公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第28巻 p.130-139(DK280014k) ページ画像
明治22年9月20日(1889年)
是日栄一、当委員会ニ出席シ、和田維四郎委員ノ建議・明治二十二年度予算ニ於ケル東京湾築港調査費・明治二十三年度市区改正事業ニ関スル議事ニ与ル。
東京市区改正委員会議事録 第三巻・第一四―二九丁(DK280014k-0001)
第28巻 p.131-138 ページ画像
東京市区改正委員会議事録 第三巻・第一四―二九丁
(東京府文庫所蔵)
東京市区改正委員会議事録第三十五号
明治二十二年九月廿日午前第十時四十五分開議
闕席 藤田茂吉 福地源一郎 武藤直中
斯波有造 村上楯朝 沼間守一
犬養毅 渡辺孝
出席 十九員 十番闕員(二十七番・二十九番・三十番・三十一番ハ召集セス)
○八番和田曰 本員ハ議事ニ先チ、建議ヲ提出シタシ
○委員長曰 直ニ建議アレ
○八番和田曰 本員建議ノ要旨ハ筆記シ置タレハ、願クハ書記ノ朗読ヲ煩サン
書記朗読
市区改正ノ設計ニ関スルモノハ、細大ヲ問ハス委員会ノ議ニ付セラルヽノ手続ナリ、然ルニ改正ノ事業ハ素是行政上ノ事務ニシテ緩急宜キヲ制セサレハ、或ハ時機ヲ失スルノ虞ナシトセス、況ンヤ其設計ニ関係ナキ事件ニ至リテハ、敢テ本会ニ付セラルヽノ煩ヲ要セサルノミナラス、却テ行政事務上渋滞ノ弊ヲ醸スノ恐アリ故ニ左項ニ掲クル事件ノ如キハ自今本会ニ付議セラルヽノ手続ヲ革メ、幹事ニ於テ取調、委員長之ヲ裁決シ直ニ施行セラレ、後会ノ節報告アラン事ヲ望ム
一市区改正設計内ニ属スル焼失地買上ケ金高五千円以下ノモノ処分ノ件
一不用道路・不用下水ニシテ、市区改正設計及下水改良ノ設計上ニ於テ関係ナシト認ムルモノヲ廃スル件
○二十五番芳野曰 賛成
○二番須藤曰 此通リニテ差支ナシ
○二十八番渋沢曰 本員モ賛成ナリ、併本案ノ第二項ハ設計ニ関係ナキカ如シ、関係ナキモノハ本会ニ付スルノ要ナシ、削除シテ可ナラン
○六番角田・一番桜井・二十五番芳野並ニ曰 是ハ設計ニ関係ナキモノトスルトキハ其払下代金ヲ大蔵省ニ納メサルヘカラス、畢竟其払下代金ヲ市区政費ニ収入センガ為メニ本会ノ議ニ付スルニアリ、故ニ原案ノ通リニテ然ルヘシ
○委員長曰 別ニ説ナクハ本案ニ決スベシ、是ヨリ第廿三号議案ヲ議スルコトヽセン
書記朗読 (此際八番退席)
明治二十二年度予算
一金参千百九拾五円 東京湾築港調査費
内訳
金参百八拾壱円 雇給
但水量番人十名 二番砲台一人月給金八円 霊巌島一人月給金六円 隅田川筋八人一人月 給金六円六ケ月分、此金参百七拾弐円
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水量番人往復船雇上賃一ケ月金壱円五拾銭六ケ月分、此金九円
金千四百五拾六円 備品並消耗品費
但水量自動器二台買上代壱台金六百五拾円、此金千三百円
