デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

4章 道徳・宗教
1節 儒教
17款 国訳論語ノ編訳
■綱文

第41巻 p.341-346(DK410085k) ページ画像

昭和3年5月6日(1928年)

是日、竜門社ハ栄一ノ米寿祝賀記念トシテ斯文会編訳ノ「国訳論語」ヲ発行ス。二種アリテ、袖珍本ハ竜門社会員、斯文会会員及ビ関係各方面ニ、大型本ハ全国小学校ニ寄贈ス。更ニ同ジク斯文会編集「訓点論語」ヲ発行、同ジ目的ヲ以テ師範学校・中学校ニ寄贈ス。後ニ実業学校・図書館ニモ寄贈セリ。是年十二月ニ至リ竜門社ハ斯文会ニ対シ謝意ヲ表スルタメ聖堂復興費金三千円ヲ寄付ス。


■資料

国訳論語 斯文会編訳 緒言 昭和三年五月刊(DK410085k-0001)
第41巻 p.341 ページ画像

国訳論語 斯文会編訳  緒言 昭和三年五月刊
    緒言
渋沢青淵先生去年八十又八歳の高齢に躋られしにより、吾が社は先生の寿を頌し、且先生の平素信奉せらるゝ所の論語に藉りて記念の事業を挙行せんとす。適々先生が副会長たる財団法人斯文会に於て著手せる論語国訳の功将に成らんとするを聞き、吾が社に於て該書の発行に任ぜんことを交渉し、同会の快諾を得たり。乃ち本書を発行して吾が社員に頒ち、又別本を全国小学校に寄贈し、以て青淵先生米寿祝賀の記念と為すと云ふ。
  昭和三年五月六日            財団法人竜門社


国訳論語 斯文会編訳 例言 昭和三年五月刊(DK410085k-0002)
第41巻 p.341-342 ページ画像

国訳論語 斯文会編訳 例言  昭和三年五月刊
    例言
○上略
一、本書の訳文は、本会内に設けたる論語国訳委員会の委員内野台嶺山口察常専ら起草の事に当り、同会委員長文学博士服部宇之吉、委員飯島忠夫・平野彦治郎・諸橋轍次、顧問文学博士市村瓚次郎・文学博士宇野哲人・島田鈞一・安井小太郎の合議決定せるものなり
 - 第41巻 p.342 -ページ画像 
○中略
一、本書の印行には二種類あり、一は大型本(小学校用読本の型に準じたるもの)一は袖珍型是なり。
一、本書の稿成らんとする時、適々本会副会長渋沢子爵の門下生が組織せる財団法人竜門社に於て、同子爵米寿祝賀記念として、本書を刊行し、袖珍型本を同社員に頒布し、大型本を全国小学校に寄贈したき旨の交渉あり。本会は直に好意を以て之に応じ、本書第一版刊行の事と、小学校寄贈の事とを挙げて同社に委託せり。
  昭和三年五月             財団法人斯文会


国訳論語 斯文会編訳 奥付 昭和三年五月刊(DK410085k-0003)
第41巻 p.342 ページ画像

国訳論語 斯文会編訳 奥付  昭和三年五月刊



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  昭和三年五月一日印刷  昭和三年五月六日発行             東京市本郷区湯島二丁目一番地             湯島聖堂構内         編訳者   財団法人斯文会         右代表者      服部宇之吉 [img 図]版権所有             東京市麹町区永楽町二丁目一番地             仲廿八号館渋沢事務所内         発行者   財団法人竜門社         右代表者    男爵阪谷芳郎             東京都日本橋区兜町二番地         印刷者       星野錫             東京市日本橋区兜町二番地         印刷所      東京印刷株式会社 




