デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.9.1

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
4款 商業会議所聯合会
■綱文

第22巻 p.696-705(DK220060k) ページ画像

明治33年5月25日(1900年)

是日栄一、阿波・長崎・金沢・大阪・岡山・京都東京ノ各会議所代表者等ト共ニ、首相官邸ニ内閣総理大臣侯爵山県有朋・大蔵大臣伯爵松方正義・逓信大臣子爵芳川顕正・農商務大臣曾禰荒助ヲ訪ネ、第九回定期会ノ決議事項ニ関シ会談ス。


■資料

渋沢栄一 日記 明治三三年(DK220060k-0001)
第22巻 p.696 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治三三年      (渋沢子爵家所蔵)
五月二十五日 晴
午前九時半東京商業会議所ニ抵リ、委員一同ト共ニ、十時山県総理ノ官舎ヲ訪フテ、聯合会決議ノ要項ヲ陳述ス ○下略


明治三十三年五月開設 第九回商業会議所聯合会議事速記録 第二四一―二四二頁 刊(DK220060k-0002)
第22巻 p.696-697 ページ画像

明治三十三年五月開設
第九回商業会議所聯合会議事速記録  第二四一―二四二頁 刊
明治三十三年五月二十三日午前十時四十五分開議
  出席委員     三十一名 ○氏名略
 - 第22巻 p.697 -ページ画像 
○上略
○六十二番(東京、井上角五郎君) 午前ヨリ午後ニ引続キマシテ協議会ハ元ヨリ秘密会デアツテ速記モ何モナイ、付キマシテハ協議会ノ結果ヨリシテ生シタル案ヲ爰ニ提出シテ本会ニ掛ケタイト心得マス、本聯合会ニテ議了シタル事項ヲ政府当局者ニ建議シ、凡ソ目下経済ノ情態ニ処スル為メニ委員トシテ七会議所ヲ指定シ其会議所付ノ委員ヲシテ之ニ当ラシムル事、但シ指定ハ会長ニ一任ス、コレハ満場御異議ノナイ事ト心得マスガ、ドウカ此聯合会ノ議事ニ掛ケタイ……
○会長(東京、渋沢栄一君) 六十二番ノ御説ニ御異議ガゴザリマセヌケレバ其通リニ致シマス
○二十番(神戸、横田孝史君) 只今六十二番ノ御説ガ成立シマシタ事ハ私ハ満足ニ思ヒマス、付キマシテハ只ダ七会議所ト云フ事デアリマス故ニ恐ラクハ之ハ重立ツタル会議所デアラウト思フ、就中東京ノ如キハ尤モ必要ナルモノデアル、ソレ故ニ七会議所ヨリ一名ト云フ事ニナリマスレハ、東京ヨリ一名御選出ニナリマス外ニ会長渋沢君ハ御迷惑乍ラドウカ其中ヘ御加ハリアラン事ヲ希望イタシマス、恐ラク是ハ満場ニ於キマシテモ御同感ト考ヘマス
○会長(東京、渋沢栄一君) 今ノ指名ハ会長ニ一任スルト云フ事デアリマスカラ私ヨリ申上ケネバナリマセヌ、其七会議所ハ金沢・阿波・岡山・大阪・京都・長崎・東京、此七ケ所ヲ指名致シマス


明治三十三年五月開設 第九回商業会議所聯合会報告 第七四頁 刊(DK220060k-0003)
第22巻 p.697 ページ画像

明治三十三年五月開設
第九回商業会議所聯合会報告  第七四頁 刊
    ○有志委員ノ大臣訪問
明治三十三年五月二十三日本聯合会ニテ決議シタル事項ヲ政府当局者ニ建言シ及ヒ目下経済ノ状態ヲ陳情スル為メ、有志委員トシテ七会議所ヲ指定シ、其出席員ヲシテ之ニ当ラシムル事ニ決シ、阿波・長崎・金沢・大坂・岡山・京都・東京ノ七会議所ヲ之ニ指定シタルヲ以テ其出席員タル男爵渋沢栄一(東京)・川真田徳三郎(阿波)・松田源五郎(長崎)・水登勇太郎(金沢)・佐伯勢一郎(大坂)・三谷軌秀(大坂)・香川真一(岡山)・井上角五郎(東京)ノ八氏ハ、同月二十五日相携ヘテ山県総理大臣ノ官邸ヲ訪問シ、同大臣並ニ松方大蔵・芳川逓信・曾禰農商務ノ三大臣ニ会見シタリ(会見ノ筆記ヲ附録第二号ニ掲ク)


