デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治32年10月18日（1899年）

是日第八回定期会第五日ノ会議ニ於テ、東京商業会議所ノ提出ニ係ル協議案、外国人ニ鉱山開掘権並ニ土地所有権ヲ許容スルノ儀上程サレシガ、各会議所ニ於テ尚ホ篤ト調査研究スルニ決ス。栄一会長トシテ議事ヲ司宰ス。

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会報告　　　第七三頁　刊
○協議案第二号　　　　　　　　　　　　（東京商業会議所提出）
一外人ニ鉱山ヲ開掘シ得ルノ権、及ヒ土地ヲ所有シ得ルノ権ヲ許ス件
　　　　理由
　　我国今ヤ各国ト対等ノ条約ヲ結ヒ、内地ヲ開放シテ外人ニ雑居ヲ許シタル以上ハ、外人ニ鉱山開掘・土地所有ノ権ヲ許スハ外人ヲシテ安ンシテ内地ニ営業ヲ為サシムルニ必要ナルノミナラス、実ニ内外ノ資本ヲ共通シ国内ノ実業ヲ発達セシムルニ於テ欠ク可ラサル要件タリ、然レトモ其事頗ル重大ニシテ国家百年ノ計ヲ考ヘ始メテ実行シ得ヘキモノナルニ依リ、各会議所ト共ニ充分ノ調査研究ヲ為サント欲シ、玆ニ本案ヲ提出ス

明治三十二年十月開設
第八回商業会議所聯合会議事速記録　　第三八二―三九五頁　刊
　　　　○第五日
明治三十二年十月十八日午前十時十分開議
　　出席委員　　　　　五十名　○氏名略
○上略
○会長（東京、渋沢栄一君）　○中略　爰ニ協議案ガ二項ト三項ガ残リマシテゴザイマス、随分何ンデゴザイマスケレドモ、引続イテ此二案ヲ御議シ下サルコトニ致シタイト思ヒマス
○六十二番（東京、中野武営君）　協議案第二号ヲ是カラ協議会トシテ御開キニナルノデゴザイマスカ、ソレナラバ此事ハ少シ外交上ノ問題ニモ関係致シマスシ、未来余程大ナル関係ノアリマスル問題ト考ヘテ居ル、ソレガタメニ協議会ニ願フタ所以デゴザリマスカラ、相成ルベクハ傍聴人ヲドウゾ御止メ下サリマシテ、秘密会議デ致シタイ
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○三十六番（岡山、香川真一君）　六十二番ヲ賛成
　　　（「賛成」ト云フモノアリ）
　　於是傍聴ヲ禁ジ秘密会議ヲ開ク
○会長（東京、渋沢栄一君）　傍聴ハ会議ノ御望ニ依リマシテ皆退散致シテゴザリマス
○六十二番（東京、中野武営君）　協議案第二号外人ニ鉱山ヲ開掘シ得ルノ権ヲ許ス件、此問題ヲ東京商業会議所ヨリ提出ヲ致シマシテ御協議ヲ願ヒマスノデゴザイマスガ、此問題ノ事ニ付キマシテ私一個トシテノ意見ヲ申セバ随分長ウゴザイマスガ、要スルニ東京商業会議所ガ爰ニ此案ヲ提出ヲ致シテ聯合会諸君ニ希望致スコトヲ先ヅ申シテ、ソレカラ第二ニ若シ本題ニ入ツテ討議ヲスルト云フコトニナレバ其際ニ至ツテ申述ベヤウト思ヒマス、ソレハ東京商業会議所ニ於キマシテモ此問題ハ如何ニモ重大問題デアリマシテ、一箇所ノ会議所ガ卒先シテ此事ヲ調査シ或ハ卒先シテ意見ヲ定メテ天下ニ報告スルナドト云フヤウナコトハ中々出来得ラレナイ問題デアツテ、我人共ニ国家ノ将来ヲ図リ利便ヲ謀リ利害ヲ鑑ミシテ、ソレデ始メテ天下ノ輿論ト云フモノニナツテ来ル、輿論ト云フモノヲ起シテ行クコトガ出来得ラルヽモノダト云フコトヲ東京商業会議所ガ自ラサウ考ヘタ、ソレデ先ヅ此案ヲ提出致シマシテ、此事ハ宜イト先ヅ思フガ、宜イト先ヅ見ラレルガ、併シナガラ此事ハ重大ナコトデアルカラ諸君ト共ニ十分研究シテ、サウシテ天下ノ輿論トシテ之ヲ許スベキヤ否ヤト云フ帰着スル所ヲ知ラシメナケレバナラナイ、今ノ様ナ有様デ一向決定スル所ヲ知ラズシテ過ギ居リマスルト云フト、日本ト外国トノ其間ノ人民ノ感触ニ於テ相衝突ヲ来シマスルヤウナ事ガゴザリマスル、総テノ事ニ付テ決着ノナイ限リハ進ミ方ガゴザリマセヌカラ、此問題ヲ十分サウ云フヤウナコトニ於テ研究ヲ致シタイ、斯ウ云フ趣意ナンデゴザリマス、此案ヲ提出致シマシタノハ、ソレ故ニ東京商業会議所モ此案件ヲ研究スルト云フコトニナツタナラバ、委員ニ於キマシテ十分ナ調査ヲ致シ、兎モ角モ斯ウ云フ問題ハ広ク全国ニ渉ルコト、又随分歴史カラ言ヒマスレバ長イ間ノ条約問題トシマシテハ歴史ヲ以テ居リマスル案件デゴザイマスカラ、其利害ハ十分ニ研究ニ研究ヲ各地分ツテ研究ヲシテ、ソレデ又或ル場合ニ持出シテ其論究シ論究シテ行クト云フコトニナツタナラバ、大変利害ノアル所モ能ク分リ宜シカラウ、斯ウ云フ積リデ今ヤ東京商業会議所ガ決定ヲ致シタ意見ト云フコトハ宜ウ持出スト云フコトヲセヌノデゴザリマス、決定シタル意見トスルナラバ、固ヨリ本会議ニ提出致シテ意見ヲ闘ハシテ公衆ニ聞カシテ宜シイデゴザイマスケレドモ、サウ云フ訳ニモ致シマセヌ故ニ、協議会案トシテ提出致シタンデゴザリマス、幸ニ此案ヲ先ツ協議会ニ於テ一ツ論究ヲシヤウ、互ニ論究ヲシヤウト云フコトニ相成リマスレバ、私ハ進ンデ意見ヲ申述ベマス、又或ハ重大ナ問題デアルカラ十分ニ会議所ニ於テ意見ヲ調査ト云フモノヽ途ヲ立テヽソレデ他日大ニ議スル勘考ノ上論ジヤウ討究シヤウト云フコトデアルナラバ、今日私ハエライ嗚呼ケ間敷イ意見トシテ彼是喋舌必要モナイノデ、何方ラナリトモ御協議ノコトデゴザリマスカラ、御望ニ応シマシテ私ハ出サウト考ヒマス
 - 第22巻 p.549 -ページ画像 
○十番（名古屋、奥田正香君）　此協議案ノ御提出ニナリマシタ理由、只今六十二番カラ承ハリマシタ、只今御述ベニナリマスル如ク実ニ重要ナ問題デアリマス、尚此御趣意ノアル所又御説ヲ承ハリマスレバ非常ナ参考ニモナリマセウガ、此等ノコトハ既ニ御提出ニナリマシタコト此度始メテト申シナガラ、此外人ニ鉱山ノ採掘ヲ許シ若シクハ土地ヲ所有セシムルト云フコトハ一般種々之ハ講究シテオルコトデアリマスカラ、十分調査委員デモ設ケマシテ致シタイ、須ラク慎重ニ出サンナラヌト思ヒマス、固ヨリ一言此等ノコトハ敢テ差支ナイヤウニ見ヘマス、最早此条約改正ノ結果トシテ第一ニ外人ニ鉱山ノ採掘ヲ許シマスルモ土地ヲ所有スルノ権ヲ許スノモ固ヨリ是ハ当然ノ事ト存ジマス去リナガラ物ニハ順序緩急ノアルモノデアリマスルシ、未ダ此日本ノ改正条約ノ実施モ未ダ日モ浅サイコトデアリマスカラ、其模様ニヨリテハ或ハ許シテ宜シイコトデモ貸スニ数年ノ時日ヲ以テシ、猶予ヲ与ヘンナラヌヤウナコトモアリマセウシ、種々ナ其辺ハ矢張当会デ見ル所ト又各地方デ見マスル所ニ幾ラカ趣モ異ナリマセウカラ、十分ニ調査ハ、自分ノ会議所等デハ自分ノ地方ノ情況ニ於テハドウデアルカト云フ事ヲ十分ニ調ベマスルガ、極ク必要デアラウト思ヒマス、之ハ此場合ニ別段討議ヲ用ヰズシテ研究スベキモノトシテ各会議所ニ持帰ツテ調査スルコトニ致シタイト考ヘマス