  ○前掲、緒言・例言・奥付ハ、袖珍本・大型本共ニ同文ナリ。
  ○二種共ニ巻頭ニ教育勅語ヲ掲グ。見返シニ「渋沢青淵先生米寿祝賀記念」ノ朱印ヲ印刷ス。


訓点論語 斯文会編 緒言 昭和三年五月刊(DK410085k-0004)
第41巻 p.342 ページ画像

訓点論語 斯文会編 緒言  昭和三年五月刊
    緒言
吾が青淵先生渋沢子爵去年八十又八歳の高齢に躋られしにより、吾が社は先生の寿を頌し、且先生の平素信奉せらるゝ所の論語に藉りて記念の事業を挙行せんとす。適々先生が副会長たる財団法人斯文会に於て著手せる論語国訳の功将に成らんとし、其の依れる所の論語原文に句読・訓点及び送仮名を施したるものを作り、之を全国中等学校に寄贈せんとするを聞き、吾が社に於て該書の発行と寄贈とに任ぜんことを交渉し、同会の快諾を得たり。乃ち本書を発行して一本を全国各中等学校に寄贈し、一は以て青淵先生米寿祝賀の記念と為し、一は以て財団法人斯文会の志を成すと云ふ。
  昭和三年五月六日
                   財団法人竜門社


青淵先生米寿祝賀ニ関スル書類 【(印刷物) 拝啓、益御清適奉賀候、陳ば青淵先生米寿祝賀記念の為め発行並に調製致候…】(DK410085k-0005)
第41巻 p.342-345 ページ画像

青淵先生米寿祝賀ニ関スル書類       (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
拝啓、益御清適奉賀候、陳ば青淵先生米寿祝賀記念の為め発行並に調製致候
 一国訳論語(ポケツト型)   一冊
 - 第41巻 p.343 -ページ画像 
 一青淵先生訓話集       一冊
 一記念文鎮          一箇
御送附致候間御受領可被下候 敬具
  昭和三年六月
                   財団法人竜門社
    会員各位
(印刷物)
(別筆朱書)
先生と親交アル人々ヘノ文案
拝啓、益御清適奉賀候、陳ば青淵先生渋沢子爵は夙に経済道徳合一説を唱道し、多年一日の如く国家社会の為に尽瘁せられ居候処、昨年を以て米寿の高齢に躋られ候、吾が竜門社は常に先生の薫陶に浴し先生の主義を遵奉するものに有之、先生の主義は即ち論語に淵源するものに候へば、此意義ある年を祝賀すると共に永く之を記念せん為め、吾が国儒学の権威者の団体なる財団法人斯文会にて編輯せられ候論語を本社に於て刊行し、全国の諸学校及図書館等に寄贈し、以て其の普及を図らんと存候、依て先生と御親交深き貴台に一本を進呈致候、御一読被下候ハヽ御本懐之至ニ候 敬具
  昭和三年 月
              財団法人竜門社理事長
                    男爵阪谷芳郎
(印刷物)
(別筆朱書)
小学校ヘ寄贈書状
拝啓、益御清適奉賀候、陳ば青淵先生渋沢子爵は夙に経済道徳合一説を唱道し、多年一日の如く国家社会の為に尽瘁せられ居候処、昨年を以て米寿の高齢に躋られ候、吾が竜門社は常に先生の薫陶に浴し先生の主義を遵奉するものに有之、先生の主義は即ち論語に淵源するものに候へば、此意義ある年を祝賀すると共に永く之を記念せん為め、吾が国儒学の権威者の団体なる財団法人斯文会にて編輯せられ候国訳論語を本社に於て刊行し、全国の小学校に寄贈し、以て其の普及を図らんと存候、依て別封にて一本御送附致候間御受納被成下度候 敬具
  昭和三年六月
              財団法人竜門社理事長
                    男爵阪谷芳郎
    小学校長殿
(印刷物)
(別筆朱書)
中学校寄贈文
拝啓、益御清適奉賀候、陳ば青淵先生渋沢子爵は夙に経済道徳合一説を唱道し、多年一日の如く国家社会の為に尽瘁せられ居候処、昨年を以て米寿の高齢に躋られ候、吾が竜門社は常に先生の薫陶に浴し先生の主義を遵奉するものに有之、先生の主義は即ち論語に淵源するものに候へば、此意義ある年を祝賀すると共に永く之を記念せん為め、吾が国儒学の権威者の団体なる財団法人斯文会にて編輯せられ候訓点論語を本社に於て刊行し、全国の中学校及師範学校に寄贈し以て其の普及を図らんと存候、依て別封にて一本御送附致候間御受納被成下度候
 - 第41巻 p.344 -ページ画像 
                        敬具
  昭和三年六月
              財団法人竜門社理事長
                    男爵阪谷芳郎
    中学校長殿
  ○師範学校長宛ハ右ト略々同文ニツキ略ス。
(印刷物)
拝啓、益御清適奉賀候、然ば青淵先生渋沢子爵は夙に経済道徳合一説を唱道し多年一日の如く国家社会の為に尽瘁せられ居候処、一昨年を以て米寿の高齢に躋られ候、吾が竜門社は常に先生の薫陶に浴し先生の主義を遵奉するものに有之、先生の主義は即ち論語に淵源するものに候へば、此意義ある年を祝賀すると共に永く之を記念せん為め、吾が国儒学の権威者たる財団法人斯文会の編訳に係る国訳論語を刊行し之を全国の小学校に寄贈して以て其普及を図り候、貴校は商業教育の重きに従事せらるゝ学園に付、此際同書並に本社が特に編輯せる青淵先生訓話集と共に左記の通り寄贈致度、別封小包にて御送付致候間、教材の一端に御備へ被下候はゞ幸甚に御座候 敬具
  昭和三年六月
              財団法人竜門社理事長
                    男爵阪谷芳郎
    商業学校長殿
      記
 一国訳論語    一冊
 一青淵先生訓話集 一冊
      以上
(印刷物)
拝啓、益御清適奉賀候、然ば青淵先生渋沢子爵は夙に経済道徳合一説を唱道し、多年一日の如く国家社会の為に尽瘁せられ居候処、一昨年を以て米寿の高齢に躋られ候、吾が竜門社は常に先生の薫陶に浴し先生の主義を遵奉するものに有之、先生の主義は即ち論語に淵源するものに候へば、此意義ある年を祝賀すると共に永く之を記念せん為め、吾が国儒学の権威者たる財団法人斯文会の編輯に係る国訳及訓点の論語を刊行し、一は全国の小学校に寄贈し、一は全国の中学校師範学校に寄贈して、以て其普及を図り候、依て此際本社編輯竜門雑誌の青淵先生米寿祝賀記念号と共に左記の通り貴館に寄贈致し度、別封小包に御送付致し候間、御受納被下候はゞ幸甚に御座候 敬具
  昭和 年 月
              財団法人竜門社理事長
                    男爵阪谷芳郎
    図書館長殿
      記
 一、国訳論語        一冊
 一、訓点論語        一冊
 一、青淵先生米寿祝賀記念号 一冊
 - 第41巻 p.345 -ページ画像 
        以上