明治三十三年五月開設 第九回商業会議所聯合会報告 第七八―八九頁 刊(DK220060k-0004)
第22巻 p.697-703 ページ画像

明治三十三年五月開設
第九回商業会議所聯合会報告  第七八―八九頁 刊
附録第二号
  明治三十三年五月二十五日全国商業会議所聯合会有志委員ト四大臣トノ会見筆記ハ左ノ如シ
明治三十三年五月二十五日、全国商業会議所聯合会有志委員ハ、渋沢男外松田・香川・佐伯・三谷・水登・川真田・井上ノ七氏相率イテ内閣総理大臣ノ官邸ニ到リシニ、松方・曾禰・芳川三大臣ノ既ニ待受ケラルヽアリテ、午前十時会見ヲ始メ、渋沢男先ツ会見ヲ求メタル手続ヲ談シ、且曰ク「全国商業会議所聯合会ハ有志委員トシテ七会議所ノ出席委員ヲ指定シ、其聯合会ノ決議事項ヲ政府ニ建言シ及目下経済ノ状態ヲ陳情スルコトヽシタレハ、扨コソ今日参上シタル次第ニシテ其
 - 第22巻 p.698 -ページ画像 
決議事項ハ此覚書ニ大略ヲ記載シタリ」ト井上氏其覚書ヲ朗読ス(覚書ハ参照トシテ紙末ニ編綴ス)松方大蔵大臣曰ク「唯今朗読セラレタル国家経済ノ方針ニ関スル意見ハ大体ニ於テ時勢ニ適切ナルヲ認ムルニ吝ナラス、而シテ予ハ其各項目ニ就キ将ニ諸君ト談論スル所アラントス」トテ(第一)「資本ノ充実ヲ期スルコト」ノ(一)「興業銀行ノ設立ヲ迅速ニシ、工業資金ヲ疏通スルコト」ノ一項ヲ示シテ曰ク「予ハ金融ノ状態ヨリ考ヘテ、興業銀行ノ設立ハ当分見合スノ外ナシト思ヒシカ、諸君ニ斯様ナル希望アル以上ハ成程其設立ヲ迅速ニスルコソ必要ナラント思考スルニ付キ、予ハ前説ヲ翻シ速ニ委員会ヲ開カセ、務メテ諸君ノ希望ニ応スルヤウニスヘシ」ト、(二)「金庫ノ制ヲ改正シテ国庫金ノ運用ヲ敏活ニシ、其出納ヲ簡明ニスルコト」ノ一項ニ移リ、松方大臣曰ク「願ハクハ簡略ナル説明ヲ聞カン」三谷氏之ヲ説明ス、松方大臣曰ク「ソレナラハ重大ナル問題ナリ、諸君モ御承知ノ如ク中央銀行ノ制度ハ英吉利ヲ以テ最モ古シトス、英吉利ニテハ今三谷君カ述フルカ如キ金庫ノ制ヲ採リ居レトモ、其他其後ニ中央銀行ヲ設立シタル仏蘭西ト云ヒ、独逸ト云ヒ、白耳義ト云ヒ、確カ伊太利モ左様ナリシト思フ是等各国ハ皆日本今日ノ制度ト同一ニナリ居ルハ多年ノ経験利害ヲ研究シタル結果ニシテ、大蔵省内ニ於テモ既ニ此事ハ取調ヘ居レトモ何分重大ナル関係アルコトニテ今此処ニ於テ直チニ賛否ヲ言フコト能ハス、次ニ(三)「小切手ヲ納税ニ使用スルコト」ノ一項アリ、是ハ予モ予テ希望スル所ニシテ実ハ日本銀行カ左様ニナシ呉ルヽナラハ便利テモアリ甚タ仕合ナレトモ、政府ヨリ日本銀行ヘ命令スル訳ニハ参リカネルコトアリ、ソレハ若シ後日ニ至テ小切手ヲ持来リテ始末セヨト言ハレタラハ随分困ルコトナリ、故ニ政府カラ指図シテ小切手ヲ納税ニ使用セシムルニハ強徴ノ法律ヲ制定スルノ外ナク、国税其他納税ニハ既ニ左様ナル法律アル上ニ、又小切手使用ノ場合ニ対スル強徴ノ法律ヲ設クルモナカナカ煩雑故ニ、彼是ニテ今以テ決定シタル見込ナキモ此事ハ成ルヘク希望通リ致シタク思ヒ居レリ」ト、此時渋沢男「小切手ヲ納税ニ使用スルニ敢テ手続ナキニアラサル旨」ヲ陳ヘタリ(四)「抽籤割増ノ制ニ依テ貯蓄ヲ奨励シ、以テ民間零砕ノ資ヲ集ムルコト」ノ項ニ移リ、松方大臣曰ク「貯蓄ヲ奨励スルハ目下我