デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

8章 其他ノ公共事業
2節 祝賀会・歓迎会・送別会
3款 平安遷都千百年記念祭 2. 平安遷都千百年記念祭典
■綱文

第28巻 p.655-663(DK280103k) ページ画像

明治28年10月22日(1895年)

是日ヨリ二十四日ニ至ル三日間、平安遷都千百年記念祭挙行セラル。栄一之ニ出席ス。


■資料

竜門雑誌 第九〇号・第二七頁 明治二八年一一月刊 【青淵先生は去月二十日…】(DK280103k-0001)
第28巻 p.655-656 ページ画像

竜門雑誌  第九〇号・第二七頁 明治二八年一一月刊
○青淵先生 は去月二十日夜汽車にて新橋を発し、京都の紀念祭に臨まるゝ為め、廿五日まて同所に滞在、それより大坂・尾の道を経て、門司・若松・博多・三池・熊本を巡回し、築港・鉄道・炭坑等の視察
 - 第28巻 p.656 -ページ画像 
を終り、帰路馬関・宮島・広島・須磨・大坂・京都を経て、去る十二日午後十二時頃新橋着帰京せられたり、此随行員たる斎藤峰三郎君は帰路京都を一日前に出立し、伊勢山田・四日市・名古屋見物等をなし十三日午後二時頃帰京せられたり


平安遷都千百年紀念祭協賛誌 若松雅太郎編 蒼竜編・第三二―四〇丁 明治二九年八月刊(DK280103k-0002)
第28巻 p.656-661 ページ画像

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冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

東京日日新聞 第七二〇七号 明治二八年一〇月二五日 紀念祭典(DK280103k-0003)
第28巻 p.661-662 ページ画像

東京日日新聞  第七二〇七号 明治二八年一〇月二五日
    紀念祭典
平安遷都紀念大祭典は愈々今廿二日払暁を以て挙行せられたるが、今其の概況を記さんに、当日午前第五時祭主従二位勲三等麝香間祇候壬生伯爵及び市参事会京都府知事山田信道氏を始めとし、市参事会員・市会議員・紀念祭委員・協賛会委員等、大凡そ四百余人の参列者何れも燕尾服にて歩廊に着席し、手水の儀・祓の儀等を行ひたる後、祭主殿上に昇りて御扉を開けば、嚠喨たる奏楽の音静黙を破つて響き渡りそゞろに大神の臨御在ませし心地せられたりぬ、頓て祭主幣物を捧げたる後恭々しく神前に拝跪して祝詞を奏し、右畢つて一同拝礼し、夫より殿上に於て打球楽・狛杵の二舞楽を奏し、終て幣物及び神饌を撤し、祭主御扉を閉ぢたる後各退出したるが、当日大極殿上には帽額・軟障(何れも幔幕の類)を引き廻らし、竜尾壇上には鼈太鼓・鉦鼓・四神旗等の排列したるさま、如何にも人をして平安宮の当時斯くも荘厳にありたるならんと思はしむる程なりし、尚ほ此の盛典を拝観せんとて早天より応天門の近辺に群がりたる老若男女非常に夥しく、一時は殆んど人山を築きたる状態なりしと云ふ
    紀念式
祭典に引続ひて午前九時より執行せしは紀念式なるが、其の次第は曩きに報じたる如く、市参事会員及び外国来賓以下西歩廊に、高等官両院議員以下は東歩廊に、皇族・親任官以下は殿上東側に、外国公使は同西側に何れも夫々着座したる後、御名代山階宮殿下の御着席あり、此際軍楽隊楽を奏したるが、右畢つて京都府知事奏文を奉りたる上、畏くも左の 勅語あり
 茲に京都市民平安奠都千百年紀念式を挙ぐ、朕之を嘉す
 - 第28巻 p.662 -ページ画像 
次に内務大臣の祝詞、紀念祭協賛会総裁の祝詞等ありたる後、舞楽賀殿・長保楽を奏し、終て御名代御退座あらせられ、引続いて来賓一同退席したるが、当日の参列者は大凡そ五百名以上あり、静粛謹厳なること祭典の時に異ならず、且つ応天門外の賑ひは一層勝れて見られたりぬ
    饗宴
斯くて正午より饗宴を行ひたるが、先づ宴会場の模様を記さんに、旧農林館と機械館の間なる通路の入口には大なる国旗を交叉して幔幕を引廻らし、同天井には国旗と紅提灯を一面に吊したるさま如何にも美はしく、会場の入口には緑門を構へ且つ場内の柱は残らず杉葉を以て巻き立て、天井には同じく杉葉を以て大なる桜花形の花輪を造り、其中央及び各花弁の片端に国旗を挿みたる上四方に紅白の幔幕を引き廻らし、満場殆んど残る隈なく緑葉と草花を以て飾立てたり、さて饗宴に列せし来賓は大凡そ五百名以上に上りたるが、和気融然として場内に充ち、何れも杯を含んで宴正に酣ならんとするの時、予ねて準備し置きたる競馬・楽隊・能狂言、其他種々の余興あり、来賓は一層満足に堪へざる者の如く、興を極め歓を尽し、陶然として退散の途に上りたるは、彼是れ夕景頃に至りしが、実に当日の如きは京都市未曾有の盛宴なりし、尚ほ廿三・廿四の両日とも、同じく祭典・饗宴を行ふべきに依り、余興其他詳細の事項は後信に托して報道すべし