斯文 第一〇編第五号・第五五頁 昭和三年五月 ○国訳論語刊行(DK410085k-0006)
第41巻 p.345 ページ画像

斯文  第一〇編第五号・第五五頁 昭和三年五月
    ○国訳論語刊行
 本会にて委員を設けて起草中なりし国訳論語は此程脱稿を告げたるが、適々竜門社に於て渋沢老子爵の米寿祝賀会を開催せらるゝに際し其の祝賀記念として刊行せんことを懇請せられ、本会は之を快諾したり。竜門社にては論語の原文訓点本と国訳本との二種を刊行し、訓点本は全国の中等学校へ国訳本は同各小学校に寄贈し、別に国訳本を袖珍形に縮刷して、竜門社及本会の会員に頒布さるゝことゝなれり。但し其の版権は本会の所有にして、第二版以下は本会自ら発行する筈なり。


斯文 第一〇編第八号・第七五頁 昭和三年八月 会告(DK410085k-0007)
第41巻 p.345 ページ画像

斯文  第一〇編第八号・第七五頁 昭和三年八月
    会告
斯文会編訳
 国訳論語
 右ハ客年以来本会ニ於テ服部委員長ヲ始メ、山口・内野・飯島・諸橋・平野ノ委員諸氏ガ毎週一回会合シテ討論熟議シ、安井・島田・宇野等各顧問ノ意見ヲモ参酌シテ、斯文会本トシテノ読方ヲ一定セラレタルモノナルガ、其ノ成ヲ告グルヤ、本会副会長渋沢子爵ノ米寿記念トシテ竜門社ニ於テ発行シタキ旨ノ懇請アリ、本会ハ之ヲ快諾シタリ、子爵ノ祝賀会ハ来九月ニ挙行サルヽ筈ナルガ、竜門社ハ之ニ先ダチ既ニ全国ノ各学校ニ寄贈サルヽ筈ナレバ、受領ノ上ハ各一部ヅヽ進呈スベシ、此段会員各位ニ予告ス
  昭和三年八月一日
                    財団法人斯文会庶務係