国ニテハ急務中ノ急務ト謂フヘク、我国ノ如ク歴史ヨリ稽ヘ実際ニ徴シ一般人民ノ貯蓄心ニ欠乏セルハ実ニ各国ニ其例ナキ所ナリ」トテ、欧米各国ノ貯蓄制度各国人民ノ貯蓄金額ト人口ノ比例、及仏国ノ学校ニテ貯蓄ヲ奨励シ、独逸ノ教会ニテ之ヲ奨励スルノ例ナトヲ示シ、然ル後更ニ曰ク「予輩ノ今日ニ貯蓄奨励ノ必要ヲ説クモノ豈啻ニ勤倹主義ノミニ出テンヤ、斯ノ如クシテコソ人民一般ノ程度ヲ進ムヘク、又以テ資本ノ充実ヲ計ルヘク、予ハ諸君ノ此点ニ注目セラレタルヲ深ク喜フモノニシテ、大蔵省内ニ於テハ現ニ其取調ニ着手シ居レリ、其方法ハ追テ諸君ニ示スコトアルヘキモ、要スルニ抽籖割増ノ制ヲ採ランコトヲ期スルモノニシテ、全然諸君ノ意向ト同一ナリ」ト、(五)「土地所有権・鉱山採掘権ヲ外人ニ許可シ、及外人ヲシテ我公債・株式其他有価証券ヲ所有セシムル便ヲ与ヘ、以テ自然外資輸入ノ途ヲ開クコト」ノ項ニ移ラントスルトキ、山県総理大臣出席セラレ事有リテ遅レタル旨ヲ挨拶
 - 第22巻 p.699 -ページ画像 
シ、且曰ク「吾々ハ実業ノ発達ヲ希望シ其積極的ニ依ルノ外ナキコトヲ信スル」旨ヲ簡単ニ述ヘラレ、次テ談論ハ此項ニ及ヒ土地所有・鉱山採掘ノ権利ヲ外人ニ許可スルニ付キ、渋沢男・香川・井上・松田ノ四氏ヨリソレソレ熱心ニ其必要ヲ陳述シ、山県大臣・松方大臣ヨリモ種々談話スル所アリ、其中ニハ事ノ外交ニ亘リ秘密ニ属スルモノモ少カラス、故ニ一切之ヲ他ニ伝ヘサルコトヲ相互ニ約束シタリ、サレト此点ニ関スル山県大臣ノ演説ヲ簡略ニ一言セハ、曰ク「山県ハ山県一個ノ意見トシテハ土地所有権・鉱山採掘権ノ如キ最早大勢ノ趨ク所手段方法ノ如何ニヨリテハ之ヲ許可スルノ外ナキヲ信シテ疑ハス、但内閣ニ於テハ此事ニ対シ別ニ決シタル所ナシ云々」ト、次ニ外人ヲシテ我公債・株式其他有価証券ヲ所有セシムル便ヲ与フルニ付テハ芳川大臣ハ「鉄道株券ヲ外人カ所有スルコトハ現行法律ノ禁スル所ニアラサレハ、定款ニ於テ特別ノ規定ナキ以上ハ株式ヲ所有スルコト敢テ支障ナキ筈ナリ、尤モ従前鉄道会社ノ定款ヲ本省ニ提出スルニ当リ疑義ヲ生シタルコトアリシモ今日ハ全然左様ノコトナク、現ニ日本人ノミニ限ラサル定款ヲモ認可シタル例アリ云々」ト述ヘ、曾禰大臣ハ「北海道炭鉱鉄道ノ株券ノ如キモ今日ニテハ外人ノ所有スルニ於テ毫モ妨アルコトナシ」ト述ヘ、玆ニ於テ〔第一〕「資本ノ充実ヲ期スルコト」ノ各項ヲ終リ、〔第二〕「商工事業経営ノ適良ヲ期スルコト」ニ入リ、(一)「実業学校ヲ増設シ商工業者ノ智識ヲ啓発スルコト」是ニ就キ曾禰大臣曰ク「予ハ其必要ヲ認メ居レリ、文部省ヘモ照会シ成ルヘク其方針ヲ採ラントス云々」松方大臣曰ク「元来各県共ニ中学校ハナカナカ沢山アレト実業学校ハ極メテ少シ、予ノ考ニテハ一県一箇所ニテハ不足ナリ、沢山之ヲ開クノ外ナク、要スルニ理窟ヲ言フ者ノミヲ養成シテ実業進歩ノ源タル人ヲ養成スヘキ実業学校ノ発達セサルハ惜ムヘキコトナリ云々」(二)「商工業練習ノタメ有為ノ青年ヲ海外ニ派遣シ及ヒ視察ノタメ渡航スルモノヲ保護シ、特ニ其取締ヲ完全ニシ海外ノ事情ヲ熟知シ商工ノ事業ニ練達セシムルコト」此項ニ就テハ曾禰大臣ヨリ同意ヲ表シタレト、井上氏ハ「単ニ曾禰大臣カ同意セラルヽノミニテハ満足セス、過日ノ聯合大会ニテ此事ニ就キ討議セシトキ、議場ニテハ従来農商務省ノ留学生ヲ選定シ視察者ヲ保護スルヤ、其撰択ヲ誤リ不必要ナル役ニ立タヌ人物ヲ兎角政略的又ハ何カ縁故ニ因リテ海外ニ派遣シタルコトアリトテ大ニ之ヲ批難シ、付テハ後来ハ特ニ其取締ヲ完全ニシテ折角海外派遣ノ目的ヲ達セラレンコトヲ望ム」ト述ヘタルニ曾