デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2021.9.1

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
2節 米国加州日本移民排斥問題
3款 日米関係委員会
■綱文

第33巻 p.551-574(DK330069k) ページ画像

大正9年8月(1920年)

来ル十一月二日アメリカ合衆国カリフォルニア州ニ於テ土地法ニ関シイニシアティヴ行ハレントシ、是月ヨリ栄一ノ意見各種ノ新聞雑誌ニ発表サル。


■資料

東京日日新聞 第一五七九一号 大正九年九月二三日 万策悉く尽きぬ 悲しき運命に泣く 加州七万の同胞 渋沢は米人を籠絡する怪しからぬ男と排日の道具にする加州人の非人道 渋沢子痛嘆して語る(DK330069k-0001)
第33巻 p.552-553 ページ画像

東京日日新聞 第一五七九一号 大正九年九月二三日
  万策悉く尽きぬ
    悲しき運命に泣く……加州七万の同胞
      渋沢は米人を籠絡する怪しからぬ男
      と排日の道具にする加州人の非人道
        渋沢子痛嘆して語る
米国々務卿コルビー氏幣原大使との談判はどう落着くか、加州八万《(マヽ)》の同胞の運命は近く決せられんとし、内田外相以下は連日の会議に頭を悩ましてゐるが、民間で排日案の緩和に東奔西走しつゝある渋沢子は曰く「一般投票は十一月二日に行はれるらしく、さうなれば加州の法律になつて現はれるのは瞭で、懸念に堪へぬ、政府は国務卿と交渉を開いてゐるらしいが
 ▽政府の仕事は政府に任せて△
吾々も此際極力緩和策を講ぜねばならぬ、私をして露骨に言はしむれば、加州の今度のやり方は非人道・不正義の甚だしきものだ、私が移民問題に手をつけたのは十三年前からで、微力を致すのも両国の平和親善を念とするからであるが、遂に斯う言ふ事になつてしまつた、濠洲へも加奈陀へも
 ▽日本の移民を送る事が出来△
ぬのに、今又、米国の土が踏めぬとせば実に容易ならぬ問題であるが今吾々の眼の前にブラ下つてゐる問題は、それよりも更に残酷で全然日本人を追つ払はうと言ふのだから、広く言へば人道の問題で、米国人としては政治道徳の問題だ、一九一三年の借地権問題の時でも時の国務卿ブライアン氏が奔走したが、ジヨンソン知事は肯入れず、遂に
 ▽あの州法を定めて仕舞つた△
かう言ふ悪先例があるし、彼のやうな国柄だから、中央政府の力を以てしても一般投票で決した事を動かす事は六ケ敷い、さうなると日本との協約はこの州法に依り全然無視される結果となり、両国々交にも関係して来る、幸ヴアンダーリツプ氏やアレキサンダー氏等の知己が極力緩和策に努めて呉れるので、吾々民間の者も、此方面で両国の諒解に努めてゐるが……
 ▽米国の識者は会つて話せば△
すぐ氷解するが、彼地には「渋沢と言ふ男は会ふ人を悉く籠絡してしまふ」等とお話にならぬ事を説き廻り、排日を煽つてゐる者もある次第で困つてゐるが、平和を愛する米国人の事故、結局国交を傷つけると言ふ事にはなるまいと思ふ、従つて我国民も排米熱を煽つたり、徒に騒ぎ廻る事はこの際避けなければならぬ」
   ○右記事中ニ云ヘル幣原大使トコルビートノ談判ニ就テハ川島伊佐美著「日米外交史」(昭和七年二月刊・第五三四―五三五頁)ニ次ノ如ク記載ス。
    華府よりの風説によると加州排日問題に就ては、米国政府と日本政府とは互ひに議歩せず、日本政府は加州の排日立法を防止せんことを主張し、国務省は如何ともする能はざる状態に在り、国務省は加州の新排日案の為め日米間に紛争起るを憂慮し、其紛争を回避すべく最善の努力を行ひつゝあるが、而も来る十一月の加州民の排日案一般投票を防止し得ず、幣原大使
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は『中央政府は何等かの手段を以て加州の排日案成立を防止せよ』と要求し、国務卿コルビー氏は頗ぶる困惑の模様で、一方日本人移民排斥の問題もあり、日本の樺太仮占領問題・西比利亜問題等もあり、日米《(本カ)》との交渉は愈々複雑し、国務省は結局加州問題解決には十一月の加州民一般投票に干渉せずして、其後右排日土地法案成立せし暁、日米新条約を締結するか或は訴訟を提起して其解決を図らんとするか、二者其一を択ぶに至るであろうといはれた。


中外商業新報 第一二三九八号 大正九年九月二五日 ○六十七年前を顧みて我が耳を疑ふ排日の声 日本を世界の仲間に導きしは実に米国なり 転た世の変遷の早きに驚くと渋沢氏の感激 =愛国の士よ激語を慎め=(DK330069k-0002)
第33巻 p.553-554 ページ画像

中外商業新報 第一二三九八号 大正九年九月二五日
  ○六十七年前を顧みて我が耳を疑ふ排日の声
    日本を世界の仲間に導きしは実に米国なり
      転た世の変遷の早きに驚くと渋沢氏の感激
        =愛国の士よ激語を慎め=
「米国加州に於ける排日法案の運命は我に取つて刻々危険の度を高めつゝあるやうだ、言ふが如く来十一月二日の
◇投票に 於て其法案が実地の働きをする事ともなれば、実に意想外なる驚きと嘆きとを喫せねばならないであらう、七万有余の我が同胞が積年の労苦に代へて得た三万英町余の所有土地を始め、多くの既得利権は一朝にして水泡に帰し、仮令我が移住民の所有権を侵害しないとは云ひ条、居るに居られない
◇破目に 陥り、軈て無念の涙を呑みつゝ故国に帰るは言ふ迄もない顧れば六十七年前には我が日本に勧めて世界の仲間入をせよと云つた国、其米国が今日手を翻して雲雨を呼び、我が同胞をして路頭に迷はしめんとするとは、余りに世故の変の早きに己が眼を疑はざるを得ぬと云ふものゝ排日其物の具体的条項として常に彼が唱へてゐる処の理由には
◇一面の 見方が有るには有る、が然し必ずしもそれが全体の公平を得た見方ではない、仮令ば鼠算的に子供を生むと云ふも、彼地に在る者が尽く男盛り女盛りの壮者である以上、それは反自然的の事由を加へない迄は、何処迄も生理的自然の現象に相違ないであらう、然し斯様な事々の端を論ずるは今は時では無い、我等は己の欲せざる所之を人に施す勿れ
◇行つて 得ざるあれば反つて之を己に求む、此の反省主義と云はうか乃至は謙譲主義と云はうかを相変らず所持するものである、之を考慮の第一に置いて、此問題が円満に解決する迄は飽迄も努む可きを努め度いと考へる、まだまだ努む可き余地は沢山ある、最後の成果は到底得られたものでないと言つてはならぬ、世間には往々激し易く又憤るに早い人が在つて、断じて行へば
◇鬼神も 之を避くなぞと言ひ、態と之が事態を紛糾せしめんとする向も満更ないではない、之は自分の強よがりを強がる丈けの事である其効果は事の破滅を急ぐに止まり、決して真の憂国的言動とはならぬ彼等同胞の為め、又帝国の面目の為、真に憂ふると云ふならば、層一層の慎重さを持たねばならぬ、私は此問題の
◇成行と 共に併せて之を憂へんとする者である、然る可き事に然る可く政府を鞭撻するも一法であり、又広く図る可きに図つて、然る後
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之が大対策を講じても良い訳ではないか、過不及なくして然も正々堂堂たる輿論を起し、飽く迄も穏かに之が解決の資をつくるも亦それであらう、それにしても啻私は斯う云ふ事を云ふに決して人の後に立つ者ではない、と云ふは自ら正義
◇仁道の 国を以て許す米国であるが故に、必すや其中央政府に於て之が不法を糺し、且つ日米親善の実の為めにも、之を何等かの方法により打消すであらう、然らざれば我れ何の言葉を以て対せんやと云ふ事である」


東京日日新聞 第一五七九四号 大正九年九月二六日 遣米使節問題(DK330069k-0003)
第33巻 p.554 ページ画像

東京日日新聞 第一五七九四号 大正九年九月二六日
    遣米使節問題
廿四日の閣議に於て、内田外相より廿二日の外交調査会の経過報告あり、加州問題に関しては、前回の閣議に於て金子・渋沢両子等民間有力者の意見を徴する事となせるに基き、原首相より廿二日両子と会見せる顛末等を述べ、続いて日米両国政府の一致に依り、愈高等委員会を設置する運とならば、我邦より幣原大使以外別に有力者を米国に特派すべきや否やに就き協議せるが、若し特派使節を送るとせば、金子堅太郎子を適任とすべしとの議出でたるも、決定に至らず、而して若し適任者を得ざる際は、万事幣原大使の折衝に一任する外なかるべきが、廿四日の閣議に於ては特派使節を送るべきや否やの問題も決定に至らず、追つて詮議する事となるべしと


