デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

5章 教育
1節 実業教育
2款 東京商科大学 付 社団法人如水会
■綱文

第44巻 p.296-299(DK440066k) ページ画像

大正9年10月25日(1920年)

是日如水会、栄一ノ陞爵祝賀会ヲ同会館ニ催ス。栄一病気ノタメ出席スルコトヲ得ズ、嫡孫敬三代理トシテ出席ス。


■資料

集会日時通知表 大正九年(DK440066k-0001)
第44巻 p.296 ページ画像

集会日時通知表 大正九年        (渋沢子爵家所蔵)
十月廿五日 月 午后六時 如水館主催渋沢子爵陞爵祝賀会(同館)
○御引籠中


如水会々報 第二号・第三頁大正九年一一月 役員会例会(DK440066k-0002)
第44巻 p.296-297 ページ画像

如水会々報 第二号・第三頁大正九年一一月
    役員会例会
十月七日(第一木曜)例会を本会々館に開く。出席者左の如し。
   ○氏名略ス。
      議案
一、渋沢子爵陞爵祝賀会開催の件
○中略
    役員会例会
十月二十一日(第三木曜)正午より、本会々館内に開く。其出席者左
 - 第44巻 p.297 -ページ画像 
の如し。
   ○氏名略ス。
 当日は、同月二十五日開催の事に決定し居れる渋沢子爵陞爵祝賀会準備の件に関し打合せありて、午後一時より故小室理事葬儀参列の為め解散。


