公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第29巻 p.224-225(DK290069k) ページ画像
明治38年2月17日(1905年)
是日栄一、高橋是清ノ欧洲行(外債募集)ヲ見送リテ新橋駅ニ赴キ、和歌ヲ贐ス。
渋沢栄一 日記 明治三八年(DK290069k-0001)
第29巻 p.224-225 ページ画像
渋沢栄一 日記 明治三八年 (渋沢子爵家所蔵)
一月一日 晴 風寒シ
○上略
新年山といふ御題にてよめる
けふといへはまたあたらしく見ゆるかなはつ日にほへるゆきの不二のね
同
あけわたる年の光の初日影まつ見えそむるゆきの富士の根
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一月二日 快晴 風ナシ
○上略
興津なる松下庵中村秋香大人へ旅順陥落のことを消息しけるとき
はれわたる初日のとけき新年にそへてことほくかちいくさかな
○右三首ハ「竜門雑誌」第二〇〇号(明治三八年一月)ニ掲載。
二月十七日 晴 風寒シ
○上略
午前九時半新橋停車場ニ抵リ、高橋是清氏ノ欧洲行ヲ送別シ一首ノ国歌ヲ贐ス
やかて咲く春のいろ香をこと国にまつ手おらまし山吹の花
○下略
○右ハ「竜門雑誌」第二〇四号(明治三八年五月)ニ掲載。
雨夜譚会談話筆記 下・第七〇七―七〇八頁 昭和二年一一月―昭和五年七月(DK290069k-0002)
第29巻 p.225 ページ画像
雨夜譚会談話筆記 下・第七〇七―七〇八頁 昭和二年一一月―昭和五年七月
(渋沢子爵家所蔵)
第二十五回 昭和四年十月十五日 於丸之内事務所
三、先生の御趣味に就て
○上略
白石「突然でございますが、高橋是清さんの伝記を、東京朝日新聞に『是清翁一代記』の題の下に、連載致して居りますが、筆者の上塚司と云ふ人から、斯んな問合せが参りましたから、子爵に一寸御伺ひするのでございます、『二月十七日(明治三十八年)高橋日本銀行副総裁の欧米旅行の首途を祝ひて』と云ふ題で、子爵が高橋さんにお贈りになつた和歌が、はつきりわからないから、御尋ねして呉れとの依頼でございましたから、竜門雑誌を調べましたら
咲いでん春のいろ香をこと国に
まづ手をりませやまぶきの花
と云ふ和歌がございますが、これでございませうか」
先生「それそれ、それです。何でも高橋さんがその時、公債募集のため洋行するから、金を借りて来いと云ふ事を詠み込んで、『先づ手をりませやまぶきの花』とやつたんだ。うまいだらう、よく出来てるぢやないか。大概の人なら、直ぐわかるぢやないか。あの時私がこの歌を贈ると、誰かが『渋沢さんは皮肉を云ふね』と言つて笑つてゐたヨ(哄笑)
咲きいでんか、咲きいでしか、どつちだ」
白石「竜門雑誌には『咲いでん』となつて居りますが」
先生「いや、それは『咲いでし』でよからう」
○下略
○此回ノ出席者ハ栄一・渋沢敬三・渡辺得男・白石喜太郎・佐治祐吉・高田利吉・岡田純夫・泉二郎。