デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
2節 米国加州日本移民排斥問題
3款 日米関係委員会
■綱文

第34巻 p.129-132(DK340017k) ページ画像

大正12年12月29日(1923年)

是日、当委員会、東京銀行倶楽部ニ開カレ、栄一出席シ、外務当局者ヲ招待シテアメリカ合衆国議会上院ニ提出セラレタル、合衆国出生外国人児童ノ帰化権制限ニ関スル憲法改正共同決議案ニ対スル善後策ニ就イテ協議ス。


■資料

日米関係委員会往復書類 (一)(DK340017k-0001)
第34巻 p.129 ページ画像

日米関係委員会往復書類 (一)     (渋沢子爵家所蔵)
 (写)
拝啓時下益御清適奉賀候、然ハ最近米国華州選出上院議員ジヨーンス氏外二氏ヨリ上下両院ニ提出セラレタル憲法改正共同決議案ニ関シ、篤ト御協議致度ト存候間、歳末御多忙ノ際恐縮ノ至ニ候得共、来廿九日正午丸ノ内東京銀行倶楽部ヘ御来会被成下度候、此段得貴意候
                           敬具
  大正十二年十二月廿七日
               日米関係委員会
                常務委員 渋沢栄一
                同    藤山雷太
   各委員殿
  乍御手数封中端書ニテ御回示願上候


日米関係委員会集会ニ関スル控(DK340017k-0002)
第34巻 p.129-130 ページ画像

日米関係委員会集会ニ関スル控     (日米関係委員会所蔵)
大正十二年十二月廿九日正午東京銀行倶楽部
 米国憲法改正共同決議案協議会
               (太丸ハ朱書)
          外務大臣 ○男爵 伊集院彦吉
          外務次官 ○松平恒雄
          通商局長 ○永井松三
          移民課長 ○赤松祐之
               欠伊東米治郎
                井上準之助
               欠一宮鈴太郎
                服部金太郎
               欠原富太郎
            欠男爵 大倉喜八郎
 - 第34巻 p.130 -ページ画像 
               欠大谷嘉兵衛
               ○小野英二郎
               欠和田豊治
            ○子爵 金子堅太郎
               欠梶原仲治
ナルベク出席         ○団琢磨
               欠高田釜吉
               ○添田寿一
               ○頭本元貞
                串田万蔵
               ○山科礼蔵
            欠男爵 古河虎之助
               ○藤山雷太
               欠江口定条
旅行中            欠姉崎正治
               ○浅野総一郎
            ○男爵 阪谷芳郎
            欠男爵 目賀田種太郎
            ○子爵 渋沢栄一
            欠男爵 森村開作
               ○山田三良
               ○服部文四郎
               ○増田明六
               ○小畑久五郎