如水会々報 第二号・第六―一一頁大正九年一一月 ○渋沢子爵陞爵祝賀会(DK440066k-0003)
第44巻 p.297-299 ページ画像

如水会々報 第二号・第六―一一頁大正九年一一月
    ○渋沢子爵陞爵祝賀会
渋沢子爵陞爵の趣は去る九月六日の官報を以て発表せられ、斯の人にして斯の事ありしは天下一般の斉しく慶ぶ所にして、殊に吾が同窓者の切に大に欣賀する所なり。故に去る十月二十五日午後五時の吉辰を卜し、本会々館に於て本会理事主催の下に其の陞爵祝賀会を催せり。然るに当日は生憎前日来の微恙の為めに子爵の臨席無かりしは、一同の遺憾とする所なりしも、特に子爵の代理として嫡孫敬三君の御臨席あつて、賓主合せて左の一百二名の出席を見るに至れり。
  来賓     渋沢敬三君
  会員 ○氏名略ス
当日は先づ来賓の来着を待つて午後六時半会場を開き、一同着席、和気靄々の裏に賓主晩餐を共にし、デザートコースに入るや、成瀬隆蔵君主人側を代表して拍手の裡に起立せられ、一場の挨拶を述べられ、又之れに対して子爵御代理の御答辞あり、今其の各速記録を順記すれば左の如し。
  渋沢子爵陞爵祝賀会司会者挨拶
 来賓並に会員諸君、此処に御出になりますのは渋沢子爵閣下の御嫡孫敬三君であります。先づ以て御紹介を致します。
 会員諸君、生ける国宝渋沢子爵閣下は従来主として御関係あり、且つ御監督の下に大成功致しましたる世界日曜学校大会の準備等にて一際御多忙を極められました為か、此程御不快と承り大いに心痛いたしました。然るに閣下が多大の御心配ありたる米人首め諸外国人の来航宿泊等頗る都合好く運び、加之不慮の火災も案外に日本人の臨機応変果断の才能、且つ大和魂を示す機会となり、即ち禍変して福となりました。是が為には今後日米の国交上にも好影響を及ぼすことでございませう。是等に御満足になつた結果でございませうか、御不快忽ち御全癒昨夜までは閣下は此処に御光臨の筈でございました。所が唯今敬三君より承りますれば昨日大倉高商業学校に行かれて、風邪に罹かられ……咳が出で多少御熱もある為に今夕御臨みが出来なくなられたと云ふことは……我々が麗はしき温容に接するの好機を失ひ甚だ遺憾でございますが、承る所では差したることでもなく、速に御全快であらうとのこと、加ふるに御嫡孫敬三君が代理として御臨み下すつたのは寔に仕合せ、厚く御礼を申上げざるを得ず。先づ御同様に安心もし、一時の失望に拘はらず喜びもする次第であります。
 偖て是より来賓に対する御挨拶を申送ます。渋沢子爵閣下の御繁劇は天下の周知する所、殊に御陞爵以来日毎に祝賀攻めに出合はれ、随分有難御迷惑さぞかしと御察し申ながら、我々亦温容に接し慶びを陳
 - 第44巻 p.298 -ページ画像 
べる機会を得度さの余り御招き致すことになりましたが、敬三君唯今御覧の如く、何等取設けも御待遇もなく、卓上は粗酒粗肴又殊更祝辞をも用意致ませぬ、と申すのは渋沢子爵閣下は奢侈を嫌はれ、寧ろ質実を好まれることを我々は承知いたして居るのみならず、先頃御賁臨の御都合を伺ひし際に於ても特に御注意ありました趣に付我々其思召のある所を遵奉いたし、又閣下の実業は勿論、教育、慈善、国民思想の善導、国際の親善其他万般社会重要の事項に関し、閣下の御尽力、御功労は実に枚挙に遑あらず。其御事業は迚も言語にも筆紙にも尽す能はず。然るに御陞爵以来各方面祝賀会の催しありて、鄭重なる御饗応もし又閣下の御人格、御勲功等を出来得るだけ叙述したる祝文も多多ありしと存ずれども、我々会員は他の方面と稍々事情を異にし、閣下を慈父の如く仰いで居る者、其最も敬愛する所の慈父の如き閣下に対して、国家社会に貢献せられしことを挙げて此際喋々することは、何やら他人行儀の嫌ひあるを以て何等用意をせざりし次第。
 自体天爵ある閣下は若し人爵を望まれしならば既に業に公侯爵にも成られしならん。閣下の後輩にして既に公侯伯爵になられた方は生等の知る所に依るも、其数少なからず。されば子爵必ずしも閣下としては御栄誉とも見えず、併しながら軍人官吏以外実業界の人士にして、其功績更に天聴に達し子爵に陞爵ありしは、蓋し渋沢子爵を以て嚆矢と存じます。是即ち我々会員の慶祝する所、就中閣下は齢既に八旬を越え、尚ほ矍鑠壮者を凌ぐ慨あつて此の光栄を得られしは、其高寿こそ我々欣躍措く能はざる所でございます。
 是を以て祝賀軍の囲稍々弛みし頃を窺ひ、我々玆に相会して飾り無き欣喜の真情を表し、兼ねて御高話を希はしむ為め、今夕御臨席を願ふに至りました次第でございます、何卒其誠意のある所を御諒察あつて、不行届の点を御許容、敬三君には御緩話下さらんことを懇願致します。
 終りに臨み杯を挙げて渋沢子爵閣下の健康を祈り併せて御陞爵を祝する為め万才を三唱いたしたく存じます。(一同起立)
 渋沢子爵閣下万才
   (一同和して)
万才――万才――万才――
  渋沢子爵御代理の謝辞
 本日は祖父の為に盛大なる陞爵の祝賀会を玆に御開き下さいましてありがたう御座ゐます。祖父も昨日まではお招きに応ずる考で居りました所が突然風邪をひきまして、殊に持病の喘息を少々起しました為に、決して臥つた儘で起きられない程のことはございませぬけれども此処に出席いたしまして諸君に御目にかゝることが出来なくなりました。此の事は、先づ第一に諸君の御志に対して相済ぬ訳で真に衷心から御詑びを申さなければならない次第でございます、さうして其為に祖父から私に特に代理として出席せよと云ふ命令がございました結果甚だ僭越ながら未だ若年の私が此席に出まして、大変な光栄を担ふことになつたので御座ゐます。此方へ来がけに祖父の病床に立寄りました所が、思つたよりは元気でございました、唯、少々咳が出ます為に
 - 第44巻 p.299 -ページ画像 
苦んで居りましたが、私に、別に案じる程の容態でないから左様御心配を頂く程のこともないけれども、風邪を引いて寝て居る為に甚だ残念であるが諸君に御目にかゝることが出来なくなつた。どうぞ呉々も宜敷く申上げて呉れと云ふ伝命でございました。唯今成瀬さんから非常に御鄭重な御言葉を戴きまして、有難く御受け致す次第でございます。出来るだけ早く祖父に此趣を伝へたいと存じます。尚ほ本日の御取り設けが祖父の平生の考を十分御酌み採り下され、特に外形を排して内面に這入られむとした今日の様は会合に対して祖父の欠席いたしましたことは、祖父に聞せましたなら真に残念に存じ且つ諸君の御衷情を十分に有難く感銘するであらうと思ひます。祖父が居りますれば是から又大いに御話も申上げ、又皆様から種々御話を承ることでございませうけれども、残念ながら折角の御取り設けに出席の出来なかつたことは、是は何と申上げて宜いか、御集りになつた御方に対して又会員諸君に対して、真に申訳ない次第と深く私も残念に思ひます。帰りましたら今日の趣を能く祖父に伝へまして、諸君の御芳志と祖父に相応しき御取り設けとを細々報告するのが私の任務だと存じます。甚だ僅でございますけれども、一言、祖父に代りまして陞爵の御祝を機会として本日の如き素朴な温味ある御会合を御企て下すつたことに対して厚く御礼申上げます。(拍手)
  閉会の挨拶            成瀬隆蔵君述
 是にて今夕の祝宴を終り別室に於て御閑話を願ひます。
尚ほ当日は関門支部より、左の祝電を寄せ来れり。
  今日祝宴ヲ開キ遥カニ御陞爵ヲ祝ス 関門支部


竜門雑誌 第三九〇号・第六O―六一頁大正九年一一月 ○青淵先生陞爵祝賀会(DK440066k-0004)
第44巻 p.299 ページ画像

竜門雑誌 第三九〇号・第六O―六一頁大正九年一一月
○青淵先生陞爵祝賀会 財団法人如水会にては十月二十五日午後六時より同会館に於て青淵先生の陞爵祝賀会を開催したるが、先生には先月下旬以来御病気にて出席叶はざりしを以て、令孫渋沢敬三君をして代理出席せしめられたり、主人側出席者は石井健吾・原錦吾・堀光亀堀内明三郎・土肥脩策・小田柿捨次郎・高島菊次郎・成瀬隆蔵・村瀬春雄・上野季三郎・窪田四郎・増田明六・間島与喜・藤村義苗・江口定条・佐野善作・正田貞一郎等百十九名の諸氏にして、定刻一同食卓に就き、デザートコースに於て主人側総代成瀬隆蔵氏の祝辞、青淵先生代理渋沢敬三君の答辞あり、一同祝意を表し午後九時半散会したりと云ふ。