デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
5款 商業会議所条例改正案諮問会
■綱文

第23巻 p.192-280(DK230032k) ページ画像

明治27年7月2日(1894年)

是日ヨリ六日迄、当諮問会農商務省ノ主催ニヨリ東京商業会議所ニ於テ開カル。栄一、益田克徳ト共ニ東京商業会議所ヲ代表シテ之ニ参会シ、討議ニ加ハル。


■資料

東京商業会議所月報 第二三号・第八頁 明治二七年七月 【○同月 ○六月二十二…】(DK230032k-0001)
第23巻 p.192 ページ画像

東京商業会議所月報  第二三号・第八頁 明治二七年七月
○同月 ○六月二十二日、来七月二日ヨリ農商務省ニ於テ開ク商業会議所条例改正諮問会ヘ会員二名出頭ヲ要スル儀ニ付キ東京府庁ヨリ通達書ヲ接受ス


東京商業会議所月報 第二三号・第七頁 明治二七年七月 【○同月 ○六月二十七日午後六時…】(DK230032k-0002)
第23巻 p.192 ページ画像

東京商業会議所月報  第二三号・第七頁 明治二七年七月
○同月 ○六月二十七日午後六時五十五分、本会議所事務所ニ於テ臨時会議ヲ開ク、当日出席会員ハ二十九人ニシテ左ノ件々ヲ審議シ、午后九時閉会ス
○中略
 (第二)
  商業会議所条例改正ノ諮問ニ応ズル為メ会員二名農商務省ヘ出頭ノ儀ニ付キ東京府ヨリ通達ノ件      (役員会議提出)
本件ハ多数ヲ以テ一名ハ正副会頭中ヨリ、一名ハ会員中ヨリ投票ヲ以テ選挙スルコトニ決ス、乃チ其選挙ノ結果左ノ如シ
                   渋沢栄一君
                   益田克徳君


商業会議所聯合会報告附議事速記録 商業会議所条例改正案諮問会議事録 第一―一四七頁 明治二七年七月(DK230032k-0003)
第23巻 p.192-272 ページ画像

商業会議所聯合会報告附議事速記録
商業会議所条例改正案諮問会議事録  第一―一四七頁 明治二七年七月
商業会議所条例改正案諮問会議事録
  明治二十七年七月二日ヨリ一週間ノ予定ヲ以テ全国各商業会議所会員、並ニ北海道庁・各商業会議所々在地府県官吏ヲ東京ニ招集シ、商業会議所条例改正諮問会ヲ東京商業会議所ニ開ク、会員左ノ如シ
      一番   福井商業会議所 副会頭 鷲田土三郎
      二番   桑名同     会員  羽柴茂三郎
      三番   北海道庁    技師  伊吹鎗造
      四番   栃木商業会議所 副会頭 石塚新吾
      五番   大津同     会頭  村田六之助
      六番   神戸同     副会頭 岡田元太郎
      七番   豊橋同     常議員 高橋小十郎
      八番   高知同     常議員 水田正夫
      九番   青森同     副会頭 柿崎忠兵衛
      十番   大阪同     会頭  浮田桂造
 - 第23巻 p.193 -ページ画像 
      十一番  愛知県     属   近藤繁
      十二番  浜松商業会議所 会員  内田政治
      十三番  京都同     会頭  浜岡光哲
      十四番  津商業会議所  副会頭 橋本清助
      十五番  鹿児島同    理事  奥常次郎
      十六番  岡山同     会員  狭間左兵衛
      十七番  大阪同     会員  法橋善作
      十八番  四日市同    副会頭 伊藤伝七
      十九番  宇都宮同    会頭  上野松次郎
      二十番  熊本同     会頭  岡崎唯雄
      二十一番 鹿児島県    属   岩山直方
      二十二番 滋賀県     参事官 渡辺長謙
      二十三番 富山県     属   掛飛秀
      二十四番 東京商業会議所常議委員 益田克徳
      二十五番 京都府     属   大沢敬之
      二十六番 静岡県     属   星田茂幹
      二十七番 福井県     属   斎藤十郎
      二十八番 堺商業会議所  会頭  藤本荘太郎
      二十九番 東京同     会頭  渋沢栄一
      三十番  岡山県     属   高木孝文
      三十一番 岐阜県     属   柿元一兵
      三十二番 岐阜商業会議所 常議員 永井清九郎
      三十三番 尾野道同    副会頭 石井聿三
      三十四番 博多同     常議員 是松右三郎
      三十五番 広島同     副会頭 岡野七右衛門
      三十六番 宮城県     属   武沢愛治郎
      三十七番 岡崎商業会議所 会員  鈴木岩吉
      三十八番 名古屋同    副会頭 鈴木惣兵衛
      三十九番 静岡同     副会頭 北村五郎兵衛
      四十番  赤間関同    副会頭 松尾寅三
      四十一番 金沢同     会頭  水登勇太郎
      四十二番 熊本県     属   宮田去疾
      四十三番 仙台商業会議所 副会頭 佐藤三之助