○十二番（神戸、坪井平太郎君）　チヨツト六十二番ニ質問ヲ致シテ置クダケデアリマスガ、此理由書ヲ見テ見マスルト、外人ニ鉱山ノ開掘土地ノ所有権ヲ許スト云フコトハ外人ヲシテ安ンジテ内地ニ営業セシムルニ必要ナルノミナラズ、実ニ内外ノ資本ヲ共通シ国内ノ実業ヲ発達スルニ於テ欠クベカラザルコトヽ斯ウ唄ツテアル、此文句カラ推シテ行クト云フト、東京商業会議所ト云フモノハ既ニ意見ノ決定シテ居ルヤウニ見ヘマスデゴザイマスガ、唯今六十二番ノ御演説ニ依ツテ見ルト決定シタル意見デハナイト云フ御話シデアリマシタ、デ私ハ此理由書ト只今六十二番ノ御演説トニ大変分カラヌ所ガアル、又六十二番ノ只今ノ御話ニ依ルト、一会議所ガ幾ラ調査シタ所ガ其処等デ唯今言フ位ノコトハ大シタ効力ノナイコトダカラ輿論ヲ喚起シタイト言フ御考デアルカト思ヒマスガ、其要件タルヤ議論ハ既ニ業ニ確定シタル議論ガアツテ、輿論ヲ喚起スルニハ全国商業会議所ノ力ヲ藉ラナクテハナラヌト云フ御考デアルト思フ、私ハ此事ハ重大ナ事件デアリマスカラ此二箇条ニ付テ先ツ六十二番ノ決答ヲ得タ其上デ自分ノ意見ヲ申上ケタイ
○六十二番（東京、中野武営君）　文章ガ甚ダ行届カナイデナンデスガ要件タリト云フノハ此外国ニ対シテ条約改正ヲ結ンダ以上ハ是ガ要件ト思フ、併シ此事ハ果シテ利害ガドウデアルカ否ヤト云フコトヲ研究シタイト云フノデアル、ソレガ此要件ニ相違ナイト思フノデアリマスケレドモ、果シテ此通リ行フコトガ利害上ニ於テドウ云フコトデアルカ実ハ研究シテ見タイト云フ心持デアルノデス、若シ東京商業会議所ガ意見ヲ極メ十分ナ調査ヲシテソレデ決定シテ居ルナラバ此下ノ文句ハ要ラヌノデス、各会議所共ニ調査研究ト云フコトガ要ラヌノデス、東京商業会議所ガ各会議所ト共ニ此方針ヲ以テ此件ニ付テ要件トスル
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取調ヲシテ見ヤウ、我モ共ニ研究シヤウト云フ意ニ外ナラヌノデアリマス、当リ前ヲ申セバ対等ノ条約ヲ結ンダ所ノ国モサウナツテ居ルノニ、日本ダケガ条約改正ノ結果トシテ是ダケ除イテ居ルガ、是ガ要件ダガ之ヲ行ウノガ善イカ悪ルイカ、利ガアルカ害ガアルカ、即チ之ヲ研究シタイト云フ意味ナンデス、ソレカラ吾々ノ研究シタ結果ト云フモノハ輿論ガ助ケテ呉レナケレバナラヌノデアリマスカラ――此案件ニ拘ハラズ総テノ問題ハ輿論ノ賛成ヲ得ナケレバナラヌノデアリマスカラ、左様御承知ヲ願ヒマス
○十七番（阿波、根本民治君）　只今六十二番カラ是ニ対スル御話モアリマシタガ、十七番ノ如キハ即チ六十二番ノ先ヅ意見トシテ、サウシテ此協議案ガ提出ニナツタ理由ヲ尚説明ヲ要メラルヽナラバヤラウト云フ先程ノ御言葉デアツタ、十七番ハ此理由書デハ実ハ単純ニシテ尚ホ是ヨリ以外ノ各種ノ即チ六十二番トシテ御取調ニナツタモノモ段々アラウト思フ、詰リ今日ノ条約面ニ於テ外人ヲシテ内地ノ土地ノ所有権ヲ与ヘナイト云フコトハ又大ニ政府モ見ル所アツテ此条約ヲ締結セラレタニ相違ナイニモ拘