デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

3章 国際親善
6節 国際災害援助
6款 フロリダ大風災義捐金募集
■綱文

第40巻 p.64-69(DK400011k) ページ画像

大正15年9月26日(1926年)

是日栄一、アメリカ合衆国フロリダ州マイアミ市ノ被リタル大風災ニ対シ、中外商業新報社ノ発起ニヨル義捐金募集運動ニ、賛成人トシテ名ヲ連ヌ。

尚、栄一金千円ヲ寄付ス。


■資料

中外商業新報 第一四五八一号 大正一五年九月二七日 震災当時を想へ 米国民の同情と厚意 子爵渋沢栄一氏談(DK400011k-0001)
第40巻 p.64 ページ画像

中外商業新報 第一四五八一号 大正一五年九月二七日
    震災当時を想へ
      米国民の同情と厚意
                子爵 渋沢栄一氏談
去る十九日、突如米国フロリダ州マイアミ市を襲ふた驚くべき一大颶風の
 惨害 は新聞紙上及びその他の情報で承はつた、洵に被害民に対しては同情に堪えない、聞く処に依れば、壮麗な一市街が一瞬間に倒壊流失して死者一千数百名に達し、負傷二万数千人に及ぶといふことであるが、何んたる悲惨事であらう、そして私はこの悲しむべき出来事を聞いた其瞬間、直に頭に閃いたのは、大正十二年九月一日の我大震火災の際に、米国官民が最も迅速に挙つて我々に現して呉れたあの熱烈な同情であつた、事の大小はあらうが、一瞬にして一千有余の生霊を失ふた米国民の驚きと悲痛は返す返すも同情に値ひする、此時此際我々日本国民は挙つて彼の大震災当時に受けた米国官民の同情とその厚意を回想し、何とかして報恩の途を講ずべきは当然の義務であり責任であると信ずる、私もこの悲惨事を耳にして以来、近親の者共と今日までいろいろと救援
 慰問 の方法に就て相談し、近く然るべき措置を採らうと考へて居た事であるが、幸ひにも貴社において義捐金募集の議があると聞き、最も我意を得た機宜の企てと考へ満腔の熱心を以てこれに賛成する一人である、米国は富裕の国であるから敢て物質的の援助を望むものでないかも知れぬ、然し前述の如く多大の同情に浴し、当時の罹災者の多数が救済されたのみならず、我東京及び横浜が今日の復興も亦その恩恵の賜であるとするならば、今回米国に起つた一大悲惨事に対して袖手傍観するやうな忘恩的態度は許すべからざる事と思ふ、要は金額の多少とか物資の如何といふ事でなく、米国民に対する報恩の一として幾分なりとも奮つて義捐し、罹災民の霊を慰めかつこれを慰問せねばならぬ、私はわが国民に此際最も強き言葉で、大正十二年九月、米国官民一同より受けた熱烈な同情と其厚意を回想せよと、申述べるものである


中外商業新報 第一四五八一号 大正一五年九月二七日 米国大風災義捐金募集(DK400011k-0002)
第40巻 p.64-65 ページ画像

中外商業新報 第一四五八一号 大正一五年九月二七日
 - 第40巻 p.65 -ページ画像 
    米国大風災義捐金募集
今回米国フロリダ州を襲つた大颶風は、去十九日の暁に一時間百三十五哩といふ未だ記録にない恐ろしい勢ひを以て暴威を逞うし、樹を摧き家を倒し、人を殺し財を奪ひ、同州第一の都会マイアミ市の如きは瞬間に廃墟となつた程で、その惨虐の光景は想像してさへ肌に粟を生じます、かくて死者約二千人、重軽傷者約二万五千人、家屋の損失約五万、総損害額数億と称せられて居ます、誠に驚くべき大災禍で、到る処死屍累々、負傷者は道傍にうめき、夫を失ひ親を失ひ子を失つた者が呆然として路頭に彷徨するもの相次ぎ、加ふるに食料品や飲料水の大欠乏に苦んで居る光景は、転たわが関東大震災の惨状を想はせます、大統領クーリツヂ氏は直に無線電話を以て罹災者救済の事を全国民に訴へ、赤十字を始め各種の救護隊は今や極力災害地に活動をして居ります、我々日本人は対岸親交国の此の大災厄を黙視し傍観することが出来ませうか、殊にわが関東大震災の当時、米国民が即座に意を決し機敏な行動と豊富な財貨とを以て、我が厄難を慰め救つて呉れた彼の熱烈なる同情に対しても、我々は決して忘恩の国民となることは出来ません、我々はこの際、今に至るまで肝に銘じて忘れない米国民の恩義に酬ゐると共に、日本国民の赤心を表示しなければなりません仍てわが社はこゝにわが全国民に訴へて左記の規程により広く義捐金を募集し、彼地罹災者慰藉救護の一端に供したいと思ひます、金額の大小は問はず、要はたゞわが国民の誠意を米国民に披瀝したいのであります
     規程
  一、金額    一口金一円以上
  一、払込方法  東京市日本橋区北島町中外商業新報社内、米国大風災義捐金係宛便宜の方法により御送金のこと
  一、紙上発表  義捐者の氏名及び金額は、これを中外商業新報紙上に発表す(領収書は発行せず)
  一、締切期限  十月十五日
  一、送金方法  米国大統領閣下に宛て電信為替を以てす
  一、義捐者名簿 本社は義捐者名簿を調製し、金額・氏名及び職業を記載し、これを米国大統領閣下及本邦駐箚米国大使閣下に贈呈す
  一、義捐募集費 義捐金募集及び送金に関する一切の経費は本社これを負担し、応募金額の全部を送金するものとす
   大正十五年九月廿六日
                 中外商業新報社
                    公爵 徳川家達
                賛成者 子爵 金子堅太郎
                    子爵 渋沢栄一