東京日日新聞 第七二〇九号 明治二八年一〇月二七日 協賛会夜会(DK280103k-0004)
第28巻 p.662-663 ページ画像

東京日日新聞  第七二〇九号 明治二八年一〇月二七日
    協賛会夜会
紀念祭協賛会にては愈々昨廿三日午後八時より旧勧業博覧会場内水産館に於て夜会を開きたるが、其粧飾万端行届き、定刻の午後八時頃となるや、当夜招待の来賓等或は馬車にて、或は人力車にて三々五々花門の側まで来り、縮緬の幔幕を潜つて玄関に到れば、其処に出迎へたる接伴員等慇懃に誘ふて余興場に伴ひ、同場内には数百の椅子を排列し、それが正面には御殿造りの舞台あり、上に翠簾を垂れ、下に紅白の幔幕を絞り、舞台の後に金屏風を引廻はしたるさま、美はしき中に儼として高尚なる趣あり、さて来賓の概ね着席するや、軍楽隊の奏楽に伴れて余興の催しあり、先づ祗園町拍子の風流丹頂、先斗町の寿獅子、上七軒のやまとの光、宮川町の園の梅等順次演じ去り演じ来りて首尾克く来賓の喝采を博し、舞の手の軽妙なる歌の声の勝れたる、地方鳴物の秀でたる等、素より一点の批難なく、来賓何れも満足の体に見受けられぬ、斯くて右余興の畢ると共に、前記紅白の幔幕を掲ぐれば則はち其左右両部とも饗宴場にて頓て委員の案内に伴れて来賓何れも食卓に就き、何れも歓を極め快然として、覚えず酒盃を重ねたり、当夜の重なる来賓は従二位壬生基修伯・冷泉為紀伯を始め、東本願寺門主大谷光瑩師・貴族院議員日野西光善子・由利公正子・久世通章子其他貴族院議員及び子爵の人々数名、大阪府書記官片岡直輝氏・岡山県書記官坂本釤之助氏・京都府書記官本部泰氏・農商務省参事官不破彦麿氏、其他鴻池善右衛門・住友吉左衛門・藤田伝三郎・磯野小右衛門・渋沢栄一・三井八郎右衛門・三井源右衛門諸氏等の紳士紳商、両
 - 第28巻 p.663 -ページ画像 
院議員・新聞記者等大凡そ三百名にて、無事退散なしたるは殆んど十一時過なりき


東京日日新聞 第七二〇九号 明治二八年一〇月二七日 紀念大祭典(DK280103k-0005)
第28巻 p.663 ページ画像

東京日日新聞  第七二〇九号 明治二八年一〇月二七日
    紀念大祭典
廿四日は前日に引き続きて晴天なりしに依り、其の賑はしきこと又一層にて、旧博覧会場内及び平安神宮近辺は云ふまでもなく、疏水沿岸冷泉橋の辺りまで一面人を以て埋められ、曩きに博覧会を設けられし当時より今日に至るまで未曾有の賑ひにて、彼の祭典の模様は廿二・廿三の両日に異ならず、尤も舞楽は予定通り東遊の一曲(こは風俗歌の一にして現今祭事の際宮廷内に於て行はるゝ者なりと)を奏し、夫れより各自退席して、茲に全く大祭の典を了りたる後、例に依りて来賓を宴会場に案内し、折詰の饗応をなしたるが、当日の来賓は無慮三千四五百名あり、左しも広き場内も人波打つばかりなりしも、注意と取締の行届きし為め差したる混雑を見るに至らず、彼の軍楽隊の奏楽につれて何れも食卓に就きたる上笑語歓話の中に酒盃を重ね、何れも満足の体に見受けられたり、且つ右の饗宴始まりしと共に能狂言及び相撲等の余興あり、右能狂言は小鍛冶(片山九郎三郎)羽衣(金剛謹之助)石橋(観世清廉)外に祝言数番ありしが、観者場内に充ち溢れて拍手喝采の声暫しも止まず、又た相撲は東京・大阪三府の力士を集めたる者にて、何れも幕の内の取組なれば、却々見栄ありて面白く、是れ又た観者夥しく時々場内破るゝが如き喝采の声を響かしたり、斯くて当日は来賓の外一般の公衆をも場内に入らしめたるにより、其の雑沓は終日に亘り、且つ夜分は紀念祭協賛会に於て夜会を行ひし為め、先づ同夜十時頃迄は絶へず賑はしき事なるべし、何分本日は大祭典最終の事とて各地より来京せし者別けて多く、且つ市内の人々は何れも業務を休みたる上、高張提灯を掲げ幔幕を張り、彼の秋祭よりも一層賑ひを加へたれば、京都全市到る処大祭典の光景ならざるはなし、兎に角昨年来俟ち設けたる盛典の本日を以て首尾克く終を告げたり



〔参考〕京都府誌 京都府編 第一九九―二〇〇頁 大正四年一〇月刊(DK280103k-0006)
第28巻 p.663 ページ画像

京都府誌 京都府編  第一九九―二〇〇頁 大正四年一〇月刊
 ○第六編 第五章 官国幣社
    平安神宮
京都市上京区岡崎町に在り、桓武天皇を祀る。初め明治二十八年京都市に於て奠都千百年祭を挙行するや、天皇の宏猷大謨を欣仰し、夙に神宮創建の議あり、同志の士記念協賛会を組織して、財を四方に募り前年一月神宮創立の事を請願せしに、同二月聴許あり、七月勅して平安神宮の号を賜ひ官幣大社に列せられ、且内帑金弐万五千円を下賜せらる。二十八年三月社殿造営の工成るに及び、勅使を遣して皇霊殿の分霊を奉じて鎮坐式を修せしめ給へり。境域広濶、応天門、大極殿、蒼竜、白虎の両楼等、丹楹・碧瓦相映し、宏壮雄麗を極め、神域転た森厳なり。 ○下略