デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

6章 政治・自治行政
2節 自治行政
2款 東京市区改正及ビ東京湾築港 3. 東京市区改正委員会
■綱文

第28巻 p.61-73(DK280006k) ページ画像

明治21年11月1日(1888年)


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是日栄一、当委員会ニ出席シ、私費架橋ノ件・河川新鑿ノ件・商法会議所並ニ共同取引所ノ位置ノ件ニ関スル議事ニ与ル。


■資料

東京市区改正委員会議事録 第一巻・第二五八―二八二丁(DK280006k-0001)
第28巻 p.62-73 ページ画像

東京市区改正委員会議事録  第一巻・第二五八―二八二丁
                     (東京府文庫所蔵)
東京市区改正委員会議事録第十三号
  明治二十一年十一月一日午後第三時二十五分開議
    闕席 和田維四郎 ○外八名氏名略
   (本日ヨリ臨時委員益田孝ハ二十六番、渋沢栄一ハ二十八番ノ議席ニ着ク)
    出席十八員
○委員長曰 本日ハ内務大臣ヨリ私費架橋ノ件ニ付訓令アレハ、之ヲ朗読セシメ其議事ヲ開クトセン
   書記左ノ訓令案等ヲ朗読ス
  訓第六四四号
                    東京市区改正委員会
  東京府下本郷区湯島四丁目ヨリ神田区駿河台鈴木町ヘ、私費ヲ以テ鉄橋架設之件、別紙該府知事伺出之趣ハ、市区改正計画上関係候条其会ノ意見申出ラルヘシ
  右訓令ス
   明治二十一年十一月一日 内務大臣 伯爵 山県有朋
  (別紙)
    私費架橋ノ儀伺
  神田川筋本郷区湯島四丁目女子師範学校前ヨリ神田区駿河台鈴木町ヘ私費新橋ヲ架設シ、工費償却ノ為メ通行人車馬ヨリ橋銭収入致度旨、坂東直記ナル者ヨリ別紙ノ通出願候ニ付、篤ト取調候処同所ハ万世橋ト水道橋ノ中間ニ位シ、両橋ノ距離凡ソ八百間ノ長キニ亘リ、其間橋梁ノ設ナキカ故ニ交通上不便ヲ感スル尠ナカラス、先年来私費架橋ノ義出願候輩往々有之候得共、構造法等不完全ニシテ採用難相成、然ニ今回出願ノ構造タル堅牢鞏固ナル鉄製ニシテ、仕様方法等不都合ノ廉無之、且市区改正計画ニ於テモ、神田錦町ヨリ駿河台ヲ経テ本郷通ヘ直線ノ道路ヲ開通スヘキ場所ニ有之、旁右架橋ノ上ハ一般公衆ノ便益ト相成候義ニ付、別紙命令書ヲ以テ許可致度此段相伺候也(別紙ハ略ス)
   明治二十一年十月六日
              東京府知事 男爵 高崎五六
    内務大臣 伯爵 山県有朋殿
○六番角田曰 府会ニ於テハ銭取橋ヲ廃スルノ方針ニテ桜橋等ヲ買上ケタレトモ、此橋梁ニシテ果シテ一大便利ト為ラハ許可シテ可ナラン、但此架橋タル、経済ノ都合ニテ地方税持チニ買上ケ得ルコトニ為シ置キタシ
○委員長曰 其ハ命令次第ニテ如何様トモナルヘシ
○二十五番芳野曰 銭取橋ハ許サヽル方可ナリ、実際架橋ヲ要スル場
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所ナレハ、市区改正費ヲ以テ架設スルニ如カス
○二番須藤曰 二十五番ノ説ヲ賛成ス
○三番藤田曰 私モ二十五番ト同感ナリ、府下ニ必要ノ橋梁ナレハ市区改正費若クハ市部ノ土木費ヲ以テ架設スルニ如カス
○一番桜井曰 二十五番ノ説アレトモ、諸君モ知ラルヽ如ク、市区改正費ニハ制限アリ、而シテ其事業ハ最モ急施ヲ要スルモノ多キ今日ナレハ、望人アルコソ幸ヒ架設ヲ許シテ可ナラン、成程通行人ヨリ橋銭ヲ徴スルハ不便ニ相違ナキモ、橋銭ヲ出スヲ好マサルモノハ必ラス通行セマジ、此橋ヲ通行為ルモノハ橋銭ヲ出スモ便利ヲ得ント欲スルカ故ナリ、左レハ六番ノ説ノ如ク都合ニ依テ買上ケ得ルコトニ命令為シ置キ、是ハ許スニ如カスト考フ
○六番角田曰 場所ニ依リテハ銭取橋モ許シテ可ナラン、此地ニハ曾テ架橋ノ計画ヲ為セシモノモアリタリキ、、此際出願シタルモノハ必ス通行人多クシテ利益アリトノ心算ニ出テシモノナラン、二十五番等ハ必要ナレハ市区改正費若クハ区部ノ土木費ヲ以テ架設スヘシト云ハレタレトモ、府庁ハ曾テ駿河台架橋ノ議案ヲ発セシニ、現ニ区部会ハ不必要トシテ削除セシニアラスヤ、左レハ市区改正費若クハ区部地方税ヲ以テ此所ニ橋ヲ架スルハ数十年ノ後ナルモ知ルヘカラス、故ニ今日出願人アルコソ幸ヒ、銭取橋ニテモ架スルニ如カサルヘシ