二六新報 第二一二九号 大正九年九月二七日 至誠と冷静 加州排日問題に対し 渋沢子爵談(DK330069k-0004)
第33巻 p.554-555 ページ画像

二六新報 第二一二九号 大正九年九月二七日
  至誠と冷静
    加州排日問題に対し
                     渋沢子爵談
今や我国は内外多事、内に改善刷新を要すべき幾多の問題を有するに加へて、更に外満蒙問題・シベリヤ問題・朝鮮問題等許多の難問題に遭遇せるが、内最も加州排日問題程しかく緊急重大なる問題はあらず日々の形勢を察するに、排日法の通過は刻々に可能性を濃厚にして、彼等の
排日宣伝 運動は次第に悪性を加味し来れるを以て、今日の状態を以て推移せんか、加州排日法案は多数の賛成を得て通過し、軈て実施の結果を見るに至る可く、斯くて吾同胞多年労苦の成果は水泡に帰し、加州六万八千の老若は食ふに産なく、居るに家なく、遂に無念の涙を呑みて再び母国の土を踏むの外策なきに至らん、夙に今日の如き結果を見る無きやを憂ひ、極力日米親善策に留意し
米国団体 の日本観光を歓迎し、日本団体の米国視察を奨励し、親しく其風土・文物・風俗等に接して相互の了解を得るに努め、先般来朝のヴアンダリツプ、ライマン、チージ、キングスレー、シヤーマン、エーストン氏等一行はよく吾国情を了解する処ありたるが如く思はれたるが、しかく反響なきは亦詮なき次第なり、加州民の今日の行動及びフイーラン、インマン氏等の言行は、暴慢無礼殆ど正義人道を無視したる行為にして、本国に於ても多数の人々は其非理非法なる事を承
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認なせども、元来
米国々法 として各州州民多数の意思に依る州内の行政に対しては中央政府と雖も絶対干渉権を有せざるものにして、嘗て大正二年加州に於て土地法問題勃発せる際、時の国務大臣ブライアン氏は加州知事ジヨンソン氏と交渉し、其違法なる事を警告せるに、ジヨンソン氏は、米国の国法として米国の政体として、州の内政に対しては中央政府と雖も干渉を許さずと拒絶せる事実あり、今日の加州は恰も大正二年の土地法問題の再燃し更に悪化せる者に外ならず、之に大統領
選挙問題 に対する党派の競争を加味して一層力強く顕れたるものと言ふべし、然れども兎に角加州排日問題は明かに違憲にして、正義の上より大観するも決して黙視すべき問題にあらざるを以て、吾国としては、理論の上より仁義の上より最善を尽し、而も猶加州人民一般の排日投票を拒止する事能はざれば、高等委員会の設置を要望し、日米両者合同して、慎重審議、彼我の利害得失を調査研究し、以て之が対策を案出するを要す、米国中央政府に於ては、目下高等委員会設置を見るに至る前に、加州の違憲を拒否すべく
極力努力 しつゝあるを以て、何等かの打開点を発見し、今日の窮状より在加州同胞を脱出せしむる事は、未だ必ずしも絶望なりと断定すべきにあらず、而も在加州同胞救助策としては、更に帰化権獲得の方法あり、然れども帰化権獲得法は憲法に牴触する処あるを以て、其実行は決して容易にあらざるべし、然れども以上の二案亦望みなく、加州排日の状勢更に険悪の度を増加するに至らば、吾国民は国民の至誠を吐露して之を提訴し、公明なる裁判の判決に委すより外なかるべし惟ふに今日の状態を以て察せば、加州の排日は只単に
加州一州 のみの問題として見るべきものにあらず、亦唯政争の具に供せられたるものなりとのみ考ふべきものにあらざれど、米国人総て非理非道の集合にあらざる可きを以て、徒に感情に捉はれ事を繁くするは重ねて考慮すべき事柄にして、今日吾国人の第一に厳守すべきは沈着に冷静に慎重考量なすにあり


東方時論 第五巻・第一一号 大正九年一一月 道理の前に米国の反省を求む 子爵 渋沢栄一(DK330069k-0005)
第33巻 p.555-557 ページ画像

東方時論 第五巻・第一一号 大正九年一一月
    道理の前に米国の反省を求む
                   子爵 渋沢栄一
    一
 日米両国は従来相携へて太平洋に於ける平和の確保、通商貿易の保護に任じて来た。日本にとつては米国は開国の案内人であり、文化発達の教師であり、而して貿易産業の開発者であつた。故に日本としては深く意を両国の親善融和に潜めて、相共に永久平和の保障に努めて来たものである。或は紳士協約を結び或は委員会を設けなぞして、彼我の諒解を完うする上に力を致したものも、畢竟彼我の理解ある提携によつて、東洋の文化並に平和に貢献せんが為めであつた。然るに最近加州排日土地法案問題の提出によつて、彼我の伝統的友情の上に暗影を投ずるに至つたことは、予輩の衷心より遺憾とする処である。
 米国に於ける排日問題は決して新しい問題ではない。理解ある米人
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によつて真実の親善が保たれつゝある間に、諸種の憂ふべき原因によつて排日運動は幾度か起された。此等の禍因を除いて諒解を進める為めに、明治四十一年には太平洋岸に於る八つの米国商業会議所の人々を日本に招いて懇談した。時の政府が進んで之を企て、実業界の者も加つて、極力相互の国民的融和に力めた。翌四十二年には日本から渡米実業団を組織して、米国各地に親善の意を表した。此の両度とも予は加入して居たのであるが、表面上は如何にも立派に諒解も出来、融和も行はれて居るやうではあつたが、裏面には一種の不安も伴つて、是れでいつまでも面倒が起らなければ結構だが、と窃かに祈つて居た次第であつた。所が大正二年になると、過去数年間或は紳士協約に或は団体視察団交換等によつて専念国民的融和親善に力めて来て居たのにも拘らず、例の土地所有権問題が加州に起つた。之は日本人の土地所有権及借地権を制限する目的を以て制定せられたのであるが、予等は添田寿一博士・神谷忠雄氏等と協力して、日米同志会の運動を起して奔走した結果、米国人の名によつて、若くは会社として所有する分には差支のないことになり、農業地の賃借に就ては、其の期間を三年間に限定すると云ふ事で済んだのである。
 然し排日運動は決して之で終熄した訳ではない。その後も排日派の巨頭たるフイラン、インマン等の人々はひそかに形勢を観望して、運動促進の時機をねらつて居たのである。大正四年には桑港に博覧会が開かれるに就いて日本にも交渉があり、意見も色々あつたが、日本としては成る可く助け合つてゆき度いと云ふ考から、恰度戦争中ではあつたが、賛同ときめて奔走した。その頃は感情も融和して可なり平和な空気が漾ふて居つたのである。
 例の日米関係委員会も此の時組織され、同時に日本でも同種の会を作つた。予は其時も加州に赴いたのであるが、先方の有力者とも会見して、今までの所は致し方もないが、たゞ風俗や言語習慣等が異るからと云ふやうな人種的差別を根にして、既往の日本人を排斥するならば、余りに不人道極まる話で到底同意なり難い、日本人の不注意な点は十分改めることにして、何卒今後はその方にも尽力していたゞき度い、と云ふ意見を陳べ、同意を得て帰つたのである。
 由来此の委員会は、人気が強くなれば主張も強め、継続して今日に及んで居る。排日運動の方も大正五・六年と平静の裡に暮れて、昨年の春頃までは異変とてもなかつたのであつた。
    二
 然るに昨年の秋に至て排日運動は又もや気勢を昂めて来た。是は山東問題・西伯利出兵問題・朝鮮内治問題等に関して、米国内輿論の振起を絶好の機会として、予てから時機をねらつて居た排日派が、人気の険悪に傾く風潮を按じ、大に宣伝に力めたことによつて、次第に白熱化されて来た。加州知事は始め州議会の開会を拒いだのであるが、遂に輿論は一般投票によつて之を決すると云ふ事に決定して了つた。西部に於ける親日派のアレキサンダー、リンチ氏等も非常に前途を憂慮して、先方で尽力して居るのであるが、何しろ山東問題以来東部方面にすら排日悪感が蔓延して居る有様故、風潮は益々険悪に趨いた。
 - 第33巻 p.557 -ページ画像 
 今度の土地法は事件としては加州の問題であるが、性質から云へば決して一加州の問題ではない。そこで米国内一般の輿論を動かす為めに東部方面とも打合せ、更に又根本的に諒解を遂げ度いと思つたから曩にはヴアンダーリツプ氏等をも招待して協議もした。先づ一の高等委員会を開いて慎重に協議するやうにし度い希望であつた。之は加州方面にもヴ氏にも非公式ながら通告しておいたのであるが、事実上の経過が捗取らぬ有様である。此の間の経緯に就いては種々懐抱する処もあり憂慮に堪へ点ぬも多いが、予等は予等で微力を竭し、政府からの十分の交渉を祈るより外はない。
    三
 日本人は単り之を米国に限らず、如何なる国に対しても平和と正義の愛護者である。此の根柢から米国に対しても、今日まで平和親善を基調とする協約には力めて同意翼賛して来た。予は固より米国の真意が平和人道を愛するにあることを疑ふ者ではない。然し非常に結構なことであると思はれて居た石井・ランシング協約が次第に其の影を朧ろにしたり、或は又たラモント氏の満蒙除外等が相関連して加州排日問題の背景をなして居ると云ふやうな説を耳にすることあるは、日米親善の前途の為め、痛切に之を遺憾とせざるを得ない。
 日本人が斯の如く親善融和の精神を以て米国に対して居るにも拘らず、又た今迄に数回に亘つて米国の要求を容れ、現在留民も既定法律の下に非違なく従つて居るにも拘らず、飽まで今度の土地法案を通過させやうとするならば、それは明白なる不合理である。而して此の不合理を不合理として承認するの道はその通過を拒むべき方法をとるにある。そこで桑港にも又東部方面の有力者にも之れを勧説したのであるが、そのことには賛同して来て居る。賛同したのは明らかに該法案を不合理と認めたからであらうから、不合理と認めた以上は、一致協力して尽力して貰ひ度いものである。説は一致するが実行はしないと云ふのでは困るから、切に米国諸人士の努力を両国の為めに希望して居る次第である。
 不幸にして該法案が通過するならば、更に明治四十年前後にまで遡つて、当時以来の在留日本人等にまで、それ等の不合理が合理的のものとして適用さるゝならば、曾て光栄ありし米国人の正義人道論は如何なものになるであらうか。紳士協約も大正二年の土地法も、過去久しきに亘つて致された日本の対米親情も、遂に何等酬はるゝ事なくして終るの外はないであらう。然らば日本は更に声を大にして米人の是非曲直の観念に訴へ、その正義人道を愛護する精神に求め、切に加州並に米国全民の反省を希はざるを得ない。我等は実に道理の前に立ちて米国人の反省を請はんとするものである。