(斯文会)事業報告書 昭和二・三年度 第一〇―一一頁刊(DK410085k-0008)
第41巻 p.345 ページ画像

(斯文会)事業報告書 昭和二・三年度  第一〇―一一頁刊
    第四 国訳論語稿本の完成及刊行
客年三月以降論語国訳委員会に於て起草中なりし国訳論語は、二月二十六日を以て稿本の完成を告げたるに付、三月十一日飛鳥山渋沢副会長邸に於て、国訳論語に関する報告会を開き、該委員を始め会長・副会長・理事・監事・参与等一同参集の上、委員長服部総務より、昨年来の委員会経過其他に関して詳細なる報告あり。
右の如く、国訳論語稿本完成したるが、適々渋沢副会長門下生より成る竜門社に於て、渋沢子爵米寿祝賀会開催に際し、該記念として国訳論語を刊行したき旨交渉ありたるに依り、本会は承諾の上竜門社に於て之を刊行し、袖珍型本を同社員に配布し、大型本を本会員及び全国小学校(約二万)に配布し、又訓点論語を全国中学校・師範学校等へ夫々配布せられたり。


斯文 第一一編第四号・第六七頁 昭和四年四月 ○国訳論語献上(DK410085k-0009)
第41巻 p.345-346 ページ画像

斯文  第一一編第四号・第六七頁 昭和四年四月
    ○国訳論語献上
 - 第41巻 p.346 -ページ画像 
三月五日、服部総務宮内省に出頭の上、本会発行の国訳論語二種、訓点論語の特別製本各十八部を、三陛下を始め奉り、各宮殿下に献上すべく其手続を了したり。


斯文 第一一編第一号・第一〇一頁 昭和四年一月 ○竜門社より聖堂復興費寄附(DK410085k-0010)
第41巻 p.346 ページ画像

斯文  第一一編第一号・第一〇一頁 昭和四年一月
    ○竜門社より聖堂復興費寄附
 本会の編纂に係る国訳論語を、竜門社に於て渋沢子爵米寿祝賀記念として刊行せられたることは既報の如くなるが、同社にては本会が編纂費を全部負担し、其の原稿を無償にて提供せしことを徳とし、本会の好意に対し謝意を表せんが為め、聖堂復興費として金参千円送付せられたるを以て、之を受領の上十二月十二日聖堂復興期成会に転交せり。



〔参考〕(阪谷芳郎)書翰 増田明六宛 昭和三年三月一八日(DK410085k-0011)
第41巻 p.346 ページ画像

(阪谷芳郎)書翰 増田明六宛 昭和三年三月一八日  (財団法人竜門社所蔵)
拝啓、今朝福島甲子三氏来宅アリ、斯文会ニテ会員約千二百名ニ国訳論語(小学校配付ノ分)及訓点論語(中学校配付ノ分)各一部配付致度ニ付、竜門社ヨリ寄贈ヲ受度、度々イロイロと申上恐縮ノ至リナリトノコトニ候、右ニ対シ小生ハ編纂費ノ御礼ヲ竜門社ニテ若干致度考ヘ居ルニ付、双方合計二千四百部ハ其御礼ノ一部ニ当ルト考フレハ何等御遠慮ニ及バズ、幹事ノ方ヘ申入ヲキ可申ト答ヘヲキ候
右御異論ナクハ尊君ヨリ福島君ヘ御打合ノ上、寄贈方ヲ可然御取計ヒ可被下候、他日編纂費ノ返礼ノトキニハ夫レ丈減シテ額ヲ定メ可然候
                        以上
  三月十八日                 芳郎
    竜門社
     増田明六殿