○七番武藤曰 駿河台ノ方ハ宅地ニ架設為スヤ将タ道路ニ架設為スヤ
○十九番銀林曰 市区改正ノ設計通リ道路ニ架設スルナリ
○七番武藤曰 私モ二十五番ノ説ヲ賛成ス、果シテ架橋ヲ必要ト為ス場所ナレハ、経済ノ都合ヲ見計ヒ、一両年ノ内ニ市区改正費ヲ以テ架設為ス方可ナリト考フ
○十番鬼頭曰 私ハ一番ノ説ヲ賛成ス、駿河台架橋ノコトハ疾クヨリノ問題ナルモ、区部会ハ今日ニ至ル迄架橋ノ見込ナキカ如シ、然ルニ此所ヘ橋梁ヲ架シナハ下谷・本郷等ヨリシテ神田橋方面ヘ往復為スモノヽ為メニハ最モ便宜ナリトス、既ニ一番モ陳ヘラレシカ、若シ橋銭ヲ出スヲ望マサレハ通行セサル迄ナリ、故ニ此出願ヲ許スニ何ノ差支カアラン、私ハ更ニ不都合ナシト考フ
○四番福地曰 私ハ二十五番ト同論ナリ、十番ハ便利ト云ハルヽカ、銭取橋ヲ通行スルニハ橋銭ヲ渡ス等ニ時間ヲ費シ甚タ不便ノモノナリ、故ニ此所ニハ市区改正費ヲ以テ速ニ架橋為ストシ、本案ハ許可サレサルコトニ為シタシ
○十五番桐原曰 私ハ一番ノ説ヲ賛成ス、何時ニテモ買上クルノ約束ヲ為シ得ルナレハ、銭取橋ニテモ無キニハ優レルナリ
○二十五番芳野曰 私費ヲ以テ架設シ、利益アル程通行人多キ橋ナレハ、無論地方税ヲ以テ架スル方当然ナリ
○十九番銀林曰 一体府庁ニ於テモ銭取橋ハ望マサレトモ、架橋費巨額ナルノミナラス橋銭収入年限内ト雖モ買上得ルコトニ為シ置カハ別段支障ナシト認メ、伺書ヲ出セシ次第ナリ
○五番田口曰 利益上ノ考ヘヨリシテ架設シタル橋梁ハ危険ト云ハサルヘカラス、諸君ハ他日買上得レハ差支ナシト云ハルヽカ、軟弱ナ
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ル橋梁ヲ買上ケタランニハ地方税ノ迷惑実ニ一方ナラサルヘシ、故ニ是ハ許サヽルニ如カサルナリ
○一番桜井曰 五番ハ銭取橋ヲ不可トスルニアラスシテ、私設ノ橋梁ハ危険ト云フニ外ナラス、当委員会ニ於テモ既ニ橋梁ノ制限モ議定シタレハ、其制限ニ拠ラシメ、且ツ構造法等ハ充分調査ヲ尽シ堅牢ノ橋梁ヲ架セシムルトセハ五番ハ蓋シ許ス説ニ左袒セラルヽナラン
○三番藤田曰 都下ニ於テ銭取橋ヲ許スハ、恰モ公道ノ切リ売リヲ為スト一般、不都合極マル迚府会ハ夫々銭取橋ヲ買上タリ、然ニ今日自費架橋ヲ許スハ府会ノ決議ニ矛盾スト云ハサルヘカラス、加之市区ノ繁盛ヲ図ル当委員会ニ於テ、繁盛ノ土地ニ自費架橋ヲ許スハ自家撞着ノ措置ト評セサルヲ得ス
○七番武藤曰 銭取橋ニ就テハ府庁ハ経験ノアルコトニテ、現ニ銭取橋ノ為メ数拾人ノ罪人ヲ出セシハ諸君ノ記臆セラルヽ所ナラン、彼ノ逆井橋ト云ヒ、厩橋ト云ヒ、昌平橋ト云ヒ、一モ苦情ナキ自費架橋ハ蓋シナカルヘシ、是等モ府会ニ於テ自費架橋ヲ買上ケタル一原因ナリ、殊ニ駿河台自費架橋ノ如キハ数年前ヨリ出願セシモノ尠ナカラサルニ、今日五百万円以上ノ事業ヲ起ス秋ニ方リ、僅々弐万円ノ費用ヲ吝ンテ自費架橋ヲ許サントハ思ハサルモ亦甚シ、就中十九番ノ如キハ自費架橋ノ為メニ頗ル公務ヲ妨ケラレシコトヲ記臆シ居ラルヽナラン
○二番須藤曰 一番等ハ今日自費架橋ヲ許シ、何時ニテモ買上ケ得ルト云ハルヽカ、許ス以上ハ約束年限間据置クニ如カス、若シ期限内ニ買上ケントセハ相当ノ利益ヲ見込ミ買上ケサルヲ得ス、架橋者ニ相当ノ利益ヲ与フルトセハ、其利益ハ地方税ノ損分ナルニ依リ私ハ許ス説ニハ不同意ナリ
○二十八番渋沢曰 私ハ徹頭徹尾二十五番ト同感ナリ、道路ニアレ隧道ニアレ、「モノポリー」即チ専売ニ類スル事柄ハ平素諸君ノ擯斥セラルヽ点ナルヘシ、然レハ橋梁ト雖モ銭取通行ヲ許スハ宜シカラサルナリ
○委員長曰 決ヲ取ルヘシ、此自費架橋ヲ許スヘカラストスル二十五番ノ説ニ同意者ハ起立アレ
  起立十一人
 又曰 多数ナルヲ以テ、此自費架橋ハ許サレサル様答申スルコトニ決ス ○中略 是ヨリ河川 ノ議事ニ移ラン
   書記左ノ項ヲ朗読ス
    河川ノ部