      会頭         商工局長  若宮正音
      委員         農商務属  江口駒之助
      同          同     美濃部俊吉
      同          同     石川八十井
      同          同     石渡秀実
      筆記者        農商務省傭 沢木友喜
七月二日開会式執行 出席総員三十七名
午前十時会員一同着席
榎本農商務大臣ハ金子次官・若宮商工局長・早川秘書官等ヲ随ヘテ入場、直チニ正面ノ会頭席ニ着キ揖礼セラル
 - 第23巻 p.194 -ページ画像 
会員一同起立敬礼ス
榎本農商務大臣ハ徐ロニ口ヲ開キ左ノ演説アリ
 此度商業会議所条例改正ノ件ニ付テ諮問シ、意見ヲ聴カンガ為メ諸君ヲ招集シマシタルニ、諸君ガ斯ノ如ク参着セラレ、玆ニ此諮問会ヲ開クコトニナリマシタノハ本大臣ガ誠ニ満足スル所デアリマス
 現行ノ条例ハ、明治二十三年ニ制定発布セラレタル法律デアリマシテ、年ヲ経ルコト未ダ久シカラズト雖モ、実際ノ経験上往々不完・不備ノ条項アルヲ免カレマセヌ、各商業会議所ヨリモ曩ニ既ニ改正ノ建議ヲ提出セラレマシタ程ニテ、本大臣ニ於テモ急速改正ヲ要スベキモノト認メマシタルガ故ニ、此度此諮問会ヲ開キタル次第デアリマス
 抑モ商業会議所ハ即チ商業・工業ノ発達ヲ計ルベキ必要有益ナル公設機関デアツテ、其適良ナルト否トハ商工業ノ消長ニ関スルコト甚ダ鮮カラズ、而シテ商業会議所条例ハ商業会議所ノ根基トナルベキ法律デアリマスルニ由リ、此条例ノ適否如何ハ実ニ商工業ノ盛衰ニ影響スルコト亦多大デアリマス、就テハ諸君ハ厚ク審案ヲ遂ゲ、十分ニ意見ヲ陳述シ、適良ノ改正ヲ加フルコトニ尽力アランコトヲ希望シマス
 序ニ申述ベテ置キマスガ、本大臣ハ目下国務極メテ多忙デアリマスルニ付テ、商工局長ヲシテ代リテ諮問会ノ事ヲ掌理イタサセマス
次ニ金子次官左ノ演説アリ
金子農商務次官 唯今農商務大臣ヨリ今般諸君ヲ御招集ニナリマシタコトハ御演説ニナリマシタカラ諸君御承知ノコトヽ思ヒマス、其点ニ付キマシテハ本官ハ別ニ陳述スル所ハゴザリマセヌ、併ナガラ幸ニ諸君ガ全国ノ商業会議所ヲ代表シテ今般農商務大臣ノ諮詢ニ答ヘル為メニ、此炎暑ノ際ニモ拘ハラズ御上京ニナリマシタノハ諸君ガ商工業ニ御熱心ノ致ス所デアリマシテ、農商務省ニ於テハ誠ニ欣喜ニ堪ヘザル所デゴザリマス、依ツテ諸君ハ何卒農商務大臣ノ今ノ御演説ノ趣旨ニ基ヅカレマシテ、此商業会議所条例ノ審査ニ御着手アランコトヲ希望致シマス
 序ニ此商業会議所条例ヲ御議シニナルニ付テ、聊カ本官ガ希望スル所ヲ簡単ニ述ベマシテ諸君ノ御参考ニ供シタウゴザリマス、農商務省ト商業会議所ノ関係ト云フモノハ、一ハ政府トシテ商工業ノ政策ヲ計画シ、一ハ民間ノ機関トシテ商工業ノ実地ヲ処理スルコトハ諸君ノ御承知ノ事デゴザリマス、玆ニ於テ農商務省ニテハ商工業ニ対シ、全国統一ノ政策ニ常ニ著目シテ日本全国成ルベク画一ニ、成ルベク統一スルト云フ方針ヲ以テ処理シナケレバナラヌコトヽ思フテ居リマス、併ナガラ如何セン三百年間ノ久シキ封建制度ノ余習トシテ、地方ノ商業・工業ニ一種ノ慣例ガゴザリマシテ中々之ヲ一朝ニ打破スルコトガ出来ナイ、故ニ今日ノ経済ノ原則ハ地方的ノ感情ガ与ツテ力アルト云フテ宜シイ、夫レデ斯ク一堂ノ中ニ諸君ノ御来集ヲ願ツテ地方ノ習慣及ビ商工業ノ実地ノ有様ヨリ研究シテ、農商務省ガ採ル所ノ全国統一ノ政策ニ付キ、諸君ノ数年ノ御経験ニ依ツテ意見ノ在ル所ヲ御陳述ニナツタナラバ大イニ政府ノ参考ニナラウト
 - 第23巻 p.195 -ページ画像 
思ヒマスカラシテ、地方ノ景況・地方ノ慣行ヲ御述ベニナツテ、農商務大臣ノ参考ニ御供シニナランコトヲ希望イタシマス
 御承知ノ通リ商業会議所ノ必要ナルコトハ今更私ガ述ベルマデモナク宇内各国一般ニ認メテ居ル所デアリマスガ、其中最モ有力ナルノハ英国ノ倫敦及ビ「りばぷーる」ノ二ケ所デゴザリマス、此二ケ所ノ商業会議所ト云フモノハ殆ンド全世界ヲ左右スルト云フテ宜イ、故ニ英国政府ニ於テ重要ナル商工業ノ法案ヲ立ツル時ニハ、其要領ハ先ヅ諮問スルト云フ迄ニ発達シテ居ル、成ルベク日本ノ商業会議所モ商工業ノ原則及ビ政策ニ就イテハ、将来ハ英吉利ノ商業会議所ノ如ク、諸君ガ最モ著実ニ、最モ熱心ニ、国家ノ経済ヲ商工業ニ就イテ議セラレ、倫敦及ビ「りばぷーる」ノ如キ実力アル商業会議所ヲ東洋ノ一隅ニ発達セシメラレンコトヲ希望イタシマス
 終リニ望ンデ諸君ニ希望イタシマスルコトハ、日本ノ経済ハ古来ヨリ地方的ノ経済デアリマシテ、三百諸侯ガ各々一国内ニ於テ一国ノ商工業ニ就イテ一経済ヲ立テヽ居リマシタ、幸ニシテ維新ノ大改革ニ依ツテ其墻壁ハ取レマシタガ、僅カニ二十有余年前ノコトデアリマスカラ、未ダ其感覚ハ商工業ニ於テハ容易ニ脱却シ能ハヌノデアリマス、今日デハ我日本国モ宇内経済ニ仲間入リ致シマシタ以上ハ地方的感情ノ存スベキモノハ存シマセウケレドモ、事情ノ相伴ハヌ所ハ之ヲ脱却シテ殆ンド宇内経済ノ一分子トナリ、日本ノ経済ヲ御掌理ニナランコトヲ希望イタシマス
 故ニ日本ノ経済ハ日本ノ経済ニアラズ、宇内ノ経済ト共ニ立タナケレバナラヌ、併ナガラマダ維新ノ大改革ヨリ今日迄ハ日モ浅イコトデアリマスカラ、ドウモ日本的ノ経済ヲ脱却スルコトガ出来ナイ、此点ニ就イテハ甚ダ遺憾ニ思フ所デアリマス、諸君ハ何卒此宇内経済ト云フ点ニ著目セラレテ商工業ノ経済ヲ議セラレンコトヲ希望イタシマス
 十二・三年前私ガ亜米利加ニ居リマシタ時ハ国家経済「なしよなるえこのみー」ト云フコトヲ頻リニ論ジテ居リマシタガ、一昨年欧米諸国ニ往キマシタ時ハ、既ニ「なしよなる・えこのみー」ト云フコトハ聴カナイ、何ヲ言ツテ居ルカト云フト「ゆにばーさる・えこのみー」(宇内経済)ト云フコトヲ言ツテ居ル、欧羅巴・亜米利加デハ既ニ国家経済ノ範囲ヲ超ヘテ宇内経済ト云フコトヲ以テ一国ノ経済ヲ謀ツテ居ル、故ニ今日経済社会デハ国ノ境界ナシ、又人種ノ異同ヲ問ハヌト云フコトニナツテ居リマス、海水ハ境界ナク周ネク全世界ヲ囲繞シテ居ル様ニ、此経済ノ原則ハ宇内ヲ一貫シテ居ル、故ニ其渦中ニ巻込マレテ居ル日本デアリマスカラ、宇内経済ト云フコトニ著目シテ往カナケレバ決シテ我邦ノ経済ハ発達セヌト信ジテ疑ヒマセヌ、亜米利加ニ金貨問題ガ起レバ忽チ我邦ノ経済ニ影響ヲ及ボシ、濠西太剌利亜ニ坑夫ノ同盟罷工ガアレバ我邦ノ石炭輸出ニ影響ヲ及ボシ、仏蘭西ト伊太利トノ衝突ガ起レバ直チニ日本ノ蚕糸ニ影響ヲ及ボスト云フコトハ、是レハ私ノ喋々ヲ要セズ諸君ハ御承知ノコトデゴザリマス、故ニ仰ギ願クバ諸君ハ国家経済ヨリ、モ一歩上ニ超脱シテ宇内経済ニ着目シ、我邦ノ商工業ノ発達ヲ計画セラレタ
 - 第23巻 p.196 -ページ画像 
ナラバ、諸君ノ力ニ依ツテ以テ商工業ノ発達ヲ謀ルコトガ出来ルト思ヒマス
 斯ノ如ク諸君ト一堂ノ中ニ相会スルコトヲ得マシタカラ、平素懐抱スル意見ノ一端ヲ陳述スルニ過ギマセヌ、何卒炎暑ノ候御障リナク満腔ノ意見ヲ御陳述ニナツテ、農商務大臣ノ諮問ニ御答ヘニナランコトヲ本官ハ切ニ望ミマス
次ニ商工局長左ノ演説アリ
若宮商工局長 此度ハ誠ニ炎暑ノ候ニ御苦労デゴザリマス、此点ニ就イテハ特ニ私ヨリ感謝ノ意ヲ表セザルヲ得マセヌ、又当節ハ概シテ各商事会社ノ事業年度上半期ノ決算時季ニ際シテ居リマシテ、諸君ノ如キ多クハ商事会社ノ代理権ヲ御執行ナサル責任ヲ帯ビ又ハ商事会社ヲ監督スベキ職務ヲ負フテ居ラルヽ方々ニ取リマシテハ、一年度中最モ御多忙ノ時節ナルニモ拘ハラズ、予定ノ期日ニ違ハズ此処ニ御出席ナサレマシタコトハ、全ク公利ヲ重ンジ、公職ヲ御尽シナサルヽ御精神ノ発動シタル結果ニ外ナラヌ次第デアリマシテ、本官ガ先ヅ感謝セザルヲ得ザル所デアリマス
 元来此時期ヲ撰ビマシタノハ、余程悪ルイ時期デアルト云フコトヲ御詫シテ置カナケレバナラヌ、此事ニ付テハ、私モ深ク注意致シタノデゴザリマスルガ、已ムヲ得ザル差支ガゴザリマシテ、余儀ナク此期日ヲ撰ブコトニ致シマシタカラ、其点ハ悪カラズ御承知ヲ請ヒマス
 此度ノ諮問会ハ予ネテ通牒致シテ置キマシタ通リ、商業会議所条例ノ改正ニ係ル御意見ヲ諮問スル為メニ開カレタ次第デアリマスカラ先ツ此条例改正ノ諮問案ヲ唯今委員ヲシテ諸君ノ所ニ配付致サセマス、然ルニ此改正案ノコトハ先年既ニ東京ヲ始メ他十一会議所カラ建議書ヲ提出セラレテ居リマスルニ付テハ、此建議ノ改正案ヲ取ツテ直チニ原案トシ、之ニ対スル本省ノ意見ヲ開陳シテ諸君ノ精査熟考ヲ請ヒ、及ヒ其所見ヲ諮詢シテモ宜イコトヽ考ヘマシタ、ナレドモ其後商業会議所モ追々増加シテ今日デハ全国ニ三十四ケ所モ設立セラレテ居リマス、付テハ先年ノ建議ヲ以テ直チニ全国各商業会議所ノ意見ナリト見做スコトガ出来難イ様ニナリマシタカラ、一ノ諮問案ヲ編成シマシテ、之ニ仍テ諸君ノ御意見ヲ聴クコトヽ致シマシタ、而シテ諸君ガ御参照ノ便ヲ計リマシテ、先年提出ニナリマシタ建議ノ改正案ヲ印刷サセテ置キマシタカラ、是レモ併セテ唯今配付致サセマス
 此諮問案ニ掲ゲテアリマセヌコトデモ、諸君ニ於テ改正ヲ要スルト御認メニナツタコトガアリマスレバ、其御意見モ聴ク積リデアリマスカラ、御腹蔵ナク御陳述アランコトヲ希望致シマス
 又此諮問案ニ付テ疑義ノアル御方ニハ、委員カラ説明ヲ致サセマスカラ御質問ナサレテ宜シウゴザリマス、且ツ又諮問案ニ掲ゲテ無イ事項ニ付テモ、本省ニ於テ或ハ斯ク改メタナラバ宜クハアルマイカナド思料スル事柄ヤ、又諮問案ニ掲ゲテアル事項ニ付テモ寧ロ斯ク改ムル方ガ或ハ宜シクハナイカナド疑ツテ居ル様ナ事モ委員カラ打明ケテ御話ヲ致シ、諸君ノ御意見ヲ諮問スルコトモアリマセウカラ
 - 第23巻 p.197 -ページ画像 
此儀モ御承知置キアランコトヲ希望イタシマス
 又此諮問会ハ余リ四角張ラズ、協議会・相談会ノ様ニシテ互ニ十分意見ヲ開陳スルコトニ致シタイト思ヒマス、併シ二人以上同時ニ意見ヲ述ベラルヽ時ハ、折角ノ御意見モ聴取ルコトガ出来マセヌカラ発言セラルヽ方ハ其番号ヲ御呼ビニナツテ、一応本席ノ承認ヲ得テ後、御発言ナサルコトニ定メテ置キマス、此事モ予メ御承知置ヲ希望イタシマス
是レニテ式全ク畢リ、引続キ若宮会頭ハ左ノ二件ヲ協議ス
会頭(若宮商工局長) 玆ニ開会時間ノ事ニ付キ各員ニ協議致シタシ、其ハ成ベク各員ノ便宜ヲ計リ会員多数ノ希望ニ随ツテ定ムル精神ナレバ、其意ニ基キ各々所見ヲ述ベラレタシ、又本日ハ是レヨリ引続キ議事ニ取掛ルベキカ、将タ本日ハ議案考案ノ為メ是レニテ退散シ明日ヨリ審議スルコトニスベキカ、併セテ各員ノ意見ヲ問フ
四番(石塚君) 唯今会頭ヨリ述ベラレタル如ク議案審査ノ為メ本日ハ是レニテ退散シ、明日ヨリ議事ヲ進行セラレンコトヲ望ム、又開会時間ハ先ヅ午前十二時限リトシ、同七・八時頃ヨリ開始スルコトニ定メタシ
十七番(法橋君)・十二番(内田君) 午前開会説ヲ賛成ス
会頭(若宮商工局長) 東京商業会議所参会員ニ於テモ差支ナキヤ
二十九番(渋沢君) 開会時間ヲ午前トスル点ニ付テハ差支ナキモ七時開始ト云フニ至テハ早キニ失スルコトヽ考フ
二十番(岡崎君) 午前八時ヨリ始メ、十二時ニ終ルコトニセバ適当ナラン
会頭(若宮商工局長) 各員ノ意向ヲ察スルニ、議事ハ明日ヨリ進行スルコトトシ、午前八時ヨリ開議シ十二時ニ退散スルコトヲ希望セラルヽモノノ如シ、果シテ異議無クバ左様致サン
   (満場異議ナキ旨ヲ述ブ)
会頭(若宮商工局長) 然ラバ明日ヨリ正八時ニ開議スルコトニ致スヘシ、序ニ各員ニ一言シ置ク、此回ノ諮問会ハ殊更秘密ヲ要スベキ程ノ件案ニハアラザレドモ、会議所条例ニ規定スル所モアレバ強チ公開スル訳ニモ行カザルベシ、然レドモ商業会議所会員並ニ書記長・書記ナドハ傍聴アルモ敢テ差支ナケレバ、東京其他各地ヨリ出京シタル方モアラバ随意傍聴アリタシ、本日ハ他ニ協議ヲ要スルコトモ無キニ依リ是レニテ散会セン
  午前十二時二十五分退散
○七月三日午前八時開議 出席総員四十三名
会頭(若宮商工局長) 是レヨリ開会スヘシ
十七番(法橋君) 議事ニ先チテ一ノ建議ヲ提出致シタシ、此回ノ諮問会タル、商業会議所ノ原動力トモ云フヘキ条例改正ノ審議ニシテ、之レガ適当ヲ得ルト得ザルトハ直接我商工業ノ消長ニ関係ヲ及ボスモノナレバ、成ルベク多数ノ意見ヲ集メ以テ適良ノ改正ヲ得ンコトヲ希望ス、付テハ平素其事務ニ与ル会員・特別会員及ヒ書記長等ノ意見ヲ聴キ以テ参考ニ資セント欲ス、其議決ニ加フルヤ否ヤハ敢ヘテ本員ガ強ユル所ニアラスト雖モ、差支ナキ限リハ其意見ヲ聴クコ
 - 第23巻 p.198 -ページ画像 
トニ賛成アランコトヲ望ム
六番(岡田君) 単ニ其意見ヲ聴クガ如キハ差支アリトモ思ハザレバ十七番ノ建議ヲ賛成ス
三十九番(北村君) 十七番ノ建議ハ本員ニ於テモ大ニ賛成スル所ナリ
会頭(若宮商工局長) 各員ニ於テモ別ニ異見ナクバ啻ニ差支ナキノミナラズ、成ルベク高論卓説ヲ聴クコトハ希望スル所ナレバ、十七番ノ建議ヲ採用スルコトニ致スベシ
   (満場異議ナキ旨ヲ述ブ)
会頭(若宮商工局長) 就テハ商業会議所会員並ニ書記長等議場ノ空席ニ着席アリテ可ナリ、偖是レヨリ本議ニ取掛ルベシ、本諮問案ハ各員ニ於テモ十分其必要ハ認メラルヽコトヽ推知スルニ依リ、一次会ハ之ヲ省略シ直チニ第二次会ニ移リ、第一条ヨリ順序ヲ追フテ審議スルコトトシテハ如何
 他ニ異見ナキモノト認ムルニ依リ、第一条ヨリ逐条審議ニ取掛ルベシ
十七番(法橋君) 議事ノ進行ニ付テハ聊カ異見ナキモ、初メニ原案ノ質問ヲ終リ、夫レヨリ討議ニ移ル様願ヒタシ
会頭(若宮商工局長) 十七番説ハ議事ノ順序上適当ノ事ト考フ、先ツ議案ノ朗読ヲ終リ而シテ後質疑アリタシ
   (石渡属朗読)
    商業会議所条例修正案諮問案
 第一条 此条例ニ商業者ト称スルハ左ニ掲クルモノヲ謂フ
  一 営業ノ目的ヲ以テ左ノ業務ヲ為ス者
   産物ノ交換・販売ヲ目的トスル取引
   製造工業及ヒ手職業ニ係ル作業及ヒ取引
   人及ヒ物ノ運送ニ係ル作業及ヒ取引
   航漕ニ係ル作業及ヒ取引
   建築ニ係ル作業及ヒ取引
   銀行営業ニ係ル作業及ヒ取引
   流通シ得ヘキ信用証券ノ発行及ヒ流通ニ係ル作業及ヒ取引
   商ノ為メニ為シ又ハ受クル倉庫寄託及ヒ其他ノ寄託ニ係ル作業及ヒ取引
   船舶ノ売買・質入・抵当・構造・修繕・艤装及ヒ乗組ニ係ル作業及ヒ取引
   取引所ノ取引
   保険ニ係ル作業及ヒ取引
   公ニ開キタル店舗・帳場若クハ其他ノ営業所ニ於テ又ハ公告ヲ為シテ営ム両替及ヒ利息若クハ其他ノ報酬ヲ受クル金銭貸付
   公ナル周旋所及ヒ代弁ノ営業
   受負作業ノ引受
  二 第一項ニ掲ゲタル業務ヲ為ス商事会社及ヒ取引所
  三 第一項ニ掲ゲタル業務ヲ為ス合名会社ノ社員、合資会社ノ業務担当社員・無限責任社員、株式会社ノ取締役及ヒ取引所ノ理事長・理事タル者
 - 第23巻 p.199 -ページ画像 
  四 第一項ニ掲ケタル業務ヲ為ス者ノ支店・出張店及第一項ニ掲ケタル業務ヲ為ス商事会社ノ支店・出張店ノ長タル者
十四番(橋本君) 条例第一条ニ「商業者ト称スル者ハ左ニ掲クルモノヲ謂フ」トアリ、商業会議所タルモノヽ認ムベキ商人トハ玆ニ列挙シアル四項目ノ外ニ出デザルモノト認メ居ラルヽヤ
委員(江口属) 第一条以外ニ出デザルモノト認ム、併シ条例第一条ハ時ノ必要ニ応ジテ変更スルコトモアラン、然レドモ単ニ商業者ト云フ文字ノ解釈ニ至ツテハ時々変更スルモノニアラズト信ズ
十四番(橋本君) 商法第五条中ノ新聞屋ナドハ列挙シアラザルハ如何
委員(江口属) 商法ニ於テハ玆ニ掲載シアル以外ノモノモ数多包含シ居ルモ、商業会議所条例ノ認ムル商人トハ此四項目ニ出デザル考ヘナリ
十四番(橋本君) 然ラバ此以外ニモ有ルト云フノ意ナルヤ
委員(江口属) 単ニ商人ト云フ文字ノ解釈ニ至テハ其範囲広キモ、本条例ニ於テ商業者ト認ムルモノハ左ノ各項ニ拠ルト云フニ在リ
二十二番(渡辺君) 第一条ニ商業ノ定義ヲ定メ置カバ其以外ノ商業者ハ無論此中ニ入ラザルベシ、彼ノ仲買・仲立人ノ如キハ此項目中ニ入リ居ラザルガ「公ナル周旋所及ヒ代弁ノ営業」ト云フニ含蓄シ居ルトノ趣旨ナルヤ
委員(江口属) 代弁人トアル中ニハ含ミ居ラザルナリ、大体「営業ノ目的ヲ以テ左ノ業務ヲ為ス者」トアルハ自己ノ為メニスルト他人ノ為メニスルトヲ問ハザル趣旨ニシテ、単ニ左ノ業務ヲスル者トノ意味ニアラザルナリ、然レドモ文章ノ上ニ於テ意味明瞭ヲ欠クト思惟セラルヽ事モアラバ適当ノ修正アランコトヲ望ム、委員ニ於テモ其感ナキニアラサルガ故追テ陳述スル積リナリ
二十九番(渋沢君) 第一項中ニ「航漕ニ係ル作業及ヒ取引」トアルハ運送ニ係ル作業・取引ニモアラズ、又船舶ノ艤装・乗組ニ係ル作業取引ニモアラザルモノヽ如シ、然ラバ捕鯨、或ハ臘虎猟ノ為メ遠洋ニ乗出ス如キモノヲ云フヤ
委員(江口属) 如何ニモ御問ノ如キ運送ノ目的ニモアラズ、其他ノ航海業ヲ云フモノナレバ、臘虎猟・捕鯨等ノ為メ航漕スルモノモ其一例ナリト信ス
会頭(若宮商工局長) 各員参考ノ為メ本案大体ノ趣旨ヲ陳述シ置カン抑モ本案ノ現行法ト異ナル主点ヲ挙グレバ、第一概括法ヲ列記法ニ改正スルコト、第二合名会社ノ社員、合資会社ノ業務担当社員・無限責任社員、株式会社ノ取締役及ヒ取引所ノ理事長・理事ノ如ク会社ノ代理権ヲ執行スヘキモノハ会員ノ資格アルヤ否ヤニ付キ現行法文ニテハ疑義無キヲ免カレザレバ、改正案ニ於テハ其ノ資格アルコトヲ明記シ以テ世ノ紛議ヲ断タント欲スルニ外ナラザルナリ、曩ニ東京外十一会議所ヨリ会社ノ代理権ヲ執行スル者ト雖モ、一己人トシテハ資格ヲ与ヘザル趣旨ノ建議アリシニモ拘ハラズ此諮問案ヲ提出シタル所以ハ、我邦現時商業社会ノ有様ヲ通観スルニ、商業会議所ノ会員トナリ一般経済ノ発達ヲ経理シ、其結果国利民福ヲ増進セシムルノ効果ヲ現ハスベキ働キヲ有スル者ハ前述ノ職ニ在ル者ニ其
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多数ヲ求メザルヘカラズ、若シ是等ノ人ノ資格ヲ剥グコトニセンカ或ハ商業会議所ノ元気ヲ殺クガ如キ結果ニ至ラザルカノ憂慮ナキ能ハズ、故ニ現時ノ状況ヨリ見ル時ハ従来本省ニ於テ取扱ヒ来リタル如クナルヲ以テ適当ト認ムルト共ニ之レガ紛議ヲ避ケンガ為メ第三項ニ明記シタルニ過ギザルナリ、既ニ昨日モ述ヘタル如ク今日ニ於テハ商業会議所モ其数三十四ケ所ノ多数トモナリ居レバ、曩ニ十一商業会議所ノ建議ハ直チニ以テ商業会議所一致ノ意見ト認ムルコトヲ得ザルノミナラズ、此回ハ府県ノ官吏モ参会シ居ラルヽ事ナレバ宜シク審議ノ上適良ノ改正アランコトヲ望ム、尚ホ第一項ニ列挙スル十四箇目ノ如キハ商法第四条中ノ各目ト同第五条中ヨリ三目ヲ繰上ゲ其儘列挙シタルマデニテ、此項目ハ必シモ斯クナラザルベカラズト確信シ居ルニアラズ、単ニ其標準ヲ商法ニ取リタルモノニテ、或ハ各員ノ参考ニ供スルノ便ヲ計リタルモノト言フモ不可ナキガ如シ、故ニ議事ノ順序トシテ第一ニ現行法ノ如ク「商法第四条ニ掲ゲタル商取引ノ各部類ニ属スル」云々ト全ク商法ニ依遵スルヲ以テ適当トナスカ、或ハ全ク特定法トシテ商法ト共ニ変更スルノ煩ヲ防グヲ以テ可ナリトナスカ、両点ニ就キ可否ヲ決シ、果シテ特定法トシテ列記スルコトトナラバ調査委員ヲ選定シ、各目ニ付十分調査セシメ、其報告ヲ得テ而シテ後本議ニ附スル事ニセバ、議事ノ進行上大ニ都合宜シキコトヽ考フ
二十九番(渋沢君) 本員モ調査委員選定ノ事ハ極メテ必要ナリト思惟ス、而シテ此会社重役等ニ特ニ法律上会員ノ資格ヲ与フルヤ否ヤト云フニ至テハ最モ重要ナル問題ニシテ、東京会議所ニ於テハ其間大ニ疑義ヲ抱キ曾テ聯合会ニ此問題ヲ提議シタルコトアリ、然ルニ其結果ハ十一会議所ヨリ建議シタル如キコトニナリタルモ、当時ハ尚ホ法律上ノ議論一定セザリシト云フモ不可ナキナリ、或法律家ハ資格アルモノト云ヒ、或者ハ資格ナキモノト云ヒ、疑義ノ中ニ彷徨シツヽアリシカ昨年行政裁判所ノ判決以来一層疑義ヲシテ強カラシムルニ至レリ、故ニ東京商業会議所ニ於テハ目下調査中ニシテ未ダ其結果ヲ得ザルモ、既ニ会社ニ一法人トシテ資格ヲ与ヘ其重役ヘモ特ニ資格ヲ与フル如キハ或ハ不穏当ニハアラザルカノ疑念ナキ能ハズ一言ニシテ之ヲ云ハヽ削除スルノ勝レルニ如カズト明言スルニ憚ラザルナリ、前ニ述ヘタル行政裁判所ノ判決ニ依レハ、被告ハ商人ニアラザレバ商業税ヲ賦課シタルハ不法ノ処分タルコトヲ明白シタリ果シテ然ラハ斯ク言フ渋沢ノ如キモ決シテ商人ト云フヲ得サルナリ然ルニ事実上ヨリ之ヲ云ハヽ仮令ヒ店舗ヲ張リテ直接物品ノ交換販売ヲナサストスルモ、多少ノ資本ハ悉ク之ヲ商業ニ投入シ、自身ハ会社・銀行等ノ頭取或ハ取締役ニ従事シ居レハ之ヲ商業者トスルニ憚カラザルガ如シト雖モ、其資格ハ会社ノ役員タルニ依テ始メテ生スルコトニナリ居レリ、其性質ヨリ論スレハ仮令其者自身ガ直接商業ヲ営マザルモ商業上ニ資本ヲ投入シ商業上ニ脳力ヲ費スモノナレバ疑モ無キ商人ナレドモ、其疑団今日ニ於テ氷解スルニ由ナキハ又是非モナキ次第ナリ、現ニ会社ニ選被選挙権アル以上ハ、仮令ヒ頭取・取締等ニ一己人トシテ資格ヲ与ヘザルモ、其会社ヲ代表シテ現
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ハレ出テ十分商業会議所ノ働キヲ助クルコトモ得ベケレバ、之ヲ削除スルモ決シテ骨子ヲ遺失シタリトノ遺憾ナカルヘシ、何ヲ苦ンデ法律上疑義アル会社役員ニ強イテ資格ヲ与フルノ必要アリトナスカ本員等ノ解セザル所ナリ、会頭否ナ本省ノ趣旨ニ於テモ諮問案ハ一歩モ譲ルコトヲ好マズト確執セラルヽニアラザルコトハ会頭ノ語気ニモ現ハレタレバ、各員ニ於テモ其趣旨ニ基キ各自ノ意見ヲ定メラレン事ヲ希望ス、第一項ノ各目ニ付テハ多少異見ヲ有シ居ルモ、先ニ会頭ヨリ示サレタル如ク大体ヲ定メテ然ル後調査委員ニ附托スルハ適当ノ事ト信スルニ依リ、調査委員ヲ定ムルコトヲ賛成シ置ク
会頭(若宮商工局長) 本条ハ商業会議所条例改正中主眼ノ一トモ数フベキ重要事件ナレバ、最モ慎重ニ慎重ヲ加ヘ各員ノ審議ヲ請ハント欲スル所也、而シテ海外諸国ノ商業会議所条例ヲ参照スルモ多クハ会社ノ役員ニ資格ヲ与ヘサルモノノ如シ、然レトモ退イテ我邦現時ノ状況ヲ観察スレバ、未ダ必ラスシモ実業ト知識相伴ヒ知識ト財産離レサル者ト断言スルヲ得ズ、現ニ東京商業会議所ニ就テ之ヲ見ルモ、五十名ノ会員中十三名ハ会社ノ重役タルヲ以テ資格ヲ得タル輩ニシテ、何レモ同会議所ニ於テ重キヲ置カレ且ツ功労アル人ト云フヲ得ヘシ、若シ五年乃至十年ノ星霜ヲ経タル将来ハイザ知ラズ、今日ノ状態ヨリ見ル時ハ是等ノ人ニ資格ヲ与ヘ置クハ至当ノ事ナリト信ズルノミナラズ、是等ノ人ノ知識・経験ヲ商業会議所ノ議定ニ資用スルニアラサレハ殆ンド会議所ノ効果ヲ収メ難キニハアラサルヤノ感ナキ能ハズ、農商務省ニ在テハ敢テ輿論ニ反対セントスルモノニアラズト雖モ、是等ノ人ニ向ツテ商業会議所ノ事務ヲ依托シ其効績ヲ挙ンコトヲ欲スルガ故ニ、海外諸国ニ其例無キニ拘ハラズ此諮問案ヲ提出シタモノナレバ、各員ニ於テモ深ク考案ヲ廻ラシ適良ノ改正アランコトヲ希望ス
十七番(法橋君) 唯今会頭ヨリ縷々陳述アリタル如ク、我邦現時ノ状況ヨリ見レバ会社重役等ニ資格ヲ与フルコトハ実際上必要ヲ感スル事モアラン、然レドモ諸会社・銀行等ノ業務ニ従事シタル人ト雖モ商業者ノ先達トナリ木鐸トナルガ如キ人物ハ又有数ナリト思惟ス、然ラハ一己人トシテ資格ナシトスルモ其人タル必ラズヤ或会社ヲ代表シ来テ十分其技能ヲ振フコトヲ得ベケレバ、二十九番説ノ如ク之ヲ削除スルモ敢テ差支ナシト信ズ、調査委員ヲ設クルノ点ニ至ツテハ大ニ賛成スル所ナリ
五番(村田君) 会社重役等ノ資格ノ事ニ付先刻渋沢君ヨリ行政裁判所ノ判決例ヲ引証サレタルモ、本員ハ該判決ハ単ニ営業税ヲ負担スヘキモノニアラズト云フニ在リテ、商法第四条ノ商人タルコトハ無論ナリト確信シ居レリ、本員等ハ本条例発布ノ当時本省ニ伺ヒ出タル事モアリシカ、矢張リ自信シ居タル如ク商人ト見テ差支ナキ指令ヲ得タレバ今日ニ至ル迄商人トシテ取扱来レリ、彼ノ聯合会ノ議ニ上リタル際ニモ本員ハ大ニ反対ヲ試ミシガ不幸ニモ少数ニテ失敗シ、衆議ニ随ヒ各会議所同様ノ建議ヲ提出シタルモ、元来是レ等ノ人ハ取除クベキモノニアラズト自信シ居ルナリ、併シ是等ノ事ニ議論ヲ戦ハスハ大ニ時間ヲ費スノ恐レアレバ、速カニ委員ヲ設ケテ調査ニ
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着手センコトヲ望ム
会頭(若宮商工局長) 本席ニ於テハ是等ノ人ニ資格ヲ与フルヤ否ヤニ付テハ調査委員ニ附托スルノ必要アリトモ考ヘズ、元来法律上ノ疑団ニアラズシテ利害ノ関係ニ属スル問題ナレバ、十分ニ攷究ノ上本会ニ於テ決定アランコトヲ望ム、玆ニ各員参考ノ為メ彼ノ行政裁判所判決ニ関スル沿革ノ大要ヲ述ベン、抑モ商業会議所条例ハ明治二十三年制定発布セラレタルモノナルガ、同第一条ニ「此条例ニ商業者ト称スルハ商法第四条ニ掲ゲタル商取引ノ各部類ニ属スル商人及作業人ヲ謂フ」トアリ、然ルニ合名会社ノ社員、合資会社ノ業務担当社員・無限責任社員、株式会社ノ取締役等ハ果シテ第一条中ニ含蓄シテ資格ヲ有スルモノナリヤ否ヤ、換言スレバ同条例ノ所謂商業者ナルヤ否ヤニ付直チニ法律上ノ疑問ヲ惹起セリ、此疑問ニ対シ農商務省ハ司法省ト解釈上ノ打合ヲナセシニ、司法省ノ解釈ニ於テモ当初農商務省ガ無論第一条ニ包含シ居ルモノト解釈シ居タルト同一ナリシヲ以テ、全国各商業会議所ニ向ツテ之ガ解釈ヲ訓示シタリ、然ルニ未ダ疑団全ク氷解セズ、東京商業会議所ニ於テハ第一銀行取締役須藤時一郎ヲ商業会議所会員選挙名簿ニ登録セシガ、其登録ハ不当ナリトノ解釈ヨリ東京地方裁判所ニ向ツテ選挙人名簿除名請求ノ訴訟ヲ提起シタリ、然ルニ同裁判ハ原告ノ要求ハ排斥セラレ被告東京商業会議所ノ勝訴ニ帰シ、原告ニ於テモ其裁判ニ服シタルヲ以テ一時世ノ疑団ヲ解クニ至レリ、其後東京市ニ於テハ、銀行・会社ノ役員ニシテ商業会議所ノ経費ヲ負担スベキ義務アリトセバ営業税モ亦賦課スルヲ得ヘキモノトナシ商業税ヲ賦課セシニ、銀行取締役タル荘田平五郎ハ其処置ヲ不当ナリトシ之ヲ行政裁判所ニ出訴シタリ、然ルニ其判決ハ前者ト反対ニシテ即チ原告ノ勝訟ニ帰セリ、蓋シ余ヲ以テ之ヲ評セシメバ、地方裁判所ノ判決モ公平ナル裁判ト云フヲ得ヘシ、何トナレバ商業会議所条例ハ商工業ノ発達・整斉ヲ目的トスル特定法律ナルヲ以テ、其趣旨ニ基キ原告ニ勝利ヲ与ヘタルハ毫モ間然スベキ所ナシ、翻テ行政裁判所ガ原告ニ勝利ヲ与ヘ、営業税ヲ負担スルノ義務無シト判決シタルモ亦適当ノ裁判ナリト信ス何トナレハ営業税規則ハ単ニ理財上ヨリ解釈スヘキモノナレハナリ農商務省ニ於テハ既ニ従来解釈シ来リタル一定見アリト雖モ、現行法文ニテハ未ダ全ク世ノ疑惑ヲ解クニ十分ナラズトシ、此間一点ノ紛議ヲ抱カザラシメンガ為メ、此回ノ改正案ヲ提議シタルニ過ギザルナリ、若シ全ク第三項ヲ削除スルニ至ラバ従来ノ取扱ニ変更ヲ来スノミナラズ、徒ニ有為ノ人物ヲシテ脱却スルノ不幸ニ陥ランコトヲ憂慮ス
十番(浮田君) 先刻以来渋沢君ナリ、又会頭ヨリ種々陳述アリタルガ現ニ我大阪商業会議所ノ如キモ商事会社ノ役員ニシテ会員ノ職ニ在ル者少ナシトセズ、而シテ知識・経験共ニ一般商業者ヨリ勝ル所アルモ決シテ劣ル所ナキハ敢ヘテ疑ハザル所ナレバ、原案ノ如ク其資格ヲ明記シ是レ等ノ人物ヲ網羅スルヲ以テ適当ナリト信ス
十三番(浜岡君) 本員ハ渋沢君ノ説ヲ賛成ス、何レ本案ハ帝国議会ノ議ニ上ルベキモ是レ等ノ法案ハ議会ニ於テ通過スベシトモ思ハレザ
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ルナリ、既ニ会社ハ法人トシテ選被選権ヲ有シ居レバ、会社ノ代表者モ当選シ、其役員モ亦当選シ、一会社中ヨリ同時ニ二人以上ノ会員ヲ出ス如キ事アラバ或ハ弊害ノ之ニ伴ウナキカヲ憂フ、果シテ其会社役員ニシテ抜群有為ノ人物アリトセバ必ラスヤ其会社ヲ代表シ来ルベケレバ、決シテ材物抜擢ノ途ヲ絶ツト云フニアラザルナリ
会頭(若宮商工局長) 仮令ヒ五千円乃至壱万円ノ小資本会社ト雖モ商法上三名以上ノ取締ヲ置カザルベカラズ、大会社ニ在リテハ十名以上モ取締役ヲ置クモノアラン、又取引所ノ理事ニシテ十名内外モ置ク所アレバ、強チ法人ニ資格アレバ夫レヲ以テ十分足レリトハ云フベカラズ、合資会社・株式会社ノ重役等ニシテ果シテ有為ノ人物アリトセバ、其区域ヲ広クシ置クハ現時ノ状況ニ於テ最モ必要ナリト思惟ス
委員(江口属) 第三項ヲ削除スル事トセバ第四項ハ随ツテ消滅スルハ自然ノ勢ナリ、運送或ハ金融ノ業務ニ係ル会社ニシテ重ニ支店・出張店ニテ盛ニ商業ヲナシ、地方ニ在テ有力ナル支店・出張店ノ長ヲモ資格ヲ失フ事ニ立至ルヘシ
四十二番(宮田君) 第三項ハ此回諮問案件中ノ骨髄トモ云フベキ箇条ナリト思考スル所ナルガ、果シテ法律案トシテ正当ナリヤ否ヤニ付テハ本員ハ敢テ断定ヲ下ス能ハズ、然レドモ目下我邦ノ状態ヨリ見ル時ハ是等ノ人物ガ商業上ノ知識・経験ニ富ムコトハ一般ノ認ムル所ナルヲ以テ、是等ノ人ニ依リ我邦商工業ノ発達ヲ企図セシムルハ最モ必要ナリト信ス、或ハ法律上ノ解釈ニ於テ行政裁判所ノ判決ニ矛盾スルナキカノ疑団ヲ懐カルヽ人モアラン、然レドモ本員ガ見ル所ヲ以テセバ決シテ差支ナキモノト考フ、何トナレバ彼ノ行政裁判所ノ判決タル、商業会議所会員ノ資格ニ付裁判ヲ与ヘタルニアラズシテ果シテ営業者トシテ営業税ヲ負担スベキモノナルヤ否ヤニ付判決ヲ下シタルヤ明ナリ、本員ハ我邦今日ノ状態ヨリ見レバ是等ノ人ニ資格ヲ与ヘ置クハ最モ必要ナリト信スルヲ以テ本諮問案ヲ賛成ス
三十八番(鈴木惣兵衛君) 第一条ニ「此条例ニ商業者ト称スルハ云々」トアルガ、是レハ本人即チ戸主ヲ指スノ精神ナルヤ、例ヘハ公債証書ヲ所持シ或ハ貸金ヲ以テ相応ノ暮シヲナシ、商業ニハ僅ニ十分ノ一乃至二十分ノ一ノ資本ヲ投シテ長男ニ監理セシメ、妻ナリ長男ノ名義ニテ営業セシメ、己レ其義務ヲ免カレント企ツル者ノ如キハ商業者ト認メラレザルヤ
委員(江口属) 例ヘハ長男ノ名義ニテ営業ヲ為シ居レバ、条例ノ認ムル営業者トハ其長男ヲ指スモノト云フノ外ナキナリ
三十八番(鈴木惣兵衛君) 現ニ商業会議所ノ為メニ力ヲ尽ス者ハ重ニ会社ノ役員ニ在リト云フガ如キ傾キアレバ、是等ノ人ニ対シテハ各己人ニ資格ヲ与ヘ置カサレバ我名古屋地方ノ如キハ大ニ迷惑スルコト少ナカラサルニ依リ、諮問案ヲ賛成ス
二十四番(益田君) 諮問案賛成説続出スルヲ以テ尚ホ本員ガ意見ヲ陳述シ置クベシ、諮問案ノ骨子トモ云フベキ第一条ノ改正ニ付テハ、何レノ商業会議所ヲ以テ第一関係ヲ有スルヤト云ハバ恐ラク東京商業会議所ヲ措テ他之ニ勝ルモノナケン、現ニ此事ニ関シテハ再度裁
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判ノ手数ヲ踏ミ経費賦課ノ点ニ付テモ大ニ苦心シタル所ナリ、彼ノ行政裁判所ノ判決以来ハ一層世ノ迷ヲ惹起シ、為メニ怠納者其数ヲ増加スルニ至レリ、故ニ東京商業会議所ニ於テハ目下資格調査ニ著手シ居ル位ナリ、退イテ今回農商務大臣諮問ノ要旨ヲ案スルニ、敢テ法律ニ拘泥セズ専ラ利害ノ点ニ重キヲ置ルヽモノナレバ、其趣旨ニ於テハ実ニ感佩ノ外ナク、我々ハ喜ンデ賛成ノ意ヲ表セザルベカラザルニ、左ハナクシテ却テ反対説ヲ主張スルハ又已ムナキノ事情アリテ然ルナリ、苟モ法律上商業会議所ヲ設立スル以上ハ明カニ商法上商人ト認メ、己レノ権利行為ヲ以テ商人タルノ働ヲ為ス者ニ限リ会員ノ資格ヲ与フルヲ以テ至当ノ事ナリト信ス、若シ便利上ヲノミ謀リ之ヲ設クルモノトセハ、使用人・支配人等ニモ資格ヲ与ヘ置ク方実際ニ当リ商業上ノ知識・経験アル者ヲ網羅スルヲ得ベシ、第四項ヲ新設セラレタルモ蓋シ此趣旨ニ外ナラザルベシ、然ルニ使用人・支配人等ニ資格ヲ与ヘ以テ商人ノ代表者タル商業会議所ヲ組織センコトハ、英国ノ如ク自由組織ニシテ会員ノ数二千ニ余ル倫敦商業会議所ノ如ク発達シタル暁ハイザ知ラズ、我邦現時ノ状況ニテハ到底行ハレ得ベキニアラズ、現ニ本条ニ最大ノ関係ヲ有スル東京商業会議所ニ就テ見ルモ、会社取締ノ資格ニ依テ当時会員タルノ諸氏ハ仮令一己人ノ資格ヲ失フトスルモ、会社ニシテ選被選権ヲ有スル以上ハ何レモ其会社ヲ代表シ来ルベキ人ナリト確信ス、斯ク論シ来ラバ、大会社続々起リ来ラバ数多ノ重役中唯一人ノ外選出セラレザルニアラズヤトノ反駁モアラン、其反駁ヤ一応尤ナルガ如クナレドモ、商人ニハ各々組合モアレハ其組合ヨリ一人宛選出スルトスルモ五十名ノ会員ニハ余ル程ノ人物ヲ得ベシ、又実際事実上ニ付テ引証セバ選挙ナルモノハ強チ正当ノ人物ヲ得ルモノト云フベカラズ、仮令ヒ如何ナル有為ノ人物タリトモ、如何ニ商業会議所ノ為メニ尽シタル者タリトスルモ、之ヲ自然ニ任セ置ク時ハ必勝覚束ナク、其当選ヲ望マバ種々夫レニ対スル運動ヲ為サヾルベカラズ、斯ノ如キ弊アルヲ以テ、悲哉今日ノ状態ヲ以テ見ル時ハ如何ニ法律ヲ以テ制定シ置クモ格別其効ヲ見ザルノ事実アルヲ如何セン、既ニ上来述ブル如ク全ク会社役員ノ故ヲ以テ資格ヲ有スル者最多数ヲ占ムル東京商業会議所ニシテ猶ホ此ノ如キ感アルヲ以テ見レバ、第三項ハ削除スルモ他ノ地方ニ於テ敢テ差支アリトモ思ハレザルナリ
会頭(若宮商工局長) 頻リニ原案維持説ヲ主張スルガ如キ恐レアルモ今一言陳述シ置クベシ、削除説主張論者ハ一己人トシテ資格ヲ与ヘ置カザルモ会社其モノニ選被選権アレバ事実上差支ナシト云フヲ以テ論拠トスルモノヽ如シ、果シテ然リトセバ本席ハ益々不安心ナリト断言スルニ憚ラザルナリ、何トナレバ論者ノ云フガ如クンバ現時東京商業会議所会員タル十三名ノ如キモ必ラズ或会社ヲ代表シテ選出シ得ラルベキ理ナルモ、果シテ会社ハ其人ヲ選ブヤ否ヤハ予メ断定スベキニアラス、故ニ会社ニ於テモ又一己人ニ於テモ其資格ヲ有スルモノト法律ニ於テ其範囲ヲ広クシ置カバ、実際ニ於テ大ニ便利ヲ得ル事ト思料ス、又世ノ開明ニ随テ小資本ハ大資本トナリ、小商業ハ大商業ト移リ、手職業ハ漸次大設備ノ器械工業ト変スルコトハ
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恰モ他ノ動物界縮少シテ人間界拡大ナルト同一理ナリ、現時東京商業会議所会員ニ商事会社ノ取締役多クシテ比較的地方ニ少ナキハ自ラ文化程度ノ階級ヲ示スノ一証タリ、熟々全国ノ形勢ヲ通観スルニ一己人ノ工業ハ漸次団結シテ大工業トナリ、小資本ハ変シテ大資本トナリ、商業会議所ノ会員モ亦漸次会社役員ノ数ヲ増シツヽアル今日ナレバ、資格ノ範囲ヲ縮少スルハ甚ダ憂慮ニ堪ヘザル所ナリ
番外(大坂商業会議所書記長浜田君) 此事ニ付テハ余ニ於テモ予ネテ憂慮シ居ル所ナルヲ以テ、聊カ卑見ヲ述ベテ各員ノ参考ニ供セント欲ス、既ニ各員モ述ベラルヽ如ク会社役員資格ノ事ニ付テハ東京ニ於テハ再度裁判出訴ノ事実ヲ現ハシ、大坂ノ如キモ将ニ其ノ事ヲ現出セントスルモノアリ、故ニ今日ニ於テハ此間一点ノ疑義ナキ様法文ヲ以テ定メ置カサレバ益々世ノ疑惑ヲ惹起シ徒ラニ手数ヲ要スルノ煩ヲ免カレザランコトヲ恐ル、玆ニ余ガ意見ヲ開陳セバ大体ニ付テハ諮問案ヲ可トス、何トナレバ商業会議所条例ハ一ノ特別法ナルヲ以テ、其性質ヨリ見ルモ之ヲ厳然タル法理ニ訴ヘンヨリ寧ロ便宜法トシテ便宜ニ重キヲ置クノ勝レルニ如カザルナリ、然リ之ヲ以テ便宜法ト認ムル以上ハ我邦現時ノ状況ヨリシテ法律ハ可及的範囲ヲ拡張シ所謂広義ノ解釈ニ依ルヲ以テ其宜シキヲ得ルモノト信ス、或論者ハ曰ク既ニ一己商人トシテ資格ヲ有セバ別ニ会社役員トシテ資格ヲ与フルノ要ナシト、夫レ或ハ然ラン、然レドモ今日商業会議所会員ノ上ヨリ見ルモ、其多数ハ経済思想ノ発達ト共ニ起リタル諸会社ノ社長或ハ取締役等ノ資格ニ依リ選出セラレタルモノニシテ、平素取ル所ノ業体ニ依リ当選シタル者少ナシ、故ニ我々ニ於テハ是等ノ人々ヲ法律上網羅シ置クハ現時ノ状況ニ於テ最モ必要ヲ感スルノミナラス、現ニ従来慣行シ来リタルコトヲ法文中ニ明記シ置クハ頗ル穏当ノ事ナリト思料ス、若シ本項ニシテ従来ノ習慣ヲ破リ新ニ資格ヲ設クルモノナリトセハ或ハ多少不穏当ノ嫌ナキ能ハスト雖モ、之ヲ従来ノ経歴ニ徴スルモ我邦今日ノ事体ニ適合シ既ニ一習慣ヲ形造リ居レバ唯々其習慣ヲ保持スルト云フニ外ナラス、又第三項ヲ削除スルモ第二項ノアルアレハ十分ナリトノ説モアリシガ、東京地方ニ在テハ果シテ予期スル所ノ人物ヲ選出シ得ルヤ否ヤハ知ラサレトモ、全国ヲ通シテ之ヲ見ル時ハ必ラスヤ好結果ヲ得ヘシトモ思ハレサレバ、成ルベク其区域ヲ広クシ置ク方便宜ナリトス、総テ会社代理権ノ如キハ多クハ社長ニ帰スルノ傾アリ、而シテ社長ハ種々ノ事情ニ依リ時々更迭スル等ノ事モアレハ愈々以テ区域ヲ狭クスルノ感ナキ能ハズ、又従来ノ如ク会社役員等ニ資格ヲ備ヘ置ク事ハ会議所財政ノ上ヨリ見ルモ得策ナラン、或ハ経費ノ負担ヲ免レンガ為メ種種ノ計策ヲ廻ラス者アリトノ事モ聴キシカ、会社役員ノ如キハ仮令己レ其レ自身ハ直接商業ニ関係ナシトスルモ苟モ経済社会ニ立チ会社重役ノ地位ニ居ラハ相当ノ経費ヲ負担スルハ国家ニ対スル責務ノ一部ト云フモ不可ナケン、若シ其者ニシテ会議所会員タル事ハ敢テ望マサル所ナレバ経費ノ負担ハ迷惑ナリト考フルニ至ツテハ、国家ニ対シ不親切モ亦極レリト云フベシ、眼ヲ転シテ一方国家経済ニ著目セハ仮令直接商業ヲ執ラズトスルモ会社ノ如キハ経済上有力ナル
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一分子ナレバ決シテ責任ヲ免ルヘキニアラズ、否ナ自ラ奮ツテ大ニ尽力スル所アルヘキナリ、畢竟本条例ノ如キハ便宜法ナルヲ以テ広義ノ解釈ニ依リ諮問案ノ如ク其区域ヲ広クシ置ク方至当ナリト信ス
十三番(浜岡君) 本員ハ第三項ハ削除セサレバ条例トシテ甚タ不都合ナリト確信ス、彼ノ仏蘭西ノ条例中ニモ一会社ニシテ二名以上ノ会員ハ選出スル能ハサルノ規定アリシト記臆ス、殊ニ我邦ノ商業会議所ハ仲裁ノ労ヲ執ル等ノ事モアレバ旁以テ一会社ヨリ数名ノ会員ヲ出スガ如キハ或ハ弊害ノ起ルナキカヲ憂フ、故ニ唯ニ便宜ノミヲ是レ計リ区域ヲ広濶ニスルハ不可ナリト信ズ
会頭(若宮商工局長) 本席ニ於テモ仲裁ノ点ニ付テハ考案ヲ及ボサヾリシニアラズ、然レドモ此事ニ付テハ忌避ノ手続モアリ、又次第ニヨリテハ農商務大臣ハ監督権ヲ行フヲ得レハ其点ニ於テハ敢テ差支ナシト信ス、又一会社ヨリ数人選出サルヽノ弊アリト述ヘラレシモ実際ニ於テハ決シテ左ル結果現ハレサラン、縦稀ニ之アリトスルモ其弊害ヲ認ムル以上ハ是亦農商務大臣ハ監督権ヲ以テ如何様ニモ之ヲ除クノ途アレバ、憂フベキコトニアラズト思惟ス
二番(羽柴君) 最早ヤ議論モ略々終結シタリト思料スルガ、本員ハ議論上ヨリ寧ロ之ヲ実際ニ照シ今日及ヒ将来ヲ達観シ第三項ハ最モ必要ナル条項ナリトノ考ヲ抱ケリ、如何ニモ理論上ヨリ之ヲ見レバ或ハ法律文トシテ体裁ヲ失スルト云フガ如キコトモアラン、又一会社ヨリ数名ノ会員ヲ出ス等ノ嫌ヒモ免カレザラン、然レドモ今日商業会議所ニ於テ実際其業務ニ与リ其働ノ上ニ於テ有力ナリト云フ例ヨリ見レバ、是等ノ人々与テ力アルコトハ争フヘカラザル事実ナレバ将来ニ於テモ其然ルヲ推測スルコトヲ得ベシ、熟々今日商業者間ノ実際ヲ通観スルニ、多クハ社会公共事務ニ関スルコトヲ嫌フ如キ有様ナレバ、商業会議所ノ発達ヲ謀ルガ為メ有為ノ人物ヲ得ンコトヲ望マバ、多少ノ不都合ハ之ヲ忍ブトスルモ第三項ヲ削除スルコトハ実際上不便ナリト考フ
