デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

1章 社会事業
1節 東京市養育院其他
10款 其他 5. 東京児童会館
■綱文

第30巻 p.413-418(DK300045k) ページ画像

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■資料

第一線 東京児童会館青年部編 七月号第六号・第一九―二〇頁 大正一四年七月 東京児童会館役員名簿(六月末日現在)(DK300045k-0001)
第30巻 p.413-414 ページ画像

第一線 東京児童会館青年部編  七月号第六号・第一九―二〇頁 大正一四年七月
    東京児童会館役員名簿(六月末日現在)
□顧問(いろは順)                      子爵母堂 本野久子氏
           伝道局々長 波多野伝四郎氏     三井合名理事 福井菊三郎氏
            法学博士 穂積重遠氏        神保院々長 鈴木篤三郎氏
     前東京市社会教育課課長 大迫元繁氏     実業之日本社社長 増田義一氏
              子爵 三島通陽氏           男爵 森村開作氏
□賛助員(順序不同)                     法学博士 平沼淑郎氏
       早ワラビ幼稚園々長 久留島武彦氏     国民新聞社社長 徳富猪一郎氏
             音楽家 田辺尚雄氏     小林ライオン社長 小林富次郎氏
      文部省社会教育課主任 片岡重助氏         逓信大臣 安達鎌蔵氏
              侯爵 徳川圀順氏      大日本麦酒常務 植村澄三郎氏
       日本女子青年会主事 河井道子氏        衆議院議員 大口喜六氏
            法学博士 吉野作造氏        希望社々長 後藤静香氏
            文学博士 姉崎正治氏       海軍大将男爵 八代六郎氏
            法学博士 鳩山秀夫氏       三井銀行常務 池田成彬氏
           衆議員議員 星島二郎氏        貴族院議員 志村源太郎氏
           衆議院議員 望月小太郎氏          男爵 伊藤文吉氏
        日本女子大学校長 麻生正蔵氏           公爵 二条厚基氏
              男爵 阪谷芳郎氏       伯爵文学博士 林博太郎氏
           前内務大臣 水野錬太郎氏        医学博士 林春雄氏
           貴族院議員 沢柳政太郎氏   北海道炭鉱汽船社長 磯村豊太郎氏
          陸軍元帥子爵 上原勇作氏    日本石油会社副社長 橋本圭三郎氏
        望月同族会社社長 望月軍四郎氏       貴族院議員 内田嘉吉氏
        東京印刷会社社長 星野錫氏    大阪電球株式会社社長 渡辺修氏
        東京児童会館援助者芳名録(六月末日現在)
              子爵 渋沢栄一様           男爵 郷誠之助様
              公爵 徳川家達様       神田銀行頭取 神田鐳蔵様
           清水組代表 清水釘吉様        伝進社社長 山本留次様
          第百銀行頭取 原邦造様      日本興業銀行総裁 小野英二郎様
         服部時計店社長 服部金太郎様    日本石油会社社長 内藤久寛様
        明治製糖会社社長 相馬半治様    東邦電力会社副社長 松永安左衛門様
              侯爵 細川護立様  新高製糖会社常務取締役 浅田知定様
 - 第30巻 p.414 -ページ画像 
          安田銀行頭取 安田善次郎様    望月同族会社社長 望月軍四郎様
  大日本人造肥料会社専務取締役 二神駿吉様           男爵三井八郎右衛門様
        久原鉱業会社社長 久原房之助様    三菱合資会社代表 岩崎小弥太様
        有賀長文様御夫人 有賀道子様       森岡商店々長 森岡平右衛門様
              侯爵 徳川義親様        男爵御夫人 古河富士様
    第一生命保険相互会社社長 矢野恒太様