ハラズ、他ノ外国ノ此対等条約ト云フ上カラサウシテ尚日本ガ進ンデ外人ニ土地所有セシムルガ商業上ノ発達上内外金融ヲ疏通セシムル上ニ利益アリト云フ意見ハ、ドウ云フ点カラ起ツテ玆ニ至ツタノデアルカ、甚ダ六十二番ニ対シテ御気ノ毒ナ訳デゴザイマスガ、既ニ其御意見アル以上ハ吾々ハ其御意見ヲ承ハツテソレヲ持チ帰ツテ我地方ノ商業会議所ニ於テ攷究シタイト云フ考デアリマス、幸ニドウゾ御意見ノ存スル所ヲ一応御演説アランコトヲ望ミマス
○十八番（京都、大沢善助君）　本案ニ付キマシテハ極ク問題ハ単純デ理由モ短イノデアリマスガ、チヨツト頭デ判断ヲスルニハムヅカシウゴザイマシテ、本員ノ如キハ六十二番ガ今日中演説シテ呉レテモ其演説ニ感服ハシナイト云フ積リデゴザイマス、ソレデ聴ク必要ハナイ、併シナガラ自分ガ今此処デ意見ヲ言フカト言ヘバ是ハ言ヒ兼ル、斯ウ云フ案ハジタイ今度ノ時ガ悪ルイ、此処ヘ来テカラ之ヲ見テ自分ノ考ヲ定メ、自分ノ頭デ判断ヲシテヒヨツト言ツテ善イトキモアリ悪ルイトキモアル、此問題ハ余程大事ナ問題ト考ヘテ居ル、ソレデ考ヘルト云フト、自分デ考ヘルノデナクシテ即チ会議所ガ考ヘルノデアリマスカラ、私ハ之ニ附イテ議論モヨウ言ヒマセヌガ、之ヲ考フル時間ヲ与ヘテ貰ヒタイ、ソレデ会議所ガ能ク考ヘル方ガヨカラウト思フ、ソレデサウ云ヘバドウナルカト云ヘバ、矢張此儘デ御預リヲシテ置クト云フコトニシタイ、其間ニ思案ヲスル、ソレハ即チ会議所ガ思案ヲスルト云フコトニ致シタイト思ヒマス
○三十六番（岡山、香川真一君）　三十六番ハ十八番ト同ジ事デ、東京ノ御意見ハドウアラウガ斯ウアラウガ聞クノ必要ハナカラウト思ヒマス、是ハ各商業会議所ニソレソレ意見ノアルコトデアリマスルシ、今東京ノ御意見ヲ聴クノ必要ハナカラウト思ヒマス、依ツテ十八番ヲ賛成致シマス
○十二番（神戸、坪野平太郎君）　十二番ハ此案ハ反対ナンデス、ケレドモ或ハ反対シテモ駄目カモ知レマセヌカラ私ハ大負ケニ負ケテ十八番ヲ賛成シテ置ク、斯ンナモノヲ持ツテ往クノハ馬鹿気テ居ル、斯ウ
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云ウコトハ巻キ込メテ仕マイタイト云フ考デアリマスカラドウゾ……
○四十八番（横浜、若尾幾造君）　四十八番ハ唯今諸君カラノ説ヲ承ハリマシタガ、兎ニ角是ハ各地方会議所ヘ持ツテ参ツテ評議ヲシナケレバナルマイ、大躰ニ於テ《（衍）》四十八番ヲ賛成致シマス
○十三番（神戸、横田孝史君）　最早多弁ヲ費ヤスノ必要ハナカラウト思フ、宜シク撤回ヲサレムコトヲ望ミマス
○四十九番（横浜、左右田金作君）　四十八番ガ今述ベマシタ如ク、此案ハ銘々ノ会議所ヘ持帰ツテ此理由ヲ以テソレソレ話モシ協議モシヤウト云フ考デアリマスカラドウカ……
○三番（知多、天埜伊左衛門君）　私ハ十七番ノ説ニ賛成デゴザイマスガ、種々ナ御意見モゴザイマスケレドモ兎モ角モ国家必要ノ之ガ問題デアルト思フタナラバ、東京商業会議所ノ意見ガ幸ヒニシテマダ決定ニハナラヌデモ承ルコトガ出来レバ尚更デアルシ、ソレガ出来ズバ中野サン一個ノ御意見デモ質問ガアラバ御答ヘガアリタイ、既ニ十七番モ一個ノ委員ノ資格デ御請求モアツテ私モ是ニ同意シタデ、此処ラノ所ハ腹臓ナク、所謂協議会デゴザイマスカラ皆サン御気ニ入ラヌ方ハ御聴キナサラヌダケデゴザイマスカラ、一応中野サンノ御意見ヲ私ハ伺ウヤウニ致シタイト思ヒマス
