デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正13年8月6日（1924年）

当軍、財界有力者ノ寄付ヲ仰グニ際シ、是日栄一、小池国三・神田鐳蔵宛ニ山室軍平ノ紹介状ヲ認ム。尚、屡々同様ノ紹介状ヲ認ム。

渋沢栄一書翰　控　小池国三・神田鐳蔵宛大正一三年八月六日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　救世軍関係
　　　　　　　　　　　　　　　　　（別筆朱書）
　　　　　　　　　　　　　　　　　大正十三年八月六日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小池国三氏神田鐳蔵氏宛ノ山室軍平氏紹介状
拝啓、時下益御清適奉賀候、然ハ日本救世軍山室軍平氏、同軍之経営する社会事業之義ニ関し、小生之紹介状を以て近日拝訪致候間、罷出候節ハ何卒御引見被下、可相成其願意御聞容れ被下度、予め願上申候
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　匆々拝具
　　八月六日　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　小池国三様
　　　　神田鐳蔵様
　　　　　　　　　　　各通

渋沢栄一書翰　控　小池国三・神田鐳蔵宛大正一三年八月六日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　救世軍関係
　　　　　　　　　　　　　　　　　（別筆朱書）
　　　　　　　　　　　　　　　　　大正十三年八月六日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山室軍平氏之紹介状
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（小池国三氏神田鐳蔵氏宛）
拝啓、時下益御清適敬賀之至ニ御座候、扨以本書御紹介致候山室軍平氏ハ日本救世軍之主宰者にて、同軍之経営する社界事業、就中昨年震災中より罹災者ニ対する救援之効績ハ、他之同種之事業経営者ニ比し実ニ賞讚すべき顕著なる成績を挙げ居候処、今般英国同軍本営よりの送金減少之結果、之が経営之資金ニ少々不足相生候由にて、困難之趣来談有之候ニ付き、小生ニ於ても軽少なから出金を為し、別ニ小生御昵懇之御方々ニも同氏を紹介して、御援助方願居候義ニ御座候間、誠ニ勝手之申条ニ候へ共、何卒貴台ニ於ても相当之御義捐被成下候て、同氏をして益奮闘し得る様御奨励被成下度懇願仕候、右御紹介旁願用
 - 第42巻 p.118 -ページ画像 
申上度如此御座候　敬具
　　八月六日　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
　　　　小池国三様
　　　　神田鐳蔵様
　　　　　　　　　各通

（山室軍平）書翰　増田明六宛（昭和三年）七月一〇日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　明六
粛啓、昨日ハ罷出テ種々御親切ナル御配慮ヲ賜リ厚ク御礼申上候、今朝服部金太郎氏ニ御面会致候処、快ク金千円也御寄附被下候、シカシ其ノ節ノ御話ニ「若シ年々トナルト、三井ヤ三菱ニ比ブレバ、自分ノ如キハ其ノ二十分ノ一ヲ尽セバ、ヨイ割合ニナル故、奮発シテモ金五百円ト云フ事ニシタシ、兎モアレ今年ハ今年トシテ来年ハ今少シ、三井・三菱等カラ出ナイモノカ、又其ノ他ノ藤山・大川・根津等ノ諸氏ニモ当ツテ見ヨ」トノ事ニ有之、ソレニ対シ、三井・三菱ハ今ノ分ヲ持続シテイタダク為ニ少カラヌ苦心ヲナシ居候事、其ノ他ノ方々ハ追追御依頼申上度ツモリナル事等申述ベテ帰リタルヤウノ次第ニ候、何卒右御含ミオキ下サレ、御序ノ節ニハ、服部氏ガ今後共、何分特別ノ御厚意ヲ以テ救世軍ヲ御賛助下サレ候ヤウ御依頼下サレ候ハヾ、真ニ此ノ上モナキ仕合ノ至ニ存候
森永氏・堤氏ノ御紹介状、何卒宜ク御願申上候
草津ニ於ケル癩患者ノ為ノ運動ノ件モ、御便宜ノ節何卒可然子爵ヘ御執成下サレ度、切ニ御依頼申上候
御多用中勝手ノ儀ノミ申出テ恐縮ノ至ニ候ヘトモ、何分宜シク御願申上候
御祝福ヲ奉祈候　敬具
　　三、七、一〇　　　　　　　　　　　　　　　山室軍平
　　　　増田明六様

渋沢栄一書翰　控　堤清六宛昭和三年七月一三日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　日魯漁業株式会社
　　　　堤清六様
拝啓、益御清適之義と賀上候、然ハ以本書御紹介致候ハ日本救世軍の主宰者山室軍平氏ニ御座候、日本救世軍の業績は既ニ御承知かと存候が、其施設は主として下層階級に沈淪せる不幸なる人々を救済せんとするニ在りて、疾くニ其社会事業の成績ハ天聴ニも達し、格別之御下賜金すら拝受致居候次第ニ御座候、今般同氏ハ貴兄ニ拝眉特ニ御願申度義有之候由ニて、小生の紹介状を被望候処、小生は同氏と多年懇親ニ致居、其社会事業ニ関して常ニ微力相添居候関係より、本書相認め候、御多忙中恐縮ニ候得共、何卒御引見之上、委細御聴取、何分之御心添被成候様希上候　敬具
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渋沢栄一
 - 第42巻 p.119 -ページ画像 
　　昭和三年七月十三日

（山室軍平）書翰　増田明六宛（昭和三年）七月二〇日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　　　　　　　　　　　　　　（別筆）
　　　　　　　　　　　　　　　　　三、七、二一落手　明六
拝啓、厳暑之候御健勝ヲ御祈申上候、陳者先日御紹介状ヲ賜リ候堤清六氏、金五百円ヲ寄附セラレ候、此ハ多分向フ数年ニ亘リテ継続セラルヽモノナランカト存ジラレ候、松崎氏ハ尚御考慮中ニ候処、必ラズ若干ノ御賛助ヲ下サルヽトノ御話ニ候、堤氏ハ子爵ヨリノ御手紙ヲ大層恭ク御領取セラレ候御様子ニ有之、難有奉存候、松崎氏トハ暫ク打チトケテ何彼ト御懇談ノ機会ヲ得候、一寸右経過ヲ御報道申上度得貴意候、御序ノ節子爵ヘモ宜ク御執成シ被下度候　拝具
　　三、七、二〇　　　　　　　　　　　　　　山室軍平
　　　　増田明六様
　　　○救世軍ハ従来ヨリ種々栄一ノ尽力ヲ受ケシガ、紹介状ノ如キハ一々之ヲ挙グルノ遑ナキ程ナリ。右ハ資金潤滑ヲ計ル為メ、財界有力者ニ三年間位ヅツ一定ノ金額ヲ継続寄付願ヒタルモノナリ。（山室軍平談）