〔参考〕(阪谷芳郎)日米関係委員会日記 大正九年(DK330069k-0006)
第33巻 p.557-558 ページ画像

(阪谷芳郎)日米関係委員会日記 大正九年
                    (阪谷子爵家所蔵)
 九、八、一七 金子堅太郎氏加州問題ノ状況ヲ憂ヒ来状アリ(八月十六日付)
        右ニ付此際ノ策トシテハ政府ハ厳重ニ交渉主張シ、
 - 第33巻 p.558 -ページ画像 
而シテ国民外交トシテ両国有力者間大局ノ了解ヲ得ルコトヲ力メ、両国関係危機ニ瀕スルニ到ルモ、之ヲ破裂セシメスシテ正ニ復スルノ方法ヲ講スルノ外ナキ旨ヲ答フ、右同時ニ金子氏来状ト共ニ渋沢男ニ申送ル
(欄外記事)
[金子氏葉山ニアリ、渋沢男ハ小涌谷ニアリ



〔参考〕ALIEN LAND ACT TO BE SUBMITTED TO THE ELECTORS OF THE STATE OF CALIFORNIA, (Printed) Taisho 9 nen, 8 gatsu(DK330069k-0007)
第33巻 p.558-566 ページ画像

ALIEN LAND ACT TO BE SUBMITTED TO THE ELECTORS OF THE STATE OF CALIFORNIA,
        (Printed) Taisho 9 nen, 8 gatsu
  INITIATIVE MEASURE TO BE SUBMITTED
     DIRECTLY TO THE ELECTORS


