公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第29巻 p.192-194(DK290060k) ページ画像
明治28年―同34年(1895-1901年)
栄一、是間ニ長男篤二ノ結婚ヲ祝ヒ、大倉喜八郎ノ観桜会ニ臨ミ、養子平九郎戦死ノ跡ヲ訪レ、井上馨ノ銅像除幕ヲ祝シ、或ハ自己ノ還暦ニ際シテ、和歌又ハ狂歌ヲ詠ズ。
--(DK290060k-0000)
第29巻 p.192 ページ画像
○本巻「同族」「交遊」「還暦」ノ各条参照。
竜門雑誌 第八四号・第二八―二九頁 明治二八年五月 篤二の新婚に寄花祝といふことを(DK290060k-0001)
第29巻 p.192 ページ画像
竜門雑誌 第八四号・第二八―二九頁 明治二八年五月
篤二の新婚に寄花祝といふことを
渋沢栄一
立ならふ木々のみとりを力にてわか木の花はさきそめにけり
さき出るわか木の花にわか老を忘れて千代を祝ふけふかな
竜門雑誌 第八八号・第二三―二四頁 明治二八年九月 国風会九月兼題(DK290060k-0002)
第29巻 p.192 ページ画像
竜門雑誌 第八八号・第二三―二四頁 明治二八年九月
国風会九月兼題
月前壔衣
賤か家の軒にほのめくゆふ月のかけもさひしくうつ砧かな 渋沢栄一
さらぬたに秋の哀はあるものをふけ行月にころもうつこえ
○中略
水辺菊
里川のあさき流れにかけ見えて枝まはらにも咲く野菊かな 栄一
○下略
- 第29巻 p.193 -ページ画像
竜門雑誌 第一〇〇号・巻頭石版刷 明治二九年九月 竜門雑誌の発兌百号にまて至れるを祝ひて(DK290060k-0003)
第29巻 p.193 ページ画像
竜門雑誌 第一〇〇号・巻頭石版刷 明治二九年九月
竜門雑誌の発兌百号にまて至れるを祝ひて
栄一
ひらけゆく御世の恵の雨露にことの葉草のおひしけるかな
○栄一筆。
渋沢栄一 日記 明治三二年(DK290060k-0004)
第29巻 p.193-194 ページ画像
渋沢栄一 日記 明治三二年 (渋沢子爵家所蔵)
四月六日 朝小雨
○上略
大倉大人の観桜会に、昨日より降そゝきし春雨の小休ミして花もまた散らてありけれハ
ともをめつる君かこゝろにならひてや花も人まつ須田の夕くれ
○中略。
六月二十五日 曇
○上略
黒山村にて悼亡の二首
なきたまをとふ黒山の墓のうへに夕栄赤くさくあふひかな
咲もあへす夜半のあらしに花ちりて香をとゝめぬる梅園の里
○右ハ「竜門雑誌」第一三四号(明治三二年七月)ニ掲載。
○中略。
十一月三日 晴
○上略 八十島親徳長女ノ命名を托サレシヲ以テ、徳不孤必有隣ノ語ニ取リ隣子《チカ》ト名ク、添フルニ和歌一首ヲ以テス「咲初る軒端の梅の香にもれてさそふとなりの鶯の声」
○右及ビ以下二首ハ「竜門雑誌」第一三八号(明治三二年一一月)ニ掲載。
又曾テ依頼セラレタル江間政発氏カ著作セシ関の家つとといふ旅日記に、題して「筆のあやに木々の紅葉をおりそへてにしき色ます関の家つと」
○右ハ又「竜門雑誌」第一四二号(明治三三年三月)ニ「些亭ぬしが物しゝ関の家つとてふ旅の日記を読みて」ト題シ掲載シアリ。
室鳩巣翁の試筆の詞書終りて折にふれといふ題にて「いかてかくよきにものうき人こゝろあしきさと人立めくるらん」
○下略
○中略。
十一月三十日 晴
○上略
麻布井上伯ノ銅像ヲ製シ其庭中ニ一宇ヲ築キ之ヲ安置スルノ挙ハ、伯ノ親友相会シテ昨年来其工ヲ起セシカ、今年十一月竣工セシニ付、一昨日之ヲ開ク為ニ園遊会ヲ催シテ、其知人ヲ会セリ、時ニ伯ハ左ノ狂歌ヲ作リタルヲ以テ、昨三十日《(マヽ)》ノ宴会ニ於テ更ニ之ニ応スルノ意ヲ以テ一首ノ狂歌ヲ以テセリ
伯ノ狂歌
- 第29巻 p.194 -ページ画像
因縁ノ深イ同志ノ御情デ尚此娑婆ニ銅像千年
井上伯の戯にものせられし御歌の御かへしにとて
御寿命を銅像千とせと願へつる祝ひにそへし家名ハ万年
渋沢栄一 日記 明治三三年(DK290060k-0005)
第29巻 p.194 ページ画像
渋沢栄一 日記 明治三三年 (渋沢子爵家所蔵)
十一月三日 晴
○上略
長崎なる平戸の埋立地を見て、再ひ浚渫器械を見んとてだんべいてふ小舟に乗りしに、如何しけん船の底より水入りて、乗組の人々ひたぬれにぬれたりけれハ、戯によめる
ともにぬれて浮名がさきに立にけり見る人ハさぞわろふだんべい
竜門雑誌 第一六二号・第八頁 明治三四年一一月 ○青淵先生還暦祝賀会紀事(DK290060k-0006)
第29巻 p.194 ページ画像
竜門雑誌 第一六二号・第八頁 明治三四年一一月
○青淵先生還暦祝賀会紀事
○紀念扇面に写されたる青淵先生の詩歌
当日来会せられたる貴紳に向ひ紀念の為め贈られたる先生自作の漢詩は
○漢詩略。
又淑女に呈せられたる自製の和歌は
去歳と暮れことしと明けて夢の間に
六十一とせの春は来にけり
とありて就れも先生の筆跡を美麗なる扇面に写せるものにして実に真筆の観あり、而して他の片面には就れも故滝和亭翁の手に成れる柏の画を着色印刷されたりと云ふ
○栄一ノ還暦祝賀園遊会ハ十一月二十三日、王子邸ニ催サル。本巻「還暦」同日ノ条参照。