○十番（名古屋、奥田正香君）　私ハ十八番同様ニ持帰ツテ取調ベタイト云フノデス、尚ホ三番・十七番ハ中野サン一個ノ資格トシテデモ宜イカラ意見ヲ承ハリタイト云ハレマシタガ、私ハ暫ラク此地ニ居リマスカラ残リマシテ中野サンニ承ハラウト思ヒマス、ト云ツテイヤダカラ聞カヌヤウニ耳ヲ塞イテ居ルコトモ出来マセヌカラ、御聞キナサレタイ方ハ残ツテ中野サンノ意見ヲ御聞キナスツタラ宜カラウ、自分ハ之ヲ持帰ルコトニシタイト思ヒマス
○二十七番（熊本、下田耕造君）　此協議案ハ或ハ感ジヤウデハオカシナ感ジガ起ルカモ知レマセヌガ、二十七番ハ斯ウナツテ来ルダラウト思フ、併シ日本ノ状態日本ノ今日ニシテ是ヨリ外務大臣ガ足ヲ一本折ルカ二本折ルカ其辺ノ度合ハ分ラヌ、早晩之ハサウナルダラウト思ヒマスガ、世ノ中ニ大分反対論者ガアラウト思ヒマス、ソレデ段々持帰ツテ各地ノ会議所デ取調ベヤウト云フノハ、国家問題デアリマスカラ二年モ三年モ掛ルダラウト思ヒマス、併シ早晩斯ウナルダラウガ輿論ヲ喚ビ起サウト云ツテ色々事ヲ云フト足ノ一本モ折ラレルカモ知レマセヌケレドモ、輿論ヲ呼起シテヤルコトダラウト思ヒマスカラ、我会議所ヘ持帰ツテ斯ウ云フ事ニナルコトヲ希望スル、或ハ斯ンナ馬鹿ナコトヲ言フト彼奴ハ日本ノ人民デナイト云フ評ヲ受ケルカモ知レマセヌガ、腹ノ中ニアルダケヲ打明ケテ御話シ申セバ斯ノ如クデアリマス
○二十四番（函館、伊予田徳次郎君）　私ハ四十八番ト同ジコトデアリマシテ、大体ニ於テハ本案ヲ賛成スルモノデゴザイマス、去リナガラ事重大デアリマスカラ宜シク調査研究スルガ必要デアラウト思ヒマス依テ之ヲ持帰ツテ研究スルコトニ致シタイ
○三十七番（大坂、土居通夫君）　此協議案ハ多弁ヲ要シマセヌ、只今十八番ノ述ベタ如ク最モ重大ナ事柄デモゴザイマスルシ、唯一個ノ意見ヲ述ベルト云フコトハ甚ダ軽卒ナコトダラウト思ヒマス、携ヘ帰ツ
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テ各商業会議所ガ親シク研究シタイト思ヒマス
○番外二十五番（京都、岩村茂君）　本案ハ十年間先キニ延期シタイト思ヒマス、ソレハ何故カト云フニ、之ヲ開掘スルト云フコトハ土地所有権ヲ与ヘナイト云フ一ノコトガアルカラノコトデアツテ非常ナ大事ナコトデアル、之ヲムザムザ持チ帰ルト云フコトハ恰モ金ヲ遣ヒ過キタ……
○六十二番（東京、中野武営君）　其問題ナラバ無論ノコトデアリマスカラアトデ言ハウト思ヒマスガ、十年間止メルトカ止メヌトカ云フコトハ《（マダカ）》又極マランノデアリマス
　　　（「採決、採決」ノ声起ル）
○会長（東京、渋沢栄一君）　本問題ニ付イテノ御説ハ一体ニ是非得失ニ付イテノ御議論デナイ、玆デ撤回セイト云フ説モアツタヤウデス、（中野武営君「撤回ハ致シマセヌ」ト呼ブ）又撤回ニハ及バヌト云フ説モアツタヤウデス、多クハ研究スベキ問題ダト云フ、而シテ玆ニ討議ハセヌガ宜カラウト云フ、斯ウ云フ説ガ多イヤウデス、サウスルト本問題ハ研究スベキモノトシテ、各会議所デ十分御取調ベ御研究下サルト云フ問題トシテ……