四番(石塚君) 本員モ大体ニ於テハ原案ヲ賛成ス、併シ削除説ニ絶対的反対ト云フニモアラサルナリ、畢竟第三項ニ付テハ各地方ノ状況ニ依リ勢ヒ希望ヲ異ニスルモノアラン、東京・大坂ノ如キ地方ニ在テハ其必要ヲ感セサルヤ知ラザレトモ、地方ニ依テハ全ク是等ノ人ニ依テ会議所ノ働ヲ為ス如キ感ナキニシモアラザレバ、実際ノ必要上ヨリ原案ヲ賛成ス
十七番(法橋君) 本員ハ飽迄本項ノ不必要ヲ主張ス、既ニ渋沢・益田君等ヨリ其理由ハ縷々陳述セラレタレハ、最早ヤ本員ハ喋々スルノ必要ナシト思ヒ居タルモ、賛成説続出スルノ有様ナレバ、一言弁シ置カザルベカラズ、本員等ノ考フル所ニ依レバ、仮令ヒ第三項ヲ削除スルモ会社ノ社長或ハ監査役等ハ必ラスヤ一己人トシテ資格ヲ有スル者タルヲ信ス、若シ稀レニ之レ無シトスルモ其ハ百中ノ一ニモ当ラザル事ナレバ、実際ニ於テ少シモ差支ナカルベシ、之ヲ経費賦課ノ点ヨリ云ハヽ一人タリトモ負担者ノ多カランコトヲ希望スベケレドモ、其他ニ於テハ更ニ必要ヲ感セザルノミナラズ、却テ一会社ヨリ数人ノ会員ヲ出スカ如キ出来事アルヲ免カレザルナリ、又法律
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ヲ以テ検束シ置カサレバ往々負担ヲ免カレンカ為メ種々ノ計策ヲ廻ラスモノアリトノ説モ出テシカ、本員ハ決シテ怪シムニ足ラザルコトヽ思惟ス、何トナレハ会社役員ニシテ果シテ純然タル商業者ナリセバ幾分ノ負担ハ固ヨリ甘スル所ナラン、然レトモ元ト是レ商業者ニアラズ、或場合ニ於テハ会社設立ノ際単ニ其名義ヲ借ルガ為メニ強テ或資産家ヲ誘出シ、之ニ社長其他ノ重役ヲ嘱托スルガ如キモノ少ナシトセス、是等ノ人ニ向ツテ法律上負担ノ義務ヲ負ハシメントスルハ抑モ賦課ノ法ヲ誤ルモノト云フベシ、又論者ハ有為ノ人物ヲ求ムルカ為メニ頻リニ第三項ヲ存留スルニ勉ムルモノヽ如クナレドモ、人物如何ト云フニ至ツテハ強チ之ヲ会社ノ重役ニ求メサルモ、一己人トシテ資格ヲ有スル者ニ求メテ可ナリ、今一私人ノ商業家ニ付テ之ヲ云フモ、彼ノ住友・岩崎等ノ配下ニモ社会ニ信用アリ勢力アリテ商業会議所会員トシ決シテ恥ヂザル者ナキニアラス、其例ヲ挙クレハ際限アラザルヘキモ、現ニ住友喜左衛門ノ配下ニシテ県会議員トナリ、又衆議院議員ノ候補者中ニ数ヘラルヽ如キ人物モアレバ、第三項ハ経費ノ負担ヲ軽減スル点ニ於テハ有用ナルベキモ他ニ其必要ヲ見サルナリ、而シテ経費賦課ノ点ニ至テハ苟クモ商業上ニ関係アル者ヨリ之ヲ徴収スルハ至当ノ事ニシテ、少シク宇内経済ニ着眼セバ多少ノ負担ハ敢テ厭フ所ニアラザルベシ、若シ商業上ニ資本ヲ投入セバ忽チ選挙資格ヲ得テ、為メニ多少ノ費用ヲ負担シ会員タルノ義務ヲ負ハザルベカラズト云フカ如キ者アラバ、仮令其者ニ資格ヲ与ヘ強イテ会員タラシムルモ、敢テ其効用ヲ見ザルノミナラズ、却テ害ヲ招クノ恐レナキヲ保セザルナリ、故ニ本員ノ如キハ第三項ハ無論削除スルヲ以テ適当ナリト確信ス
十五番(奥君) 本員ハ原案ノ維持説ヲ抱持スルモノナリ、東京・大坂ノ如キハ本項ヲ削除スルモ聊カ差支ヲ感スルコト無カルベシ、然レドモ地方ニ在テハ会社・銀行等ノ業務ニ従事スル如キ者何レモ率先シテ会議所ノ事務ヲ経理シ居ルノ現況ナリ、若シ削除論者ノ如ク第二項ヲ以テ十分足レリトセバ地方ニ在テハ為メニ差支ヲ生スルノ不幸ニ陥ランコトヲ恐ル、我鹿児島市ノ如キハ是等ノ人ハ最モ会議所ノ為メニ尽力シ会議所ニ於テ最モ有力ナル者ナレバ、願クハ諮問案ノ成立センコトヲ望ム
会頭(若宮商工局長) 暫時休憩スベシ
  午前十時十五分休憩
  同十時三十分開議
会頭(若宮商工局長) 是レヨリ議事ヲ始ムヘシ
二十九番(渋沢君) 先刻来賛否共ニ種々理由ヲ陳述セラレ、将ニ論旨モ尽キナントスル会場ノ有様ナレバ採決前今一言前説ヲ補足シ置タシ、本員ハ諮問案反対論者ノ一人ナルガ、賛成論者ハ勿論農商務省ニ於テモ、本案ハ法理上決シテ差支ナキモノニシテ東京商業会議所ノ如ク之ニ懸念ヲ抱クハ未ダ真義ヲ解セザルモノナリト確信セラレ居ルニハアラサルモノヽ如シ、又会頭ハ司法裁判所ノ判決ト行政裁判所ノ判決ハ何レモ至当ナリト述ベラレタルモ東京商業会議所ニ於テハ大ニ疑義ヲ抱キ居レリ、行政裁判所ノ判決ハ確カニ之ヲ記臆セ
 - 第23巻 p.208 -ページ画像 
サレドモ商業者ニアラザルヲ以テ営業税ヲ負担スルノ義務ナシト云フニ在リシト覚ユ、果シテ然ラバ法理上疑義ナシト云フヘカラズ、而シテ原案維持論者ノ論拠トスル所ハ今日ノ状況ヨリシテ実際ノ便宜如何ト云フニ在ルモノヽ如シ、又或論者ノ如キハ既ニ一ノ習慣トモ云フヘキモノナリト述ヘラレシガ、其ハ論者ノ誤解ニシテ是等ハ決シテ習慣ト云フヘキモノニアラズト確信ス、斯ノ如ク法理上疑義アルモノヲ条例中ニ規定シ置カバ焉ンゾ知ラン他日之ヲ悔ルノ時アランコトヲ、先刻会頭ハ世ノ進化スルニ随ヒ他ノ動物界漸次縮少シテ人間界増長スルガ如ク、小資本ハ変ジテ大資本トナリ小工業ハ大工業ニ遷リ来ルヘシト述ベラレシガ、人類学上ヨリ社会学上ヨリ若クハ経済学上ヨリ云フモ当ニ然ルベキヲ知ル、左レバ単ニ目下ノ必要ニノミニ眩惑シ疑義百端ナル法文ヲ規定スル如キハ、将釆ニ於テ果シテ如何ナル結果ニ至ルヘキカ其点ニ就テモ幾分ノ考慮ヲ仰ガザルベカラズ、斯ク論シ来ラバ其実位置転倒ニシテ、会頭ノ論旨ハ会員席ナル我々ノ口頭ニ発シ、我々ハ実際ニ当リ便宜ヲ得バ夫レヲ以テ満足スベキ筈ナルモ、世ノ進歩ニ伴フ社会万般ノ事物ニ付テ将来ヲ推測セハ、斯ル疑義アル法文ヲ規定スル如キハ将来ニ弊害ヲ貽スノ起因タランコト憂苦ニ堪ヘサルナリ、抑モ現行法文ヲ改正スルノ要ハ疑義ヲ分明ナラシメントスルニ在リ、然ルニ暴ヲ以テ暴ニ易ユル如キハ本員等ノ遺憾トスル所ナリ、唯々便宜ヲノミ主トスルト云ハヽ第三項ヲ存留シ置ク方可ナラン、然レドモ我々反対説ノ如クスルモ会社役員中ニ其人ヲ得ルコト決シテ難シトセザルナリ、又他日ノ弊害ヲ予想セバ、選挙ノ如キモ頗ル弊害ノ行ハルヽモノナレバ、一会社ニシテ十名或ハ二十名ノ人ヲ選出スルノ場合ナシトモ限ラレズ、其場合ニ於テハ農商務大臣ハ監督権ヲ以テ十分其弊ヲ防グノ途アルガ如ク述ベラレタルモ、既ニ其救済ヲ要スルモノアルハ則チ弊害ヲ存スルニ由ルコトヲ知ルヘシ、苟モ今日ニシテ後日ノ弊害ヲ懸念スルアラバ予メ之ヲ避クルノ方法ヲ取ラサルベカラズ、我々ハ独リ是レノミナラズ必ラズヤ種々ノ弊害之ニ随伴シ来ルベキヲ憂フルモノナレバ、原案賛成者ニ於テモ後日臍ヲ噛ムノ悔ナキ様十分考案ノ上賛否ヲ決セラレンコトヲ望ム、議事ノ結果トシテ多数ノ決スル所トナラバ致シ方ナキモ、本員等ハ他日ノ為メニ深ク憂慮ニ堪ヘサルモノアリ、此事ニ付テハ此処ニ参会スル渋沢・益田ノ両名ガ持説ニアラズ、東京商業会議所全体ノ意見ニシテ、多数ノ政治家・法律家モ亦唱フル所ナリ、既ニ本省ニ於テモ是等ノ点ニ付テハ十分調査セラレタル事ナランガ、本員等ニ於テモ責ヲ尽シタルノ点ニ付テハ敢テ恥ズル所ナキヲ信ス
五番(村田君) 唯今第三項ニ関シ二十九番ヨリ縷々陳弁アリタルモ、本員等ハ会社ノ役員ハ商人タル事ハ確信シ居ル所ナリ、既ニ商人タル以上ハ商業会議所ノ会員トナリ我商工業ノ為メニ尽ス所アルハ当然ノ義務ト云フベシ、二十九番ハ行政裁判所ノ判決ハ商人ニアラサルヲ以テ営業税ヲ負担スルノ義務ナシト云フガ如ク述ベラレタルモ営業税ノ賦課法ハ各地方ニ依テ其方法ヲ異ニシ、商法上ノ商人ニシテ営業税ヲ負担セザルモノハ独リ会社取締役等ニ限ラズ他ニ其類例
 - 第23巻 p.209 -ページ画像 
少ナシトセズ、故ニ営業税ノ負担ヲ免カルヽ者ハ直チニ以テ商法上ノ商人ニアラズトノ断案ヲ下スヘキモノニアラザルナリ、既ニ現行法ハ会社役員ハ商人タリトノ解釈ヲ以テ取扱ヒ来リ居レバ、之ヲ法文中ニ明記スル迄ニテ其趣旨ニ於テハ聊カ異ナル所ナシ、若シ之ヲ削除スル事ニセバ却テ現行法ヨリ其区域ヲ狭クスルノ結果ニ陥ルヲ以テ、寧ロ改正ヲ加ヘザルノ勝レルニ如カサルナリ、故ニ改正ヲ加フル以上ハ諮問案ノ如ク明記シ置ク方可ナリト信ス
会頭(若宮商工局長) 各員参考ノ為メ委員ヲシテ玆ニ行政裁判所判決書ヲ朗読致タサスベシ
   (石渡属朗読)
    裁判宣告書
        東京市小石川区林町五十番地士族
        明治生命保険会社取締東京倉庫会社取締東京海上保険株式会社取締第百十九国立銀行取締
      原告              荘田平五郎
      訴訟代理人
        東京市日本橋区西河岸町十七番地平民弁護士
                      岡山謙吉
        東京市京橋区南鍋町二丁目五番地士族弁護士
                      岡村輝彦
        東京市小石川区長
      被告              佐藤正興
        東京市京橋区南鍋町一丁目四番地士族弁護士
      訴訟代理人           岸小三郎
 右原告荘田平五郎ヨリ被告小石川区長佐藤正興ニ対スル不当商業税徴収処分取消ノ訴審理ヲ遂ル処、原告訴求ノ要旨ハ、被告小石川区長ハ曩ニ明治二十五年度後半期分商業税トシテ金弐円三拾三銭三厘ノ徴収令ヲ下シ、続テ明治二十六年一月六日之ヲ徴収シタリ、当時原告ハ其徴収ニ不審ナリシヲ以テ予メ徴収ノ旨趣ヲ尋ネタルニ、右ハ明治二十五年東京府訓令第二十三号ニ依リ徴収スルモノニシテ明治生命保険会社外二社・一国立銀行ノ取締役ヲナスカ故商業ヲ営ムモノナリト云フニアリ、然レドモ原告ハ株式会社及国立銀行ノ取締役ヲナスモ決シテ商業ヲ営ムモノトス可ラサルヲ信シタルカ故ニ、先ツ差向キ徴金ト共ニ商業税上納ニ付上申書ナルモノヲ差出シ置キ相当期間内ニ東京府知事ニ訴願ヲ提起セシカ、知事ハ明治二十六年八月三十一日ヲ以テ右訴願ニ対シ裁決シ、被告ノ処分ヲ違法ニ非ストナシタルモ原告ハ之ニ服従スルヲ得ス、今其理由ヲ述ヘンニ、凡ソ商業株式会社ノ取締役ニ該当スル重役員ナルモノハ、或ハ政府ノ特命ニヨリ或ハ株主ノ選定ニヨリテ就役スル等其推選ノ方法一定ニ出テスト雖モ、会社タル法人ノ営業ニ連帯管預スルニ過キス、決シテ自己ノ営業ヲ行フモノニアラサル事ハ其規ヲ一ニシ、之ヲ自己ノ損益ノ上ニ常業トシテ商取引ヲ為スモノト云フヲ得ス、況ンヤ本邦商法ノ存スル在テ其第九条ニ商人ノ定義ヲ明ラカニシ其第四条ニ商取引ノ意義ヲ明示セラレ、法律上之レ以外ノ商人アル可キナク而シ
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テ株式会社ノ役員ヲ自身ノ資格トシテ商人トス可キ適例毫モ之ナキニ於テヲヤ、又訓令第二十三号ノ商業税ナルモノハ明治十三年第十六号布告地方税規則第一条第二項ノ営業税トシテ賦課セラルヽアレトモ、凡ソ営業税ナルモノハ其賦課セラルヽモノ自己ノ損益ノ上ニ取引ヲナシ、之ヲ以テ活計ヲ営ムモノニ課スヘキ税目ニシテ、彼ノ法人タル商事会社ノ営業ニ管預スル有給又ハ無給ノ重役或ハ商家ノ後見人又ハ総理代人等自己ノ活計ノ為メニアラサルモノニ課シ得可キ税目ニアラズ、若シ強テ附会シテ之レ等ニ営業税ヲ課セン乎其取引本主タル会社又ハ被後見人モ同一取引ニ就キ営業税ヲ課セラレ実ニ二重税ヲ課スルノ不都合ヲ生スルニ至ラン、殊ニ最モ不思議ナルハ徴収ノ標準ハ営業所タル会社ノ建物ニアラズ自己居住ノ建物敷地ノ地位ニノミ拠ラレタリ、之レ決シテ営業税ヲ課スルノ標準トス可キモノニアラズ、要スルニ第一原告ハ商人ニアラズ、第二原告ハ営業者ニアラズ、第三賦課ノ標準タル土地建物ハ営業所ニアラザルヲ以テ之ヲ見レハ、本案小石川区長ノ行政処分ハ明治十三年第十六号布告地方税々則第一条第二項ノ規定ニ違背シ、従ツテ明治十五年第三号布告ノ制限ヲ僭越セルモノナルガ故ニ之レカ取消ヲ請求スルト云フニ在リ
 被告答弁ノ要旨ハ、商事会社ノ重役ナルモノハ一定ノ条件ヲ具シタル株主ニシテ始メニ就任シ自己及会社株主ノ利益ノ為メ商業ヲ為スモノニシテ、而カモ商業ヲ以テ職業トスルモノ即チ原告カ引用スル商法第九条所謂常業トシテ商取引ヲ為スモノナリ、元来商人ナルモノハ強チ商法カ特定スル所ノモノニ限ラサルモノナレトモ、好シ原告ノ主張ノ如ク商法規定ノモノヽミトスルモ我国商事会社ノ重役ハ前述ノ如ク正ニ商法ノ規定ニ適合スル事明白ナリ、加之商事会社ノ取締役等ハ商業会議所条例ノ規定ニ適合スル商業者ナルカ故ニ、其撰挙名簿ニモ姓名ヲ列シ会員ノ選挙権及被選挙権ヲ有スル事実ニ依ルモ原告ノ商人タル事ハ争フ可ラサル所ナリ、既ニ商人タル以上ハ其結果トシテ地方税中商業税ヲ払フヘキ義務アルハ勿論ナリトス、即チ明治十三年第十六号布告地方税規則第二条ニ営業税・雑種税ノ種類ハ別段ノ布告ヲ以テ定ムトアリ、尋テ同年第十七号布告第一条ニ於テ営業税ヲ課スヘキ種類ヲ定メ、商業・工業ト為ストアルニ依レハ商人タル原告ハ此商業税ヲ負担セサル可ラス、然ルニ原告ハ商事会社自身ニ課税スルト同時ニ頭取等重役ニモ課税スルトキハ二重税トナルノ嫌アリト主張スルモ、一ハ会社ナル一個ノ集合体即チ一個ノ法人ニ課シ、一ハ会社ノ重役ナル一己人ノ常職即チ商業ニ課税スルモノナレハ毫モ二重税タルノ嫌ナシ、又原告ハ課税ノ標準ヲ非難スレトモ元来商業税ナルモノハ商人ノ営業ニ課スルモノナレハ、其課税額ノ多寡ヲ定ムルニハ何カ標準トナルヘキモノ無カル可ラス而シテ尋常商人カ商業ヲ営ムニハ店舗等夫々建物ヲ使用シ、其建物ノ大小位置ヲ以テ略ホ商業ノ大小ヲ推測仮定シ得ヘキモノナルカ故ニ建物敷地ヲ標準ト為シタル迄ニシテ、其家屋敷地中ニ於テ商業ニ使用スル部分ノミニ課税シ其使用セサル部分ニハ課税セスト云フ如キ厳密ナルモノニアラス、何トナレハ課税ヲ受クルハ商業其自身ニ
 - 第23巻 p.211 -ページ画像 
シテ建物敷地ハ唯其多寡ヲ定ムルノ標準タルニ過キサレハナリ、夫ノ用達仲買商等ニシテ店舗ヲ設ケサルモノヽ如キモ営業者居住ノ建物ヲ標準トスルノ制規ナリ、故ニ原告ノ如キ各自一己ノ店舗ヲ有セサル商人ノ営業ニ課税スルニ当テ其居住ノ建物敷地ヲ以テ標準トスル事ハ至当ノ処分ナリトス、要スルニ原告ハ法律及事実ノ上ニ於テ商人ナリ、常業トシテ商業ヲ営ムモノナリ、従テ被告カ其商業ニ対シ地方税中ノ商業税ヲ賦課シタルハ不法ノ処分ニアラサルカ故ニ、原告ノ請求ハ棄却セラレン事ヲ請求スト云フニ在リ
 依テ双方ノ弁論ヲ聴キ証拠ヲ閲シ理由ヲ説明スル左ノ如シ
 本訴所争ノ要点ハ、被告小石川区長ハ明治十三年第十六号布告地方税規則第一条及同年第十七号布告営業税雑種税規則第一条ニ基ツキ原告ニ対シ商業税ヲ賦課スルヲ得ヘキヤ否ヤニ在リトス、而テ被告ニ於テハ、商事会社ノ重役ハ一定ノ条件ヲ具シタル株主ニシテ初メテ就任シ自己及会社ノ利益ノ為メ常時商業ニ従事スルモノナルカ故ニ、前記地方税中ノ商業税ヲ負担スヘキハ勿論ナリト云フト雖モ、営業税雑種税規則第一条ニ所謂商業トハ自己ノ利益ノ為メ其業ヲ営ムモノニシテ、他人ノ為メ労役ニ服シ其業務ニ管預スルモノヲモ包含スルノ意ニアラス、即チ本件自己ノ利益ノ為メニ商業ヲ営ムモノハ会社タル法人ニシテ、取締役ハ会社ノ為メ労役ニ服スルニ止マリ自カラ営業ヲ営ムモノト謂フヲ得ス、随テ被告カ原告ニ対シ商業税ヲ賦課シタルハ違法ノ処分ナリトス、其他双方陳弁スル所アレトモ本件判決ニ必要ナラサルヲ以テ之ヲ説明セス
 右ノ理由ニ依リ判決スル左ノ如シ
 被告ハ明治二十五年度後半期分商業税トシテ原告ニ対シテ金弐円三拾三銭三厘ヲ徴収シタル処分ヲ取消スヘシ
 訴訟費用ハ被告ノ負担トス
 明治二十六年十二月七日行政裁判所公廷ニ於テ宣告ス
         裁判長行政裁判所長 男爵 槙村正直
         行政裁判所評定官  男爵 本田親雄
         同            箕作麟祥
         同            黒川誠一郎
         同            斯波有造
         同            進十六
         同            樋山資之
         行政裁判所書記      三井精一
  明治二十六年十二月七日行政裁判所ニ於テ原本ニ依リ謄写ス
         行政裁判所書記      三井精一
会頭(若宮商工局長) 本案ハ重大ナル条件ナルヲ以テ参考ノ為メ其ノ沿革ノ概要ニ付一言シ置クベシ、本席ハ親シク聯合会ニ参列セザレハ其詳細ハ素ヨリ知ルニ由ナキモ、同会議事録ニ就イテ見ルニ曩ニ十一会議所ヨリ本省ニ提出セラレタル建議ノ起原ヲ尋ヌル時ハ即チ東京商業会議所ノ発議ニ係ルモノニシテ、其原議ハ本条第三項中ニ列挙スルモノヲ除クト云フノ趣旨ニアラズ、其条項ノ如キハ一々記臆シ居ラサルモ大体ニ於テハ第一条第一項ニ一物品ノ交換・販売ヲ
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目的トスル取引、二製造工業及ヒ手職業ニ係ル取引ト云フガ如ク、第一号ヨリ第十号マテ其種類ヲ列挙シ、第二項ニ至リ前項ニ掲クル取引ヲ営業トスル合名会社ノ社員ハ各別ニ商業者トシ、合資会社・株式会社ハ一会社ヲ以テ一ノ商業者トス」トアリ、此発議ノ趣旨ニ付テ見ル時ハ合名会社ノ社員ハ各箇ニ選挙被選挙権ヲ与ヘ、合資会社・株式会社ハ法人体ヲ以テ選挙被選挙権ヲ与フルノ組織トハナレリ、然ルニ不幸ニモ原議成立セズ合名会社ノ社員ト雖モ各箇人トシテハ資格ヲ与ヘズ、合名・合資・株式三種類ノ会社ハ単ニ各法人トシテ選挙被選挙権ヲ与フルコトニ決議シ、農商務省ニ表面提出セラルヽニ至リタリ、余ガ考フル所ヲ以テセバ、事ノ利害ハ暫ク措キ法律上単純ナル解釈ヲ下ス時ハ、聯合会ノ結果トシテ十一会議所ヨリ提出セラレタルモノヨリハ寧ロ東京商業会議所ノ原議ヲ以テ勝レリト云ハサルベカラズ、何トナレバ合名会社々員ナル者ハ商法ノ規定ニ依テ見ルモ無限ノ責任ヲ有スル商業者タリ、然ラバ一己人ニ於テスルト会社ヲ組織シテスルト其間毫釐ノ差異アルヲ見ズ、然リ東京商業会議所ノ原議ハ比較的論理正シキニモ拘ハラス聯合会ニ於テ之ヲ否決シ、合名会社々員ト雖トモ選挙被選挙権ヲ有セサルコトヽ為セリ、此点ニ付テハ当時十分討議セラレタルコトナルベキモ議事録ニ就イテ其詳細ヲ知ルコト能ハサレバ、当時ノ聯合会ニ参会セラレタル各員ニシテ此諮問会ニ出席シ居ラルヽ方アラハ其理由ヲ説明アランコトヲ望ム、其ハ第二トシ余ハ前ニ述ヘタル如ク東京商業会議所ノ原議ハ法理上正当ノ事ニシテ、合名会社ノ各箇社員ニ資格ヲ与フルトセハ合資会社ノ業務担当社員及無限責任社員ニ之ヲ与ヘサルノ理由アルヲ見ズ、何トナレバ合名会社ノ各箇社員ト合資会社ノ業務担当社員・無限責任社員トノ間ニ於テ、責任・義務ニ何等ノ等差アルヲ発見スル能ハサレバナリ、果シテ合資会社ノ業務担当社員・無限責任社員モ亦合名会社ノ各個社員ト均ク選被選権ヲ与ヘ、会議所ノ経費ヲ負担セシムルハ法理上当然ナリトスレハ、何ガ故ニ株式会社ノ取締役即チ代理権ヲ執行スベキ者ニ之レヲ与フヘカラサルノ理由アルヤ甚タ解セザル所ナリ、故ニ商法ノ上ヨリ見ルモ第三項ニ掲グル会社役員ハ当然商業者ト認メ、会員タルノ権利ヲ与ヘ義務ヲ負ハシムヘキモノト信ス、又帝国議会ニ於テ通過スルノ見込ミナシトノ説モアリシガ、帝国議会ニシテ果シテ此法ヲ不都合ナリト見バ其ハ帝国議会ニ其責ヲ帰スヘキモノニシテ我々ニ於テ毫モ疚シトセザルナリ、翻テ現時ノ状況如何ヲ顧レバ実際其必要ヲ感ズル所ナリ斯ノ如ク法理上ニ照シ聊カ触ルヽ所ナキノミナラズ実際ニ於テモ亦其必要ヲ感スルコトナレバ、諮問按ノ如クスルハ実ニ正当且ツ適良ナリト信スルナリ
番外(京都商業会議所書記長片桐君) 余ハ一昨年京都ニ開キタル聯合委員会ニ傍聴シ居タルヲ以テ玆ニ其記臆スル所ヲ述ブヘシ、抑モ本問題ノ帰着スル所ハ、株式会社ノ重役ハ果シテ商人ト認ムヘキヤ否ヤ、合名会社ノ社員、合資会社ノ業務担当社員・無限責任社員ハ総テ商人ナルヤ否ヤヲ論究セハ自ラ明ナルコトナラン、商法第百四十三条ノ規定ニ拠ル時ハ「業務担当社員ハ裁判上ト裁判外トヲ問ハス
 - 第23巻 p.213 -ページ画像 
総テ会社ノ事務ニ付キ会社ヲ代理スル専権ヲ有ス、然レドモ会社契約又ハ会社ノ決議ニ依リテ覊束セラル」トアリ、株式会社取締役及監査役ハ同第百八十六条ニ「取締役ノ代理権及ヒ其権ノ制限ニ付テハ第百四十三条及第百四十四条ノ規定ヲ適用ス」トアリ、斯ク合資会社ノ業務担当社員及ヒ株式会社ノ取締役ハ其会社ヲ代理スル専権ヲ有スルモノナレバ無論商人ト認ムヘキモノヽ如シ、然ルニ熟々其深意ヲ窺フ時ハ商取引ハ最モ機敏ヲ要スルモノナルガ故ニ代理者ニ此権ヲ与ヘタルモノニシテ、条例ノ規定トハ少シク其趣ヲ異ニスルナキカヲ疑フ、何ントナレハ条例ノ「商業者」ナルモノハ一ノ業体ヲ指スモノニシテ、或ハ銀行、或ハ運漕業、保険業ト云フガ如ク営業ト会社トハ各々一物ニシテ決シテ二アルベキノ理ナシ、而シテ各会社ノ如キハ商法上総テ法人タルコト明ナリ、法人ハ一ニシテ業体モ亦一ナリ、然ルニ営業ヲ為スニ当ツテ二・三ノ代理者アルハ機敏ヲ要スル商取引上ニ於テ必要ヲ認ムルモノニシテ、一般ノ場合ヨリ見ル時ハ銀行或ハ会社ノ如キハ必ラズ一体ナラサルベカラズ、仮リニ商人々名簿ヲ作ルコトアリトセンカ、第一銀行ノ代理人ハ何某ニシテ、何紡績会社ノ代理人ハ誰ナリト必ラスヤ一人ニ限ルベシ、若シ代理人ニシテ二名乃至四・五名アリトセバ誠ニ不都合ヲ来スヘシ単ニ広ク知識ヲ求ムルト云フニ在ラバ或ハ可ナリ、之ヲ法律上ニ於テ権利義務ヲ定ムルニ当ツテハ、法人タル権利義務者ノ外時ニ代理権ヲ執行シ自身営業ヲ為サヽル役員ニ迄及ホサントスルハ、理ニ於テ許スヘカラサルモノナリトノ理由ニ依リ削除セシト記臆ス
二十四番(益田君) 東京商業会議所ニ於テ殊更ニ合名会社ノ社員ヲ一箇商人ト認メタルハ元来合名会社ハ必ラスヤ資本金ヲ醵集スルモノニアラス、然ルニ脳力ヲ集メ各箇人ニ於テ責任ヲ負担スルノ義務アルヲ以テ株式会社同様法律上ニ於テ撿束スル所アルモ、法律上資本ヲ登録スルコトモナク其実一己人各々主人タルノ有様ナレバ合名会社社員ハ之ヲ商人ト認メタル所以ナリ、合資会社ニ至ツテハ資本金ヲ醵集シ其資本ハ有限責任ニシテ商法上株式会社ト異ナラサル性質ヲ有セリ、総テノ取締役ハ一箇ノ支柱ト云フニ過ギズシテ会社全体ヲ支ユルニハ集合セザレバ其用ヲ為サヽルヲ以テ、単ニ取締役ハ一「ぼーるど」ト見倣シ一会社ヲ以テ一資格ヲ与ヘルヲ穏当ナリト云フノ趣意ニ外ナラザリシナリ
会頭(若宮商工局長) 最早討論モ終結ト認ムルニ依リ可否ヲ採決スヘシ、然ルニ本項ハ重要ノ条件ナルヲ以テ指名点呼ヲ行フベシ
   (指名点呼)
  原案ヲ可トスル者  三十名
  原案ヲ否トスル者  十一名
会頭(若宮商工局長) 第一条第二項ハ多数ニ依テ原案ニ決ス、引続キ直チニ第四項ノ議事ニ移ルベキ筈ナレドモ、時間モ既ニ迫リ居レバ此間ニ於テ先ニ決シタル第一条第一項ノ各号ニ付テノ調査委員ヲ選定スルコトニ致スヘシ、付テハ各員中ヨリ右委員ヲ互選セラルヽハ当然ノ事ナレドモ、本席ニ於テ希望スル所ハ主務省ノ官吏一両名委員中ニ加入スルコトニセバ委員会ノ取調上ニ付好都合ナラント思料
 - 第23巻 p.214 -ページ画像 
ス、併シ変則ニ渉ルノ嫌ヒモアレバ一応各員ノ意見ヲ聴キタシ
二十四番(益田君) 唯今会長ヨリ述ヘラレタル事ハ本員ニ於テモ大ニ便利ヲ得ルコトヽ考フ、付テハ会長ニ於テ会員中ヨリ七名、主務官吏中ヨリ両名ノ委員ヲ指名アランコトヲ望ム
六番(岡田君) 二十四番説ヲ賛成ス
十二番(内田君)・十番(浮田君) 二十四番説ヲ賛成ス
会頭(若宮商工局長) 一応起立ニ問フヘシ、二十四番説ニ同意者ハ起立
  満場起立
会頭(若宮商工局長) 然ラハ会頭ニ於テ指名スベシ
                 三番   伊吹鎗造君
                 十番   浮田桂造君
                 十三番  浜岡光哲君
                 二十二番 渡辺長謙君
                 二十九番 渋沢栄一君
                 三十八番 鈴木惣兵衛君
                 四十一番 水登勇太郎君
          農商務属商工局商事課長 江口駒之助君
          農商務属商工局員法学士 石川八十井君
 右ノ通リ指定致シタレバ、委員ニ於テ十分調査ノ上議事ノ都合モアレバ明後朝迄ニ報告アランコトヲ望ム
三十五番(岡野君) 委員ニ於テ至急調査ノ上明朝迄ニ報告セラルヽ様願ヒタシ
二十九番(渋沢君) 我々委員ニ指名セラレタル以上ハ直チニ午後ヨリ調査ニ取掛リ、為シ得ベクンバ明朝議場ニ報告スルコトニ致スヘシ
会頭(若宮商工局長) 然ラハ本日ハ是レニテ閉議スベシ
  午前十一時四十五分退散
○七月四日午前八時三十分開議 出席総員四十二名
会頭(若宮商工局長) 是レヨリ議事ヲ初ムベシ、昨日第一条第一項各号調査ノ為メ特別委員ヲ選定セシガ、既ニ調査モ結了シタル由ナレバ其結果ヲ報告アリタシ
   (二十九番(渋沢君) 左ノ修正案ヲ朗読ス)
  第一 営業ノ目的ヲ以テ左ノ業務ヲ為ス者
   一 物品ノ交換・販売及賃貸ヲ目的トスル取引
   二 製造工業及手職業ニ係ル作業及取引
   三 取引所ノ取引
   四 人及物ノ運送ニ係ル作業及取引
   五 銀行営業
   六 倉庫寄託及其他ノ寄託ニ係ル作業及取引
   七 流通シ得ヘキ信用証券ノ発行及流通ニ係ル作業及取引
   八 両替・金銭貸附及質営業
   九 委托売買・仲立及代弁ノ営業
   十 保険営業
   十一 船舶ノ売買・賃貸・構造・修繕ニ係ル作業及取引
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   十二 航漕ニ係ル作業及取引
   十三 土木建築ニ係ル作業及取引
   十四 受負業
二十九番(渋沢君) 第一条第一項ノ各号ニ付テハ特ニ調査委員ヲ選定シテ取調フルノ必要アリト議決シ本員等其委員ニ当リタルヲ以テ昨日本会退散後直チニ委員会ヲ開キ之レカ調査ニ着手シタリ、而シテ其結果ハ別ニ事々敷報道スル程ノ事モアラザレドモ一応調査ノ次第ヲ述ベン、委員会ニ於テハ先ツ初メニ大体ノ方針ヲ定ムルコトニ決シ、即チ商法第四条ノ各号及第五条ノ幾号ハ其儘之ヲ列記スルヲ以テ完全ナリト為シ得ルカ、又ハ其幾分ヲ添削スルノ必要アルカヲ評定セリ、然ルニ元来商法ハ商取引ニ属スルモノヲ示シタルニ、本条例ハ斯ル営業取引ヲ為ス者ヲ商人ト云フトノ意味ニテ即チ人ヲ指シタルモノナレバ、幾分差異アルノミナラズ賃貸或ハ土木等ノ文字ヲ加フルカ如キ必要ノ箇条モアレバ文字ノ一部分ヲ修正スルハ勢ヒノ免サル所、力メテ之ヲ為スコトハセザルモ必要ナル箇条ハ多少ノ修正ヲ加フヘシトノコトニ決定シタリ、而シテ一営業ノ目的ヲ以テ云云トアルヲ第一項トシ、一項中ノ各号ニハ一・二・三ノ番号ヲ附シ見易スカラシムルコトヽシ、夫レヨリ各号ニ入リ証券発行又ハ航漕ニ係ル営業等ニ付テハ種々ノ議論モ起リ目下其必要ナカラントノ説モ出シガ、焉ンゾ知ラン他日此項目ナキガ為メニ其業体ヲ漏洩スルノ悔ナキコトヲ保セサルノミナラズ、殊ニ商法中ニモ規定シアルコトニテ之ヲ存シ置クモ他ニ妨ケナキ以上ハ漫リニ改竄ヲ加ヘザル方穏当ナリトシ、商法ノ儘掲クルコトトハナセリ、又「公ニ開キタル店舗・帳場」云々ト商法ニハ営業ノ仕方ヲモ規定シアレドモ是等ハ其業体ニ依テ商人タル事ヲ認メ得ベク、又「利息若クハ其他ノ報酬ヲ受クル」云々トアルハ単ニ金銭貸附トスルモ、意味分明ナリトノ趣旨ニテ金銭貸附トシ、質営業ハ此中ニ含ムベキモ特ニ名称ヲ有スル業体故之ヲ明記スルコトニ修正シタリ、又「建築ニ係ル作業及取引」トアルニ、土木ノ二字ヲ冠シタルハ単ニ建築トノミアリテハ道路修繕ハ其中ニ含蓄シ居ルヤ否ヤト疑団モ生スヘケレバ、我国普通ノ称呼ニ従ヒ土木建築トスル方分明ナリトノ趣旨ニ外ナラズ、以上ノ如ク調査ノ上決定シタルヲ以テ玆ニ委員会ノ顛末ヲ報道シ置ク
会頭(若宮商工局長) 各員ニ一言シ置ク、第一項各号ニ付テハ立法上最モ精細ナル調査ヲ要シ、且ツ果シテ農商務大臣ニ於テ此修正ヲ適良ノモノト認メ帝国議会ノ協賛ヲ経 聖上陛下ノ御裁定ヲ得バ現行法律トシテ実施セラルヽニ至ル、而シテ之ヲ実施スルニ当テ疑義ヲ生ジ或ハ監督地方庁ト商業会議所トノ間ニ其意見ヲ異ニシ或ハ商業会議所会員各箇ノ間ニ於テ意見ヲ異ニスル等ノ事之ナキヲ保シ難シ故ニ法律上ニ於テハ法文ノ明瞭ヲ必要トシ、実施上ニ於テハ全国各地商業会議所各箇其解釈ヲ異ニスル如キ事無キ様十分ニ講究シ置クノ必要アリト信ズ、此事ニ付テハ最モ精細ナル調査及ヒ思考ヲ要スル事ナルヲ以テ委員長ノ報告ニ引続キ直チニ之ヲ議定スルハ少シク軽卒ニ失スルノ嫌ナキ能ハズ、故ニ今日単ニ委員長ノ報告ニ止メ明朝迄ニ我人共ニ十分攷究シ、或ハ疑義ヲ糾シ或ハ意見ヲ戦ハシ此間
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一点ノ疑団ナク又毫末ノ遺憾ナカラシメンコトヲ希望スルニ依リ、第一項ハ明日ニ譲リ本日ハ第一条第二項ノ議事ヲ開クコトニスヘシ
   (石渡属朗読)
  第二 第一項ニ掲ケタル業務ヲ為ス商事会社及取引所
五番(村田君) 本員ニ於テハ第二項ハ此明文ヲ掲ゲ置カザルモ、其結果自ラ斯クナルベキモノニテ、全ク冗文ニ属スルモノト思惟スルガ如何
委員(江口属) 如何ニモ単ニ仕事ノ上ヨリ見レバ其感ナキニアラサルモ、会社ハ一ノ法人ニシテ特別ノ支配ヲ受ケ、又取引所ハ一ノ営業ニシテ格段ノモノナレバ玆ニ明記シ置ク方適当ナリトノ趣旨ニ外ナラザルナリ
二十四番(益田君) 商事会社ナル語ハ合名会社モ自ラ其中ニ包含スルモノト思考ス、而シテ第三項ヲ見ルニ合名会社ノ社員ハ各箇資格ヲ得ル事ニナリ居レリ、左レバ合名会社々員ハ各箇人ニ資格ヲ与ヘルノミナラズ会社其モノニモ資格ヲ与ヘルノ趣旨ナルヤ
委員(江口属) 然リ、会社ノ資格ニテ会員トナリ又一己人ノ資格ニテ会員ト成リ得ル考ヘナリ、又念ノ為述ヘ置クハ商法ノ規定ニ拠ル時ハ株式会社ハ如何ナル業ヲ為スニ拘ハラズ商事トシテ商法ノ支配ヲ受クルモノナルモ、本項ニテハ第一項ニ掲グル以外ノ商業ヲ為ス会社ハ之ヲ除クルコトヽナルナリ
二十四番(益田君) 第二項ハ「第一項ニ掲ケタル業務ヲ為ス」云々トアレハ分明ナリ、然ルニ第三項ニ至リ合名会社ハ各箇社員尽ク資格ヲ有スル事ニ成リ居レハ第二項ニ入ルノ必要ナシト思惟ス、故ニ単ニ商事会社トアルハ合資会社及ヒ株式会社ト修正スル方可ナラン、後日本条例改正ノ結果ニ依リ費用徴収ノ点ニ於テモ合名会社ハ社員ニ課シ会社其モノニ課スルヲ要セス、旁合名会社ハ第二項中ヨリ削除スルヲ適当ナリト考フ
二十八番(藤本君) 本員モ益田君同様ノ疑団アリ、東京ニテハ商業会議所会員ノ資格ヲ得ルニハ千円以上ノ所得アル者トナリ居レリ、然ルニ一ノ小合資会社アリテ社員三名ノ所得ヲ合スレバ千円以上ニ上リ其資格中ニ入ルモ、各箇人ニ割当レハ各々其資格ニ当ラズト云フ如キ場合ハ、如何取扱フ御積リナルヤ
委員(江口属) 三人ノ所得ヲ合併シテ初メテ一千円以上アルモノトスレバ、会社ハ其資格ニ当ルモ、各箇人ハ其資格ナキモノト認ム
二十八番(藤本君) 合名会社トシテハ納税セザルベシ、然レバ何ニ依テ其税額ヲ知ル事ヲ得ルヤ
二十九番(渋沢君) 本員ガ考フル所ニ依レバ第七条ニ於テ「農商務大臣ハ地方ノ情況ニ依リ特ニ所得税額及ヒ会社・取引所ノ資本額ヲ定ムルコトヲ得」トアルモ、合名会社ハ一定ノ資本金無キニ依リ社員各自其地方ニ於テ規定スル等級ニ当ル者ニアラサレバ資格ナキモノトス、故ニ合名会社ヲ第二項中ニ加ヘ置クモ資本額ニ依テ其資格ヲ定メ得ザル場合アレバ農商務大臣ハ何ニ拠テ其額ヲ定ムルヤ、其拠ル所ニ苦シム事出来セン、故ニ合名会社々員ハ一己人ニ資格ヲ与フル事ニシ、会社ヲ二項ヨリ削除スル二十四番説ヲ賛成ス
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二十八番(藤本君) 第二項ハ二十四番説ヲ賛成ス
七番(高橋君) 二項ハ削除スルト云フ五番説ヲ賛成ス
会頭(若宮商工局長) 削除説ノ方々ニ質問致シタシ、総テ商業ヲ営ム以上ハ法人ニアレ箇人ニアレ資格ヲ有スベキハ当然ナリ、然ラバ殊更ニ玆ニ掲ゲザルモ可ナリトノ趣旨ナリヤ
五番(村田君) 然リ
十七番(法橋君) 本員モ益田君ノ説ヲ賛成ス
会頭(若宮商工局長) 五番・七番ニ対シ今一度確メ置タシ、五番ハ二十四番説以前ニ発議セラレタルガ、二十四番説ノ如ク合名会社ハ之ヲ除キ合資・株式会社ニ選被選権ヲ有セシムル様相成リテモ矢張リ御説ノ如ク其文面ハ無クトモ明瞭ナリト確認セラルヽヤ
五番(村田君) 強テ前説ヲ主張スル訳ニモアラザレバ取消スコトヽ致スヘシ
会頭(若宮商工局長) 五番説消滅シタレバ七番ノ賛成モ取消サルヽ事ナラン、左スレバ他ニ説モ無ケレバ二十四番ノ「商事会社」トアルヲ「合資会社及株式会社」ト修正スル説ニ同意者ハ起立アリタシ
  満場起立
会頭(若宮商工局長) 満場起立ナルヲ以テ第二項ハ二十四番説ニ決ス引続キ第四項ニ移ルベシ
   (石渡属朗読)
  第四項、第一項ニ掲ゲタル業務ヲ為ス者ノ支店・出張店、及ヒ第一項ニ掲ケタル業務ヲ為ス商事会社ノ支店・出張店ノ長タル者
七番(高橋君) 本項ハ設クルノ必要ナシト信スルニ依リ、削除説ヲ提出ス
二十九番(渋沢君) 本員モ七番説ヲ賛成ス
六番(岡田君) 昨日第三項ニモ反対シタル位ナレバ、無論削除説ヲ賛成ス
十三番(浜岡君) 本員ハ原案ヲ賛成ス、其理由タル本条例ハ全国商業会議所ヲ支配スルコト無論ナリトス、然ラバ北海道ノ如キニ至テハ其土地ニ於テ大ナル商業ヲ営ミ其土地ニ於テ有力ナル者ハ多クハ支店・出張店ナリト思考ス、故ニ若シ本項ヲ削除スル事ニナラバ北海道地方ニ於テハ大ニ困難ナル事情ヲ惹起サンコトヲ恐ル、殊ニ昨日第三項ヲ置ク事ニ決シタル以上ハ本項ハ大ニ必要ナリト信ズ、又経費賦課ノ点ニ至テハ如何ニ決スルカハ知ラザレドモ、若シ営業税ニ依テ徴収スル事ニナラバ其土地ニ於テ営業スル者ハ仮令本店ナルニモセヨ、支店ナルニモセヨ、同ジク営業ヲ為ス以上ハ其間ニ等差アルベキノ理ナシ、又支店ナルガ故ニ必ズシモ営業ノ規模小サシトモ限ラレズ、却テ本店ヨリ盛ニ営業スルモノ其類少カラズ、殊ニ支店長ニモ選バルヽ如キ者ハ商業上ノ知識経験ヲ有スルヤ明ナリトス、又一歩ヲ退キ之ヲ考フルニ一地区内ニ本店及ヒ支店ヲ有スル者ノ如キハ本支店共ニ選被選権ヲ有スルノ嫌ヒヲ生スルニアラズヤトノ議論モ起ルヘシ、然レドモ其場合ニ在テハ別ニ一項ヲ設ケ選被選権ニ付キ特例ヲ置クモ可ナリ、是レ蓋シ支店・出張店ナルガ故ニ選被選権ヲ与ヘザルト云フニハアラズ、一地区内ノモノハ之ヲ一人ノ営業
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ト見レバナリ、斯ノ如クナルヲ以テ第四項ハ原案ノ儘存置シ置クヲ可ナリト信ス
十五番(奥君) 本員モ十三番説ヲ賛成ス、何トナレバ第二項・第三項ノ比較上ヨリ見ルモ適当ナリト信スルノミナラズ、殊ニ鹿児島地方ノ如キハ各地商業者ノ支店・出張店モ少ナカラザル事ナレバ、若シ之ヲ除ク事ニセバ大イニ釣合ヲ失スルニ至ランコトヲ恐ル、又本項ヲ置カバ如何ナル弊害アルカト云フニ他ニ差支アルヲ見出サヽレバ本項ハ原案ノ儘可決センコトヲ望ム
七番(高橋君) 畢竟出張店・支店長タル者ハ家来・雇人ノ如キ性質ノモノタリ、左レハ主人モ家来モ雇人モ同様会員タルコトヲ得ルトセバ大ニ不権衡ナリトノ感アレバ、本項ハ之ヲ除クモ差支ナシト信ズ
四十一番(水登君) 本員モ十三番説ヲ賛成ス、成ル程一主人ニシテ本支ノ店舗アルガ為メ二ツノ権利ヲ有スル如キ嫌アレハ反対説ノ如キ議論ヲ惹起スコトヽ思考ス、此点ニ付テハ先ニ十三番ヨリ縷々陳弁アリタルヲ以テ最早本員ハ喋々スルノ要ナシト雖モ、商業会議所ナルモノハ総テノ商業者ニ向ツテ権利ヲ与ヘ総テノ商業者ハ会議所ニ対シテ責任義務ヲ負フベキモノタリ、左レバ支店・出張店ノ如キモ同シク営業ヲ為ス以上ハ其名義ノ異ナルガ為メニ権利義務ニ厚薄アルベキノ理ナシ、或ハ経費負担ノ事ニ付種々ノ議論アルヘシト雖モ権利ニ附随スル自然義務ハ到底免カルベキニアラズ、随分都会ノ地ニ在テハ一地区内ニ本支店ヲ有スル者モアラン、然レドモ地方ニ在テハ都会ノ地ヨリ支店・出張店ヲ設ケ盛ンニ商業ヲ営ムモノモ少ナカラザレバ、唯ニ本支ノ名ヲ異ニスルヲ以テ権利ニ差異ヲ附スルハ失当ノ事ナリト考フ、然レドモ一私人ニシテ同時ニ二以上ノ権利ヲ併有スルト云フニ至テハ勢ヒ区別セザルヘカラサレドモ、利益ヲ受ケルト共ニ義務ヲ負フベキハ理ノ正ニ然ルベキコトナレバ、既ニ其土地ニ於テ相当ノ商業ヲ為ス以上ハ其地ノ商業会議所会員タルノ資格ヲ与フルハ至当ノ事ナリト信ズ
委員(江口属) 各員参考ノ為メ一言シ置クベシ、先刻十三番ヨリ本支ノ双方ヨリ会員ヲ出スノ嫌アリト述ヘラレシガ、其事ニ付テハ敢テ気附ザリシニアラズ、然レドモ会員資格ヲ得ルニハ所得税ヲ納ムル云々トアリ、殊ニ大都会ノ如キハ其等級ノ制限モ多額ナレバ若シ支店・出張店ニ於テ其資格ニ相当スル税額ヲ納ムルモノアラバ本店ヨリ会員ヲ出スニ拘ハラズ又支店ヨリ出スコトアリトスルモ聊カ差支ナキモノトシ、斯ク発案シタル所以ナリ
十七番(法橋君) 支店長ニ資格ヲ与フル事ハ或ハ可ナラン、然レドモ之ヲ出張店長ニ及ボス事ハ不可ナリト信ズ、何トナレバ実際ニ就イテ之ヲ見ルモ出張店ナルモノハ資本ノ多少ニ拘ハラズ多クハ一時開設スルモノナレバ、大坂ノ如キハ一々出張店ヲ網羅スル事ニセバ為メニ大ニ困難ヲ生スルコトアラン、故ニ支店長ニ資格ヲ与フルコトハ敢テ不可ナシトスルモ之ヲ出張店ニ及ボスノ必要ヲ見ザルナリ、今仮ニ資格ヲ与フル事トセンカ当業者ニ於テ大ニ迷惑ヲ感スルヤ明ナリ、然ク迷惑スル者ヲ強イテ引入レタリトスルモ啻ニ其利益無キノミナラズ却テ不利アルヲ信ズルナリ
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会頭(若宮商工局長) 左レバ十七番説ハ原案ヨリ出張店ダケヲ除クトノ趣旨ナルヤ
十七番(法橋君) 然リ、会社ニアレ一箇人ニアレ出張店ハ之ヲ除クノ精神ナリ
十三番(浜岡君) 十七番説ハ一応尤ノ様ナレドモ、実際支店・出張店ヲ区別スル事ハ非常ニ困難ナリト思料ス、故ニ商法ニ於テモ如何ナル名称ヲ用ヰルモ之ヲ支店トスル事ヲ規定シアリ、既ニ此規定アル以上ハ出張店ヲ加ヘタリトスルモ敢テ不都合ナキノミナラズ、或ハ出張店ノ名義ヲ以テ其実支店同様ノ働キヲ為シ居ルモノ有ルヤモ知レザレバ、出張店ヲ除クノ必要ナシト思フ
二十番(岡崎君) 十三番ニ質問ス、第四項ヲ此儘ニ成シ置カバ商事会社トアリテ其中ニハ合名会社モ無論含蓄シ居ルコトヽ考フ、十三番ハ矢張リ合名会社ノ支店・出張店ヲモ包含スルノ趣旨ナルヤ
十三番(浜岡君) 無論包含シ居ルノ精神ナリ
会頭(若宮商工局長) 本項ニ対スル三番ノ意見ヲ承ハリタシ
三番(伊吹君) 先刻十三番ヨリ北海道ノ状況ニ付陳述セラルヽ所アリシガ、本員ハ其実情ヲ穿タレタルニ敬服セリ、実際北海道ニテハ支店・出張店ノ如キハ大ニ有力ナルモノトス、曾テ北海道ニ於テ自然ノ必要ニ迫リ商業会議所類似ノモノヲ設置シタル事アリシガ、其際如何ナル種類ノ人ヲ以テ組織シ且ツ其働ヲナシタルカト云ハヽ、各会社ノ支店・出張店員等与ツテ大ニ力アリタルハ事実ニ徴シテ明ナリ、元来北海道ニ在ル支店ノ如キハ随分古クヨリ永続シ来リタルモノニテ、当業者ニ於テモ尚ホ永世住居スルノ感情ヲ懐キ居レバ、随テ其土地ノ痛痒ヲ感スル事モ亦普通商人ト敢テ異ナル所ナシ、殊ニ夫等ノ人ハ商業上相当ノ知識経験ヲ有スル者ナレバ愈々商業会議所ヲ設ケ、商業上ノ発達ヲ謀ルガ如キ場合ニ際セバ是非是等ノ人ヲ網羅セザルベカラズ、故ニ本員ニ於テハ全然十三番説ニ同意ヲ表スルナリ