日米関係委員会集会記事摘要(DK340017k-0003)
第34巻 p.130-131 ページ画像

日米関係委員会集会記事摘要     (渋沢子爵家所蔵)
 日米関係委員会大正十二年十二月二十九日正午、於銀行倶楽部開催
  出席者
   渋沢子爵・金子子爵・阪谷男爵・小野英二郎氏・団琢磨氏・添田寿一氏・頭本元貞氏・山科礼蔵氏・藤山雷太氏・浅野総一郎氏・山田三郎氏《(山田三良)》
   (幹事)服部氏・増田氏・小畑氏
   (賓客)松平恒雄氏(外務次官)・永井松三氏(通商局長)・赤松祐之氏(移民課長)
渋沢子爵座長 子爵は昨二十八日米国の諸友人に宛て電報を発せしことを告げらる
金子子爵 本問題は聯合高等委員設置にあらざれば解決すること能はす、単に何分の尽力を請ふと云ふか如きは何等の効力なしとて、聯合高等委員設置を提唱するに至りし経過を述べられ、外務大臣に対して右委員設置に関する即答を求むと言はれたり
渋沢子爵 金子子爵の修正を加へて打電せざりしは、金子子爵の懐抱せらるゝ根本目的を達せしむるに却つて有利なりと考へしが為なり
金子子爵 予の修正を加へて打電せられざりしを遺憾とす
藤山氏 法制委員会の組織を質問せられ金子子爵説明せらる
 - 第34巻 p.131 -ページ画像 
  午後二時再協議
添田博士 重大問題にして若し此問題が米国議会を通過するならば国交断絶を意味することゝなるべし、而して此提案は通過すると思ふ如何となれば大審院長タフト氏の如き日本に好意を有する人が今回の如き判決を下せしを見る時に、米国の輿論は之を是認するものと見ることを得べし。就ては米国の輿論を動して之を未然に防ぐ必要あり、之れには金子子・渋沢子両子爵の御出馬を見るもよろし、費用の如きは戦争すると思へば惜むべき所にあらず、此際大に官民の覚悟を要す
山田博士 本問題は甚た複雑なるものにて其内には外交問題と内国問題とを含む。而して今日迄の問題は米国の内国問題なり。故に外務省としては表面より抗議を申込むの道なかるべし、根本は外交条約の不備にあれば外務省は此際条約改正を促す必要あるべし、即ちエクオール・トリートメント(対等的待遇)を主張することなり、之を為すには米国の輿論を喚起する必要あり、而して輿論を喚起するには之を指導する有力者を説くべきものと思ふ、由つて米国人の間に信用厚き金子子爵の如き方の出馬を願ふこと最も肝要と思ふ
金子子爵 山田博士の主張せらるゝエクオール・トリートメントには全然賛成、我邦の官民協力して此方面に尽力すべきことゝ思ふ
頭本氏 実行の時機・方法等に関する当局の意見を伺ひ度きものなり
松平次官 時機・方法等に就ては何時にても宜敷らんと思ふ、兎に角山田博士の案を進めるより外に道なしと考ふるなり
阪谷男爵 山田博士の説は正々堂々たるものなり、添田博士の説は国内問題としての議論なり、就ては此問題に関しては内閣諸公の意見を確むる必要あり、又外務大臣を始め外務次官・通商局長・移民課長等の尽力に待つこと多々あるべし
    決議
 金子子爵・渋沢子爵に総理大臣訪問を願ひ、会見の結果を本委員会に報告せらるべきこと
  二時四十五分閉会
  ○右記録中ニ云ヘル金子子爵ノ電文修正ニ関シテハ残存セル記録ナシ。幹事小畑久五郎ノ談ニヨレバ、右ハ金子子爵ガ政治家的態度ヲ以テ相当強硬ナル字句ヲ使用センコトヲ提議セルニ対シ、栄一ハ之ヲ採用セザリシモノナリト云フ。


(増田明六)日誌 大正一二年(DK340017k-0004)
第34巻 p.131 ページ画像

(増田明六)日誌  大正一二年      (増田正純氏所蔵)
十二月廿九日 土 晴
出勤
正午東京銀行倶楽部に於ける日米関係委員会に出席す、外務大臣伊集院男・同次官松平氏・通商局長永井氏・移民課長赤松氏来会す、米国華州上院議員ジヨーンス氏提案、日本人の米国出生児童の市民権不与に関する排日案に付き、同委員会の取るべき将来の方針に付て協議したるが、政府の方針確定の上之を決すべしとなり、種々意見を交換したるに止まりたり
○下略

 - 第34巻 p.132 -ページ画像 

竜門雑誌 第四二四号・第七二頁 大正一三年一月 ○日米関係委員会(DK340017k-0005)
第34巻 p.132 ページ画像

竜門雑誌  第四二四号・第七二頁 大正一三年一月
○日米関係委員会 日米関係委員会にては十二月二十九日正午東京銀行倶楽部に於て、伊集院外相・松平次官・永井通商局長・赤松移民課長を招待し、青淵先生・小野英二郎・金子子・団琢磨・添田寿一・頭本元貞・山田三良・山科礼蔵・藤山雷太・浅野総一郎・阪谷男及び幹事服部文四郎・増田明六・小畑久五郎諸氏列席の上、最近米国華州選出上院議員ジヨーンス氏より米国議会上院に提出せられたる米国出生外国人児童の帰化権制限に関する憲法改正共同決議案に対し、其善後策に就て協議を凝し午後三時半散会せる由。
○下略



〔参考〕集会日時通知表 大正一三年(DK340017k-0006)
第34巻 p.132 ページ画像

集会日時通知表  大正一三年     (渋沢子爵家所蔵)
一月十五日 火 午前十時 清浦首相ト御会見ノ約(同官邸)
  ○中略。
一月廿一日 月 午前十時半 牧野宮内大臣ヲ御訪問ノ約(宮内省)
  ○中略。
一月廿四日 木 午後五時半 松井外相ヲ御訪問ノ約(外務所《(省)》)
一月廿五日 金 午後四時 清浦首相ト御会見ノ約(同)
  ○牧野宮相ハ先ノ外務大臣ナリ。