○十二番（神戸、坪野平太郎君）　少シ違フヤウデアリマス、十八番ノ御趣意デハ持ツテ帰ルト云フコトモナイヤウデス、私ハサウ心得テ居リマス、考ヘタイ、持ツテ帰ルト云フコトヽ考ヘタイト云フコトハ違ウ、私ハソコラ辺ヲヤウヤウコサイニ言ツタノデ……
○十八番（京都、大沢善助君）　十八番ノ言ヒ様ガ悪ルイカ知レマセヌガ、考ヘタイ、考ヘタイト云フノハ会議所ガ考ヘタイノデス、持ツテ帰ツテ詰リ其会議所ガ此問題ニ付イテ考ヘタイト云フノデアリマス
○十二番（神戸、坪野平太郎君）　ソレナラバ私ノ考ダケヲ申シテ置キマスガ、少シ理由ハ述ベマセヌ、今日憚ツテ理由ハ述ベマセヌガ、私ハ此問題ヲ持ツテ帰ルコトハイヤダト云フコトヲ言明シテ置キマス
○六十二番（東京、中野武営君）　協議会ノコトデアリマスカラ強イテ懐ニ押シ入レルコトハ出来マセヌガ、併シナガラ是丈ケハ御断リヲ申シテ置キマス、協議会デコレダケノコトハ相談ニナツタト云フコトヲ会議所ノ議事録ニ書イテ置カナケレバナリマセヌカラ、是ダケハ神戸会議所ニモ嵌メルコトニ致シタイト思ヒマス
○十二番（神戸、坪野平太郎君）　私ダケハ此処ニ取次ノ役ニ来タノデハナカラウト思ヒマス、総テ論ズルダケノ頭ノアル人間ト信ジラレテ来タノデアリマスカラ、斯ウ云フモノヲ持ツテ帰ルコトハイヤダト云フコトハ云ヒ得ルト思ヒマス
○十番（名古屋、奥田正香君）　十番ハ取次ヲシテ来イト云フノデ来テ居リマスカラ、是ハ持ツテ帰リマス
○会長（東京、渋沢栄一君）　然ラバ之ヲ十分研究スルタメ此案ヲ各商業会議所ヘ持ツテ往クト云フノト、持ツテ往クニ及バヌト云フト二ツノ説ガアリマスガ
○十三番（神戸、横田孝史君）　撤回説ハドウデス
○会長（東京、渋沢栄一君）　サウスルト持ツテ帰ラヌト云フ説ニ御起立ヲ願ヒマス、然ラバ研究問題ニスルト云フ説ニ大分賛成ガアルヤウ
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デス、之ヲ持ツテ帰ルト云フコトニ御同意ノ御方ノ御起立ヲ請ヒマス
　　起立者　　　多数
○会長（東京、渋沢栄一君）　多数デゴザイマス、モウ一ツ議案ガゴザイマス、第三号協議案……
○十七番（阿波、根本民治君）　十七番ハ先キニ六十二番ノ御調ベニナツテ居ル意見ヲ聴キタイト云フ考ヘデアリマシタガ多数ハ之ヲ容レマセヌ、何カ其東京商業会議所デ是ニ対シテ御取調ノ書類デモアリマスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　別ニ東京商業会議所ガ各国ノ例ヲ取調ベタコトハゴザイマセヌ、意見トシテハ或ハ中野君若シクハ渋沢銘々ノ意見ハ持ツテ居リマスル、会議所ノ大体ノ意見ハアリマスガ、別ニ深ク取調ベヲシタト云フ細カナモノハゴザイマセヌ
○十七番（阿波、根本民治君）　マダ一片ノ書類ニナツテ居ラヌト云フノデスカ
○会長（東京、渋沢栄一君）　サウデス
　　　○本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十三年三月二日、同年六月五日、同三十四年九月九日ノ各条、並ニ本巻明治三十三年五月十七日、同三十四年一月二十三日ノ両条参照。