  一河川ハ新ニ開鑿スヘキモノアリ、又改良スヘキモノアリ、其改良ノ最モ大ナルハ隅田川ノ幅員ヲ定メ流心ヲ整フルニアリ
     新鑿
    ○第一 飯田町堀留ヨリ小石川橋際神田川ニ通スル新川、但幅員十二間ニシテ両岸ニ河岸地ヲ設ク
    凡水路ニ依リ貨物ヲ牛込・小石川等ニ運輸センニハ、唯神田川ノ一川アルノミ、然レトモ該川、水面ノ勾配最モ急ニシテ明治十六年ノ実測ニ依レハ、大川口ヨリ船河原橋マテ二千百五十七間五合ニシテ、干潮水面三尺六寸四分ノ差、即百間ニ付壱寸六分八厘余ノ勾
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配アリ干潮ノ際之ヲ溯ル最モ困難事タルヲ免レス、仮令今後改修工事ノ施行アルモ、一旦〆切浚渫ノ挙アルニ於テハ忽チ通船ノ道ヲ杜絶スルヲ以テ、運河ノ効用ヲ完フスルモノト謂フヘカラス、故ニ本川ヲ開鑿シテ是等ノ憂ヲ除クトキハ、該地区ノ繁栄ヲ促スハ論ヲ竢タサルナリ、且其位置駿河台ノ西方ニ在リテ台上ヨリ流下セル汚水疏通ノ用ヲ達シ、台下ノ湿地為メニ乾燥スヘキカ故ニ、衛生上ノ裨益モ亦鮮少ナラサルナリ
○六番角田曰 此新川ノ深サハ従来ノ河川ニ準スルモノナルヤ、将タ新川ニ就テハ更ニ其深サヲ定メラルヽモノナルヤ
○十八番伊藤曰 此新川ノ深サハ、神田川ノ水面ト平均ヲ得セシムル見込ナリ
○十九番銀林曰 是ハ両岸ニ河岸地ヲ設クルトナリ居レトモ、新川タル外郭ニ接シ居レハ、川沿ニ道路ヲ設クル方可ナラン、依テ西岸ニ河岸地ヲ設ケ河岸地ノ幅員ハ八間位トシ、其河岸地ニ沿フ道路ハ六間ト為シタシ
○六番角田曰 是ハ原案通リ開鑿シ、舟楫ノ便ニ差支ナキ見込ナルヤ
○十八番伊藤曰 本案編製ノ当時水面ノ差ヲ調ヘシニ、零点以下弐尺ノ深サヲ保ツ見込ニテアリキ、又舟楫ノ便如何トノ質問アリシカ、嘗テ十九番ノ発議ニ依リ神田橋ヨリ雉子橋ニ至ル外濠ノ屈曲ヲ整理スルコトニナリシ故、舟楫ノ便ハ得ラルヽナラント考フ
○四番福地曰 第一ニ伺ヒ度ハ、拾万円ニ近キ費用ヲ出シテ此新川ヲ開鑿シ果シテ其効能アルヤ如何、第二ハ六番モ質問サレシ通リ、舟路ヲ得ル程ノ水ヲ蓄ヒ得ルヤ、蓋シ此新川タル商業ノ便ヨリ出テシニアラスシテ神田川浚渫ノ場合ニ舟路ヲ与フル位ノ便利ニ外ナラサルヘシ、果シテ然ラハ拾万円ニ近キ費用ヲ抛ツノ価値ナカラン
○二十五番芳野曰 私ハ原案ヲ可トス、若シ四番ノ如キ考ヘヲ起サハ爼橋ヨリ竜閑橋迄ハ埋築セサルヘカラサルニ至ラン、曾テ大下水ノ取調ヲ承リシニ、神田三崎町辺ハ駿河台ノ雨水ヲ流下スルニ依リ之ヲ堀留ニ注カサルヘカラスト、殊ニ此堀留ニシテ河岸地ヲ設クレハ其土地ノ繁昌スルヤ疑ナシ、且ツ此新川ノ敷地タル概ネ練兵場ナルニ依リ今日新鑿ニ従事セハ、地所買上及ヒ移転料等ノ費用モ省キ得ルニ至ルナリ
○十九番銀林曰 私ハ二十五番ト同感ニテ原案ヲ可トス、諸君試ニ神田橋ニ至リ外濠ノ水色ヲ見ラルヘシ、下水湊合シ河水極メテ濁色ヲ帯ヒ、其不潔実ニ甚シ、故ニ此新川ヲ開鑿シ江戸川ト連絡セシメナハ潮水干満ノ都度河水ヲ一掃スルニ依リ、啻ニ水運ノ便ノミナラス衛生上ノ利益モ尠ナカラサルヘシト信ス
○五番田口曰 私ハ此川ヲ新鑿スルニハ賛成ナレトモ、目的通リ通船ノ便ヲ得ル程ノ潮水ヲ保チ得ルヤ否ヤヲ顧慮セリ、依テ二十二番ヨリ説明アランコトヲ望ム、一体此計画ニ依レハ、牛込橋迄潮量何程来タル見込ナルヤ、或ハ此川ヲ新鑿スルハ潮水ニ頼ラスシテ舟楫ノ便ヲ得ル丈ケノ水量ヲ保チ得ル見込ナルヤ
○二十二番古市曰 未タ測量セサル故確タル答弁ハ為シ難キモ、原案
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ノ設計ニ依レハ潮水モ入ルナルヘシ、又湛水ニテモ舟楫ノ便ヲ得ル程ノ水量ハ保チ得ルナラン
○六番角田曰 一体河川ヲ設クレハ、護岸若クハ橋梁或ハ浚渫等ニ尠ナカラサル費用ヲ要スルコトヲ記臆セサルヘカラス、去リナカラ外郭ノ堤塘ヲ崩シ其敷地ハ河岸地トシ区部ノ財産ニ編入スルコトニセハ、此新川ニ要スル経費ハ大概償ヒ得ルナルヘシ、而シテ小石川辺ニ製造場設置ニナレハ、運輸上此新川ハ利便ナルノミナラス、近傍人民ニ於テモ開鑿ヲ冀望シ居ルコトナレハ、旁開鑿スルニ如カス、然レトモ此ニ小生ノ疑ヲ存スルハ、往古御茶ノ水ヲ堀割シ時、河水ハ御茶ノ水ノ方ニ流レ、遂ニ飯田橋辺ハ堀留トナリシヤニ聞キタレトモ、是等ハ工事上ノ問題ニシテ、我々素人ガ喋々スルモ無益ナル故、二十二番等ニ於テ此原案計画通リ為シ実際舟楫ノ便ヲ得ルトナレハ、余ハ又何ヲカ言ハン