AN ACT RELATING TO THE RIGHTS, POWERS AND DISABILITIES OF ALIENS AND OF CERTAIN COMPANIES, ASSOCIATIONS AND CORPORATIONS WITH RESPECT TO PROPERTY IN THIS STATE, PROVIDING FOR ESCHEATS IN CERTAIN CASES, PRESCRIBING THE PROCEDURE THEREIN, REQUIRING REPORTS OF CERTAIN PROPERTY HOLDINGS TO FACILITATE THE ENFORCEMENT OF THIS ACT, PRESCRIBING PENALTIES FOR VIOLATION OF THE PROVISIONS HEREOF, AND REPEALING ALL ACTS OR PARTS OF ACTS INCONSISTENT OR IN CONFLICT HEREWITH.
  The People of the State of California do enact as follows :
  Section 1. All aliens eligible to citizenship under the laws of the United States may acquire, possess, enjoy, transmit and inherit real property, or any interest therein, in this State, in the same manner and to the same extent as citizens of the United States, except as otherwise provided by the laws of this State.
  Sec. 2. All aliens other than those mentioned in section one of this act may acquire, possess, enjoy and transfer real property, or any interest therein, in this State, in the manner and to the extent and for the purpose prescribed by any treaty now existing between the Government of the United States and the nation or country of which such alien is a citizen or subject, and not otherwise.
  Sec. 3. Any company, association or corporation organized under the laws of this or any other state or nation, of which a majority of the members are aliens other than those specified in section one of this act, or in which a majority of the issued capital stock is owned by such aliens, may acquire, possess, enjoy and convey real property, or any interest therein, in this State, in the manner and to the extent and for the purposes prescribed by any treaty now existing between the Government of the United States and the nation or country of which
 - 第33巻 p.559 -ページ画像 
such members or stockholders are citizens or subjects, and not otherwise. Hereafter all aliens other than those specified in section one hereof may become members of or acquire shares of stock in any company, association or corporation that is or may be authorized to acquire, possess, enjoy or convey agricultural land, in the manner and to the extent and for the purposes prescribed by any treaty now existing between the Government of the United States and the nation or country of which such alien is a citizen or subject, and not otherwise.
  Sec. 4. Hereafter no alien mentioned in section two hereof and no company, association or corporation mentioned in section three hereof, may be appointed guardian of that portion of the estate of a minor which consists of property which such alien or such company, association or corporation is inhibited from acquiring, possessing, enjoying or transferring by reason of the provisions of this act. The public adminstrator of the proper county, or any other competent person or corporation, may be appointed guardian of the estate of a minor citizen whose parents are ineligible to appointment under the provisions of this section.
  On such notice to the guardian as the court may require, the Superior Court may remove the guardian of such an estate whenever it appears to the satisfaction of the court :
  (a) That the guardian has failed to file the report required by the provisions of section five hereof ; or
  (b) That the property of the ward has not been or is not being administered with due regard to the primary interest of the ward ; or
  (c) That facts exist which would make the guardian ineligible to appointment in the first instance ; or
  (d) That facts establishing any other legal ground for removal exist.
  Sec. 5. (a) The term "trustee" as used in this section means any person, company, association or corporation that as guardian, trustee, attorney-in-fact or agent, or in any other capacity has the title, custody or control of property, or some interest therein, belonging to an alien mentioned in section two hereof, or to the minor child of such an alien, if the property is of such a character that such alien is inhibited from acquiring, possessing, enjoying or transferring it.
  (b) Annually on or before the thirty-first day of January every such trustee must file in the office of the Secretary of State of California and in the office of the County Clerk of each county in which any of the property is situated, a verified
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written report showing :
  (1) The property, real or personal, held by him for or on behalf of such an alien or minor ;
  (2) A statement showing the date when each item of such property came into his possession or control ;
  (3) An itemized account of all expenditures, investments, rents, issues and profits in respect to the administration and control of such property with particular reference to holdings of corporate stock and leases, cropping contracts and other agreements in respect to land and the handling or sale of products thereof.
  (c) Any person, company, association or corporation that violates any provision of this section is guilty of a misdemeanor and shall be punished by a fine not exceeding one thousand dollars or by imprisonment in the county jail not exceeding one year, or by both such fine and imprisonment.
  (d) The provisions of this section are cumulative and are not intended to change the jurisdiction or the rules of practice of courts of justice.
  Sec. 6. Whenever it appears to the court in any probate proceeding that by reason of the provisions of this act any heir or devisee cannot take real property in this state or membership or shares of stock in a company, association or corporation which, but for said provisions, said heir or devisee would take as such, the court, instead of ordering a distribution of such property to such heir or devisee, shall order a sale of said property to be made in the manner provided by law for probate sales of property and the proceeds of such sale shall be distributed to such heir or devisee in lieu of such property.
  Sec. 7. Any real property hereafter acquired in fee in violations of the provisions of this act by any alien mentioned in section two of this act, or by any company, association or corporation mentioned in section three of this act, shall escheat to, and become and remain the property of the State of California. The attorney general or district attorney of the proper county shall institute proceedings to have the escheat of such real property adjudged and enforced in the manner provided by section four hundred seventy-four of the Political Code and title eight, part three of the Code of Civil Procedure. Upon the entry of final judgment in such proceedings, the title to such real property shall pass to the State of California. The provisions of this section and sections two and three of this act shall not apply to any real property hereafter acquired in the enforcement or in satisfaction of any lien now existing upon,
 - 第33巻 p.561 -ページ画像 
or interest in such property, so long as such real property so acquired shall remain the property of the alien, company, association or corporation acquiring the same in such manner.
No alien ,company, association or corporation mentioned in section two or section three hereof shall hold for a longer period than two years the possession of any agricultural land acquired in the enforcement of or in satisfaction of a mortgage or other lien hereafter made or acquired in good faith to secure a debt.
  Sec. 8. Any leasehold or other interest in real property less than the fee, hereafter acquired in violation of the provisions of this act, by any alien mentioned in section two of this act or by any company, association or corporation mentioned in section three of this act, shall escheat to the State of California. The attorney general or district attorney of the proper county shall institute proceedings to have such escheat adjudged and enforced as provided in section seven of this act. In such proceedings the court shall determine and adjudge the value of such leasehold or other interest in such real property, and enter judgment for the State for the amount thereof together with costs. Thereupon the court shall order a sale of the real property covered by such leasehold, or other interest, in the manner provided by section twelve hundred seventy-one of the Code of Civil Procedure. Out of the proceeds arising from such sale, the amount of the judgment rendered for the State shall be paid into the State Treasury and the balance shall be deposited with and distributed by the court in accordance with the interest of the parties therein. Any share of stock or the interest of any member in a company, association or corporation hereafter acquired in violation of the provisions of section three of this act shall escheat to the State of California. Such escheat shall be adjudged and enforced in the same manner as provided in this section for the escheat of a leasehold or other interest in real property less than the fee.