十七番(法橋君) 是等法律ヲ制定スルニ当リ我々会員タルモノヽ心得ニ於テ会長迄伺ヒ置キタキ事アリ、其ハ以前両度ノ諮問会ニアレ此回ノ諮問会ニアレ、議場ノ有様ハ兎角ニ本条例ヲ施行スル上ニ付テ一般ノ利害如何ニ着眼スルコトナク単ニ一局部ニ偏シテ頻リニ地方ノ利害ヲ主張スルノ傾キアリ、本員等ハ成ルベク利害ノ厚薄・事体ノ軽重ヲ計リ、全体ノ上ニ付テ適否如何ヲ見ルベキモノト信ジ居レリ、固ヨリ官民共ニ人類タルヲ免カレザル以上ハ、到底森羅万象ヲ網羅シ何レノ点ニ向ツテモ不快不味ナカラシムルコトハ到底望ムベキニアラズト雖モ、殊ニ北海道・沖縄ノ如キハ之ヲ特別ニ置カザルベカラズ、故ニ日本全体ニ通ジテ稍々適当ナリト認ムルモノアラバ仮令沖縄・北海道ニ於テ不便アリトスルモ其ハ程度懸隔ノ然ラシムル所ニシテ如何トモナスベカラザレバ暫ク発達ノ時機ヲ待ツノ外ナキナリ、若シ其程度ヲ計ラズ単ニ地方ノ利害ニ付テ事ヲ議スルコトアラバ大ニ法律制定ノ趣旨ニ戻ルモノアルヲ信ズ、故ニ本員ニ於テハ第一ニ事ノ大小軽重ヲ計リ、之ヲ全国ノ利害ニ照シ最モ利害ノ厚キ所ニ従フノ方針ヲ以テ議定スベキモノト考ヘ居レリ、果シテ其当
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ヲ得ルヤ否ヤ会頭ニ伺ヒタシ
会頭(若宮商工局長) 十七番ハ其信スル所ニ依リ意見ヲ述ベラレテ可ナリ
六番(岡田君) 十三番ニ質問ス、十三番ハ先ニ二十番ノ質問ニ対シ、本条第二項中ニ合名会社ハ除カレタルニモ拘ハラズ第四項ニハ入リ居ル様答ヘラレタルガ果シテ其趣旨ナルヤ
十三番(浜岡君) 本員ハ第四項ニハ合資会社モ籠リ居ルコトヽシテ差支ナシト信ズ、畢竟第四項ハ合資会社ニアレ合名会社ニアレ其地ニ於テ営業ヲ為シ例ヘハ一万円ノ所得アリトスレハ夫レニ対スル営業税ヲ負担スヘク、既ニ営業税ヲ出ス以上ハ其支店・出張店長ニ資格ヲ与フルハ差支ナシト信ス
六番(岡田君) 兎ニ角本社モ支店モ其権利ヲ得ルト云フコトナルヤ
委員(江口属) 其ハ少シク意味ヲ誤解セラルヽモノヽ如シ、二項ハ法人ヲ指スモノナレトモ、四項ハ支店・出張店ヲ指スニアラズシテ、単ニ其長ヲ指スモノト了解アリタシ
六番(岡田君) 然ラバ本体タル合名会社ハ無資格ナルモ、支店ヲ預カル番頭ハ資格ヲ有スルコトニナルヤ
委員(江口属) 合資会社ハ無資格トナリタルモ、第三項ニ於テ各箇社員ガ資格ヲ持チ居ルナリ
二十九番(渋沢君) 七番ヨリ反対説ヲ提出セラレタルガ本員モ賛成ノ意ヲ表スルモノナリ、然レトモ其理由ハ玆ニ喋々セサルヘシ、抑モ法理上ノ事ニ付テハ行政官庁タル農商務省ハ極メテ明達セラレ、従来解釈セラレ来ル所ニ依レバ狭義ニ解釈シテ種々訓示セラレタル事モ少ナカラス、畢竟本項ノ如キモ其等ノ点ヨリ設ケラルヽ事ニ至リタルモノト推知セラルヽナリ、固ヨリ便宜ノ点ヨリ云ハヽ便宜ニハ相違ナカルベシ、然レドモ本項ニ付テハ余程不都合ナル結果ヲ現ハサヾルナキカノ疑念ハ、本員ハ議案ヲ接手シタル後直チニ浮ビ出タリ、十三番ハ北海道地方ノ状況ヨリシテ本項ハ必要ナリト述ヘラレシガ或ハ左ル事情モアラン、然レドモ会頭ヨリ昨日第三項ニ付テ述ヘラレタル理由モ単ニ商法第百八十八条ニ掲クル会社ノ代理権ヲ専有スルトノ明文ヲ論拠トシテ述ヘラレタル位ニシテ、第四項ニ至ツテハ純然タル使用人ト云フベキナリ、此使用人ニ対シ此権利ヲ有セシムル事ハ法理上本省ニ於テモ大ニ疑義ヲ抱カルヽ事ナリト考フ、加之実際ニ就テ之ヲ考フレバ総テ一会社ニアレ一箇人ニアレ使用人ニ托シテ支店・出張店ヲ監理セシムルニ於テハ十分之ニ責任ヲ負ハシメ其業務ニ精励シテ敢テ他岐ニ走ラザル様訓示スルハ当然ナリ、現ニ我々ガ監理スル或会社ノ如キモ支店ノ代理人タル者ハ漫ニ他ノ事業ニ顔出シ他ノ業務ニ関預スルコトヲ許サズ、若シ已ムヲ得ザル場合ニ際セバ本店ノ重役之ヲ評定シ其許可ヲ得ル事ニ成リ居レリ、是レ或ハ悪例ナルヤハ知ラサレドモ、然ク厳重ニナシ置カザレバ自己ノ名誉ヲ得ンガ為メニ種々ノ事ニ顔出シテ業務ヲ怠ル如キ弊ナシトセズ、斯ノ如キ内規ハ国家ノ利益ノ為メニハ一片ノ訓令容易ニ之ヲ打破スルコトヲ得ンモ、元来支店長ノ如キハ使用人タルニ過キス此使用人ニ対シ如何ニ便宜ナリトハ云ヘ法律上此資格ヲ与フルト云
 - 第23巻 p.221 -ページ画像 
フニ至ツテ本省ニ於テモ大ニ熟慮アリタキ事ト考フ
会頭(若宮商工局長) 各員参考ノ為メ一言置クベシ、第四項ニ付テハ開会当日本席ヨリ述ベタル如ク本省ニ於テモ疑義ヲ抱キ居ル条項ノ一ニシテ、強チ原案ヲ確執スルノ精神ニアラザルナリ、固ヨリ是等法案ヲ議スルニ当テハ本省ト各員トハ親子兄弟ノ関係トモ評スヘキモノナルヲ以テ、本会ノ如キモ敢テ形式ニ泥マズ寧ロ懇和合同ヲ期スル所以ナリ、依テ玆ニ本省趣旨ノ在ル所ヲ曝露セバ会頭自身ニ於テモ大ニ疑義アル所ナリ、従来商業会議所ノ状況ヲ聞クニ事実上ニ於テハ大ニ之ニ耳ヲ傾クヘキモノアリ、唯々之ニ耳ヲ傾クベキノミナラズ実際ニ於テ既ニ差支ヲ惹起シタル処アルヲ見ル、蓋シ十四番ノ如キハ其痛痒ヲ感セラレタル所ナラン、故ニ本省ニ於テモ差支ナキ限リハ是等ノ者ヲ網羅センコトヲ望ミ玆ニ発案シタルモ、尚ホ十分ニ諸君ノ意見ヲ聴キ実際ニ差支ナキノミナラズ之ヲ法理ニ照スモ不都合ナカラシメ、而シテ世ニ公ニセンコトヲ望ミ居レリ、之ヲ法理上ヨリ論スル時ハ幾分ノ疑義ヲ免カレサル事ハ、各員ニ於テモ業ニ已ニ気附カルヽ如ク本省ニ於テモ疑念ナキ能ハサレバ、単ニ問題ノ材料ニ供シタルニ過ギザルナリ
二十九番(渋沢君) 唯今会頭ヨリ述ヘラルヽ如ク本省ノ趣旨ノ在ル所ヲ打明ケテ諮問セラルヽニ至テハ、本員等ノ最モ満足ヲ表スル所ナリ
二十八番(藤本君) 本項ニ就テハ唯今会頭ヨリ述ヘラルヽ如キ事情モアリ、又地方ノ状況モアル事ナレバ、決議ハ明日ニ延ハサレンコトヲ望ム
十七番(法橋君) 本員モ二十八番同感
四十一番(水登君) 唯今会頭ノ陳述ニ依リ本案提議ノ趣旨ハ了解シタルガ、疑義アルトノ事ハ法律上許スベカラズト云フコトナルヤ
会頭(若宮商工局長) 法律ト云ハンヨリ寧ロ法理ニ照シ不都合ナキカト云フニ在リ、二十八番説ニハ十七番ノ賛成モアレバ本項ノ決議ハ明日ニ延バス事ニスベシ、続テ第四条ニ移ラン
   (石渡属朗読)
 第四条
  二 商業ニ関スル法律規則ノ制定・改正・廃止及ヒ施行方法ニ付意見ヲ官庁ニ開申シ、且商業上ノ利害ニ関スル意見ヲ官庁其他ニ表示スルコト
  三 商業ノ実況及ビ其統計ヲ官庁其他ニ報告スルコト
会頭(若宮商工局長) 第四条ハ現行法第二・第三ヲ本案ノ如ク改正セント云フニ外ナラズ
十三番(浜岡君) 本員ハ第四条ニ付テハ此儘委員ニ托嘱シ調査スルコトニシタシ、此事ニ付テハ従来ヨリ区域ヲ広クセザルベカラズトノ意思アルコトハ殆ンド全会一致ナリト信ズ、果シテ然リトセハ之ヲ委員ニ附托シ十分ノ調査ヲ逐グル事ニシテハ如何
会頭(若宮商工局長) 十三番ニ相談致スヘシ、唯今諮問ニ附スル二項三項ノ改正ニ付先ツ一通リ議了シ、而シテ後他ノ項目ニ渉リ追加スベキ所アレバ追加シ、委員ニ附托スヘキモノアレハ附托スル事ニセ
 - 第23巻 p.222 -ページ画像 
ラレテハ如何
十三番(浜岡君) 然ラバ左様致スベシ
十七番(法橋君) 唯今会頭ト十三番トノ間ニ協議整ヒタル様ナレドモ第四条ニ付テハ大坂ノ如キハ数年間ノ持論モアリ、殊ニ第二項ニ付テハ今回ヲ機トシ十分完全ナル改正ヲ加ヘタキ精神ナルガ故ニ、特別委員ヲ設ケ各員ノ意見ヲ纏メ委員ニ於テ調査スル事ニセバ纏リ上大ニ好都合ナラント考フ、依テ唯今ノ協議ハ之ヲ取消シ委員ヲ設クル事ニセラレンコトヲ望ム
会頭(若宮商工局長) 此事ハ別ニ討論ヲ要スル程ノ事モアラザレバ、起立ニ依テ各員多数ノ意向ヲ問フ事ニスベシ
二十四番(益田君) 起立ニ依ツテ多数ノ意向ヲ問ハルヽコトニナレバ本員ノ如キモ何レニカ賛否ヲ表セサルヘカラズ、然ルニ本員等ハ之ヲ特別委員ニ附スルノ理由ヲ了解セザルナリ、何カ追加シタキ事アリトセバ其箇条ヲ挙ゲ委員ニ附スル事ニナラザレバ唯今ノ所ニテハ委員ノ必要ハ生セザルコトヽ思考ス
会頭(若宮商工局長) 先ツ本条ノ議事ヲ終リ、而シテ後十三番ナリ十七番ナリ意見ノ有ル所ヲ陳述アラバ、夫レニテ可ナラント考フルガ如何
十番(浮田君) 委員ヲ設クルノ必要ハ互ニ討論ノ末議事ノ纏リ上便宜ヲ得ルカ或ハ或事件ヲ調査スルニ当ツテ初メテ其要アリ、本案ノ如ク未タ討論ヲ用ヰル事ナク又調査ノ条項モ分ラザルニ委員ヲ設クルコトニセバ、委員ハ何ヲ調査シテ可ナルカ甚タ迷惑ヲ感スルナラント考フ
   (此時発言ヲ求ムル者アリ)
会頭(若宮商工局長) 各員ヨリ発言ノ請求モアレドモ、此事ニ付テハ討論スルノ必要モナク又起立ヲ煩ハス程ノ必要モナシ、故ニ先キニ十三番ト会頭トノ協議ハ全ク整ヒタルモノトシ、第四条二項・三項ノ議事ヲ進行スル事ニスベシ
七番(高橋君) 原案ヲ賛成ス
三十八番(鈴木惣兵衛君) 第二項末文ニ「官庁其他ニ」トアルヲ「及」ノ一字ヲ加ヘ「官庁及其他ニ」ト修正シタシ
十三番(浜岡君) 「官庁其他ニ」トアル其他トハ、如何ナルモノヲ指スヤ
会頭(若宮商工局長) 銀行其他ノモノヲ包含シ居ルナリ、従来ノ通リニテハ其区域狭少ニシテ働ノ上ニ於テ大ニ妨ゲヲ為スモノアリ、現ニ其実例ヲ挙グレバ博多商業会議所ヨリ日本銀行ヘ意見ヲ提出シタル事アリシガ、之ニ付法律ニ抵触シタル所為ナリトノ議論起リタルガ如キ事実アリ、又三十八番ヨリ字句ノ修正説出タルモ夫等ノ事ハ本省ニ任セラルヽ事ニナレバ本省ニ於テ不都合ナキ様訂正スルコトニスベシ
三十八番(鈴木惣兵衛君) 其辺ハ本省ニ於テ然ルベク訂正アランコトヲ請フ
会頭(若宮商工局長) 別ニ異議ナシト認ムルニ依リ本条ハ原案ニ決ス引続キ第五条ヲ議スベシ
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   (石渡属朗読)
 第五条 会議所ノ地区内ニ於テ営業ヲ為シ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者ハ、其会議所会員ノ選挙権ヲ有ス
委員(江口属) 予ネテ述ヘ置タル如ク他ノ一説トハ即チ「其地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者」ノ下ニ「及第一条第二項ノ商事会社及取引所」ノ文字ヲ挿入スルモノナリ
二十四番(益田君) 第一条第二項ハ「合資会社及株式会社」ト修正議決シタルニ依リ、本条モ明カニ「第一条第二項ノ合資会社及取引所会議所ノ云々」トスル方可ナリト信ス
八番(水田君) 「所得税ヲ納ムル商業者」トアルハ、商業者自身ガ直接ニ納税セザルモ被戸主等ヨリ納ムル者アレバ其者ハ会議所会員ノ資格ヲ有スル事ニナルヤ
委員(石渡属) 所得税法ハ竈ニ就テ徴税スルニ依リ、戸籍上ノ戸主タル者ガ商業ヲ営ミ被戸主ノ所得ヲ合算シテ所得税ヲ納ムルトスルモ戸主ノ名義ヲ以テ納税スル者ハ会員ノ資格ヲ有スル事ニナルベシ、之ニ反シテ戸籍上ノ戸主ハ商業ヲ営マズ被戸主ノ商業ニシテ戸主ノ名義ヲ以テ納税スルモノハ之ヲ商業者ト認ムルコト能ハザルモノト信ス
十二番(内田君) 「会議所ノ地区内ニ於テ云々」トアルガ他ノ地区内ニ製造所ヲ所有シテ商業ヲ営ム者、又ハ商事会社ノ役員ニシテ其ノ会社ノ営業所カ他地区内ニ在ルモノアリ、仮ヘバ或会社ノ理事又ハ取締役ニシテ甲君ニ住居シ其営業所ハ乙地ニ在ルモノヽ如キハ本条中ニハ適合セザルヤ
会頭(若宮商工局長) 其地区内ニ住居シ其地区内ニ於テ営業シ其地区内ニ所得税ヲ納ムル者ニアラザレバ、資格ヲ有スル事能ハズ
十三番(浜岡君) 所謂出稼ヲ為ス者ニシテ其地区内ニ所得税ヲ納ムル者ハ如何
会頭(若宮商工局長) 其地区外ニ於テ営業スル者ハ一切本条ニハ当ラザルナリ
五番(村田君) 此事ニ付テハ本員等ノ地方ニ於テモ大ニ不自由ヲ感ジ曩ニ農商務大臣ニ伺出タル事アリシガ、唯今会頭ヨリ説明セラルヽト同一ノ回答ヲ得タリ、畢竟是等ハ法文ヲ狭義ニ解釈スルト広義ニ解釈スルトニ依テ差異ヲ生ズルモノナレバ、昨日モ二十九番ヨリ述ヘラレタル如ク本省ニ於テ今少シ広義ノ解釈ヲ取ラルヽ事ニナラバ都合宜シカラント考フ
会頭(若宮商工局長) 現行条例第五条ニ「会議所設立地ノ商業者ニシテ所得税ヲ納ムル者ハ会員ノ選挙権ヲ有ス」トアレバ、法律上如何ニ解釈セントスルモ其商業者ハ設立地ノ商業者ニシテ其地区内ニ於テ所得税ヲ納ムルモノト解釈スルノ外ナシ、然レドモ修正案ニハ猶ホ法文ヲ明瞭ナラシメンガ為メ「地区内ニ於テ営業ヲ為シ」云々ト改正シタル所以ナリ
八番(水田君) 被戸主ト雖モ盛ンニ商業ヲ営ミ直接ニアラザルモ間接ニハ所得税ヲ納ムル者アリ、本員ハ是等ハ戸主ト被戸主トヲ問ハズ会議所会員ノ選挙権ヲ有セシムル事ニシタキ精神ナリ、被戸主ニシ
 - 第23巻 p.224 -ページ画像 
テ直接ニ国税ヲ納メザルノ理由ヲ以テ選挙権ヲ与ヘザルハ被戸主ノ為メニ不幸甚シキコトト思惟ス、又会議所全体ヨリ云フモ為メニ其区域ヲ狭隘ナラシムルノミナラズ、被戸主中ニモ商業上ノ知識経験ヲ有シ、選被選権ヲ与ヘテ大ニ利益ヲ得ルモノ少ナシトセズ、故ニ被戸主ト雖モ所得税ヲ納ムル程ノ営業ヲ為ス者ハ其権利ヲ与ヘテ可ナルモノト思考ス
委員(江口属) 間接ニ所得税ヲ納ムル者トハ如何
八番(水田君) 本人ハ戸主ニアラズシテ戸主ノ名義ノ下ニ在テ納税スル者ヲ云フ、例ヘバ父子アリ、父ハ戸主ナルモ無所得ノ者タリ、子ハ年々一千円ノ所得アルモ被戸主ナルニ依リ戸主ノ名義ニ依テ納税スレドモ、其実全ク子ノ所得ニシテ子ハ間接ニ納税シ居ルガ為メ選挙権ヲ有セザル者、実際ニ於テ往々之有ルナリ
十二番(内田君) 五条ノ精神ハ会頭ノ説明ニ依テ了解シタリ、然ルニ本員ノ考フル所ニ依レバ、仮令其地区内ニ於テ営業セザルモ実際商業ヲ営ミ己レノ住居スル町村ニ所得税ヲ納ムル者ハ選挙権ヲ有スル事ニ改メタシ、例ヘハ甲地ニ住居ヲ占メ乙地ニ於テ商業ヲ営ミ其商業ノ所得ニ依テ住居地ニ所得税ヲ納ムル者ハ、五条ノ権利ヲ与ヘタキ考ヘナリ、故ニ「会議所ノ地区内ニ住居シ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル」云々ト修正スルノ意見ヲ提出ス
五番(村田君) 本員ハ第五条ハ改正案ノ儘ニテ解釈ヲ広クスル事ハ出来得ヘク考フ、所得税法ニモ調査委員ハ其郡区内ニ住居シ所得税ヲ納ムル者ニ限ルトノ法文アリシト記臆ス、然ルニ所得税ヲ納ムル者トノ解釈ハ、地区ノ内外ヲ問ハズ戸主被戸主共ニ選被選権ヲ有スル事ニナリ居レリ、左レバ五条ノ所得税ヲ納ムル者トアルハ戸主ニ限ルト云フハ解釈ヲ狭クスルニ依ルモノニアラザルカ、其解釈ヲ広クセハ矢張リ前者ノ如ク被戸主ニモ選被選権ヲ有スルモノトノ解釈ハ出来得ヘシト考フ
十三番(浜岡君) 第一条第二項ヲシテ果シテ存在シ居ルモノト見レバ商事会社ノ支店・出張店ヨリハ経費ハ取ラザルノ御見込ナルヤ、又納税ハ所得税ダケニ止メアルヤ
委員(石川属) 此処ニハ徴収法ハ規定シアラザルナリ
十三番(浜岡君) 第七条ニ「所得税ニ代ユルニ其他ノ税ヲ以テシ」トアルガ、経費ダケハ出サシメ選被選権ハ有セシメズトノ事ナルヤ
会頭(若宮商工局長) 現行法ニテハ単ニ所得税ヲ以テ会員資格ノ基本ト定メアレドモ、所得税ニ代ユルニ他ノ税ヲ以テスルノ法ヲ開キ置クハ実際ニ於テ大ニ便利ヲ得ルコトニテ、第七条ハ北海道ノ為メニ設クルト云フモ不可ナキナリ、既ニ各員モ知ラルヽ如ク北海道ハ今日迄所得税法ヲ一部分丈ケニノミ施行スル土地ナレバ、現行会議所条例ヲ施行シ難キ事実ナルニ依リ本条修正ノ必要ヲ感シタル位ナレバ、決シテ他ニ濫用スル事ハ為サヽルナリ、又経費賦課ノ方法ニ付テハ所得税ニ限ルト云フニハアラズ、各地方適宜賦課法ヲ設ケ農商務大臣ノ認可ヲ経バ可ナリ
十三番(浜岡君) 左スレバ第一条第四項ノ商事会社ノ支店・出張店ニ大ナルモノアリトスルモ夫レニ賦課スルコトハ出来ザルヤ
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会頭(若宮商工局長) 畢竟選挙権ヲ有スル者ニ賦課スルモノナレバ、支店・出張店ヨリ徴収スル訳ニハ行カザルナリ
二十八番(藤本君) 第五条ハ重大ナル事項ナレバ本条コソ委員ヲ設クルノ必要アリト思惟ス
会頭(若宮商工局長) 本条ハ敢テ錯雑シタル条項ト云フニモアラザレバ委員ヲ設クルニハ及バザルベシ、十分此席ニ於テ意見ヲ述ベラレテ可ナリ
五番(村田君) 先ニ本員ガ解釈シタル事ハ如何認メラルヽヤ
会頭(若宮商工局長) 解釈トシテハ其当ヲ得ザルモノト考フ、第五条ニ於テハ赤ハ即チ赤ナリ白ハ即チ白ナリトノ解釈ニテ、広義狭義ノ解釈トハ是等ノ場合ヲ云フモノニアラザルナリ
五番(村田君) 所得税法ト法文ハ同一ナルガ如何
会頭(若宮商工局長) 法文ハ同一ナリトスルモ本条例ハ本条例ノ趣旨ニ依テ解釈ヲ下スベシ、若シ五番ノ希望ヲ達セントナラバ八番ヨリ戸主・被戸主ヲ問ハザル事ニセントノ説モアリ、又十二番ヨリ「営業ヲ為シ」ノ文字ヲ除キ区域ヲ広クシタシトノ説モ出タレバ、夫等ヲ参酌シテ一説ヲ提出セラレテ可ナリ
五番(村田君) 同ジク我邦ノ法律ニシテ一方ニ行ハレ一方ニ行ハレザルノ理ナカルベシ
二十九番(渋沢君) 本会ニ於テハ所得税法ノ討論会ハ大ニ迷惑ヲ感ズル所ナリ
十四番(橋本君) 第五条ニ付テハ修正意見ヲ抱持スルモノナリ、然ルニ十二番説ト殆ンド同一ニシテ少シノ相違ナレバ次第ニ依テハ譲合スルモ差支ナシ、現行法並ニ改正案ニ就イテ見ルモ、会議所地区内ニ於テ営業ヲ為ス者モ其住居地会議所地区外ナレバ権利ヲ有セズ随テ義務ヲ負ハザルナリ、又其地区内ニ住居シ所得税ヲ納ムル者ト雖モ、其地区内ニ於テ営業セザル者ハ、是亦同様権利義務ヲ有セザレバ、仮令商業ヲ営ミ所得税ヲ納メ商業上ノ知識ヲ有スル者アリトスルモ之ヲ脱漏スルノ不便ヲ感スルナリ、其実例ヲ挙グレバ津商業会議所地区内ニ住居シ所得税ヲ最モ多ク納ムル者アリ、此者ハ東京ニ本店ヲ開キ其他所々ニ支店ヲ設ケ盛ンニ商業ヲ営ミ居ルニ、地区外ニ於テ商業ヲ為ス者ナリトテ、権利義務ヲ有セシメサルハ不都合ナリ、是レ等ハ仮令其地区内ニ於テ商業ヲ営マザルモ其者ハ何者ゾト云ハヾ、農業者ニアラズ又工業者ニアラズ、其商業者タル事ハ何人モ容易ニ認メ得ベシ、是等ハ十分区域ヲ拡メ其等商業者ニモ選被選権ヲ有セシメタキ精神ナリ、此点ニ於テハ十二番説ト背馳スル所ナキガ如シ、今一説ハ所得税ノ外国税ヲ加ヘント欲スルナリ、現行法ニ依レバ農商務大臣ノ認可ヲ得バ国税ヲ加フルコトヲ得ル様規定シアレドモ「所得税又ハ国税ヲ納メル商業者」ト云フコトニ改メ、或場合ニハ取除ケ法ヲ設クル様致シタシ、此二説ヲ提出ス、本員ハ甚ダ訥弁ニシテ十分意ヲ述尽ス能ハサレバ或ハ各員ニ於テモ趣旨ノ存スル所ヲ解シ得ラレザリシナラン、然レドモ此点ニ付テハ宜シク熟考ノ上賛成アランコトヲ希望ス
十番(浮田君) 十四番ニ質問シタシ、商業者ニシテ田畑・地所ヲ所有
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スル者アリトセバ、夫等ハ所得税ノ外他ノ国税ヲモ加フルトノ趣旨ナルヤ
十四番(橋本君) 一例ヲ挙グレバ千円ノ所得税ヲ納メル者アリ、其中五分ハ売薬ノ所得ニシテ其他ハ田畑・地所ノ所得ナリトスルモ所得税額ニ対スル経費ノ負担ヲ免カレザルナリ、又商業ニ付テノ所得ハ十分一ニモ当ラズ其他ハ総テ田畑・地所ノ所得ナルニモ拘ハラズ矢張リ負担ヲ免カレザル者モアレバ、国税ヲ加ヘルコトニスル方区域ヲ広クスル事ト考フ
十番(浮田君) 十四番ノ説ハ甚ダ了解ニ苦シムナリ、所得税ヲ納ムル者トカ又ハ国税ヲ納ムル者トカ、何レカ一方ニセザレバ二重ニ経費ヲ課スルノ恐レアルヘシ
十四番(橋本君) 其処等ノ点ニ至ツテハ又取除ケノ方法モアラント考フ
十五番(奥君) 本員ハ十二番ニ同感ナリ、此修正案ハ其地区内ニ住居シ、其地区内ニ於テ営業ヲナシ、其地区内ニ於テ所得税ヲ納ムルトノ三条件ヲ備ヘザレバ会員ノ選挙権ヲ得ラレザル事ヲ、現行法ヨリ一層明ニセラレタルモノト思考ス、然ルニ鹿児島地方ニ於テモ会議所地区内ノ商業者ニシテ、其地ニ住居シ、其営業ハ之ヲ沖縄ニ於テシ或ハ大島ニ於テシ其他ノ郡村ニ出張シテ為ス者アリ、而シテ其所得税ハ本籍地即チ鹿児島ノ住居地ニ納税シ居レリ、果シテ諮問案ノ如ク三条件ヲ具備スル者ニ限ル事ニナレバ、是等ハ何レノ土地ニ於テモ其権利義務ヲ有セサルベシ、鹿児島地方ニ在ツテ其住居地ニ於テハ一ノ商業ヲ営ム事ナク、沖縄ナリ大島ナリ其他大坂等ニ於テ商業ヲ為シ、現住地ニ於テハ所得税ダケヲ納ムル者其数少ナカラズ、是等ハ何トカ法文ヲ改正シテ此権利義務ヲ有セシメタキ精神ナリ
五番(村田君) 本員モ修正説ヲ提出ス、第五条ハ「会議所地区内ノ商業者ニシテ所得税ヲ納入スル者、及ヒ第一条第二項ノ合資会社並ニ取引所ハ其会議所会員ノ選被選権ヲ有ス」ト修正スルノ精神ナリ、其理由ハ所得税ヲ納ムル上ニ於テ直接或ハ間接ト云フガ如キハ本員ノ好マザル所ナルガ故ニ斯ク修正ス、又同法文ニ付テハ大蔵省ト農商務省ト同一ノ解釈ニナランコトヲ希望シ置ク
二十九番(渋沢君) 修正案ハ現行法ト其意味ニ於テ聊カ異ナルナキモ法文ヲシテ判明ナラシメタルカ為メ却テ惑ヲ来シ、之ニ多少関係ヲ有スル各地ノ会員ハ大ニ疑義ヲ抱キ居ラルヽモノヽ如シ、諮問案ニテハ、其地区内ニ住居シ、其地区内ニ於テ営業シ、其地区内ニ於テ所得税ヲ納ムル者ニシテ初メテ会員選挙ノ資格ヲ有スルモノタル事ヲ明記セリ、現行法ニテハ果シテ斯ク斯クノ条件ヲ有スト明示スル所ナシ、是レ其異ナル所ナリ、若シ「営業ヲ為シ」トノ事ヲ除カハ差支フル所アルヤ、東京ニ住居スル者ガ川越ニテ商業ヲ営ミ其所得税ハ深川区役所ニ納ムル者アラバ、夫レニ資格ヲ与フルトスルモ別ニ差支ナキニアラズヤ
委員(江口属) 斯ク会議所会員ハ其土地ニ住居シ其地ニ於テ営業ヲ為ス者トシタルハ、其地方ノ商業ニ慣レタル者ヲ会員トスルノ趣旨ニ出タルナリ
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二十九番(渋沢君) 其点ニ付テハ同意ナルモ、其地ニ住スル者ナレバ其地ノ事ヲ少シモ知ラザル者トテハアラザルベシ
二番(羽柴君) 追々各員ノ意見モ拝聴シタルガ、畢竟選挙区ヲ拡張スルトノコト主眼タルモノヽ如シ、本員ハ第五条ニ付テハ「其地ニ於テ」ノ五文字ヲ削除スルノ精神ナリ、渋沢君ハ営業ヲ為シノ文字ヲ削除スルトノ説モアリシカ、商業会議所ノ事ナレバ其会議所地区内ニ住居シ営業ヲ為ス者ガ選挙権ヲ有スルコトハ至当ナリト考フ、故ニ何レノ土地ニ於テモ所得税ヲ納メル者ニハ此権利ヲ与フルコトニセバ可ナラン
番外(京都商業会議所書記長片桐君) 第五条ハ現行法ト其趣旨ニ於テハ少シモ異ナル所ナク、唯法文ヲ明瞭ナラシメタルニ過キズ、然リ法文ハ明確トナリシニ相違ナキモ少シク重複ノ嫌ヒナキカヲ疑フ、何トナレバ「営業ヲ為シ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者」トアルモ、単ニ「商業ヲ為シ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル者」トセバ十分其意味ハ貫徹スル事ト考フ
会頭(若宮商工局長) 折角ノ御注意ナルモ第一条ニ於テ商業者ナルモノヲ明示シ居レバ、単ニ商業ヲ為ス者ト書カバ第一条第一項ノ各号ニ出ス業務ヲ為ス者タルコト判然セザルベシ、夫等ハ文字上ノ修正ナレバ第二段ノ事トシテ可ナリ
番外(京都商業会議所書記長片桐君) 今一ツ参考迄ニ述置キタキ事ハ「住居シ」トノ文字アルガ為メニ、現行法ト同意味ナルニ拘ハラズ大ニ疑義ヲ惹起ス事ト考フ
十四番(橋本君) 本員ハ先ニ国税ヲ加フルトノ説ヲ提出シタルモ、前説ヲ取消シ十二番説ニ賛成ス
五番(村田君) 本員ハ修正説ヲ改メタシ「地区内ノ商業者ニシテ所得税ヲ納メル者」トスル方明瞭ナリト考フ
会頭(若宮商工局長) 唯今ノ所ニテハ修正説四説ニ分レ居レリ、即チ八番ノ提出ニ係ル被戸主ト雖モ戸主ノ名義ヲ以テ所得税ヲ納ムル商業者ハ選挙権ヲ与フベシトノ説、十二番ノ「営業ヲ為シ」ノ文字ヲ除キ何レノ地ニ於テ営業スルモ差支ナキ事ニ為サントノ説、五番ノ「会議所地区内ノ商業者ニシテ所得税ヲ納ムル者」トスル説、及二番ノ「其地ニ於テ」ヲ削除スルトノ説是レナリ、而シテ二番・五番八番説ハ一ノ賛成者無キニ依リ議場ノ問題トナラズ、独リ十二番説ハ賛成者アルヲ以テ問題トナリ居レリ
四十二番(宮田君) 本員ハ五番ノ修正説ヲ賛成ス、五番説ノ如ク修正シ置クノ必要ハ追々感ジ来ルナラント考フ、例ヘバ東京市外ニ住居シ東京市内ニ開店営業スル如キ者モ之ナキニアラザルヘシ、然モ斯ノ如キ者ハ商業社会ニ有力ナル人物ナルベケレバ五番説ノ如クナランコトヲ望ム
二番(羽柴君) 本員ガ先ニ提出シタル説ト五番説トハ趣旨ニ於テ異ナル所ナキカ如シ、故ニ前説ヲ取消シ五番説ヲ賛成ス、然ラハ其地区内ニ於テ営業ヲ為シ居レバ何レノ地ニ住居スルモ何レノ地ニ納税スルモ差支ナキ事ニナリ、大ニ区域ヲ広クスル事ト考フ
委員(江口属) 果シテ説ノ如ク成ラバ不都合ヲ惹起ス事ト考フ、例ヘ
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ハ大丸ナル呉服商アリテ伊勢ニ住居ヲ定メ東京ニ於テ開店営業スルトセバ、東京ニ於テ会員ノ資格ヲ有スルコトヽナラン
五番(村田君) 「会議所地区内ノ営業者」トアレハ其地区内ニテ商業ヲ為ストノ意味ナルニ依リ、何レニ住居スルモ差支ナシ
十三番(浜岡君) 種々ノ説モ出タレドモ、他ノ地区ニ於テ納税スルモ其地区内ニ於テ営業スル者ハ会員資格ヲ与ヘントノ説モ、亦其地区内ニ所得税ヲ納ムル者ハ他ニ住居スル者ト雖モ之ニ資格ヲ与ヘントノ説モ或一・二ノ高名ナル商業者ハ網羅シ得ルカ知ラサレドモ、実際之ヲ行フニ当ツテ頗ル困難ニシテ、名簿ヲ作ルニモ余程錯雑ヲ感ズル事ト考フ、僅ニ千戸二千戸ヲ有スル小市街地ハイザ知ラズ、東京・大坂・京都ノ如キハ実際行ヒ得ザルベケレバ、本員ハ矢張リ原案ヲ可トス
十番(浮田君) 唯今十三番ヨリ述ベラレタル如ク大坂ニ於テモ到底行ハレザル事ト考フ、故ニ原案ヲ可トス
十四番(橋本君) 唯今十三番ヨリ取調ベ出来ザル様述ベラレシガ、所得税ヲ納ムル者ハ仮令大市街ニセヨ其人名ハ判然シ居レバ決シテ困難ヲ感スルコトハ無カルベシ、好シ之有リトスルモ為メニ商業者ノ権利ヲ殺グガ如キハ抑モ商業会議所ヲ設ケタルノ趣旨ニモ背戻スルコトヽ考フ
二十四番(益田君) 各員ノ参考迄ニ一言シ置ク、此事ニ就テハ東京ニ於テモ度々起リタル問題ニシテ、現ニ東京ニ住居シ横浜ニ於テ営業ヲ為ス者往々之有リ、故ニ如何ニモシテ彼等ヲ会員ニ引入ント種々考案ヲ廻ラシタル事アルモ其目的ヲ達セズ、又東京ニ於テ営業ヲ為シ品川其他ノ地区外ニ住居スル者モ同シク会員資格中ニ入レタキ考ヘナリシモ是亦其目的ヲ達シタル事ナシ、何トカ是等ノ者ヲ網羅スルノ方法ナキカハ種々考究シタル事ナレドモ今日ニ至ル迄他ニ明案モ出サルナリ、唯今五番其他ヨリ主張セラルヽ所ハ即チ上ニ述ベタル事項ニシテ、一ハ其地区ニ於テ営業スル者ハ何レノ地ニ住居スルモ会員資格ヲ与ヘント云ヒ一ハ営業ハ何地ニ於テスルモ所得税ヲ納ムル者ハ其地区内ノ会員トナサント云ヒ、一人ノ者ヲ双方ヨリ引張凧ニスル訳ニテ到底其目的ハ達シ得ラレザルコトト考フ、又十三番ヨリ述ベラルヽ如ク殊更ニ目立タル一・二ノ人ハ所得納税者名簿等ニ就キ其者ハ果シテ商業者ナルヤ否ヤノ取調ベモ附カン、然レドモ多数ノ人ヲ調ブルニ至テハ到底為シ得ザル事ト考フ、又当方ニ開店営業スル者アリトスルモ其住居地他ニ在リトセバ果シテ所得税ヲ納ムル者ナルヤ否ヤモ分明セザルベシ、斯ノ如ク実際ノ取扱上大ニ困難ヲ生ズルニ依リ已ムナク諮問案ノ如クスルノ外他ニ方法ナキモノト思惟ス、故ニ各員ニ於テモ今日ノ所ニテハ諮問案ヲ以テ満足セラルヽ外ナカラン
十五番(奥君) 第五条ニ付テハ両説ニ分レ、十二番説ハ其地区内ニ於テ所得税ヲ納ムル者ハ之ニ会員選挙権ヲ与フルト云フニ在リ、本員ハ即チ十二番説ヲ賛成スル者ナルガ決シテ十三番・二十四番ノ述ヘラルヽ如ク調査上錯雑スルノ憂ナキモノト考フ、何トナレバ大坂ニ住居スル者ニシテ長崎或ハ鹿児島ニ於テ商業ヲ為ス者アリトセハ其
 - 第23巻 p.229 -ページ画像 
所得税ハ大坂区役所ニ納税スヘシ、然ラバ該区役所ニ就キ商業家ニシテ所得納税者ハ何某ナルヤヲ調査セバ直チニ其人名ナリ納税額ナリヲ知ル事ヲ得ン、故ニ其点ニ就テハ憂慮スルニ足ラズト信ズ、又五番説ノ如ク所得税ハ何レノ地ニ納ルモ何レノ地ニ住居スルモ其地区内ニ於テ商業ヲ為ス者ハ之ニ会員選挙権ヲ与ヘントノ事ハ、或ハ衝突スルナキカノ疑モアレハ之ニ賛成ヲ表スル事能ハサレトモ、十二番説ノ如クセハ少シモ差支ナシト信ス、抑モ今日ノ事態ヲ考フレバ鉄道其他交通ノ便ハ日ニ開ケ来リタルヲ以テ、住居地ノ一小部分ニ跼蹐シテ商業ヲ為スヲ以テ満足セズ追々他地方ニ向ツテ各々其業ヲ拡張セントスルノ傾アリ、故ニ現行法ノ如ク三条件ヲ具備スル者ニアラサレハ会員タルノ資格ヲ有セザルモノトセバ大ニ其区域狭隘ナリトノ憾アレバ、本条ニ付テハ今少シ区域ヲ拡張スル事ニナランコトヲ希望ス
十七番(法橋君) 本員ハ原案ヲ賛成ス、此事ニ付テハ今朝以来種々ノ討論ノ末最早ヤ論旨モ稍々確定シタル状況ナレバ、採決アランコトヲ望ム
五番(村田君) 本員ハ先ニ提出シタル修正説ヲ改メタシ「会議所地区内ノ商業者ニシテ其地区内ニ於テ所得税ヲ納ムル者」トスル方可ナリト思考ス
十二番(内田君) 総テノ法案ノ如キモ先ツ東京ノ事ヲ以テ標準トセラルヽノ傾アルニ依リ地方ニ取テ往々衝突スル事ナキニアラズ、東京ニ差支アリトスルモ地方ニ於テハ差支サル事モアレバ、其処等ノ点ニ付テハ篤ト熟考アラン事ヲ望ム
会頭(若宮商工局長) 最早ヤ論旨モ尽タリト認ムレバ採決スヘシ、然ルニ其前一言シ置キタキ事アリ、本条ニ付テハ会頭ハ容易ニ十二番説ノ如キ動議ニハ同意ヲ表スル事能ハズ、元来是等ノ法律ハ一地区ノ利害ニ付テ論スヘキモノニアラズ全体ノ利害如何ニ付テ考査セザルベカラザルモノナレバ、決シテ東京・大坂等一・二大市街ノ利害ニ偏重シテ制定スルカ如キ事ナク、又一地方ノ利害ヲ以テ大体ノ利害ヲ破棄スル如キ事ハ為サヾルナリ、而シテ此事ニ付テハ調査上ノ難易如何ニ最モ重キヲ置カザルヘカラズ、固ヨリ会員資格ノ有無ニ付普通紛議ヲ生スル場合ハ暫ク之ヲ措キ、我商業上ノ発達ヲ謀ルニ於テ或ハ民事上ナリ或ハ商業上ニ付キ資格ノ争議紛擾ハ万々ナカラシメン事ヲ希望ス、然ルニ十二番ノ修正説ノ如クセハ或ハ紛議ノ起因タランコトヲ恐ルヽナリ、従来現行法ヲ解釈シ来リタル所又文字ノ現ハス所ニ依リ、数年来現ニ本案ノ如ク施行シ来レリ、抑モ本案ノ趣旨タル、第一土地ノ商業ヲ発達セシムルヲ以テ目的トスルニ在リ、其目的ヲ達セントセバ会員ニ之ヲ求メサルベカラズ、其会員タル者ハ其地区内ニ住居シテ営業ヲ為シ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者タルノ条件ハ、商工業ノ公益ヲ謀ルニ就テハ必要欠クベカラザル要素ナリト考フ、地方ニ在テハ為メニ一時財源ヲ乏クシ或ハ不便ノ事アルヤハ知ラザレドモ本条ニ付テハ宜シク天下国家ノ上ニ着眼シ十分考案アランコトヲ希望ス、既ニ議論モ尽キタリト認ムルニ依リ決ヲ採ルヘシ、八番説・五番説・十二番説ハ各々賛成者アリタル
 - 第23巻 p.230 -ページ画像 
ニ依リ何レモ成立セリ、先ツ初メニ八番ノ説ニ就キ可否ヲ決スヘシ八番ノ戸主ニ於テ所得税ヲ納メ居レハ、其家ニ住居シ商業ヲ営ム者ハ被戸主ト雖モ、会員ノ選挙権ヲ与フル事ニスルトノ説ニ同意者ハ起立
  起立者  三名
会頭(若宮商工局長) 八番説ハ少数ナルニ依リ消滅ス、次ニ、五番ノ「地区内ノ商業者ニシテ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル者」云々トノ説ニ同意者ハ起立
  起立者  四名
会頭(若宮商工局長) 少数ナルニヨリ五番説モ消滅ス、次ニ、十二番ノ「営業ヲ為シ」ノ五字ヲ削除スル説ニ同意者ハ起立
  起立者  十七名
会頭(若宮商工局長) 十二番説モ過半数ニ充タザルニ依リ消滅ス、原案ニ同意者ハ起立
  起立者  十八名
会頭(若宮商工局長) 出席総員四十二名、何レモ過半数ニ充タサルヲ以テ消滅ス
十七番(法橋君) 第五条ハ何レモ過半数ニ充タサレバ自ラ消滅ニ帰スル事トナリタリ、然ルニ本条ハ此儘消滅ニ帰スヘキ条項ニアラザレバ、委員ニ附托シテ協議セシムル事ニシタシ、其委員ハ五名トシ、会頭ニ於テ指名アラン事ヲ望ム
   (続々十七番説ヲ賛成スル者アリ)
会頭(若宮商工局長) 各員ニ於テ異議ナシト認ムルニ依リ委員ニ附托スルコトヽシ、該委員ハ後刻指名致スヘシ、引続キ第六条ヲ議ニ附スヘシ
   (石川属朗読)
 第六条 三ケ年以上継続シテ会員ノ選挙権ヲ有スル年齢三十歳以上ノ男子、及ヒ第一条第二項ノ商事会社及取引所ハ会員ノ被選権ヲ有ス、但商事会社及ヒ取引所ヲ代表スヘキ者ハ法律上其代理権ヲ有スル年齢満三十歳以上ノ男子一人ニ限ル
十七番(法橋君) 「三ケ年以上継続」云々トアルハ何ソ理由アル事ナルヤ
委員(江口属) 凡ソ三ケ年間商業上ノ経験アル者ナラバ会議所会員タルノ被選権ヲ与フルモ差支ナカラント云フノミニテ、他ニ深キ理由アルニアラザルナリ
会頭(若宮商工局長) 成ルベク被選権ハ重ク為シ置ク方可ナリト信ス且ツ聯合会ノ議決モ三ケ年トナリ居レハ彼是参酌シテ三ケ年ト定メタルナリ
十七番(法橋君) 本員ハ三ケ年トアルヲ二ケ年ト修正シタシ、彼ノ取引所仲買人ノ如キハ重大ナル責任ヲ負フニモ拘ハラズ二年以上商業ニ従事シタル者ハ免許ヲ得ラルヽ事ニ成リ居リ、又諸官省ノ請負人ノ如キモ二年以上ノ制限ニ成リ居リ、今日ノ有様ニテハ二年以上商業上ノ経験アル者ハ熟練者ト公認セラレ居ルナリ、本員ハ彼ノ仲買人ニシテ二年以上ノ経験者ニ免許セラルヽナラハ、会議所会員ハ少
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シク脳髄アル者ナレバ一年若クハ一年半ノ経験ニテ十分ナリト考フル位ナレハ、殊更三ケ年ノ長日月ヲ要スルノ必要ナシト思惟ス、他ニ深キ理由モアラハ敢ヘテ自説ヲ主張スルニハ非ザレドモ、単ニ執務ノ熟練ヲ期スルモノハ二ケ年以上ナレハ官民共ニ公認スルト云フカ如キ実例アルノミナラス、三ケ年トセハ幾分有益ノ商業者ヲ得ルノ途ヲ塞ク嫌ヒアリテ却テ社会ノ不利益ナリト信ズ
六番(岡田君) 本員モ十七番説ヲ賛成ス、県会議員被選権ハ二十五歳以上ナリシト記臆ス、本条ニ於テハ年齢三十歳以上トノ制限モアレバ、二ケ年以上ノ経験ナラバ十分ナリト考フ
十七番(法橋君) 本員ハ独リ此事ニ付テ二年以上ヲ主張スルモノニアラズ、現ニ取引所ノ仲買人ノ如キモ二ケ年以上トノ制限ニテ政府ニ於テモ施行セラレ居ルナリ、最早ヤ斯ノ如キ実例アル事ハ各員ニ於テモ十分了知セラルヽノミナラズ、大ニ権利ノ消長ニ関係アルコトナレバ、二ケ年ニ短縮スル事ニ賛成アランコトヲ望ム
三十七番(鈴木岩吉君) 本員ハ原案ヲ賛成ス、先年商業会議所聯合会ノ際ニモ三年トノ事ニ議決シ、又事柄モ重キコトナレバ、三年ハ相当ナリト考フ
十三番(浜岡君) 委員ニ伺ヒタシ「其代理権ヲ有スル云々」トハ如何ナル者ヲ云フヤ
委員(江口属) 代理権ヲ有スル者トハ取締役ノ如キモノヲ云フ
十三番(浜岡君) 取締役ノ如キハ時々変更スルモノナルガ、本日ハ甲ノ取締、明日ハ乙ノ取締ガ出席スルモ差支ナキヤ
会頭(若宮商工局長) 若シ左ル事アルモ差支ナシ、被選挙者ハ即チ法人ナレバ法理上然ラサルベカラズ
八番(水田君) 第六条中「三ケ年以上」云々トアルハ二ケ年以上トスル十七番説ヲ賛成ス、又末文ニ「年齢三十歳以上ノ男子」トアルヲ二十五歳以上ト修正シタシ、一己人ノ商業者ナレバ三十歳以上ニアラサレバ経験モ少ナキ事ト考フルモ最早ヤ取引所又ハ商事会社ニ在テ法律上代理権ヲ有スル如キ者ハ、仮令年齢三十歳ニ達セザルモ其会社ニテ信用アル以上ハ一己商業者ノ三十歳以上トハ其性質ヲ異ニスルモノト考フ、故ニ二十五歳ト修正シタシ
十二番(内田君) 会社ハ創立後三ケ年ヲ経過セザルモ可ナルヤ
会頭(若宮商工局長) 然リ
三十八番(鈴木惣兵衛君) 本員ハ原案ヲ賛成ス、今一ツ述ベ置キタキ事アリ、少シク施行細則ニ渉ル如キ嫌ヒナキニアラザレドモ、会社ノ代表者ヲ出スモノハ選挙名簿ヲ定ムル以前其会社ハ代理者ヲ選定シテ出サシムル如キ事ハ出来ザルヤ
会頭(若宮商工局長) 唯今三十八番ヨリ後段ニ述ヘラレタルコトハ新説ニシテ或ハ良キコトナルカトモ思ハル、細則又ハ其他ノ参考ニスヘシ
十三番(浜岡君) 唯今ノ三十八番説ハ、第五条若クハ六条ニ但書ヲ加ヘ「但商事会社及取引所ノ被選挙権ヲ有スル者ハ予メ其代理者ヲ届出ベシ」ト云フ如キ事ニナサバ如何
委員(江口属) 法人ノ代表者ヲ定メサルベカラザル事ニナルヤ
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十三番(浜岡君) 然リ、法人ノ代表者ヲ定メ置クナリ、例ヘバ何会社ヨリ法人トシテ社長ヲ選挙シ、其者ハ会員多数ノ信認ニ依テ会頭ニ推薦セラレタリトセンカ、翌日会頭ニ事故アリトテ他ノ代理者出来リ直チニ会頭席ニ着クコトアラバ随分不都合ナル感ヲナスベシ
委員(江口属) 其希望ハ定款ニ依テ随分達シ得ベケレドモ、代リトシテ来ル者ヲ郤ケル事ハ出来ザルベシ
二十九番(渋沢君) 予メ代理者ヲ定ムル事ニナレバ大ニ好都合ナルベキモ、到底法文ニ依テ定メル訳ニハ行カザルベシ、出来得ベクンバ施行細則中ニ規定シ置カバ可ナラン
十三番(浜岡君) 到底法律ニテ定ムル事ハ能ハザルベキモ施行細則中ニハ規定シ得ベキカ
会頭(若宮商工局長) 施行細則中ニモ法規トシテハ恐ラク規定シ得ザルベシ
十三番(浜岡君) 出来得ベクンバ、予メ知ルコトヲ得バ其人ニ依テ或ハ選挙シ或ハ他ノ人ヲ選出スル等取捨スル事モ得ベケレバ、大ニ便利ヲ得ルコトト考フ
十番(浮田君) 大坂ナドニ於テハ既ニ従来左様慣行シ来レリ、故ニ実際ニ於テハ、決シテ其辺ノ事マデ法律ヲ以テ規定シ置クノ必要ナキナリ
十五番(奥君) 委員ニ質問シタシ、初当法人タル会社・銀行ヲ指シテ選挙シタル時其頭取ナリ若クハ取締役当選シタリトセンカ、然ルニ是等ハ任期アルモノナレバ満期辞職シタル場合ハ先ニ銀行若クハ会社タル法人ヲ選挙シタル結果トシテ、後任ノ頭取又ハ取締役ガ代ツテ出ル事ニナルヤ
委員(江口属) 従来トモ左様成リ居レリ
十五番(奥君) 然ラバ人ヲ選挙スルト云フ側ヨリ云ハヾ、銀行ナリ会社ナリニ一任スル訳ニナルナリ
二十四番(益田君) 仮令感情ハ如何アリトモ一法人トシテ選挙シタル以上ハ致シ方ナシ
二十九番(渋沢君) 文字上ノ事ナルガ、第一条第二項ノ商事会社トアルハ第二項ノ修正通リニ訂正アランコトヲ望ミ置ク、最早ヤ論旨モ尽キタル様ナレバ採決アランコトヲ望ム