○二十二番古市曰 神田川ノ説アレトモ、神田川モ現在ノ儘ニ差置カハ、却テ神田川ノ水ヲ此川ニ落スニ依リ、神田川モ堀下ケ此新川ト川底ヲ平均ニセサルヘカラス、然カセハ水量ニ苦ム憂ハナカルヘシト考フ
○七番武藤曰 船河原橋辺ハ水量ノ深サ何程位ナルヤ
○十八番伊藤曰 干潮ノ際ニテモ弐尺位ノ深サハ保チ得ルナリ
○七番武藤曰 飯田橋際ノ深サハ何程ナルヤ
○十八番伊藤曰 二三尺位ト記臆セリ
○七番武藤曰 然ラハ私モ新鑿説ニ左袒スヘシ、去ナカラ幅員ハ拾五間アラサレハ荷物ノ陸揚等ニ不便ナル故、幅員ハ是非拾五間以上ト為サヽレハ不可ナリ、依テ幅員ノ決議ハ別ニ要セラレンコトヲ望ム
○四番福地曰 此新川ヲ必要トスルノ論者多キニ依リ尚ホ一言セン、十九番ハ此新川開鑿ノ理由トシテ、堀留川ノ流末ヲ支那ノ黄河ノ如ク云ヒ做セトモ、之ヲ開鑿セハ果シテ濁水ヲ流シ得ルト思ハルヽヤ既ニ七番モ云ハレシカ、幅員十二間ニテハ決シテ河川ノ効用ハ奏セサルヘシ、元来河川ハ薬研形ナルニ依リ、満潮ノ際ハ拾弐間ノ効用ヲ奏スルモ、干潮ノ節ハ六間ノ幅員ヲ保ツニモ覚束ナカルヘシ、幅員六間位ノ河川ニシテ荷船ヲ横付ニ為シ荷物ノ陸揚ヲ為スト思ハルルヤ、又幅員拾間ノ外濠ニ拾弐間ノ新川ヲ連接セシメ、而シテ日本橋川トノ聯絡ヲ通シ運輸ノ便ヲ開キタリト云ハルヽヤ、抑モ此新鑿ノ目的ハ専ラ運輸ニアルヤ、将タ下水ト雨水ト雑水トヲ疏通セシムル為メナルヤ、本員ハ原案維持者ノ考慮ヲ解スルニ苦シメリ
○二十六番益田曰 私ハ本日初メテ出席シ、是迄議定ニナリシ方針ヲ能ク知ラサレトモ、曾テ私ハ審査会ニ於テモ河川ノ議事ニ失敗ヲ取リシニモ拘ハラス、今日ニ於テモ尚ホ此新川開鑿ヲ望マサルナリ、成程今日ハ私モ商業上神田川ヲ利用シ居ルニハ相違ナキモ、神田川ニ入ル船ハ大川ニ於テ荷物ヲ積換ヘ潮待チヲモ為サヽルヘカラサル等ノ不便アリ、斯ク申サハ神田川ハ掘リ下クルト駁撃ヲ被フルナランカ、今日ノ如キ悠然ト構ヘテ商売ヲ為シ得ル世ノ中ナレハ或ハ可ナレトモ、世ノ進歩ト共ニ商業社会ニ活溌ノ運動ヲ為スニ至テハ、遅々タル水運ハ恃ムニ足ラス、必ラスヤ荷物ハ品川ヨリ船渠ニ運輸
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シ、船渠ヨリシテ汽車若クハ獣力ヲ藉リ各地ヘ運搬スルニ至ルヘシ今日小船ヲ用テ荷物ヲ運搬スルハ、其運賃馬車ヨリモ廉ナルカ為メナリ、去リナカラ遅々タル舟楫ノ便利アリ迚、貴キ地面ヲ潰シ川敷ニ充テ護岸費・橋梁費・浚渫費等尠ナカラサル河川ノ維持費ヲ抛ツハ、都下ノ経済ニ於テ実ニ不得策ト云ハサルヘカラス、若シ神田橋近傍ノ外濠ニシテ不潔ナリセハ之ヲ埋築シ、以テ道路敷ニ充ツルトセハ馬車・荷車ノ為メニ尠ナカラサル便益ヲ与フヘシ、要スルニ私ハ現在ノ河川ヲ強テ埋築スヘシト主張スルニハアラサレトモ、水運ノ不便ト困難ト荷揚ニ苦ムトノ実験上ヨリ、新川開鑿ヲ不必要ト為スナリ、府下ノ河川ハ概ネ干潮ニハ通船ニ苦ミ、満潮ニハ荷物ヲ低ク積マサレハ橋下ヲ通スルヲ得ス、若シ荷船ノ便利ヲ主トシテ橋梁ヲ太皷形ニ架センカ、車馬ノ通路ニ不便ヲ与フル等、水運ノ不便実ニ枚挙ニ遑アラサルナリ
○二番須藤曰 此新鑿ニ要スル費用ハ凡ソ何程ナルヤ
○十八番伊藤曰 凡ソ拾万円位ナリ
○二番須藤曰 拾万以上ヲ要スルト仮定スルモ、是ハ開鑿為ス方可ナラン、二十六番ノ議論ハ立派ナレトモ、其説ノ行ハルヽハ数十年ノ後ナルヘシ、又之ヲ開鑿シタリ迚、濁水ヲ清水ト交換スル抔トハ思モ寄ラサルコトナリ、唯運輸上拾万円ヲ費ス丈ケノ利益ハアルナルヘシト信ス、六番ハ小石川辺ヘ製造場出来得ル如クニ論弁サレシカ其間違ニテ、此新川ヲ開鑿セハ運輸上一ケ年壱万円位ノ利益ハアラン、然セハ算当上開鑿スル方利益アルヘシト思ハルヽナリ
○二十五番芳野曰 二十六番ノ論スル如キ立派ナル荷船ハ通行セサル河川ナリ、要スルニ頻年牛込・小石川方面ノ住民日ニ月ニ増加シ、需用品モ従テ増加スルニ依リ、日常品運漕ノ為メニ此新川ヲ必要ト為スナリ
