デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正13年5月14日（1924年）

是日栄一、近ク渡米ノ途ニ上ル宮岡恒次郎及ビ早稲田大学教授塩沢昌貞ヲ、兜町渋沢事務所ニ招待シテ、日米問題ニ関スル従来ノ経過ヲ説明ス。

日米関係委員会緊要書類　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　　　　　　（別筆）
　　　　　　　　　備考大正十三年五月十四日宮岡恒次郎及塩沢昌貞ノ両氏（不日渡米ノ途ニ就カル）ヲ兜町事務所ニ招待シテ談話セラレタル事項ノ
 - 第34巻 p.251 -ページ画像 
覚書トシテ両氏ニ交付セラレタルモノナリ
（タイプ）
　　　　日米問題ニ関スル覚書　大正十三年五月十四日
一日米有志協議会ノ件
　　一大正九年三月、米国西部ニ於ケル有力者アレキサンダー氏一行（氏名表別紙添付）ヲ、又
　　一同年四月引続キ、米国東部ニ於ケル有力者ヴアンダーリツブ氏（氏名表別紙添付）一行
　ヲ招待シテ日米問題ニ付キ隔意無キ意見ノ交換ヲナシタリ
一同年十一月、加州ニ於テ国民一般投票ヲ以テ排日ヲ決議ス
一大正十年九月、渋沢ハ華府会議ノ開催セラルヽヲ機トシテ渡米シ翌年一月帰朝シタリ
一大正十一年一月、渋沢ハ米国ヨリ帰朝ノ後日米関係委員会ノ決議ヲ以テ日本政府ニ両国高等委員設置ノ必要ヲ献言シ、政府ヨリ米国政府ニ於テ之ニ同意ノ場合ハ日本政府モ同意スベシトノ回答ヲ得、此旨桑港及紐育ノ米日関係委員会及重ナル人々ニ通シ、米政府ニ之ガ献言ヲ請ヒタリ
一大正十二年六月、ギユーリツク博士ノ帰米ニ際シ同博士ト協議ノ上東京日米関係委員会ハ別紙○前掲第一七頁所載ノ決議ヲ為システートメントヲ作成シテ同博士ニ託シ、米国政府及各方面ノ有力者ニ配布シタルガ、同時ニ渋沢ハ箇人トシテ一ノ陳述書ヲ作リ前記ステートメントト共ニ米国ノアラユル友人ニ郵送シタリ
一大正十二年十二月、米国出生日本人帰化権ニ関スル米国憲法改正案ノ阻止ヲ図ル為メ、別紙○前掲第一一一頁所載ノ通打電シテ尽力ヲ請ヒタリ
一大正十三年四月、排日移民法案ニ関シ別紙○前掲第一九二頁所載ノ通打電シテ之カ阻止ニ努メタリ
要之東京日米関係委員会ハ、日本ガ米日親善ノ為メ将又世界平和ノ為メ米国ニ協調ノ誠ヲ尽シタルニ対シ、常ニ正義人道ヲ重ンズル米国モ亦協調ノ誠ヲ以テ両国間ニ蟠レル問題ノ根本的解決ニ努メラレンコトヲ希望シ、多年苦心ヲ重ネ居ル次第ナリ、故ニ二重国籍問題及外国人土地所有権問題等ノ解決ニ付テハ、屡々日本政府ニ献言シタル所アリ

（増田明六）日誌　大正一三年（増田正純氏所蔵）
五月十四日　水　雨
出勤
朝九時半兜町事務処ニ於て不日外遊せらるゝ宮岡恒治郎・塩沢昌貞の両氏の来会を請ふて、渋沢子爵より日米問題の近況ニ付て詳細の談話があつた、つまり両氏の米国旅行中此問題ニ付て研究せられたい希望からである
○下略