六日午前十時二十分開議
　　出席委員　　　　　四十七名　○氏名略
○上略
○六番（仙台、遠藤敬止君）　○中略　ソレカラ続イテ此郵便ノ事モ同ジ私ガ委員デゴザイマシタカラ、直グ逓信省ヘ廻リマシテ通信局長ニ会ヒマシテ、之ハ五名ノ委員デ揃ツテ会ヒマシタ、此書留郵便法ノコトニ付テハ委員長ノ方カラ申シテアリマスカラ又後トノコトニ致シテ、三等郵便局ヲ二等郵便局ニシテ貰ヒタイト云フ建議案ガゴザイマスルコトニ付テ通信局長ニ親シク聞キマシタ所ガ、之モ逓信省ノ方デハ色々此二等郵便局ノ資格ヲ具ヘマスルニハ、私共ガチヨツト考ヘテ居タヤウナ即チ色々ナ材料ガアリマス、先ヅ第一商業ノ繁盛ノ地トカ、ソレカラ次ニハ郵便ノ件数、電信ダトカ、ソレカラ交通ノ便否、今二等郵
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便局ニハ鉄道ガ通ジタ為ニ交通ノ便利ヲ得タタメニ早ク二等郵便局ノ資格ニナル何ト云フ場所モ出来ルコトモアル、交通ノ便利カラ軍事上ノ関係デ師団ナドガ新設ニナリマシタ小倉ダトカ広島ノ如キハ、三等郵便局デアツタノガ、サウ云フヤウナ軍事上ノコトモ一ツノ資格ヲ具ヘルノ一ニナリマスサウデ、ソレカラ其人口ナドト云フノモ最モ其一デアツテ、ソレ等ノ事ヲ皆書集メテ二等郵便局ト云フ資格ヲ具ヘルンデ、其上ニ二等ニナルニハ先ヅ逓信省ノ経済ノマア其一般関係カラ、此本年度ニハ四ツ三等郵便局カラ二等郵便局ニ直スモノヽ予算ニナツテ居リマスサウデ、然ルニチヨツト経費ガ足リナクナツテ二等電信局ト云フモノニナツテ、郵便丈ケガ三等ト云フ土地ガアルサウデ、ソレガ二等郵便局ニ直ルノガ二箇所、ソレカラ電信郵便共ニ三等デアルノガ直ルノガ当年ダケデ二ツアツテ、都合四ツ二等ニ直リマスルコトニナリマシタ、来年度ハ此信数《（マヽ）》モ予算ニ入レテ直スコトニスル、デ浜松ダトカ――既ニ浜松ノ商業会議所カラモ、色々三等郵便局デアツテ色色不体裁ノアツタコトヤ、ソレ等ノ箇条ノコトモ逓信省アタリノ課長ナドハ、気ノ毒デアツタト云フテ知ツテ居リマスヤウナコトデ、浜松ハソレヲチヤント資格ヲ備ヘタ前ニ、色々ノ商業ノ制度ダノ、交通ノ便不便デ、毎年拵ヘ直シテアル、ソレニ第一番カ二番ニアル位ノコトデアリマシタカラ、浜松モ其中ニ二等郵便局ニ這入ル資格ノ中ノ一番最モ上ニ在ルヤウナ話デアリマシタ、却ツテサウ云フヤウナ次第デアリマスカラ、ソレ丈ケデ建議ヲスルノ、請願ヲスルノト云フコトハ、是丈ケニ御止メニナツタラ宜カラウト云フ――提出者ハ御見合ニナツタラ然ルベキト存ズルノデスガ、之ハ提出者ノ御意見次第デスガ
○四十一番（浜松、鶴見信平君）　只今郵便電信ノ事ニ付キマシテ、委員長カラ委シク報告ヲ拝承致シマシテゴザイマス、実ニ只今述ベラルル如ク追々ニ進ム方針ヲ持ツテ調査シ、今日此ノ如キコトヲ御洩シニナツタ次第デゴザイマス、稍々望ミハ達シ得ラルヽヤウナコトニ存ジマスル故ニ、十一号案《（衍）》デゴザイマシタカ、提出致シマシタノハ、既ニ略々望ミノ達スル次第ト考ヘマスカラ今日撤回ヲ致シマス

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第三〇六頁　刊
　　　　○第五日
明治三十二年十月十八日午前十時十分開議
　　出席委員　　　　　五十名　○氏名略
○上略
○副会長（東京、中野武営君）　ソレカラモウ一ツ、議案第十号ノ浜松ノ商業会議所ノ提出ノ、全国ノ繁盛ナル市街地ニ二等郵便局電信局設置ノ件、是モ提出者ヨリ撤回ヲセラレマシタノヲ御承認ニナツタコトト致シテ宜シウゴザイマスカ
　　　（「異議ナシ」ト云フ者アリ）