禰大臣ハ「此事ハ最モ深ク注意ヲ要スルコト勿論ナリ、然ルニ或商業会議所ニ是等人物ノ推薦ヲ委托シタルニ其推薦ニ係ル人物ノ甚タ当ヲ得サルコトアリタリ、相互充分ノ注意ヲ要スルコトヽ信ス」ト答ヘラレタリ、之ニ対シ井上氏曰ク「嘗テ農商務省ヨリ或商業会議所ニ人物ノ推薦ヲ委托シ置キナカラ裏面ニ其推薦スヘキ人ヲ指定シタルコトアリ、或商業会議所トハ他ニアラス名古屋商業会議所ナリ、云々」曾禰大臣曰ク「去ル事実アリタルコトヲ知ラス、大ニ注意スヘシ」ト、(三)「工業試験場ヲ拡張シ且ツ新ニ工産品摸範工場ヲ設立シ云々」ノ項ニ移ルヤ、井上氏曰ク「絹織物摸範工場ヲ設立セラレタシトノ希望ハ就中此項ニ於テ聯合会出席委員中熱心ニ希望シタル所ナリ、云々」曾
 - 第22巻 p.700 -ページ画像 
禰大臣曰ク「目下工業試験場ヲ拡張シ漸次工産品摸範工場ノ設立ニモ及フ積リナレト唯今ハ予算金額甚タ多カラス、サレト此事ハ漸次十分ナル規摸ニ至ルコトヲ期シ居レリ、而シテ唯今井上氏ノ言ハルヽカ如ク絹織物ノ摸範工場ヲ最モ先キニスルカ如キコトニハ、勿論予ト雖モ反対ヲ表スルノ限リニアラス」(四)「特別ノ事情アル輸入品ト同一物品ノ製造者ニ対シ免税其他適当ノ保護ヲ与フルコト」是ハ後来ニ於テ其方針ヲ採ルヘシト答ヘラレタリ、次ニ(五)「政府需用ノ物品ハ、力メテ国内産ニ取リ内国産奨励ノ精神ヲ助長スルコト」ノ項ニ就テモ是亦其方針ヲ採ルヘシト答ヘラレタリ、就中松方大臣ハ曰ク「此事ヲ十分ニスルニハ現在ノ会計法ヲ改正スルノ外ナキコトヲ信シ居レリ、併シ政府ノミナラス民間ニ於テモ此様ナ方針ヲ採ラルヽコトハ、目下ニ於テ此上モナキ大切ナルコトヽ信ス、云々」ト、〔第三〕「貿易機関ノ完備ヲ期スルコト」ノ(一)「神戸ニ東亜貿易ノ機関銀行ヲ設立シ云々」ノ項ニ就テ、松方大臣ハ曰ク「是ハ寧ロ予ヨリ言ヒ出サント欲スル位ニテ諸君ノ希望アル上ハ益々此事ニ付テノ意見ヲ確ムルニ足レリ、今日支那・朝鮮又ハ露領亜細亜ノ貿易ニ於テ銀行ノ必要ナルコトハ予モ深ク認ムル所ナリ云々」ト、(二)「通商貿易ノ発達ヲ図ルタメ必要ノ地ニ領事館ヲ置クコト」是亦其方針ヲ採ルヘシト答ヘラレタリ、(三)「重要物産同業組合ヲ督励補助シ其業務ヲ釐革シ其弊害ヲ矯正スルコト」ノ項ニ就キ、香川氏ハ日本花莚業聯合組合ヲ補助スルノ必要ヲ述ヘタルニ曾禰大臣ハ曰ク「単ニ生産ノ補助ハ不同意ナリ、若シ検査ノ補助ナラハ或ハ之ヲ為スノ必要アルヘク、場合ニ依リ特ニ然ルヘキ土地ニ羽二重検査所ヲ設立スルモ亦可ナリ云々」ト、松方大臣曰ク「羽二重検査所ノ如キハ最モ必要ナリ、日本花莚業聯合組合ノ補助ト云フモ、其検査ヲ完全ニスルタメトアレハ是モ決シテ捨置クヘキニアラス、要スルニ此重要物産同業組合督励補助云々ト云フノ項モ賛成スルノ外ナシ」ト、(四)「現行通商条約上実行シ得ル範囲内ニ於テ関税率ヲ改正シ内国産ノ産出ヲ保護スルコト」ノ項ニ移ルヤ、井上氏ハ「目下我国ノ税権ヲ回復シテ、海外貿易ノ出入物品ニ対シ我国カ必要ト認ムル所ノ税率ヲ課シ得ルノ程度ニマテ進ミ得ルコトハ実ニ一同ノ希望スル所ナリ、国運ノ進ミテ如此キ盛事ヲ見ルノ近キニ在ルヲ望ム」ト、松方大臣又之ヲ認ムル旨ヲ述ヘラレシカ、井上氏更ニ曰ク「併シ委員カ此国家経済ノ方針ヲ起草スルニ当リテハ、専ラ政府今日ノ有様ニ就テ為シ得ル範囲内ニ於テ起草シタルモノニシテ、此項ノ如キモ亦然リ」ト、松方大臣之ニ答ヘテ曰ク「是モ後来其方針ヲ採リテ進ムヘシ」ト、〔第四〕「運輸交通機関ノ完備ヲ期スルコト」ノ(一)「鉄道其他運輸交通ノ機関ヲ速成シ云々」ニ移ルヤ、芳川大臣曰ク「鉄道其他運輸交通ノ機関ヲ速成スルハ予ノ最モ希望シ且ツ主張スル所ナリト雖トモ、国庫財政ノ予カ思フカ如ク速成シ得サルヲ奈何セン、或ハ諸君ニハ不満足ナル所アルヘシト雖モ予ハ出来得ル限リニ於テ速成ヲ欲スルモノナリ、又其各部ノ統一ヲ保チ海陸ノ連絡ヲ図ルト云フカ如キハ実ニ今日交通機関ノ欠点ヲ明ニ掲ケタルモノニシテ、予ハ同感ト言フノ外ナク其職掌ノ許ス限リハ諸君ノ希望ニ副ハンコトヲ欲ス、但特別運賃ノ制ヲ立テ内国製品ノ運搬ニ便ヲ与フルコトヽハ如何ナル意味ナルヘキカ」ト、是