  Sec. 9. Every transfer of real property, or of an interest therein, though colorable in form, shall be void as to the state and the interest thereby conveyed or sought to be conveyed shall escheat to the State if the property interest involved is of such a character that an alien mentioned in section two hereof is inhibited from acquiring, possessing, enjoying or transferring it, and if the conveyance is made with intent to prevent, evade or avoid escheat as provided for herein.
  A Prima-facie presumption that the conveyance is made with such intent shall arise upon proof of any of the following groups of facts :
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  (a) The taking of the property in the name of a person other than the persons mentioned in section two hereof if the consideration is paid or agreed or understood to be paid by an alien mentioned in section two hereof ;
  (b) The taking of the property in the name of a company, association or corporation, if the memberships or shares of stock therein held by aliens mentioned in section two hereof, together with the memberships or shares of stock held by others but paid for or agreed or understood to be paid for by such aliens, would amount to a majority of the membership or the issued capital stock of such company, association or corporation ;
  (c) The execution of a mortgage in favor of an alien mentioned in section two hereof if said mortgagee is given possession, control or management of the property.
  The enumeration in this section of certain presumptions shall not be so construed as to preclude other presumptions or inferences that reasonably may be made as to the existence of intent to prevent, evade or avoid escheat as provided for herein.
  Sec. 10. If two or more persons conspire to effect a transfer of real property, or of an interest therein, in violation of the provisions hereof, they are punishable by imprisonment in the county jail or state penitentiary not exceeding two years, or by a fine not exceeding five thousand dollars, or both.
  Sec. 11. Nothing in this act shall be construed as a limitation upon the power of the state to enact laws with respect to the acquisition, holding or disposal by aliens of real property in this state.
  Sec. 12. All acts and parts of acts inconsistent or in conflict with the provisions hereof are hereby repealed ; Provided, that ----
  (a) This act shall not affect pending actions or proceedings, but the same may be prosecuted and defended with the same effect as if this act had not been adopted ;
  (b) No cause of action arising under any law of this state shall be affected by reason of the adoption of this act whether an action or proceeding has been instituted thereon at the time of the taking effect of this act or not and actions may be brought upon such causes in the same manner, under the same terms and conditions, and with the same effect as if this act had not been adopted ;
  (c) This act in so far as it does not add to, take from or alter an existing law, shall be construed as a continuation thereof.
  Sec. 13. The Legislature may amend this act in furtherance
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of its purpose and to facilitate its operation.
  Sec. 14. If any section, subsection, sentence, clause or phrase of this act is for any reason held to be unconstitutional, such decision shall not affect the validity of the remaining portions of this act. The people hereby declare that they would have passed this act, and each section, subsection, sentence, clause and phrase thereof, irrespective of the fact that any one or more other sections, subsections, sentences, clauses or phrases be declared unconstitutional.
(右訳文)
    人民投票ニ依ル加州外国人土地法案
加州人民ハ左記法律ヲ制定ス
第一条 合衆国国法ニ拠リ合衆国市民タルコトヲ得ル総テノ外国人ハ合衆国市民ト同一方法及同一範囲ニ於テ、本州内ニ於ケル不動産又ハ不動産上ノ権利ヲ取得・保有・使用・譲渡及相続スルコトヲ得、但シ本州ノ法律ニ別段ノ定アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第二条 第一条ニ掲ゲタルモノ以外ノ外国人ハ、合衆国政府ト当該外国人ノ本国トノ間ニ存在スル現行条約ニ規定セラレタル方法・範囲目的ニ於テノミ、本州内ニ於ケル不動産又ハ不動産上ノ権利ヲ取得保有・使用及譲渡スルコトヲ得(現行法ニアル借地三年ノ項削除)
第三条 本州・他州又ハ外国ノ法律ニ依リ組織セラレタル会社・組合又ハ法人ニシテ其ノ社員又ハ組合員ノ過半数カ第一条ニ特定セル以外ノ外国人ナルカ、又ハ其ノ発行株式ノ過半数ガ是等外国人ノ所有ニ係ル場合ハ、該会社・組合又ハ法人ハ合衆国政府ト当該社員・組合員又ハ株主ノ本国トノ間ニ存在スル現行条約ニ規定セラレタル方法・範囲・目的ニ於テノミ、本州内ニ於ケル不動産又ハ不動産上ノ権利ヲ取得・保有・使用及譲渡スルコトヲ得(現行法ニアル借地三年ノ項削除)
 合衆国政府ト第一条ニ特定セル以外ノ外国人ノ本国トノ間ニ存在スル現行条約ニ規定セラレタル方法・範囲・目的ニ於テノミ、将来当該外国人ハ、農業地ヲ取得・保有・使用又ハ譲渡スルノ権能ヲ有シ又ハ有シ得ル会社・組合又ハ法人ノ社員又ハ組合員ト為リ、又ハ之ガ株式ヲ取得スルコトヲ得(本項ハ新規定)
第四条 第二条ニ掲ゲタル外国人、及第三条ニ掲ゲタル会社・組合又ハ法人ハ、将来之ヲ未成年者ノ財産中本法ノ規定ガ該外国人会社・組合又ハ法人ニ対シ取得・保有・使用又ハ譲渡ヲ禁止セル部分ヲ管理スル後見人ニ任命スルコトヲ得ズ、当該郡ノ公定管理人其ノ他適当ノ個人若ハ法人ハ、之ヲ本条ノ規定ニ拠リ後見人ニ任命セラルヽ資格ヲ有セザル者ヲ両親トスル未成年市民ノ財産ノ後見人ニ任命スルコトヲ得
 上級裁判所左記ノ事実ヲ認メタルトキハ、其ノ必要ト認ムル通告ヲ与ヘテ前記財産ノ後見人ヲ解任スルコトヲ得
 イ、後見人ガ第五条ニ規定スル届出ヲ為サザリシコト
 ロ、後見人ガ被後見人ノ利益ヲ主眼トシテ其ノ財産ヲ管理セザルカ
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又ハセザリシコト
 ハ、後見人ガ最初ヨリ後見人ニ任命セラルベキ資格ヲ有セザリシコト
 ニ、其ノ他解任スベキ法律上ノ理由アルコト(本条全部新規定)
第五条(イ)本条ニ於テ「受託人」ト称スルハ、第二条ニ掲ゲタル外国人又ハ斯ル外国人ノ未成年ノ子ノ所有ニ係リ、且本法ノ規定ニ依リ斯ル外国人ガ取得・保有・使用又ハ譲渡ヲ禁ゼラルベキ性質ノ財産又ハ財産上ノ権利ヲ、後見人・受託人・事実上ノ代弁人若ハ代理人又ハ其他ノ資格ニ於テ所有・保管又ハ支配スル個人・会社・組合又ハ法人ヲ謂フ
 (ロ)受託人ハ毎年一月卅一日迄ニ本州々務長官事務所及財産所在地ノ郡役所ニ左記事項ヲ掲記セル公証アル届書ヲ提出スベシ
  (一)受託人ガ前記外国人又ハ未成年者ノ為ニ保有スル動産又ハ不動産
  (二)前記財産ノ各項目ガ受託人ノ保有又ハ支配ニ移レル年月日ヲ示ス記事
  (三)前記財産ノ管理及支配ニ関スル一切ノ経費・投資・地代・収穫及益金ノ箇条書、特ニ所有株券・借地契約・収穫契約、其他土地ニ関スル契約及作物ノ貯蔵又ハ販売ニ関スルモノ
 (ハ)本条ノ規定ニ違反スル個人・会社・組合又ハ法人ハ、之ヲ軽罪犯人トシテ千弗以下ノ罰金又ハ郡監獄ニ於ケル一年以下ノ禁錮ニ処シ、又ハ前記罰金刑及体刑ヲ併科ス
 (ニ)本条ノ規定ハ累加規定ニシテ裁判所ノ管轄又ハ其ノ手続ニ関スル規則ヲ変更スルコトナシ(本条全部新規定)
第六条 管轄裁判所ニ於テ遺産処分又ハ遺言執行ノ手続中、当該相続人又ハ受遺者中ニ本法ノ規定ニ依リ本州内ノ不動産ヲ取得スルコトヲ得ズ、又ハ会社・組合又ハ法人ノ社員権・組合権又ハ株式ヲ取得スルヲ得ザル者アルトキハ、裁判所ハ該財産ヲ相続人又ハ受遺者間ニ分配セシメズ、遺産処分ニ関スル法規ノ定ムル手続ニ依リ之ガ売却ヲ命ズベク、其ノ売却代金ハ之ヲ当該相続人又ハ受遺者間ニ分配スベキモノトス
第七条 第二条ニ掲ゲタル外国人又ハ第三条ニ掲ゲタル会社・組合又ハ法人ニシテ、将来本法ノ規定ニ反シ不動産ヲ取得シタルトキハ該不動産ハ没収セラレ州ニ帰属スベシ、検事総長又ハ当該郡検事ハ加州行政法第四百七十四条及民事訴訴法第三編第八章ノ規定ニ依リ、当該不動産没収ノ判決及之ガ執行ニ必要ナル裁判上ノ手続ヲ執ルベシ、当該不動産ノ州ニ帰属スルハ右裁判確定ノ後タルベシ、将来外国人会社・組合及法人ニシテ本法施行ノ際既ニ設定シアリタル不動産上ノ担保権行使ノ結果、当該不動産又ハ不動産上ノ権利ヲ取得シタル場合ハ、右財産ガ当該所有者ニ属スル限リ第二条・第三条及本条ハ之ヲ適用セズ、第二条又ハ第三条ニ掲ゲタル外国人・会社・組合又ハ法人ガ、将来其ノ債権ヲ確保スル為善意ニ設定シタル担保権ヲ行使セル結果農業地ヲ取得スルニ至リタルトキハ、二年以上之ヲ保有スルヲ得ズ(本項新規定)
 - 第33巻 p.565 -ページ画像 
第八条 第二条ニ掲ゲタル外国人又ハ第三条ニ掲ゲタル会社・組合又ハ法人ガ将来本法ノ規定ニ反シ取得シタル借地権其ノ他所有権以外ノ不動産上ノ権利ハ、没収セラレ州ニ帰属スベシ、検事総長又ハ当該郡検事ハ第七条ノ規定ニ依リ前記没収ノ判決及之ガ執行ニ必要ナル裁判上ノ手続ヲ執ルベシ、該訴訟ニ於テ裁判所ハ当該借地権其ノ他ノ不動産上ノ権利ノ価格ヲ評定シ、其ノ評価格ハ訴訟費用ト共ニ州ニ属スベキ旨ノ判決ヲ与ヘ、然ル後民事訴訟法千二百七十一条ノ定ムル所ニ依リ、当該借地権其ノ他ノ権利ノ設定シアル不動産全部ノ売却ヲ命ズベシ、前記判決ニ依リ州ニ属スベキ金額ハ、之ヲ前記売却代金ヨリ控除シテ州金庫ニ支払ヒ、剰余金ハ之ヲ裁判所ニ供託シ、関係当事者ノ権利ニ応ジテ分配スベキモノトス
 将来第三条ノ規定ニ反シテ取得シタル会社・組合又ハ法人ノ株式又ハ社員若ハ組合員ノ権利ハ、之ヲ州ニ没収ス、前記没収ニ関スル裁判上ノ手続ハ、借地其他所有権以外ノ不動産上ノ権利ノ没収ニ関スル本条ノ規定ニ依ル(本条全部新規定)
第九条 第二条ニ掲ゲタル外国人ニ依リ取得・保有・使用又ハ譲渡ヲ禁止セラレタル不動産又ハ不動産上ノ権利ノ移転ガ、本法規定ノ没収ヲ免レントスル意思ヲ以テ為サレタルトキハ、其ノ形式ノ適法ナルニ拘ラズ該移転ハ無効ニシテ、之ニ依リ移転セラレ又ハ移転セント企テラレタル権利ハ、之ヲ州ニ没収ス
 左記事実ノ一ヲ認メタルトキハ、本法ノ規定ヲ免ルヽノ意志ヲ以テ移転ヲ行ヒタルモノト推定ス
 (イ)第二条所掲以外ノ者ノ名義ヲ以テ不動産ニ関スル権利ガ取得セラレタル場合ニ於テ、其ノ対価ガ第二条ニ掲ゲタル外国人ニ依リテ支払ハレ又ハ支払ハルベキ契約若ハ合意アルコト
 (ロ)会社・組合又ハ法人ノ名義ヲ以テ不動産ニ関スル権利ガ取得セラレタル場合ニ於テ、其ノ会社・組合又ハ法人ノ社員権若ハ組合権又ハ株式ニシテ第二条ニ掲グル外国人ニ属スルモノト、是等ノ外国人ニ属セザルモ其ノ対価ガ実際是等外国人ニ依リテ支払ハレ又ハ支払ハルベキ契約若ハ合意アルモノトヲ合算シタル結果、前記会社・組合又ハ法人ノ社員権・組合権又ハ株式ノ過半数ニ達スルコト
 (ハ)第二条ニ掲ゲタル外国人ニ対シ、抵当権ヲ設定シタル場合ニ於テ、該抵当権者ニ其ノ不動産ニ関スル保有・支配又ハ管理権ヲ与フルコト、前記ノ推定ハ、本法ニ依ル没収ヲ免レントスル意思ノ存在ニ関スル他ノ正当ナル推定ヲ妨ゲズ(本条全部新規定)
第十条 二人以上通謀シ本法ニ違反シテ不動産又ハ不動産上ノ権利ノ移転ヲ為シタルトキハ、州若ハ郡監獄ニ於ケル二年以下ノ禁錮又ハ五千弗以下ノ罰金ニ為シ又ハ前記罰金刑ヲ併科ス(本条全部新規定)
第十一条 外国人ノ本州内ニ於ケル不動産ノ取得・保有及処分ニ関スル本州ノ法律制定権ハ、本法ノ規定ニ依リ何等ノ制限ヲ受ケタルモノト解スベカラズ
第十二条 本法ノ規定ニ抵触スル法規ハ総テ之ヲ廃止ス
 - 第33巻 p.566 -ページ画像 
 但シ(本条但書新規定)
 (イ)本法ハ現ニ繋属中ノ訴訟事件ニ何等ノ影響ヲ及ボサス、是等ノ訴訟事件ハ、本法ノ制定ナカリシト同様ニ続行セラルベキモノトス
 (ロ)本州ノ法律ニ依リテ提起セラルヽ訴訟ハ、本法ノ効力発生時ニ開始セラレ居ルト否トヲ論ゼズ、本法ノ制定ニ依リ何等ノ影響ヲ受クルコトナシ、訴訟事件ハ本法律ノ制定前ト同一条件、同一方法ニ拠リ、同一効力ヲ以テ州法ニ則リ之ヲ提起スルヲ得
 (ハ)本法ハ現行法ヲ増補・削除又ハ変更セザル限リ現行法ノ継続ト看做ス
第十三条 州会ハ本法ノ目的ヲ助長シ且其ノ運用ヲ容易ナラシムル為メ、本法ニ適当ナル修正ヲ加フルコトヲ得(本条全部新規定)
第十四条 本法ノ条・項・節・句又ハ用語ガ何等カノ理由ニ依リ憲法違反ノ判決ヲ受クルコトアルモ、斯ル判決ハ本法ノ他ノ部分ノ効力ニ影響ヲ及ボスコトナシ、人民ハ玆ニ本法ノ条・項・節・句又ハ用語中憲法違反ノ判決ヲ受クルコトアルベキニ拘ラズ、其他ノ部分ヲ制定スルノ意思ナリシコトヲ宣言ス(本条全部新規定)
   ○訳文ハ外務省通商局訳(大正九年八月稿)ニヨル。原文八ポ組ミノ部分ノ訳文ハ略ス。
   ○条項末ノ括孤内注記ハ欄外ニ掲記セラレタルモノナリ。