水量自動器用紙金百円
隅田川筋験潮場四ケ所時計其他備品壱ケ所金五円、此金弐拾円
水量番六ケ所炭油筆墨紙等一ケ所一ケ月金壱円六ケ所分、此金三拾六円
金千参百五拾四円四拾銭 営繕費
但自動器室二ケ所建設費建坪各一坪一ケ所金拾四円、此金弐拾八円
測標十ケ所取設費一ケ所金四拾円此金四百円
水量杭四ケ所取設費一ケ所金拾三円五拾五銭、此金五拾四円弐拾銭
験潮場四ケ所建設費(建坪五坪壱坪金拾円)一ケ所金五拾円、此金弐百円
水量番人詰所二ケ所取設費(建坪三坪五合壱坪金拾円)一ケ所金三拾五円、此金七拾円
桟橋六ケ所取設費 二番砲台一ケ所(高九尺巾六尺長四十間)金四百三拾六円霊巌島一ケ所(高六尺巾六尺長十間)金六拾九円 隅田川筋四ケ所一ケ所金弐拾四円三拾銭金九拾七円弐拾銭、此金六百弐円弐拾銭
金参円六拾銭 雑費
但験潮場四ケ所借地料一ケ所一ケ月金拾五銭六ケ月分
○二番須藤曰 此金ハ何レヨリ支出スルモノナルヤ
○十八番伊藤曰 予備費ヨリ支出スル見込ナリ
○二番須藤曰 然ラハ異論ナシ
○二十八番渋沢曰 本員モ異見ナシ、且此費用ハ玄人ノ調ヘナルヘシ如何
○十八番伊藤曰 此調ハ東京府ノ技師カ海軍省撰出ノ委員ニ就キ調査セシモノナリ
○委員長曰 他ニ異論ナケレハ原案ニ決シ ○中略
○委員長曰 是ヨリ二十三年度市区改正事業ノ議事ヲ開ク
(参考ノ為メ第二十二号議案等ヲ左ニ掲ク)
○議第二十二号ノ壱、神田五軒町及末広町道路取拡之図(附図第一二)。
○議第弐拾弐号ノ二、三田四国町ヨリ本芝四丁目ニ至ル道路開設之図(附図第一三)。
○議第二十二号ノ三、四谷伝馬町二丁目道路取拡之図(附図第一四)。
○議第二十二号ノ四、赤坂牛啼坂ヨリ青山御所前ニ至ル道路取拡之図(附図第一五)。
○議第二十二号ノ五、赤坂田町一丁目道路取拡之図(附図第一六)。
○議第二十二号ノ六、下谷善養寺町ヨリ同坂本町三丁目ニ至ル道路取拡之図(附図第一七)。
○議第二十二号ノ七、浅草田原町一丁目ヨリ同三丁目ニ至ル道路取拡之図(附図第一八)。
○議第二十二号ノ八、麹町三丁目谷通リ道路取拡之図(附図第一九)。
○議第二十二号ノ九、築地桜橋ヨリ新富町三丁目ニ至ル道路取拡図(附図第二〇)。
○議第二十二号ノ十、本所石原通ヨリ厩橋新架橋ニ至ル道路開設之図・浅草
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黒船町ヨリ厩橋新架橋ニ至ル道路開設之図(附図第二一)。
○議第二十二号ノ十一、湯島切通坂上道路取拡之図(附図第二二)。
○議第二十二号ノ十二、湯島切通シ坂下ヨリ上野広小路ニ至ル道路取拡之図(附図第二三)。
○議第二十二号ノ十三、小石川白山前町道路取拡之図(附図第二四)。
○議第二十二号ノ十四、音羽八九丁目間ヨリ関口台町ニ至ル道路新設之図(附図第二五)。
○議第二十二号ノ十五、小石川大塚坂下町ヨリ巣鴨監獄ニ至ル道路取拡之図(附図第二六)。