○十九番銀林曰 府下ノ河川中、堀留川ノ流末程不潔ヲ極ムル河川ハアラサルナリ、麻布ノ古川ハ随分埋マリ居レトモ、細キ流レアル為メ、塵芥堆積セス、此堀留川モ神田川ヘ連接セシムレハ必ラス汚水ヲ流スニ至リ、加フルニ舟楫ノ便利ヲ得ル決シテ鮮少ナラス、恰モ柳原ヲ鑿リ割シト一般ノ利益アルヤ疑ナシ
○四番福地曰 十九番ノ説ヲ承ハレハ、頗ル効能アルカ如ク思ハルレトモ、未ダ正当ノ測量モ為サス、全ク臆測ニ過キサルナリ、仮令ヒ此堀留ヲ開鑿為シタリ迚、日本橋川ヨリ迂回シテ船ノ入リ来ルト思ハルヽヤ、又之ヲ開鑿為シタリ迚濁水ハ潮ノ為メニ湛ヘテ到底一掃スルノ目的ハ達シ得サルヘシ
○委員長曰 未タ議論ハ尽サレトモ、時刻ナレハ暫時休息トセン
   于時午後第五時
   午後第五時二十分着席
○委員長曰 休息前ニ続キ議事ヲ開カン
○二十八番渋沢曰 私ハ商工会ヨリノ選出ナレトモ、二十六番トハ反対ノ意見ヲ有セリ、原案ニ同意ト反対トハ市区改正ノ度ヲ強ク見タルト弱ク見タルトノ差アルニ過キス、我カ東京ヲシテ竜動・巴里ノ如ク為シ、築港モ成リ、船渠モ整ヒ、問屋・仲買モ適当ノ市街ニ住
 - 第28巻 p.68 -ページ画像 
居ヲ占メ、市区ノ体裁備ハルハ、百年ノ後ナルヘシ、然カスルトキハ二十六番ノ如ク遅々タル船便ニ頼ラス汽車若クハ車馬ヲ以テ運送ノ便ヲ取ルニ至ルヘキモ、九十九年間ハ此川ノナキ為メ運輸上ノ便ヲ欠クヤ疑ナシ、既ニ外濠モ運河ト為スコトニ議定シアル以上ハ、無論此新川ハ開鑿為スニ如カス、且現況ニ徴シ費用ヲ調ヘシニ、車運ヨリ舟運ノ方廉ニシテ都下一般ノ商人ハ運河ノ便アル所ハ必ス船ヲ使用シ居レリ、此一事ヲ以テモ此新川ヲ開鑿スレハ運輸ノ便ヲ増ヤ明カナリ
○二十六番益田曰 二十八番ノ説ニ依テ私ノ論旨ヲ弥ヨ確カメタリ、一体市区ヲ改正シ道路ノ幅員ヲ拡ムルハ何ノ為メナルヤト問ハヽ、必ラス百年ノ大計ナリト答フルナラン、然ラハ百年先ノ都合ヲ図リテ百事計画セサルヘカラサルヤ論ヲ待タス、世運ノ進歩ハ速カナルモノニシテ、十年前ニ比スレハ今日ノ進歩ハ実ニ著シキニ相違ナシ二十八番ハ現況ヲ説カレタレトモ、今日ハ道路モ狭隘ニシテ車運ニ不便ナル為メ已ムヲ得ス運河ニ頼リ、随テ商賈ハ河岸地ヲ望メトモ築港成リ船渠モ亦落成ヲ告ケ汽車ノ便開ケ道路ノ改正成ルノ後、誰レカ迂遠ノ水運ヲ望ムモノアランヤ、元来百年ノ大計ヲ議スルニ現況ヲ以テ論スルハ抑モ失当ノ議論ト評セサルヲ得ス、申迄モナキコトナカラ我カ府ハ貿易ヲ主トスルノ都府ナルノミナラス、他日ハ新橋ヨリ旧郭内ヲ経テ上野ヘ連接ノ鉄道モ敷設ニナリ、往時ノ大名小路モ一変シテ市街トナルニ依リ、目下ノ都合ノミニ拘泥シテ不便ノ運河ヲ新鑿セハ識者ノ嗤笑ヲ招カン、若シ強テ現況ニ拘泥為スナレハ、市区改正ハ断然見合スニ如カス
○委員長曰 最早決議ヲ要スヘシ、本項ヲ削除スル四番ノ説ニ同意者ハ起立アレ
  起立二人
 又曰 少数ニ付、四番ノ説ハ消滅ニ属ス
○十九番銀林曰 既ニ開鑿スルコトニ決セシ以上ハ、幅員ヲ十五間トスル七番ノ説ヲ賛成シ、而シテ西岸ニ河岸地ヲ設クルコトニ為シタシ
○二十八番渋沢曰 幅員ヲ拾五間トシ西岸ニ河岸地ヲ設クルハ至極ナリ
○委員長曰 幅員ヲ拾五間トシ西岸ニ河岸地ヲ設クル説ニ同意者ハ起立アレ
  起立十五人
 又曰 多数ナルヲ以テ右ニ決ス
   書記左ノ項ヲ朗読ス
    ○第二 上野山下ヨリ南ノ方徒町・練塀町ヲ経テ神田川ニ通スル新川、但幅員十五間ニシテ、両岸ニ河岸地ヲ設ク
  本川ハ鉄道線路ニ沿ヒ、神田川ニ通シ、諸物貨運輸等ニ必要ナルニ由ル
○二番須藤曰 上野ヨリ秋葉原間ニハ既ニ鉄道敷設ノ計画モアルニ、新川ヲ開鑿スルハ不可思議千万ナリ、若シ下水疏通ノ為メトナラハ猶更不都合故、是ハ宜ク削除為スヘシ
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○五番田口曰 二番ノ説ヲ賛成ス
○二十八番渋沢曰 私モ二番ノ説ヲ賛成ス、審査会ニ於テ此新川ニ同意ヲ表セシハ鉄道敷設ノ計画ナキカ故ナリ、既ニ鉄道敷設ノ計画モ粗ホ決定セシトノコトナレハ、無論此新川ハ開鑿スルノ必要ナシト信ス
