デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

4章 道徳・宗教
5節 修養団体
4款 財団法人修養団
■綱文

第43巻 p.490-491(DK430089k) ページ画像

大正4年8月11日(1915年)

是日ヨリ一週間ニ亘リ、当団天幕講習会、福島県耶麻郡檜原湖畔ニ於テ開カル。栄一之ヲ後援ス。


■資料

竜門雑誌 第三二七号・第六九頁大正四年八月 ○修養団の実地修養(DK430089k-0001)
第43巻 p.490 ページ画像

竜門雑誌 第三二七号・第六九頁大正四年八月
○修養団の実地修養 浅草区蔵前南元町の修養団にては、顧問青淵先生・同森村市左衛門氏後援の下に、八月十一日より一週間、福島県磐梯山麓檜原湖畔の於て天幕生活を営み、且つ青年修養に必要なる学科を講習せしむる為め、講師として田尻・本多・松崎・山川各博士を聘し、同団幹事一同も同地に出張して会員と起臥を共にし、講習会を開きたる由。


渋沢栄一書翰 瓜生喜三郎宛(大正四年)八月一四日(DK430089k-0002)
第43巻 p.490 ページ画像

渋沢栄一書翰 瓜生喜三郎宛(大正四年)八月一四日 (瓜生喜三郎氏所蔵)
拝啓爾来益御清適欣慰之至ニ候、然者貴一団ハ水泳之為臨海団御組織相成日々水泳御煉修之由、蓮沼君と山水両様ニ相成候ハ所謂仁者、知者と引分れ候観有之、一同之奮励別段之事と存候、天幕講習会之義ニ付而ハ兼而蓮沼君より再三承及候義ニ付、今日一書を発して講習会之効果を拝祝いたし候、貴方之修養も定而満足之成績を得候義と存候、老生も月初より函根ニ避暑いたし、一昨日急用ニて出京ニて山水両処之報告ニ接し候ニ付不取敢一書を以て祝詞申上候、但海ニハ別而危険多きものニ候間管理者之注意多き事と遥察仕候、来月ハ御同様三方より帰京之上、海山各地之自慢話ニ時を費し候様仕度ものと存候、右不取敢書中得貴意候 拝具
  八月十四日
                     渋沢栄一
    瓜生喜三郎様
          梧下


渋沢栄一 日記 大正四年(DK430089k-0003)
第43巻 p.490-491 ページ画像

渋沢栄一 日記 大正四年           (渋沢子爵家所蔵)
八月二十日
 - 第43巻 p.491 -ページ画像 
○上略 十一時頃島田宿修養団員大井・平井ノ両氏来リ、檜原ニ於ル天幕講習会ノ実況ヲ報告ス、蓋シ両氏ハ其会ニ参列シタルモノナリ、依テ修養団員ノ覚悟ニ付種々訓示ヲ為シ、且其企望ニ従ヘ揮毫セシ絹本ヲ与ヘテ更ニ午飧ヲ供シテ労ヲ慰ス
○下略


向上 第九巻第八号・第三―四頁大正四年八月 青年指導天幕講習会 (修養団主催)(DK430089k-0004)
第43巻 p.491 ページ画像

向上 第九巻第八号・第三―四頁大正四年八月
    青年指導天幕講習会 (修養団主催)
○上略
      ○天幕講習会開催の動機
 修養団の目的たる風教改善と理想郷建設の実を全くせんには、一、将来国家経営の中軸たるべき帝都遊学生中の敦厚着実の秀才と、国家の興隆の基礎たるべき地方農村の中心的青年と聯絡盟契するに在ることと思ひ、其方策として渋沢・森村・手島顧問等の援助により帝都に於ては四ケ所に寄宿舎を設けて、之を高等工業・慶応義塾・早稲田大学・高等商業等の学生団員の寄宿修養所となし、盟友寝食を共にし互に親和砥礪して心身の修養鍛錬を計るに便ならしめ、地方に於ては四十有余の支部を設立し同志相呼応して或は殖林事業、農事改良等の活動に便ならしめ、以て着々所期の目的を貫徹せんと十星霜の久しきに亘りて拮据勉励したり。此時に当り、田尻博士の高弟にして多年農村改良に尽瘁し、地方青年指導に経験を重ね社会覚醒の大望を抱いて起てる小尾晴敏氏が本団の中堅となりて、活動せんとするに至るや、氏は先づ農村改良より着手せざるべからずとなし、比較的純朴勤勉の風ある福島県会津地方の一部を根拠として、漸次成案を実施せんと計劃しつゝありたり。宛もよし、耶麻郡長酒井富三郎氏は予てより理想郷建設の念願を以て砕身粉骨郡治に尽瘁し、其成績大に見るべきものありしが、小尾氏の人と為りを悦び、礼を厚くして氏を迎へ、問ふに農村中心的青年の指導法を以てす。小尾氏は其熱誠に感じ知己の誼に報いんと欲し、多年蘊蓄せる農村改良案を披瀝し、躬を以て該郡青年の訓練に当らんとし、磐梯山麓、檜原湖畔の仙境を相し、天幕講習会の壮挙を企つるに至れり。此計画一度社会に喧伝せらるゝや、朝野の識者悉く賛同の辞を寄せ、各地学生の講習加入を申込むもの亦日に大きを加へたり。玆に於て耶麻郡主催の郡下青年講習会終了後、直ちに修養団主催の師範農林学校生徒講習会を開き、別記の如き方案に基き青年指導者を訓練せんと企つ。之を渋沢・森村・手島顧問・一木文部大臣・河野農商務大臣等の諸先輩に諮りたるに、何れも時代に適したる計劃なりとて多大の援助を与へられ、序で帝都有識者を歴訪して其意見を叩きたるに賛辞湧くが如し。昨夏田沢・山下両氏等が三保の松原に於て予備的天幕講習会を試みて成功したりしが、今夏の挙が天人の加護によりて成功せんことを祈るや切なり。大方の諸賢希くは青年の意気を諒とせられて後援の労を与へられんことを。
○下略