○議第二十二号ノ十六、坂本町公園ノ図(附図第二七)。
○議第二十二号ノ十七、本郷御茶ノ水鉄橋架設ノ図(附図第二八)。
議第二十二号ノ十八
一金壱万千五百参拾円 委員会費
参考ノ為メ別表ヲ左ニ掲ク
一金百参円拾五銭七厘 測量費
一金拾万円 焼失跡改正費
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一金弐万五千円 臨時改正費
一金壱万八千八百拾五円拾八銭九厘 予備費
合計金五拾万円 ○議案第二十二号ノ一乃至十七ノ図面(附図参照)中ニ掲記セル金額ヲ合算
○議第弐拾弐号ノ追加、日本橋区西河岸通道路取拡之図(附図第二九)。
○二十八番渋沢曰 毎年実施スヘキ事業ヲ撰ンテ斯クノ如クスルハ、一応当然ノコトト思考セリト雖トモ、其撰定セシモノハ全府下中必要ノ箇所ヨリ着手スルノ目的ナルカ如シ、然レトモ本員ノ意見ニテハ市街ノ最モ繁盛ナル所ヨリ其区域ヲ画シテ、徐々着手スル方可ナラント信ス、且是迄ノ実蹟ニ徴スレハ土地ノ冷熱ヲ問ハス、府下各所ニ着手スルヲ以テ改正ノ利便ハ一般ニ普及スベシト雖トモ、或ハ土地ノ景況変遷常ナキニヨリ、縦令ハ十間幅ノ道路トシテ其幾部ヲ改良セシニ、数年ノ後其幅員ノ改正スヘキヲ感シテ或ハ十五間トナシ或ハ六間トナスノ場合ニ遭遇スルモ量リ難シ、故ニ先ツ繁盛ナル市街即チ日本橋区・京橋区等ノ如キ商売地ヲ先トシ、四ツ谷・赤坂ノ如キ辺陬ノ地ハ後ニ着手セラレンコトヲ企望ス
○十五番桐原曰 本員モ二十八番ト同感ナリ、例セハ上野ヨリ神田五軒町ヲ経テ芝田町ニ貫通スル府下第一ノ要路ノ如キ、其線路毎ニ一時ニ施行スル方着手ノ順序ヲ得ヘシト信セリ、故ニ此原案ニ対シテハ之ヲ取捨増減スルコトヲ止メ、先ツ来年度ニ施行スヘキ事業ヲ調査スルノ以前ニ於テ着手ノ方針ヲ本会ニ付セラレ、而シテ諸般ノ調査ヲナスコトニ改メタシ、要スルニ該年度ノ事業ハ各所ニ散点スル部分ヲ実行スル歟、又ハ或ル全線路ヲ一纏メニシテ着手スル歟ノ決議ヲ求メンコトヲ欲スルニアリ
○二番須藤曰 私ノ意見ハ少シ異ナレリ、原案ニ就キ其箇所毎ニ取捨シテ議決センコトヲ望ム
○六番角田曰 二十八番ノ説ハ本員ト同感ニシテ、十五番ノ意見トハ稍異ナルカ如シ、十五番ノ説ハ一線路ヲ完了スルノ説、二十八番ハ市街地ノ区域ヲ定メテ着手スルノ説ナリ、然レトモ其主義即チ方針ヲ極メテ調ヘ直スト云ハ容易ナラス、寧ロ二番ノ説ノ如ク原案ニ就キ取捨シテ議決スヘシ
○二十六番益田曰 私ハ市街ノ中央ヨリ初メ場末ニ及ホスコトニ為シタシ、故ニ先ツ着手ノ主義方針ヲ決センコトヲ欲ス
○二十五番芳野曰 成程商業上ニ就キ考フレハ、市街ノ中央ヨリスルモ亦可ナルヘシト雖トモ、事実人車馬ノ来往上危険支障等アリテ已ムヲ得サルモノヽミヲ撰ミ調査セシナリ
○五番田口曰 原案ニテ可ナリト信ス、二十八番・十五番ノ説尤ナリト雖トモ五十万円ノ金額ニテハ迚モ出来得ヘカラス、然レハ本案ノ如ク焦眉ノ急ナル要所々々ニ着手スルノ外ナキナリ