十七番(法橋君) 採決前今一言致シ置タシ、本員ガ先ニ提出シタル二年ニ短縮スルトノ説ハ他ニ実例モ多々アル事ニテ、強チ曩ニ聯合会ニ於テ三年ト決議シタルニ依リ今日ニ於テモ矢張リ三年ナラザルヘカラズトノ理由モアラサルベシ、畢竟是等ノ事ハ広ク社会ニ行ハルル様ニナシ置ザルベカラズ、若シ他ニ著シキ理由アルカ又ハ弊害ヲ及ボス事アラバイザ知ラズ、単ニ鄭重ニスルトノ趣旨ニ過ズトナラバ二年トスルモ別ニ差支ナシト信ズ、其処等ハ各員ニ於テモ大ニ熟慮スル所アリテ賛成アラン事ヲ望ム
会頭(若宮商工局長) 最早ヤ採決スベシ、八番ノ二十五歳以上ノ男子トスル説及ヒ三十番ノ但書ヲ挿入スル説ハ賛成者ナキニ依リ成立セズ、独リ十七番説成立シ居ルニ依リ十七番説ニ就テ決ヲ採ルベシ
 十七番説ニ同意ノ諸君ハ起立
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  起立者  十三名
会頭(若宮商工局長) 少数ナルヲ以テ十七番説ハ消滅ス、依テ第六条ハ原案ニ決ス、先ニ本席ニ委托セラレタル委員ヲ指名スヘシ
                五番   村田六之助君
                十二番  内田政治君
                十七番  法橋善作君
                二十四番 益田克徳君
                農商務属 美濃部俊吉君
会頭(若宮商工局長) 便宜ヲ計リ本省属官一名加ヘ置タリ、願クハ委員ニ於テ速カニ調査ノ上明朝議場ニ報道セラルヽノ運ヒニ至ランコトヲ望ム、本日ハ是ニテ散会スヘシ
  正午十二時退散
○七月五日午前八時三十分開議 出席総員四十二名
会頭(若宮商工局長) 是ヨリ議事ヲ開クヘシ
二十四番(益田君) 第五条修正案特別委員会ノ結果ヲ報道致スベシ
   (左案ハ朗読ヲ経ザルモ参照ノ為メ玆ニ載録ス)
  修正案
 第五条 会議所ノ地区内ニ於テ営業ヲ為シ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者、及ヒ地区内ニ於テ営業ヲ為ス第一条第二項ノ合資会社株式会社並取引所ハ其会議所会員ノ選挙権ヲ有ス
 理由
  本籍地ニ於テ営業ヲ為シ而シテ他ノ地ニ住居ヲ占メ其所得税ヲ本籍地ニ納入スル商業者ヲモ網羅セントスルニ在リ
 昨日委員会ニ於テ調査議決シタル修正案ハ既ニ各員ニ配布シ置キタル如ク、大体ニ於テハ原案ノ趣旨ニ差異アルナシ、即チ営業地区ト所得税ヲ納ムル地区ト異ナル場合ハ其営業地区ニ於テ若クハ所得税ヲ納ムル地区ニ於テ選挙権ヲ有セズ、要スルニ其地区ニ於テ営業ヲ為シ所得税ヲ納ムル二条件ヲ備フル者ニアラザレバ選挙権ヲ有スル事ヲ得ザルコトニ議決セリ、其理由タル営業地ニ於テ選挙権ヲ有セシムル事ニセバ他ノ地区ニ向ツテ所得税ノ証明ヲ求メザルベカラザルノ手数ヲ要シ、又所得税ヲ納ムル地区ニ於テ選挙権ヲ有セシムル事ニセバ他ノ地区ニ向テ営業ノ証明・営業廃止等ノ事ニ至ル迄一々照会応答ヲ求メザルベカラサルノ煩アリ、而シテ其結果ハ僅ニ二三ノ人ヲ網中ニ引入レ得ルニ過キズシテ其利益ハ以テ繁雑ノ害ヲ償フニ足ラザルモノト信ズルニ依リ、斯ク原案ノ趣旨ヲ維持スル事トハナシヌ、然ルニ其地区内ニ於テ営業ヲナシ又所得税ヲ納ムルノ二条件ヲ備フル者ニ至テハ選挙権ヲ有セシムルモ差支ナシ、又原案ノ住居ナル文字ハ其意味甚タ広濶曖昧ナル上ニ、或地区内ニ於テ営業ヲ為スモ其地区外ニ住居スル者ハ即チ選挙権ヲ有セサル事トナルナリ既ニ其地区内ニ於テ営業ヲ為シ且ツ所得税ヲ納ムル者ハ選挙権ヲ有スル事ニスルモ敢テ差支ナケレバ「住居シ」ノ文字ヲ削リ、修正案ノ如ク議決セリ、委員ニ於テハ各員ノ賛成ヲ得テ修正案ノ成立センコトヲ望ム
十四番(橋本君) 唯今委員長ヨリ議場ニ報道セラレタル所ト理由書ニ
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掲グル所トハ意味相違スルガ如シ、即チ理由書ニハ「本籍地ニ於テ営業ヲ為シ而シテ他ノ地ニ住居ヲ占メ其所得税ヲ本籍地ニ納入スル商業者ヲモ網羅セントス」トアルモ、委員長ハ其地ニ所得税ヲ納ムルモノヽ様述ヘラレタルハ如何
二十四番(益田君) 他ノ地トハ営業地ヲ云フニアラズ、営業地以外ノ地ニ住居ヲ占メ所得税ハ本籍地即チ営業地ニ納ムル者トノ趣旨ナリ
十四番(橋本君) 所得税法ニハ住居地ニ於テ納税ストノ事ニナリ居レリ
二十四番(益田君) 即チ住居ノ文字其意味曖昧ナリト述ベタル所以ニシテ、修正案ハ営業シ居ル地ニ於テ税ヲ納ムトノ趣旨ナリ
十四番(橋本君) 然レバ所得税法ノ住居ト此住居トハ其意味ヲ異ニスルモノナルヤ
二十四番(益田君) 所得税法ノ住居トハ果シテ何レヲ云フヤ知ラザレドモ、所得税ヲ納メ其地ニ於テ営業ヲ為ス者ハ選挙権ヲ有ストノ意味ナリ
十四番(橋本君) 所得税法ハ知ラズト云ハルレドモ本条ハ所得税ニ関係ヲ有スルモノナレバ、果シテ違フヤ否ヤ取調アランコトヲ望ム
二十四番(益田君) 所得税法ト関係ヲ持タシメ住居云々トノ事ヲ推究メサルモ可ナリ、故ニ初メニ於テ原案ト大体ノ趣旨異ナラザル旨ヲ述ベ置キタリ
十四番(橋本君) 或場合ニ於テハ住居地ト営業地ト異ナル事アリトノ見込ナルヤ
二十四番(益田君) 厳然法理上ヨリ論究セバ所得税ヲ納ムル処ヲ以テ住居地ト為スコトアルヤモ知ラズ、然ルニ住居ノ文字アルガ故ニ彼是惑ヲ生ズルニ依リ之ヲ削除スルモ差支ナシトシ、斯ク修正シタル所以ナリ
十四番(橋本君) 本員ハ未タ了解セザル所アレバ、改メテ会頭ニ伺ヒタシ
委員(美濃部属) 如何ニモ所得税法ニモ住居云々トノ事アリ、然ルニ住居ナル文字ハ其意味漠然タルモノニテ之ヲ普通ノ意味ニ解釈セバ足ヲ止メ居ル地ヲ指スモノナラン、又法律上ヨリ解釈ヲ下セバ仮令其者自身ハ何レノ地ニ住居スルモ本籍地ヲ以テ住居ノ地ト為スコトモアラン、夫等ハ一ニ法律上ノ解釈如何ニ依ルモノナレバ、好シ所得税法ノ住居地トハ果シテ本籍地ヲ指スモノナリトスルモ他ノ法律ニ於テハ之ヲ他ノ場合ニ用ヰル事モアラン、然レドモ原案ニ住居ノ文字アルハ全ク独立ノ意味ヲ附シ現ニ其地ニ足ヲ止メ居ル者トノ趣旨ナリシガ、委員会ニ於テハ現ニ其地ニ足ヲ止メ居ル者トノ事ハ不必要ニシテ、其地ニ於テ所得税ヲ納メ及ビ営業ヲ為ストノ二要素ヲ備フル者ハ之ニ選挙権ヲ与フルモ可ナリトノ趣旨ニテ斯ク修正シタル次第ナリ、故ニ本条例ノ住居トハ所得税法トハ全ク其関係ナキモノト了解アリタシ
会頭(若宮商工局長) 便宜ニ依リ委員長ノ報告ニ引続キ直チニ修正案ヲ議スル事ニスベシ
十五番(奥君) 本員ハ「地区内ニ於テ営業ヲ為シ」トアルヲ「地区内
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ノ商業者ニシテ其地ニ於テ云々」ト改メタシ
会頭(若宮商工局長) 十五番説ハ現行法ト同一ノ趣旨ナルヤ
十五番(奥君) 少シク違ヒアリ
会頭(若宮商工局長) 事実ニ於テ如何ナル違ヒアルヤ
十五番(奥君) 今日ノ所得納税者《(税脱)》ノ有様ヲ見ルニ、本籍地ニ於テハ公債証書・株券若クハ地所ヲ所有スルニ止メ、他府県ニ於テ商業ヲ営ミ、其所得《(税脱)》ハ本籍地ニ納ムル者地方ニ在テハ往々之アリ、若シ修正案ノ如ク「地区内ニ於テ営業ヲナシ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル」者ニ限ラバ是等ノ者ハ選挙権ヲ有セザル事ニナリ、大ニ人ヲ得ルノ区域ヲ狭クスルノミナラズ商業会議所会員其人ヲ減少シ眼前ニ困難ヲ惹起ス事ト考フ、本員ガ修正ヲ希望スル所ノモノハ、其地区内ノ商業者ナレバ、仮令現住所ハ何レニ在ルモ何レニ於テ営業ヲ為スモ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル者ハ選挙権ヲ有スル事ニセント云フニ在リ
会頭(若宮商工局長) 十五番ノ修正意見モアレドモ其修正ノ如クセバ現行法ト相異ノ点アルヲ見出サヾルナリ、現行条例発布以来第五条ニ就キ今日ニ至ル迄解釈シ来リタル所ハ、即チ其地ニ住居シテ営業ヲ為シ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル者ト認メ居レリ、此事ニ付テハ既ニ習慣アルノミナラズ之ヲ以テ適当ナル解釈ト識認シ居ル所ナリ、故ニ現行法ニ於テ「設立地ノ商業者」トアルヲ「地区内ノ営業者」ト修正スルモ意味ニ於テ異ナル所ナケレバ、十五番ノ意見ノ在ル所ハ文面ニ現ハレザル事ト考フ
十五番(奥君) 文面ハ如何ナルモ苦シカラサレドモ、其地区内ノ商業者ニシテ所得税ヲ納ムル者ハ何レノ地ニ於テ営業ヲ為スモ選挙権ヲ有スル事ニシタシ、猶ホ参考迄ニ述置タキ事ハ、抑モ本員ガ此希望ヲ有スル所以ノモノハ、若シ其地区内ニ於テ営業ヲ為ス者ニアラサレバ選挙権ヲ有セザル事ニセバ大ニ其区域ヲ縮少スルノ感アリ、殊ニ地方ニ於テハ是等ノ人ヲ網羅シ置クハ会議所ノ為メ最モ必要ナリト考フ
三十八番(鈴木惣兵衛君) 本員モ十五番説ヲ賛成ス、我名古屋地方ニ於テモ営業所ヲ他郡村ニ所有シ居ル者モアリテ、夫等商業者ガ資格ヲ有セザル事ハ甚ダ遺憾トスル所ナリ
二十八番(藤本君) 本員モ十五番ト同説ナリ、本員ハ修正案ノ「地区内ニ於テ営業ヲ為シ」トアルヲ「地区内ニ住居ヲ為シ」ト修正シタシ
三十七番(鈴木岩吉君) 本員モ十五番説ヲ賛成ス、若シ修正案ノ如クセバ何レノ会議所ニ於テモ、其会員タルノ資格ヲ有セザル者ノ多々生ズル事ト考フ、何トナレバ営業ノ都合ニ依テハ何レノ地ニ於テモ確定シタル営業所ナク、日本全国ハ云フモ更ナリ外国ニ迄渡航シテ商業ヲ為ス如キ者モ、会員タルノ資格ヲ有セザル如キ不都合ヲ生スルナリ
七番(高橋君) 本員モ十五番説ヲ賛成ス、文面ハ適当ニ修正セラレテ可ナリ、趣旨ニ於テハ全ク同感ヲ表スル所ナリ
十番(浮田君) 本員ハ原案ヲ賛成ス、十五番説ハ一応尤ノ様ナレドモ到底行ハレザルコトト考フ、何トナレバ十五番ハ鹿児島ヲ本籍地ト
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シ大坂其ノ他ニ寄留シ商業ヲ為ス者ヲモ鹿児島ニ於テ選挙権ヲ有セシメントノ希望ヲ抱カルヽナラン、然レトモ現ニ某氏ノ如キハ本籍ハ鹿児島ナルモ大坂ニ寄留シ所得税ヲ納メ居レバ大坂ニ於テ其資格ヲ有シ居レリ、十五番ハ夫等ノ者ヲモ我土地ニ於テ選挙権ヲ有セシメントノ趣ナルヘキモ、其地ニ於テ所得税ヲ納メ商業ヲ為ス者ハ其地区内ニ於テ資格ヲ有スル事ヲ得ルナリ
十五番(奥君) 十番ノ唯今ノ陳述ニ付テ一言シ置ク、本員ハ決シテ十番ノ言フガ如キ者ニ選挙権ヲ有セシメントノ希望ヨリ自説ヲ主張スルモノニアラズ、既ニ大坂ニ住居シ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル者ナレバ無論大坂ニ於テ選挙権ヲ有スベキモノナルモ、本籍地ハ鹿児島ニ在リテ現ニ鹿児島ニ住居シ、而シテ朝鮮ニ或ハ沖縄ニ或ハ大島等ニ開店シテ盛ンニ商業ヲ為ス者アリ、是等ノ人々ハ地方ニ在テハ商業社会ニ有力ナル者ト云フモ可ナリ、然ルニ其地ニ於テ営業ヲ為ス者トノ条項ニ当ラザルヲ以テ是等有力者ハ其資格ヲ有セズ、本員等ハ是等ノ人ニ依テ其土地ノ商業ノ繁盛ヲ謀ルニアラザレバ或ハ会議所ノ実効ヲ挙グル事能ハザルナキヲ憂フ、以上述フル如クナルヲ以テ、各員ニ於テモ地方ノ状況ヲ洞察アリテ、之ガ区域ヲ拡メ将来大ニ会議所ノ為メニ利ヲ得ル途ヲ開ク事ニ賛成アランコトヲ希望ス
会頭(若宮商工局長) 十五番ニ質問ス、其土地ニ於テ営業ヲ為サヽル者ニ法律上選挙権ヲ有セシメタルトスルモ、果シテ其者ハ会員ニ列スル事ヲ得ヘキカ
十五番(奥君) 他ハ敢テ知ラザレドモ、我地方ノ如キハ営業主即チ本人ハ本籍地ニ常住シ居リテ其土地ノ米穀物品ヲ本店ニ輸送シ、使用人ヲシテ商事ヲ営ム者モ少ナキニアラザルナリ
会頭(若宮商工局長) 唯今ノ御話ノ如ク鹿児島ニ於テ米穀ヲ買集メ之ヲ輸送スル者ハ、即チ鹿児島ニ於テ商業ヲ営ム者ニアラズヤ
十五番(奥君) 鹿児島ニ於テ買集メ之ヲ他ニ送ルモ、営業税ハ納メ居ラザルナリ
会頭(若宮商工局長) 営業税ハ知ラザレドモ鹿児島ニ於テ米穀物品ヲ買入ルヽハ即チ売買交換ノ目的ヲ以テスルモノニ相違ナケレバ、会議所会員ノ選被選権ヲ有セシムルニハ疑ヒモナキ商業者ニアラズヤ
十五番(奥君) 鹿児島ニ於テ米穀ヲ買入レ琉球ノ店舗ニ送リ、営業ハ琉球ニ於テ為スナリ
会頭(若宮商工局長) 十五番ハ単ニ形式ニ拘泥スルモノヽ如シ、仮令ヒ琉球・大坂等ニ於テ販売スルニモセヨ、鹿児島ニテ購入セバ、其働ノ上ナリ又目的ノ上ヨリ見レバ売買交換ノ為メニスルモノト認メ得ルニアラズヤ
十五番(奥君) 鹿児島ニ於テ買入レルニ相違ナキモ、其帳簿ニハ或ハ沖縄ノ仕入帳、或ハ京都ノ仕入帳、或ハ大坂ノ仕入帳トシテ其儘各地ノ販売店ニ送リ売買スルニ依リ、営業税ハ店舗所在地ニ納メ所得税ハ鹿児島ニ納メ居ルノ事実ナリ、又各員モ既ニ知ラルヽ如ク県下ノ如キハ米穀ノ産地ハ市街地ヨリ五里乃至十里山間ニ偏有シ居ルヲ以テ、或ハ都城ナリ或ハ加治木ナリ其他山間ノ小市街ニ出張シテ之ヲ買入レ、其買入レハ仲買ニ就テ之ヲ買ヒ或ハ買ハシムル等ノ有様
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ニテ、郡村ニ於テ之ヲ為スガ故ニ、県庁ニ就テ取調フルモ決シテ営業者ノ台帳ニ記載シアラサルナリ
会頭(若宮商工局長) 其ハ地方税徴収ノ問題ニシテ実際ハ如何ニ取扱ヒ居ルカハ知ラザレドモ、仮令百万石ノ米穀ヲ購入スルモ自己ノ使用ニ供スルモノナレバ営業ニアラサルモ、一石ノ米穀ヲ買入ルモ売買交換ノ目的ヲ以テセバ営業者タルニ相違ナシ
二十八番(藤本君) 今ノ如キ例ハ他ニ之レ無キニアラズ、彼ノ江州商人ノ如キハ所得税ハ本籍地ニ納メ居ルモ住居地ニ於テハ決シテ営業ハ為サヾルナリ、又出商人ト称ヘ甲地ニ於テ物品ヲ仕入レ乙地ニ於テ之ヲ販売シ、而シテ所得税ハ住居地ニ之ヲ納ムル如キ者モ之レ有ルナリ
会頭(若宮商工局長) 十五番ノ如キハ其地ニ於テ商業ヲ為シタル者ト云フニ相違ナキヤ
十五番(奥君) 本員ガ述フル所ノモノハ然ラズ
会頭(若宮商工局長) 左レバ一ノ動議ト認ム
三十八番(鈴木惣兵衛君) 本員ハ二十八番説ト同趣旨ナリ
会頭(若宮商工局長) 然レバ十五番説ニ関セズ二十八番・三十八番ニ質問ス、其土地ニ於テ凡ソ商法第四条各部類ノ営業ニ相当セズ、又第五条ノ三号ノ商取引ニ関係スル動作ハ少シモ為サヽル者ニシテ会員タルノ資格ヲ有スル事アリトスルモ、夫等ハ普通ノ道理ニ於テ果シテ其土地ノ商工業ヲ謀ル事ヲ為シ得ヘキヤ否ヤ、又其者モ之ヲ受ケルヤ否ヤ、尚ホ然ク其土地ニ於テ少シノ商業ヲ為サヾル者ニシテ其土地ノ商工業ノ発達ヲ信実ニ謀リ呉レベキヤ否ヤ、右数点ニ就キ承ハリタシ
二十八番(藤本君) 本員ハ其目的ハ達シ得ルコトヽ考フ、尤モ今日以後ハ世ノ発達ト共ニ、他ニ出張シテ商業ヲ営ム者モ多々アルベケレバ、多数ノ中ニハ或ハ我土地ノ商工業ニ対シ冷淡ナル者無シトハ断言シ難シ、然レドモ従来ノ経歴ヨリ見レバ何レモ我住居地ニ於テハ十分手ヲ伸シ商業ヲ営ムノ地歩ナキニ依リ己ムナク他ニ向ツテ商業ヲ試ムルモ、畢竟我土地ヲ利セントノ精神ニ外ナシ、何ゾ必ズシモ我土地ニ於テ盛ンニ商業ヲ営ムコトヲ得ベクシテ然スルモノナランヤ、東京・大坂ノ如キ大市街ニ在テハ盛ンニ商業ヲ為スコトヲ得ン又種々ノ営業ヲ為スモ相当ノ利益ヲ収ムル事ヲ得ン、然レドモ少シク衰頽ヲ来シタル如キ地方ニ在テハ如何ナル商業ヲ為サント欲スルモ需用限リアルヲ如何セン、又製造工業ヲ起サント欲スルモ人口僅少ニシテ職工其人ヲ得ザル如キ困難アルヲ如何セン、故ニ今日ニ於テハ己ムナク適当ノ地ヲ選ミ他ニ出張シテ営業スルノ有様ナリ、又其地ニ於テ一ノ営業ヲ為サヽル者ニシテ果シテ会議所会員タルノ義務ヲ尽シ得ルカトノ疑問モアリシガ、殊ニ汽車ノ便アル土地ノ如キハ昼間ハ営業地ニ行クコトアルモ夜間ハ会議所ノ為メニ尽ス事モ十分出来得ルナリ、故ニ本員ハ単ニ其地ニ住スル事及ヒ所得税ヲ納ムル者トノ二条件ノミニスル方、其区域ヲ広クシ、便利ヲ得ル事ト信ズ、果シテ此修正案ノ如クセハ夫等ノ者ハ一条件ヲ欠グガ為メニ何レノ地ニ於テモ権利ヲ得ラレザル事トナリ、一方ヨリ之ヲ云ヘバ会
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議所ノ義務モ分担セザル事トナレバ、矢張リ前説ヲ可ナリト信ズ
十二番(内田君) 質問致シ置タシ、第一条第三項ニ掲ゲタル会社役員ハ何レモ選挙権ヲ有スル事ナルガ、夫等モ第五条ニ依テ其地区内ニ住居スル者ニ限ルヤ
会頭(若宮商工局長) 無論然リ
十四番(橋本君) 商業会議所地区外ニ於テ商業ヲ営ム者ハ仮令其地区内ニ住居スル者ト雖モ其地ノ商業会議所会員ノ資格ヲ有セズ、其地ノ商業上ノ盛衰発達ニ関シ意見ヲ述フルコト能ハザルニ至テハ、広ク衆議ヲ集メ商業上ノ利害ヲ攷究スル趣旨ニモ背馳スル事ト思惟ス抑モ人情ノ常トシテ其土地ニ住居スル者ハ其土地ノ繁盛ヲ希フ事ハ争フベカラザル事実ナリトス、然リ其土地ノ繁盛ヲ希フ以上ハ其土地ノ為メニ十分ノ働ヲナスヤ必セリ、而シテ是等ノ者ハ仮令他ノ地区ニ於テ営業ヲ為スモ会議所設立地ニ常住シ会議所ノ会議ニ参列スル事ヲ得ルモノトセバ、之ニ選挙資格ヲ与フルモ聊カ差支アルヲ見ザルナリ、唯ニ差支ナキノミナラズ一方ニ於テハ異分子ノ集合体ヲ形造リ、殊ニ地方会議所ナドニ於テハ是等ノ他地方ニ出テ盛ニ商業ヲ為シ十分商業上ノ知識経験ニ富ミタル人物ヲ会員中ニ加フルコトハ最モ必要ナリト考フ、本員ハ広ク会員ヲ集メル事ヲ希望スルモノナルガ、此修正案ノ如クセバ地区外ニ於テ営業スル者ハ資格ヲ有セザルナリ、又其理由トシテ調査繁雑ナリト述ベラレシガ固ヨリ調査ヲ為スハ之ヲ為サヾルノ簡易ナルニ如カズト雖モ、本員ハ決シテ繁雑ニ堪ヘザルモノトハ考ヘザルナリ、何トナレバ営業税ハ各々之ヲ届出ルモノナレバ其取調ハ容易ナラン、若シ是等ノ調査ヲ以テ至難ナリトシ貴重ナル権力ヲ得ル所ノ人ヲ退ルニ至テハ即チ商業会議所ノ発達ヲ妨グルモノト考フ、故ニ法文ハ如何ニ修正スルモ其精神ニ至テハ、其土地ニ於テ営業ヲ為サヽルモ所得税ヲ納ムル所ノ商業者ハ選被選権ヲ有スル様ナランコトヲ希望ス
委員(美濃部属) 追々修正案ニ対シ種々反対ヲ試ミラルヽガ、十四番説ノ如キハ既ニ昨日モ委員会ニ於テ少数者ノ意見トシテ会場ニ現ハレタルモ少数ニシテ其説ハ否議セラレタリ、玆ニ各員参考ノ為メ其理由ヲ述ベン、抑モ商業会議所ノ目的トスル所ハ如何ナル点ニ在ルカト云フニ、其会員ハ会議所地区内ノ商工業ノ利益ヲ代表セシムルニ在リ、凡ソ其土地ニ住居スル者ハ其土地ニ利害ヲ有スルハ勿論ナレドモ、其利害ハ即チ直接商工業ニ関スル利害ニアラザルヲ以テ其土地ノ商工業ヲ代表セシムルニハ必ズ其地ニ於テ商業ヲ営ム者ナラザルベカラズ、第二ハ調査ノ困難是ナリ、此所得税調査ト何地ニ於テ如何ナル営業ヲ為スカヲ調査スルニハ或一・二著名ナル商業者ハ容易ニ之ヲ知ル事ヲ得ン、然レドモ法律ヲ以テ権利義務ヲ定ムルニ至テハ一々精確ニ其調査ヲ為サヽルベカラズ、果シテ其調査ヲ為ストセバ如何ナル方法ニ依テ之ヲ為シ得ルカ、殆ント想像シ能ハザルノ煩雑ヲ来サンコトヲ恐ル、苟モ所得納税者ト云ハヽ三百円以上所得アル者ニ就キ一々之ヲ調査セザルベカラズ、又其者カ果シテ何地ニ於テ商業ヲ為スヤヲ調査スルニ当ツテハ一々営業地ノ官庁ニ照会セザルベカラズ、左レバ其繁雑思フニ余リアリト云フニ在リ、然ル
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ニ少数論者ノ唯一ノ反対理由トスル所ハ、所得税届出書ニ其財源ヲ記入シアレバ夫レニ就テ商業上ノ収利ナルヤ否ヤヲ調ベ、其営業地ニ照会応答シテ証明ヲ得バ明カニ知ルコトヲ得ベシト言フニ在リト雖モ、所得税ハ秘密ヲ保ツベキモノナレバ決シテ官庁以外ニ之ヲ漏スモノニアラズ、故ニ夫等ノ請求ヲ為スモ官庁ニ於テ応ゼザレバ、何地ニ於テ如何ナル営業ヲ為シ、其所得ハ果シテ商業上ノ収利ナルヤ否ヤモ到底知ルベキモノニアラズトノ二点ヲ以テ否議シタルナリ
十五番(奥君) 唯今委員ヨリ縷々陳述セラレタルガ、其趣旨ニ依レバ委員会ニテハ会議所会員ハ其土地商工業ノ発達ヲ謀ルベキモノナレバ、其土地ニ於テ商業ヲ為サヽル者ハ以テ其地商工業ノ利害ヲ代表スルニ足ラザルモノト認メタルモノヽ如シ、如何ニモ皮想上《(相)》ヨリ之ヲ見レバ或ハ左ル感情ヲ惹起スベシ、然レドモ仮令其土地ニ於テ商業ヲ営マズトスルモ、其者ニシテ商業者ナリセバ其土地ノ商工業ノ有様ハ自ラ之ヲ知ル事ヲ得ベシ、若シ委員ノ説ノ如クセバ、米穀商ニ関スル利害ハ米穀商人ニアラサレバ知ルモノニアラズ、呉服商ノ利害ハ酒屋ハ之ヲ知ルモノニアラズト極論セザルベカラザルニ至ラン、然レドモ実際ニ於テハ決シテ左ル憂ナキノミナラズ、是等商業者ヲ加フルモ商業全体ノ利害ニ付聊カ幣害アルヲ見出サヽルナリ、次ニ調査ノ点ニ付テハ殆ンド其途ナキガ如ク述ベラレタルモ、先ニ本員ヨリ述ベタル如ク其調査ハ易々タルノミ、又所得税ハ秘密ヲ守ルモノナレバ云々トノ説明アリタルモ、本員等ハ其秘密トハ決シテ夫等ノ事ヲ云フモノニアラズト信ズ、既ニ官庁ニ在テハ其営業所ナリ納税額等モ分リ居レバ、今日ノ如ク法律ヲ以テ制定スル所ナクバイザ知ラズ、之ヲ一ノ法律トシテ世ニ公ニスル以上ハ必ラス其請求ニ応シテ調査ノ便ヲ与フヘケレバ、其点ニ於テハ決シテ憂フルニ足ラザルコトト考フ、委員会ニシテ果シテ右二点ヲ理由トシ修正案ノ如ク議決セラレタルモノトセバ、本員等ハ飽迄自説ノ不可ナキヲ信ズルナリ
十七番(法橋君) 十五番ハ少シク誤解セラレタルモノヽ如シ、抑モ商業会議所ハ国家ノ費用ヲ以テ之ヲ設立シタルモノニアラズ、其土地商工業者ガ利益ヲ得ルガ為メニ設立シタルモノナレバ、其経費モ其土地商工業者ガ之ヲ負担シ居ルニアラズヤ、左レバ商業会議所ナルモノハ其土地ノ商工業ノ発達ヲ謀ルヲ以テ本来ノ目的トスルモノタルヤ明ナリ、或国ニ於テハ国家ノ費用又ハ府県税等ヲ以テ之ヲ設立シ補助スル所アリト雖モ、我国ノ如キハ専ラ其土地ノ商業者ニテ之ガ経費ヲ負担スルモノナレバ、飽迄モ其土地商業ノ発達ヲ謀ルニ於テ便宜ノ方法ヲ取ラザルベカラズ、唯今委員ヨリ陳述セラレタル所モ其趣旨ニ外ナラズト考フ、如何ニモ他地方ニ出張シテ商業ヲ営ム如キ者ハ一般商業上ノ知識経験ハ或ハ之有ラン、然レドモ其土地商業上ノ知識経験ニ至テハ、恐ラク之無シト云フモ不可ナカルベシ、米穀商ノ利害ハ当業者ニアラザレバ知ルベカラズ、呉服屋・酒屋亦然リト云フガ如キハ極端論モ甚シキモノニシテ、法律ヲ制定スルニ当テハ夫等ノ議論ヲ弄スベキモノニアラズ、要スルニ其土地ニ於テ営業ヲ為シ其土地ニ於テ所得税ヲ納ムルトノ条件ハ、以テ其主眼タ
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ル事ヲ考ヘラレンコトヲ望ム
四十二番(宮田君) 本員ハ十五番説ヲ賛成ス、先刻委員ヨリ委員会ニ於テ此説ヲ採用セザリシ理由ヲ述ベラレタレバ其趣旨ハ了解シタルモ、本員ハ之ト反対ニシテ住居ハ会議所地区内ニアラズトスルモ其地区内ニ於テ営業ヲ為ス者ハ選被選権ヲ有セシムルノ精神ナリ、仮令其土地ニ住居セザルモ其土地ニ於テ営業ヲ為ス以上ハ其土地商工業ノ盛衰如何ハ現在未来ニ最モ注目シ居ル所ナリ、故ニ其者ニ対シ此権利ヲ与フルハ必要ナリト考フ、地方ニ於テハ居宅ハ会議所地区外ニ在ルモ其地区内ニ店舗ヲ開キ商業ヲ営ム者往々之有リ、殊ニ東京地方ニ在テハ東京市中ニ店舗ヲ有シ盛ンニ商業ヲ営ムモ居宅ハ接近郡村幽雅閑静ノ地ニ有スル者モ多々アルベシ、是等ノ人ハ会議所会員トシテハ最モ適当ナル人物ナリト考フ、本修正案ハ委員長ノ報告ノ如ク原案ノ趣旨ニ大差ナキモノニシテ唯々住居地ノ文字ヲ削除シタルニ過キズ、而シテ其理由タルヤ即チ理由書ニ掲クル如ク「本籍地ニ於テ営業ヲナシ而シテ他ノ地ニ住居ヲ占メ其所得税ヲ本籍地ニ納入スル商業者云々」トアリ、然ルニ本員ハ所得税ハ必ラズ本籍地ニ之ヲ納ムルモノニアラズシテ住居地ニ納ムル者ト信ズ、左レバ原案ノ趣旨ニ異ナラザルノミナラズ原案ノ方却テ判然シテ惑ヒ無シト信ズルニ依リ、此点ハ原案ニ復センコトヲ希望ス
二十八番(藤本君) 本員ハ修正案ノ如クセバ大ニ其区域ヲ狭クスル事ト考フ、何トナレバ三府ノ如キ大市街地ニ在テハ其会議所地区内ノ商業者ニシテ十分商業上ノ知識経験ヲ有スル者モアラン、然レドモ地方ニ在テハ他府県ニ店舗ヲ開キ商業ヲ為ス如キ者ハ、単ニ我土地ヲ守リ掌大ノ商業ニ汲々トシテ一方ノ商事ヲノミ見聞シタル者ニ比シ遥カニ優ル所アリト考フ、故ニ夫等ノ者ヲシテ会議所会員タラシメ、一ハ他ニ於テ得タル所ノ知識経験ヲ我土地ノ商業上ニ適用シ、一ハ其土地ニ於テ得タル所ノ知識経験ヲ以テシ互ニ論議講究スル所アラバ、所謂知識ノ交換ヲ得テ其土地商工業ノ発達ニ大ニ利スル所アルヲ信ズルナリ
会頭(若宮商工局長) 二十八番ニ参考ノ為メ一言シ置クベシ、唯今述ヘラレタル知識交換ノ点ニ至テハ本席ニ於テモ大ニ同意ヲ表スル所ナリ、然レドモ必スシモ夫等ノ者ニ会員資格ヲ与ヘザルトスルモ会員五分ノ一以内ニ於テ特別会員ヲ置クノ規定モアレバ、夫等有効ノ人物ヲ登用スルノ途ナキニアラザルナリ
二十八番(藤本君) 三府商業会議所特別会員ハ或ハ熱心会議所ノ為メニ尽ス者モアラン、然レドモ本員等ガ考フル所ニ依レバ起立ノ数ニ加ハルノ権利ヲ有セザル特別会員ニシテ果シテ熱心ニ尽力スル者有ルカヲ疑フ、商業会議所会員ニ推挙セラルレバコソ責任ヲ負フト共ニ初メテ熱心其事ニ当ルベシ、是或ハ人情ノ然ラシムル所ト云ハンカ、故ニ本員ハ特別会員ハ或ハ之ヲ置クノ必要ナシトノ感ナキニアラサルナリ
十五番(奥君) 本員ニ於テモ二十八番ト同様ノ感情ヲ抱キ居レリ、抑モ其地方商業ノ発達ヲ謀ルニ当テハ其土地ニ住居シ其土地ニ於テ商業ヲ営ム者ヲ以テ組織スルノ勝レル事ハ固ヨリ信スル所ナレドモ、
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商業会議所ノ区域ハ現行法ニ拠ルモ其市町村ノ区域ニ依ルヲ以テ正当ナリトス、或場合ニ於テハ他市町村ト聯合シテ一地区トナスヲ得レドモ、現ニ今日ノ有様ニ就テ見ルモ正条ニ依テ設立スルモノ居多ナリトス、然ルニ一市街ノ商業ノ発達ヲ企図スルニハ単ニ其市街ノ事ヲノミ知ラバ以テ足レリトスルカト云ハヾ、決シテ然ラザルヲ知ル、何トナレバ其市街ニ於テ販売交換スル物品ノ原産地ハ多クハ他郡村ナリトス、然ラバ原産地ニ於ケル技能ノ優劣・品質ノ粗悪・人情ノ如何ニ至ル迄広ク其事ヲ研究シテ、而シテ後其市街ノ商業発達ヲ謀ルニアラザレバ以テ十分ナリト為スベカラズ、是レ本員ガ敢テ弁ヲ弄スルモノニアラズ、実際ニ於テ其然ルヲ信スルナリ、故ニ成ヘク各地ノ事情ニ通ジ一般商業上ノ智識経験ヲ有スル者ハ、其地ニ於テ所得税ヲ納メ其地ニ住スル商業者タル二要素ヲ具備スル以上ハ之ニ資格ヲ有セシムル事ハ将来ノ為メ大ニ利益ヲ得ルコトト考フ、若シ夫等ノ者ニ資格ヲ有セシムル事ニセバ如何ナル弊害アルヤト言フニ毫モ其害アルヲ見出サヽルナリ、又所得税ノ調査ニ付キ非常ニ困難ヲ感スル様委員ヨリ述ヘラレタレドモ、先刻十四番ヨリ述ベタル如ク所得納税者ノ人名・税額等ハ所轄官庁ニ就テ之ヲ調査スル時ハ容易ニ知ル事ヲ得ベシ、又委員ハ所得税ハ秘密ヲ要スルニ依リ他ニ漏スベキモノニアラズト述ベラレタレドモ、是亦容易ノ事ニシテ現ニ本員等ハ従来行ヒ来リタル所ナレバ決シテ憂慮スルニ足ラサルナリ
会頭(若宮商工局長) 各員ヨリ種々ノ意見ヲ述ベラレ、実地ノ状況ニ就テモ十分聴ク事ヲ得タリ、最早ヤ討論モ尽キタリト認ムルニ依リ決ヲ採ルベシ
十四番(橋本君) 採決前ニ今一応確メ置タシ、修正案ノ住居ト云フハ何ヲ以テ認ムルヤ
委員(美濃部属) 修正案ニハ住居ノ文字ナシ、併シ理由書ニ掲グル所ノモノハ現ニ足ヲ止メ居ル所ヲ云フノ精神ナリ
会頭(若宮商工局長) 最早ヤ採決スヘシ、本条例第五条ハ委員長ヨリ報告アリタル通リ「会議所ノ地区内ニ於テ営業ヲ為シ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者」云々トスル修正案ニ同意者ハ起立
  起立者  廿四名
会頭(若宮商工局長) 四十二名ニ対スル二十四名、即チ過半数ナルヲ以テ修正案ニ決ス、引続キ第七条ヲ議スルコトニスベシ
   (石川属朗読)
 第七条 第五条及ヒ第六条ノ規定中会員ノ選挙権及ヒ被選挙権ニ関スル財産上ノ資格ニ付テハ、農商務大臣ハ地方ノ状況ニ依リ特ニ所得税額及ヒ会社・取引所ノ資本額ヲ定ムルコトヲ得
  所得税法第二十九条但書ニ掲ケタル地方ニ在テハ農商務大臣ハ所得税ニ代ユルニ其他ノ税ヲ以テシ、且其税額ヲ定ムルコトヲ得
会頭(若宮商工局長) 本条ハ此回農商務大臣ガ各員ヲ招集シ玆ニ諮問会ヲ開カレタル骨子トモ云フヘキ条項ナルヲ以テ、其理由ノ大要ヲ述ブルコト必要ナリト思惟ス、抑モ現行条例ハ所得税ヲ以テ唯一ノ基本トスルニ依リ、所得税法ヲ全部施行セザル北海道ノ如キハ法律
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ニ依テ商業会議所ヲ設置スルコトヲ得サルガ故ニ主務省ニ於テモ大ニ遺憾トスル所ナリ、今其適切ナル一例ヲ挙ケンニ、先般最モ関係ヲ有スル商業会議所ヲ指定シ此回朝鮮事件ニ関シ其地方商工業ニ如何ナル影響ヲ及ホシタルカノ調査ヲ委託シタリ、故ニ東京外拾ケ所内外ノ会議所ニ於テハ、既ニ熱心其調査ニ着手シ居ラルヽコトト信ス、此事ニ付最モ取調ヲ要シタキ箇所ハ北海道中小樽・函館ナリトス、然ルニ北海道ニハ一ノ商業会議所アラサルヲ以テ已ムナク之ヲ道庁ニ委托シタリ、固ヨリ道庁ハ所轄官庁ナルヲ以テ十分夫等ノ調査ニ周到ナルハ信ジテ疑ハザル所ナレドモ、商業・工業ハ即チ実地ニ属スル事ナルヲ以テ、行政官吏ニ於テハ如何ニ熱心ニ精密ニ十分学識ヲ有スル士ガ之ヲ調査スルモ或ハ其局部ニ徹底セザル事モアラン、或ハ表面ニ現ハレザル事実ハ之ヲ漏脱スルノ憾ナキヲ保セズ、是レ商業会議所ナキガ為メナリトス、蓋シ北海道ニ於テモ商工会或ハ商法会抔ト名ケ私ニ設立シ公利公益ヲ目的トスル協会ハ或ハ之アラン、現ニ函館ノ如キハ商法会議所トモ名クベキモノアリ、然レドモ法律ニ依リテ設立シタル商業会議所ニアラサレバ十分調査ノ目的ヲ達シ難キ事情アルノミナラズ、農商務省ハ此函館ニ在ル私立ノモノニ向テ其調査ヲ委托スルコトモ出来ガタキモノナリ、故ニ北海道ニ於テモ之レヲ設立シ得ル様此条例ヲ改正セント欲スルナリ、是レ此回諮問案件中主眼トスル所ナレバ、各員ニ於テモ篤ク熟考ノ上賛成アラン事ヲ希望ス、尚ホ此回ハ是等ノ要件アルヲ以テ独リ会議所会員及ヒ会議所々在地府県官吏ニ止ラス、特ニ北海道庁ニ向テ官吏ノ参同ヲ促シ、道庁ヨリモ特ニ技師ヲ参同セシメタル所ナリ
委員(石川属) 御参考迄ニ所得税法第二十九条ヲ朗読スベシ
 所得税法
  第二十九条
 此税法ハ明治二十年七月一日ヨリ施行ス
  但北海道・沖縄県及東京府管轄小笠原島・伊豆七島ニ於テハ、官府ヨリ受クル俸給・手当金・年金及恩給金ノ外ハ当分ノ内之ヲ施行セス
二十九番(渋沢君) 第七条ノ精神ノ有ル所ハ十分了解シタリ、然ルニ第一項ニ「特ニ所得税額及ヒ会社・取引所ノ資本額ヲ定ムルコトヲ得」トアリ、又二項ノ末文ニモ「其税額ヲ定ムルコトヲ得」トアリテ、同一文例ナレバ強チ目障リト云フニハアラザレドモ、単ニ之ヲ考フレバ農商務大臣ハ会社・取引所ノ資本額ヲモ制限スルモノヽ様誤解セラルヽナリ、故ニ本条ハ「第五条及ヒ第六条ノ規定中会員ノ選挙権及ヒ被選挙権ニ付テハ、農商務大臣ハ地方ノ状況ニ依リ特ニ所得税額及ヒ会社・取引所ノ資本額ニ基キ財産上ノ資格ヲ定ムルコトヲ得」ト修正スルノ意見ナリ、斯ノ如ク修正セバ或ハ資本額ヲ制限スルカノ如キ誤解ナカラシムルニ庶幾カランカ
三十八番(鈴木惣兵衛君) 本員モ二十九番説ヲ賛成ス
委員(江口属) 第二項モ其趣旨ニテ修正スルノ精神ナルヤ
二十九番(渋沢君) 第二項モ左様致ス方宜敷コトト考フ
会頭(若宮商工局長) 何レ修正シタル箇所ハ字句ヲ正シ三読会前ニ印
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刷シテ各員ニ配布スル考ナレバ、本条モ二十九番説ノ趣旨ニ基キ文字ノ修正ハ委員ニ托シ置クベシ
三番(伊吹君) 「他ノ税ヲ以テ」云々トアルハ国税ヲ云フノ意味ナルヤ
会頭(若宮商工局長) 其点ニ付テハ三番ト宜シク協議ヲ遂ゲ而シテ後定ムルノ精神ナリ、故ニ本省ニ於テモ確定シタル意見アルニアラザレバ税則取調方ハ三番ニ依頼スルノ考ナリ、要スルニ原案ハ北海道ニ適用スル特例ヲ設クルモノナレバ、租税ノ種類ノ如キハ北海道ノ事情ヲ参酌シ追テ協議スルコトニスヘシ
三番(伊吹君) 税ノ種類ヲ確定セラルヽニ至テハ大ニ困難ヲ感スルコトト考フ、何トナレバ税ノ種類及税額確定シテ初メテ資格ノ有無判然スルモ、其種類ニ依テハ商業ヲ営マサル者迄資格ヲ得ル事ニナルヤ知ルベカラズ、何トカシテ商業者ハ総テ之ヲ網羅スルガ如キ税法ハナキカト種々之ガ調査ヲ為シタレドモ、或税ニ依ル時ハ殆ンド商業者ノ三分ノ二ハ脱漏スルモノアリ、或ハ五分ノ一モ網羅シ得サルモノアリ、殊ニ北海道ハ開拓使以来ノ税法ナレバ随テ不整理ヲ免レザルノミナラズ、其後三県分置以来ハ各々其適宜ニ従テ税法ヲ立タル有様ナレバ、果シテ何レノ税ト何レノ税トヲ合併セハ適当ナル資格ヲ有スル人ヲ挙グルコトヲ得ルカ、其点ニ至テ最モ困難ヲ感ジ居ル所ナリ
会頭(若宮商工局長) 決シテ或種類ノ税ニ限ルノ必要モナケレバ適宜二・三ノ税ヲ合スルモ妨ゲナシ、然ルニ到底他ノ税額ニ依テ資格ヲ定ムルコトヲ得ザレバ自ラ本項ハ消滅ニ帰スルモノトス、本条ニ就テハ他ニ異見ナキニ依リ直チニ原案ニ決シ引続キ第八条ニ移ルベシ
   (石川属朗読)
 第八条
  四 破産又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ未タ復権ヲ得ザル者
二十九番(渋沢君) 委員ニ質問シタシ「破産又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ云々」トアルハ第三項ノ「公権剥奪又ハ停止中ノ者」トアルニ包含シ居ラズトノ見解ナルヤ、本員ハ或ハ重複ニ渉ラザルカノ疑念ナキ能ハズ
委員(石川属) 三項トハ別格ノモノト認メ居ルナリ
十三番(浜岡君) 唯今委員ヨリ説明アリタレドモ、会社ニシテ破産若クハ分散シタルモノハ復権ノ途ナキニアラズヤ、本員ハ第三項中ニ含蓄シ居ルモノト思考ス
二十九番(渋沢君) 無論含蓄シ居ルニハアラザルカ、左レバ本項ヲ掲グルハ重複ナラン
十三番(浜岡君) 実際ハ「公権剥奪云々」ノ項ヨリ本項ヲ加ヘタキ精神ナレドモ、其区域ヲ狭クスルノ恐レアリ
委員(石川属) 現ニ取引所法其他ノ法律ニモ別ニ掲ゲアルナリ
十二番(内田君) 本員ガ記憶スル所ハ公権剥奪ト云ヘバ公権ノ全体ヲ剥奪スルモノニテ、破産又ハ家資分散ハ或一部ノ公権ヲ剥奪スルモノト考フ
十三番(浜岡君) 果シテ或一部分ノモノトスレバ公権剥奪ノ一項ニテ
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足レリ、破産・家資分散ハ無論其中ニ含蓄スルナリ
会頭(若宮商工局長) 本条ハ明日迄預リ置キ十分調査致サスコトニスヘシ、引続キ第十四条ヲ議スヘシ
   (石渡属朗読)
 第十四条 会議所ノ会議ハ第四条第七項ノ事件ニ係ル会議ハ公開スルコトヲ得ス
  前項ノ外農商務大臣ノ命令又ハ会議所ノ議決ヲ以テ公開ヲ禁スルコトヲ得
二十九番(渋沢君) 要スルニ公開ノ区域ヲ広クシタルモノナレバ聊カ異議ナシ
十番(浮田君)・三十七番(鈴木岩吉君) 異議ナキ旨ヲ述ブ
会頭(若宮商工局長) 別ニ異議ナキヲ以テ十四条ハ原案ニ決ス、是レニテ一応原案各条ヲ議了シタレバ第一条ニ移リ、同各号ニ就テ議スルコトニスヘシ
   (石川属朗読)
 第一条 此条例ニ商業者ト称スルハ左ニ掲グルモノヲ謂フ
  第一項 営業ノ目的ヲ以テ左ノ業務ヲ為ス者
   一 物品ノ交換・販売及賃貸ヲ目的トスル取引
   二 製造工業及ヒ手職業ニ係ル作業及ヒ取引
   三 取引所ノ取引
   四 人及ヒ物ノ運送ニ係ル作業及ヒ取引
   五 銀行営業
   六 倉庫寄託及ヒ其他ノ寄託ニ係ル作業及ヒ取引
   七 流通シ得ヘキ信用証券ノ発行及ヒ流通ニ係ル作業及ヒ取引
   八 両替・金銭貸附及質営業
   九 委托売買・仲立及ヒ代弁ノ営業
   十 保険営業
   十一 船舶ノ売買・賃貸・構造・修繕ニ係ル作業及ヒ取引
   十二 航漕ニ係ル作業及ヒ取引
   十三 土木建築ニ係ル作業及ヒ取引
   十四 受負業
会頭(若宮商工局長) 先ツ初メニ質問ヲ終リ、而シテ後討論スル事ニスベシ
二十八番(藤本君) 第七号ノ「流通シ得ヘキ信用証券ノ発行及ヒ流通ニ係ル作業及ヒ取引」トハ如何ナルモノト考ヘテ可ナルヤ
二十九番(渋沢君) 唯今実例ヲ引キテ説明スルコトハ出来ザルナリ、委員会ニ於テモ実ハ本員等ハ削除論者ナリシモ目下是等ノ業体ナシトテ将来果シテ起業者ナシトモ断定スヘカラズ、例ヘバ或人アリ、銀行ニ向テ当坐預ケ又ハ定期預ヲナシ、之ニ対シ手形ヲ発シテ流通スル方預ケ金ノ利子ト割引ノ利子ヲ比較シ利便ナル時ハ常ニ之ヲ行フ如キ者ナシト謂フベカラス、殊ニ商法ニモ列挙シアル条項ナレバ其儘存留シ置クヲ適当ナリト議決シタルナリ
二十八番(藤本君) 「金銭貸付云々」トアルガ何ニ依テ貸金ヲ見出ス積リナルヤ、本員ハ所得税明細書ニ依テ之ヲ調ブルノ外ナシト考フ
 - 第23巻 p.245 -ページ画像 
又原案ニハ「公ニ開キタル店舗云々」トアリシヲ委員会ニ於テ削除セラレタル所以ハ唯々夫等ニノミ止マラズ、尚ホ進ンデ細カキ所マデ及ボスノ精神ナリト考フルガ如何
二十九番(渋沢君) 本項ニ於テモ一時ハ「公告ヲ為シ」ノ文字ダケヲ削除スルヲ適当ナリトノ議論ニ傾キシガ、尚ホ審議ノ末、質営業ノ如キハ判然其営業ヲ認ムル事ヲ得、両替又ハ金銭貸付ノ如キモ営業的ニ之ヲ為ス以上ハ誰人モ認メ得ベキモノニテ、若シ之ニ制限ヲ置ク事ニセンカ取調上ニ於テハ便利ナルヤモ知ラザレドモ、其制限ハ法文ヲ以テ之ヲ規定スルノ必要ナカルベシ、或ハ制限無キガ為メ金貸業者ガ脱漏セザルヤトノ議論モアリシガ、是亦「公ニ開キタル店舗云々」ト明示シ置ク程ノ必要ナシト議決シタリ、或ハ細カキ所ノモノハ脱漏セザルカト云ハヾ、決シテ之無シト迄ハ委員会ニ於テ論究シタルニアラザルナリ
十四番(橋本君) 「航漕ニ係ル作業取引」トハ如何
二十九番(渋沢君) 本項モ委員会ニ於テ議論アリシ所ニシテ、第四ニ「人及ビ物ノ運送ニ係ル作業取引」トアリ、又第十一ニハ「船舶ノ売買云々」トノ事モアレバ「航漕ニ係ル作業取引」トノ事ハ削除スルモ可ナリトノ説モアリシガ、結局将来臘虎猟或ハ捕鯨等ノ漁業盛大トナリ船舶ヲ航漕スル如キ業体ノ起ラザルトモ限ラレサレバ、存置スル方可ナリト議決シタルナリ
十二番(内田君) 第一条ニ列記スル営業ヲ為ス所ノモノハ、仮令営業税ヲ納ムルト否トニ拘ハラズ衆目ノ見ル所ニ依テ商人タルコトヲ断定シ、本条掲載以外ノ営業ヲ為スモノハ無論脱漏者トスルトノ事ナリシガ、私カニ金貸業ヲ為ス者ハ脱漏者ト見做シ公ケニ為ス者ハ商業者ト見ルトノ趣旨ナルヤ
二十九番(渋沢君) 然リ
十二番(内田君) 然ラバ本人ニ於テ納税セザルヲ以テ商人ニアラズト拒ム時ハ如何スルヤ
二十九番(渋沢君) 其判断ハ何レノ点マデ行クヤハ、恐ラク会頭ニ於テモ又本会ニ於テモ明言ハ出来ザルコトヽ考フ
