デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正13年11月12日（1924年）

是日栄一、浅草寺社会事業報告式ニ出席シ、信徒総代トシテ一場ノ挨拶ヲナス。

集会日時通知表　　大正一三年　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
十一月十二日　午後一時　浅草寺御出向（伝法院）

浅草寺関係書類　（一）　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
粛啓　時下向寒之砌高台愈々御清穆之段奉大賀候、陳者浅草寺社会事業ハ、昨年大震災以来、宮内省ヲ初メ、内務省・東京府・東京市・大震災善後会、並ニ一般有志者諸士ノ深大ナル外護ヲ蒙リ、明治四十三年創立ノ浅草寺救護所ハ病院組織ニ相成リ、尚三軌会館・婦人会館・施無畏学園・コドモ図書館及保育園等ノ五事業ヲ経営致シ、小規模乍ラ宗教的信念ノ下ニ努力罷在候、就テハ本月十二日午後一時
高貴ノ台臨ヲ仰ギ、外護諸仁士ノ御来会ヲ乞ヒ、事業報告ニ併セテ、今後ノ御指教相仰度、御繁務中恐縮ニ候ヘ共、何卒御臨席ノ栄ヲ賜リ度、此段御案内申上候
　　大正十三年十一月八日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　浅草寺住職
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　救護栄海
　　　渋沢栄一
　　　　　　　　殿
　　　令夫人
　　　追テ当日御来駕ノ節ハ此状御持参被下度候
　　　浅草寺社会事業報告式
一日時　　　十一月十二日（水曜）午後一時
一会場　　　伝法院
　　　　式次
一開会之辞　　　　　司会者　　浅草寺執事　壬生雄舜
一事業報告　　　　　浅草寺社会部主任　　　塩入亮忠
一祝辞　　　　　　　天台座主　　　大僧正　吉田源応師
一来賓祝辞
　　一祝辞　　　大震災善後会々長　公爵　徳川家達氏
　　一祝辞　　　内務大臣　　　　　　　　若槻礼次郎氏
　　一祝辞　　　東京府知事　　　　　　　宇佐美勝夫氏
　　一祝辞　　　　　　　　　　　　男爵　三井八郎右衛門氏
一謝辞　　　　　　　浅草寺住職　　大僧正　救護栄海
一挨拶　　　　　　　浅草寺信徒総代　子爵　渋沢栄一
一同　　　　　　　　同　　　　　　　　　　高木益太郎
一閉会之辞　　　　　　　　　　　　　　　　壬生雄舜
　　一、閉会後、各事業ヲ参観被成下度候
 - 第31巻 p.178 -ページ画像 

大正十三年十月一日
浅草寺社会部概要　浅草寺社会部編
（謄写版）　　　　　　　十月九日病臥中概略閲了ス《（栄一鉛筆）》
　　　　浅草寺社会事業一班
浅草寺ノ社会事業ハ、明治四十三年八月都下大水災ノ際罹災病患者ノ為ニ浅草寺救護所（浅草寺病院ノ前身）開設シタルニ始マル、爾来十四年間ニ五十余万人ノ貧窮病患者ニ無料施療シ居タルモ、時代ノ推移ハ浅草寺ヲシテ一施療所ヲノミ経営スルコトヲ許サス、大正十一年六月ニハ浅草寺婦人会ヲ創立シ、十二年七月一日ニハ少年法ニ依ル少年保護事業タル施無畏学園ヲ開設シタリ、然ルニ十二年九月一日ノ大震火災ノ為ニ、浅草寺救護所ハ焼失シ、施無畏学園ハ大破シ、婦人会々員九割五分ハ罹災シタリ、然レトモ浅草寺観音堂・五重塔・仁王門・伝法院等、主ナル堂舎不思議ニモ焼失ヲ免レタリ、玆ニ於テ浅草寺ハ全山ヲ挙ケテ罹災者救助ノ任ニ当リ、罹災者ヲ収容シ食糧ヲ配給シ、尋ネ人ノ受付・はがき代書・巡廻回向・救服募集・臨時小学校経営・慰安会開始等ノ事業ヲ経営シタリ、乍併如斯一時的救護ノ外ニ、稍恒久的救護ノ必要ニセマラレタリ、依テ更ニ内務省臨時救護事務局・内務省社会局・東京府社会課・事業協会・東京市及大震災善後会等ヨリ別記ノ通ノ補助金品ノ支給交付ヲ受ケ、浅草寺病院等ノ六事業ヲ経営スルニ至レリ、其ノ経営費大正十三年度予算浅草寺病院三万六千円、婦人相談所等五事業一万五千九百四十円（内事業収入八千九百四拾円浅草寺補助七千円）合計五万二千三百四拾円ヲ要ス、昨年震災以来浅草寺社会事業ニ、宮内省・内務省・東京府・東京市・大震災善後会等ヨリ、下賜又ハ補助サレタル金品等左ノ如シ