○十九番銀林曰 本案調成以前ニ必要ノ箇所ヲ調ヘシニ、道路ノミニテ其金額七十万円以上ニ及ヘリ、乃チ之ヲ再三精査シテ終ニ本案ヲ調成シタルモノナリ、畢竟区域ヲ定メテ施行スルトキハ、本町通リ辺僅カ一町位ニテ五十万円ノ金額ヲ要スヘシ、故ニ彼是緩急ヲ斟酌シテ本案ト為セシナリ
○委員長曰 時已ニ正午ヲ過クルニ由リ休憩スヘシ
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于時午後零時二十分
午後零時四十五分着席
○委員長曰 午前ニ引続キ議事ヲ開ク
○一番桜井曰 二十八番ノ御意見ハ一応尤ナレ共、其通リニハ行ハレ難キ事情アルヲ如何セン、抑モ東京ノ市区改正ハ仮令ハ古家ノ修繕ノ如キモノニテ、客間ノ中央ノミ直スト云フコトハ出来ス、勝手ノ雨漏モ繕ハサルヘカラス、壁ノ破損モ直サネハナラヌト云フカ如キ次第ナレハ、全市ヲ通観シテ焦眉ノ急ナル箇所ヨリ着手スル方適当ナルノミナラス、又必要ナルヘシト信ス、加之市区改正費ニハ金額ニ限リアルヲ以テ、中央ヨリ堂々ト実行スルコト能ハサルヘシ、二十八番ノ説ヲ敢テ不可トスルニ非サルモ、本案ノ如キハ精細ニ事実ヲ取調ヘタル上、其最モ急ナルモノヲ撰ヒタルモノナレハ別ニ委員ヲ置キ再調スルコトヲ要セサルヘシ
○九番田坂曰 二十八番ノ説ニハ、四ツ谷・赤坂ハ辺陬ト云ハルレトモ、日常田舎ノ車馬ヤ兵隊ノ通行アリ、殊ニ観兵式又ハ行幸ノ節ハ其混雑非常ナルノミナラス、危険モ亦甚シ、本員ノ考ヘニテハ原案ノ外青山通リノ取拡メヲモ企望セリ、且砲兵営其他漸次青山・麻布等ニ建設スルノ予定ナルカ故ニ、将来該往還ノ如キハ益人車馬ノ交通頻繁ヲ加ヘ、支障少ナカラサルヘシ、故ニ兵営ノ在ル方ニ向テハ大ニ注目アランコトヲ欲ス、好シ他ノ路線ハ変スルモ、牛啼坂ノ如キ路線ハ着手セサルヘカラス、況ンヤ市区改正第一ノ目的ハ実際ノ便利ニアリ、商売地ノ改正ヲ先ニシ美観ヲ装フカ如キハ第二ノ点ニアルヲヤ、然レハ一番ノ説ノ如ク、焦眉ノ急ヨリ着手セサルヘカラスト信ス
○十一番若宮曰 二十八番ノ説ハ尤ナレ共、本案ヲ検スレハ目下止ヲ得サルモノヽミナリト思考ス、乍去目下ノ状況ヨリ観察スルトキハ改正ノ規摸ヲ大ニシ、府債ヲ起シテ中央ヨリ実行スルヲ得策ナリトス、然レ共是ハ別問題トシテ、先ツ此原案ニ就キ議決スヘシ
○委員長曰 二十八番ノ説ニ付決ヲ取ルヘシ、先ツ商売地ノ改正ヲ実行セントスルニ同意者ハ起立アレ
起立四名
又曰 少数ニ付消滅ス、即原案ニ就キ順次議スルコトニ為スヘシ
○中略
書記(議第二十二号ノ三)朗読
○二十八番渋沢曰 本案ハ緊急ナラス、見合テ可ナリ
○十四番前田曰 是ハ必要ナリ、下町ニ来往スル肥料運搬ノ諸車、隊伍ヲ為シ雑沓甚シ、是非改正セサルヘカラス
○二番須藤曰 是ハ見合トシ、二十八番ニ賛成スヘシ
○二十六番益田曰 是ハ取拡ムル方然ルヘシ、十四番ニ賛成セン
○十五番桐原曰 本案ハ削除シテ可ナリ、何トナレハ僅ニ其幅員ヲ壱間五合位拡ムルトモ、左マテ効ナキヲ以テナリ
