公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第29巻 p.189-190(DK290058k) ページ画像
明治26年10月月-11月(1893年)
是月栄一、関西地方ニ旅行シ、名所旧跡ヲ訪ネテ、和歌ヲ詠ズ。
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第29巻 p.189 ページ画像
○本巻「旅行」条ノ参照。
竜門雑誌 第六八号・第二一―二四頁 明治二七年一月 【左の八首は、先つ頃青淵先…】(DK290058k-0001)
第29巻 p.189-190 ページ画像
竜門雑誌 第六八号・第二一―二四頁 明治二七年一月
左の八首は、先つ頃青淵先生の関西に赴き玉ひし折、用務忙はしき中に閑を偸みて名所旧跡を訪はれ、興にふれてものし玉ひしものなり、先生に請ふて今ま之をこゝに掲く、評者は中村秋香大人なりといふ 編者識
石山寺にて
千代かけし筆のひかりは石山に今も残れり秋の夜の月
木立ものすこく、しつかにふけ渡る月の光に、式部のおもとの昔おほしいて玉ひけんさま、一吟の下にしられて、あはれにをかしくこそ
三十年を経て再ひ唐崎なるひとつ松を見て、懐旧の情やみかたくて
千とせ経る松はみそちもつかのまとかはりゆく世を余所に見るらん
松も昔の友ならなくにの歌は、身の老を歎して、松をさへいひくたしたる器局、やゝせましといふへし、此御調松を主とし人世を客とし、さてよそにみるとゆたかにいひ流したる心、おほらかにしてしらへのとかなり、興風ぬし地下に必汗あゆなるへし
みそちものもつかのまとのとかけ合せいとをかし、これ言外の意を蔵むる枢軸
須磨
立ならふいらかに秋は見えねともむかしなからの浦の松風
ふるき詞を用ゐてあたらしき意をのへ玉へる、かの鴫たつ沢の御詠なる野に岡にの御しらへとひとしく、明治のうたはまことにかくそあらまほしき
淡路島を見て
もしほやく浦のとまやにたつ人もよはゝこたえん淡路島山
有声の画といふへき御しらへなり
星の山に秋の香を尋て
さためなくふるやしくれに袖ぬれてたけかりくらす北山の里
夕日さす加茂の河原は見ゆれとも北山くらくふる時雨かな
おのれ昔駿河に侍りし頃は、年毎に建穂山のたけかりにまかりきふりみふらすみさためなき頃、ぬれねれかりくらしける事なと、此御歌につけておもひいてつゝ、そゝろに昔恋しくこそ
夕日の御詠親しくみるかことし
高尾山に紅葉を見て
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またあさき峰の梢におとつれてこゝろありけにふる時雨かな
およはぬは過しにまさるこゝちして見ところふかき峯のもみち葉
うすしといはすしておもしろくよみなし玉へるかな、且は教訓の御詠ともなしぬへくて