　金参万弐千百円也　　　　　浅草寺病院ヘ内務省ヨリ
　金弐万円也　　　　　　　　浅草寺病院外浅草寺社会事業費ヘ大震災善後会ヨリ
　金八千壱百円也　　　　　　婦人会館相談所ヘ内務省ヨリ
　金弐万八千五百四拾八円八拾銭也　浅草寺三軌会館ヘ内務省ヨリ
　金壱万八千円也　　　　　　施無畏学園ヘ大震災善後会ヨリ
　金参千円也　　　　　　　　コドモ図書館ヘ大震災善後会ヨリ
　金弐万円也　　　　　　　　浅草寺病院及社会事業部ヘ内務省ヨリ
　　合計金拾弐万九千七百四拾八円八拾銭也
其ノ他浅草寺病院・施無畏学園ヘ、左ノ御下賜金及助成金ヲ交付セラレタリ
　金四百円也　　　　　　　　宮内省御下賜金
　金弐百円也　　　　　　　　内務省ヨリ助成金
　金壱百円也　　　　　　　　東京府補助金
　金五百円也　　　　　　　　東京市助成金
　　　　　　　　　　　　　　以上浅草寺病院ヘ
　金参百円也　　　　　　　　宮内省御下賜金施無畏学園ヘ
　金六拾円也　　　　　　　　天台宗務庁ヨリ社会部ヘ
右ノ外、木材・物品等ノ寄贈下ノ如シ
 - 第31巻 p.179 -ページ画像 
　木材八十石　　　　　　　　浅草寺病院ヘ内務省ヨリ
　木材五百八拾五石　　　　　三軌会館ヘ東京府ヨリ
　木材二百八拾六石　　　　　婦人会館ヘ東京府ヨリ
　保育園建物五十坪　　　　　三井家ヨリ
　同運動場　　　　　　　　　松崎氏ヨリ
　コドモ図書館二十坪　　　　頼母木氏ヨリ
　コドモ図書二千五百冊　　　大坂市学童ヨリ
　婦人会館家具　　　　　　　有田氏ヨリ
　毛布　参百八拾枚　　　　　社会部ヘ東京府及警視庁ヨリ
　布団　六百枚　　　　　　　社会部ヘ東京府ヨリ
　炭　　五百俵　　　　　　　社会部ヘ東京市ヨリ
　ベツド六拾組　　　　　　　浅草寺病院ヘ警視庁ヨリ
　天幕　　一張　　　　　　　三軌会館ヘ三井家ヨリ
　天幕　十二張　　　　　　　浅草寺病院ヘ及三軌会館ヘ東京市ヨリ
　薬品（約二千円）　　　　　内務省ヨリ
　火鉢・バケツ・畳表等雑貨（トラツクニ五台）　東京府ヨリ
　衣類五万点・白米四十俵・味噌三十樽　　婦人会ヘ全国天台宗寺院取次
其ノ他寄贈品等、一般同情者ヨリ受ケタルモ略ス