 - 第22巻 p.701 -ページ画像 
ニ於テ井上氏其大要ヲ説明シテ「例セハ同一物品ナレトモ外国品ハ通常ノ運賃ヲ果シ、内国品ハ之レカ割引ヲナスト云フカ如キ、其他此ノ様ノモノ少カラサルヘシ」ト言ヒシニ、芳川大臣曰ク「成ル程ソレモ出来得ルコトナレトモ私設鉄道会社ニ対シ左様セヨト云ハヽ、私設鉄道会社ハ必スヤ之ニ対シテ如何ナル保護ヲナシ呉ルヽカト云フニ相違ナク、要スルニ鉄道ヲ国有ニテモスルノ外ハ行ハレサルコトナリ」ト是ニ於テカ井上氏「実ハ但書ニ本項ノ目的ヲ達スルニハ必要ナル鉄道ヲ買収スルノ一項アリシモ削除シタルナリ」ト述ヘ、芳川大臣即チ首肯セリ、(二)「航海奨励法ノ保護ヲ受クル船舶ヲ使用スル運送業者ハ云云」ノ項ニ移ルヤ、芳川大臣曰ク「是ハ到底行ハレヌコトナリ、例ヘハ航路ノ補助ヲ受クルモノニハ先ツ収支ノ計算ヲナサシメ其不足ヲ補助スルコトヽナシ居レハ、運賃ヲ低廉ニナサシムル代リニハ補助ヲ増加スルノ外ナク、又航海奨励法ニ依リテ遠洋ヲ航海スルモノヽ如キモ矢張同一算法ナレハ、此一項タケハ寧ロ削除セラレテ然ラン」ト述ヘラレタリ、委員モ成程ト答フルモノアリ、是ニ於テ各項ニ就キ論談ヲ了リ末文ノ「於是乎本会ノ政府ニ希望シ特ニ日本銀行ニ注意ヲ請ハントスルハ、彼ノ金利ヲ高低スルニ当リテヤ成ルヘク経済ノ実況ニ鑑ミ勉メテ急激ノ変動ヲ避ケ云々」ニ及ヒ、松方大蔵大臣ハ「是ハ御尤モナル請求ナリ、是迄トテモ十分注意ハ致シタレトモ、尚一層注意スヘシ」ト答ヘ、三谷氏ハ此事ニ就キ就中紡績業者今日ノ状態ヲ説明シテ日本銀行本支店ノ十分注意セサリシ事例ヲ挙ケテ演説セシニ、松方大臣ハ「後来十分注意スヘシ」ト答ヘタリ
此時川真田氏ヨリ四国鉄道第一期線ニ繰上ノ件ヲ屡々陳述シ、井上氏又之ヲ敷衍セシニ、松方大臣曰ク「財政ノ許ス限ニ於テ同意スヘク、併シ唯今ニテハ其賛成ヲ言ヒ難シ」ト、芳川大臣曰ク「四国鉄道ヲ第一期線ニ繰上クルト云フコトハ強チ反対ニアラサレト、地勢ヨリ考ヘ必要ヨリ論スルニ四国鉄道ト同様ナル必要ノ線路ハ日本国中尚幾多アリテ皆第二期線ニナリ居レリ、而シテ議会ノ如キハ毎度其第二期線ヲ第一期線ニ繰上クルノ建議ヲナシタルノミナラス、既ニ第十四議会ニ於テ鉄道布設法改正案ヲ提出スルニ当リ各地方ヨリ銘々ニ必要ノ線路ヲ挿入センコトヲ要求シ、遂ニ幾十線路ノ繰上ヲ見ルニ至リタルニアラスヤ、且ツ諸君モ御承知ノ如ク第一期線ノ費用トシテ当初六千八百万円ノ公債ヲ募集スルコトヽナリ居リシモ、輓近物価労銀ノ騰貴シタルカ為メ更ニ弐千四百万円ノ増募ヲ為スコトヽナリタリ、而シテ第一期線ノ残工事ヲ完成センニハ尚弐・参千万円ノ増募ヲセネハナラヌコトト思ハルヽナリ、夫レニ第二期線中ノモノヲ二十モ三十モ繰上クルコトヽセハ非常ノ巨額ニ上リ到底現今ノ財政ノ堪フル所ニアラスト思ハルヽヲ以テ残念ナカラ四国鉄道ヲ第一期線ニ繰上ケノコトハ直チニ賛成スルノ限ニアラス、云々」尚ホ川真田氏其他ヨリ事情ヲ陳述シタルニ、全国商業会議所聯合会ニ於テ之ヲ可決シ此繰上ノ特ニ必要ヲ認メタル旨タケハ記臆シ置クヘシト松方・芳川両大臣ヨリ答ヘラレタリ是ニ於テカ井上氏ハ、更ニ進ンテ国家経済ノ方針ニ関スル意見ノ前文「政府事業就中軍備ノ当ニ積極的タルヘキヲ信シテ疑ハス、勿論軍備ト雖トモ尚軍艦買入ノ如キ、砲台建築ノ如キ、期限ヲ延長シテ一時多
