公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第35巻 p.109-112(DK350024k) ページ画像
昭和4年1月27日(1929年)
是日、当委員会主催アメリカ合衆国ワシントン大学教授ハーバード・エッチ・ガウエン歓迎午餐会開カル。栄一病気ニヨリ出席スルヲ得ズ、阪谷芳郎代リテ司会ス。
渋沢栄一電報 控 ハーバート・エッチ・ガウエン宛 一九二九年一月二一日(DK350024k-0001)
第35巻 p.109-110 ページ画像
渋沢栄一電報 控 ハーバート・エッチ・ガウエン宛 一九二九年一月二一日
(渋沢子爵家所蔵)
Tokyo, Jan. 21, 1929
DOCTOR GOWEN, STEAMER PRESIDENT CLEVELAND
WANT HAVE YOU PERSONALLY MEET FEW SELECT FRIENDS
- 第35巻 p.110 -ページ画像
LUNCH SUNDAY NOON TWENTY SEVENTH PLEASE REPLY
SHIBUSAWA
(右訳文)
大統領クリヴエランド号
ガウエン殿
一月廿一日
渋沢
来ル廿七日日曜日正午貴下ノ御出席ヲ請ヒ、数名ノ友人等ト午餐ヲ共ニ致シ度シ、御都合如何返待ツ
(ハーバート・エッチ・ガウエン) 電報 渋沢栄一宛 一九二九年一月二三日(DK350024k-0002)
第35巻 p.110 ページ画像
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日米関係委員会往復書類 (二)(DK350024k-0003)
第35巻 p.110 ページ画像
日米関係委員会往復書類 (二) (渋沢子爵家所蔵)
拝啓、益御清適賀上候、然ばワシントン大学東洋文学及歴史講座担任教授ガウヱン博士には、東洋観光団一行の団長として明後廿五日横浜入港の予定に付、来廿七日(日曜日)正午丸の内永楽町東京銀行倶楽部に於て午餐会相催、歓迎の意を表度と存候間、御差繰尊来被成下度候、此段御案内申上度如此御座候 敬具
昭和四年一月廿三日
日米関係委員会
常務委員 渋沢栄一
同 藤山雷太
殿
追て御来否共乍御手数同封端書を以て御回示被下度候
日米関係委員会集会記事摘要(DK350024k-0004)
第35巻 p.110-112 ページ画像
日米関係委員会集会記事摘要 (渋沢子爵家所蔵)
昭和四年一月二十七日(日)正午、於東京銀行倶楽部、東洋観光団団長ワシントン大学東洋文学及歴史講座担当者ハーバート・ヱチ・ガウヱン博士招待午餐会
出席者
来賓 ハーバート・ヱチ・ガウヱン
会員 阪谷男爵・団男爵・新渡戸稲造氏・頭本元貞氏・服部金太郎氏・内田嘉吉氏・添田寿一氏
幹事 小畑久五郎
- 第35巻 p.111 -ページ画像
記事概要
阪谷男爵 ガウヱン博士並諸君、今日は渋沢子爵が不快の為め此席に列せられないのを遺憾と致します。子爵に代りて私はガウヱン博士に簡単な御挨拶を申上げます。私共の組織して居ります日米関係委員会なるものは、渋沢子爵が一千九百十五年パナマ開通記念博覧会が桑港に開会せられた時、日本の実業家を代表して出席されました折り、同地の有志者と懇談の結果成立したものであります。会員の数は少なう御座いますが、政治界・学者社界及実業界の有力者を網羅して居ります。桑港の米日関係委員会はウオレス・ヱム・アレキサンダー氏を委員長として活動して居ります。其後数年経つて紐育にも同種の会が組織されました。斯る委員会の起りましたのは、加州に日本移民問題が起りまして、両国の間に誤解訛伝の生ずるを防ぎ、禍を未然に除去せんとするにあつたのであります。ガウエン博士御一行の御来遊も、其目的とせらるゝ所は日米親善に貢献せんとするにあることゝ存じます。博士は東洋文学並歴史に精通せらるゝ学者と承はつて居ります。今回の御旅行が万事好都合に運ばれんことを衷心より希望致します。気候が不順で御座いますから、御旅行中特に御注意あらんことを希望致します。御一行の便宜の為め私共の御役に立つ事が御座いますれば、喜んで御尽力致します。最後にガウエン博士に御意見を伺ひ度いことがあります。即ち此太平洋の周囲には種々雑多な人種が存在して居りますが、将来此等はドーなるものでせうか、弱い者は斃れて強い者が生存するでせうか、或は混合して、其れより新たな人種が生れ出るでせうか、学者なる博士の御説明を聴くことを得ば幸と存じます。玆に盃を挙げてガウエン博士の御健康を祝します。
ガウエン博士 阪谷男爵閣下並に皆様、日米関係委員諸君が私の為めに斯る盛宴を御設け下さいました事を、衷心より厚く御礼申上げます。私は渋沢子爵が御病気にて御引籠の由を承り遺憾に存じます。私共米国民は渋沢子爵の御厚意を感謝して居ります。又子爵の主宰せらるゝ日米関係委員会の効力を認めて居ります。私共は互に同情する前に互を了解する必要があります。此意味に於て、私はワシントン大学に在学中の東西の学生を招待して、月に一度懇談会を催ほして居ります。又沙市の日本協会は二週間毎に会合を催ほして日米親善増進に努めて居ります。私は人種間に優劣の差別が無いと信じて居ります。家族・国民・国際関係等は私共の存在する限り必要条件と思ひます。人類を打つて一団とすといふが如き「熔鉱炉」式観念は過去の夢として消滅しつゝあります。恐怖の念に基礎を置く政策は捨てらるべきものと思ひます、之れに替ふるに協同一致といふ事が箇人間《(個)》に必要である如く、国と国との間に必要であると考へます。私の此簡短なる意見は阪谷男爵の御質問に答へ得るやを疑ひますが、私としては之れ以上申上ぐる事は御座いません。私は皆様と共に渋沢子爵の為めに盃を挙げて御健康を祝し度いと思ひます。
頭本氏 阪谷男爵の提出せられました人種問題に就きましては、私はこんな風に考へます。即ち過去に於て相当の歴史を構成した国民或
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は人種は、容易に滅亡する事は無いと思ひます。然し競争に堪へない人種例へばアメリカの土人、日本のアイヌとかいふものは早晩亡び、謂ゆる優良人種が栄えるのでは無からうかと思ひます。
午後一時半閉会
(ハーバート・エッチ・ガウエン)書翰 小畑久五郎宛 一九二九年一月二八日(DK350024k-0005)
第35巻 p.112 ページ画像
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