東京児童会館…進歩発展の祈りと実行の記録 東京児童会館編 刊(DK300045k-0002)
第30巻 p.414-416 ページ画像

東京児童会館…進歩発展の祈りと実行の記録 東京児童会館編  刊
    東京児童会館の趣意
一、本会の目的は主として満四歳より満十五歳迄の男女児童、及満十六歳以上の青年の徳育・智育及体育を施し、以つて円満なる人格の助長を計り、而して健全なる第二の帝国々民を養成せんとするものであります。
二、児童教育は現代に於ける目下の急務であり、児童教養事業は現代の緊急的要求であると信じます。
三、真の社会改革や社会改良の根本問題は児童教養より出発せなくてはならないものであると信じます。
四、限りなく豊かに伸びてゆく偉大なる人格の要素を作るべき大切な時期は児童時代に於てであると信じます。
五、本会は真に児童の個性を尊重し、彼等の自治の精神を助長せしめ自由教育を施しつゝ日常生活に於けるよき習慣を作らしめ、将来に向つて限りなく進展し得べき豊かなる人格を養成せんとするものであります。
    東京児童会館の概況
 一、積年の宿望
  私は学窓生活を致して居ります時から、社会事業に全生涯を捧げて活動致したき積年の宿望を持つて居りました。
 二、大震災に於て数万の罹災者を救護
  大震災の直後、神田の青年会館の一救護班の責任を以ちまして、上野・日暮里・田端の三方面に於て、大学・専門学校の学生、其他友人と共に微力ながら熱血を傾注して九月中に数万の罹災者に対して救護を行ひまして何等かの社会の御役に立つことの出来ましたことは私共にとりまして衷心よりの感謝で御座います。
 三、半永久的救護事業
  同年の十月より、右の三方面の勢力を上野公園に集中致しまして上野公園のバラツクに居住する人々の為に、昨年の二月下旬まで半永久的な救護事業に携はつて居りました。
 四、信州戸隠山麓の一寒村に於て熟慮
  続いて昨年二月下旬に信州の一寒村に入りまして、三日間連日連夜新事業創立の為に、真剣に祈り、真剣に熟考致しました、そして真に創立の決心、信念を固めて、断然意を決して帰京致しました。
 五、東京児童会館を創立
  種々なる万難を排しまして、帰京後直ちに三月一日を期して東京
 - 第30巻 p.415 -ページ画像 
児童会館を創立致しました。
 六、事務所を本郷の中央会堂内に置く
  中央会堂内に事務所を拝借しまして、約一ケ月間同所に於て活動いたして居りました。
 七、天幕の児童会館を上野公園に建設
  続いて四月の八日に上野公園見晴台に外側天幕、内側板張りの天幕会館を建設致しまして、約百二十名の児童の為に教養事業を実施することを得ました。其当時の歓喜は全く永久に忘れることが出来ません。職員は共に感涙に咽びて感謝しつゝ祈りました、そして数倍の勇気を振つて活動を続けました。
 八、日夜十七時間の活動
  続いて職員一同は力を合せて共力一致以つて最全を尽して全く真剣に活動を致しました。
 九、木造会館を建築
  不眠不休的の活動を致しまして天幕会館を木造会館に改築致しまして六月二十二日に開館式を挙行することを得ました。そして二百名の児童の為に、教養事業と、救護事業とを致しました。
一〇、児童を育むべき神聖なる殿堂
  此の会館は僅か十五坪の小さなもので御座いましたが私共青年等の熱誠的なる祈りと、汗とによりまして建設することを得たもので御座います。そして、将来無限に伸展すべき大切なる児童を育むべき神聖なる殿堂を築いたものと信じて歓喜いたしました。
一一、向島に移転
  著々と事業も発展いたしましたので今春三月下旬に上野より現在の向島に移転致しました。
  同所は、伯爵亀井玆常様の御所有地で御座いまして、百二十坪弱を拝借致したので御座います。
一二、今春四月十一日に開館式
  上野より移転と同時に全力を傾注いたしまして、今春四月十一日に現在の向島の会館の開館式を盛大に挙行致しました、本所・向島の有力なる方々も数多御来会下されました。
一三、現在の会館は三十坪
  僅か三十坪の会館で御座いますが、時間と、組とを種々なる方法で組合せて最大限度に使用致して居ります。
一四、二百五十余名の生徒
  満四歳より満十五歳までの男女児童の為、及満十六歳以上の青年等の為に毎日、社会教育・人格教育・国際教育等を授けて居ります。
一五、指導者十五名
  十五名の私共職員は真剣に指導の任に当ると同時に私共自身常に修養研究等にも不断の努力を以つて勉め励み合ふて居ります。
一六、事業は全く天恵的に進歩
  小ながらも私共の至誠を以つての真剣の努力によりまして、全く天恵的と思ひます程の進歩発展を致してまいりましたことを衷心
 - 第30巻 p.416 -ページ画像 
感涙に咽ぶ程の歓びを感じて深く天に感謝致して居ります。
一七、内務省より補助金の下附
  今春は内務省より金六千円の補助金を下附されました。非常な光栄と歓んで居ります。
一八、都下大新聞社の応援
  本会創立後、都下大新聞社の十数回の懇篤なる応援を受けて居ります。
一九、社会の御名士百余名の御賛助
  本会の役員・賛助員として、或は賛助会員として百余名の社会の御名士の方々により御賛助御教導を賜つて居ります。
二〇、七百五十余名の会員(後援者)
  本会の経営は会員組織を以つて致して居るのでございます。従つて後援者の方々には会員になつて頂いて居ります。
  昨春より今日迄に会員七百五十余名の多きに達して居ります。
二一、七十五坪余の大会館の増築を切望
  事業の進歩発達と共に、現在の会館は全く狭隘を感じて居りますので可及的に速に大会館を増築致しまして現在に倍しての活動を致したいと切望致して居ります。
二二、資金の約半は募金済
  会館増築の全計画の約半は募金済となつて居ります。残額の約壱万円を募集の為に真剣に活動致して居ります。
二三、顧問賛助員の諸先生の御指導
  私共は青年として真剣に活動致して居りますが、全く浅学不才なる者で御座いますので、常に顧問・賛助員なる諸先生の御懇篤なる御指導を頂いて、万全を期して進むことに勉めて居ります。
二四、社会に対する責任と義務とを痛感
  社会の方々に対して、此の計画を発表し、其活動に着手致したので御座いますから、如何に多くの犠牲を払ひましても、如何なる万難をも排しまして此の計画を完成致さなければならないと信じまして、強い責任と義務とを痛切に感じて居る者で御座います。
二五、計画を完成させて頂き度く存じます
  如何なる万難苦悩をも排して必ず真剣に計画を完成致す決心覚悟を以つて邁進致して居ります。何卒皆様の御賛助御教導を賜り度く存じます。何卒私共に此の計画を皆様の御力によりまして完成させて頂き度く存じます。
  倒れて後ち止むの覚悟を以つて、必ず最後の完成を期して居ります。
                   東京児童会館
                     森山俊介識