十五番(奥君) 東京地方ハ知ラザレドモ、地方ニ在テハ金銭貸附ヲ以テ公然営業スル者ナシ、従来ノ習慣トシテ或ハ官吏或ハ無職業ノ者ニテモ、少シク資産ヲ有スル者ハ他ニ貸附シテ利息ヲ受ケ居ルナリ仮令営業トシテ金銭貸附ヲ為サヾルモ苟モ利息ヲ受ケル以上ハ第一条ニ拠テ商業者ト認メテ可ナルヤ
二十九番(渋沢君) 本項ノ趣旨ハ、仮令営業ト為スト為サヽルトニ拘ハラズ、金銭ヲ貸附シテ利息ヲ受クル者ハ商業者ト見做シ居レリ
会頭(若宮商工局長) 委員長ノ説明ニ依テ十分了解セラルヽ事ト考フルモ念ノ為メ一言シ置クベシ、世計ノ為メニスル目的ニ出タルモノハ、如何ニ小資産ノ金貸ニシテ一年僅ニ壱円ノ外貸出サヽリシトスルモ本条ノ所謂商業者ト認ムヘキモノトス、又目的如何ニ依テハ仮令百万円ノ金ヲ貸附シ好シ利息ヲ受ケタリトスルモ、本条ニハ適合セザルモノト認メテ可ナリ
二十九番(渋沢君) 第一項ニ「営業ノ目的ヲ以テ云々」トアルニ依リ
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八号ハ営業ノ目的ヲ以テ金銭貸附ヲ為ス者ハ商業者ト認ムルノ精神ナリ
会頭(若宮商工局長) 「土木建築ニ係ル作業及取引」トアリ、土木ノ字ヲ加ヘラレタルハ如何ナル趣旨ナルヤ
二十九番(渋沢君) 差支サル限リハ商法ニ掲グル所ノ文字ヲ修正セザル考ヘナリシモ、単ニ建築トアリテハ道路改築・修繕等ハ此中ニ含蓄セザルモノトノ疑義無キヤモ計リ難ケレバ 従来ノ称呼ニ従ヒ土木建築ト修正シタルナリ
委員(美濃部属) 委員会ニ於テ第十一号中ヨリ「艤装及ヒ乗組」トノ事ヲ削除セラレタルガ、第七号ノ「流通スベキ信用証券ノ発行」云云ハ今日其業体ナキニモ拘ハラズ将来起ルヤモ知ラズトノ趣旨ニテ存置セラレタリトノ論理ヨリ推セバ、矢張リ存置シ置クヘキモノト考フ、其点ハ如何ナル理由ナリシヤ
二十九番(渋沢君) 艤装ハ将来起ルコトアリトスルモ、販売又ハ受負業ニ含ム故存スルノ要ナシトノ意ニテ削レリ
会頭(若宮商工局長) 「受負作業ノ引受」トアルヲ「受負業」ト修正セラレタルハ如何
二十九番(渋沢君) 趣旨ニ於テハ原案ト異ナルコトナシ、唯平易ニ解シ得ル様修正シタリト云フニ過キズ
会頭(若宮商工局長) 追々質問モアリタルガ之ヲ本議ニ附スルニ当リ本席ガ考案スル所ヲ吐露シ以テ各員ノ判断ニ訴ヘント欲スルモノアリ、抑モ第一条ニ対シ大体ニ付テ之ヲ区別セバ商法第四条ニ掲クル各作業及取引、並ニ第五条中ノ準取引ヨリ幾部分ヲ繰上ル事ニスベキカ否ヤ、第二ハ商法第四条ノ各部類ノ営業ニ止メ而シテ文字上幾分ノ修正ヲ加フル事ニスベキカ否ヤ、第五条中ヨリ繰上ル事ニセバ第五条準取引ハ全部之ヲ繰上ルカ又ハ一部之ヲ繰上クベキカ、此諸点ヲ議決シ、而シテ後細目ニ移ルヲ以テ順序ナリト考フ、今本席ニ於テ議事法トシテ希望スル所ヲ述ベンカ、商法第四条ノ各号ハ大体ニ於テハ全部之ヲ採リ次ニ第五条ノ準取引ヲ繰上ル度合ヲ定メタキ精神ナリ、之ニ付各員異議ナケレバ左様致スヘシ
二十九番(渋沢君) 然ラバ自然玆ニ列挙シタルモノヲ標準トシテ議スル事ニナルベシ、今会頭ヨリ述ベラレタル如ク単ニ商法ニ拠ルコトトセバ、商法ヲ誦ンゼザレバ何レヲ繰上ゲテ可ナルヤモ分ラザル事ト考フ
会頭(若宮商工局長) 然ラバ第一号ヨリ議スルコトニスベキカ
二十九番(渋沢君) 第一項「営業ノ目的ヲ以テ云々」トアルヨリ議セラレンコトヲ望ム
会頭(若宮商工局長) 然ラバ本議ニ取掛リ第一項ヲ議スヘシ
  第一項 営業ノ目的ヲ以テ左ノ業務ヲ為ス者
七番(高橋君) 第一項ニ「営業ノ目的ヲ以テ左ノ業務ヲ為ス者」トシ各業体ヲ例記シ置ケバ、若シ本項以外ノ商業アリトスルモ其ハ脱漏スルコトトナリ本員ノ大ニ遺憾トスル所ナレバ、本項列挙以外ノモノハ商法ノ規定ニ拠ルト云フ趣旨ニテ、但書ヲ加ヘタキ精神ナリ
十三番(浜岡君) 七番説ノ如キ但書ヲ附スル事ニセバ第一条中ニ各号
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ヲ列挙スルニ及ハザルモノト考フ
七番(高橋君) 然ラザレバ各号以外ノモノハ脱漏スルコトニナルベシ
会頭(若宮商工局長) 各員ニ相談シタキ事アリ、今玆ニ本席ガ心事ヲ開陳セン、抑モ「営業ノ目的ヲ以テ左ノ業務ヲ為ス者」トシ各号ヲ掲グル事ニ付テハ余ハ甚タ蹰躇スル所ナリ、斯ク列記法ニスル事トセンカ、如何ニ智識有リ如何ニ経験有ル者ト雖モ先ツ商法第四条及ヒ第五条ノ各号ヲ参酌補綴シ、以テ各業体ヲ選ブニアラザルヨリハ適切ナル項目ヲ案出スルコト恐ラク難カルヘシ、故ニ本席ニ於テ甚タ懸念ニ堪ヘザル一事ハ帝国ノ法律(未ダ実施セザルモ)タル商法第四条及ヒ第五条ノ各号ニ付テハ解釈上大ニ疑義アル所ニシテ、百人挙テ解釈ヲ同クスルモノニアラズ、元来商法第四条及第五条ノ如キモ独逸法ノ輸入ニシテ、随テ適宜ノ訳字ヲ当篏メタルモノト云フモ或ハ不可ナカラン、彼ノ作業ト云フガ如キ、取引ト云フガ如キ新熟字ハ我邦従来ノ称呼ト異ルカ故ニ、或ハ惑ヒ或ハ如何ナル事ヲ意味スルカノ疑義ナキ能ハズ、其解釈ニ付テハ或ハ商法正義アルアリ或ハ其他ノ解釈アリト雖モ、未タ全ク疑義ナキニ至ラズ、殊ニ専門家ニ於テモ大ニ判断ニ苦シムモノナシトセザルナリ、今我々ニ於テ随意其必要ニ従ヒ判然各業体ヲ列挙スルコトハ、固ヨリ良法ニハ相違ナキモ随テ種々ノ面倒ヲ惹起ス事ト考フ、何トナレバ商法ハ之ヲ実施スル迄ニハ尚ホ幾分ノ修正ヲ加フルヤ知ルベカラズ、否ナ多少ノ修正ハ必ラズ免カレサル事ト信ス、果シテ之ニ修正ヲ加ヘタリトセンカ是ニ至テ又条例改正ノ必要ヲ感ズルニ至ラン、夫レ法律ハ時ノ必要ニ随テ改廃スルハ勢ノ免レサルモノナレドモ、前ニモ述ベタル如ク其大体ヲ商法ニ基キ作為スルモノトセバ、寧ロ全ク商法ニ依遵スルヲ以テ其宜キヲ得ルモノト考フ、現行法亦決シテ侮ルベカラズ、其第一条ニ「商法第四条ニ掲ケタル商取引ノ各部類ニ属スル商人及作業人ヲ謂フ」ト掲クルガ如キハ或ハ法律トシテハ其宜キヲ得ルモノニアラザルナキカ故ニ、大体議ニ付キ各員ノ熟考ヲ請ヒ併セテ高見ノ在ル所ヲ聴カント欲スルナリ
十二番(内田君) 本員ハ当初ヨリ其考ヲ抱持シ居タリ、然ルニ単独法ニスルトノ説多数ヲ占メ既ニ委員ヲ選定シテ調査セシメタル事ナルガ、先ニ七番モ云ハルヽ如ク或ハ此各号以外ニ渉ル業体ナキカノ疑団アリ、故ニ商法ニ依遵スルコトトシ尚ホ但書ヲ附シテ漏脱ナカラシメント欲スルナリ、其文面ハ「土地ノ状況ニ依リ商ニ属スル営業ハ商ト見做スコトヲ得」ト為シ置カバ商人ノ有無ニ拘ハラズ何ノ県ニ於テモ適用スル事ヲ得ベシ、敢テ卑見ヲ述ベテ各員ノ判定ヲ請フ
会頭(若宮商工局長) 猶ホ一言補足シ置クベシ、本省ニ於テハ先年京都ニ於テ開カレタル会議所聯合会議決ノ趣旨ニ基キ一旦各号ヲ列挙スル事トシ発案シタルモ、本席ニ於テハ今尚ホ之ヲ遂行スルノ勇気甚ダ乏シキモノアリ、抑モ我邦ノ商業ハ実ハ近ク嘉永年間亜米利加ノ使節渡来シテヨリ始メテ二千又余年ノ夢ヲ破リ爾来今日ニ至レルモノナレバ、従来ノ経歴ヨリ見ルモ漸次文物ノ進歩ニ随ヒ艤装其他ノ新ラシキ営業モ行ハレ来ルヤ知ルベカラズ、固ヨリ是等ノ業体ハ外国ノ輸入タルニ相違ナキモ、世界商業ヲ輸入シタル今日ニ在テハ
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決シテ従来我邦ノ商習慣ニ之無シトシテ漫然看過スベキモノニアラズ、或ハ商業ノ沿革ナリ契約等ノ事ニ至テハ従来ノ商習慣ニ依ラザルベカラザルモ、商業ノ種類ニ就テハ仮令独逸ノ制ニ則ルモ又亜米利加ノ法ヲ採ルモ将タ英国ノ例ニ傚フモ敢テ差支ヲ生ゼサルナリ、果シテ然ラバ一般商業ヲ支配スル条例ノ如キモノニ至テハ、我々ガ今日日本ノ現状ヲ見テ此業ハ存在シ居ルヲ以テ玆ニ入レ置クヘシ、彼業ハ未タ出来居ラザレバ玆ニ省クベシトシ之ヲ取捨スルヨリ、西洋先進国ノ商法ニ準拠シテ製造シタル普通商法ニ準拠スル方適当ニハアラズヤト惟ヘリ、此意各員ニ於テモ参考アリタシ
四番(石塚君) 唯今会頭ヨリ述ベラレタル趣旨ハ十分了解スルコトヲ得タリ、然レドモ本員ガ考フル所ニ依レバ列記法ニ依ルヲ以テ可ナリト信ズ、会頭ノ論旨ヲ以テセバ或ハ困難ナル事情ヲ惹起スコトアルヤハ知ラザレドモ、果シテ将来如何ナル差支ヲ生スルカノ点ニ至テハ明言スル能ハザラン、会頭ニ於テハ商法ニ依ルヲ以テ可ナリト述ベラレタルガ、如何セラルヽノ見込ナルヤ
会頭(若宮商工局長) 現行法ノ如ク「此条例ニ商業者ト称スルハ商法第四条及ヒ第五条第何号・第何号・第何号・第何号ニ掲ゲタル商取引ノ各部類ニ属スル商人及作業人ヲ謂フ」トスルノ精神ナリ
十七番(法橋君) 本員ハ矢張リ列記法ヲ以テ適当ナリト信ズ、商法ハ法律タルニハ相違ナキモ未タ実施セザル所ノモノタリ、好シ又第一項ノ各号ヨリ一・二脱漏スル業体アリトスルモ為メニ差支ヲ生スル事ナカルヘシ、未タ実施セザル商法ニ依遵シ又之ニ漏レタルモノハナキカトノ杞憂ヲ抱カンヨリ、寧ロ本条例ノ商業者ト称スルモノハ云々ト各号ヲ明記シ置クヲ以テ適当ナリトス、他日商法実施ノ暁ニ際シ本条例ニ脱漏シタルモノアレバ其時修正補綴スルモ敢テ差支ナキノミナラズ、前途如何ナル業体ノ起ルベキカヲ予想シテ法ヲ立ルニ至ラバ到底際限ナカルベシ、今日完全ナル法トシテ制定シ置クモ明日ニ至ラバ之ヲ不完全ナリトスルニ至ルヤモ知ルベカラザレバ、到底法ノ完全ハ期スベキモノニアラズ、故ニ今日社会ニ現ハルヽ所ノモノヲ網羅シ得バ以テ十分ナリトナサヾルベカラザル事ト考フ
四十一番(水登君) 本員ハ列記法ヲ可トスル者ナルガ、此事ニ付テハ深ク考案ヲ要スル所ナルヲ以テ、本議事ハ明朝迄延サレンコトヲ希望ス
   (四十一番説ヲ賛成スル者アリ)
会頭(若宮商工局長) 最早ヤ時刻モ迫リ居ル事ナレバ四十一番ノ説ニ従ヒ明朝迄延期スル事ニスベシ、而シテ本条第四項ノ議事ハ昨日延期シ置キタルニ依リ、唯今ヨリ議スルコトニスヘシ
  四 第一項ニ掲ゲタル業務ヲ為ス者ノ支店・出張店及ヒ第一項ニ掲ゲタル業務ヲ為ス商事会社ノ支店・出張店ノ長タル者
十七番(法橋君) 第四項ニ就テ熟考スルニ全部削除スルヲ以テ至当ナリト思惟ス、至大ナル支店・出張店ノ長タル者ノ中ニハ或ハ立派ナル人物モ有ラン、然レドモ各自其業務ニ繁忙ニシテ到底公共事業ニ従事シ得ベキモノニアラズ、若シ強テ夫等ノ事ヲ為サシメンガ為メニ一方ニ於テハ大ニ経済上不利益ヲ招クノ結果ニ陥ルコトアルヤモ
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知ルヘカラザレバ、実際上ヨリ云フモ又経済上ヨリ見ルモ削除スルヲ以テ可ナリト信ズ
六番(岡田君) 本員モ削除説ヲ抱持スル者ナリ、既ニ昨日モ二十九番ヨリ述ヘラレタル如ク法理上ヨリ如何トノ疑念モアリ、又実際上ヨリ言ヘバ唯今十七番ヨリ述ベラレタル如ク会議所ノ為ニ十分尽ス事ヲ得ザルカノ憾ナキ能ハザレバ、支店・出張店長ニ対シテハ少シク不親切ナルガ如シト雖モ、削除スルヲ以テ可ナリト信ズ
十七番(法橋君) 支店・出張店ノ長タル者ニシテ公共ノ事業ニ関係スル如キコトアラバ、独リ本店ヨリ叱責ヲ受クルノミナラズ自然責任アル業務ヲ怠ル如キ事ナキヲ保セザレバ、本員ハ斯ノ如キ人ヲ強テ引入ル事ハ甚ダ好マザル所ニシテ、其人等ニ向テハ十分其土地ノ商事発達ヲ企図セシメンコトヲ希望ス
三十四番(是松君) 本項ニ付テハ昨日来会頭其他各員ヨリ種々論述セラレタル所ナルガ、其会社支店長ノ如キハ多クハ一箇人トシテ資格ヲ有セザルカニ聴取セリ、而シテ是等ノ人ハ本店ノ信用ヲ得テ一地方ノ支店・出張店ノ業務ヲ担任スル者ナレバ十分ノ脳力ヲ備フル者タルヤ明ナリ、斯ク有望ノ人ニシテ其地商業会議所ノ為メニ力ヲ尽ス事ヲ得セシメサルハ本員ノ最モ遺憾トスル所ナリ、昨日二十九番ヨリ会社支店長ナドハ会社ノ業務ノ外他ノ事ニ関係スル事ハ一切之ヲ禁シ居ルトノ事モ述ベラレシガ、其地方ニ於テ相当ノ商業ヲ為シ為メニ利益ヲ得ル以上ハ其地方ノ為メ幾分尽ス所有ルハ至当ノ事ナリト考フ、殊ニ地方ニ在テハ是等ノ人ニ会員資格ヲ与フルコトハ最モ必要ナリト信ズルガ故ニ飽迄原案ヲ賛成ス
十七番(法橋君) 各員ノ参考迄ニ一言シ置ベシ、本員等ニ於テモ決シテ支店長ナドハ十分ノ脳力ヲ有セザル者ト云フニアラズ、職務権限上自己ノ商業ヲ営ム者ノ如ク十分尽ス事ヲ得スト云フニ在リ、第二ハ我大坂会議所ノ如キモ三井銀行及ヒ日本銀行ノ支店長ノ如キハ現ニ特別会員ニ撰定シ居ルノ事実モアレバ、強チ被選資格ヲ有セザルトスルモ実際差支ナシト云フニ在リ
二十九番(渋沢君) 唯今三十四番ハ昨日本員ガ陳述シタル言ニ対シ反駁セラレタル様ナリシガ、決シテ三十四番ヨリ述ヘラレタル如キ趣旨ニハアラザルナリ、其事ニ付テハ昨日モ縷々述ベタル所アレバ今玆ニ喋々セザルベシ、又脳力如何ト云フニ付テハ十七番ヨリ説明アリタル如ク本員ニ於テモ全ク感ヲ同スル所ナリ、要スルニ法律トシテ之ヲ制定スルニ於テハ或ハ不適当ニハアラザルナキカヲ疑フ、既ニ会頭ニ於テモ此事ニ付テハ大ニ懸念セラルヽモノヽ如シ、而シテ唯ニ便利ノ点ニ最モ重ヲ置キ便利ノ外他ヲ顧ミズトノ事ナラバ本員ハ即チ已マンノミ
委員(江口属) 唯今二十九番ヨリ法律トシテ云々ト述ベラレシガ、第四項ニ付テハ既ニ会頭ヨリモ述ベラレタル如ク決シテ重キヲ置キタル条項ニハアラザルナリ、然リト雖モ全ク法理ニ適セザルモノヲ提議シタルカノ疑義ヲ抱カルヽニ至テハ、甚ダ遺憾トスル所ナルヲ以テ、玆ニ法理ト云フ事ニ付一言弁シ置ベシ、而シテ法理ニ付テモ国ニ依リ学派ニ依リ又人ニ依テ各々見ル所ヲ異ニスル程ナレドモ、委
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員ノ見解ニ依レバ支店長タル者ハ商法中ニモ指示スル如ク商業使用人トハ全ク其資格ヲ異ニシ、即チ商法ノ代務人ニシテ正ニ代理人タルノ資格ヲ有スルモノトス、而シテ其権限ハ会社取締役ト敢テ異ナルナシ、即チ商号第四十五条ニ「代務ノ委任ニハ商業主人ノ商号ヲ用ヰ且之ニ代リ裁判上ト裁判外トヲ問ハス其商業ニ関スル総テノ商取引及ヒ権利行為ヲ為シ得ル権力ノ授与ヲ包含ス」トアリ、故ニ給金ニテ使用スルトスルモ其性質使用人トハ全ク異レリ、彼ノ会社取締役ノ如キモ給料ヲ与ヘタル会社ノ一使用人ニハ相違ナキモ代理権ヲ有シ居リ、支店・出張店長ノ如キモ是レト同等ノ権利ヲ有スルモノナレバ決シテ使用人ノ如キ薄弱ナルモノニアラザルナリ
会頭(若宮商工局長) 既ニ論旨尽キタリト認ムルニ依リ採決スベシ、第四項ハ之ヲ削除スル十七番説ニ同意者ハ起立
  起立者  二十九名
会頭(若宮商工局長) 四十二名ニ対スル二十九名、即チ過半数ナルヲ以テ第一条第四項ハ削除ニ決ス、序ニ諮問案件外ニ付各員ニ問フ、現行法第十七条ニ「会員定数ノ五分ノ一ヨリ多カラザル特別会員ヲ置キ」云々ト特別会員ノ数ヲ制限スルガ為メ窮窟ヲ感ズル如キコトハナキヤ
十三番(浜岡君)・二十九番(渋沢君)・十番(浮田君)・三十八番(鈴木惣兵衛君) 其感覚ナキ旨ヲ述ブ
会頭(若宮商工局長) 会員ノ数ハ現行法ノ如ク十五名以上五十名以下ニテ差支ナキヤ
二十九番(渋沢君) 東京ノ如キハ或場合ニ於テハ差支ヲ感ズルコトナキニアラズ、故ニ曾テ増員ノ事ヲ建議シタシト考ヘタルコトモアリシガ、今日ノ所ニテハ先ツ此儘ニ据ヘ置カレテモ差支ナシト思ヒ居ルナリ
十三番(浜岡君) 本会ヲ機トシ他ニ種々建議シタキ事モアレバ書面ニ認メ提出スル事ニ致シテハ如何
十番(浮田君) 本員ニ於テハ新タニ一項ヲ設ケタキ考ナルモ、書面ニ認メ明日提出スルノ考ナリ
三十五番(岡野君) 本員モ建議シタキ箇条アリ
十七番(法橋君) 何レモ多少意見ヲ有セラルヽ事ト考フ、然ルニ各員ヨリ一々議場ニ提出セラルヽ事ニナレバ混雑ヲ来シ大ニ議事ノ進行上ニモ妨クル事ト考フルニ依リ、委員ヲ選定シ各提案ニ就テ之ヲ取捨シ、委員ニ於テ本議ニ掛クベキモノト決シタル事ノミヲ議スルコトニシタシ
会頭(若宮商工局長) 建議ヲ提出セント考ヘラルヽ方ハ各々番号ヲ呼ハレタシ
十七番(法橋君)・三十五番(岡野君)・三十八番(鈴木惣兵衛君)・十三番(浜岡君)・十四番(橋本君)・四十一番(水登君)・四十二番(宮田君)・三十四番(是松君)
十七番(法橋君) 先ニ本員ガ意見ヲ提出シタル委員ハ建議提出者ヲ除キ九名ノ委員ヲ選定スルコトニシタシ、而シテ委員ノ選定ハ会頭ニ指名アランコトヲ望ム
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   (満場異議ナキ旨ヲ述ブ)
会頭(若宮商工局長) 唯今ノ十七番説ニ同意者ハ起立
  満場起立
会頭(若宮商工局長) 満場一致ナルヲ以テ直チニ本席ヨリ指名スルコトニスヘシ
               一番   鷲田土三郎君
               六番   岡田元太郎君
               十五番  奥常次郎君
               十八番  伊藤伝七君
               二十五番 大沢敬之君
               二十八番 藤本荘太郎君
               三十三番 石井聿三君
               三十九番 北村五郎兵衛君
               農商務属 石渡秀実君
会頭(若宮商工局長) 右九名ヲ指名ス、委員ニ於テハ明朝議場ニ報道アランコトヲ望ム、本日是ニテ散会スベシ
  午後零時三十分退散
○七月六日午前八時十五分開議 出席総員四十二名
会頭(若宮商工局長) 是ヨリ開会スベシ、昨日本席ニ於テ指名シタル建議ノ条項取捨調査委員会決議ノ顛末ヲ報道アリタシ
二十八番(藤本君) 委員ニ於テハ昨日閉会後直チニ委員会ヲ開キ種々調査ノ末、結局緊急事件ト認メ本会ヘ提議スベキモノ一モ之レ無シト議決シ、総テ採用セザル事トナシタリ、此段報道シ置ク、但シ建議ノ条項ハ参考トシテ列挙シ置クヘシ
 大坂商業会議所会頭浮田桂造君提出
  条例第四条中ヘ左ノ一項ヲ加フ
   其地域内ニ設置スル各種ノ取引所ヲ監視シ、及各商工組合ヲ監督スル事
  条例第九条中
   会員ノ数ヲ増減スル件
 京都商業会議所会頭浜岡光哲君提出
  第四条 一号中「議定シ」ノ下ヲ「及之レカ実施ヲ図ルコト」トスル事
  同条 六号ノ冒頭ニ「取引所ノ手数料及」ノ字ヲ加フル事
  第十一条及第十二条 削除
  第二十条ノ次ヘ左ノ三条ヲ加フル事
  第 条 会議所ハ事ノ必要ニ依リ二会議所以上ノ聯合委員会ヲ開クコトヲ得
  第 条 聯合委員会ヲ定期ニ開設スルトキハ之レカ規則ヲ定メ農商務大臣ノ認可ヲ受クベシ
  第 条 聯合委員会ニテハ本条例第四条第一項乃至第四項ノ事件ヲ議決シ、議長ノ名ヲ以テ其意見ヲ官庁其他ニ開申シ、又ハ応答スルコトヲ得
 熊本県属宮田去疾君提出
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  第四条中六号ヲ削除スル事
    理由
   仲立人ノ資格・員数ノ如キハ官庁ノ認可ヲ得テ初メテ成立ツモノトスル、然ルヲ商業会議所ニ於テ復タ之ヲ審査スルコトトセバ会議所ハ官庁ノ上ニ立ガ如キ勢ヲ呈シ不都合ナルノミナラズ会議所ニ於テモ多数ノ仲立人ノ資格ヲ常ニ審査スル如キハ能ハザルコトナルベシ、且ツ信用ニ関スル事項ニシテ軽々手ヲ下スベカラザルコトナルヲヤ、手数料ニ付テハ前段述ブル所ニ稍々同シ
  第十九条ノ地方税収入役ヲ市町村収入役ト改ムル事
    理由
   地方税収入役ナル名称ハ法律上見ル所ナキガ如シ、故ニ法律上定ムル所ノ名称ニ改メンコトヲ欲ス
 博多商業会議所常議員是松右三郎君提出
  第四条
   一 主務大臣又ハ府県知事ハ商業ニ関スル法律規則ノ制定・改正・廃止及施行方法並ニ公設営業ノ新設・廃止、其他商業上ノ利害ニ関スル規定ニ就キ法律案トシテ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘキモノハ其法律案ノ編製前、其他勅令・省令又ハ府県令ヲ以テ発布セラヽモノハ其発布前、必ラス商業会議所ノ意見ヲ諮詢セラレタキ事
 広島商業会議所副会頭岡野七右衛門君提出
  一 条例第四条会議所事務権限ニ左ノ一項ヲ加フルコト
   一 会議所設立地区内ノ商工業者及商工業組合ヲ監督スルコト
  二 商工業ニ関スル府県税ハ商業会議所ヘ諮問ノ上之ヲ賦課スルコト
  三 会議所ト海外駐在本邦領事ト商工業ニ関スル直接通信ノ途ヲ啓クコト
  四 会議所ノ商工業統計編製ニ関シ地区内商工業者ニ報告ノ義務ヲ負ハシムルコト
  五 地区内組合ノ取締役ニハ会議所ニ対シ直接ニ商工業ニ関スル意見ヲ開申シ、且総会ニ出席シ発言ヲ得セシムルコト
  六 会議所会員ニハ一定ノ徽章ヲ附与シ、任期間之ヲ佩用スルヲ得セシムルコト
  七 会議所会員ニシテ総会ノ節無届不参スル者ハ過怠金ヲ出タサシムルコト
 津商業会議所副会頭橋本清助君提出
  第四条中左ノ通リ改正増補スル事
  (二) 商業ニ関スル法律規則ノ制定・改正・廃止及施行方法其他商業上ノ利害ニ関スル意見ヲ議定シテ官庁ニ開申スルコト
  (六) 必要ナル場合ハ地区内ニ於ケル仲立人ノ資格・員数及手数料ヲ審査スルコト
  (増) 地区内ニ於ケル商業ノ発達ヲ図リ又ハ其衰退ヲ防グニ必
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要ナル方案ヲ議定ノ後、其実施ヲ奨励シ若クハ官庁其他ニ建議スルコト
十三番(浜岡君) 委員長ニ承ハリ置タシ、建議ノ条項ハ緊急ノモノト認メズトノ趣旨ナリシヤ、将タ全然議スベキ価値ナキモノト認メラレタルヤ
二十八番(藤本君) 各条項ニ付キ各々其理由アリ、併シ一々之ヲ列挙セバ大ニ時刻ヲ費スコトナレバ之ヲ略シ、昨日我々ニ附托セラレタル事ハ各建議ノ条項ニ就キ本会ニ提出シ議スベキモノナルヤ否ヤ調査ノ上取捨スルノ権限ヲ与ヘラレタリ、故ニ委員ニ於テハ各条項ヲ調査シタルニ、一モ緊急事件トシテ本会ニ提出スル必要ナキモノト認メタルナリ
十三番(浜岡君) 委員ニ於テハ固ヨリ各提出案ニ就キ審議セラレタルニハ相違ナカルヘシ、然ルニ第十一条・第十二条ノ如キハ、此回ノ改正案成立シ果シテ帝国議会ニ提出セラルヽノ運ビニ至ラバ実ニ不都合極マル条項ナリト思惟ス、之ヲ道理上ヨリ考フルモ亦実際上ヨリ見ルモ、憲法政治ノ今日ニ在テ斯ル条項ハ存立スベキモノニアラサルベシ、本員ハ頻リニ復活ヲ主張スル如キ嫌ヒアルカハ知ラザレドモ、会議所会員ガ斯ク諮問ニ預リ而シテ改正シタル法案ニシテ、余リニ不都合ナルモノヲ編制シ議会ニ提出シテ嗤笑ヲ招クハ甚ダ屑トセザル所ナレバ、委員会ニ於テ審議セラレタルニモ拘ハラズ本会ニ納レテ討議アランコトヲ希望ス
二十四番(益田君) 委員ニ向ツテ請求シタキ事アリ、昨日委員選定ノ際其委員ニ托スルニ建議条項取捨ノ権限ヲ以テストノ事ナリシニ依リ、果シテ然ラバ委員ハ無限ノ権力ヲ有シ其報告ニ対シテハ最早ヤ控訴スル事モ出来ズ、既ニ終審裁判ノ判決同様ナレバ実ニ至大ナル権力ヲ有スル委員ナル哉ト心私カニ考ヘ居タリ、併シ其権限ヲ与ヘタル以上ハ其決議ニ対シ敢テ不服ハ唱ヘザレドモ、如何ナル理由ニ依テ廃棄セラレタルカ、一応其理由ヲ開陳セラレン事ヲ望ム
二十八番(藤本君) 実ハ昨日委員会ニ於テ各条項ヲ取捨スルニ就テモ大ニ困難ヲ感ジタル事アリ、其ハ提出者ニ於テハ定メテ建議案ニ就キ十分ノ説明モアルコトナラント思ヒノ外、僅ニ三十分内外開議延引シタル為メ何レモ紙片ニ其大要ヲ記シ置キタル儘退席セラレタレバ其趣旨ノ在ル所ヲ聴クニ由ナカリシ、依テ委員会ニ於テハ已ムナク該建議案ニ就キ調査決議シタル次第ナリ、実ニ此回ノ如キ権力アル委員ニ当選シタル事ハ何レモ始メテニテ殆ンド前後其例ヲ見ザル位ノモノナレバ我々ニ於テモ大ニ苦心シタル所ナリ、既ニ此大権ヲ与ヘ委員ニ其取捨ヲ附托セラレタル以上ハ各員ニ於テモ固ヨリ委員会ノ決議ニ対シテハ異議ナキコトヽ考フ、而シテ廃棄ノ理由ヲ弁明スルハ各員ニ於テモ望マルベク、委員ニ於テモ各員ノ清聴ヲ請ハント欲スル所ナリ
十七番(法橋君) 昨日委員ヲ設ケルコトヲ発議シタルハ即チ本員ナリシガ、今朝委員ノ報告ヲ聴キテ大ニ吃驚シタリ、併シ今更委員ノ決議ニ対シテ異議ヲ唱フル事ハ為サヾルモ委員諸君ニ於テハ大ニ誤レル所アリト考フ、何トナレバ各員ヨリ提出スル建議ノ中ニハ或ハ条
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例ニ直接関係ヲ及ボサヾルモノモアラン、或ハ今回之ヲ議セサルモ差支ナキモノモアルベケレバ、其緩急ヲ計リ取捨アルコトニテ、条例ニ密着ノ関係アルモノハ到底取捨スベキモノニアラザレバ其等ハ無論識別シテ取捨アルコトト信ジ居タルナリ
二十八番(藤本君) 十七番ノ如ク不服ヲ唱ヘラルヽ事アラバ当初ヨリ委員ニ附托セザルニ如カズ、既ニ委員ニ附托セラレタル以上ハ仮令十七番ニ於テ必要ト認メラルヽモ、委員会ニ於テ不必要ト決議セバ服従セラルベキ義務アリト考フ
会頭(若宮商工局長) 昨日委員会ニ於テハ殊ニ熱心調査セラレタル由ナレバ、一応各建議ニ対シ廃棄ノ理由ヲ弁明アラン事ヲ望ム
二十八番(藤本君) 然ラバ廃棄ノ理由ヲ弁明スベシ、昨日提出セラレタル建議中同一意見ノモノ二箇アリシニ依リ、結局六提出案ニ付テ審議ヲ凝シタリ、先ツ初メニ大坂商業会議所委員ヨリ提出セラレタル案件否決ノ理由ヲ陳述セバ「其地区内ニ於テ設置スル各種ノ取引所ヲ監視」スルトノコトハ、仮令本会ニ於テ之ヲ議決シタリトスルモ実際為シ能ハサル事ナラン、殊ニ取引所ハ農商務大臣ノ監督ノ下ニ在ルモノナレバ、商業会議所ハ取引所ノ内部ニ立入リ其帳簿ヲ取調ブル等ノ事ハ為シ能ハザルノミナラズ、此回ノ改正案ニシテ愈々法律トナリ世ニ公ニセラルヽニ至ラバ、会議所ノ権限モ以前ニ比シテ伸暢スル姿ナレバ、旁以テ此事ヲ追加スルノ必要ナカルベシ、又「各商工組合ヲ監督スルコト」ニ付テモ、組合ヲ監督スルノ必要ハ何ニ依テ生ズルカト云ハヽ、統計報告ノ材料等ヲ集ムルニ付テモ今日ニテハ会議所ト組合トノ連絡附キ居ラズ不便少カラザレバ、組合ノ内部ヲ監督スルト共ニ夫等ノ便ヲモ開カントノ趣旨ニ外ナラザルベシ、左レバ必ラズシモ今日ニ於テ之レヲ為サヾレバ時機ヲ失スルト云フニモアラザルベケレバ、組合其物ガ何トカ始末ノ附タル後之ヲ為スモ不可ナカルベシ、依テ本項ハ之ヲ緊急事件トシテ議スベキ必要ナカルベシ、第二「会員ノ数ヲ増加スル事」ニ付テハ是亦増員セザレバ実際差支ヲ生ズルトノ事ニモアラザルベク、従来ノ会員ニテ成ルベク欠席無キ様精々勉励セラレナバ十分立派ナル会議モ出来得ベシ、唯ニ人員ヲ増加スルモ夫レニ伴フテ欠勤者殖エルアラバ同結果ヲ来スニ依リ、増員スルノ必要ナシト議決シタル次第ナリ
 次ニ十三番ノ提出ニ係ル第四条第一項ノ末文「議定スルコト」トアルヲ「議定シ及之レガ実施ヲ図ルコト」トスルニ付テハ、果シテ十三番説ノ如クセバ必ラズ実施ヲ図ラサルベカラザル事トナリ、会議所ノ責任重クナルノミナラズ会議所ハ其点迄踏ミ込ムベキモノナルヤ否ヤ、此点ニ付テハ余程困難ナルノミナラズ同第二項ニ「商業ニ関スル法律規則ノ制定・改正・廃止及ヒ施行方法ニ付意見ヲ官庁ニ開申シ、且商業上ノ利害ニ関スル意見ヲ官庁及ヒ其他ニ表示スルコト」トアレバ此表示ノ文字ニテ十分足レリト認メタリ、又六号ノ初メニ「取引所ノ手数料及」ノ字ヲ加フルコトニ付テハ前ニ大坂ノ提出案ニ対シ述ベタル趣旨ト大差ナキモノトス、次ニ第十条及第十二条《(一脱カ)》ヲ削除ストノコトニ付テハ現行法律中ニ規定シアルコトナレバ殊更之ヲ削除スルノ必要ナシト云フニアリ、昨日提出者ノ弁明ニヨレ
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バ斯ノ如キ条項ヲ置クノ必要ナキノミナラズ、為メニ条例ノ尊厳ヲ涜スヲ以テ削除ストノ事ナリシモ、此条項アルモ決シテ不都合ナク又此位ニハ重クナシ置ク方可ナリトノ趣旨ニテ削除説ハ不必要ナリトシタルナリ、又第二十条ノ次ニ聯合会ヲ開クノ条項ヲ加ヘントノ事ニ付テハ、実ハ聯合会ヲ開クノ必要モアルベク、従来ノ如キ聯合会ニテハ何ノ権力モナク、又其決議ヲ守ラザルベカラサル義務モアラザルガ、却テ今日ノ如キ聯合会ノ組織ニナシ置ク方宜シカルベシ若シ聯合会ニ重キヲ置ク事ニセバ出席スル委員ノ責任ハ実ニ重大ニシテ決議ノ事項ハ我会議所ニ於テ之ヲ実行セザルベカラズ、而シテ会議所ノ意見ト衝突スル事無キヤモ計リ難ケレバ、聯合会ハ単ニ各会議所ヨリ意見ヲ提出シ従来ノ如ク随時之ヲ開会シテ討論研究スルコトニ止メ置ク方可ナラン、之ヲ条例ヲ以テ定ムル事トナシ議長ノ名ヲ以テ其意見ヲ官庁及ヒ其他ニ直接ニ開申応答スル事ニスルニ至テハ大ニ熟慮ヲ要スル事ナレバ、先ツ本問題ハ之ヲ聯合会ノ議題トナシ聯合会ニ於テ十分研究シタル後ニスルモ決シテ遅カラサレバ、同ジク緊急問題トシテ提議スルノ必要ナシト決議シタル次第ナリ
 次ニ三十五番ノ提出ニ係ル「会議所設立地区内ノ商工業者及商工業組合ヲ監督スルコト」ト云フニ付テハ、先ニ大坂会議所委員ノ提出ニ答ヘタル所ト同様ニシテ、殊ニ商工業者ヲ監督スルト云フニ至テハ到底為シ得ベカラザル事ナラン、是等ノ点ニ至テハ尚ホ聯合会ニ発案アリテ十分研究セラルヽ方可ナラン、第二「商工業ニ関スル府県税ハ商業会議所ヘ諮問ノ上之ヲ賦課スルコト」ト云フニ付テハ少シク不穏当ニハアラザルカ、商工業税ハ即チ地方費ニ属スルモノナレバ、会議所ニ於テ十分意見ヲ述ブルトスルモ府県官ハ果シテ之ニ対シテ如何ナル感情ヲ懐クヘキカ、又府県知事ヨリ之ヲ諮問スル事ハ岐路ニ走ルコトニテ到底出来能ハザル事ナラン、若シ不公平ノ事モアレバ地方官ト其地会議所ノ事ナレバ直チニ府県知事ニ向ツテ意見ヲ開申スルモ可ナラン、故ニ之ヲ条例ニ掲グル必要ナカルベシ、第三「会議所ト海外駐在本邦領事ト商工業ニ関スル直接通信ノ途ヲ啓クコト」ト云フニ付テハ、其事柄ハ喜フベキモ主務大臣ト雖モ外務省ノ手ヲ経ザレバ海外領事ト通信報告ハ出来ザル制規ナレバ、今日ニ於テハ到底望ムベキ事ニアラズ、第四「会議所ノ商工業統計編製ニ関シ地区内商工業者ニ報告ノ義務ヲ負ハシムルコト」ニ付テハ殊更玆ニ掲ゲザルモ会議所ニ於テ現ニ実行シ居ル事ニテ、果シテ条例ヲ以テ之ヲ撿束スルコトヽスルモ従来ノ有様ニテハ到底其目的ヲ達スルコト能ハザルベシ、若シ其必要アル時ハ会議所ヨリ人ヲ遣ハシ当業者ノ店舗ニ就テ取調フルモノ何時モ正確ノ取調ヲ得ル事実ナレバ、強テ条例中ニ規定スルノ必要ナシ、是等モ尚ホ聯合会ニ提議シテ協議スルモ可ナリ、第五「地区内組合ノ取締役ニハ会議所ニ対シ直接ニ商工業ニ関スル意見ヲ開申シ、且総会ニ出席シ発言ヲ得セシムルコト」ニ付テハ、従来ニテモ其業ニ関係スルコトハ会頭ハ取締役ナリ其他ノ者ヲ招キ十分其意見ヲ述ベサス事モアリ、又差支ヘザル限リハ総会ニ出席セシメテ弁明ノ労ヲ取ラス事ハ会頭・副会頭ノ見込ニ依テ為シ能フルコトナレバ、是亦殊更ニ条例中ニ掲グルノ
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必要ナカルベシ、第六「会議所会員ニハ一定ノ徽章ヲ附与シ任期間之ヲ佩用スルヲ得セシムルコト」此点ニ付テハ別ニ弁明スルノ必要ナカルベシ、第七「会議所会員ニシテ総会ノ節無届不参ノ者ハ過怠金ヲ出サシムルコト」ニ付テハ、其会議所ト会員トノ間ニ於テ協議実行セラレナバ十分行ハルベキ事ニテ条例ニ掲グルノ必要ナカルベシ、故ニ本項モ不必要ナリト議決シタル次第ナリ
 次ニ十四番ノ改正意見トシテ提出セラレタルハ、第四条第二ニ掲グル「商業ニ関スル」云々ノ末文ニ「議定シテ」ノ四字ヲ加フルトノ事ナルモ「意見ヲ官庁ニ開申スルコト」トアル以上ハ、無論議決セザレバ開申スル事モ出来ヌニ依リ、殊更ニ議定ノ文字ヲ加フルノ必要ナシ、第六ニ至リ「仲立人ノ資格」云々ノ冒頭ニ「必要ナル場合ハ地区内ニ於ケル」ノ文字ヲ加フトノ事ハ現行法ノ通リニテ少シモ差支ナケレバ、丁寧ニモ「必要ナル場合ハ」云々ノ文字ヲ加フルノ必要ナカルベシ、又別ニ「地区内ニ於ケル商業ノ発達ヲ図リ又ハ其衰退ヲ防クニ必要ナル方案ヲ議定ノ後、其実施ヲ奨励シ若クハ官庁其他ニ建議スルコト」ノ一項ヲ増設セントノ事ハ、前ニ十三番ノ提出案ニ対シ述ベタルモノト大同小異ニシテ、是亦殊更ニ掲グルノ必要ナシトシ削除スル事トナシタリ
 次ニ三十四番ノ提出ニ係ル四条中ニ「主務大臣又ハ府県知事ハ商業ニ関スル法律規則ノ制定・改正・廃止及施行方法云々」ト総テ商業ニ関スル法律規則ハ発布前ニ会議所ノ意見ヲ諮詢セラルヽ様致サントノ事ナリ、斯ク会議所ニ重キヲ置ク事ハ一応尤ナル考ヘノ様ナレドモ、総テノ事ヲ発布前会議所ニ諮詢セラルヽニ至ラバ会議所ハ其事ノミニ従事セザルベカラザル事トナルベシ、会議所ハ固ヨリ夫等ノ事ニハ専ラ尽サヽルベカラザルモ、第四条ノ規定モアレバ夫レニテ十分ナラン、若シ総テノ事ヲ諮問セラルヽ事トナルモ決シテ実際ニ於テ行ハレザルノミナラズ、極言セバ農商務大臣ノ職権ニモ関スルコトナルニ依リ削除スル事ニ議決セリ
 次ニ四十二番ノ提出ニ係ル四条中六号ヲ削除スルトノ事ハ、理由書中ニ在ル如ク到底仲立人ノ資格ヲ常ニ審査スル事ハ為シ能ハサルノミナラズ、信用ニ関スル事項ナルニ依リ軽々ニ手ヲ下スヘキモノニアラズトノ趣旨ナリ、然ルニ此事ニ付テモ前ニ述ベタル削除ノ趣旨ト略ホ同一ニシテ、之ヲ存置シ置クハ不都合ナリト官庁ノ叱責ヲ受ケナバ兎モ角、之ヲ掲ゲ置クモ別ニ差支ナケレバ殊更ニ削除スルノ必要ナシト認ム、故ニ是亦聯合会ニ於テ十分討議研究セラレタル後ニスルモ決シテ後カラズト決議シタリ、又第十九条ノ「地方税収入役ヲ市町村収入役ト改ムル事」ニ付テハ一応尤ノ様ナレドモ、市町村収入役ハ矢張リ地方税ノ収入ヲモ扱ヒ居レバ、殊更市町村収入役ト改メル必要ナカルヘシトノ理由ヲ以テ採用セザル事ニ議決セリ、昨日委員会ニ於テ決議シタル理由ノ大要ハ以上述ベタル所ノ如シ、不肖本員ハ斯ル難問題ノ委員長ニ当リタルヲ以テ殊ニ不都合モ多クアルヘク、又述漏シタル事モアラバ、他ノ委員ニ於テ宜シク補足アラン事ヲ望ム
四十一番(水登君) 建議条項調査ノ次第ハ唯今委員長ヨリ縷々陳述ア
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リシガ、其中ニ本員ガ提出シ置キタル会議所ノ権限ヲ広クシ会員ノ勤怠ニ付キ相当ノ制裁ヲ附スト云フニ対スル報告脱漏シタルガ如シ
二十八番(藤本君) 如何ニモ報告中ニハ漏シタルモ、委員会ニテハ強チ脱漏シタリト云フ訳ニハアラザルナリ、既ニ先刻報道シ置タル三十五番説トハ少シク異ナル所アルモ、必要事件トシテ議スベキモノニアラズト決議シタル理由ハ三十五番説ト大差ナキモノト心得ラレテ可ナリ
十番(浮田君) 唯今委員長ノ報告ニ対シテハ不満足ニ感スル所ナキニアラザレドモ、既ニ昨日取捨ノ権限ヲ与ヘ調査ヲ附托シタル以上ハ委員会ノ決議ノ通リニ別ニ異議ナシ
三十八番(鈴木惣兵衛君) 唯今十番ヨリ述ベラレタル如ク、委員ニ取捨ノ権ヲ与ヘタル以上ハ其報告ニ対シテハ固ヨリ異論ナシ、併シ尚ホ会頭ニ於テ必要ト認メラルヽ条項モアラバ採テ以テ議場ニ諮ラレンコトヲ望ミ置ク
三十五番(岡野君) 本員モ同感ナリ、当初委員ニ附托スル際其権限ノ定メ方不十分ナリシニ依リ、今ハ遺憾ナカラ黙過スルノ外ナシ
十三番(浜岡君) 会頭迄伺ヒ置タシ、固ヨリ本省ニ於テ事務ノ御都合モアルベキガ、条例改正案ハ諮問会閉会後直チニ編製セラルヽノ御見込ナリヤ
会頭(若宮商工局長) 何レニセヨ第七議会迄ニハ編製スルノ考ナリ、此他ニ尚ホ細則制定ノ事ナリ附属命令等ノ事モアレバ直チニ編制ニハ着手スル考ナルモ、十一月ノ頃迄ハ本省ニ仕舞置クノ外ナシ、故ニ其前良法妙案モアラバ制定追加スル事モアルベケレバ、第七議会前ニ提議アラバ以テ参考ニ資スルヲ得ヘシ
十三番(浜岡君) 各員ニ相談致シタシ、唯今会頭ヨリノ陳述モアリ、改正ノ必要ヲ感ズル条項ニ付テハ各提出者ヨリ一応其理由ヲ開陳シテ参考ニ供スル事ニシテハ如何、而シテ八月ニハ聯合会モ開カルヽ予定ナレバ、尚ホ心附タル箇条アラバ意見ヲ申告スル事ニセント欲スルナリ
二十九番(渋沢君) 委員長ヨリ報道アリタル事ニ付テハ十分其趣旨ヲ了解スルコトヲ得タリ、又会頭ニ於テ取ルヘキモノアレバ議場ニ諮ラルヽコトニシタシトノ説モアリタルガ、仮令委員ニ無限ノ権力ヲ与ヘタリトスルモ単ニ委員会ノ専決ニ之依ルコトトシ、提議者ノ精神一モ貫徹セザル事ニナレバ或ハ議場ノ紛議ヲ招ク事ナキヲ保シ難シ、然ルニ之ヲ議スルニ当テ会頭ヨリ特ニ復活ノ意見ヲ出サルヽ如キハ甚タ好マサル事ナレバ、各員ニ於テ是非復活シタキ箇条ト認メラルヽモノハ十名以上ノ同意者ヲ得テ更ニ建議セラルヽ事トシ、其建議無キ以上ハ委員会ノ決議ニ依ル事ニセバ穏当ナランカト考フ
四十一番(水登君) 唯今会頭ノ陳弁ニ依レバ、第七議会ニ提出スルノ考ナレバ十一月ノ頃迄ハ此儘ニ為シ置クトノ事ナリ、又委員長ノ報告中ニモ聯合会モアル事ナレバ云々トノ言ハ、屡々耳ニシタル所ナリ、故ニ本員ハ是非条例中ニ改正ヲ加ヘタキ事ニシテ、聯合会ノ議決ノ後ニスルモ未ダ遅カラザル事ハ此回取急キ之ヲ決セザルモ可ナリト信ズ、然ルニ斯クテハ其時機ヲ失スルトノ事ナレバ、二・三ケ
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条ハ是非今回提出シタシト考フルモノアルガ如何
会頭(若宮商工局長) 聯合会ノ名ヲ以テ農商務大臣ニ建議セラルヽコトハ無論出来ザルモ、其決議ヲ持帰リタル後其会議所ニ於テ適当ト認メ会議所ノ意見ヲ以テ提出セラルレバ、農商務大臣ニ於テ法律編制ノ参考トセラルヤ疑ヒナシ、此事ハ更メテ尋ネラルヽニモ及バザル事ト考フ
四十一番(水登君) 時機ハ後レザルカヲ伺フナリ
会頭(若宮商工局長) 第七議会開会前ナラバ敢テ後シトセザルナリ、此建議条項ニ付テハ昨日取捨ノ権限ヲ与ヘテ委員ニ附托セラレタル事ニテ、委員長ヨリ緊急ト認メザルニ依リ此回討議スルニ及バズト決議シタル旨報告アリタリ、故ニ建議事項ニ付テハ委員長ノ報告ノ通リ承知シ置クノ外ナシト考フ
十八番(伊藤君) 本員モ委員ノ一人ナリシガ、委員会ノ経過ハ委員長ノ報告ノ通リ聊カ異ナル所ナシ、然ルニ二十九番ヨリ委員会ニ於テハ採用セザルコトニ決シタルモ提出者ニ於テ必要ト認メラル事ハ更ニ提議セラルヽコトニシテハ如何トノ説モアリタリ、如何ニモ委員会ニ於テ匆卒ニ事ヲ処シタル様相成リテハ各員ニ不満ヲ招クノ恐レモアレバ、本員ハ暫時休憩ヲ与ヘラレ、其間ニ於テ各員宜シク協議ヲ遂ケ、必要ト認メラルヽ事ニ付テハ更ニ提出セラルヽコトニセバ各員ニ遺憾ナカラシムルニ幾庶カランカト考フ、故ニ休憩セラレンコトヲ希望ス
会頭(若宮商工局長) 唯今十八番ノ説ハ或ハ本議ニ掛ケナハ多数ノ希望アルカ知ラザレドモ、既ニ一段落ヲ終ヘタル事ニテ、殊ニ二十九番ヨリ十名以上ノ同意ヲ得バ更ニ提議スルコトヲ得ル事ニセントノ説モアリタレバ、夫レニテ足レリト考フ、併シ各員モ長時間ノ議事ハ退窟セラルヽコトナルベケレバ、十八番ノ説ニ拘ハラズ暫時休憩スルコトニスベシ
  午前十時休憩
  午前十時二十分開議
会頭(若宮商工局長) 引続キ議事ヲ初ムヘシ、建議条項ニ就キ十名以上ノ同意者アリテ必要ト認メラルヽ事アラバ十分其意見ヲ聴クコトニ致サン
十三番(浜岡君) 本員ヨリ提出シタル一・二ノ条項ニ付テハ最モ其必要ヲ感スル所ナルモ、最早ヤ聯合会モ其中開ク事ニナリ居リ、委員ニ於テモ聯合会ニ譲ル見込ヲ以テ廃棄セラレタル事モアレバ、此回ハ提出セザル事ニ致シタシ、尤モ幸ニシテ十名以上ノ賛成ヲ得バ其趣旨ノ有ル所ハ十分弁明スルノ精神ナリ