浅草寺寺務所ニ執事局ヲ置ク、執事局ハ浅草寺住職ニ直属セル執事一名、及法務・庶務・社会・教学・会計ノ五部ノ主任五名ヲ以テ組織ス社会部主任ハ浅草寺社会事業ヲ管理、左ノ如シ
　　　　　　　　　　　浅草寺病院（施療・入院・外来）
　　　　　　法務部
　　　　　　　　　　　浅草寺婦人会館（婦人相談・宿泊・講習修養会等）
　　　　　　庶務部
　　　　　　　　　　　浅草寺施無畏学園（少年保護）
　　執事　　社会部
　　　　　　　　　　　浅草寺保育園（托児所）
　　　　　　教学部
　　　　　　　　　　　浅草寺三軌会館（労務者ノ宿泊）
　　　　　　会計部
　　　　　　　　　　　コドモ図書館
　　　　　　一、浅草寺病院
一、所在地　浅草公園地第二区弁天山下
二、沿革
明治四十三年八月十五日都下大水害ノ際、浅草公園地ニ避難罹災傷病者救護ノ為、当時ノ浅草寺住職修多羅亮延師、信徒総代高木益太郎氏ノ援助ヲ受ケ、境内念仏堂ノ□部《（欠字）》ヲ開放シテ施療ニ従事セルヲ以テ本院創立ノ起原トス
同年十月三日境内六十六仏堂供所全部ヲ開放シ、施療所ヲ移シ、浅草寺救護所ト称シ、一般細民患者ノ施療機関トシ、永久的ノ施設ト為ス爾来十四ケ年間ニ五十余万人ノ病患者ノ施療ニ従事シタリ、然ルニ大正十二年九月一日ノ大震火災ニ際シテハ、念仏堂ト同シク一日午後五時焼失シタリ、依テ十月二十四日仁王門側ニ約十二坪ノ仮診療所ヲ設ケテ、罹災病患者ノ施療ニ従事ス
同年十一月内務省臨時震災事務局ヨリ金参万弐千百円ノ新築経営費ノ補助ヲ受ケタルニ依リ、浅草公園地弁天山下ニ約百五十坪ノ病舎新築
 - 第31巻 p.180 -ページ画像 
ニ着手シ、翌十三年二月十五日竣功スルニ及ヒ、仁王門下ノ仮診療所ヲ之ニ移シ、浅草寺救護所ヲ浅草寺病院ト改称シテ今日ニ至ル
三、大正十三年度収支予算ハ参万六千四拾円ニシテ、其ノ収入概要左《（支カ）》ノ如シ
　　　　　　収入部
　　金参万六千四拾円也
　　　　内訳
　　　金壱万七千円也　　　　　内務省補助金
　　　金六千百六拾六円也　　　大震災善後会補助金
　　　金千弐百円也　　　　　　（宮内省御下賜金東京府等助成金）
　　　金千円也　　　　　　　　一般寄附金
　　　金壱万円也　　　　　　　浅草寺支出金
　　　金五百七拾四円也　　　　雑収入
　　　　　　支出部
　　金参万六千四拾円也
　　　　内訳
　　　金弐百四拾円也　　　　　供養費
　　　金壱万八千六百四拾円也　俸給手当
　　　金弐千四百円也　　　　　薬品等
　　　金千五百円也　　　　　　診断実験費
　　　金五千六百円也　　　　　賄費
　　　金五百円也　　　　　　　備品費
　　　金九百円也　　　　　　　消耗品費
　　　金弐千百八拾円也　　　　灯料費
　　　金弐千参百八十円也　　　特別費
　　　金壱千参百円也　　　　　雑費
　　　金四百円也　　　　　　　予備費
四、組織及職員
院長一名、事務主任一名、医務主任一名、医員六名、薬局二名、看護婦十二名、事務員一名、使丁二名、炊夫二名ヲ置キ、浅草寺社会部主任之ヲ管理ス
○下略