デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

4章 教育
2節 女子教育
2款 日本女子大学校
■綱文

第26巻 p.910-912(DK260167k) ページ画像

明治41年4月20日(1908年)

是日栄一、当校創立第七回記念式並ニ藤田伝三郎ノ寄贈セル「香雪化学館」開館式、栄一ノ寄贈セ
 - 第26巻 p.911 -ページ画像 
ル「晩香寮」ノ開寮式ニ臨ミ祝辞ヲ述ブ。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四一年(DK260167k-0001)
第26巻 p.911 ページ画像

渋沢栄一 日記  明治四一年     (渋沢子爵家所蔵)
四月二十日 晴 暖
○上略 午飧後小石川豊川町女子大学ニ抵リ、創立紀念祭ニ出席シ、一場ノ祝詞ヲ述フ、畢テ化学館及晩香寮等ヲ一覧シ、晩ニ晩香寮ニ於テ夜飧ス、寮生総代ヨリノ謝詞ヲ受ケ、玆ニ一場ノ演説ヲ為ス、夜十時王子ニ帰宿ス


家庭週報 第一四一号 明治四一年四月二五日 日本女子大学校第七回創立紀念式 香雪化学館開館式 晩香寮開寮式(DK260167k-0002)
第26巻 p.911-912 ページ画像

家庭週報  第一四一号 明治四一年四月二五日
  日本女子大学校第七回創立紀念式
          香雪化学館開館式
          晩香寮開寮式
  当日の光景
 四月廿日、三つの式を併せ行ふ此の日、一重は早や葉桜の眺めなれど、若緑さし添ふひまに、八重は真盛り、晩春の日光は麗らかに、香雪化学館の甍を照らし、晩香寮の窓を照らし、一万七千余坪の校庭に存在するすべての建物と、樹木と、人とに、洽く春の幸を享けよと照らす。
 午後二時、君が代の合唱を以て式は始まる、麻生学監司会の下に、先づ附属小学校生徒・幼稚園児童の祝歌あり(別掲)、次で成瀬校長の式辞、本校が七年間の成長と、本日の式典の由来、及び其の意義を述ぶ(別項参照)即ち香雪化学館は藤田伝三郎氏の好意に成る所、香雪の名は氏が維新の際山口県萩に彼の三条卿と共に在りたる時の紀念の文字、晩香寮は渋沢男爵の好意に依る所、男爵が愛吟せらるゝ陶淵明の詩句晩節香に出づる所なりとす。
 次に教授長井博士は、此の未曾有なる化学館を有する我れ等教師及び生徒の責任に就て述ぶる所あり、大隈伯・渋沢男の祝辞、それより祝歌にて式を終る。藤田伝三郎氏は列席なかりしが「ハルカニカイカンシキヲシユクス」と祝電を寄せられ、なほ代理として本山彦一氏式に列せられたり。それより一同香雪化学館前に集ひ、例の記念植樹をなす。
 紀念樹は楓の大木一株、瑞枝さす若葉に繁り行く末の栄えの徴も見ゆる木の下に、木植の歌唱ひて、先づ成瀬校長鍬とりて、土をかくる次に大隈伯手にせる洋杖を腰に挟み、手袋を帽の廂に置いて鍬をとらるゝ、次は広岡浅子氏洋装の裾を翻しつゝ。渋沢男爵・森村市左衛門氏・岡部子爵・村井保固氏・三井三郎助氏夫人・広瀬実栄氏・長井博士・麻生学監順次に鍬をとられ、次に生徒園芸係出てゝ根を固め、全く植ゑ終りて「明治四十一年四月廿日大学部・附属高等女学校生徒一同寄贈」の文字を記せる札を立てたり。
○中略
 晩香寮へ園芸場を貫く一条の路の両側は、盆栽の陳列せるあり、或は花壇に山吹・こでまり・ヒヤシンス・雛菊・菫其の他時の花美しく咲けり。小川の辺の緑門(穀物にて祝開寮式の文字を表はす)を入り
 - 第26巻 p.912 -ページ画像 
少しく坂を登れば、左手に洋風寮、なほ爪先上りの尽きたる処、六ケ寮あり、庭園にて茶菓の饗あり、寮舎には創立後七年間に於ける本校寮舎の生活を衣・食・住に就て、各実物或は統計を以て表はし、又寮舎生活の実況を十二ケ月に分ち示せるもの、及び別棟・病室に病者収容の実況を示せるあり、詳細は化学館の内部と共に写真版にして追々に掲けんとす。
 六時より洋風寮に於て来賓に晩餐の饗あり、それより兼てしつらへたる活人画に灯を点じて観覧に供し、尽きぬ興趣の裡に永き春日も暮れはてぬ。


家庭週報 第一四一号 明治四一年四月二五日 ○渋沢男爵祝辞(DK260167k-0003)
第26巻 p.912 ページ画像

家庭週報  第一四一号 明治四一年四月二五日
    ○渋沢男爵祝辞
 三年たてば三つになるといふが、本校は七年たつたのであるから、七つになつて、今日の様な立派な成長をとげた。只今校長は本校は誰れに頼んだのでもなく、皆が喜び勇んで助けたと云はれたが、いかにも其の精神では出来て居るが、味噌用人をして居る渋沢は、校長の知られん処で、人にも頼んだ事もある、学生諸子に対しては只今校長から細々と諭されたによつて、その要点を御遺失なきやうにし、校長始め本校関係者諸氏の丹誠は皆様方によつて、爛熳たる花が咲くやう、充分なる御勉強を願ひたい、云々