(森山俊介) 書翰 渋沢栄一宛 大正一五年四月二九日(DK300045k-0003)
第30巻 p.416-417 ページ画像

著作権保護期間中、著者没年不詳、および著作権調査中の著作物は、ウェブでの全文公開対象としておりません。
冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

日本初めての東京児童会館事業項目一覧表 同会館編 刊(DK300045k-0004)
第30巻 p.417-418 ページ画像

日本初めての
東京児童会館事業項目一覧表 同会館編  刊


図表を画像で表示東京児童会館事業項目一覧表

 一  修養部   説話、童話、精神講話、修養訓、偉人伝記等の研究を為す。 二  図書部   児童中心の内外図書及雑誌等を広く集めて自由に読書せしむ。 三  音楽部   表情遊戯、律動遊戯、童謡、唱歌、オルガン蓄音機、童話劇等の研究を為す。 四  体育部   室内運動及遊戯、野外運動及遊戯、野外競技キヤンピング、ハイキング、剣道、薙刀等を為す。 五  衛生部   洗面所の設備をなし、日常の衛生に注意を払ふ。特に口腔衛生の注意をなす、随時会館医の健康診断を受けしむ、薬物は必要に応じて医師の手を経て給与す。 六  欧米研究  将来の国際的発展を期して、欧米先進国の人情、風俗、習慣、国情等を比較研究せしめて以つて国際教育の一端となす。 七  英語研究  十二歳以上十六歳迄の男女児童に対して英語を教授す。 八  夜 学   毎夜五時半より七時半迄就学児童の為の学校の予習及復習の個人教授的指導を為す。 九  日曜集会  広い意味に於ける宗教々育を与へんことを以て目的となす。 十  幼稚園部  学齢に達せざる児童の為めに保育を為す。 十一 お噺倶楽部 専門家を招聘して第一、第三、第五の土曜日午後六時より、お噺会を催して、倶楽と修養とを与ふ。 十二 園芸部   自然と親しましめ、動植物愛護の精神を助長せしむる目的の為め及び蒐集本能の利導転用を以て目的となし、植物培養、養禽、養魚、養獣、動植鉱物採集等を為す。 十三 青年部   満十六歳以上の青年等の人格修養、思想改善等の目的を以て毎週集会を開く。 十四 「第一線」 随時機関雑誌「第一線」を発行し、之を会員に頒布し本会事業の概況を報告す。    機関誌部  以下p.418 ページ画像  十五 社会事業部 本会館生徒の家庭及び近親の家庭の人々の為めに、職業紹介・人事相談・法律相談等に応ず、其の他慰問・配給、其他児童の善行賞表等を為す。 本会は国家主義を以て立ち、児童及青年の人格教育・社会教育を高調するものである。 




   ○右ハ謄写印刷物。