〔参考〕対米移民問題並加州排日運動ノ沿革 外務省編 第一七―二五頁 大正九年一〇月刊(DK330069k-0008)
第33巻 p.566-570 ページ画像

対米移民問題並加州排日運動ノ沿革 外務省編 第一七―二五頁 大正九年一〇月刊
    六、排日的土地法成立後今日迄ノ形勢
大正二年五月土地法成立後ニ於テハ例ノ「ハースト」系諸新聞カ時ニ日本ニ対シ毒筆ヲ弄スルコトアリタルモ、大正四年桑港ニ開催セラレタル巴奈馬運河開通記念博覧会ニ対シ本邦官民ノ熱心ナル賛助アリ、加フルニ偶々欧洲戦乱勃発シテ全米ノ視聴悉ク欧洲ニ集リ、一般ノ対日感情非常ニ緩和セシ観アリタリ
然ルニ大正八年一月加州州会開会ノ間際ニ於テ、加州選出合衆国上院議員「フイラン」氏ハ突然排日運動ヲ開始スルニ至レリ、抑々同氏カ斯ク俄ニ排日運動ニ着手シタル動機ハ、氏ノ上院議員ノ任期満了ニ近ツキ、次期選挙ニ於テハ其ノ当選ノ見込覚束ナキモノアルヨリ、排日問題ヲ提ケ之ニ依リ人気ヲ収攬セント計画セシモノナリト云フ、然ルニ不幸ニシテ此間偶々同氏ノ排日運動ノ材料ニ供スヘキ各種ノ事件勃発セリ
其ノ一ハ、巴里平和会議ニ於ケル我国提議ノ人種平等案ナリ、「フイラン」氏ハ之ヲ利用シ、同案ニシテ通過セハ日本ハ米国ニ多数ノ労働者ヲ送リ、米国太平洋沿岸ハ忽チ日本化スルニ至ルヘシト吹聴セリ
其ノ二ハ、米墨国境ニ於ケル本邦人土地買収ノ風説ナリ、我国ノ或ル実業家ハ、予テ墨西哥内米国国境附近ニ或ル土地ヲ買入レ、棉花ノ栽培事業ヲ経営セント計画ヲ立テ居タルカ、「フイラン」氏ハ是ヲ以テ恰モ日本政府カ軍事上ノ目的ニ供スル為墨西哥ニ於テ広大ナル土地ノ買収ヲ為シツヽアルカ如ク附会セリ
其ノ三ハ、本邦人ノ米国密入国問題ナリ、従来邦人ノ墨西哥ヨリ国境
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ヲ侵シ米国ニ密入スル者アリシカ、「フイラン」氏此ノ事実ヲ針小棒大ニ吹聴シ、之ヲ排日ノ材料ニ使用シタルカ、「ハースト」系新聞紙ハ人ヲ墨西哥国境ニ特派シ、其ノ報告ヲ連日同系統ノ各新聞紙上ニ発表セリ、偶々当時密入国者案外多数ニ上リ、米国移民官ニ逮捕セラレタル者両三箇月間ニ約百名ニ上リタルヲ以テ、本件ハ排日論者ニ取リ甚タ有力ノ材料トナレリ
其ノ四ハ、予テ問題タリシ我国写真結婚婦人ノ渡米ニシテ、氏ハ該問題ヲ殊ニ論難攻撃シ、日本ハ紳士協約ニ依リ渡米移民ニ制限ヲ加ヘ居ルニ拘ラス、写真結婚ノ方法ニ依リ多数ノ婦人ヲ米国ニ移送シ、以テ事実上全然同協約ヲ破毀シツツアリト絶叫セリ
玆ニ於テカ加州ニ於ケル排日論再燃シ、従来ノ形勢全ク一変スルニ至リ、大正八年春ノ州議会ニ於テハ帰化権ナキ外国人(即チ東洋人)ノ借地権ヲ剥奪スル議案及日本人学童隔離ニ関スル議案現ハレ、後者ハ殆ド満場一致ヲ以テ下院ヲ通過セリ、然ルニ時恰モ巴里平和会議ノ開会中ニテ、大統領「ウイルソン」氏ハ此ノ際排日案ヲ議スルノ不穏当ナルコトヲ打電シタル為、土地案ハ提出者ニ於テ撤回シ、学童案ハ上院委員会ニ於テ握リ潰サレタリ、但シ加州監督局ヲシテ外国人ノ借地事情ヲ調査セシメ、其ノ結果ヲ次期州会ニ報告セシムヘシトノ両院協同決議案通過シ、之ニ基キ州知事ハ州監督局ヲシテ加州ニ於ケル帰化権ナキ外国人ノ国別・人口・所有地及借地面積等ヲ調査セシムルコトトナレリ、斯クシテ昨春ノ加州通常州会ニ於テハ、排日案トシテ両院ヲ通過セシモノ前記調査案ノ外殆トナカリシカ、州会閉会後ニ於テモ「フイラン」氏一派ノ排日運動ハ依然継続セルノミナラズ、其ノ後続発シタル朝鮮問題・山東問題乃至西比利亜問題等ニ関聯シテ其ノ勢益熾烈トナリ、各種ノ団体頻リニ各地ニ会合シテ排日ノ決議ヲ為シ、又加州上院議員「インマン」氏及「サクラメント・ビー」紙主筆「マクラツチー」氏等ハ(一)日本人ノ借地権ヲ奪フコト(二)写真結婚婦人ノ渡米ヲ禁止スルコト(三)紳士協約ヲ撤廃シ米国自身ノ立法的手段ニ依リ日本移民ヲ禁止スルコト(四)日本人ニ永久帰化権ヲ与ヘサルコト(五)米国ニ於ケル日本人ノ出生児ニ市民権ヲ与ヘサルコト等ヲ目的トスル有力ナル加州排日協会ナルモノヲ組織スルニ至レリ、而シテ婦人参政権問題ノ為、加州臨時州会ノ昨年十一月一日「サクラメント」ニ召集セラルルヤ、該州会ニ於テ排日問題ヲ議スル為、更ニ本年一月ヲ期シ臨時州会ヲ開クヘシトノ決議案(州会ハ隔年ニ開会ノ規定ナルヲ以テ、通常州会ノ開会ハ明年一月ナリ)ヲ提出シ、該決議案ハ殆ド満場一致ヲ以テ上下両院ヲ通過セリ、右決議ニ対シ州知事「ステイヴンス」氏ハ(一)平和条約ハ米国ノ関スル限リ未タ確定ニ至ラス、世界政局ハ尚機微ノ状態ニアリ、此ノ際州民ノ軽挙ハ如何ナル難局ヲ誘発スルヤモ計ルヘカラス(二)加州監督局ハ日本人等ノ所有地借地等ニ付調査中ニシテ、加州ノ態度ハ右調査ノ結果ニ依リ決スヘキモノナリトノ理由ニ依リ反対ノ態度ヲ持シ、臨時州会ハ之ヲ召集セサルヘシト宣言シ居タリト雖、同氏ハ次期選挙ニ際シ或ハ合衆国上院議員タラントスルノ底意アリト伝フルアルヲ以テ、政界有力者ノ希望ヲ一概ニ排斥スル能ハサル立場ニアルニ依リ、排日論者ノ勢力如何ニ依
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リテハ何時其ノ態度ヲ変更スルヤモ計リ難カリシ処、其ノ後桑港市参事会初メ多数ノ団体カ続々トシテ排日立法制定ノ為臨時州会開会ノ必要ヲ決議スルアリテ、形勢容易ニ楽観ヲ許ササルモノアリ、若シ臨時州会ニシテ召集セラレンカ、人心興奮ノ際トテ如何ナル苛酷ノ排日案通過スルヤモ図リ難カリシニ付、帝国政府ハ種々考量ヲ遂ケ、一面米国政府トモ意見ノ交換ヲ試ミ、遂ニ写真結婚婦人ノ渡米ヲ禁止スルニ決定シ、昨年末在米幣原大使ニ訓令シ、北米合衆国本土行写真結婚婦人ノ旅券下付ヲ、本年二月末日限リ禁止スヘキ旨声明セシメタリ
然ルニ其後ニ於テモ、加州排日協会ハ依然躍起運動ヲ継続シ、同会長「インマン」ノ如キハ各地ニ遊説シ、地方民ノ会合トサヘ言ヘハ其ノ種類ノ如何ヲ問ハス之ニ出席シ、排日臨時州会ノ開会ヲ請求スル決議ヲ為サシメ居タルカ、一月十三日桑港ニ於テ開催セル同協会代表者会議ハ、知事ニ対シ排日臨時州会召集ノ日取ヲ定メンコトヲ強要シ、若シ容レラレサルトキハ人民投票ニ依リ排日立法ヲ為スヘキコトヲ決議シタリ、右決議ニ基キ其ノ後「インマン」ヨリ知事ニ対シ
 一、排日臨時州会召集ノ意思アリヤ
 二、若シアリトセハ召集ノ時期如何
ヲ質問シタルニ、知事ハ書面ヲ以テ「余ハ日本人問題ノ重大ナルヲ知ルヲ以テ、適当ナル時期ニ於テ有効ナル処置ヲ執ル必要ヲ認ムルモ、目下ノ処臨時州会ヲ召集スヘキヤ否ヤ明言シ難シ」ト述ヘタル由ニテ其ノ態度初メト変ラサルニ依リ、「インマン」ハ最早知事ヲシテ臨時州会ヲ開カシムルコトニ望ヲ絶チ、「イニシエチーブ」ニ依リ排日目的ヲ貫徹セント志スニ至レリ
    七、「イニシエチーブ」運動及排日土地法案ノ要領
「インマン」ヲ会長トセル加州排亜協会(其後「排日協会」ヲ「排亜協会」ニ改ム)ハ知事ノ為排日臨時州会ノ召集ヲ拒マレタル以来、愈愈「イニシエチーブ」ニ依リ其ノ主張スル排日土地法案ノ制定ヲ直接州民ニ問ハント決意スルニ至レル次第ハ前述ノ如シ、元来「イニシエチーブ」ニ依リ法案ヲ人民投票ニ付スルニハ、総選挙期日(十一月二日)前九十日(即チ八月四日)迄ニ「イニシエチーブ」ニ関スル請願書ヲ加州州務長官(Secretary of State)ニ提出スルヲ要シ、之ヲ提出スルニハ選挙人五万五千九十四名(前回ノ知事選挙ニ於ケル各候補者得票数総計ノ百分ノ八)ノ署名ヲ必要トスルヲ以テ、排亜協会ハ各地ノ支部ヲ初メ労働者組合・産業者組合・在郷軍人団・愛国男子団・愛国婦人団等ノ諸排日団体ヲ基礎トシ、全州ニ向テ請願書ニ署名ヲ勧誘スル手筈ヲ定メタリ、其ノ間各種団体続々トシテ排日立法賛成ノ意ヲ表明スルモノアリ、加州各郡監督官(County Supervisors)ノ如キ公職ニ在ルモノサヘ、四月中桑港ニ於テ開催セル大会ニ於テ、排日立法ニ声援ヲ与フル決議ヲナセリ、一方桑港商業会議所ヲ中心トスル穏健ナル米国実業家ノ一派ハ、排日運動ヲ阻止スル為「インマン」、「マクラツチー」等ノ排日派ト数度ノ会合ヲ重ネタルモ、遂ニ妥協点ヲ見出スヲ得ス、斯クテ排日派ノ請願運動準備ハ着々トシテ進捗セルカ、五月ニ入リ「インマン」ハ「イニシエチーブ」請願ノ内容タル法案ヲ新聞紙上ニ公表スルト同時ニ「ステートメント」ヲ発表シテ、右法案ニ
 - 第33巻 p.569 -ページ画像 
規定スル所ハ州ノ立法権限ニ属スル事項ニシテ、州自身解決セサルヘカラサルモノニ係リ、合衆国民全体ノ決スヘキ帰化又ハ移民ニ関スル事項ハ、之ニ包含セラレサルヲ以テ、本法案ハ条約違反若ハ区別的待遇ヲナスモノニアラサルコトヲ弁明シ、五月二十五日該請願書ヲ前記ノ排日諸団体ニ分配シ、南北両加ニ於テ各四万合計八万ノ署名ヲ蒐ムル予定ナルヲ揚言シ、各地ニ於テ盛ニ署名ノ勧誘ニ着手セリ
一方ニ於テ、右排日運動ニ対シ在米日本大使ハ随時非公式ニ華府中央政府ノ注意ヲ喚起シ、中央政府ニ於テモ日米親交ノ為メ誠意アル態度ヲ持シ来レルモ、由来米国中央政府ト州政府ノ関係ハ極メテ機微ノ点アリ、必ズシモ中央ノ意ノアル所地方ニ行ハルルモノニアラス、又加州在留邦人ハ、在米日本人会ヲ中心トシ、排日論ノ根拠ヲ否認スルニ足ルヘキ統計其他ノ資料並ニ公平ナル米人ノ意見等ヲ小冊子ニ印刷シ広ク各方面ニ配布シ、相当反響アリタル観アリシカ、六月十日「シカゴ」ニ於ケル共和党大会ニ於テ発表セル同党政綱中、移民問題ニ関シ一般移民ノ制限及登録ノ必要ナルコト、及亜細亜移民ニ対シテハ事実上入国ヲ禁止セル現行政策ヲ健全ナルモノト認ムルコトヲ説述セルアリ、更ニ六月末桑港ニ於テ民主党大会開催ノ機ニ乗シ、是迄排日問題ニ対シ沈黙ヲ守リタル加州知事「スチブンス」氏ハ突然国務長官ニ書面ヲ送リ、排日法制定ノ必要ヲ極力主張セルニ加ヘテ、前記民主党大会ニ於テモ七月二日其ノ政綱発表ニ当リ、同党カ亜細亜移民排斥ヲ支持スル旨宣明シタルヲ以テ「イニシエチーブ」運動ハ一層気勢ヲ挙ケ遂ニ八月四日即チ請願書ヲ州務長官ニ提出スヘキ法定期日ニ於テ、請願署名数ハ八万三千六百七十ニ達シ、法定必要数五万五千九十ヲ超過スルコト約二万八千ノ多数ヲ以テ「イニシエチーブ」請願ハ成立シタリ、従テ右「イニシエチーブ」法案ハ加州憲法ノ規定ニ基キ之ニ対スル一般人民ノ賛否ヲ知ル為メ、十一月二日施行セラルヘキ総選挙ノ際投票ニ付セラルヘク、投票過半数ノ賛成ヲ得ルニ於テハ直ニ法律トシテ成立シ、知事ハ之ニ対シ何等拒否ノ権限ヲ有セサルナリ、其後「フイラン」一派ハ、右十一月二日総選挙ノ際ニ於ケル「イニシエチーブ」法案通過ヲ達成セシメンカ為メ、種々画策スル所アリ、九月二日加州各地排日団体代表者約三十名ヲ桑港ニ招集シ、之等諸団体ヲ併セ一ツノ統一機関ヲ組織スルコトヲ決議シ、之ニ加州排日聯合会(Japanese Exclusion League of California)ナル名称ヲ付シ「インマン」ヲ其ノ常設議長ニ推挙シタルカ、同会ノ目的ハ差当リ「イニシエチーブ」法案通過ノ確保ニアルモ、更ニ進ンテハ将来不同化人種ノ入国ヲ防止スルニ足ルヘキ合衆国中央立法ノ制定ヲ完成セン為メ広ク運動ヲ為スニアリ、以来猛烈ニ活動セルヲ以テ、今日ノ大勢ヲ以テセハ「イニシエチーブ」法案ハ遺憾乍ラ多数ヲ以テ通過成立スヘキ形勢ニ在リ、尚右「イニシエチーブ」法案ハ最初「インマン」カ加州々会法制局ニ起草方ヲ依頼シ、同局ニ於テ其ノ意ヲ体シ作成シタルモノヲ基本トシ、其ノ後排日派数次ノ会合ニ於テ修正ヲ加ヘタルモノナルカ、全部十四条ヨリ成ル現行排外土地法ヲ骨子トシテ、之ニ加フルニ
 イ、現行土地法ノ認ムル三年ノ借地権ヲ全然奪フコト(法案第二条及第八条)
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 ロ、帰化権ナキ外国人カ不動産ノ取得・移転ヲ目的トスル法人ノ社員トナリ、又ハ其ノ株式ヲ取得スルコトヲ禁スルコト(第三条末項)
 ハ、帰化権ナキ外国人又ハ株主ノ過半数カ是等ノ外国人ヨリ成ル法人ハ、未成年者ノ財産ニ対シ後見人タルヲ得サルコト、而シテ右後見無資格者ヲ両親トスル未成年者ノ後見人ハ郡ノPublic Administrator又ハ其ノ他適当ノ個人若ハ法人ヲ以テスルコト
   (第四条)
 ニ、帰化権ナキ外国人ノ財産ヲ、後見人又ハ其ノ他ノ受託人(Trustee)ノ資格ニ於テ管理若ハ支配スル者ハ、毎年州務局ニ該財産ノ状況ニ関シ一定事項ノ届出ヲナス義務アルコト(第五条)
 ホ、本法ノ制限ヲ免ルル意思ヲ以テ不動産ノ売買・譲与等ヲナシタルトキハ、其ノ形式ノ如何ニ拘ラス、総テ之ヲ無効トスルコト
   (第九条)
等ノ制限ヲ設クルニアリ、要ハ苟モ不動産又ハ不動産上ノ利益ニ関スル限リ、帰化権無キ外国人ヲ如何シテ如何ナル方法ニ於テモ之カ取得保有ヲ為スヲ得サラシムルニアリ
      「イニシエチーブ」土地法案其後ノ成行
                    (大正七年十二月《(マヽ)》)
右立法運動ニ対シ在米日本人会等ハ、親日米人等ト提携シテ周到ナル対抗運動ヲ起シ、極力該法案ノ否決ニ努メ、又帝国政府ハ幣原大使ヲシテ国務省ニ向テ其防止方ヲ交渉セシメ、国務省モ亦我意ヲ了シ、一般投票期日間際ニ至リ該法案反対ノ「ステートメント」ヲ発表シタルニ拘ラス、十一月二日ノ一般投票ノ結果ハ、賛成六六八四八三反対二二二〇八六、即チ約三対一ノ多数ヲ以テ通過シ、十二月四日州務長官ハ投票計算ノ結果ヲ正式ニ宣言シタルヲ以テ、加州憲法ノ規定ニ依リ右正式宣言後五日ヲ経テ、即チ十二月九日ヨリ該法案ハ当然法律トシテ効力ヲ生スルニ至レリ
○下略