○十九番銀林曰 私ハ取拡メタシ、是ハ荒木横町ノ出入口ニシテ通行多キ所ナリ、其実況ヲ撿スレハ差置キ難キコト知ルヘシ、此前後ハ先年已ニ取拡メタルコトアリ、乃チ其標準ニ由リ目下突出セシ部分
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ヲ改正スルモノナルカ故ニ、其一端ハ僅ニ一間余乃至三間ニ過キスト雖トモ、費用ノ少ナキニ似ス大ニ便利ナリトス
○委員長曰 削除説ニ同意者起立アレ
起立五名
又曰 少数ニ付消滅原案ニ決ス
書記(議第二十二号ノ四)朗読
○十五番桐原曰 本図ノ三角形ノ場所ハ坂ニカヽレルヤ否ヤ
○十八番伊藤曰 之ノ豊川稲荷ノ所ニシテ坂ノ下ナリ
○二十八番渋沢曰 是ハ跡回シトナシタシ、先刻ヨリ御成道ノ太々餅ノ所、即旅籠町迄改正スルノ資金ヲ見付出シタシト思考セシカ、此案ニ要スル費用ヲ移サハ其幾分ノ資ニ充ツルヲ得ヘキナリ、斯ノ如キ緊急ナラサル場所ニ資金ヲ費スコトハ無用ナレハ、只本図ノ三角形ノ箇所丈ヲ取拡ムルコトヽナシタシ、然レトモ私ノ説ニ立テ呉ルル人ナキトキハ、寧ロ本案ハ削除スル方然ルヘシ
○二番須藤曰 是ハ総テ見合トスヘシ
○十四番前田曰 二十八番ニ一考ヲ願ヒタシ、元来青山ニ練兵場ヲ設ケントセハ、先ツ此路線ヲ開拡シテ後ニ該場ヲ設クヘキノ順序ナルカ如シ、然ルニ既ニ練兵場ヲ設ケラレタルカ故ニ、観兵式ヲ初メ兵隊ノ行通頻繁ナルカ上ニ、肥料運搬ノ諸車多ク、時ニ或ハ怪我人ヲモ生セシ事実アリテ、等閑ニ付スルヲ得サル緊要ノ箇所ナリ、宜ク此事状ヲ諒セラレ、原案ノ如ク実施セラレンコトヲ望ム
○九番田坂曰 本案ハ三角形ノ場所丈ニ止ムルトノ説モアルナレトモ已ニ十四番ノ説ノ如ク実ニ必要ニシテ、猶予スル能ハサル箇所ナリ
○二番須藤曰 区部会ヲシテ無事ニ通過セシメント欲セハ、斯ノ如キ不必要ノ箇所ハ削除シ置カサレハ、改正費五十万円ノ支出ヲ期スヘカラス、故ニ削除センコトヲ欲ス
○九番田坂曰 区部会ハ如何ナルヲ知ラスト雖トモ、単ニ商売的ノ思考ノミニテ本案ヲ決スルハ甚タ取ラサル所ナリ、陸軍ニアリテハ麻布兵営ハ勿論、練兵場ニ往来スル軍隊ノ行路ハ此道ニ由ラサルナシ啻ニ公共ノ為メニ必要ナルノミナラス、軍事上ニ於テモ亦緊急ナル所ナリ
○二番須藤曰 陸軍ニテ左程ノ必要アラハ費用ハ陸軍ニテ支弁スヘシ目下改正費ニテ実施スルヲ要セサルナリ
○十九番銀林曰 此処ハ観兵式等ノ節実ニ危険少ナカラス、捨置難キヲ以テ、是非施行セサルヘカラス
○十四番前田曰 府下道路ノ内、目下緊急ニ改正セサルヘカラサルモノ七ケ所ヲ警視庁ヨリ東京府ニ要求セシカ、僅ニ二ケ所丈本案中ニ上レリ、而シテ此路線ハ則其一ニシテ、毎年人命傷痍ヲ免カレサル所ナルカ故ニ、速ニ改正セサルヘカラサルナリ
○二番須藤曰 十四番ハ七ケ所ノ内二ケ所本案ニ上レリト謂ハルヽカ区部会ニテハ百ケ所モ要求セシヤ知ルヘカラス、故ニ其説ハ感服シ難シ