十番(浮田君) 先刻二十九番ナリ十八番ヨリ建議条項ニ付十名以上ノ同意者ヲ得バ更ニ提出スル事ニセントノ説モ出タルニ依リ協議ヲ試ミタル所アリシモ、何レモ八月ニハ聯合会モ開設スルコトニナリ居レバ、同会ニ於テ研究ノ後ニスルモ後カラズトノ趣旨ニテ満足ノ賛成者ヲ得ザリシ故ニ、本回ニハ之ヲ提出セザルコトニ致シタリ
会頭(若宮商工局長) 各員ニ於テ左ル理由モアラバ此回ハ各員ノ高見ヲ聴クコトヲ得ザルナリ、就テハ此回ノ諮問事件ニ移リ、昨日「公
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権剥奪云々」ノ項ト「破産又ハ家資分散云々」ノ項トハ重複スルカノ疑団起リ、其末取調ベ報道スルコトニナリ居リタレバ、唯今委員ヨリ取調ノ結果ヲ報道致サス事ニスベシ
委員(石川属) 昨日第八条第四ノ「破産又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ未ダ復権ヲ得ザル者」トアルハ「公権剥奪又ハ停止中ノ者」トノ条項ニ含蓄シ居リテ、重複ニ渉ルノ嫌ヒナキカトノ疑義アリタルニ依リ調査シタル所「公権剥奪云々」ト「破産及ヒ家資分散云々」トノ事ハ他ノ法律ニモ其例ヲ見ル所ニシテ、即チ昨年発布セラレタル弁護士法ナリ或ハ取引所法ナリ、又其以前発布セラレタル公証人規則等ニモ同ジク資格ヲ制限スル場合ニ「公権剥奪云々」ト「破産又ハ家資分産云々」ト別項ニ掲ゲアリ、是等ノ点ヨリ考フル時ハ「公権剥奪」トハ、刑法ニ掲グルモノヲ指スモノヽ如シ、果シテ然リトセバ「破産又ハ家資分散」トハ大ニ其性質ヲ異ニスルモノアリ、彼ノ刑法ニ掲グル公権ヲ剥奪シ若クハ停止スル場合ハ、刑ノ宣告ニ伴フ所ノモノトス、然ルニ破産又ハ家資分散ハ商法或ハ家資分散法ニ拠ルモノニシテ、必ズシモ刑ノ宣告ニ伴フモノニアラズ、斯ノ如ク性質上差異アルノミナラズ、又復権ノ場合モ大ニ相異ナルモノアリ、刑法上ノ復権ハ 天皇ノ大権ニ属スルモノナルモ、破産又ハ家資分散ノ復権ハ各々其手続ニ依テ得ラルヽモノトス、是等ノ点ヨリ見ル時ハ決シテ重複ノ嫌ヒナキノミナラズ、破産又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケテ未タ復権ヲ得ザル如キ者ヲ会議所会員タルノ資格ヲ有セザルコトニスル精神ナレバ、之ヲ掲グルコト至当ナリト信ズ
会頭(若宮商工局長) 此事ニ付テハ単純ナル法律上ノ問題ナレバ、果シテ公権剥奪中ニハ破産及ヒ家資分散トノ事ヲ含蓄シ居ルヤ将タ然ラザルカ、法律上研究ノ結果判然セバ各員ニ於テモ異議ナキコトト考フ、故ニ其研究ハ之ヲ専門家ニ一任シ置キタキ精神ナリ、各員ニ於テ意見ナケレバ左様致スヘシ
   (各員異議ナキ旨ヲ述ブ)
会頭(若宮商工局長) 各員ニ於テ意見ナキモノト認ムルニ依リ専門家ニ任セ置ク事ニシ、引続キ第一条第一項ノ審議ニ移ラン、而シテ本項ハ再三議ニ附シタル事ニテ最早ヤ朗読ノ必要ナキモノト認ムルニ依リ、朗読ヲ省クコトニスヘシ
二十九番(渋沢君) 本項ニ就テハ特ニ委員ヲ設ケテ各号ノ調査ニ着手スルコトニナリ本員モ該委員ノ指名ニ当リタルガ、委員会ニ於テハ種々協議ヲ凝シタル末適否如何ハ暫ク措キ一ノ修正案ヲ本会ニ提出スルニ至リタリ、故ニ委員会ノ経過ヨリ云ハヾ該修正案ノ可決ヲ希望スルハ勢ヒノ免カレザル事ナレドモ、昨日会頭ヨリモ商法実施後如何ト云フニ付大ニ懸念セラルヽ所アリテ各員ノ参考ニ陳述セラレタル事アリ、是亦左モアルベキ事ナリト考フ、抑モ本項ヲ議スルニ当テハ本条例ノ商業者トハ商法ニ規定スル商取引ヲ云フニアラズシテ斯ノ如キモノナリト単独ニ之ヲ置クモノトセバ、商法ト矛盾シ或ハ増減アルモ差支ナシト云フモ一説ト為リ得ルナリ、然レドモ如何セン商業ニ其種類ノ多キハ又全国内其土地ノ広キ或ハ其土地ノ状況ニ依リ玆ニ掲グル各号以外ノ業体無キヲ保セストノ疑団ハ本員ニ於
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テモ胸底ニ存スル所ナリ、夫等ノ点ヨリ考フルトキハ或ハ変説トノ誹謗ハ免カレサルヤ知ラザレドモ、寧ロ商法ノ規定スル所ニ随ヒ第四条ノ各号及ヒ第五条中ヨリ繰上グベキモノハ之ヲ繰上ゲ、断然列記法ヲ廃スル方他日ノ為メ得策ナルヘキカト思ハル、固ヨリ其適否如何ハ断言シ得ル所ニアラズト雖モ明記シ置カザレバ他日解釈上幾分困難ヲ感ズルコトナキカヲ恐ル、然レドモ之ヲ明記シ置キタリトスルモ全ク其疑ナキヲ保セズ、果シテ何レニスルモ其疑団ヲ免カレズトセバ寧ロ列記法ニセザルノ勝レルニ如ストノ感ヲ惹起シ来レリ要スルニ昨日迄ハ列記法ヲ頻リニ主張シ居タルモ、尚ホ熟考スルニ列記法ハ之ヲ廃メ「商法第四条ニ掲ゲタル商取引」及ヒ第五条第一号・第四号・第六号ニ掲ゲタル取引ヲ為ス者ト云フガ如キ趣旨ニテ現行法ヲ修正スル方適当ナリト考フ、依テ修正意見ヲ玆ニ提出ス
十二番(内田君) 唯今二十九番ヨリ修正意見ヲ提出セラレタルガ、本員ハ昨日本条ヲ修正スルト迄ハ細論セザリシモ其趣旨ニ依テ陳述シタル所アリタリ、本員ハ大体ヲ商法ニ則ル事ハ最モ可ナリト信スルガ故ニ現行法ノ復活ヲ希望スルト共ニ、商法第四条ニ漏レタルモノト雖モ之ニ類スル営業ヲナス者ハ商業者ト見做ストノ但書ヲ加フル事ニセバ、其土地ノ状況ニ依テ如何ナル業体アリトスルモ差支ナク適用スルコトヲ得テ大ニ便利ナリト考フ、廿九番説ト本員カ説ハ趣旨ニ於テ異ナル所ナキヲ以テ、法文ノ修正ハ如何ナルモ差支ナシ
八番(水田君) 本員モ廿九番説ヲ賛成ス、其理由ハ委員会修正案ニ就テ果シテ委員会ハ現今ノ商業ニ当篏ルモノヽミヲ抜萃シテ各号ヲ列挙シタルカト云フニ、目下其業体無キモノト雖モ商法ノ条項ニ傚ヒ玆ニ列挙シタルモノアリ、此点ニ至テハ本条例ヲ単独ニスルノ効ナキモノトス、若シ現行法ノ如ク商法第四条ノ各部類ノ商取引ニ依ルモノトセバ如何ナル差支アルヤト云フニ、現今適用スベキモノハ之ヲ適用シ、未ダ現時ニ起ラザル商取引ハ其儘存置シ置クモ毫モ差支アルコトナシ、故ニ商法第五条ノ準取引モ其中ヨリ一・二之ヲ繰上ル事ヲ為サズ全然之ヲ加ヘ置クモ不可ナカラン、高知商業会議所ハ即チ其趣旨ヲ以テ現行条例ニ商法第五条ノ各号ヲ加ヘントノ希望ヲ先年聯合会ニ提出セシモ、不幸ニシテ否決スル所トナリタリ、唯今二十九番ヨリ述ベラレタル如ク現行法ニ修正ヲ加フルコトニ為シ置カバ法律ノ体裁モ宜敷コトト考フ
四十一番(水登君) 本項ニ就テハ大ニ考案ヲ廻ラシタルコトナルガ、矢張リ二十九番説ノ如ク為シ置ク方宜敷コトト考フ、唯二十九番説ニ一ノ増補シタキコトハ、委員会ニ於テ修正シタル賃貸及質営業ノ二業体ハ第四条・第五条ノ各号外ニ加ヘ置キタキ考ヘナリ
二十九番(渋沢君) 商法第四条ノ各号及ヒ第五条第一号・第四号・第六号ノ各号ト云ハヾ、四十一番ノ唯今希望セラルヽ点ハ含蓄シ居ルモノニアラズヤ
十七番(法橋君) 第一条ニ付テハ既ニ調査委員迄設ケラレタル事ニテ蓋シ今回諮問案ノ骨髄トモ云フヘキ条項ナラン、然ルニ会頭ヲ初メトシ委員諸君ニ於テモ大ニ疑惑ヲ生ジ、昨日ノ意見ハ今日ト全ク相反シ朝令暮改ノ傾アルハ甚ダ遺憾トスル所ナリ、本員ハ斯ク精神ノ
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確定セザル事項ヲ咄嗟ノ間ニ議決スル事ハ不得策ナリト信ズルガ故ニ、今一応特別委員ヲ選定シ再調査ニ附スル事ニシタシ
十三番(浜岡君) 大体ハ二十九番説ト同意見ナルモ文字上ノ事ニ付二十九番ニ一応確メ置タシ、商法ハ我法律タルニハ相違ナキモ未ダ実施セザルモノナルガ、矢張リ商法第四条ニ定メタル商取引及ヒ第五条第一号・第四号・第六号ニ掲ケタル商取引ヲ云フトノ事ヲ明記セラルヽ積リナリヤ
会頭(若宮商工局長) 十三番ニ一言シ置ク、現行法ハ現ニ商法ヲ通用シ居レリ、仮令商法ハ実施シ居ラザルモ我邦ノ法律タル以上ハ之ヲ適用スルモ毫モ差支アルコトナシ、此点ニ付テハ会頭ニ於テ保証スル所ナリ
十三番(浜岡君) 然リ、会頭ヨリ保証セラルレバ安心シテ二十九番説ノ如ク文字ヲ修正スルコトヲ望ム
十番(浮田君) 熟考スルニ二十九番説ノ如クナル方至当ナリト考フルガ故ニ、意志変更ノ嫌ハアレドモ二十九番説ヲ賛成ス
会頭(若宮商工局長) 一言尋ネ置タシ、文章ハ現行条例一条追加ノ目的ヲ以テ、商法第四条ニ掲ゲタル各号及ヒ第五条第一号・第四号・第六号ニ掲ケタル取引ヲ営業ト為ス者ト云フ意味ニ修正セラルヽ精神ナルヤ
二十九番(渋沢君) 然リ
番外(京都商業会議所書記長片桐君) 各員ノ参考迄ニ一言ス、商業会議所ハ会議所会員ニ適当ナル者ヲ以テ組織ストノ精神ナレハ断然商法ニ拠ラズシテ単独ニ正当ナリト認ムル業体ヲ列記スルヲ以テ可ナリト信ス、然ルニ適切ナル業体ヲ脱漏ナク列記スルコトハ到底為シ得サルノミナラズ、商法ト並行セサル嫌アリトシ、全ク商法ニ拠ルモノトセバ、第五条ノ商取引モ総テ入ルヽ事ニスルヲ可ナリト考フ東京ノ如キハ現ニ印刷業・料理屋・写真業ナドモ加ヘ居ラルヽ様承知シ居レリ、故ニ全ク商法ニ依ル考ナリセバ第五条中ヨリ三号ハ之ヲ採リ、他ノ三号ハ之ヲ採ラズト云フガ如キハ不都合ナリト思惟スルナリ
会頭(若宮商工局長) 然ラバ第四条ノ各号ト云ハズ単ニ商法ニ掲グル各取引トスルノ精神ナルヤ
番外(京都商業会議所書記長片桐君) 然リ
四十一番(水登君) 本員ハ区域ヲ広クスルノ趣旨ニテ前説ヲ取消シ第四条云々トスルコトヲ述ベタルナリ、故ニ若シ二十九番説ニシテ単ニ第四条ノ各号ト第五条中ノ三項目ノミニ限ルトノ趣旨ナリトセバ少シク本員ガ説ト意味ヲ異ニシ、本員ハ第四条ト広ク指スノ趣旨ヲ抱持シ居ルナリ
四十二番(宮田君) 本員モ現行法ハ広ク網羅シ居ルモノニシテ各部類トハ各号ヲノミ指スモノニアラズト解釈ス、然ルヲ今各号ト云フ事ニ之ヲ限ランカ或ハ将来種々ノ業体起リタル時直チニ条例ヲ改正セザルベカラザルノ煩ヲ免カレザラン、昨日モ会頭ヨリ斯ク列記シ置クコトニセバ若シ商法ヲ改正シタル時ハ随テ条例モ改メザルベカラザル不便アリト述ベラレシガ、実ニ其然ルヲ信スルナリ、今事実上
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ヨリ各号ヲ列記スル事ニセバ如何ナル差支アリト明言スル事ハ出来ザレドモ、日新ノ今日如何ナル業体ノ起ラザルヤハ予測シ得ラレザルヲ以テ、意味ヲ広クナシ置ク方可ナリト信ズ
会頭(若宮商工局長) 然ラバ四十二番ハ四十一番説賛成者ト認ム
三十八番(鈴木惣兵衛君) 五条中ノ一号・四号・六号ハ加ヘラルヽ積リナルヤ
四十二番(宮田君) 然リ
十七番(法橋君) 若シ列記法ヲ取ラザル事ニセバ寧ロ商法第四条ノ本条ニ拠ルコトトスル方、法理上ヨリ云フモ運用上ヨリ見ルモ可ナラン、又商業者ノ渾テヲ総ブルトノコトモアリシガ、仮令法条ヲ以テ範囲ヲ狭クシ置クモ実際挙行スル上ニ於テハ少シモ差支ナシ、何トナレバ其業体ニ依テハ立派ナル商業者ト云フヲ得ザルモノアリテ同商業者中ニモ大ニ品位ヲ異ニスルモノナレバ、之ヲ総ルト総ベザルトハ其地方ノ参酌ニ一任シ置クコトニスル方条例トシテハ適当ナリト信ズ、本員等ハ当初ヨリ列記法ヲ採ラザル方法理ヨリ云フモ経済上ヨリ見ルモ適当ナリト考ヘ居レリ、要スルニ商業者ノ定義ヲ明示シ其定義ニ適フモノハ之ヲ商業者ト見倣スベキモ、社会上或ハ商業上幾分ノ弊害アリト認ムル業体ハ仮令法律上立派ナル商業トスルニ拘ハラズ其者ハ商業会議所ニ関係ヲ有セシメザルコトニシタキ精神ナルヲ以テ、第五条第五号ニ掲グルモノヽ如キハ除外ヲ設ケ別ニ取除ケ置ク方可ナリト信ス、故ニ各員ノ参考迄ニ一言シ置ク
会頭(若宮商工局長) 四十一番説ハ要スルニ「商法第四条ノ取引及ヒ第五条第一号・第四号・第六号ノ取引ヲ為ス者」トスル事ニナルヤ
二十九番(渋沢君) 先刻述漏シタル所アリシガ本員ハ「商法第四条ニ掲グル各号及第五条ニ掲グル第一・第三・第四・第六号ノ業務ヲ営ム者」トスルノ精神ナリ、又四十一番ヨリ頻リニ述ベラルヽ所ノ意味ハ商法第四条ニ掲ゲタル商取引及ヒ第五条第一・第三・第四・第六号ニ掲ケタルモノニ拠ルノ説ナルガ、本条ニ拠ルコトニセバ各号ニ拠ルコトハ論ヲ待タザレドモ、文字上ヨリ見レバ本文ニハ賃貸ト云フコトモ籠リ居レドモ各号ニハ掲グル所ナシ、故ニ広ク商法第四条ト規定スルヲ可ナリトノ趣旨カ、其賃貸トハ第一号ヨリ第十一号マデニ或ハ含ム或ハ含マヌ、物品ノ交換云々ノ項ニ含蓄スルモノナラントノ説モアリ、要スルニ本員ガ提出シタル修正意見ニテ可ナリト信ス
会頭(若宮商工局長) 四十一番ニ一言ス、第五条第三号ニ掲グルモノハ矢張リ加フルノ趣旨ナルヤ
四十一番(水登君) 固ヨリ然リ
会頭(若宮商工局長) 要スルニ四条ノ本条ニ拠ル説ト各号ニ拠ル説トノ二ツニ分レ居レリ
十番(浮田君) 二十九番説ハ三号モ入リ居ルモノナルヤ
会頭(若宮商工局長) 然リ
十番(浮田君) 左レバ採決ノ時ハ四十一番説ヲ先ニシテ、二十九番説ヲ後ニセラルヽ様望ミ置ク
十一番(近藤君) 少シク了解セザル所アレバ一応確メ置タシ、四十一
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番説ハ四条ノ本文ヲ掲ゲテ五条ノ中ノ幾分ヲ加フルトノ趣旨ナルヤ四条ノ本文ヲ掲グル事ニナセバ最早ヤ五条ノ幾部分ハ加ヘザルモ十分ニテ法文モ其方簡単ニハナラザルヤ
会頭(若宮商工局長) 其ハ簡単ナルモ、第四条ト第五条ハ即チ正官吏ト準官吏御用掛トノ別アルガ如シ
会頭(若宮商工局長) 先ツ商業会議所条例ハ特定法トシテ其業体ヲ悉ク掲グルヤ又ハ商法ニ依遵スルカ、ト云フ大体議ニ付テ決ヲ採ルベシ、而シテ商法ニ依遵スルコトニ決セバ、固ヨリ諸君ガ委員ヲ選ビ該委員ヨリ報告シタル如ク一々其業体ヲ掲グルコトハ為サヾルベシ依テ本条例ハ特定法トナサズ大体ヲ商法ニ依遵スルト云フニ同意者ハ起立
  起立者  多数
会頭(若宮商工局長) 大多数ナルヲ以テ大体ハ商法ニ依遵スルコトニ決ス、然ラバ更ニ二十九番説及ヒ四十一番説ニ付テ決ヲ採ルベシ、二十九番説ハ「営業ノ目的ヲ以テ商法第四条ニ掲グル各号及ヒ第五条ニ掲グル第一号・第三号・第四号・第六号ノ営業ヲ営ム者」トスルノ趣旨ナリ、四十一番説ハ商法第四条ニ定メタル商取引及ヒ第五条第一号・第三号・第四号・第六号ニ掲グル商取引ヲ為ス者」ト修正スルノ趣旨ナリ、此両説ハ何レモ賛成者アルヲ以テ議場ノ問題トナリ居レリ、先ニ十番ヨリノ希望モアリタレバ先ツ初メニ四十一番説ニ就テ決ヲ採ルベシ、四十一番説ニ同意者ハ起立
  起立者  二十三名
会頭(若宮商工局長) 三十八名ニ対スル二十三名ナルヲ以テ四十一番説ニ可決ス、付テハ文字上ニ就キ再考ヲ請ハント欲スル所モアリ、殊ニ本案ハ重要ナル法律案ナルヲ以テ引続キ三読会ヲ開クノ精神ナルモ、暫時休憩スル事ニスベシ
  午前十一時三十分休憩
  午前十一時五十分開議
会頭(若宮商工局長) 是ヨリ三読会ヲ開ク、例ニ依リ逐条議案ヲ朗読致サスベシ
   (石川属朗読)
 第一条 此条例ニ商業者ト称スルハ左ニ掲グルモノヲ謂フ
  一 商法第四条ニ定メタル商取引及ヒ第五条第一号・第三号・第四号・第六号ニ掲ケタル取引ヲ営業ト為ス者
  二 第一項ニ掲ゲタル取引ヲ営業ト為ス合資会社・株式会社及ヒ取引所
  三 第一項ニ掲ケタル取引ヲ営業ト為ス合名会社ノ社員、合資会社ノ業務担当社員・無限責任社員、株式会社ノ取締役及ヒ取引所ノ理事長・理事タル者
六番(岡田君) 三読会ニ於テハ単ニ字句ノ修正ニ止マルヤ、事項ノ修正ニ渉ルモ差支ナキヤ
会頭(若宮商工局長) 敢テ差支ナシ
六番(岡田君) 本員ハ二読会採決ノ時少シク誤解シ居タルコトアリ、二読会ニ於テ「商法第四条」云々ト修正議決シタルモ、前読会ノ二
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十九番説ノ如ク「第四条各号」ト云フコトニ改メタキ精神ナリ
十番(浮田君)・十一番(近藤君) 六番説ヲ賛成ス
二十四番(益田克徳君) 第二読会ノ決議ニ依レバ其区域余程広濶ニシテ、料理店・貸席ノ如キ業体ヲモ網羅スルコトヽナリ、為メニ税源ハ殖ヘルヤハ知ラザレドモ、商業会議所タル品格上ヨリ云ハヾ甚ダ面白カラザル結果ヲ来スコトヽ考フ、又将来ノ取扱上ナリ商法第四条ノ解釈ニ付テモ随分困難ナル事項ヲ惹起サントノ恐レモアレバ、従来取扱ヒ来リタル如ク各号ト云フコトニ改ムル六番説ヲ賛成ス、誠ニ咄嗟ノ間ニ議決スルモノナルガ故ニ、僅々タル時間内ニモ前議決ヲ翻サヾルベカラサル如キ事アルヲ免カレザルナリ
十三番(浜岡君) 本員ハ前読会ノ四十一番説ハ何レニモ適用スル事ヲ得テ大ニ便利ナリト考フルガ故ニ、矢張リ二読会ノ決議ヲ維持スルナリ、二読会ノ決議案ノ如クナレバ宿屋業等モ無論入ルコトニナリ単ニ宿屋ト云ハヾ細業者ノミノ如クナレドモ外国人ノ宿屋営業ヲ為ス者ノ如キハ決シテ細業トハ云フベカラズ、之ヲ大業ト云フモ決シテ不可ナカラン、然レドモ宿屋業者中ニモ誠ニ細業ナルモノモアレバ、強チ夫等ノ業モ予メ極メ置ク訳ニハ行カザルコトヽ考フ
会頭(若宮商工局長) 此事ニ付テハ大ニ熟考ヲ要スルコトヽ考フ、併シ討論ハ既ニ尽キタルコトヽ認ルニ依リ動議ニ就キ決ヲ採ルベシ、六番ノ動議即チ「商法第四条ノ各号」云々トスル説ニ同意者ハ起立スベシ
  起立者  十六名
会頭(若宮商工局長) 着席総員三十七名ニ対スル十六名、即チ少数ナルヲ以テ六番説ハ消滅ス、引続キ第四条ニ移ルベシ
   (石川属朗読)
 第四条
  二 商業ニ関スル法律規則ノ制定・改正・廃止及ヒ施行方法ニ付意見ヲ官庁ニ開申シ、且ツ商業上ノ利害ニ関スル意見ヲ官庁其他ニ表示スルコト
  三 商業ノ実況及其統計ヲ官庁其他ニ報告スルコト
三十八番(鈴木惣兵衛君) 趣旨ニ於テハ、固ヨリ賛成スル所ナレドモ「官庁其他ニ」トアルヲ「官庁及ヒ其他ニ」ト改メタキ精神ナリ
委員(美濃部属) 委員ニ於テハ「及ヒ」ノ字ハ加ヘザルモ可ナリト信ズ
会頭(若宮商工局長) 三十八番説ハ一応起立ニ問フベシ「及ヒ」ノ字ヲ「官庁」ノ下ニ加フル説ニ同意者ハ起立
  起立者  少数
会頭(若宮商工局長) 少数ナルヲ以テ二読会ノ決議案ニ決ス、次ニ第五条ヲ議スベシ
   (石川属朗読)
 第五条 会議所ノ地区内ニ於テ営業ヲ為シ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者、及ヒ地区内ニ於テ営業ヲ為ス第一条第二項ノ合資会社株式会社並ニ取引所ハ其会議所会員ノ選挙権ヲ有ス
会頭(若宮商工局長) 一応各員ニ相談致シタシ、総テ「及ヒ」「並ニ」
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等ノ用字法ハ、大キク分ツ場合ニ「並ニ」ノ字ヲ用ヒ、小サク分ツ場合ニ「及ヒ」ノ字ヲ用ヰルモノヽ如シ、故ニ本条ニ於テハ「及ヒ」「並ニ」ノ字ハ転倒セシムルヲ以テ至当ナリト考フルガ如何
二十四番(益田君) 唯今会頭ヨリ述ヘラレタル如クナランコトヲ望ム
会頭(若宮商工局長) 他ニ異見ナケレバ字句ハ右様修正スル事ニシ、次ニ第六条ヲ議ニ附ス
   (石川属朗読)
 第六条 三ケ年以上継続シテ会員ノ選挙権ヲ有スル年齢満三十歳以上ノ男子、及ヒ第一条第二項ノ合資会社・株式会社及ヒ取引所ハ会員ノ被選挙権ヲ有ス、但合資会社・株式会社及ヒ取引所ヲ代表スベキ者ハ、法律上其代理権ヲ有スル年齢満三十歳以上ノ男子一人ニ限ル
十七番(法橋君) 本員ハ二読会ニ於テ三ケ年トアルヲ二ケ年トスル修正説ヲ提出シ脆クモ敗ヲ取リタルガ、当読会ニ於テモ二ケ年トスル修正説ヲ提出ス
三十八番(鈴木惣兵衛君) 本員ハ大体ニ於テハ徹頭徹尾原案ヲ賛成ス文字上ニ付キ少シク修正シタキコトハ、会議所会員ハ男子タルコトハ無論分リ切リタルコトナレバ「年齢三十歳以上ノ男子」トアルハ「三十歳以上ノ者」ト修正シタシ
十七番(法橋君) 本員ガ修正意見ハ二読会ニ於テモ敗レタレバ、当読会ニ於テモ杲シテ勝利ノ見込ナシ、然レドモ此事ハ決シテ本員一己ノ私論ニアラズト信ズ、先日モ述ベタル如ク取引所法ニモ仲買営業者ハ二年以上其業務ニ従事スルモノハ免許ヲ与フトノ規定ニナリ居レリ、又陸海軍ノ土木建築受負入札法ノ如キモ二年以上云々トアリテ、開業以来既ニ二年以上経過シタル者ハ其業ノ熟練者タルコトハ自ラ公認スル所ナリ、然ルヲ会議所会員ノ選挙権ヲ有セシムルニ三年以上トスルハ事ノ軽重ヲ計ラザルモノト云フモ不可ナカラン、彼ノ仲買人ノ如キ又受負人ノ如キ幾万ノ金ヲ取扱ヒ、或ハ他人ノ代理ヲ為ス等其責任義務実ニ軽カラザル業務ニ従事スル者ニシテ尚且ツ二年ノ制限ナルニアラズヤ、殊ニ取引所法ノ如キハ特別法ニシテ此規定アルヲ見ル、故ニ本条例ノ如キハ之ヲ三ケ年トスルニ於テハ却テ実例ニ反シ且ツ他ノ法律ト権衡ヲ失スルコトニナレバ、其点ヨリ云フモ二ケ年トスルヲ以テ適当ナリト信ズ
十番(浮田君) 十七番説ヲ賛成ス
二十番(岡崎君) 「満三十歳以上ノ男子及ヒ」トアルハ「並ニ」トナルヲ以テ当然ナリト考フ
会頭(若宮商工局長) 本席ニ於テモ無論然カ改ムヘキモノト考フ
会頭(若宮商工局長) 他ニ意見ナシト認ムルニ依リ決ヲ採ルベシ、十七番説ニ同意者ハ起立
  起立者  四名
会頭(若宮商工局長) 少数ナルヲ以テ十七番説ハ消滅ス、三十八番説ハ賛成者無キヲ以テ成立セス、別ニ異議ナシト認ムルニ依リ第七条ニ移ルベシ
   (石川属朗読)
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 第七条 第五条及ヒ第六条ノ規定中会員ノ選挙権及ヒ被選挙権ニ付テハ、農商務大臣ハ地方ノ状況ニ依リ特ニ所得税額及ヒ会社・取引所ノ資本額ニ基キ財産上ノ資格ヲ定ムルコトヲ得
  所得税法第二十九条但書ニ掲ケタル地方ニ在テハ、農商務大臣ハ所得税ニ代ユルニ其他ノ税ヲ以テシ、且其税額ニ基キ財産上ノ資格ヲ定ムルコトヲ得
八番(水田君) 本条ハ現行法ヨリ却テ其区域狭マリタルモノト考フ、本員ハ現行法ニ規定スル其他ノ国税トアルヨリ、今一層区域ヲ広クシ其他ノ税ヲ加フル事ニ為シタキ精神ナリ
十四番(橋本君) 八番ノ説ハ如何ナル事ヲ入レル精神ナルヤ
八番(水田君) 本員ハ修正案第七条ニ「第五条及第六条ノ規定中会員ノ選挙権及被選挙権ニ関スル財産上ノ資格ニ付テハ、農商務大臣ハ地方ノ情況ニ依リ、特ニ其所得税額及ヒ会社・取引所ノ資本額ニ基キ」トアルヲ「資本額ヲ定メ又ハ其他ノ税ヲ加フルコトヲ得」ト修正シ現行法ヨリ区域ヲ広クスルノ精神ナリ、修正案ノ如クセバ現行法ヨリ却テ区域ヲ狭クスルノ恐レアルナリ
十四番(橋本君) 本員ハ八番説ニハ賛成ヲ表シタキ精神ナルガ、会社ニ其他ノ税ト称スルモノアリシヤ
八番(水田君) 無論会社ニハ適用出来ザルナリ
十四番(橋本君) 八番ノ精神ハ了解シタリ如何ニモ現行法ニ在ル「他ノ国税ヲ加フコトヲ得」トノコトガ修正案ニ削除シアルコトハ心附カザリシナリ、「他ノ国税」トノコトハ本員モ是非存シ置キタキコトヽ考フ
委員(江口属) 現在法ニ其他ノ国税ト在ルニモ拘ハラズ修正案ニ之ヲ削除シタル趣旨ハ、今日迄ノ実験上其必要ヲ見出サヾリシニ依レリ斯ク必要ナキモノヲ掲ゲ置クモ全ク其益ナキモノトシ之ヲ削除シタルナリ
八番(水田君) 益々其区域ヲ広ムベキ今日ニシテ却テ従来ヨリ狭クスルコトハ面白カラザル事ト考フ、故ニ本員ハ斯ク修正シテ其区域ヲ広メント欲スルナリ
会頭(若宮商工局長) 本席ニ於テハ国税ヲ加フルコトハ甚ダ好マザルコトヽ考フ、元来商業会議所ハ成ルベク権能ヲ与ヘ、成ルベク其活動ヲ為ス様追々為スベキモノナレバ、随テ経費モ之ニ伴フテ要スルハ必然ナリ、否ナ相当ノ経費ヲ掛ケルニアラザレバ会議所ノ職務ヲ全フスルコト能ハザルナリ、故ニ会議所ハ余リニ小市街ニハ設置セザル方或ハ可ナラン、加之殆ンド租税同様ナル性質ヲ有スル負担ノ義務ヲ生セシメ経費ヲ徴収シテ組織スルモノナレバ、余リニ多数ノ会議所ヲ起スコトハ好マシカラザル所ナリトス、故ニ今日ニテハ少クモ百人以上ノ所得納税者有ル土地ニアラザレバ其設立ヲ許サヾルコトニ内規シ居ル位ナリ、依テ他ノ税ヲ以テ資格ヲ定ムル様便利ニナシ置クコトハ一利一害アリト考フ、既ニ今日ニシテ全国中三十四箇所ノ会議所アルアレバ、小市街ニ迄及ボスノ必要モナク又実際ニ用ヒタルコトモナケレバ、旁々以テ一般ノ税ニ迄之ヲ及ボサヾルモ可ナリト思惟ス
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十四番(橋本君) 本員ハ矢張リ八番説ヲ賛成ス、国税ナリ其他地方税等ヲ加ヘテ其区域ヲ広クシタキ精神ナリ、尤モ其他ノ税トスルモ特ニ商業ニ関スル税ヲ加フル趣旨ニシテ、地租ノ如ク商業会議所ニ大ニ縁遠キモノハ加フルノ精神ニアラザルナリ、今日ノ如ク単ニ所得税ニ拠ルコトヽスルモ所得税中ニハ独リ商業上ノ収入ニ止マラズ種種ノ収入モ加ハリ居レバ、夫等ノ不権衡ヲ矯ムルノ点ヨリ言フモ商業ニ関スル税額ヲ加フルハ至当ナリト信ス
会頭(若宮商工局長) 八番ノ動議ハ賛成者モアルコトナレバ決ヲ採ルヘシ、「其他ノ税」ヲ加フトノ八番説ニ同意者ハ起立
  起立者  四名
会頭(若宮商工局長) 少数ナルヲ以テ八番説ハ消滅ス、引続キ第八条ヲ議スベシ
   (石川属朗読)
 第八条
  四 破産又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ未ダ復権ヲ得ザル者
八番(水田君) 本員ハ、破産又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ未タ復権ヲ得ザル者ニシテ所得税ヲ納ムル者ハ事実上有リ得ヘカラザルコトト考フ、故ニ本項ハ之ヲ置クノ必要ナシト考フ
会頭(若宮商工局長) 只今八番ヨリ述ベラレタル所ハ参考上一ノ材料ヲ得タルコトヽ考フ、殊ニ本項ニ付テハ確定議ヲ請フモノニアラズシテ、各員ヨリ本省ニ委托セラレ居ル条項ナレバ尚ホ八番説ハ参考ノ料ニ資スルコトニスベシ、引続キ十四条ヲ議スヘシ
   (石川属朗読)
 第十四条 会議所ノ会議ハ、第四条第七項ノ事件ニ係ル会議ハ公開スルコトヲ得ス
  前項ノ外農商務大臣ノ命令又ハ会議所ノ議決ヲ以テ公開ヲ禁スルコトヲ得
会頭(若宮商工局長) 本条ニ付テハ別ニ異議ナキニ依リ、二読会ノ決議案ニ決ス
六番(岡田君) 参考ノ為メ伺ヒ置タシ、会議所条例ニシテ改正発布セラルヽ暁ニ際セバ施行ニ関スル細則等モ発セラルヽコトヽ考フ、然ルニ今回ノ改正案ニテハ「三ケ年以上継続シテ会員ノ選挙権ヲ有スル」云々トアレバ、従来ノ会員中ニハ或ハ資格ヲ失フ者アルヤモ知ルベカラズ、夫等ハ如何相成ルヘキカ
会頭(若宮商工局長) 其事ニ付テハ各員ニ諮問シ置クノ精神ナリ、本条例ハ発布後直チニ施行スルノ考ナルガ、改正条例ノ資格ニ合格セサル者ハ法律ノ結果トシテ会員ノ資格消滅スルハ自然ノ勢ナリ、故ニ其点ニ付テハ改選時機ヲ待テ施行スル事ニスヘキカ、仮令発布後直チニ施行シ会員資格即時ニ消滅スルコトアルモ差支ナシトスルヤ或ハ附則ヲ設ケテ夫等ノ不便ヲ感セサル様致スヘキカ、各員ニ向テ考案ヲ煩ハサント欲スル所ナリ
三十八番(鈴木惣兵衛君) 本員ハ附則ヲ設ケテ改選期限迄ハ継続シ得ル様ナランコトヲ望ム
会頭(若宮商工局長) 例ヘハ甲乙ノ両者条例改正ノ結果ニ依リ無資格
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トナリタルコトアリトセンカ、法律上ニ於テハ改選期迄其儘継続スルコトニナリ居ルモ或ハ自ラ辞任スル如キ事ナキカヲ疑フ、故ニ資格ヲ失フ者意外ニ多数ニシテ為メニ会議所ノ不便ヲ感スル如キコトアラバ、附則ヲ設ケテ之ヲ防クノ方法ヲ取ラザルベカラズ、若シ其憂ヒ無シトセバ附則ヲ設ケザル方可ナリト考フ
十二番(内田君) 本員ハ他ノ法律ト同ジク直チニ施行セラルヽ事ニナルモ、附則ヲ設ケルニ及バザルコトヽ考フ
十七番(法橋君) 本条例ニ於テモ法律制定ノ通則ニ基キ既得権ヲ害セザル権アリタキコトヽ考フ
会頭(若宮商工局長) 最早ヤ異議ナキモノト認ムルニ依リ一応起立ニ問フコトニスベシ、附則ヲ設クルノ必要ナク直チニ施行スルモ差支ナシト云フニ同意者ハ起立
  起立者  多数
会頭(若宮商工局長) 大多数ナルヲ以テ其事ニ決ス、是レニテ此回諮問案ノ議事全ク決了ス
  午後零時三十分閉会式執行
 榎本農商務大臣ハ不破秘書官ヲ随ヘテ入場、直チニ議場ノ正面ニ着席セラル
 会員一同起立敬礼ス
○榎本農商務大臣ハ揖礼ノ後左ノ演説アリ
 此度ノ諮問会ハ実ハ凡ソ一週間モ掛カリマスル見込デアリマシタル所、御一同殊ノ外ノ御勉強ニ依リ僅々四日間ヲ以テ相済ムコトヽナリ、殊ニ諸君ガ誠実懇篤ナル審議ヲ尽サレタル趣キハ商工局長ヨリ篤ト承リマシタ、尚委細ノ事ハ同局長ヨリ聴合セマスルコトニ致シマスガ、大体ニ於テ諸君ガ適当ナル議定ヲナサレタト申スコトハ、我商工業ノ為メ、本大臣ハ諸君ニ向ツテ深ク満足ヲ表スル所デアリマス
 申ス迄モ之レ無キ事ナガラ、御一同ニハ尚ホ此上トモ商工業ノ発達ニ付テ十分御尽力アランコトヲ希望致シマス、即チ是レニテ此度ノ会ヲ閉会致シマス
○次ニ若宮商工局長左ノ演説アリ
 段々御苦労デゴザリマシタガ、御尽力ノ結果玆ニ無事閉会ニナリマシテ深ク喜悦致シマス
 夫レニ就イテ私ガ大ニ諸君ニ向ツテ満足及感謝ノ意ヲ表シタイ事ガ三点ゴザリマス、其第一点ハ過刻大臣カラモ御示シニ成リマシタ通リ、最初少クトモ一週間ハ掛ルテアラウト予定シテ居リマシタ所ノ此ノ会ガ僅カニ四日間ヲ以テ結了致シマシタ、左様ニ速カニ結了致シマシタニモ拘ハラズ、諸君ノ十分経験アル、貴重スベキ御考ヲ承ルコトヲ得マシタノデゴザリマス、是レ全ク諸君ガ定刻、即チ八時ニハ必ラス御集リト云ヒ、又委員会モ四会迄開キマシタケレドモ、誠ニ炎熱ノ候ニモ拘ラズ日中迄御遣リニナリマシタ御勉強ノ結果ニ外ナラヌコトデアリマス、何レノ会デモ大抵時刻ガ後レルモノデアリマスガ、本会ガ十分時刻正シク遣ツタト云フコト、及ビ会員ガ悉ク御勉強ニナツタト云フコトニ付テハ蓋シ他方ニ向ツテ大ニ誇ツテ
 - 第23巻 p.269 -ページ画像 
宜イコトヽ考ヘマス、即チ其ノ誇ツテ宜イト云フコトハ商業会議所タルモノヽ面目デアリ、又諸君ノ御光栄デアラウト考ヘマス、此商業会議所ナリ諸君ノ御光栄ハ、取モ直サズ農商務省ノ光栄デゴザリマス、此点ニ付テハ大ニ感謝満足致シマス
 次キニ感謝満足致シマスノハ、此ノ議事ノ経過ハ余リ四角張ラズ、相談会ノ様ニシテソウシテ規則正シク遣ルト云フコトヲ希望致シマシタガ、果セル哉諸君ノ御挙動・御言論ガ其ノ通リニ参ヒリマシテ所謂協議会・懇話会ト云フ体ヲ以テ規則正シク、秩序ガ乱レル様ナ事モ無ク、十分ニ私共モ愚説ヲ御耳ニ達スルコトヲ得、諸君ノ御高見モ承ルコトヲ得マシタノハ、実ニ感謝シ、満足ノ意ヲ表セナケレバナラヌコトヽ信ジマス
 第三ニハ以上ノ一点及ビ二点ノ結果ト致シマシテ、御議定ニナリマシタル所ノ成績ノ大体ヲ通観致シマスルニ、先ツ適当デアル、允当デアルト断言シテ宜シト考ヘマス、即チ議論ニモ強チ偏シマセズ、又苟クモ情実ニ拘泥スル様ナ事モナク、実用ト理論ト交モ交モ相挙ガリ相備ツテ居ルコトハ、其ノ各条ニ現ハレテ居ル所ノ成績ガ適例デアラウト認メマス
 何レ此ノ三点ノ次第ヲ農商務大臣ニモ具申致シ、議定ノ条項ヲ御目ニ掛ケテ、具サニ私ノ所見モ復命致ス積リデゴザリマス、而シテ農商務大臣ガ一カラ十迄諸君ノ御議定ノ条項ヲ採用サレルヤ否ヤト云フコトハ、商工局長ガ今カラ予知致スコトハ出来マセンガ、退イテ其ノ実際ヲ察知致シマスルニ、蓋シ斯ノ如ク大体ニ於テ適良且ツ允当ナル御議定デゴザリマスカラ、多分ハ農商務大臣ニ於テモ御採用ニナルコトヽ考ヘマス
 果シテ農商務大臣ガ之ヲ採用ニ相成リマシテ、帝国議会モ亦之ニ協賛ヲ与ヘ、我ガ叡聖文武天皇陛下ノ御裁定ガ済マセラレマシテ之ガ帝国ノ成文法律ト成リマシタナラバ、実ニ商業会議所ト云フモノハ我カ国ノ商業・工業ノ発達及ビ整斉ニ向ツテ公益ヲ現ハスト云フコトハ、之ヲ今日ノ状況ニ比シマシテ更ニ一段ヲ加ヘルコトデアラウト今カラ断言シテ宜シカラウト思ヒマス、即チ諸君ガ此ノ商業上繁忙ノ季節ナルニモ拘ハラズ、又炎熱熾クガ如キ期節ナルニモ拘ハラズ、日々御勤勉ナサレマシテ十分ニ御所見ヲ御述ベ下サレタト云フ結果ガ社会ニ現ハレテ効用ヲ為スノデアリマスカラ、諸君ハ何レ此ノ議定ガ帝国ノ成文法律トナリ効用ヲ現ハスノヲ見テ、今日ノ御労苦ヲ御慰メニナルダラウト考ヘマスガ、本官ハ即チ諸君ガ其ノ結果ヲ見テ労苦ヲ慰メラルノ時期アルコトヲ、今ヨリ首ヲ伸ベテ相俟ツテ居ルノデゴザリマス
 即チ諸君カ御集リニナリマシテ勤勉ニシテ且ツ誠実ナル意見ヲ御述ベ下サレタ結果ガ、果シテ帝国ノ法律トナリマシタナラバ、是レハ実ニ諸君ノ御功労ニ相違ナイ、諸君ガ国家ニ御尽シニナル誠心誠意ガアツテ出テ来タモノニ相違ゴザリマセヌ、商業会議所条例ハ明治廿三年以来帝国ニ成立シテ、全国須要ノ地ニ此商業会議所ガ設立ニナリマシタガ、其会議所ノアルト云フコトガ亦与ツテ力アルノデアリマス、若シ此ノ会議所ガ法律ニ依ツテ設定サレテ居ラナカツタナ
 - 第23巻 p.270 -ページ画像 
ラバ、此ノ如キ貴重ナル、有益ナル御考案ヲ斯ノ如ク十分ニ承ルコトハ出来ヌノデゴザリマス、シテ見ルト此ノ商業会議所ハ帝国ノ福利ヲ増進シ、人民ノ利益ヲ増加スルト云フコトニ向ツテ重大ナル効果ヲ奏スルト云フコトハ、此ノ一事ヲ以テモ十分ニ信ジ得ルコトヽ思ヒマス、斯ク議定ニナリマシタ成案ガ果シテ法律トナリ発布ニナツタ以上ハ、更ニ一段ノ効果ヲ奏スルデアラウト思ヒマスカラ、諸君ハ益々此ノ機関ヲ運用シテ此ノ効果ヲ全フセラレンコトヲ希望致シマス
 何レ帝国ノ商業・工業ハ今後益々発達シテ其ノ歩ヲ進ムルニ相違ゴザリマスマイ、シテ見レバ其ノ発達ヲ謀ル可キ商業会議所ノ必要及ビ其効験ヲ現ハスベキ責務ト云フモノモ益々増加致シ、一ニ諸君ノ御尽力ヲ要スルコトガ益々増加致スニ相違アリマセヌ、故ニ今此ノ閉会ニ臨ンデ私ハ諸君ニ厚ク希望シマスルコトガ二点ゴザリマス
 其ノ一点ハ諸君ガ身体ヲ御健全ニナサレルコトト、第二点ハ諸君ガ益々商工業ノ発達ニ就イテ御尽力アランコトヲ希望致スノデゴザリマス、聊カ感謝ノ意ヲ表シ且ツ満足ノ意ヲ現ハス為メニ、一言ヲ述ベテ置キマス
○次ニ二十九番席渋沢栄一君ハ会員一同ニ代リ左ノ演説アリ
 本諮問会モ今日結了ヲ告ケマシテ、其閉会ノ場合ニ於テ諮問会ノ会長タル若宮商工局長ヨリ我々一同ヘ懇切ナル御褒詞ヲ頂戴致シマシタ、且ツ日本ノ商業ニ取ツテ最モ有用ナル機関トスヘキ各地ノ商業会議所ニ対シテハ、将来之ヲ紳ニ記スヘキ程ノ御訓誡ヲ下サレマシテ我々ハ誠ニ感謝ニ堪ヘマセヌ、就キマシテハ右ノ御言葉ニ答ヘマスル為メニ私ハ玆ニ一言ノ蕪詞ヲ申上ケマス
 本諮問会ハ明治廿三年ニ発布ニナツタル所ノ商業会議所条例ニ、時勢ノ進歩ニ依ツテ一部分ノ修正ヲ加ヘネバナラヌト云フ必要ヨリシテ開カレタルモノデアリマス、而シテ此必要ト云フコトハ行政官庁タル農商務省ニ於テモ之ヲ認定セラレ、我々商業会議所モ疾クニ其考ヘヲ附ケテ居リマシタカラ、云ハヾ官民共ニ之ガ修正ヲ必要トスルヨリシテ成立チタルモノト申シテモ宜シイト思ヒマス
 明治廿三年ニ出サレマシタ法律ヲ二十七年ノ今日ニ修正スルト云フコトハ、或ハ先ノ法律ガ不完全デハナカツタカト云フ他ノ批評ガ起ルカモ知レマセヌガ、我々ハ今日事物ノ進歩スル結果ナリト答ヘタイト思ヒマス、目今ノ世ノ中ガ日ヲ追フテ進歩シテ来ル上ヨリ見マスレバ三年・四年ノ時間ハ決シテ短日月トハ申サヌガ宜シカラウト思フノデゴザリマス
 且其修正案トシテ農商務大臣ヨリ御示シニナツタモノニ付テ、我々一同ガ誠心誠意ヲ以テ之ニ御答ヘシマシタノハ事実上明白ナル次第ニテ、其修正ノ結果ヨリ之ヲ見レハ少クトモ或ハ疑義ヲ解キ或ハ紛冗ヲ避ケ、又或ハ一部分ノ区域ヲ拡張シ、商業会議所タルモノヽ商業社会ニ於テ施為スル所ノ権利ヲ増シタト云フニ帰スルノデゴザリマス、一同之ニ対シテ審議討論スル間ニ於テハ、或ハ此条ハ斯クアレカシ或ハ斯クシナケレバナラヌト認メタ意見ノ排斥サレタル箇条モアリマシタラウガ、前ニ申ス諸点ニ於テハ修正案ニシテ決シテ失
 - 第23巻 p.271 -ページ画像 
ハヌコトデアラウト信ジマス
 前ニ申ス如ク官民共ニ必要トスル此議事ガ道理正シク、誠心誠意ヲ以テ決了サレタルモノデアルナラバ農商務大臣ニ於テモ採用セラルルデゴザリマセウ、果シテ然ラバ来年ハ我々ハ此修正サレタル所ノ法律ニ依ツテ之ニ従事スル場合ニ相成ルデアラウト翹足シテ之ヲ待チマスル
 偖商業会議所ハ商業社会ニ於テ重要ナル機関デアリマスレバ、各々尚ホ将来ヲ勉強シテ、国家ノ商工業ノ発達ニ且ツ整斉ニ熱心尽力スル所アルヤ否ヤト斯様ニ申シマシタナラバ、諸君ハ等シク御尤千万我々ハ敢テ辞シマセヌト御答ヘナサレルニ相違ゴザリマセヌ、一人一己ノ考ヘハサウデゴザリマスル、ケレドモ機関ト云フモノハ是非適正ノ組織ニ依ルノガ必要デアリマス、今若宮商工局長ヨリノ御言葉ニモ、斯ク一堂ニ会シテ此修正ニ就イテ十分ニ討論シテ而シテ至当ナル議決ヲ得ルト云フモノハ、商業会議所条例ト云フ法律カラシテ斯ル満足ヲ得ラレルト申サレタト同様ニシテ、此機関ヲ備ヘルニモ又一ツノ要素ガアツテ存スルモノト信シマス、而シテ其要素トハ即チ時勢ノ必要ニ迫ツテ相互ノ希望カラ生ゼシメタト云フコトモ亦十分ニ力アル事柄ト考ヘマス、現ニ今日商業会議所ト申スモノハ地方ニ斯ノ如ク多ク成立チ、各地共ニ精励シテ其地ノ商業ヲ繁盛ニシ相集テハ国家ノ商業ヲ繁昌ニシ、終ニ之ヲ大ニシテ欧米各国ニ迄モ我邦ノ商業勢力ヲ普及セシムルト云フ程ニ、即チ開会ノ当日ニ次官ガ御述ベニナツタト同ジ様ナ希望ヲ持テ、相共ニ勉励尽力セネバナリマセヌガ、商業会議所ノ本ノ起原ヲ回顧シマスレバ、明治十五・六年ノ頃東京・大坂・京都、二・三ケ所ニ於テ斯ル組織ガ必要デアルト云フノデ、有志者ヲ以テ僅カニ其端緒ヲ開イタノデアリマス、今其沿革ナドハ此処デ喋々スル必要ハナイガ、既ニ其必要ヲ日本ノ商人間ニ認メテカラ十二年ノ星霜ヲ経テ初テ法律ヲ以テ之ヲ規定セラレマシテ、而シテ法律制定ノ後五年ニシテ又之ヲ修正シテ権利ノ拡張ヲ謀ルト云フコトニナリマシタ、シテ見マスルト前ノ十二・三年間ヨリ後ノ四・五年間ハ大変ニ早ク進ンデ来タ、之ヲ例ヘテ見ヤウナラバ、生レ出タ小児ガ其成長ノ度合ニ於テ十四・五歳ノ頃迄ト二十前後トハ体格・知識ノ発達ニ於テ大ニ遅速アルト同様ニテ、向後ハ世ノ進歩ガ日一日ト進ムニ従テ夫レニ伴ツテ行クハ当然ノコトデアラウト思ヒマス
 斯ク考ヘテ見マスルト、我々商業社会ノ進歩ハ既往ノ十七年間ヲ以テ将来ノ十七年間ヲ観測スルコトハ出来ヌ、即チ後ノ十七年ハ二層モ三層モ進ムト考ヘテ宜シイ、又進ミ得ルデアラウト思ヒマス
 此世ノ中ニ対シ十分ナル機関タル所ノ此商業会議所ヲ維持シテ、世運ノ隆盛ヲ裨補シ商業ノ拡張ヲ奨励スルハ実ニ我々ノ責任ト考ヘナケレバナリマセヌ、冀クハ今此修正セラレシ条例ニ依ツテ、我々ハ商業上ノ機関ヲ十分ニ運用シ、世ノ効用ヲ現ハスコトヲ期シマス、諸君ノ御意中ヲモ推シ測リ、唯今懇篤ナル会長ノ御言葉ニ対シ一言ノ謝詞ヲ述ヘマス
是レニテ式全ク畢リ一同退散ス
 - 第23巻 p.272 -ページ画像 
  午後一時閉会
   ○右掲資料ハソノ添附セル正誤表ニヨリ訂正ヲ加ヘタリ。