諸会発起趣意書 (四) 【米国大風災義捐金申込芳名(十月十日マデ)】(DK400011k-0003)
第40巻 p.65-68 ページ画像

諸会発起趣意書 (四)         (渋沢子爵家所蔵)
    米国大風災義捐金申込芳名(十月十日マデ)
一金弐千円也    東京       中外商業新報社 殿
 - 第40巻 p.66 -ページ画像 
一金五百円也    東京       簗田𨥆次郎殿
一金壱百円也    同        村上幸平殿
一金壱百円也    同        佐藤三郎殿
一金壱百円也    同        永田成美殿
一金参百円也    同     公爵 徳川家達殿
一金弐百円也    同     子爵 金子堅太郎殿
一金壱千円也    同     子爵 渋沢栄一殿
一金弐百円也    同     男爵 阪谷芳郎殿
一金壱百円也    同        磯村豊太郎殿
一金五千円也    同     男爵 岩崎小弥太殿
一金五百円也    同     男爵 幣原喜重郎殿
一金壱百円也    同        出淵勝次殿
一金壱万円也    同     男爵 三井八郎右衛門殿
一金五百円也    同        団琢磨殿
一金壱百円也    同        有賀長文殿
一金壱百円也    同        福井菊三郎殿
一金壱百円也    同        阪井徳太郎殿
一金壱千円也    同     男爵 大倉喜八郎殿
一金壱百円也    同        杉野喜精殿
一金壱百円也    同        山一合資会社々員一同殿
一金参千円也    同        安田善次郎殿
一金壱千円也    同        牧野元次郎殿
一金壱千円也    同        片倉兼太郎殿
一金弐百円也    同        高津六平殿
一金壱百円也    同        児玉謙次殿
一金壱百円也    同        一宮鈴太郎殿
一金壱百円也    千葉       浜口儀兵衛殿
一金壱百円也    東京       神戸挙一殿
一金壱百円也    同        池田成彬殿
一金壱百円也    同        菊本直三郎殿
一金壱百円也    同        亀島広吉殿
一金壱百円也    同        今井利喜三郎殿
一金五百円也    同 第百銀行頭取 原邦造殿
一金弐百円也    同東京貯蔵銀行頭取原邦造殿
一金壱百円也    同        武智直道殿
一金参百円也    同        堀越善重郎殿
一金壱千円也    同        根津嘉一郎殿
一金五百円也    同        若槻礼次郎殿
一金壱百円也    同        佐々木勇之助殿
一金壱百円也    同        織田昇次郎殿
一金壱百円也    同        梶原仲治殿
一金壱百円也    同        柳谷卯三郎殿
一金弐百参拾七円七拾銭也 同     三井信託株式会社社員有志者殿
一金壱百円也    同        宮島清次郎殿
 - 第40巻 p.67 -ページ画像 
一金壱百円也    同        原六郎殿
一金壱百円也    同        岡崎国臣殿
一金壱百円也    同     伯爵 牧野伸顕殿
一金壱千円也    同        神田鐳蔵殿
一金壱百円也    同        大橋新太郎殿
一金壱百円也    同        株式会社帝国ホテル殿
一金壱千円也    同     男爵 古河虎之助殿
一金壱百円也    同        小田柿捨次郎殿
一金壱百円也    同        橋本圭三郎殿
一金五百円也    同        渡辺福三郎殿
一金五百円也    同        小池厚之助殿
一金壱百円也    同        小池銀行員有志者殿
一金壱百円也    同        小野英二郎殿
一金壱百円也    同        鈴木島吉殿
一金壱千円也    同     男爵 森村開作殿
一金壱百円也    同        原錦吾殿
一金壱百円也    同     男爵 益田孝殿

