デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
1節 外遊
1款 渡米実業団
■綱文

第32巻 p.53-54(DK320003k) ページ画像

明治42年8月17日(1909年)

是日、天皇陛下、渡米実業団員一同ニ対シ、芝離宮ニ於テ午餐ヲ賜フ。栄一、席上団員ヲ代表シテ答辞ヲ述ブ。


■資料

渋沢栄一 日記 明治四二年(DK320003k-0001)
第32巻 p.53 ページ画像

渋沢栄一日記 明治四二年 (渋沢子爵家所蔵)
八月十三日 晴 暑
○上略 十時宮内省ニ抵リ、渡辺次官ニ面会シテ、渡米実業団ニ午飧御下賜ノ事ヲ示サル○下略
   ○中略。
八月十七日 晴 暑
○上略 十二時芝離宮ニ抵リ、渡米実業団ニ午飧ノ下賜アリ、宮内次官、桂・小村・大浦三大臣来会ス、食卓上桂大臣ヨリ演説アリ、余ハ之ニ答ヘテ一場ノ謝辞ヲ述フ○下略


竜門雑誌 第二五五号・第四七―四八頁明治四二年八月 ○芝離宮午餐会(DK320003k-0002)
第32巻 p.53-54 ページ画像

竜門雑誌 第二五五号・第四七―四八頁明治四二年八月
    ○芝離宮午餐会
渡米実業団は、十七日正午芝離宮に於て午餐を賜はりたり、団員三十四名(婦人を除き)定刻前より続々参殿、渡辺宮内次官の迎接を受け暫時ドローイングルームに待合せる内に、桂蔵相・小村外相・大浦農相・近藤宮内大臣秘書官等入り来り、頓て主客三十九名打揃ひければ食堂へと案内せられたり、一列の長き食卓には、渡辺宮内次官中央の主人席に着き、之と相対して桂蔵相、其の左右には青淵先生・中野武営氏を首め、十八名分れて相並び、渡辺次官の左右には小村外相・大浦農相を首め団員相対座せり、席定まるや、渡辺次官起ちて、此の度米国商業会議所の請待に依り、我が実業家の代表者渡米の趣、蔵相よ
 - 第32巻 p.54 -ページ画像 
り至尊の御聴に達せし所、本日離宮に於て右一行に午餐を賜はる事となりし旨を述べ、宮内大臣不在の為自分代りて此の有難き思召を伝ふるの光栄を荷へりと結ぶや、桂首相兼蔵相は大要左の演説を為せり
 陛下が今回の渡米団体に対し、斯くも優渥なる恩典を賜はれるは、以て如何に 陛下が平素実業の発展に御軫念あらせらるゝやを恐察するに足るべし、日米の関係は今更事新しく云ふまでもなく、日に益々親交を厚うし実業上の関係弥々密接を加ふ、此の際諸君の渡米は此の修交通商を尚ほ一層進捗するの効あるべく、諸君の任重く且つ大なりと謂ふべし、希くは 陛下の深き御思召を奉戴し、十分其の任務を尽されんことを、諸君の為に健康を祈る、終りに自分等同僚が共に此の午餐に列するの光栄を謹んで拝謝す
次に青淵先生渡米団一同を代表して答辞を述べ、陛下の優渥なる思召感泣の外なきを謝したる後、自分の如き英語に通ぜず、加ふるに老者が敢て此重任に当るは、恰も兵役に服するが如き決心を以てせるなり啻に自分のみならず、団員一同皆兵士の心掛を以て規律を重んじ、其の任務を全うするならんを疑はず云々と結び、夫より談笑の間に恩賜の珍味を賞し、終りに一同へ紀念として銀製一輪活花瓶を下賜せられたり、夫れより幽邃雅致に富める庭園を前にせる別室に移り、首相・農相・外相等を取囲みて縦談数刻の後、一同全く散ぜしは午後二時なりき


渡米実業団誌 同団残務整理委員編 第七二―七四頁明治四三年一〇月刊(DK320003k-0003)
第32巻 p.54 ページ画像

渡米実業団誌 同団残務整理委員編 第七二―七四頁明治四三年一〇月刊
 ○第一編第一章出発前
    第十一節芝離宮の賜宴
かくて本団の出発も、いよいよ近づきたるに、八月十七日に至り、特別の思召を以て、団員一同芝離宮に召され、午餐を賜はる事と成りたり。
団員は各正装して定刻前より参殿せるに、宮内次官子爵渡辺千秋氏、近藤宮内大臣秘書官と共に一々迎接し、暫時客殿にて懇談せる中、桂総理大臣(兼任大蔵大臣)・小村外務大臣・大浦農商務大臣引続き来着あり、やがて一同食堂に導かる。席定まるや、渡辺次官立て
○中略
最後に渋沢男爵は、団員を代表して答辞を述べ、 陛下の優渥なる御思召、只感泣の他なきを謝したる後、『自分の如き老躯を提げて、敢て此重任に当るは、恰も若年の頃兵役に服せざりしを償ふに似たり、而も団員皆兵員の心掛を以て規律を重んじ任務を全うせんことを期す』云々と結び、夫より談笑の間に恩賜の珍味を拝賞し、紀念として賜はりたる銀製花瓶・香函等を拝受して別室に移り、尚懇談数刻の後、午後二時頃各自退出せり。
此の事たる本邦空前の特典なるが故に、団員一同太く 聖恩に感激し為めに一層の奮励を期せるが、尚在本邦米国通信員の電報によりて、詳細彼地の各新聞に伝はるや、米国公衆に対して、亦多大の印象を与へ、今回実業団の渡米が、本邦朝野の等しく重きを措く所なるを悟らしむるに、非常の効力ありしものゝ如し。