○四番福地曰 驚キ入タル説ノ出ツルモノカナ、前項ノ堀留川スラ水運ノ便ヲ喋々論シテ開鑿為スコトニ決シナカラ、此新川ハ不必要トハ何事ソヤ、諸君ハ小石川・牛込ノ地方ニハ何故厚キ便利ヲ与ヘ、下谷・浅草ノ地方ニハ何故便利ヲ与フルニ及ハストセラルヽヤ、果シテ堀留川ニシテ二十五番及ヒ二十八番ノ縷陳サレタル如キ利便アリトセハ、此新川モ亦下谷・浅草地方ニ対シ同一ナル利便ヲ与フルヤ疑ナシ、若シ鉄道ノ便アルニ依リ運河ノ便ハ要セストナラハ、車運ノ便アル所ハ運河ハ不必要ト云ハサルヘカラス、然ルニ不権衡ニモ此新川ヲ削除セラルヽナラハ、本員ハ第三次会ヲ待テ必ラス前項議定ノ不当ヲ鳴ラシテ削除ヲ主張スヘキニ依リ此ニ予告シ置クナリ
○十九番銀林曰 下谷ハ水捌キノ悪キ土地ナルニ依リ此新川ノ位置ヲ東ニ移シ、浜町川ニ向ケ新川一条ヲ開鑿スルコトニ為シタシ
○二十五番芳野曰 十九番ノ説ヲ賛成ス、下谷ニハ一条ノ河川ナキ為メ雨水ノ捌キ方ニモ苦ムトノコトナルニ依リ、是非一条ノ新川ハ設クルニ如カス
○四番福地曰 十九番ニ問フ、三味線堀ハ如何ニ為ス考ヘナルヤ
○十九番銀林曰 三味線堀ハ御蔵ノ二番堀ヘ落ス考ヘナリ、而シテ此新川ハ少シク位置ヲ東ニ移シ、浜町川ニ向ケ神田川ニ連接セシムルノ考ヘナリ
○十番鬼頭曰 十九番ノ説ヲ賛成ス
○十八番伊藤曰 原案ハ和泉橋ノ上流ニ出ツル新川ナリシヲ、十九番ハ和泉橋ノ下流ニ移スノ意見ニテ原案トハ大差ナキナリ、一体原案ハ神田ト湯島トノ高台ヨリ落ツル雨水ヲ捌キ、且ツ運河ノ便ヲ図リテ此位置ヲ卜セシモノナレハ、参考迄ニ一言シ置カン
○二番須藤曰 私ハ十九番ノ説ニモ不同意ナリ、雨水ヲ捌クカ主意ナレハ、拾五間ノ川ヲ鑿ルニハ及ハサルナリ、全ク雨水ヲ捌ク迄ナレハ相当ノ下水ヲ設クヘシ
○五番田口曰 私モ原案及ヒ十九番ノ説ニハ不同意ナリ、十九番ノ説ヲ承ハルニ、河川ノ効用ニアラスシテ全ク下水論ナリ、如何ニ下谷カ湿地ナレハ迚、一条ノ河川ヲ鑿ルカ為メ乾燥スルニモ至ラサルヘシ、又川ヲ鑿リタリ迚、繁華ノ商業地ニナルトモ思ハレス、斯ク考フレハ下谷地方ノ新川ハ徹頭徹尾不同意ナリ
○十八番伊藤曰 下谷ノ新川ハ決シテ下水ノ為メニ開鑿スルニアラス重モナル理由ハ全ク運河ニアリテ審査会ヘ提出ノ原案ニハ数条ノ新川アリシモ、審議ノ末此一川ハ必要トシ其他ハ削除サレタルモノナリ、故ニ下谷ニ一条ノ新川ハ開鑿スルコトニ為シタシ
○二十五番芳野曰 私ハ十九番ノ説ニ賛成ヲ表シタルハ、一条ノ新川ヲ必要ト為セシニアリテ、其幅員ニ至リテハ拾弐間ニテ足レリトス五番ハ運河ノ必要ナキ土地ナリト論難サレタレトモ、仮令商業地ニ
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アラサルモ、肥料船ノ為メニモ一条ノ運河ナクテハ不便ヲ極ムヘシ
○二十六番益田曰 諸君運河ト云ハルヽカ、神田川ニシテ幾許ノ便益ヲ得ルト思ハルニヤ、抑モ鉄道会社ニ於テ神田川ヲ利用セントノ計画ハ見込違ト云ハサルヘカラス、此川ニ少シク荷物ヲ積タル船入ラハ、汐待等ニ幾多ノ時間ヲ費シ、其不便実ニ甚シ、殊ニ神田川ノ幅員タル現在ヨリ拡メント欲スルモ到底拡ムルヲ得ス、此川ニ依テ運河ノ便ヲ図ラント欲スルハ、実況ヲ知ラサル卓上ノ意見ト謂ハサルヘカラサルナリ
○十九番銀林曰 下谷地方ハ僅ニ三味線堀アルノミニテ、実ニ水吐ニ苦ム故、仮令ヒ幅員ハ狭クモ一条ノ新川ハナカルヘカラス
○委員長曰 最早論旨モ尽キタルヘケレハ決議ヲ要スヘシ、先ツ本項ヲ削除スル二番ノ説ニ同意者ハ起立アレ
  起立八人
 又曰 一名ノ少数ニ付二番ノ説ハ消滅ニ属ス、次ニ本項ヲ修正スル十九番ノ説ニ同意者ハ起立アレ
  起立七人
 又曰 是モ亦少数ニ付消滅ニ属ス、而シテ他ニ説ナクハ原案ニ据ユ
○中略
   書記左ノ項ヲ朗読ス
    ○第七 深川仙台堀ヨリ小名木川ニ通スル新川
      但幅員八間ニシテ西岸ニ河岸地ヲ設ク
  本川開鑿ハ一小事業ニ属スト雖モ、若シ其工ヲ竣ルトキハ黒江川ヨリ幾ント一直線ニシテ仙台堀ニ出テ小名木川ニ達シ、猶進ンテ竪川ニ入ルコトヲ得、尤モ有益ノ事業ナルニ由ル
○委員長曰 説ナクハ原案ニ据ユ