一金壱百円也    同        益田太郎殿
一金壱百円也    同        益田貞子殿
一金壱百円也    同        帝国ホテル現業員一同殿
一金参百円也    同        一婦人患者殿
一金五百円也    同 川崎銀行頭取 川崎八右衛門殿
一金壱百円也    同        高橋貞三殿
一金参百円也    同        堀越角次郎殿
一金参千円也    同東京電灯株式社会社長 神戸挙一殿
一金壱百円也    同        若尾璋八殿
一金壱千円也    神戸       鈴木よね殿
一金弐百円也    同        鈴木商店々員一同殿
一金壱百円也    東京       岩垂邦彦殿
一金壱百円也    同        竹内維彦殿
一金壱百円也    同        前田二平殿
一金壱百円也    同        岩原謙三殿
一金壱百円也    同 豊年製油社長 杉山金太郎殿
一金壱百円也    同        田中実殿
一金壱百円也    同 東京火災内  長松篤棐殿 小松林蔵殿 南莞爾殿
一金壱百円也    同        中井新右門殿
一金壱百円也    同        白石元次郎殿
一金壱百六拾五円八拾五銭也 同    陸井商店一同殿
一金五百円也    同        日比谷新次郎殿
一金壱百円也    同        朝吹常吉殿
一金壱百円也    同        朝吹夫人殿
一金壱百円也    同        早川億利殿
一金弐百円也    同        監原又策殿
一金弐百円也    横浜       菅川商会殿
 - 第40巻 p.68 -ページ画像 
一金弐百円也    東京       井上準之助殿
一金四百七拾円也  同塩水港製糖会社 槙哲殿 外社員一同殿
一金弐千円也    同        片倉兼太郎殿 外店員一同殿
一金壱百円也    同        株式会社千代田組殿
一金壱百円也    同        木曜会殿
一金壱百円也    同        望月軍四郎殿
一金壱百円也    同        深田米次郎殿
一金壱百円也    同        東京株式取引所所員一同殿
一金壱百円也    同        内藤久寛殿
一金壱百円也    同        村井貞之助殿
一金壱百円也    同        森広蔵殿
一金壱百円也    同        若尾謹之助殿
一金壱百拾円也   同        日本歯科用品商組合事務所殿
一金壱百円也    同愛国生命保険会社々長 原邦造殿
一金五百円也    同 台湾製糖会社 東京出張所殿
一金壱百円也    同        藤瀬政次郎殿

一金壱百円也    同        益田克信殿
一金壱円也     同        簗田キミ子殿
                    (五十円以上の分)
一金五拾円也    同        埴原正直殿
一金五拾円也    同        持田巽殿
一金五拾円也    同        石井健吾殿
一金五拾円也    同        藤田謙一殿
一金五拾円也    同        岩永祐吉殿
一金五拾円也    同        牧野司郎殿
一金五拾円也    同        横浜神栄生糸株式会社殿
一金五拾円也    同        三木武吉殿
一金五拾円也             駒沢大学教職員殿
一金五拾円也     鈴木商店内   窪田駒吉殿
一金五拾円也    東京       益田信子殿
一金五拾円也    同        益田智恵子殿
一金五拾円也    同        豊年製油会社々員一同殿
一金五拾円也    同        粕谷義三殿
一金五拾円也    同        浅野長之殿
一金五拾円也    同 大阪野村銀行証券会社東京支店々員一同殿
一金五拾円也    同        横田義夫殿
一金五拾円也    同 藤本ビルブローカー銀行東京支店々員一同殿
一金五拾円也    同        長鋒郎殿
一金五拾円也    同        林新助殿
一金五拾円也    同        南新吾殿
累計金   五万参千六百参拾八円也
 - 第40巻 p.69 -ページ画像 

中外商業新報 第一四六〇一号 大正一五年一〇月一六日 米国大風災義捐金募集結果発表(DK400011k-0004)
第40巻 p.69 ページ画像

中外商業新報 第一四六〇一号 大正一五年一〇月一六日
    米国大風災義捐金募集結果発表
わが社の企てました米国大風災義捐金募集は、いよいよ十五日を以て締切りました、この計画を発表しまして以来、わが国各方面から多大なる共鳴を得、赤誠を披瀝した出捐の申込みは日々応接に遑ない有様でありました、締切の結果その義捐申込みの概数は
          (十五日午後十一時までに到着したるもの)
  人員 四万人
  金額 八万六千円
に上りました、わが社は直に応募金額全部を、米国大統領に向け電送の手続きをとることにいたします


中外商業新報 第一四五九三号 大正一五年一〇月九日 日本国民 の深長なる同情は感謝に堪へぬ 我社の義捐金募集に対し国務次官ライト氏談(DK400011k-0005)
第40巻 p.69 ページ画像

中外商業新報 第一四五九三号 大正一五年一〇月九日
日本国民 の深長なる同情は感謝に堪へぬ
          我社の義捐金募集に対し
            国務次官ライト氏談
〔ニウヨーク八日特派員発電〕 米国国務長官ケロツグ氏不在のため、次官ライト氏が代つて往訪の特派員に左の如く語つた、「過般のフロリダ風害に対する日本国民の深長なる同情に基く中外商業新報社の行為は実に感謝に堪へない、米国は政府が直接に救済金を受領することはしないが、米国赤十字は日本国民の同情の発露である寄附金を、フロリダの罹災者に伝達するであらう、米国赤十字は救済に要する四百万ドルを募集することにして、三百五十万ドルは既に米国において応募を了したるのみならず、国内において予定の額を超過すべき政府の見込みである」