〔参考〕「イニシエチーブ」土地法案成立ノ暁加州在留日本人ノ蒙ルヘキ影響 外務省通商局第三課編 第一―六頁大正九年一〇月刊(DK330069k-0009)
第33巻 p.570-572 ページ画像

「イニシエチーブ」土地法案成立ノ暁加州在留日本人ノ蒙ルヘキ影響 外務省通商局第三課編
                      第一―六頁大正九年一〇月刊
    「イニシエチーブ」土地法案成立ノ暁
    加州在留日本人ノ蒙ルヘキ影響
千九百十三年加州々会ヲ通過シタル現行土地法ハ日本人ノ土地所有権及借地権ヲ制限スル目的ヲ以テ制定セラレタルモノニシテ、同法ハ合衆国市民タルヲ得サル外国人ノ加州ニ於ケル土地所有ヲ禁シ、又農業地ノ賃借ニ付テハ其ノ期間ヲ三ケ年ニ限定シタルモノナリ
当時同法ノ制定ハ加州在留日本人ノ農業ヲ根底ヨリ覆シ、日本人ノ農業上ノ発展ハ全ク望ナキニ至ルヘシト憂慮セル者少ナカラサリシカ、其ノ実施後ノ実際ハ之ニ反シ、加州ニ於ケル日本人ノ農業ハ同法実施当時即チ千九百十三年ト七年後ノ今日トヲ比較シ左ノ如キ発展ヲ示シタリ
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             一九一九年    一九一三年     差引増
                 英町       英町       英町
一、所有地        四八、八四九   二六、七〇七   二二、一四二
二、借地        二五六、九一四  二〇五、九八三   五、〇九三一
三、収穫分配契約其他  一二一、二七七   四八、九九七   七三、二八〇
   合計       四二七、〇四〇  二八一、六八七  一四五、三五三

状勢斯ノ如クニシテ同法ハ充分其当初ノ目的ヲ達シ得サリシ観アリシヲ以テ、加州排亜協会ハ同法本来ノ目的ヲ達スル為之ヲ補足修正シ、東洋人ヲシテ法ノ欠陥ヲ利用スルノ余地ナカラシムル必要アリトナシ今春来画策スル所アリシカ、愈々来ル十一月二日ノ総選挙ニ際シ、人民投票(「イニシエチーブ」)ニ依リテ現行法ヲ修正スルコトトナシ、目下専ラ之カ運動中ナリ
右「イニシエチーブ」ニ依ル立法ハ加州憲法カ認メタル加州民ノ特権ニシテ、排亜協会ノ一派ハ此憲法上ノ手続ヲ踏ミテ運動シツツアルモノナルカ故ニ、之ニ対シ中央政府又ハ州知事ノ干渉等ニ依リ之ヲ阻止スルヲ得ス、唯米国人ノ道義ニ訴ヘ、斯ル立法ノ不法ヲ鳴ラシ、州内一般ノ輿論ヲ喚起シ、投票ニ於テ之ヲ否決セシムル外途ナキモ、加州現時ノ趨向ヨリ之ヲ推ストキハ、新法案ハ結局多数ヲ以テ可決セラルルニ至ルモノト観測スヘキカ如シ
前述ノ如ク新法案ハ現行ノ欠陥ヲ補正セントスルモノニシテ、即チ日本人タル親カ其米国出生ノ子女ノ名義ヲ以テ土地ヲ所有スルコトヲ得サラシムル為、日本人ヲシテ其米国生レノ子女ノ後見人タルコトヲ禁シ、又会社名義ニテ農業地ヲ所有スルコトヲ得サラシムル為、日本人ヲシテ土地ヲ所有スル会社ノ社員又ハ株主タルコトヲ禁シ、同時ニ農業地ノ賃借ヲ全然禁止スルモノナルヲ以テ、現行法ニ比シ頗ル苛酷ナルモノナルモ、其規定ハ同法案実施以後即チ将来ニノミ適用セラルルモノニシテ、既往ニ遡ルモノニアラズ、従テ日本人ガ現ニ所有スル土地ニ対スル所有権ハ之ガ為メ侵害セラルヽコトナシ、但シ従来ノ如ク子女ノ後見人トシテ子女ノ使用土地ヲ使用収益スルコトハ不可能ナルヘシ、又借地ニ付テハ現在ノ借地期限中ハ之ヲ奪ハルヽコトナク、而シテ収穫分配契約又ハ労働契約(請負契約ノ一種ニシテ、他人ノ土地ヲ耕作シ、報酬トシテ収穫物ノ幾分ヲ受クルモノヲ謂フ)等ノ方法ニ依リ実際上引続キ農業ヲ営ムコトヲ妨ケス、従テ新法案実施セラルヽモ、日本人全体又ハ大多数カ直ニ引揚ヲ余義ナクセラルヽ訳ニアラス今新法案ト現行法トヲ比較シ其改正ノ要点ヲ見ルニ左ノ如シ
第一、土地所有権
 一、現ニ土地ヲ所有スル者ハ其所有権ヲ奪ハルルコトナク、引続キ所有スルコトヲ得、但シ其子カ日本人ナル場合之ヲシテ其土地ヲ相続セシムルコトヲ得ス、其子カ米国ニ於テ生レタル者ナルトキハ相続セシメ得ヘキモノト解セラル、尤モ本項ニ付テハ改正案ト現行法ト同一ナリ
 二、現行法ニテハ米国出生児童カ土地ヲ購入シ、日本人タル親ハ後見人トシテ事実上之ヲ管理収益スルコトヲ得ルモ、新法案ニ依レバ日本人タル親ハ米国出生児童ノ不動産上ノ後見人タルヲ得サル為メ、児童ノ購入セル土地ヲ管理収益ヲナスヲ得ス
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 三、現行法ニテハ社員ノ半数以上米国人タル会社ハ土地ヲ所有スルヲ得、且ツ日本人ハ其社員タルヲ得ルモ、新法案ニ依レバ日本人ハ農業地ヲ所有スル会社ノ社員タルヲ得ス
    但シ既設会社(日本人ヲ社員トスル)ノ現ニ所有スル土地ハ、同会社ノ存続スル限リ其儘之ヲ保有スルヲ得ヘシ
第二、借地権
 現行法ニテハ三箇年以内ノ期限附ニテ借地スルヲ得タルモ、新法案ニテハ日本人ハ個人トシテモ将タ会社名義ニテモ、全ク農業地ノ借地ヲナスヲ得ス
 現ニ借地セルモノハ借地期間ノ終了迄ハ其儘継続スルコトヲ得
第三、抵当権
 現行法ニ於テハ債権ヲ確定スル為メ抵当権ヲ設定スルコトニ関シ何等規定スル所ナキモ、新法案ニ於テハ日本人ハ個人タルト会社名義タルトヲ問ハズ、将来土地ニ対シ抵当権ヲ設定シ、抵当権行使ノ結果土地ヲ所有スルニ至ルトキハ、二年以上之ヲ保有スルヲ得ス
 (註、現ニ設定シアル抵当権行使ノ結果日本人カ土地ヲ所有スルニ至レルトキハ、其土地ガ該所有者ニ属スル限リ何等ノ影響ナキコト現行法ニ同シ)
第四、後見人タル権
 現行法ニ於テハ日本人ノ後見人タル権ニ付キ何等特殊ノ制限ヲ付セザルモ、新法案ニ於テハ日本人ハ個人タルト会社組織ニ依ルトヲ問ハス、未成年者ノ後見人トシテ其ノ所有スル土地又ハ其ノ他ノ不動産ヲ管理スルコトヲ得ズ