○二十三番志田曰 二十八番ノ説モアリシカ、要スルニ公衆ノ利便トナス所ヲ以テ先キトスルノ精神ニ外ナラサルヘシ、本案ニ対シ軍事
- 第28巻 p.137 -ページ画像
上ニ危険上ニ必要ナリトノ論アリト雖トモ、交通輸《(送脱カ)》ノ便否ヨリ思惟スルモ、彼ノ御成道・広小路ノ如キ第一着ニ改正セサルヘカラス、然ラハ本案ニ要スル費用ノ如キハ、宜ク市街ノ中央ニ移用スルノ勝レルニ如カサルヘシ
○十四番前田曰 本議案中、或ハ他ノ箇所ニ廃シテモ可ナル場所ナキニ非サルヘシ、故ニ此案ハ後ニ回シ議スルコトニナシタシ
○十五番桐原曰 十四番ノ説ニ賛成、後ニ回ス方然ルヘシ
○二十五番芳野曰 後ニ回スハ不可ナリ、可否ヲ決スヘシ
○委員長曰 十四番ノ後ニ回シテ議セントノ説ニ同意者起立アレ
起立十一人
又曰 多数ニ付、後回シトスヘシ
書記(議第二十二号ノ五)朗読
○五番田口曰 是ハ止メテ可ナリ、後ニ回シテ議スルコトニセン
○一番桜井曰 後回シトナスニ及ハサルヘシ
○二十八番渋沢曰 五番ノ説ニ賛成
○委員長曰 後回シトナスノ説ニ同意者起立アレ
起立十人
又曰 多数ニ付之ニ決ス
書記(議第二十二号ノ六)朗読
○十五番桐原曰 是ハ隠居ノ通ヒ道ニテ不必要ナリ、削除スヘシ
○二十五番芳野曰 十五番ハ隠居ノ通ヒ道ト謂ハルレトモ、実ニ千住ニ通スル要路ナリ、只三角形ノ一小部分ハ毀タサルヲ可トス、故ニ片側ノミ取拡ムルコトニナシタシ
○二番須藤曰 二十五番ノ説ニ賛成
○五番田口・二十六番益田・二十八番渋沢並曰 二十五番ヲ賛成ス
○委員長曰 二十五番ノ説ニ同意者起立アレ
起立十三人
又曰 多数ニ付、片側ノミヲ取拡ムルコトニ決ス
書記(議第二十二号ノ七)朗読
○委員長曰 異議ナキニ由リ原案ニ決ス
書記(議第二十二号ノ八)朗読
○二十八番渋沢曰 是ハ止メテハ如何
○二番須藤・九番田坂並曰 二十八番ノ説ニ賛成
○十九番銀林曰 是ハ招魂社ノ脇ヨリ麹町三丁目ニ至ル中間ニシテ、最モ狭隘ナル坂路ナリ、前後ハ当分施行セサルモ此部分サヘ取拡ムレハ大ニ便利ヲ得ヘシ、若シ止ムルナラハ片側丈モ改正スルコトニナシタシ
○五番田口曰 片側ノミ改正シテハ如何
○一番桜井曰 五番ニ賛成
○十四番前田曰 是ハ削除スヘシ、片側改正スルノ説モアレトモ、牛啼坂トハ自ラ軽重アリ、故ニ廃案トセン
○委員長曰 廃案説ニ同意者起立アレ
起立十三人
又曰 多数ニ付廃案トス
- 第28巻 p.138 -ページ画像
○中略
書記(議第二十二号ノ十二)朗読
○十五番桐原曰 是モ廃案トスヘシ
○二十五番芳野曰 明年ノ博覧会ニモ必要ナリ、開設セサルヘカラス
○二十六番益田曰 此道ハ無クトモ競馬場ノ方ヘ出ラルヽニ付、差支ナシ
○二十五番芳野曰 否其ハ馬車ノ通スル道ニアラス
○十五番桐原曰 馬車ハ天神町ノ方ヘモ通スルナリ
○二十六番益田曰 是等ハ一年位延シテモ差支ナカルヘシ、必要ト云フモ大通リトハ違ヒ緩急アレハナリ
○二十五番芳野曰 御成道ニ比スレハ此方ハ甚タ不便ナリ、開設セサルヘカラス