 - 第22巻 p.702 -ページ画像 
額ノ支出ヲ抑ヘ難キニアラス、云々」ノ文章ヲ朗読シ且ツ曰ク、政費節減ノ事ハ諸公ニ於テ如何ニ思召サルヽヤ、元来吾々カ此意見ヲ起草スルノ趣意ハ専ラ経済ニ関スルモノヲ主トシテ政府ノ財政ニ立入ルヲ欲セス、若シ是ニ立入リテ吾々ノ説ヲ立ツルトキハ恐ラクハ政費節減ノ余地ナキニアラスト信シテ疑ハスト述ヘシニ、松方大臣曰ク「御尤モナリ、其方針ハ吾々ノ常ニ執ツテ暫時モ懐裏ニ忘レサル所以ナレト奈何セン十分節減スヘキ余地ヲ見出サヽルナリ、殊ニ諸君ニ注意スルコトアリ、請フ此書付ヲ見ラレヨ」トテ前期議会ニ衆議院・貴族院カ建議シタル補助、保護ヲ要求シタル建議、件名録及其金高ヲ記載シタルモノヲ示シ「斯様ニ前期議会ニ貴衆両院議員ノ国庫ノ支出ヲ増加スルコトヲ要求シタル金高ハ実ニ一億円以上ナリ、一々是ニ応シタラハトテモ財政ノ維持スヘキニアラス、貴衆両議員カ斯様ニ沢山政費ヲ支払ヘト要求シ井上君ノ如キモ亦其一人ナリ、今日ニ於テ吾々ニノミ政費節減ヲ希望セラルヽモ如何ハシク、併シ吾々ハトコ迄モ諸君ノ希望スル所ト同一ノ方針ナレハ願ハクハ社会一般カ此方針ニナリ、貴衆両院議員モ政費節減ニ注意シ呉ルヽヤウニ諸君ニ於テ努メラレンコトヲ望ム、云々」ト、此時松方大臣ハ又曰ク「諸君何故ニ気付カサルカト余ノ疑フ一事アリ」ト、井上氏曰ク「ソレハ何事カ願ハクハ聞カン」大臣曰ク物品取引所ノ制ヲ改ムルコト是ナリ、現在物品取引所ノ如何ニ弊害アルカハ諸君ノ必ス認ムル所ナルヘク、特ニ佐伯君・三谷君ハ大坂ノ人ナリ尤モ克ク之ヲ知ラント、此時佐伯氏ハ大臣ト二・三ノ問答ヲナシ、更ニ大臣ハ現取引所ノ或ハ物価ノ平準ヲ失ハシメ或ハ金融ノ円滑ヲ欠カシムルコトヲ詳述シ、物品取引ハ之ヲ現物取引ニ改ムルノ外ナキコトヲ説明セラレタリ
以上ノ如クニシテ聯合会決議事項ニ対スル相方ノ談論ハ了ハリ、是ニ於テカ目下経済ノ状態ヲ陳情スルコトヽナリ、先ツ佐伯氏ヨリ紡績事業界ノ困難ヲ述ヘ、香川氏之ヲ補ヒ、松方大臣モ其有様ノ如何ニモ困難ナルハ認メサルニアラサルコトヲ言ヒ、三谷氏ハ日本銀行ノ金利ヲ引上クルニ、往々ニシテ急劇ニシテ且ツ時機ヲ失シ中央ト地方銀行ノ相互ニ意思一致セスシテ、中央ノ方針ハ地方之ヲ誤解シ、日本銀行支店ノ役員ナトカ往々ニシテ、民間ニ恐慌ヲ惹起スカ如キ挙動アルヲ難シ、国家経済ノ方針ニ関スル意見ノ末文ニ付テ已ニ談論シタル処ヲ再演シタリ、松方大臣ハ更ニ懇ニ之ニ答ヘテ曰ク「紡績業者ナリトテ日本銀行カ特ニ貸出ヲ躊躇スル筈ナシ、紡績会社ニシテ健全ノモノナラハ決シテ貸出ヲ躊躇スルニ及ハス、然シ紡績会社ニシテ健全ナラス不完全ニシテ不安心ノモノナラハ貸出ハ出来サルハ当然ノコトニシテ、健全ノモノト不健全ノモノトノ区別ハ立テサルヘカラス、又人心ヲシテ不安危懼ノ念ヲ去ラシムルコトニハ十分務メサルヘカラサト雖、経済社会ハ進ムニ従ヒテ金融市場益々機敏トナリ、時ニ浮沈アルハ免レサル所ニシテ、此事ナキ様トノ保証ハ出来サルナリ」ト、渋沢男曰ク「目下経済ニ付応急ノ手段即チ「モルヒネ」注射剤的ノ方法ヲ説クモノアリ、過日来聯合会ヘ出席ノ委員中ニモ、軍事公債償還ノ論アリタリ」ト、松方大臣其語ノ未タ終ハラサルニ之ヲ受ケテ曰ク「モルヒネ」療法ハ非常ノ場合ニ決行スヘキモノ、余ハ如斯策ノ今日ニ必要アルヲ