〔参考〕国際事情 外務省情報部編 第五四五―五四七頁大正一五年一〇月刊(DK330069k-0010)
第33巻 p.572-573 ページ画像

国際事情 外務省情報部編 第五四五―五四七頁大正一五年一〇月刊
 ○米国在加州邦人問題
    五、写真結婚婦人
 曩に土地法に依り、日本人の土地所有に関し大なる制限を附した加州議会は未だ之を以て足れりとせず、大正八年一月更に邦人の借地権をも剥奪する議案及日本人学童隔離に関する議案を上程した。而して大統領ウイルソン氏の尽力で隔離案は上院委員会で握潰し、土地案は提出者が撤回し漸くに事なきを得たが、議会閉会後各種の団体が頻りに会合して、益々排日の気勢を煽り、遂に(一)日本人の借地権を奪ふこと(二)写真結婚婦人の渡米を禁止すること(三)紳士協約を撤廃し、米国自身の立法に依り日本移民を禁止すること(四)日本人に帰化権を与へざること(五)米国に於ける日本人の出生児に市民権を与へざること等を目的とする加州排日協会なるものゝ出現となつた、一方婦人参政権問題の為め十一月サクラメントにて開かれたる加州臨時議会は、排日問題を議する為め翌年一月に臨時議会を開くべしとの決議案を通過し、州知事スチーブンス氏の反対で、臨時議会の召集は立消えとなつたが、桑港市参事会始め多数の団体は依然として臨時議会召集の必要を叫び、苛酷な排日案を制定せんとする形勢があつたので、帝国政府は種々考慮を遂げ、一面米国政府とも意見の交換を試みたる結果、同年末在米幣原大使に訓令し、北米合衆国本土行写真結婚
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婦人の旅券下附を大正九年二月末日限り禁止すべき旨声明せしめた。
    六、人民投票の新土地法
 前記加州排日協会は其の後名称を加州排亜協会と改め、知事に対し排日臨時議会召集の日取を定めんことを強要して居たが、その望なきに及び人民投票に依つて目的を貫徹せんとするに至つた。人民投票は総選挙期日(十一月二日)前九十日(即ち八月四日迄)に請願書を加州々務長官に提出すべく、選挙人五万五千九十四名(前回の知事選挙に於ける各候補者得票数総計の百分ノ八)の署名を必要とするのである。
 此の間各種の団体は続々排日立法賛成の意を表明し、六月十日「シカゴ」に開かれた共和党大会は一般移民の制限及登録の必要なことを説きて、亜細亜移民の入国禁止を是認し、民主党は七月二日の桑港大会に於て同じく亜細亜移民の排斥を宣明したが為めに、人民投票の運動は益々気勢を挙げ、八月四日の法定期日に於て請願署名数は八万三千六百七十に達し、法定要数を超過すること、二万八千の多きに及んだ、右の運動に対し在米日本人会は周到なる対抗運動を起し、帝国政府亦国務省の注意を喚起し、国務省は一般投票期日間際に至り該法案反対のステートメントを発表したが、中央政府と州政府との関係は極めて機微の点があつて、中央の意のあるところ必ずしも地方に行はるるを期することが出来ず、十一月二日の一般投票は賛成六六八四八三反対二二二〇八六と云ふ数字を示し、同月四日州務長官は投票計算の結果を正式に宜言し、加州憲法の規定に依りその後五日を経たる大正九年十二月九日から該法案は当然法律として効力を生ずるに至つた。
 本法は全部十四条より成り、大正二年の土地法を骨子とし、之に加ふるに
 イ、旧土地法の認めた三年の借地権を全然奪ふこと。
 ロ、帰化権なき外国人が不動産の取得・移転を目的とする法人の社員となり、又は其の株式を取得することを禁ずること。
 ハ、帰化権なき外国人又は株主の過半数が是等の外国人より成る法人は、未成年者の財産に対し後見人たるを得ざること。
 ニ、帰化権なき外国人の財産を後見人又は其の他の受托人の資格に於て管理若くは支配するものは、毎年州務局に該財産の状況に関し一定事項の届出をなす義務あること。
 ホ、本法の制限を免るゝ意思を以て不動産の売買譲与等をなしたるときは、其の形式の奈何に拘はらず総て之を無効とすること。
等の制限を設けたもので、不動産又は不動産上の利益に関する限り、帰化権なき外国人をして奈何なる方法に於ても、之が取得・保有を為すを得ざらしむるの意に出たものである。



〔参考〕竜門雑誌 第四八一号・第一〇六―一〇七頁昭和三年一〇月 国民外交家としての青淵先生 小畑久五郎(DK330069k-0011)
第33巻 p.573-574 ページ画像

竜門雑誌 第四八一号・第一〇六―一〇七頁昭和三年一〇月
    国民外交家としての青淵先生
                      小畑久五郎
○上略
 一九一三年の土地法を制定して日本移民の権利を縮少する事に成功した加州の排日連は、尚ほ一層辛辣を極めて、排日運動に従事し、一
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九二〇年の秋人民投票を以て、日本移民を加州の農業地帯より駆逐せんと企図したのである。之を聞かれた先生は、非常に心を痛められ、種々考慮の結果、同志と図り、同年春米国より有力なる実業家の団体を招待して、非公式的国際協議会を開くに至つた。桑港よりアレキサンダー氏を団長とせる一行、紐育よりはヴアンダリツプ氏を団長とせる一行を招いたのである。此協議会が其年の秋に行はれる筈の人民投票に、如何なる影響を及ぼしたかは何人も明確に断言する事は出来ないが、排日連が大多数を以て通過すると自惚れて居たのに、総投票十万票の内六万票が排日土地法を是とし、四万票が之を否とする所となつたといふのは、深い意味のある事であつて、右非公式国際協議会の結果親日派が、之れ程の成績を挙ぐるに至つたのでは無いかと考ふべき理由があるのである。
○下略
   ○大正九年十一月二日ニ於ケルカリフォルニア州一般投票ハ賛成六十六万八千余票反対二十二万余ナリ。
   ○右一般投票ニ至ルマデノ情勢ニ関シテハナホ左ノ書ニ記載スル所アリ。
     Japan and the United States, 1853-1921
      August, 1921. pp. 260-3.
     右訳書「一八五三―一九二一年日米外交史」(第三五六―三六〇頁大正一一年四月刊)
     「日米国際紀要」(第四一―四五頁大正一三年一〇月刊)
     「人種問題研究」(第一一四―一一八頁大正一四年二月刊)
     「在米日本人史観」(第五二―五四頁一九三〇年四月刊)
     「日米外交史」(第五一三―五五〇頁昭和七年二月刊)
   ○右イニシアティヴノ「実際を窺へばデマゴグの魔手は各村落に波及し、投票の妨害、投票の剽窃、投票の焼却等有ゆる悪辣手段が現はれて、終に其一般投票は真正なる良民の心を描出し得なかつたのである。」(石井菊次郎著「外交余録」第三〇三頁)