○十四番前田曰 二十六番ノ説適当ナラン、是ハ左右ニ通路アリ、此道ト牛啼坂トヲ比較スルモ必要ナラスト信ス、故ニ二十六番ヲ賛成ス
○二番須藤曰 牛啼坂ニ比スレハ此道カ必要ナリ、原案ヲ賛成スヘシ
○二十五番芳野曰 誤解アリテハ遺憾ニ付、念ノ為メ必要ノ理由ヲ陳スヘシ、此路線ハ従来屋敷地ニシテ商売地ニ非サルヲ以テ、目下開設スルトキハ工事甚タ容易ナリ、且現在ノ儘ニテハ切通シ坂下ノ雑沓危険ヲ避クル能ハス、故ニ来年度ニ於テ施スルヲ得策ト為セリ
○二十八番渋沢曰 幹事カ必要ト云フ以上ハ必要ナルヘシ、又牛啼坂ハ別問題ニシテ、此道カ出来レハ迚牛啼坂ヲ削ルト云フ訳モナカルベシ、併シ必要ト云テモ我慢カ出来ヌニモアラス、延期シテ可ナリ
○二十六番益田曰 四日市辺ノ大切ナル所アルニ拘ラス、本案ヲ実行スルハ不可ナリ
○五番田口曰 本員ハ原案ニテ可ナリ、現今私道ヲ開キツヽアルヲ目撃セリ、故ニ実行スヘシ
○二番須藤曰 後回シトスヘシ、牛啼坂ノ存廃ヲ決シタル後、此案ヲ議スルコトニナシタシ
○二十八番渋沢曰 二番ノ説ヲ賛成ス
○委員長曰 後回シトナス説ニ同意者起立アレ
起立十人
又曰 多数ニ付之ニ決ス、本日ハ散会トシ、来二十四日火曜日午前十時ヨリ開会スヘシ
于時午後第二時
〔参考〕東京市区改正委員会議事録 第三巻・第三九―四〇丁(DK280014k-0002)
第28巻 p.138-139 ページ画像
東京市区改正委員会議事録 第三巻・第三九―四〇丁
(東京府文庫所蔵)
東京市区改正委員会議事録第三十六号
明治二十二年九月二十四日
○上略
書記(議第二十九号)朗読
一金弐百八拾六円弐拾銭 上水収入預算取調費
内訳
- 第28巻 p.139 -ページ画像
金弐百五拾三円八拾九銭 雇給
但担任者一名月給金三拾円廿二年四月ヨリ九月ニ至ル六ケ月分此金百八拾円
筆生同年四月ヨリ八月ニ至ル五ケ月分此金四拾七円
人力車及使賃百八拾五回分此金弐拾六円八拾九銭
金三円拾四銭 賄費
金拾三円弐拾九銭 消耗品費
但筆墨紙金四円五拾七銭
薪炭及湯茶瓦斯代金八円七拾弐銭
金六円七拾九銭 旅費
但横浜ヘ出張四回分
金八円三拾三銭 郵便税
金七拾六銭 雑費
○十九番銀林曰 是ハ二十八番 ○栄一ニ託シ収入ニ関スル調査ニ要セシ実費ナレハ、本会費ヨリ支弁セサルヘカラス、尤本年度ノ予備費ヨリ支出ノ見込ナリ
○委員長曰 異議ナキニヨリ之ニ決ス
○十九番銀林曰 上水落成ノ後之ニ要スル毎年ノ経費予算ハパーマー氏ノ調ヘニハアレトモ、未タ該設計委員ニ於テ取調タルコトナシ、此経費ノ調査モ亦必要ナルヲ以テ、在来ノ委員ニテ取調ラルヽ様ニナシタシ
○十六番長与曰 上水設計ノ確定シタル上、経費ノ予算ヲ取調フル考ヘニテ略シ置キタルナリ
○委員長曰 予メ取調フル方然ルヘシ、依テ是迄ノ委員ニテ調査セラルヽコトヽナスヘシ、又上水収入予算ノ報告ハ二十八番闕席ニ付、他日ニ譲リ本日ハ散会トセン(上水収入予算及説明書略ス)
于時午後第二時
○是日ノ会議ニハ栄一出席セズ。