○十九番銀林曰 此次ヘ北十間川筋・小梅村・押上村ヲ通スル新川、幅員拾間ノ一項ヲ加ヘタシ、是ハ費用モ弐万円程ニテ頗ル便利ヲ得ル新川ナレハ、是非新設ニナランコトヲ望ム
○六番角田・四番福地並曰 十九番ノ説ヲ賛成ス
○二十五番芳野・曰 源森川ノ締切ヲ取外ストキハ、無論十九番ノ説ノ如ク新川ヲ設ケサルヘカラス
○委員長曰 十九番ノ説ニ同意者ハ起立アレ
  起立十六人
 又曰 多数ナルヲ以テ、北十間川筋・小梅村・押上村ヲ通スル新川幅員拾間ノ一項ヲ加フルコトニ決ス
○十九番銀林曰 其次ヘ尚ホ一項ヲ加ヘタシ、其ハ築地川ヨリ楓川ニ通スル新川幅員拾五間ニシテ、両岸ニ道路ヲ設クト為シタシ、是ハ亀井橋際ヨリ伊集院邸宅ノ前ヲ、北ヘ真福寺橋迄直線ニ開鑿スルノ見込ナリ
○二十八番渋沢曰 其費用ハ凡ソ若干ノ見込ナルヤ
○十九番銀林曰 長延凡ソ百間、幅員拾五間トシ、費用ノ総額凡ソ拾五万円程ノ見込ナリ
○二十五番芳野曰 三十間堀川並入船川ハ埋築スルノ考案モ有シ居ルニ依リ、十九番ノ説ハ至極ト考フ、依テ玆ニ賛成ヲ表ス
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○七番武藤曰 十九番ノ説ヲ賛成ス
○二番須藤曰 私ハ不同意ナリ
○委員長曰 十九番ノ意見ニ同意者ハ起立アレ
  起立十人
 又曰 多数ナルヲ以テ、築地川ヨリ楓川ニ通スル新川、幅員拾五間ニシテ、両岸ニ道路ヲ設クルノ一項ヲ加フルコトニ決ス
○十九番銀林曰 今一ツハ東京府ヨリ提出ノ原案通リ、下谷ノ新川ヨリ三味線堀ニ至リ、浅草米廩ノ二番堀ヘ達スル新川ノ一項ヲ加ヘタシ、但幅員ハ拾間ト為スノ考ヘナリ
○二十五番芳野曰 十九番ハ下谷ノ新川ヲ大川ト連接セシムルノ考ヘナルヤ
○十九番銀林曰 然リ、下谷ノ新川ハ一ハ三味線堀ノ首尾ヲ埋築シテ大川ニ達セシメ、一ハ神田川ニ連接セシムル考ヘナリ
○二十六番益田曰 十九番ニ問フ、下谷ノ地盤ハ大川ヨリモ低シト聞タルカ、大川ニ達スル新川ヲ設ケテ差支ナキヤ
○十九番銀林曰 下谷ノ地盤ハ大川端ニ比スレハ低キモ、水面ヨリ高キ故、下谷ノ新川ヲシテ大川ニ連接セシメ更ニ差支ナシ
○二十八番渋沢曰 十九番ノ説ニハ不同意ナリ、下谷地方ハ商業地ニアラサル故、大川ニ連接スル運河ハ要セサルナリ、若シ水捌キノ為メニ河川ヲ要ストナラハ、神田川ニ通スル新川一条アレハ足レリ
○十九番銀林曰 下谷ノ新川ハ神田川ト大川トニ連接セシムル方便利ナルニ相違ナシ、諸君モ知ラルヽ如ク三味線堀ハ汚水ノ湊合所ニシテ、是ハ大川ニ注クニ如カス、二十八番ハ下谷ニ運河ハ要セスト云ハルヽモ、肥料船ノ為メニモ、大川ヨリ下谷ノ新川ヲ経テ神田川ニ通スルコトニ為シ置ク方便利尠カラスト信ス
○二十五番芳野曰 下谷ノ如キハ卵形管下水ヲ設ケス河川ニ悪水ヲ捌クコトニ為ス方得策ナリ
○委員長曰 十九番ノ意見ニ同意者ハ起立アレ
  起立七人
 又曰 少数ニ付十九番ノ説ハ消滅ニ属ス、是ヨリ商法会議所並共同取引所ノ位置ヲ議スルトセン
   書記左ノ項ヲ朗読ス
  一、商法会議所並共同取引所及市場・屠畜場ノ位置面積ヲ左ニ掲ク
  ○商法会議所並共同取引所
   ○日本橋坂本町     面積四千二百坪
  商法会議所並共同取引所ハ市区商業ノ焼点ニシテ、其振不振ハ実ニ市区ノ盛衰ヲト知スルノ権衡ナリ、故ニ其位置中央最モ便宜ノ地ヲ選ハサルヘカラス、且其家屋ノ如キ首府ノ外観ヲ装飾スル一要具タルヲ以テ、極メテ人ノ注視ヲ惹キ易キ広場ノ一隅ヲ撰フヲ要ス、是本地ヲ予定セシ所以ナリ
○六番角田曰 是ハ位置ノミヲ指定シ、建築等ハ建設者ノ見込ニ任スルニヤ
○十八番伊藤曰 然リ、審査会ニ於テノ意見ハ市場同様位置ヲ指定シ置カサレハ不都合ナルヘシトシ、本案ノ如ク議定ニナリシナリ
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○二番須藤曰 敷地買上費等ハ彼ノ負担ナルヤ
○十八番伊藤曰 然リ、恰モ鉄道敷地ノ如ク買上ノ手続ヲ理事者ニ於テ施行シ、敷地ヲ引渡ス迄ナリ
○二番須藤曰 日本橋際ノ電信局ヲ買上、之ヲ譲リ渡ストシテハ如何
○十八番伊藤曰 其ハ建物ノ構造方等如何ノモノナルヤ
○六番角田曰 二十六番及ヒ二十八番ニ問フ、取引所ノ如キハ其敷地ヲ指定シ置カサレハ不都合ナルヤ