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認メス、但シ軍事公債償還ハ適当ノ手段ナリ、財政サヘ之ヲ許サハ余何ソ躊躇セン、海陸軍ニ出帥準備アルヲ要スルカ如ク、国庫又之ニ同シク平生政府カ成ルヘク公債ヲ減少シ且ツ人民ニ余裕アラシムルハ髣髴カラ国庫万一ノ準備ナリ、余ハ何時テモ軍事公債ノ償還ニ同意ス、而シテ今日ハ実ニ之ヲナスノ余地ナク此外ニハ勿論之ト申ス「モルヒネ」的手段アルヲ認メサルナリ」ト、時既ニ午後二時ニ近カラントス仍テ井上氏ハ願ハクハ「松方大臣ノ今後経済ノ趨勢ニ関スル見込ヲ聞カン」ト述ヘシニ、松方大臣曰ク「余カ述フルコトハ往々ニシテ世間一般ヨリ速断セラレ、前途金融カ緩ムト言ヘハ忽チ其気ニナリ、金融カ締ルト言ヘハ又其気ニナリ、兎角経済社界ヲ動カシ易キカ故ニ十分ニ見込ハ言ヒ難キモ、要スルニ輸出入ノ不平均モ此上左マテノ事ナカルヘク、金融ノ有様モ左シタル変動ヲ見ルヘキニアラサレハ金利モ先ツ暫ラクハ落着クヘク、今日ノ季候ヨリ考ヘ且ツ願ハクハ左様アリタシト望ムハ生糸・米ナトノ能ク出来ルコトニテ、南阿ノ戦争モ先ツ落着ノ有様ナレハ此上ハ決シテ心配スル程ノ事ナカルヘシ、云々」ト此ニ於テ一同別ヲ叙シ退散シタリ



〔参考〕東京経済雑誌 第四一巻第一〇三三号・第一一六一―一一六二頁 明治三三年六月九日 ○国家経済の方針に対する当局大臣の意見(DK220060k-0005)
第22巻 p.703-705 ページ画像

東京経済雑誌  第四一巻第一〇三三号・第一一六一―一一六二頁 明治三三年六月九日
    ○国家経済の方針に対する当局大臣の意見
去月中東京に開きたる第九回商業会議所聯合会は、国家経済の方針に関する意見外二件を議決し、尚之を政府当局者に建言し、併せて経済界の現状を陳情する為め、有志委員として阿波・長崎・金沢・大阪・岡山・京都・東京の七会議所を指定し、其の出席員渋沢栄一(東京)・川真田徳三郎(阿波)・松田源五郎(長崎)・水登勇太郎(金沢)・佐伯勢一郎(大阪)・三谷軌秀(大阪)・香川真一(岡山)・井上角五郎(東京)の八氏は、去月二十五日山県首相の官邸に於て山県・松方・芳川・曾禰の四大臣に面接し、親しく意見を叩きたり、今や現内閣は動揺を始め早晩交迭を免かれざるものゝ如しと雖も、当局大臣の意見たるを以て左に其の要旨を摘記して読者の瀏覧に供すべし
興行銀行の設立を迅速にし、工業資金を疏通することに対し松方大臣曰く、余は金融の状態より考へて、該銀行の設立は当分見合すの外なしと思考せしが、諸君の希望せる以上は、前説を翻し速に委員会を開かしむべしと、金庫の制を改正して国庫金の運用を敏活にし、其の出納を簡明にすることに対し松方大臣曰く、何分重大なる関係あれば直ちに賛否を言ふこと能はずと、小切手を納税に使用することに対し松方大臣曰く、此事は成るべく諸君の希望通り致したく思ひ居れりと、抽籖割増の制に由て貯蓄を奨励し、以て民間零砕の資を集むることに対し松方大臣曰く、大蔵省に於ても抽籤割増の制を採らんことを期するものにして、全然諸君の意向と同一なりと、土地所有権・鉱山採掘権を外人に許可し、及び外人をして我公債・株式其他有価証券を所有せしむる便を与へ、以て自然外資輸入の途を開くことに対し山県大臣曰く、山県一個の意見としては最早大勢の趨く所、手段方法の如何に依りては之を許可するの外なきを信じて疑はず、但内閣に於ては別に決したる所なしと、芳川大臣曰く、鉄道株券を外人が所有するは現今