東京商業会議所月報 第二六号・第一頁 明治二七年一〇月 【○九月十八日午後六時…】(DK230032k-0004)
第23巻 p.272 ページ画像

東京商業会議所月報  第二六号・第一頁 明治二七年一〇月
○九月十八日午後六時三十分、本会議所事務所ニ於テ臨時会議ヲ開ク当日出席会員ハ三十人ニシテ左ノ件々ヲ審議シ午後八時十分閉会ス
 一、商業会議所条例改正案諮問会ノ儀ニ付報告ノ件
                      (参会員提出)
本件ハ全会一致ヲ以テ其報告ヲ承認ス(報告書ノ全文ハ参照ノ部第一号ニ掲載ス)


東京商業会議所月報 第二六号・第三―八頁 明治二七年一〇月 【○参照第一号 九月十八日ノ臨時会…】(DK230032k-0005)
第23巻 p.272-278 ページ画像

東京商業会議所月報  第二六号・第三―八頁 明治二七年一〇月
○参照第一号
 九月十八日ノ臨時会議ニ於テ提出シタル商業会議所条例改正案諮問会ノ儀ニ付報告ハ左ノ如シ
先般全会ノ附託ニ依リ農商務省ニ於テ開会セル商業会議所条例改正案諮問会ヘ出席シ会議ニ参与候処、其議事ノ顛末ハ概略別紙ノ通リニ有之候、尚別ニ該会議事録ヲ添付候間、委細ノ義ハ右ニテ御了承相成度此段及御報告候也
  明治二十七年八月十八日
                    参会員
                      益田克徳
                      渋沢栄一
    東京商業会議所会頭 渋沢栄一殿
(別紙)
明治二十七年七月二日ヨリ同六日迄五日間、農商務省ニ於テ商業会議所条例改正案諮問会ヲ開設セラレタルガ、同省ノ召集ニ応シ各商業会議所及地方庁ヨリ該会ヘ出席ノ諸君ハ左ノ如シ
                福井商業会議所
               副会頭  鷲田土三郎
                桑名商業会議所
               会員   羽柴茂三郎
                 北海道庁技師
                    伊吹鎗造
                栃木商業会議所
               副会頭  石塚新吾
                大津商業会議所
               会頭   村田六之助
                神戸商業会議所
               副会頭  岡田元太郎
                豊橋商業会議所
               常議員  高橋小十郎
                高知商業会議所
               常議員  水田正夫
 - 第23巻 p.273 -ページ画像 
                青森商業会議所
               副会頭  柿崎忠兵衛
                大坂商業会議所
               会頭   浮田桂造
                愛知県属
                    近藤繁
                浜松商業会議所
               会員   内田政治
                京都商業会議所
               会頭   浜岡光哲
                津商業会議所
               副会頭  橋本清助
                鹿児島商業会議所
               理事   奥常次郎
                岡山商業会議所
               会員   狭間左兵衛
                大坂商業会議所
               会員   法橋善作
                四日市商業会議所
               副会頭  伊藤伝七
                宇都宮商業会議所
               会頭   上野松次郎
                熊本商業会議所
               会頭   岡崎唯雄
                鹿児島県属
                    岩山直方
                滋賀県参事官
                    渡辺長謙
                富山県属
                    掛飛秀
                東京商業会議所
               常議委員 益田克徳
                京都府属
                    大沢敬之
                静岡県属
                    星田茂幹
                福井県属
                    斎藤十郎
                堺商業会議所
               会頭   藤本荘太郎
                東京商業会議所
               会頭   渋沢栄一
                岡山県属
                    高木孝文
 - 第23巻 p.274 -ページ画像 
                岐阜県属
                    柿元一兵
                岐阜商業会議所
               常議員  永井靖九郎
                尾ノ道商業会議所
               副会頭  石井聿三
                博多商業会議所
               常議員  是松右三郎
                広島商業会議所
               副会頭  岡野七右衛門
                宮城県属
                    武沢愛治郎
                名古屋商業会議所
               副会頭  鈴木惣兵衛
                岡崎商業会議所
               会員   鈴木岩吉
                静岡商業会議所
               副会頭  北村五郎兵衛
                赤間関商業会議所
               副会頭  松尾寅三
                金沢商業会議所
               会頭   水登勇太郎
                熊本県属
                    宮田去疾
                仙台商業会議所
               副会頭  佐藤三之助
農商務省ヨリ右諮問会ヘ附セラレタル議案ハ左ノ如シ
    ○諮問会ノ議案
商業会議所条例修正諮問案
 第一条 此条例ニ商業者ト称スルハ左ニ掲クルモノヲ謂フ
  一営業ノ目的ヲ以テ左ノ業務ヲ為ス者
    産物ノ交換・販売ヲ目的トスル取引
    製造工業及ヒ手職業ニ係ル作業及ヒ取引
    人及ヒ物ノ運送ニ係ル作業及ヒ取引
    航漕ニ係ル作業及ヒ取引
    建築ニ係ル作業及ヒ取引
    銀行営業ニ係ル作業及ヒ取引
    流通シ得ヘキ信用証券ノ発行及ヒ流通ニ係ル作業及ヒ取引
    商ノ為メニ為シ又ハ受クル倉庫寄託及ヒ其他ノ寄託ニ係ル作業及ヒ取引
    船舶ノ売買・質入・抵当・構造・修繕・艤装及ヒ乗組ニ係ル作業及ヒ取引
    取引所ノ取引
    保険ニ係ル作業及ヒ取引
 - 第23巻 p.275 -ページ画像 
    公ニ開キタル店舗・帳場若クハ其他ノ営業所ニ於テ又ハ公告ヲ為シテ営ム両替、及ヒ利息若クハ其他ノ報酬ヲ受クル金銭貸附
    公ナル周旋所及ヒ代弁ノ営業
    受負作業ノ引受
  二第一項ニ掲ケタル業務ヲ為ス商事会社及ヒ取引所
  三第一項ニ掲ケタル業務ヲ為ス合名会社ノ社員、合資会社ノ業務担当社員・無限責任社員、株式会社ノ取締役及ヒ取引所ノ理事長・理事タル者
  四第一項ニ掲ケタル業務ヲ為ス者ノ支店・出張店及ヒ第一項ニ掲ケタル業務ヲ為ス商事会社ノ支店・出張店ノ長タル者
 第四条
  二商業ニ関スル法律規則ノ制定・改正・廃止及ヒ施行方法ニ付意見ヲ官庁ニ開申シ、且商業上ノ利害ニ関スル意見ヲ官庁其他ニ表示スル事
  三商業ノ実況及ヒ其統計ヲ官庁其他ニ報告スルコト
 第五条 会議所ノ地区内ニ住居シテ営業ヲ為シ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者ハ、其会議所会員ノ選挙権ヲ有ス
 第六条 三ケ年以上継続シテ会員ノ選挙権ヲ有スル年齢満三十歳以上ノ男子及ヒ第一条第二項ノ商事会社及ヒ取引所ハ会員ノ被選挙権ヲ有ス、但商事会社及ヒ取引所ヲ代表スヘキ者ハ法律上其代理権ヲ有スル年齢満三十歳以上ノ男子一人ニ限ル
 第七条 第五条及ヒ第六条ノ規定中会員ノ選挙権及ヒ被選挙権ニ関スル財産上ノ資格ニ付テハ、農商務大臣ハ地方ノ状況ニ依リ特ニ所得税額及ヒ会社・取引所ノ資本額ヲ定ムルコトヲ得
  所得税法第二十九条但書ニ掲ケタル地方ニ在テハ、農商務大臣ハ所得税ニ代ユルニ其他ノ税ヲ以テシ、且其税額ヲ定ムルコトヲ得
 第八条
  四破産又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ未タ復権ヲ得サル者
 第十四条 会議所ノ会議ハ、第四条第七項ノ事件ニ係ル会議ハ公開スルコトヲ得ス
  前項ノ外農商務大臣ノ命令又ハ会議所ノ議決ヲ以テ公開ヲ禁スルコトヲ得
右議案各条ニ就キ諮問会ノ議事ノ経過ヲ略記スレハ左ノ如シ
    ○諮問会ノ議事ノ経過
 議案第一条
  本条中第一項ハ委員ヲ選ンテ調査ヲ附託シタルニ、該委員ハ左ノ修正意見ヲ報告シタリ
   第一営業ノ目的ヲ以テ左ノ業務ヲ為ス者
    一物品ノ交換・販売及賃貸ヲ目的トスル取引
    二製造工業及手職業ニ係ル作業及取引
    三取引所ノ取引
    四人及物ノ運送ニ係ル作業及取引
    五銀行営業
 - 第23巻 p.276 -ページ画像 
    六倉庫寄託及其他ノ寄託ニ係ル作業及取引
    七流通シ得ヘキ信用証券ノ発行及流通ニ係ル作業及取引
    八両替・金銭貸附及質営業
    九委託売買・仲立及代弁ノ営業
    十保険営業
    十一船舶ノ売買・賃貸・構造・修繕ニ係ル作業及取引
    十二航漕ニ係ル作業及取引
    十三土木建築ニ係ル作業及取引
    十四受負業
  依テ右修正意見ヲ議題トシテ議事ニ附シタルニ、遂ニ成立セスシテ本条ハ衆議ノ末左ノ如ク決ス
   第一条 此条例ニ商業者ト称スルハ左ニ掲クルモノヲ謂フ
     一商法第四条ニ定メタル商取引及ヒ第五条第一号・第三号第四号・第六号ニ掲ケタル取引ヲ営業ト為ス者
     二第一項ニ掲ケタル取引ヲ営業ト為ス合資会社・株式会社及取引所
     三第一項ニ掲ケタル取引ヲ営業ト為ス合名会社ノ社員、合資会社ノ業務担当社員・無限責任社員、株式会社ノ取締役及ヒ取引所ノ理事長・理事タル者
 同第四条
  本条ハ衆議ノ末全ク原案ニ決ス
 同第五条
  本条ハ委員ヲ選ンテ調査ヲ附託シタルニ、該委員ハ左ノ修正意見ヲ報告シタリ
   第五条 会議所ノ地区内ニ於テ営業ヲナシ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者、及ヒ地区内ニ於テ営業ヲ為ス第一条第二項ノ合資会社・株式会社並ニ取引所ハ、其会議所会員ノ選挙権ヲ有ス
  依テ右修正意見ヲ議題トシテ議事ニ附シタルニ、衆議ノ末本文中「及ヒ」及ヒ「並ニ」ノ文字ヲ互ニ転置シ、其他ハ委員ノ修正意見ニ決ス
 同第六条
  本条ハ「会員ノ選挙権ヲ有スル年齢満三十歳以上ノ男子」ノ下及ヒヲ並ニト改メ、商事会社ヲ合資会社・株式会社ト改メ、其他ハ原案ニ決ス
 同第七条
  本条ハ衆議ノ末左ノ如ク決ス
   第七条 第五条及ヒ第六条ノ規定中会員ノ選挙権及ヒ被選挙権ニ付テハ、農商務大臣ハ地方ノ状況ニ依リ特ニ所得税額及ヒ会社・取引所ノ資本額ニ基キ財産上ノ資格ヲ定ムルコトヲ得所得税法第二十九条但書ニ掲ケタル地方ニ在テハ、農商務大臣ハ所得税ニ代ユルニ其他ノ税ヲ以テシ、且其税額ニ基キ財産上ノ資格ヲ定ムルコトヲ得
 同第八条
 - 第23巻 p.277 -ページ画像 
  本条ハ衆議ノ末全ク原案ニ決ス
 同第十四条
  本条ハ衆議ノ末全ク原案ニ決ス
今玆ニ一覧ニ便センカ為メ、諮問会ガ審議ヲ経テ確定シタル決議案ヲ示セバ左ノ如シ
    ○諮問会ノ決議案
 第一条 此条例ニ商業者ト称スルハ左ニ掲クルモノヲ謂フ
  一商法第四条ニ定メタル商取引及ヒ第五条第一号・第三号・第四号・第六号ニ掲ケタル取引ヲ営業ト為ス者
  二第一項ニ掲ケタル取引ヲ営業ト為ス合資会社・株式会社及ヒ取引所
  三第一項ニ掲ケタル取引ヲ営業ト為ス合名会社ノ社員、合資会社ノ業務担当社員・無限責任社員、株式会社ノ取締役及ヒ取引所ノ理事長・理事タル者
 第四条
  二商業ニ関スル法律規則ノ制定・改正・廃止及ヒ施行方法ニ付意見ヲ官庁ニ開申シ、且商業上ノ利害ニ関スル意見ヲ官庁其他ニ表示スルコト
  三商業ノ実況及ヒ其統計ヲ官庁其他ニ報告スルコト
 第五条 会議所ノ地区内ニ於テ営業ヲ為シ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者、並ニ地区内ニ於テ営業ヲ為ス第一条第二項ノ合資会社・株式会社及ヒ取引所ハ、其会議所会員ノ選挙権ヲ有ス
 第六条 三ケ年以上継続シテ会員ノ選挙権ヲ有スル年齢満三十歳以上ノ男子並ニ第一条第二項ノ合資会社・株式会社及ヒ取引所ハ会員ノ被選挙権ヲ有ス、但合資会社・株式会社及ヒ取引所ヲ代表スヘキ者ハ法律上其代理権ヲ有スル年齢満三十歳以上ノ男子一人ニ限ル
 第七条 第五条及ヒ第六条ノ規定中会員ノ選挙権及ヒ被選挙権ニ付テハ、農商務大臣ハ地方ノ状況ニ依リ特ニ所得税額及ヒ会社・取引所ノ資本額ニ基キ財産上ノ資格ヲ定ムルコトヲ得
  所得税法第二十九条但書ニ掲ケタル地方ニ在テハ、農商務大臣ハ所得税ニ代ユルニ其他ノ税ヲ以テシ、且其税額ニ基キ財産上ノ資格ヲ定ムルコトヲ得
 第八条
  四破産又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケ未タ復権ヲ得サル者
 第十四条 会議所ノ会議ハ、第四条第七項ノ事件ニ係ル会議ハ公開スルコトヲ得ズ
  前項ノ外農商務大臣ノ命令又ハ会議所ノ議決ヲ以テ公開ヲ禁スルコトヲ得
  附記 前記農商務省ヨリ諮問会ニ附セラレタル議案第一条会員ノ選挙被選挙権ノ資格ニ関スル件ヲ審議スルニ当リ、本員等両人ハ兼テ本会議所ノ決議ヲ体シテ原案ノ趣旨ニ反対シ、勉メテ株式会社ノ取締役等ニ一個トシテ選挙権ヲ与フベカラストノ説ヲ主張シタリト雖モ、諮問会員ノ多数ハ本会議所ノ意見ヲ容レズ
 - 第23巻 p.278 -ページ画像 
遂ニ前記決議案ノ如ク確定シタリ、為念一言ヲ附ス
   ○諮問会ノ決議ハ殆ド採用セラレ、明治二十八年三月法律第二十三号ヲ以テ商業会議所条例改正セラレタリ。
   ○旧商業会議所条例ニ就イテハ本資料第十九巻所収「東京商工会」明治二十三年八月二十八日ノ条参照。
   ○商業会議所条例ノ修正ハ既ニ明治二十五年頃ヨリ屡々東京商業会議所・商業会議所聯合会等ニ於テ問題トナリ、栄一モ之ニ参与セリ。本資料第二十巻所収「東京商業会議所」明治二十五年九月十九日・同年十二月十五日・同二十六年九月二十二日・同年十一月十八日・同二十七年六月二十七日・同年九月二十六日ノ各条参照。
   ○明治三十五年三月二十五日、商業会議所法公布セラレ、商業会議所条例ハ廃止セラレタリ。本資料第二十一巻所収「東京商業会議所」明治三十五年四月十二日ノ条参照。



〔参考〕法令全書 明治二八年 内閣官報局編 刊 法律第二十三号(官報三月三十日)(DK230032k-0006)
第23巻 p.278-280 ページ画像

法令全書 明治二八年  内閣官報局編 刊
法律第二十三号(官報三月三十日)
明治二十三年法律第八十一号商業会議所条例中左ノ通改正ス
第一条 此条例ニ商業者ト称スルハ左ニ掲クル者ヲ謂フ
 一 商法第四条ノ商取引及同第五条第一号・第三号・第四号・第六号ニ掲ケタル取引ヲ営業トスル者
 二 第一項ニ掲ケタル取引ヲ営業トスル合資会社・株式会社及取引所
 三 第一項ニ掲ケタル取引ヲ営業トスル合名会社ノ社員、合資会社ノ業務担当社員・無限責任社員、株式会社ノ取締役及取引所ノ理事長・理事
第四条第二項・第三項・第四項・第五項ヲ左ノ通改ム
 二 商業ニ関スル法律・命令、其他諸条規ノ制定・改正・廃止及施行方法ニ付意見ヲ行政庁ニ開申シ、且商業上ノ利害ニ関スル意見ヲ行政庁其他ニ表示スルコト
 三 商業ノ実況及其統計ヲ行政庁其他ニ報告スルコト
 四 商業ニ関スル事項ニ付、行政庁ノ諮問ニ応答スルコト
 五 法律・命令、其他諸条規若クハ行政庁ノ委任ニ依リ、其地ノ公設営業所・仲立人組合及商業ニ関スル諸営造物ヲ管理スルコト
第五条 会議所設立地ニ於テ第一条第一項ノ営業ヲ為シ又ハ第一条第三項ノ社員役員トナリ其地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者、並会議所設立地ニ於テ営業スル第一条第二項ノ会社及取引所ハ、其会議所会員ノ選挙権ヲ有ス
第六条 会員ノ選挙権ヲ有スル会社及取引所並三箇年以上継続シテ会員ノ選挙権ヲ有スル年齢満三十歳以上ノ男子ハ、会員ノ被選挙権ヲ有ス
 会社及取引所ヲ代表スベキ者ハ第一条第三項ニ該当スル其社員役員ニシテ、年齢満三十歳以上ノ男子一人ニ限ル
第七条 第五条及第六条ニ掲ケタル会員ノ選挙権及被選挙権ニ関スル財政上ノ資格ニ付テハ、農商務大臣ハ地方ノ情況ニ依リ所得税額又ハ会社・取引所ノ資本額ニ基キ特ニ之ヲ規定スルコトヲ得
 - 第23巻 p.279 -ページ画像 
 所得税法第二十九条但書ニ掲ケタル地方ニ在テハ、農商務大臣ハ所得税ニ代フルニ他ノ税ヲ以テシ、且其税額ニ基キ財産上ノ資格ヲ定ムルコトヲ得
第十四条第一項ヲ左ノ通改ム
 第四条第七項ノ事件ニ係ル会議所ノ会議ハ公開スルコトヲ得ス
  附則
第二十三条 会議所会員ハ此条例ノ改正ニ依リ被選ナ資格ニ異動ヲ生スルモ、任期中ハ其職ヲ失ハサルモノトス

〔参照〕
 法律第八十一号商業会議所条例(明治二十三年九月十二日官報)抄録
第一条 此条例ニ商業者ト称スルハ、商法第四条ニ掲ケタル商取引ノ各部類ニ属スル商人及作業人ヲ謂フ
第四条 会議所ノ事務権限左ノ如シ
 二 商業ニ関スル法律規則ノ制定・改正・廃止及施行方法、其他商業上ノ利害ニ関スル意見ヲ官庁ニ開申スルコト
 三 商業ノ実況及其統計ヲ官庁ニ報告スルコト
 四 商業ニ関スル事項ニ付官庁ノ諮問ニ応答スルコト
 五 法律・命令若クハ官ノ委任ニ依リ其地ノ公設営業所・仲立人組合及商業ニ関スル諸営造物ヲ管理スルコト
 七 関係人ノ請求ニ依リ、其地ノ商業ニ関スル紛議ヲ仲裁スルコト
第五条 会議所設立地ノ商業者ニシテ所得税ヲ納ムル者ハ、会員ノ選挙権ヲ有ス
第六条 会議所設立地ニ於テ所得税ヲ納ムル商業者ニシテ年齢三十歳以上ノ男子及商事会社ハ、会員ノ被選挙権ヲ有ス
 商事会社ヲ代表スヘキ者ハ、法律上其会社ノ代理権ヲ有スル者一員ニ限ル
第七条 第五条及第六条ノ規定中会員ノ選挙権及被選挙権ニ関スル財政上ノ資格ニ付テハ、農商務大臣ハ地方ノ情況ニ依リ省令ヲ以テ特ニ其所得税ノ等級ヲ定メ、又ハ他ノ国税ヲ加フルコトヲ得
第十四条第一項
 会議所ノ会議ハ、第四条第二項・第四項及第七項ノ事件ニ係ル会議ハ公開スルコトヲ得ス

 法律第三十二号商法(明治二十三年四月二十六日官報)抄録
第四条 商取引トハ売買・賃貸又ハ其他ノ取捌ノ方法ニ因リ、産物・商品又ハ有価証券ノ転換ヲ以テ利益ヲ得又ハ生計ノ為メニスル旨趣ニテ直接又ハ間接ニ行フ所ノ総テノ権利行為ヲ謂フ、殊ニ左ニ掲クルモノハ商取引ニ属ス
  第一 産物ノ交換・販売ヲ目的トスル取引
  第二 製造工業及ヒ手職業ニ係ル作業及ヒ取引
  第三 人及ヒ物ノ運送ニ係ル作業及ヒ取引
  第四 航漕ニ係ル作業及ヒ取引
  第五 建築ニ係ル作業及ヒ取引
 - 第23巻 p.280 -ページ画像 
  第六 銀行営業ニ係ル作業及ヒ取引
  第七 流通シ得ヘキ信用証券ノ発行及ヒ流通ニ係ル作業及ヒ取引
  第八 商ノ為メニ為シ又ハ受クル倉庫寄託及ヒ其他ノ寄託ニ係ル作業及ヒ取引
  第九 船舶ノ売買・質入・抵当・構造・修繕・艤装及ヒ乗組ニ係ル作業及ヒ取引
  第十 取引所ノ取引
  第十一 保険ニ係ル作業及ヒ取引
第五条 其他左ニ掲クルモノハ之ヲ商取引ト看做ス
  第一 公ニ開キタル店舗・帳場若クハ其他ノ営業所ニ於テ又ハ公告ヲ為シテ営ム両替、及ヒ利息若クハ其他ノ報酬ヲ受クル金銭貸付
  第三 商事ニ於ケル各般ノ代理及ヒ委任
  第四 公ナル周旋所及ヒ代弁ノ営業
  第六 受負作業ノ引受

 勅令第五号所得税法(明治二十年三月二十三日官報)抄録
第二十九条
  但北海道・沖縄県及東京府管轄小笠原島・伊豆七島ニ於テハ、官府ヨリ受クル俸給・手当・年金及恩給金ノ外ハ当分ノ内之ヲ施行セス