○二十八番渋沢曰 審査会ニ於テノ議論ハ、商法会議所並共同取引所ハ坂本町辺ニ建設為ス方可ナリトノ意見ニテ遂ニ議定ニナリシト記臆セリ、畢竟是等ハ誘導トカ若クハ指シ示ストカノ主意ニ出テシモノナラン、決シテ市場若クハ火葬場ト同視シ此地ヨリ他ニ移スヲ許サスト迄論究セシニハアラサリキ、倫動・巴里ノ如ク市ノ共有物ヲ貸渡スナレハ指定ヲ要スルナレトモ、一般ノ民地ニ建設スル共同取引所ニシテ其敷地ヲ指定シ置クハ、今日ニ至リ考フレハ些ト干渉ニ過クルヤノ感覚ナキニシモアラス
○三番藤田曰 本案ノ如ク敷地ヲ購求シテ、彼ニ引渡スハ望マシカラス、第一建設者ニ於テ或ハ此位置ヲ不適当ト為スモ知ルヘカラス、是等ハ宜ク彼レ自身ノ選定ニ任スヘシ、斯ル余計ノ世話ハ為サヽルニ如カス
○七番武藤曰 二十六番及ヒ二十八番ニ問フ、商法会議所ハ本会ニ於テ議定ノ場所ニ建設サルヽ考ヘナルヤ
○二十八番渋沢曰 其答弁ニハ甚ダ苦ムナリ、指定サレタル場所ニシテ会議所ノ為メニ便利モアリ且ツ其価額廉ナレハ服従為スナランカ不便ノ位置ニシテ且ツ敷地不廉ナレハ必ス謝絶為スナルヘシ
○七番武藤曰 是等ハ衛生上ト云ヒ体裁上ト云ヒ毫モ干渉ヲ要セサル建物ナレハ、三番ノ説ヲ賛成ス
○六番角田曰 如何ニモ之ヲ議定シ置クハ不都合ナルヘシ、彼レ会議所ニ於テ指定ノ地所ヲ望マサル場合ニ、強テ之ニ服従セシムルノ法律ヲ作リ為スハ不可ナリ、依テ三番ノ説ヲ賛成ス
○二十五番芳野曰 聞ク所ニ依レハ、審査会ニ於テ二十八番ヨリ発議サレ、遂ニ本案ニ掲クル事ニナリシトノ事ナレトモ、格別深キ理由モナシトノコトナレハ、三番ノ説ノ如ク為スニ如カス
○十番鬼頭曰 頻リニ削除論出テタレトモ、共同取引所条例ヲ見ルニ取引所ハ一ケ所ニ限リアリ、然ルニ其取引所ヲ建設セントスルニ相当ノ敷地ナキトキハ、取引所ハ其場所ニ苦ムナルヘシ、米国ノ如キハ各所ニ散在シ居ルヲ以テ政府ノ保護ナキモ敢テ支障ナシト雖モ、我国ハ法律ノアルアリテ共同取引所ハ一ケ所ニ限リアレハ、鉄道敷地ヲ買上クル如ク政府ノ保護ナクハ、彼レ会社ハ敷地ニ苦ムヘシ、依テ私ハ原案ヲ可トス
○七番武藤曰 十番ノ説ノ如ク為ストキハ共同取引所ノ為メニハ都合宜カルヘキモ、府民ハ実ニ迷惑ト云ハサルヘカラス、一会社ノ為メニ数代住馴レシ土地ヲ無理ニ買上ケラレ、甚シキハ為メニ営業ヲ失フモノアルモ知ルヘカラス、十番ハ取引所ニ対シ保護セサルヘカラスト云ハレシカ、果シテ保護ヲ要スルナレバ政府ニ於テ保護セラレ
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テ可ナラン、好シ当委員会ニ於テ保護スヘキ義務アリト仮定スルモ指定シタル土地ハ取引所ニ於テ望マサルモ知ルヘカラス、故ニ是ハ削除スルニ如カス
○四番福地曰 二十八番ニ問フ、此土地ハ商法会議所ニ於テ希望シ居ラルヽヤ
○二十八番渋沢曰 商法会議所ニ於テ希望セシ場所ニアラス、審査会ニ於テハ坂本町ノ官有地ハ共同取引所ニ屈竟ノ場所ナルヘシト認メ議定ニナリシモノナリ
○十番鬼頭曰 二十八番ニ問フ、共同取引所ヲ建設スル場合ニ臨ミ、其敷地定マリ居ラサルモ差支ヲ生セサルヤ
○二十八番渋沢曰 敷地ヲ定メアレハ都合能キニ相違ナキモ、其敷地タル官府ニ於テ非常ノ高価ニ買上ケラレ、其価額ニテ引取ルヘシト命令アリテハ、却テ困難為スナリ
○委員長曰 決議ヲ要スヘシ、本項ヲ削除スル三番ノ説ニ同意者ハ起立アレ
  起立十六人
 又曰 多数ナルヲ以テ削除ニ決ス
○二十八番渋沢曰 委員長ニ伺ヒ度キ一事アリ、商工会ニ於テハ嚮ノ審査会通リ商工会ノ意見ヲ具状為シタシトノ意見ヲ抱クモノアレトモ、商工会員中我々ノ所謂顧問委員ヲ設ケ其委員ニ諮ル等ハ妨ケナキヤ、当委員会ノ議事ハ漏洩ヲ禁セラルヽニ依リ、或ハ不都合カトモ存セラレ、敢テ指示ヲ請フナリ
○委員長曰 其ハ許サレマジト考フ、若シ商工会員ニ諮ルヲ許セハ、区部会ヨリ選出ノ委員ハ区部会議員ニ諮ルコトモ許サヽルヲ得ス、然カスルトキハ傍聴ヲ許サレサル精神ニ悖ルナルヘシ
○二十八番渋沢曰 謹承セリ、然カアルヘシト思考セシ故、念ノ為メ伺ヒシナリ
○委員長曰 本日ハ玆ニ議事ヲ停メ、散会トセン
   于時午後第七時二十分