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法律の禁する所にあらず、随ひて支障なき筈なりと、曾禰大臣曰く、炭鉱株の如き今日にては外人が所有するに於て毫も妨あることなしと実業学校を増設し、商工業者の智識を啓発することに対し曾禰大臣曰く、余は其の必要を認め居れり、文部省へも照会し成るべく其の方針を採らんとすと、商工業練習の為め有為の青年を海外に派遣し、及び視察の為め渡航する者を保護し、特に其の取締を完全にし、海外の事情を熟知し、商工の事業に練達せしむることに対し、曾禰大臣は同意を表し、且保護視察者の撰択に就ては大に注意すべしと云へり、工業試験場を拡張し、且新に工産品摸範工場を設立し云々に対し曾禰大臣曰く、目下工業試験場を拡張し、漸次工産品摸範工場設立にも及ふ積なれども、予算金額多からざるを以て、漸次に充分なる規摸に至ることを期し居れりと、特別の事情ある輸入物品と同一物品の製造者に対し免税其の他適当の保護を与ふることに対しては、後来に於て其の方針を取るべしと云ひ、政府需用の物品は勉めて内国産に取り、内国産奨励の精神を助長することに対し、松方大臣曰く、成るべく其の方針を採るべしと雖、此の事を充分にするには現行会計法を改正するの外なしと、神戸に東亜貿易の機関を設立し、横浜正金銀行と相応し共に通商貿易の利便に供することに対し松方大臣曰く、今日支那・朝鮮又は露領亜細亜の貿易に於て銀行の必要なることは余も深く認むる所なりと、通商貿易の発達を図る為め、必要の地に領事館を置くことに対しては、将来其の方針を取るべしと答へ、重要物産同業組合を督励補助し、其の業務を釐革し其の弊害を矯正することに対し、曾禰大臣は曰く、単に生産の補助は不同意なり、若し撿査の補助ならば或は之を為すの必要あるべし、場合に依り特に然るべき土地に羽二重撿査所を設立するも亦可なりと、松方大臣は曰く、羽二重撿査所の如きは最も必要なり、要するに本項は賛成するの外なしと、現行通商条約上実行し得る範囲内に於て関税率を改正し、内国品の産出を保護することに対し、松方大臣曰く、後来其の方針を採りて進むべしと、鉄道其他運輸交通の機関を速成し、以て各部の統一を保ち、海陸の連絡を謀り、且特別運賃の制を立て、内国製品の運搬に便を与ふることに対し、芳川大臣曰く速成は余の最も希望し且主張する所なりと雖、国庫財政の余が思ふ如く速成を許ざるを奈何せん、然れども出来得る限に於て速成を欲するものなりと、航海奨励法の保護を受くる船舶を使用する運送業者は勉めて運賃を低廉にし、内国産の輸出を便利にすることに対し芳川大臣曰く、是は到底行はれぬことなり、例へば航路の補助を受くるものには先づ収支の計算をなさしめ、其不足を補助することゝなし居れば、運賃を低廉になさしむる代りには補助を増加するの外なく又航海奨励法に依りて遠洋を航海するものゝ如きも矢張同一算法なれば、此一項たけは寧ろ削除せられて然らんと、政府に希望し、特に日本銀行に注意を請はんとするは、彼の金利を高低するに方りて、成るべく経済界の実況に鑑み、勉めて急激の変運を避けられたしと云ふに及び、松方大臣曰く、是は御尤もなる請求なり、是までとても十分に注意したりと雖も、尚一層注意すべしと
我が国家経済は以上の方針にて進行し、果して完全なる結果を得べき
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や否や、余輩は我が国運の将来侵々として進歩すべきを疑はざるべし然れども其の経済策は誤謬なり、不良なりとして多くは之を否認せざるべからざるなり